【0010】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
(特徴1)本明細書で開示される力検知素子の一実施形態は、半導体基板と力伝達ブロックを備えていてもよい。半導体基板の材料は特に限定されるものではないが、一例ではシリコンが用いられてもよい。力伝達ブロックの材料は特に限定されるものではないが、一例ではパイレックス(登録商標)もしくはテンパックス(登録商標)の耐熱ガラス、又はシリコン等を材料とするブロックが用いられてもよい。半導体基板は、溝を横断して伸びているメサ段差に形成されているゲージ部及び溝内に形成されている支持部を有してもよい。力伝達ブロックは、メサ段差の頂面、支持部の頂面及び溝の周縁部の表面に接触してもよい。メサ段差の頂面、支持部の頂面及び溝の周縁部の表面は、同一面内に存在していてもよい。ゲージ部は、ピエゾ抵抗効果によって抵抗値が変化する部分であり、一対の検出用の電極間に接続されている部分である。ゲージ部は、一対の検出用の電極間を流れる電流の大部分が流れる部分である。支持部は、一対の検出用の電極間に接続されておらず、一対の検出用の電極間を流れる電流が流れない部分である。あるいは、支持部は、一対の電極間に接続されているが、一対の検出用の電極間を流れる電流が少なく、出力信号に与える影響が無視できる部分である。これにより力検知素子では、力伝達ブロックを介してメサ段差に加わる圧縮応力に応じた出力信号が得られる。
(特徴2)メサ段差は、溝の周縁部に接続する第1端部と溝の周縁部に接続する第2端部の間を第1方向に沿って伸びていてもよい。このように、力検知素子のゲージ部は、単軸で構成されていてもよい。
(特徴3)支持部は、メサ段差の第1端部と第2端部の間の中間部の側方に配置されている部分を含んでいてもよい。メサ段差の中間部のエッジ部は、最大の圧縮応力が加わる部分である。このため、このメサ段差の中間部の側方に支持部が配置されていると、メサ段差に加わる最大圧縮応力を緩和することができるので、信頼性と感度の間のトレードオフの関係を良好に改善することができる。
(特徴4)第1方向に直交する第2方向に沿って計測したときに、第1端部から力伝達ブロックが他部材に最初に接触する部位までの距離を第1距離とし、第2端部から力伝達ブロックが他部材に最初に接触する部位までの距離を第2距離とし、中間部から支持部までの距離を第3距離とすると、第3距離は第1距離及び第2距離よりも短くてもよい。ここで、他部材とは、力伝達ブロックとは異なる部材という意味であり、半導体基板(溝の周縁部又は支持部)であってもよく、半導体基板とは異なる部材であってもよい。上記関係が成立すると、メサ段差に加わる圧縮応力の長手方向の分布も均一化される。
(特徴5)支持部が、メサ段差に向けて凸状に湾曲していてもよい。メサ段差に加わる圧縮応力の長手方向の分布が良好に均一化される。
(特徴6)第1方向に直交する第2方向に沿って観測したときに、支持部は、メサ段差と溝の周縁部の間の中間地点よりもメサ段差側に配置されている部分を含んでいてもよい。メサ段差のエッジ部に加わる圧縮応力を良好に緩和することができる。
【実施例1】
【0011】
図1〜3に示されるように、力検知素子1は、半導体基板10、一対の電極配座部22,24及び力伝達ブロック30を備えている。
【0012】
半導体基板10は、n型の単結晶シリコンであり、その表面が(110)結晶面である。半導体基板10の表面には、概ね矩形状の溝12A,12Bが形成されている。溝12A,12Bは、一対の第1周縁部15aと一対の第2周縁部15bで画定されている。一対の第1周縁部15aは、第1方向(半導体基板10の<110>方向であり、以下、長手方向という)に対して平行に伸びている。一対の第2周縁部15bは、第1方向に直交する第2方向(半導体基板10の<100>方向であり、以下、幅方向という)に対して平行に伸びている。半導体基板10の表面にはさらに、溝12A,12Bの第2周縁部15bの間を長手方向に沿って直線状に伸びているメサ段差13が形成されている。便宜上、メサ段差13によって分割された溝12A,12Bの一方を「12A」とし、他方を「12B」とする。半導体基板10の表面にはさらに、溝12A,12Bの第2周縁部15bの間を長手方向に沿って伸びている一対の支持部16A,16Bが形成されている。一対の支持部16A,16Bは、メサ段差13に対して平行に伸びている。一方の支持部16Aは一方の溝12Aに配置されており、他方の支持部16Bは他方の溝12Bに配置されている。
【0013】
メサ段差13は、溝12A,12Bの底面からメサ状に突出しており、その高さは約0.5〜5μmである。メサ段差13の頂面は、溝12A,12Bの周縁部15の表面と同一面内に位置している。即ち、メサ段差13は、例えばドライエッチング技術を利用して、半導体基板10の表面に溝12A,12Bを形成した残部として形成される。メサ段差13を含む半導体基板10の表面には、p型不純物が導入されたゲージ部14が形成されている。ゲージ部14の不純物濃度は、約1×10
18〜1×10
21cm
−3である。ゲージ部14は、pn接合によって、n型の半導体基板10から実質的に絶縁されている。
【0014】
支持部16A,16Bは、溝12A,12Bの底面からメサ状に突出しており、その高さは約0.5〜5μmである。支持部16A,16Bの頂面は、溝12A,12Bの周縁部15の表面と同一面内に位置している。即ち、支持部16A,16Bは、例えばドライエッチング技術を利用して、半導体基板10の表面に溝12A,12Bを形成した残部として形成される。支持部16A,16Bには、p型不純物が導入されていてもよいし、p型不純物が導入されていなくてもよい。支持部16A,16Bは、メサ段差13と溝12A,12Bの第1周縁部15aの間の中間地点よりもメサ段差13側に配置されている。なお、支持部16A,16Bにp型不純物が導入されていても、検出電流の大部分はメサ段差13のゲージ部14を流れるので、検出結果に与える影響を実質的に無視することができる。
【0015】
一対の電極配座部22,24は、溝12A,12Bを間に置いて半導体基板10の表面上に配置されており、力伝達ブロック30の配置範囲以外の位置に配置されている。一対の電極配座部22,24の材料には、絶縁体が用いられており、一例では酸化膜が用いられる。第1電極配座部22には、貫通孔22aが形成されている。ゲージ部14の一端は、メサ段差13から長手方向に沿って第1電極配座部22の下方の半導体基板10の表面を伸びて形成されており、貫通孔22aから露出している。第1電極配座部22の表面上に形成される電極(図示省略)は、貫通孔22aを介してゲージ部14の一端に接続される。第2電極配座部24には、貫通孔24aが形成されている。ゲージ部14の他端は、メサ段差13から長手方向に沿って第2電極配座部24の下方の半導体基板10の表面を伸びて形成されており、貫通孔24aから露出している。第2電極配座部24の表面上に形成される電極(図示省略)は、貫通孔24aを介してゲージ部14の他端に接続される。このように、メサ段差13に形成されるゲージ部14は、一対の電極間を直線状に伸びて形成されており、一対の電極間を流れる電流の大部分が流れる部分である。
【0016】
力伝達ブロック30は、直方体形状を有しており、その材料にはガラスが用いられている。力伝達ブロック30の下側表面は、例えば静電接合を利用して、メサ段差13の頂面と支持部16A,16Bの頂面と溝12A,12Bの周縁部15の表面に接合されている。力伝達ブロック30は、溝12A,12Bの周縁部15の全周に亘って周縁部15に接合している。このため、溝12A,12B、メサ段差13及び支持部16A,16Bは、力伝達ブロック30によって封止される。
【0017】
力検知素子1では、力伝達ブロック30を介してメサ段差13に圧縮応力が加わると、メサ段差13に形成されているゲージ部14の電気抵抗がピエゾ抵抗効果によって変化する。このため、一対の電極配座部22,24に形成される電極を介してゲージ部14に一定電流を通電するか一定電圧を印加しておくことによって、圧縮応力に応じた出力信号を得られる。
【0018】
力検知素子1では、メサ段差13の側方に支持部16A,16Bが設けられている。
図4に示されるように、このような支持部16A,16Bが設けられていると、メサ段差13のエッジ部近傍において、力伝達ブロック30の下側表面の湾曲変形が抑えられ、メサ段差13のエッジ部に加わる最大圧縮応力が顕著に低下する。特に、力検知素子1では、支持部16A,16Bがメサ段差13の近傍に配置されており、メサ段差13のエッジ部に加わる応力を良好に緩和することができる。このため、支持部16A,16Bが設けられていない場合(
図21〜
図24参照)と比較すると、メサ段差13の幅方向の中心部に加わる圧縮応力とエッジ部に加わる圧縮応力の差が小さくなる。これにより、メサ段差13に加わる圧縮応力が幅方向において均一化され、メサ段差13に加わる最大圧縮応力と圧縮応力の平均値の差が小さくなる。この結果、力検知素子1の信頼性と感度の間のトレードオフの関係が改善される。
【0019】
例えば、支持部16A,16Bを形成するのに代えて、溝12A,12Bの第1周縁部15aをメサ段差13に近づければ、メサ段差13のエッジ部に加わる圧縮応力を緩和することができるかもしれない。しかしながら、このような形態の場合、溝12A,12Bの面積が小さくなり、力伝達ブロック30を介してメサ段差13の全体に加わる圧縮応力が低下し、検出感度が低下する。このように、支持部16A,16Bを形成する技術は、溝12A,12Bの面積を十分に確保して検出感度を高めながら、メサ段差13のエッジ部に加わる圧縮応力を低下させることで信頼性を向上させることができ、極めて有用な技術である。
【0020】
図5に示される変形例の力検知素子2は、支持部116A,116Bがメサ段差13の中間部の側方にのみ選択的に形成されていることを特徴としている。ここで、メサ段差13が第2周縁部15bに接続する一方の端部を第1端部13aといい、メサ段差13が第2周縁部15bに接続する他方の端部を第2端部13bという。また、長手方向に沿って計測したときに、第1端部13aからの距離と第2端部13bからの距離が等しいメサ段差13の部位を中間部13cという。力検知素子2では、メサ段差13の中間部13cに対して点対称な形態を有している。このため、以下、第1端部13aについての説明は、等価な第2端部13bについての説明も兼ねていることに留意されたい。
【0021】
メサ段差13に加わる圧縮応力の長手方向の分布は、メサ段差13が溝12A,12Bの周縁部15に接続する第1端部13aで小さく、中間部13cで大きい分布となる。このため、メサ段差13に加わる最大圧縮応力は、中間部13cのエッジ部となる。このため、メサ段差13の中間部13cのエッジ部に加わる最大圧縮応力を緩和することで、メサ段差13に加わる圧縮応力の分布がメサ段差13の全体において圧縮応力の分布を均一化することができ、力検知素子2の信頼性と感度の間のトレードオフの関係をさらに改善することができる。
図5に示されるように、力検知素子2では、幅方向に計測したときに、メサ段差13の中間部13cと支持部116A,116Bの間の距離が、メサ段差13の第1端部13aと第1周縁部15aの間の距離よりも短く構成されている。このような形態であると、メサ段差13の中間部13cのエッジ部に加わる最大圧縮応力を選択的に緩和することができるので、メサ段差13に加わる圧縮応力の分布がメサ段差13の全体において均一化され、力検知素子2の信頼性と感度の間のトレードオフの関係がさらに改善される。
【0022】
図6に示される変形例の力検知素子3では、支持部216A,216Bが、メサ段差13に向けて凸状に突出している。力検知素子3では、幅方向に計測したときに、メサ段差13の中間部13cと支持部216A,216Bの間の距離が、メサ段差13の第1端部13aと支持部216A,216Bの間の距離よりも短く構成されている。なお、メサ段差13に加わる圧縮応力は、長手方向に沿って漸次変化している。このため、支持部216A,216Bの形態は、メサ段差13に加わる圧縮応力のそのような変化に応じて適宜に設計されている。これにより、メサ段差13の全体に加わる圧縮応力の分布がメサ段差13の全体においてさらに均一化され、力検知素子3の信頼性と感度の間のトレードオフの関係がさらに改善される。
【0023】
以下、本明細書で開示される技術が適用された力検知素子の様々な変形例を例示する。例えば、
図7の力検知素子4Aに示されるように、支持部316は、メサ段差13に対して線対称な形態でなくてもよい。
【0024】
図8の力検知素子4Bに示されるように、支持部416A,416Bは、長手方向に伸びる複数の部分で構成されていてもよい。また、
図9の力検知素子4Cに示されるように、支持部416A,416Bの複数の部分が、メサ段差13の中間部13cの側方に選択的に設けられていてもよい。なお、
図10の力検知素子4Dに示されるように、支持部416A,416Bが、長手方向において分断されていてもよい。
【0025】
図11の力検知素子4Eに示されるように、支持部516A,516Bは、長手方向に沿って平行でなくてもよい。また、支持部516A,516Bは、メサ段差13に接続されていてもよいし、
図12の力検知素子4Fに示されるように、メサ段差13から離れていてもよい。
【0026】
図13の力検知素子4Gに示されるように、支持部616A,616Bは、長手方向に伸びる部分と幅方向に伸びる部分の組合せで構成されていてもよい。
【0027】
図14の力検知素子4Hに示されるように、支持部716A,716Bは、幅方向に伸びていてもよい。また、支持部716A,716Bは、メサ段差13及び溝12A,12Bの第1周縁部15aに接続されていてもよいし、
図15の力検知素子4Iに示されるように、メサ段差13及び溝12A,12Bの第1周縁部15aから離れていてもよい。また、
図16の力検知素子4Jに示されるように、支持部716A,716Bは、幅方向に伸びる複数の部分で構成されていてもよい。
【0028】
図17の力検知素子4Kに示されるように、支持部816A,816Bは、長手方向に伸びる部分と幅方向に伸びる複数の部分の組合せで構成されていてもよい。また、支持部816A,816Bのうちの長手方向に伸びる部分は、溝12A,12Bの第2周縁部15bに接続されていてもよいし、
図18の力検知素子4Lに示されるように、溝12A,12Bの第2周縁部15bから離れていてもよい。
【0029】
図19の力検知素子4Mに示されるように、支持部916A,916Bは、環状の形態で構成されていてもよい。
【0030】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。