特許第6075199号(P6075199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075199
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】靴底の補修方法及び靴底補修体
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/00 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   A43B13/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-100647(P2013-100647)
(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公開番号】特開2014-217697(P2014-217697A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】加納 宗明
(72)【発明者】
【氏名】野口 悦成
(72)【発明者】
【氏名】石塚 英司
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−215916(JP,A)
【文献】 特開昭55−082632(JP,A)
【文献】 特開昭52−076149(JP,A)
【文献】 特開昭54−019844(JP,A)
【文献】 特表2009−524704(JP,A)
【文献】 米国特許第05276981(US,A)
【文献】 特開2002−060523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底の補修方法において、
靴底の補修面及び靴底補修用成形品の表面のうちの少なくとも一方に、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を塗布する塗布工程、
前記プライマー用組成物を乾燥させてプライマー被膜を形成する被膜形成工程、
前記プライマー被膜と、前記プライマー被膜が形成されていない前記補修面又は前記靴底補修用成形品の前記補修面に接合される面と、のうちの少なくとも一方に接着剤を塗布する接着剤塗布工程、及び
前記補修面を有する前記靴底と、前記靴底補修用成形品とを圧着させる圧着工程、を備えることを特徴とする靴底の補修方法。
【請求項2】
靴底の補修方法において、
補修面に、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を塗布する塗布工程、
前記プライマー用組成物を乾燥させてプライマー被膜を形成する被膜形成工程、及び
前記プライマー被膜上にゴム組成物からなる補修剤を肉盛りする肉盛り工程、を備えることを特徴とする靴底の補修方法。
【請求項3】
補修面を有する靴底、
前記補修面及び靴底補修用成形品の表面のうちの少なくとも一方に、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を用いて形成されたプライマー被膜
前記プライマー被膜の表面と、前記プライマー被膜が形成されていない前記補修面又は前記靴底補修用成形品の前記補修面に接合される面と、のうちの少なくとも一方に形成された接着剤層、及び
前記接着剤層を介して接合された前記靴底補修用成形品、を備えることを特徴とする靴底補修体。
【請求項4】
補修面を有する靴底と、
前記補修面に、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を用いて形成されたプライマー被膜と、
前記プライマー被膜上にゴム組成物からなる補修剤が肉盛りされて形成された補修部と、を備えることを特徴とする靴底補修体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底の補修方法及び靴底補修体に関する。更に詳しくは、本発明は、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を用いて、靴底補修用成形品を接合する、又は補修剤を肉盛りする靴底の補修方法に関する。また、補修面を有する靴底が補修されてなる靴底補修体に関する。
【背景技術】
【0002】
磨り減った靴底、及び一部が剥離又は欠損してしまった靴底の補修には各種の補修剤が用いられる。例えば、合成ゴム、補強剤及び炭化水素溶剤を含有する靴底補修剤(例えば、特許文献1参照。)、ウレタンプレポリマーを含有する一液湿気硬化型靴補修剤(例えば、特許文献2参照。)、ウレタンプレポリマー等と潜在性硬化剤とを主成分とする一液型熱硬化性組成物(例えば、特許文献3参照。)などの補修剤が知られている。
【0003】
また、靴底には、防滑性、軽量性、耐摩耗性、クッション性等を向上させるため、各種のセラミック粒子を含有させることも多い。例えば、靴底用ゴム等にジルコニア微粒子を添加したジルコニア添加アルミナ粒子等の各種のセラミック粒子を配合し、特に防滑性を向上させた防滑靴底が知られている(例えば、特許文献4参照)。更に、シリカを含有させ、特に耐摩耗性を向上させた靴底材も知られている(例えば、特許文献5参照。)。また、ゴム表面に樹脂組成物を塗り重ねて被覆するにあたり、予めゴム表面にシアノアクリレート系組成物を塗着させ、層間密着性を向上させるゴム表面の処理方法も知られている(例えば、特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−60552号公報
【特許文献2】特開2008−6042号公報
【特許文献3】特開2006−34882号公報
【特許文献4】特開2006−230978号公報
【特許文献5】特開2000−236905号公報
【特許文献6】特開2002−60523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、補修面に、前述のような、ゴム組成物、一液湿気硬化型靴補修剤、一液型熱硬化性組成物等を直接塗着させても、層間を十分に密着させることができない場合がある。また、靴底に各種のセラミック粒子が含有されているときは、層間を密着させ、接合させることはより難しくなり、特に踵などが損傷したときは、補修のための接着は容易ではない。そこで、補修面にサンドペーパー処理、サンドブラスト処理、プラズマ処理、エッチング処理等の物理的、化学的処理を施して粗面化し、その後、補修するという方法が採用されている。その場合、除塵設備、吸収設備、廃液処理設備等の各種の付帯設備及びその管理が必要になるとう問題がある。更に、予めゴム表面にシアノアクリレート系組成物を塗着させるゴム表面の処理方法は知られているが、靴底の補修方法は全く意図されていない。
【0006】
本発明は、上述の従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、シアノアクリレートを含有する靴底補修のためのプライマー用組成物を用いて、補修面の粗面化処理をすることなく、靴底を補修する方法を提供することを目的とする。また、補修面を有する靴底が補修されてなる靴底補修体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
1.靴底の補修方法において、
靴底の補修面及び靴底補修用成形品の表面のうちの少なくとも一方に、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を塗布する塗布工程、
前記プライマー用組成物を乾燥させてプライマー被膜を形成する被膜形成工程、
前記プライマー被膜と、前記プライマー被膜が形成されていない前記補修面又は前記靴底補修用成形品の前記補修面に接合される面と、のうちの少なくとも一方に接着剤を塗布する接着剤塗布工程、及び
前記補修面を有する前記靴底と、前記靴底補修用成形品とを圧着させる圧着工程、を備えることを特徴とする靴底の補修方法。
2.靴底の補修方法において、
補修面に、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を塗布する塗布工程、
前記プライマー用組成物を乾燥させてプライマー被膜を形成する被膜形成工程、及び
前記プライマー被膜上にゴム組成物からなる補修剤を肉盛りする肉盛り工程、を備えることを特徴とする靴底の補修方法。
3.補修面を有する靴底、
前記補修面及び靴底補修用成形品の表面のうちの少なくとも一方に、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を用いて形成されたプライマー被膜
前記プライマー被膜の表面と、前記プライマー被膜が形成されていない前記補修面又は前記靴底補修用成形品の前記補修面に接合される面と、のうちの少なくとも一方に形成された接着剤層、及び
前記接着剤層を介して接合された前記靴底補修用成形品、を備えることを特徴とする靴底補修体。
4.補修面を有する靴底と、
前記補修面に、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を用いて形成されたプライマー被膜と、
前記プライマー被膜上にゴム組成物からなる補修剤が肉盛りされて形成された補修部と、を備えることを特徴とする靴底補修体。
【発明の効果】
【0008】
プライマー被膜に接着剤を塗布し、補修面を有する靴底と、靴底補修用成形品とを圧着させる本発明の靴底の補修方法によれば、補修面にシアノアクリレートを含有するプライマー用組成物が塗布されて乾燥され、プライマー被膜が形成されている。これにより、靴底補修用成形品を接着剤により補修面に強固に接合させることができる。
また、プライマー被膜上に補修剤を肉盛りする他の本発明の靴底の補修方法によれば、補修面にシアノアクリレートを含有するプライマー用組成物が塗布されて乾燥され、プライマー被膜が形成されている。これにより、肉盛りされたゴム組成物からなる補修剤をプライマー被膜を介して補修面に強固に接合させることができる。
補修面等に形成されたプライマー被膜と、プライマー被膜等の表面に形成された接着剤層と、接着剤層を介して接合された靴底補修用成形品と、を備える本発明の靴底補修体では、接着剤層がプライマー被膜に密着するため、靴底補修用成形品がプライマー被膜及び接着剤層を介して補修面に強固に接合された靴底補修体とすることができる。
更に、補修面に形成されたプライマー被膜と、プライマー被膜上にゴム組成物からなる補修剤が肉盛りされて形成された補修部と、を備える他の本発明の靴底補修体では、補修剤がプライマー被膜に密着するため、補修剤が肉盛りされて形成された補修部がプライマー被膜を介して補修面に強固に接合された靴底補修体とすることができる。
尚、プライマー用組成物は、シアノアクリレートを含有する。そのため、靴底の補修面の粗面化処理をしなくても、接着剤又は補修剤を十分に密着させ、接合させることができる。これにより、靴底補修用成形品及び肉盛りされた補修剤を、プライマー被膜を介して補修面に強固に接合させることができる。
また、シアノアクリレートが、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキルシアノアクリレートであれば、接着剤又は補修剤をより十分に密着させ、接合させることができる。これにより、靴底補修用成形品及び肉盛りされた補修剤を、プライマー被膜を介して補修面により強固に接合させることができる。更に、汎用のシアノアクリレートであるため、コスト面でも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
[1]靴底の補修方法
本発明の靴底の補修方法は、靴底補修用成形品を用いる方法であり、他の本発明の靴底の補修方法は、補修面に補修剤を肉盛りする方法である。
(1)本発明の靴底の補修方法
靴底補修用成形品を用いる本発明の靴底の補修方法は、以下の工程を備える。
(A)靴底の補修面及び靴底補修用成形品の表面のうちの少なくとも一方に、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を塗布する塗布工程、
(B)塗布されたプライマー用組成物を乾燥させてプライマー被膜を形成する皮膜形成工程、
(C)形成されたプライマー被膜の表面と、このプライマー被膜が形成されていない補修面又は靴底補修用成形品の補修面に接合される面と、のうちの少なくとも一方に、接着剤を塗布する接着剤塗布工程、
(D)補修面を有する靴底と、靴底補修用成形品とを圧着させる圧着工程、
【0010】
塗布工程においてプライマー組成物を塗布する方法は特に限定されない。プライマー組成物には増粘剤が配合されており、適度に粘稠である。そのため、例えば、刷毛塗りにより塗布することもでき、スプレーにより塗布することもできる。プライマー組成物の粘度は、増粘剤の種類及びその配合量等によって調整することができる。この粘度は特に限定されないが、100〜1,000mPa・s、特に200〜800mPa・s(25℃)とすることができる。このような粘度範囲で、高粘度側であるときは刷毛塗り、低粘度側であるときはスプレー塗布が好ましい。また、靴底の補修面の面積は小さいため、所要面に効率よくプライマー組成物を塗布するためには刷毛塗りによる塗布が簡便であって好ましい。
【0011】
塗布されたプライマー組成物の塗膜の厚さは特に限定されない。この塗膜の厚さは、10〜50μm、特に20〜40μmであることが好ましい。塗膜の厚さが10〜50μmであれば、プライマーとして十分に機能し、補修面と靴底補修用成形品とを接着剤によって強固に接合させることができる。靴底補修用成形品としては、踵及びソールが挙げられる。
【0012】
被膜形成工程におけるプライマー組成物の塗膜の乾燥条件は特に限定されない。乾燥温度は室温等の雰囲気温度(例えば、5〜40℃、特に20〜30℃)であればよい。また、雰囲気温度が5℃未満であるとき、及び40℃を超えるときは、加温したり、冷却したりして、上述の雰囲気温度範囲とすることが好ましい。更に、乾燥時間も特に限定されず、乾燥温度にもよるが、雰囲気温度において3〜10分、特に3〜8分乾燥させればよい。乾燥時の相対湿度も特に限定されず、乾燥時の雰囲気湿度が、例えば、50〜75%RH程度であれば、特に除湿したり、加湿したりする必要はない。尚、乾燥により形成されるプライマー被膜の厚さは、乾燥前の塗膜の厚さと略同じである。
【0013】
接着剤塗布工程において接着剤を塗布する方法は、接着剤の種類、性状、粘度等にもより特に限定されない。例えば、接着剤が高粘度であるときは刷毛塗り、低粘度であるときはスプレー塗布が好ましい。また、靴底の補修面の面積は小さい。そのため、所要面に効率よく接着剤を塗布するためには刷毛塗りによる塗布が簡便であって好ましい。
【0014】
接着剤は、(A)形成されたプライマー被膜の表面と、(B)プライマー被膜が形成されていない補修面又は(B)プライマー被膜が形成されていない靴底補修用成形品の補修面に接合される面と、のうちの少なくとも一方に塗布される。即ち、接着剤は、(a)プライマー被膜が、靴底の補修面と、靴底補修用成形品の補修面に接合される面との両面に形成されているときは、少なくとも一方のプライマー被膜の表面に塗布される。また、プライマー被膜が、靴底の補修面と、靴底補修用成形品の補修面に接合される面とのいずれか一方に形成されているときは、接着剤層は、(b)プライマー被膜の表面と、プライマー被膜が形成されていない靴底の補修面と、の少なくとも一方、又は(b)プライマー被膜の表面と、プライマー被膜が形成されていない靴底補修用成形品の補修面に接合される面と、の少なくとも一方に塗布される。更に、略同一組成の接着剤が接合されることとなる両面に塗布されることが好ましい。これにより、補修面と靴底補修用成形品とが強固に接合される。塗布された接着剤の塗膜の厚さは特に限定されない。この塗膜の厚さは、100〜500μm、特に200〜400μm(上述の各面のうちの2面に塗布される場合は、片面の厚さであるとする。)であることが好ましい。塗膜の厚さが100〜500μmであれば、補修面と靴底補修用成形品とを強固に接合させることができる。
【0015】
接着剤としては、合成ゴム、合成樹脂等を溶剤に溶解させた溶液タイプの接着剤、又は合成ゴム、合成樹脂等を水等の媒体に分散させたエマルションタイプの接着剤が使用されることが多い。用いる接着剤の種類は特に限定されず、靴底の材質、靴底補修用成形品の材質等によって、接合させ易い接着剤を選択して用いることが好ましい。接着剤の具体例としては、クロロプレンゴム系接着剤、スチレン−ブタジエンゴム系接着剤、ニトリルコム系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤等が挙げられる。これらのうちでは、クロロプレンゴム系接着剤等が特に好ましい。
【0016】
圧着工程では、補修面を有する靴底と、靴底補修用成形品とを密着させ、平板プレス等により圧着させる。圧着時の圧力は特に限定されず、0.2〜0.6MPa、特に0.3〜0.5MPaとすることができる。また、圧着時に、接着剤の種類等によっては、より強固に接合させるため必要に応じて加熱してもよい。この圧着後、通常、養生させて、補修面を有する靴底と、靴底補修用成形品とをより十分に接合させる。養生の温度は特に限定されず、室温等の雰囲気温度(例えば、5〜40℃、特に20〜30℃)でよい。養生は少なくとも15時間、特に20時間とすることができ、30時間を超えて養生してもよいが、特にその必要はない。
【0017】
(2)他の本発明の靴底の補修方法
補修剤を肉盛りする他の本発明の靴底の補修方法は、以下の工程を備える。
(A)補修面に、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を塗布する塗布工程、
(B)プライマー用組成物を乾燥させてプライマー被膜を形成する被膜形成工程、
(C)プライマー被膜上にゴム組成物からなる補修剤を肉盛りする肉盛り工程、
【0018】
上記(A)塗布工程及び上記(B)皮膜形成工程は、靴底補修用成形品を用いる[1]、(1)本発明の靴底の補修方法における各々の工程と同様であり、前述のそれぞれの工程に係る記載をそのまま適用することができる。
【0019】
肉盛り工程では、形成されたプライマー被膜上にゴム組成物からなる補修剤を肉盛りする。
ゴム組成物からなる補修剤は特に限定されず、靴の補修に用いられる各種の補修剤を使用することができる。ゴム組成物からなる補修剤としては、各種のゴムを主成分とし、これに補強剤等の添加剤が配合されたゴム組成物を用いることができる。
【0020】
ゴムとしては、ブタジエン−スチレンゴム,ブタジエンゴム,イソプレンゴム,クロロプレンゴム,アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の合成ゴム、及び天然ゴムなどが挙げられる。これらのゴムは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、通常、1種のみが用いられる。これらのうちでは、肉盛り後の弾性が大きいブタジエン−スチレンゴム及び天然ゴムが好ましい。また、ブタジエン−スチレンゴムは、天然ゴムと比べて耐磨耗性、低温特性、耐熱性及び耐油性等に優れ、且つ安価であるためより好ましい。
【0021】
添加剤としては、補強剤、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、酸化防止剤及び着色剤等が挙げられる。補強剤としては、カーボンブラック,タルク、炭酸カルシウム,シリカ,二酸化チタン等を用いることができる。補強剤を配合することにより、補修剤の流動性を調整することができるとともに、硬化後の寸法安定性及び機械的強度等を向上させることもできる。また、靴底が黒色であるときは、補強剤としてはカーボンブラックが好ましく、カーボン繊維を用いることもできる。カーボンブラック及びカーボン繊維は黒色であるため着色剤ともなり、且つ補修後の靴底の寸法安定性、耐熱性、剛性及び耐磨耗性等をより向上させることもできる。
【0022】
加硫剤としては、有機過酸化物,トリアジン化合物等が挙げられる。また、加硫促進剤としては、ヘキサメチレンテトラミン,エチリデンアニリン等が挙げられる。更に、可塑剤としては、芳香族系,ナフテン系,パラフィン系等の油剤が挙げられる。また、酸化防止剤としては、イミダゾール類,フェノール類等が挙げられる。尚、靴底の色調に応じた着色剤をゴムの種類等によって適宜配合することもできる。
【0023】
また、補修剤は、へら、こて等を用いて、補修面への塗布を繰り返す等の方法により肉盛りすることができる。この場合、靴底の磨耗量に応じて肉盛り量を調整して靴底を平坦にすることができる。更に、磨耗した靴底の外縁に沿って靴底の側面に型枠を取り付け、片枠内に肉盛りすることにより、踵及び爪先等の靴の形状に応じた補修をすることができる。このような方法によれば、補修後の美観にも優れる。
【0024】
補修剤は、上述のように、補修面に塗布されて肉盛りされる。そのため、補修剤は、へら、こて等で肉盛りすることができる適度な硬さを有している必要がある。そのような補修剤とするためには、ゴム組成物を溶剤に溶解させることが好ましい。溶剤としては、炭化水素溶剤を使用することができる。炭化水素溶剤は特に限定されず、ゴムの種類等によって適宜選択して用いることが好ましい。
【0025】
炭化水素溶剤としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素を用いることができる。脂肪族炭化水素溶剤としては、n−へキサン,イソへキサン,3−メチルペンタン等が挙げられる。また、脂環式炭化水素溶剤としては、シクロへキサン,メチルシクロヘキサン等が挙げられる。更に、芳香族炭化水素溶剤としては、ベンゼン,トルエン,キシレン,エチルベンゼン等が挙げられる。これらの溶剤は1種のみでもよく、補修剤の乾燥速度の調整等を目的として2種以上を併用してもよい。
【0026】
補修剤の炭化水素溶剤への溶解量は、ゴムの種類及び補修剤の所要の硬さ等によって適宜調整することが好ましい。補修剤と炭化水素溶剤との合計量を100質量%とした場合に、炭化水素溶剤は35〜65質量%、特に40〜60質量%であることが好ましい。炭化水素溶剤の含有量が35〜65質量%であれば、補修剤が硬くなり過ぎて肉盛りし難くなることがない。また、補修剤が軟らかくなり過ぎて肉盛りし難くなることもない。更に、炭化水素溶剤が蒸散した後の補修剤の収縮が大きくなることもなく、弾力性が乏しくなることもない。
【0027】
尚、本発明の靴底の補修方法及び他の本発明の靴底の補修方法では、靴底の補修面及び/又は靴底補修用成形品の表面にプライマー用組成物が塗布され、プライマー被膜が形成される。このプライマー被膜によって、靴底の補修面と、靴底補修用成形品及び肉盛りされた補修剤とをより強固に接合させることができる。従って、靴底の補修面及び靴底補修用成形品が接合させ難い材質であるときに、プライマー用組成物を用いることによる作用、効果がより発現される。
【0028】
上述のように接合させ難い材質としては、例えば、疎水性シリカ、フッ素系樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、シリコーン油、パフィンワックス等の各種のワックスなどが配合された靴底の補修面及び靴底補修用成形品が挙げられる。特に、疎水性シリカが配合されたブタジエン−スチレンゴム等の、靴底補修用成形品として用いられることが多い材質であるときは、プライマー用組成物を用いないと、補修面と、靴底補修用成形品及び肉盛りされた補修剤とを所要の強度で接合させることができない。
【0029】
[2]靴底補修体
本発明の靴底補修体は、靴底補修用成形品を用いる靴底補修体であり、他の本発明の靴底補修体は、補修剤を肉盛りしてなる靴底補修体である。
(1)本発明の靴底補修体
靴底補修用成形品を用いる本発明の靴底補修体は、補修面を有する靴底と、補修面及び靴底補修用成形品の表面のうちの少なくとも一方に、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を用いて形成されたプライマー被膜とを備える。また、プライマー被膜の表面と、プライマー被膜が形成されていない補修面又はプライマー被膜が形成されていない靴底補修用成形品の補修面に接合される面と、のうちの少なくとも一方に形成された接着剤層と、接着剤層に接合された靴底補修用成形品とを備える。
【0030】
補修面を有する靴底は、踵、爪先等の靴底の全面である。特に、踵、爪先等の摩耗又は欠損し易い箇所が補修面になることが多い。補修面及び靴底補修用成形品の表面のうちの少なくとも一方には、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を用いて形成されたプライマー被膜が形成される。プライマー被膜は、例えば、前記[1]、(1)本発明の靴底の補修方法における被膜形成工程と同様の方法により形成することができ、プライマー被膜の形成については、前述の被膜形成工程に係る記載をそのまま適用することができる。
【0031】
また、プライマー被膜の表面と、プライマー被膜が形成されていない補修面又はプライマー被膜が形成されていない靴底補修用成形品の補修面に接合される面と、のうちの少なくとも一方には接着剤層が形成される。接着剤層は、例えば、前記[1]、(1)本発明の靴底の補修方法における接着剤塗布工程及び圧着工程と同様の方法により形成することができる。接着剤の種類、接着剤が塗布される面、塗布方法及び圧着方法については、前述の接着剤塗布工程及び圧着工程に係る記載をそのまま適用することができる。
【0032】
靴底補修用成形品は接着剤層に接合される。靴底補修用成形品は、前記[1]、(1)本発明の靴底の補修方法における圧着工程と同様の方法により接着剤層に接合される。即ち、圧着工程において接着剤塗膜と靴底補修用成形品とが圧着され、接着剤層が形成される。それとともに、靴底補修用成形品がプライマー皮膜及び接着剤層を介して補修面に接合される。接着剤の種類等によっては、より強固に接合させるため必要に応じて加熱される。また、圧着後、通常、養生させて、補修面を有する靴底と、靴底補修用成形品とをより十分に接合させる。この加熱の条件及び養生の条件については、前述の記載をそのまま適用することができる。
【0033】
(2)他の本発明の靴底補修体
補修剤を肉盛りする他の本発明の靴底補修体は、補修面を有する靴底と、補修面に、シアノアクリレートを含有するプライマー用組成物を用いて形成されたプライマー被膜とを備える。そして、プライマー被膜上に補修剤が肉盛りされて形成された補修部を備える。
【0034】
補修面及びプライマー被膜については、上述の本発明の靴底補修体の場合と同様である。また、補修部は、プライマー被膜上に補修剤が肉盛りされて形成される。補修剤としては、前記[1]、(2)他の本発明の靴底の補修方法において用いられる補修剤と同様に、各種のゴムを主成分とし、これに補強剤等の添加剤が配合されたゴム組成物を用いることができる。更に、補修部は、補修剤が肉盛りされて形成される。この肉盛りの方法も、前記[1]、(2)の他の本発明の靴底の補修方法における肉盛り方法と同様とすることができる。
【0035】
[3]靴底の材質
本発明の靴底の補修方法及び靴底補修体、並びに他の本発明の靴底の補修方法及び靴底補修体では、靴底の材質は特に限定されず、各種の合成ゴム及びその発泡体、各種の合成樹脂及びその発泡体等が挙げられる。具体的には、ブタジエン−スチレンゴム,ブタジエンゴム,イソプレンゴム,クロロプレンゴム,アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の合成ゴム及び天然ゴム、並びにこれらのゴムの発泡体を用いることができる。また、ポリウレタン樹脂、エチレン−ビニルアセテート共重合樹脂等の合成樹脂、及びこれらの樹脂の発泡体を用いることができる。尚、上述の靴底の材質を勘案し、より接合させ易い靴底補修用成形品及び補修剤を選択して用いることが好ましい。また、靴底は単層構造でもよく、多層構造でもよい。
【0036】
[4]プライマー用組成物
本発明の靴底の補修方法及び靴底補修体、並びに他の本発明の靴底の補修方法及び靴底補修体では、シアノアクリレートを含有するプライマー組成物が用いられる。
シアノアクリレートは特に限定されず、各種のシアノアクリレートを用いることができる。シアノアクリレートとしては、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキルシアノアクリレートが用いられることが多い。このアルキルシアノアクリレートとしては、シアノアクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル及びイソブチルエステル等が挙げられる。
【0037】
また、シアノアクリレートとしては、上述の他、シアノアクリル酸のクロロエチル、アリル、プロパギル、n−ペンチル、n−ヘキシル、アミル、2−メチル−3−ブテニル、2−ペンテニル、6−クロロヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、テトラヒドロフルフリル、2−ヘキセニル、4−メチル−ペンテニル、3−メチル−2−シクロヘキセニル、ノルボルニル、ヘプチル、シクロヘキサンメチル、シクロヘプチル、1−メチル−シクロヘキシル、2−メチル−シクロヘキシル、3−メチル−シクロヘキシル、2−エチル−ヘキシル、n−オクチル、2−オクチル、シクロオクチル、シクロペンタンメチル、n−ノニル、イソノニル、オキソノニル、n−デシル、イソデシル、n−ドデシル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−エトキシ−2−エトキシエチル、2−ブトキシ−2−エトキシエチル、2、2、2−トリフルオロエチル、ヘキサフルオロイソプロピル、ラウリル、イソトリデシル、ミリスチル、セチル、ステアリル、オレイル、ベヘニル、ヘキシルデシル、オクチルドデシル、ベンジル、クロロフェニル、2−ペンチルオキシエチル、2−ヘキシルオキシエチル、2−シクロヘキシルオキシエチル、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エチル、及び2−フェノキシエチル等のエステルが挙げられる。
【0038】
プライマー組成物には、前述の増粘剤の他、各種の添加剤が配合される。添加剤としては、アニオン重合促進剤、安定剤、着色剤、溶剤、強度向上剤等が挙げられる。これらの添加剤は、目的等に応じて、接着剤組成物の硬化性及び接着強さ等を損なわない範囲で適量配合することができる。
【0039】
増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、アクリルゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、セルロースエステル等が挙げられる。アニオン重合促進剤としては、ポリアルキレンオキサイド類、クラウンエーテル類、シラクラウンエーテル類、カリックスアレン類、シクロデキストリン類及びピロガロール系環状化合物類等が挙げられる。安定剤としては、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸等のアニオン重合禁止剤、ハイドロキノン、カテコール及びピロガロール等のラジカル重合禁止剤などが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1
中底に相当する被着材として再生中板(材質;コルク)を用いた。また、踵部に相当する被着材としてVibram社製ソール(材質;ブタジエン−スチレン共重合ゴムに疎水性シリカが配合されている。)を用いた。そして、Vibram社製ソールの片面に、粘度300mPa・s(25℃)のエチルシアノアクリレート(東亞合成社製、商品名「アロンアルファ#232」)を刷毛により塗布し、膜厚30μmのプライマー塗膜を形成した。その後、室温(23±1℃)で5分間乾燥させた。
【0041】
次いで、再生中板の片面及びVibram社製ソールのエチルシアノアクリレート塗布面に、クロロプレンゴム系接着剤(東亞合成社製、商品名「エバーグリップ5670」)を刷毛により塗布し、それぞれ膜厚約300μmの塗膜を形成した。その後、室温(23±1℃)で5分間乾燥させた。乾燥後、再生中板とVibram社製ソールの接着剤塗布面同士を密着させた。次いで、平板プレスにより0.4MPaの圧力で圧着させ、室温(23±1℃)で24時間養生して試験片を作製した。
【0042】
その後、試験片の180度剥離強度を引張試験機(島津製作所製、型式「アートグラフAGS−X」)により測定した。試験条件は、室温(23±1℃)で引張速度100mm/分とした。その結果、剥離強度は42N/25mmとなり、再生中板が材料破壊を起こしていた。このように、再生中板とVibram社製ソールとは強固に接合されており、プライマー用組成物を用いることによる作用、効果が確認された。
【0043】
実施例2
接着剤をK0MMERLING社製、商品名「Hooco NEOTEX」とした他は、実施例1と同様にして試験片を作製し、同様の方法により180度剥離強度を測定した。その結果、剥離強度は33N/25mmとなり、再生中板が材料破壊を起こしていた。このように、再生中板とVibram社製ソールとは強固に接合されており、プライマー用組成物を用いることによる作用、効果が確認された。
【0044】
比較例1
クロロプレン系靴補修用プライマーを用いた他は、実施例1と同様にして試験片を作製し、同様の方法により180度剥離強度を測定した。その結果、剥離強度は18N/25mmとなり、Vibram社製ソール側からの界面破壊を起こしていた。
【0045】
比較例2
Vibram社製ソールにエチルシアノアクリレートを塗布せず、プライマー層を形成しなかった他は、実施例1と同様にして試験片を作製し、同様の方法により180度剥離強度を測定した。その結果、剥離強度は15N/25mmとなり、Vibram社製ソール側からの界面破壊を起こしていた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、靴底の材質に拘わらず、靴底の補修面に補修剤又は靴底補修用成形品を強固に接合させることができ、各種の靴の靴底の補修の技術分野において利用することができる。