特許第6075256号(P6075256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075256
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】電極の製造方法及び電極の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20170130BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20170130BHJP
   B65H 29/32 20060101ALN20170130BHJP
   B65H 31/34 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M10/0585
   !B65H29/32 B
   !B65H31/34
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-196887(P2013-196887)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-64953(P2015-64953A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2015年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】河端 栄克
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−001146(JP,A)
【文献】 米国特許第04132400(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
B65H 29/32
B65H 31/34
H01M 4/00 − 4/62
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を含む電極を交互に積層して積層体を形成する積層工程を含む電極の製造方法であって、
前記積層工程は、
吸着パッドを用いて位置決め部が配置されたステージ上に前記電極を搬送する搬送工程と、
前記吸着パッドが前記ステージ上で前記電極を離したときに前記電極に向けてエアを供給し、前記電極を前記位置決め部に突き当てる位置決め工程と、を備えていることを特徴とする電極の製造方法。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記エアが通り抜け可能となっていることを特徴とする請求項1記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記エアの供給開始の後、前記吸着パッドが前記ステージ上で次の電極を離すまでに前記エアの供給を停止することを特徴とする請求項1又は2記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記ステージ上での前記電極の積層数に応じて前記エアの流量を増加させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の電極の製造方法。
【請求項5】
正極及び負極を含む電極を交互に積層して積層体を形成する積層装置を備えた電極の製造装置であって、
前記積層装置は、
ステージと、
前記ステージ上に配置された位置決め部と、
前記ステージ上に前記電極を搬送する吸着パッドと、
前記吸着パッドによって前記ステージ上に搬送された前記電極に向けてエアを供給するエア供給部と、
前記吸着パッドが前記ステージ上で前記電極を離したときに前記エア供給部による前記エアの供給を実行させるエア供給制御部と、を備えたことを特徴とする電極の製造装置。
【請求項6】
前記位置決め部は、前記エアが通り抜け可能となっていることを特徴とする請求項5記載の電極の製造装置。
【請求項7】
前記エア供給制御部は、前記エアの供給開始の後、前記吸着パッドが前記ステージ上で次の電極を離すまでに前記エア供給部による前記エアの供給を停止させることを特徴とする請求項5又は6記載の電極の製造装置。
【請求項8】
前記エア供給制御部は、前記ステージ上での前記電極の積層数に応じて前記エアの流量を増加させることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項記載の電極の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の製造方法及び電極の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置などに用いる電極の製造装置では、電極を所定の順序で積層する積層工程が実施される。積層の際の電極の位置合わせを行うための技術としては、例えば特許文献1に記載の薄膜状ワークの積載装置がある。この従来の装置では、正極及び負極を吸着パッドで交互に搬送して重ね合わせ、プレート等で加圧を行うことで電極の積層体を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−1146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の手法では、電極の積層体を加圧したときの反発によって重ね合された電極がずれてしまうことがあった。このような電極のずれは、電極が湾曲している場合や、電極の表面が滑らかな場合に特に生じやすい。そのため、積層時の電極のずれを抑制できる技術が望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、積層時の電極のずれを抑制できる電極の製造方法及び電極の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る電極の製造方法は、正極及び負極を含む電極を交互に積層して積層体を形成する積層工程を含む電極の製造方法であって、積層工程は、吸着パッドを用いて位置決め部が配置されたステージ上に電極を搬送する搬送工程と、吸着パッドがステージ上で電極を離したときに電極に向けてエアを供給し、電極を位置決め部に突き当てる位置決め工程と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
この電極の製造方法では、吸着パッドがステージ上に電極を搬送し、電極を離したときに電極に向けてエアを供給し、電極を位置決め部に突き当てることによって位置決めを行う。この方法によれば、電極を重ねあわせて加圧する方法とは異なり、重ね合された電極が加圧時の反発によってずれてしまうことがなく、積層時の電極のずれを抑制できる。また、電極が湾曲している場合や電極の表面が滑らかな場合にも好適に適用可能である。さらに、この電極の製造方法では、積層前の電極のゲージングも不要であり、工数を削減できると共にゲージングの際の電極エッジへのダメージの発生も回避できる。
【0008】
また、位置決め部は、エアが通り抜け可能となっていることが好ましい。この場合、位置決め部によってエアの流れが乱れることを防止でき、電極を位置決め部に精度良く突き当てることが可能となる。また、位置決め部によるエアの戻りで電極がずれてしまうことを防止できる。
【0009】
また、エアの供給開始の後、吸着パッドがステージ上で次の電極を離すまでにエアの供給を停止することが好ましい。吸着パッドが位置決め部に突き当てられた後もエアの供給を継続することで、電極のずれをより確実に抑制できる。
【0010】
また、ステージ上での電極の積層数に応じてエアの流量を増加させることが好ましい。この場合、既にステージ上に積層された電極にずれが生じることを好適に抑制できる。
【0011】
また、本発明に係る電極の製造装置は、正極及び負極を含む電極を交互に積層して積層体を形成する積層装置を備えた電極の製造装置であって、積層装置は、ステージと、ステージ上に配置された位置決め部と、ステージ上に電極を搬送する吸着パッドと、吸着パッドによってステージ上に搬送された電極に向けてエアを供給するエア供給部と、吸着パッドがステージ上で電極を離したときにエア供給部によるエアの供給を実行させるエア供給制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
この電極の製造装置では、吸着パッドがステージ上に電極を搬送し、電極を離したときに電極に向けてエアを供給し、電極を位置決め部に突き当てることによって位置決めが行われる。これにより、電極を重ねあわせて加圧する場合とは異なり、重ね合された電極が加圧時の反発によってずれてしまうことがなく、積層時の電極のずれを抑制できる。また、電極が湾曲している場合や電極の表面が滑らかな場合にも好適に適用可能である。さらに、この電極の製造装置では、積層前の電極のゲージングも不要であり、工数を削減できると共にゲージングの際の電極エッジへのダメージの発生も回避できる。
【0013】
また、位置決め部は、エアが通り抜け可能となっていることが好ましい。この場合、位置決め部によってエアの流れが乱れることを防止でき、電極を位置決め部に精度良く突き当てることが可能となる。また、位置決め部によるエアの戻りで電極がずれてしまうことを防止できる。
【0014】
また、エア供給制御部は、エアの供給開始の後、吸着パッドがステージ上で次の電極を離すまでにエア供給部によるエアの供給を停止させることが好ましい。吸着パッドが位置決め部に突き当てられた後もエアの供給を継続することで、電極のずれをより確実に抑制できる。
【0015】
また、エア供給制御部は、ステージ上での電極の積層数に応じてエアの流量を増加させることが好ましい。この場合、既にステージ上に積層された電極にずれが生じることを好適に抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、積層時の電極のずれを好適に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る電極の製造方法を実施する電極の製造装置の一実施形態を示す概略図である。
図2図1に示した電極の製造装置のステージ周りの構成を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電極の製造方法及び電極の製造装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1には、本発明に係る電極の製造方法を実施する電極の製造装置の一実施形態を示す概略図である。また、図2は、図1に示した電極の製造装置のステージ周りの構成を示す概略平面図である。図1に示す電極の製造装置1は、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電界質二次電池に用いられる電極を製造する装置である。この製造装置1は、電極の製造ラインに組み込まれ、金属箔に電極ペーストを塗工する塗工工程、金属箔に塗布された電極ペーストを乾燥させる乾燥工程等を経て作製された電極Pを所定の順序で積層する積層装置2を含んで構成されている。
【0020】
積層装置2は、図1に示すように、複数の電極Pが載置された載置部11と、電極Pの積層位置V1と所定の搬送位置V2との間で移動可能なステージ12と、載置部11と積層位置V1との間で移動可能な吸着パッド13とを備えている。また、積層位置V1には、ステージ12上での電極Pの位置決めを行う位置決め部14と、ステージ12上の電極Pに向けてエアを供給するエア供給部15と、エア供給部15によるエア供給を制御するエア供給制御部16とが配置されている。
【0021】
載置部11には、電極Pとして、例えば正極21と負極22とが交互に積み重ねられている。正極21は、例えばアルミニウム箔からなる金属箔と、金属箔の両面に形成された正極活物質層とを有し、例えば平面視で矩形状に形成されている。正極活物質層は、正極活物質とバインダとを含んで形成されている。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。また、正極21の一縁部には、矩形のタブ21aが形成されている(図2参照)。タブ21aは、正極21の一縁部から所定の長さで外方に向かって延びている。
【0022】
本実施形態では、正極21は、負極22に比べて一回り小さい寸法となっており、タブ21aが外部に突出するように負極22と略同寸法の袋状のセパレータ内に収容されている。セパレータの形成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。なお、セパレータは、袋状に限られず、シート状のものを用いてもよい。
【0023】
一方、負極22は、例えば銅箔からなる金属箔と、金属箔の両面に形成された負極活物質層とを有し、平面視で矩形状に形成されている。負極活物質層は、負極活物質とバインダとを含んで形成されている。負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。また、負極22の一縁部には、正極21のタブ21aと重ならない位置に矩形のタブ22aが形成されている(図2参照)。タブ22aは、負極22の一縁部からタブ21aと同じ長さで外方に向かって延びている。
【0024】
ステージ12は、図2に示すように、平面視で電極Pの寸法に対して十分大きい矩形状をなしている。ステージ12は、電極Pの積層を実行する際、不図示の制御部からの制御を受けて搬送位置V2から積層位置V1に移動し、位置決め部14の下部に突き当たった状態となる。また、ステージ12には、互いに対向する2辺の略中央部分に矩形状の切込部12a,12aがそれぞれ形成されている。これらの切込部12a,12aにより、積層された電極Pをステージ12から取り出す際の作業性を良好に確保できる。
【0025】
吸着パッド13は、載置部11からステージ12に電極Pを搬送する装置である。吸着パッド13は、不図示の制御部からの制御を受けて載置部11に載置されている電極Pをステージ12上に順次搬送する。
【0026】
位置決め部14は、ステージ12とは別体に設けられ、図2に示すように、互いに直交する2つの壁部14a,14bにより、例えば平面視でL字状をなしている(図1では、説明の便宜上、位置決め部14におけるステージ手前側部分を省略している)。位置決め部14の高さは、予め想定された電極Pの積層体の高さに対して十分大きくなっており、位置決め部14の幅は、電極Pの辺に対して十分大きくなっている。この位置決め部14は、エア供給部15から供給されるエアが通り抜け可能となるように構成されている。より具体的には、位置決め部14は、一又は複数の通気孔を有していてもよく、メッシュ状となっていてもよい。また、位置決め部14は、櫛歯状となっていてもよい。
【0027】
エア供給部15は、位置決め部14の壁部14a,14bにそれぞれ対向するように、ステージ12の外側にそれぞれ配置されている。エア供給部15は、エア供給制御部16からの制御を受け、吸着パッド13がステージ12上で電極Pを離したときに電極Pに向けてエアを供給する。エアの供給は、供給開始から吸着パッド13がステージ12上で次の電極Pを離すまでの間に停止されればよい。例えばエアの供給開始から所定時間経過後にエアの供給を停止してもよく、吸着パッド13がステージ12から載置部11に戻るタイミングでエアの供給を停止してもよい。
【0028】
また、エア供給制御部16は、エア供給部15からのエアの供給量を制御する。本実施形態では、エア供給制御部16は、例えば吸着パッド13による電極Pの搬送回数をカウントし、ステージ12上での電極Pの積層数に応じてエアの流量を増加させる。
【0029】
なお、エア供給部15は、ステージ12上に電極Pが載置された際に、正極21のタブ21a及び負極22のタブ22aと正対しないように配置されていることが好ましい。また、正極21のタブ21aと負極22のタブ22aとは互いに重ならないため、エア供給部15をステージ12の縁部に沿って移動可能に構成し、正極21が載置される場合と負極22が載置される場合とで、エア供給部15の位置を移動させるようにしてもよい。
【0030】
積層装置2によって積層工程が実施される場合、まず、ステージ12が搬送位置V2から積層位置V1に移動し、ステージ12が位置決め部14に突き当てられる。次に、吸着パッド13が載置部11の電極Pを把持し、ステージ12上に搬送する(搬送工程)。吸着パッド13が電極Pを離すと、エア供給部15によるエアの供給が開始される。これにより、吸着パッド13を離れた電極Pは、自重でステージ12側に載置されると共に、エアによって2つの辺が全長にわたって位置決め部14の壁部14a,14bに突き当てられ、ステージ12上で電極Pの位置が位置決めされる(位置決め工程)。以降、搬送工程と位置決め工程とを繰り返し実行し、所定数の正極21及び負極22を交互に積層することにより、電極Pの積層体が得られる。
【0031】
以上のような手法によれば、電極Pを重ねあわせて加圧する場合とは異なり、重ね合された電極Pが加圧時の反発によってずれてしまうことがなく、積層時の電極Pのずれを抑制できる。また、電極Pが湾曲している場合や電極Pの表面が滑らかな場合にも好適に適用可能である。さらに、この手法によれば、積層前の電極Pのゲージングも不要であり、工数を削減できると共にゲージングの際の電極エッジへのダメージの発生も回避できる。
【0032】
本実施形態では、エアの供給開始の後、吸着パッド13がステージ12上で次の電極Pを離すまでにエアの供給を停止する。このように、吸着パッド13が位置決め部14に突き当てられた後もエアの供給を継続することで、電極Pのずれをより確実に抑制できる。また、本実施形態では、ステージ12上での電極Pの積層数に応じてエアの流量を増加させている。これにより、既にステージ12上に積層された電極Pにずれが生じることを好適に抑制できる。
【0033】
また、本実施形態では、位置決め部14をエアが通り抜け可能となっている。これにより、位置決め部14によってエアの流れが乱れることを防止でき、電極Pを位置決め部14に精度良く突き当てることが可能となる。また、位置決め部14によるエアの戻りで既にステージ12上に積層された電極Pがずれてしまうことを防止できる。
【符号の説明】
【0034】
1…電極の製造装置、2…積層装置、12…ステージ、13…吸着パッド、14…位置決め部、15…エア供給部、16…エア供給制御部、21…正極、22…負極、P…電極。
図1
図2