(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピーク調整部が、前記合計値がピーク値となる時間の需要電力の一部を他の時間に振り分け、前記ピーク値を低減させる最適化を行うことを特徴とする請求項1に記載の電力設備運転計画システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、この発明の実施形態による電力設備運転計画システム1を利用した複数施設に対する統合的な需要電力の管理を説明する図である。
図2において、電力設備運転計画システム1は、2個以上の複数の施設の需要電力を統合的に管理するシステムであり、需要電力に対応する第1評価値及び第2評価値を各々異なる最適化処理を行い、各施設の設備の運転計画を作成する。この電力設備運転システム1は、ピーク調整部11、コスト調整部12、制限判定部13及び記憶部14を備えている。また、電力設備運転システム1は、施設A、施設B、施設C及び施設Dの各々における需要電力の管理を、統合的に第1の評価値及び第2の評価値を最適化して行っている。以下の実施形態の説明は、電力設備運転計画システム1が施設A、施設B、施設C及び施設Dを管理するとして説明する。施設A、施設B及び施設Cの各々には、それぞれEMS(Energy Management System;エネルギーマネジメントシステム)101、EMS102、EMS103が設けられている。施設DにはEMSが設けられていない。
【0016】
電力設備運転計画システム1は、すでに述べたように管理下にある施設に対して、需要電力に対応する2つの評価値(第1の評価値及び第2の評価値)を2段階の最適化処理により、統合的にこの2つの評価値に対する最適化を行う。本実施形態においては、第1の評価値を需要電力における買電電力(買電電力の電力値)とし、第2の評価値を各施設における需要電力を得るための運用コストとして説明する。しかしながら、第1の評価値及び第2の評価値の各々は、本実施形態における例に限られず、例えば、CO2の排出量、総需要電力など、需要電力及び電力を得るために消費されるもののいずれに設定しても良い。
【0017】
ピーク調整部11は、制御の周期(所定幅の時間範囲、以下時間)毎、例えば1時間毎に、施設A、施設B、施設C及び施設Dの各々における買電電力である時間買電電力を加算し、各時間毎の買電電力の合計値である時間買電電力合計を算出する。
そして、ピーク調整部11は、所定の第1の評価値である各時間の時間買電電力合計から最大の買電電力値である時間買電電力合計をピーク値として検出する。また、ピーク調整部11は、この時間買電電力合計のピーク値を低減する最適化処理を線形計画法などにより行い、第1の評価値の最適化処理の結果を施設毎の時間買電電力が記述された基本施設買電電力データとして出力する。ここで、ピーク調整部11は、最適化処理後における最適化されたピーク値を制限ピーク値として、制限判定部13に対して出力する。
【0018】
コスト調整部12は、基本施設買電電力データを元に、個別の施設における設備を稼働させた際における所定の第2の評価値の最適化を、ピーク調整部11と同様に線形計画法などにより行い、時間毎の買電電力が示された施設電力需要データを生成し、制限判定部13に対して出力する。この第2の評価値の最適化は、例えば、この第2の評価値が各施設の需要電力を得るための運用コストであれば、1日におけるコスト値が低減されるように最適化を行う。また、CO
2排出量であれば電力をCO
2量に換算し、このCO
2排出量が低減されるように最適化を行う。また、施設の設備で使用する電力を得るための運用コストを評価値とし、運用コストが低減されるように最適化を行う。また、他に一次エネルギー消費量を低減する最適化などにも応用できる。
また、コスト調整部12は、運用コストが最適化された時間毎の需要電力が示された施設需要電力データを、制限判定部13に対して出力する。
【0019】
上述したように、コスト調整部12は、時間毎の電力需要を1日を通した施設の設備の運転計画を、施設買電電力データとして生成する。また、最適化は、各時間毎の設備の需要電力に対する運用コストを加算し、時間毎の施設における運用コストの合計値を求め、1日を通してこの時間毎の評価値を加算し、この最終的に得られた評価値の合計値が低減されることを意味している。また、本実施形態においては、必要な需要電力を踏まえて、運用コストの算出を1日単位を行っているが、需要電力に対して数日先の負荷予測が十分な精度で行える場合、週間毎の計画を立てるなど、1日より長い期間の最適化が可能となる。
【0020】
制限判定部13には、施設A、施設B、施設C及び施設Dの各々の施設買電電力データがコスト調整部12から供給される。制限判定部13は、供給された施設A、施設B、施設C及び施設Dの施設買電電力データにおける買電電力値を、時間毎に加算して時間毎の買電電力合計値を得る。また、制限判定部13は、算出した時間毎の買電電力合計値からピーク値を検出する。制限判定部13は、検出したピーク値と、ピーク調整部11から供給された制限ピーク値とを比較する。このとき、制限判定部13は、買電電力合計値が制限ピーク値を超えている場合、統合的な最適化が行われなかったとして、コスト調整部12に対して、各施設における運用コストの最適化を再度行うことを指示する。
【0021】
記憶部14は、施設A、施設B、施設C及び施設Dの各々に対応して、所定の周期毎(例えば1日の1時間毎)の需要予測などにより求めた施設の時間買電電力、施設における負荷設備(例えば、後述する一般負荷)の各々の所定の周期毎の時間設備需要電力、施設における発電設備(例えば、後述するガスエンジン発電機)の発電能力、施設におけるエネルギ貯蔵設備(後述する蓄電設備、氷蓄熱空調システム)の蓄電能力などが記憶されている。
【0022】
<ピーク調整部11における最適化処理>
図2は、
図1における施設A、施設B、施設C及び施設Dの各々の設備構成を示す図である。
図2(a)は、施設Aにおける設備を示す図である。
図2(b)は、施設Bにおける設備を示す図である。
図2(c)は、施設Cにおける設備を示す図である。
図2(d)は、施設Dにおける設備を示す図である。本実施形態においては、この
図2に示した施設A、施設B、施設C及び施設Dの各々の設備の運転計画を策定することにより、第1の評価値である買電電力の最適化を行う。
【0023】
次に、ピーク調整部11における買電電力の電力値の最適化処理の動作の説明の前に、このピーク調整部11が線形計画法により需要電力の制御を行う各施設の対象の設備を
図2を用いて説明する。
施設Aには、
図2(a)に示されるように、一般負荷A_1と、蓄電設備(BESS:Battery Energy Storage System)A_2と、氷蓄熱空調システム(ISAC:Ice Storage Air Conditioner)A_3と、ヒートポンプ空調機(HPC:Heat Pump Chiller)A_4とが備えられている。
【0024】
一般負荷A_1は、部屋の照明、空調及びエレベータなどの負荷である。
蓄電設備A_2は、EMS101の制御により、予め設定された時間に電気エネルギを蓄え、蓄えた電気エネルギを予め設定された時間に必要に応じて供給するために用いられる。蓄電設備A_2は、蓄電時に、需要電力を必要として負荷設備となる。
氷蓄熱空調システムA_3は、電力が安価な夜の時間帯に、夏は氷、冬はお湯を作って蓄えておき、昼間の冷暖房を行う際に氷やお湯の温度を利用して、外調機(不図示)が取り込んだ外気を室内温度に合わせて調整する。また、氷蓄熱空調システムA_3は、蓄熱を行うために需要電力を必要とするため、蓄熱時には負荷設備となる。
ヒートポンプ空調機A_4は、負荷設備であり、内部のパイプに充填された媒体の温度を上げる加熱処理、および、媒体の温度を下げる冷却処理を行い、加熱処理あるいは冷却処理された媒体の温度を利用して、外調機(不図示)が取り込んだ外気を室内温度に合わせて調整する。
【0025】
施設Bには、
図2(b)に示されるように、一般負荷B_1と、ガスエンジン(GE:Gas Eengine)発電機B_2と、蓄電設備B_3とが備えられている。
一般負荷B_1は、一般負荷A_1と同様に、部屋の照明、空調及びエレベータなどの負荷である。
ガスエンジン発電機B_2は、一般的に用いられているガスエンジンを用いた発電機であり、空気と燃料ガスとを混合させて燃料としてピストンを駆動させてエンジンを回転させて発電を行う。
蓄電設備B_3は、蓄電設備A_2と同様の構成であり、EMS102の制御により、予め設定された時間に電気エネルギを蓄え、蓄えた電気エネルギを予め設定された時間に必要に応じて供給するために用いられる。蓄電設備B_3は、蓄電を行うための充電において需要電力を必要とするため、蓄電時には負荷設備となる。
【0026】
施設Cには、
図2(c)に示されるように、一般負荷C_1と、ガスエンジン発電機C_2とが備えられている。
一般負荷C_1は、一般負荷A_1と同様に、部屋の照明、空調及びエレベータなどの負荷である。
ガスエンジン発電機C_2は、ガスエンジン発電機B_2と同様に、一般的に用いられているガスエンジンを用いた発電機である。
施設Dには、
図2(d)に示されるように、一般負荷D_1が備えられている。
一般負荷D_1は、一般負荷A_1と同様に、部屋の照明、空調及びエレベータなどの負荷である。
【0027】
次に、
図3は、買電電力のピーク値の最適化を説明するグラフである。
図3(a)は、ピーク調整部11が記憶部14から読み出した各施設の需要電力における時間買電電力を時間毎に加算し、時間毎の時間買電電力合計を示しており、縦軸が時間買電電力合計を示し、横軸が時間を示している。
図3(b)は、買電電力の最適化後の時間毎の時間買電電力合計を示しており、縦軸が時間買電電力合計を示し、横軸が時間を示している。
図3(a)及び
図3(b)の各々において、例えば1日を24分割し、すなわち1時間単位で分割し、それぞれの分割単位に対して制御を行う周期の時間として番号を付し、0時から1時を時間番号T0とし、1時から2時を時間番号T1とし、2時から3時を時間番号T2とし、…、22時から23時を時間番号T22とし、23時から0時を時間番号T23とし、1時間毎の時間買電電力合計を示している。
【0028】
図1に戻り、ピーク調整部11は、施設A、施設B、施設C及び施設Dにおける所定時間毎の合計を求め、この所定時間毎の合計値に基づき、時間買電電力合計のピーク値の低減を目的とし、数理計画法を用いた最適化の演算処理を行う。すなわち、ピーク調整部11は、以下の(1)式から(7)式に示す目的関数、制御変数、制約条件に基づき、数理計画法を用いて需要電力のピーク値の低減の演算を行う。
【0030】
(1)式は、目的関数であり、施設A、施設B、施設C及び施設Dの時間買電電力を、所定時間毎に(時間番号毎に)合計した時間買電電力合計の1日の所定時間におけるピーク値P
peakを最小化することを示している。例えば、
図3(a)においては、時間番号T10の時間買電電力合計がピーク値P
peakとして検出される。
【0032】
(2)式は、制御変数を示しており、制御変数の一つとしては、施設A、施設B、施設C及び施設Dの時間買電電力を、所定時間ごとに合計した時間買電電力合計の1日の所定時間におけるピーク値P
peakである。また、施設A、施設B及び施設Cの各々における電気設備の出力としての制御変数としては次に示す種類がある。制御変数P
A_bess(t)は、施設Aにおける蓄電設備A_2の出力を制御する変数である。制御変数P
A_isac(t)は、施設Aにおける氷蓄熱空調システムA_3の出力を制御する変数である。制御変数P
A_hpc(t)は、施設Aにおけるヒートポンプ空調機A_4の出力を制御する変数である。制御変数P
B_ge(t)は、施設Bにおけるガスエンジン発電機B_2の出力を制御する変数である。制御変数P
B_bess(t)は、蓄電設備B_3の出力を制御する変数である。制御変数P
C_ge(t)は、施設Cにおけるガスエンジン発電機C_2の出力を制御する変数である。制御変数H
A_isac(t)は、氷蓄熱空調システムA_3の放熱量を制御する変数である。各制御変数において、tはシミュレーション期間内の時間を示し、電力を消費する方向を正とする。また、制御変数の添え字として、「A_」、「B_」及び「C_」の各々は、それぞれ施設A、施設B、施設Cの設備であることを示している。また、制御変数の添え字として、「bess」は蓄電設備を示し、「isac」は氷蓄熱空調システムを示し、「hpc」はヒートポンプ空調機を示し、「ge」はガスエンジン発電機を示している。
【0034】
(3)式は、制約条件aであり、施設A、施設B、施設C及び施設Dの需要電力を示している。この制約条件aは、各施設の需要電力を示している。P
A(t)は施設Aの時間買電電力であり、P
B(t)は施設Bの時間買電電力であり、P
C(t)は施設Cの時間買電電力であり、P
D(t)は施設Dの時間買電電力である。また、P
total(t)は、施設A、施設B、施設C及び施設Dの各々の時間買電電力の時間毎の合計値である時間買電電力合計である。また、P
A_bess(t)、P
A_load(t)、P
A_isac(t)及びP
A_hpc(t)の各々は、施設Aにおける蓄電池A_2、一般負荷A_1、氷蓄熱空調システムA_3、ヒートポンプ空調機A_4それぞれの買電電力である。また、P
B_bess(t)、P
B_load(t)、P
A_ge(t)の各々は、施設Bにおける蓄電池B_2、一般負荷B_1、ガスエンジン発電機B_2それぞれの買電電力である。また、P
C_ge(t)、P
B_load(t)の各々は、施設Cにおけるガスエンジン発電機C_2、一般負荷C_1それぞれの買電電力である。P
D_load(t)は、施設Dの一般負荷の買電電力である。また、P
B_load(t)は、施設Aにおける、施設B、施設C及び施設Dの各々の時間買電電力の時間毎の合計値である時間買電電力合計である。
【0036】
(4)式は、制約条件bであり、施設Aにおける氷蓄熱空調システムA_3及びヒートポンプ空調機A_4の熱供給の制約を示している。この(4)式において、H
A_load(t)は施設Aにおける氷蓄熱空調システムA_3の熱需要を示している。H
A_hpc(t)は、ヒートポンプ空調機A_4の放熱量(消費電力と気温の関数)を示している。H
A_isac(t)は、氷蓄熱空調システムA_3の放熱量(消費電力と気温の関数)を示している。
【0038】
(5)式は、制約条件cであり、施設Aにおける蓄電設備A_2の蓄電量の制約を示している。E
A_bess(t)は、施設Aの蓄電設備A_2のbess蓄電量を示している。η
bess(t)は、蓄電設備A_2のbess充放電効率を示している。E
cap_A_bess(t)は、施設Aにおける蓄電設備A_2のbess利用可能蓄電量を示している。
また、この制約条件cには、施設Bにおける蓄電設備B_3の制約条件が示されていないが、施設Bの蓄電設備B_3のbess蓄電量E
B_bess(t)、蓄電設備B_3のbess充放電効率η
bess(t)、及び蓄電設備B_3のbess利用可能蓄電量E
cap_B_bess(t)が、施設Aの蓄電設備A_2と同様に設定されている。
【0040】
(6)式は、制約条件dであり、施設Aにおける空調熱源設備の氷蓄熱空調システムA_3の蓄熱量の制約を示している。Q
A_isac(t)は、氷蓄熱空調システムA_3の蓄熱量の制約を示している。G
A_isac(t)は、氷蓄熱空調システムA_3の生産熱量(消費電力と気温の関数)の制約を示している。η
isac(t)は、氷蓄熱空調システムA_3の蓄熱効率を示している。Q
cap_A_isac(t)は、氷蓄熱空調システムA_3の蓄熱槽の定格容量を示している。
【0042】
(7)式は、時間買電電力合計P
total(t)の上限値P
peakを示すものである。時間買電電力合計P
total(t)が上限値未満となり、時間買電電力合計P
total(t)のピーク値が最小値となるように最適化が行われる。
すなわち、ピーク調整部11は、上述した目的関数、制御変数及び制約条件を使用した数理計画法により、発電設備、蓄電設備、空調熱源機を用いて、時間買電電力合計P
total(t)のピーク値を低減するように、各施設の1日における時間毎の電源設備運転計画である基本施設買電電力データを決定する。
【0043】
<コスト調整部12における最適化処理>
上述したピーク調整部11における最適化は、ピーク値の低減を行うのみである。一方、このコスト調整部12は、施設A、施設B、施設Cの各々の施設単位において、基本施設買電電力データを元に、所定の第2の評価値に対する最適化を行う。本実施形態においては、この第2の評価値として施設の需要電力をまかなうための運用コストを設定し、各施設の運用コストが低減する最適化処理を線形計画法などにより行う。この運用コストの最適化処理においては、
図3(b)におけるピーク値近傍の時間番号T10から時間番号T12の時間帯以外の時間において運用コストを最適化する運転計画を求める。
ここで、コスト調整部12は、施設A、施設B、施設Cの各々において、施設の時間毎(時間番号毎)の運用コストを算出し、この運用コストの1日における合計を求め、この合計値(後述する運用ソフト合計値C
total)の低減を目的とし、数理計画法を用いた最適化の演算処理を行う。すなわち、コスト調整部12は、以下の(8)式から(10)式に示す目的関数、制御変数、制約条件に基づき、数理計画法を用いて運用コストの合計値の低減の演算を行う。
【0046】
(8)式及び(9)式は、目的関数を示しており、運用ソフト合計値C
totalを最小化することを示している。ここで、運用ソフト合計値C
totalは、施設A、施設B、施設C及び施設Dの運用コストの1日の合計値を示している。また、μ
geは、ガスエンジン発電機B_2及びガスエンジン発電機C_2の発電単価を示している。μ
dayは、昼間の時間帯(例えば、時間番号T7から時間番号T19までの時間帯)における1kWh当たりの電気料金を示している。μ
nightは、夜間の時間帯(例えば、時間番号T20から時間番号T6までの時間帯)における1kWh当たりの電気料金を示している。T
dayは、シミュレーションを行った昼間の時間帯の時間数を示している。T
nightは、シミュレーションを行った夜間の時間帯の時間数を示している。
【0047】
また、制御変数としては、運用ソフト合計値C
totalの上限値と、P
B_ge(t)及びP
C_ge(t)などの(2)式で示した制御変数とがある。
また、制約条件としては、(3)式から(7)式に示す制約条件がある。
コスト調整部12は、上述した線形計画法によって求めた各施設の運転計画データにおける時間毎の需要電力における買電電力を示す施設買電電力データを、制限判定部13に対して出力する。
また、コスト調整部12は、施設買電電力データにおいて制限ピーク値を超える時間買電電力合計が検出されないとの制御情報を、制限判定部13から供給された場合、このときに求めた運転計画データを記憶部14に対して書き込んで記憶させる。
一方、施設買電電力データにおいて制限ピーク値を超える時間買電電力合計が検出された制御情報を、制限判定部13から供給された場合、各施設における運用コストの最適化を再度の行う。
【0048】
<制限判定部13における制限処理>
制限判定部13は、すでに説明したように、コスト調整部12が最適化した1日の時間毎の時間買電電力のデータである施設買電電力データにおいて、施設A、施設B、施設C、施設Dの時間毎の時間買電電力を加算し、時間買電電力合計を求める。そして、制限判定部13は、以下の(10)式を用いた判定処理を行う。
【0050】
(10)式は、コスト調整部12が最適化した後の時間買電電力合計に対する制約条件であり、時間買電電力合計のピーク値が、制限ピーク値を超えないことを示している。制限判定部13は、(10)式の制約条件に対応して、制限ピーク値と、時間買電電力合計との比較を行う。この(10)式において、P
refは、ピーク調整部11における最適化処理で得た制限ピーク値である。
そして、制限判定部13は、ピーク値が制限ピーク値を超えない場合、コスト調整部12の生成した運転計画を記憶部14に書き込んで記憶させ、一方、ピーク値が制限ピーク値を超えた場合、コスト調整部12に対して運用コストの最適化処理を再度行うことを指示する制御信号を出力する。
この結果、コスト調整部12は、ピーク値となった時間に制限等を加えることにより、他の時間に需要電力の需要の振り分けを行うように、再度の最適化処理を行う。
【0051】
上述したように、本実施形態によれば、第1段階の最適化処理において、第1の評価値の時間買電電力合計買電電力の最適化を行い、この最適化結果で得られたピーク値を、第1の評価値の最適化の最小のピーク値として制限ピーク値として設定する。そして、本実施形態によれば、第2段階の最適化処理において、第2の評価値である1日の運用コストを最小化するという最適化を行い、この結果得られた時間買電電力合計が制限ピーク値を超えないようにする制約条件を設定している。
【0052】
この結果、本実施形態によれば、第1の評価値の最適化及び第1の評価値の最適化を満足した第2の評価値の最適化を行うため、第1の評価値及び第2の評価値に対する一括した最適化を行う場合に比較して、複数の施設の統合的な需要電力の制御を行う運転計画の生成において、容易にかつ高速に第1の評価値及び第2の評価値の双方に対する最適化を行うことができる。この運転計画に基づいて、施設A、施設B及び施設Cの各々においては、EMS101、EMS102、EMS103のそれぞれが施設内の設備の運転制御を行い、施設Dにおいては作業員が施設内の設備の運転制御を行う。
【0053】
次に、
図4は、本実施形態の電力設備運転計画システム1が行う第1の評価値及び第2の評価値の2段階の最適化処理の動作例を示すフローチャートである。
ステップS1:
ピーク調整部11は、施設A、施設B、施設C及び施設Dの各々の設備における時間毎の需要電力を記憶部14から読み出す。
また、ピーク調整部11は、施設A、施設B、施設C及び施設D毎に、時間毎の需要電力を加算して時間需要電力を求め、この時間需要電力から施設において供給できる時間毎の供給電力を減算し、各施設毎の時間買電電力を求める。
【0054】
ステップS2:
ピーク調整部11は、施設A、施設B、施設C及び施設Dの各々の時間買電電力を時間毎に加算し、各時間における時間買電電力合計を求める。
そして、ピーク調整部11は、時間番号T0から時間番号T23の各々における時間買電電力合計の最も大きい電力値をピーク値として検出する。
ピーク調整部11は、すでに述べたように、各施設における設備の需要電力の調整を行い、時間買電電力合計を低減する最適化処理を行う。すなわち、ピーク調整部11は、買電電力の最適化を行う際、ピーク値を低減する毎に、新たなピーク値を検出し、設備の需要電力をピーク値の時間から、他の時間番号の時間に振り分けることにより低減する処理を行う。
【0055】
ステップS3:
コスト調整部12は、ピーク調整部11から供給された基本施設買電電力データに基づいて、各施設における第2段階の最適化である運用コストの低減処理を行う。
このとき、コスト調整部12は、すでに説明したように、施設毎に発電設備、蓄電設備及び蓄熱設備を用いて、各施設の1日における運転コストが最低となる運転計画データの生成を行う。
そして、コスト調整部12は、運転計画データにおける需要電力における各施設毎の時間買電電力を示す施設買電電力データを、制限判定部13に対して出力する。
【0056】
ステップS4:
制限判定部13は、施設買電電力データから施設A、施設B、施設C、施設Dの各々の時間毎の時間買電電力を抽出し、時間毎に時間買電電力を加算し、時間買電電力合計を求める。
【0057】
ステップS5:
制限判定部13は、時間毎の時間買電電力合計から最大の電力値の時間買電電力合計をピーク値とする。
そして、制限判定部13は、得られたピーク値と、制限ピーク値との比較を行う。このとき、制限判定部13は、ピーク値が制限ピーク値を超えない場合、処理をステップS6へ進める。一方、制限判定部13は、ピーク値が制限ピーク値を超えた場合、再度最適化処理を行う制御信号をコスト調整部12に対して出力し、処理をステップS3へ戻す。
【0058】
ステップS6:
制限判定部13は、買電電力の制限ピーク値を超えずに運用コストの最適化ができたため、運転計画が問題ないことを示す制御信号を、コスト調整部12に対して出力する。
そして、コスト調整部12は、運転計画に問題ないことを示す制御信号が供給されると、作成した運転計画データを記憶部14に書き込んで記憶させる。
【0059】
また、
図1における電力設備運転計画システム1の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより第1の評価値及び第2の評価値を満足させる各施設の設備の運転計画を生成する処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0060】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0061】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。