(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075259
(24)【登録日】2017年1月20日
    
      
        (45)【発行日】2017年2月8日
      
    (54)【発明の名称】電池パックおよび電池パックの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J   7/00        20060101AFI20170130BHJP        
   H01M  10/42        20060101ALI20170130BHJP        
【FI】
   H02J7/00 A
   H01M10/42 P
【請求項の数】6
【全頁数】9
      (21)【出願番号】特願2013-199095(P2013-199095)
(22)【出願日】2013年9月26日
    
      (65)【公開番号】特開2015-65777(P2015-65777A)
(43)【公開日】2015年4月9日
    【審査請求日】2016年1月11日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
          (74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅  義之
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】長谷  隆介
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】都竹  隆広
              
            
        
      
    
      【審査官】
        猪瀬  隆広
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開2013−165569(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2010−151756(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2009−089521(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R  31/36
H01M  10/42−10/48
H02J    7/00−  7/12
H02J    7/34−  7/36
  
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  電池モジュールを監視する監視部と、前記監視部と通信をして前記電池モジュールを制御する電池制御部と、を備え、前記電池制御部と1つ以上の前記監視部とが通信線を介して並列に接続されている電池パックであって、
  前記電池制御部は、前記監視部を識別する識別情報が利用されているか否かを示す利用情報を、前記監視部に送信し、
  前記監視部は、前記電池制御部から前記利用情報を受信すると、前記利用情報を参照して、前記利用情報で利用されていない識別情報である仮識別情報を算出し、前記仮識別情報を前記電池制御部に送信し、
  前記電池制御部は、前記監視部から前記仮識別情報を受信すると、前記仮識別情報を前記利用情報に反映させて記憶部に記憶し、前記利用情報を前記監視部に送信し、
  前記監視部は、前記利用情報を受信すると、前記仮識別情報が受信した前記利用情報に反映されていると判定した場合、前記仮識別情報を前記監視部の識別情報として記憶部に記憶する、
  ことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
  前記監視部は、算出した前記仮識別情報が既に利用されている場合に、再度仮識別情報を算出することを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
  前記電池制御部は、前記監視部から送信された前記仮識別情報が既に利用されている場合に、前記利用情報を再度前記監視部に送信することを特徴とする請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項4】
  電池モジュールを監視する監視部と、前記監視部と通信をして前記電池モジュールを制御する電池制御部と、を備え、前記電池制御部と1つ以上の前記監視部とが通信線を介して並列に接続されている電池パックの制御方法であって、
  前記電池制御部は、前記監視部を識別する識別情報が利用されているか否かを示す利用情報を、前記監視部に送信し、
  前記監視部は、前記電池制御部から前記利用情報を受信すると、前記利用情報を参照して、利用されていない識別情報である仮識別情報を算出し、前記仮識別情報を前記電池制御部に送信し、
  前記電池制御部は、前記監視部から前記仮識別情報を受信すると、前記仮識別情報を前記利用情報に反映させて記憶部に記憶し、前記利用情報を前記監視部に送信し、
  前記監視部は、前記利用情報を受信すると、前記利用情報を参照して、前記仮識別情報が受信した前記利用情報に反映されていると判定した場合、前記仮識別情報を前記監視部の識別情報として記憶部に記憶する、
  ことを特徴とする電池パックの制御方法。
【請求項5】
  前記監視部は、算出した前記仮識別情報が既に利用されている場合に、再度仮識別情報を算出することを特徴とする請求項4に記載の電池パックの制御方法。
【請求項6】
  前記電池制御部は、前記監視部から送信された前記仮識別情報が既に利用されている場合、再度前記利用情報を前記監視部に送信することを特徴とする請求項4または5に記載の電池パックの制御方法。
 
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、電池モジュールの識別情報を設定する電池パックおよび電池パックの制御方法に関する。
 
【背景技術】
【0002】
  電池パックには、電池制御部である電池制御ECU(Electronic Control Unit)と、電池パックが有する電池モジュールの監視部である電池監視ECUと、がCAN(Controller Area Network)バスにより並列に接続されている。そのため、新しい電池モジュールを取り替える場合や、使用済みで劣化があまり進んでいない電池モジュールを他の電池パックで利用する場合に、電池監視ECUに割り振られた識別情報(ID)の再設定が必要になる。また、電池パックを組み立てるときも電池監視ECUの識別情報を設定する必要がある。しかしながら、簡易な方法で識別情報を設定することができない。
【0003】
  例えば、電池制御ECUと電池監視ECUを直列に接続し、接続順を基に電池監視ECUの識別情報を設定する方法が知られているが、その場合にはCANバス以外の専用の信号線が必要になる。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−120347号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  本発明は上記のような実情に鑑みてなされたものであり、電池モジュールの識別情報の設定を容易にできる電池パック、電池制御方法を提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0006】
  本実施の態様のひとつである電池パックは、電池モジュールを監視する監視部と、監視部と通信をして電池モジュールを制御する電池制御部と、を備え、電池制御部と1つ以上の監視部とが通信線を介して並列に接続されている。
【0007】
  電池制御部は、監視部を識別する識別情報が利用されているか否かを示す利用情報を、監視部に送信する。
  監視部は、電池制御部から利用情報を受信すると、利用情報を参照して、利用されていない識別情報である仮識別情報を算出し、仮識別情報を電池制御部に送信する。
【0008】
  電池制御部は、監視部から仮識別情報を受信すると、仮識別情報を利用情報に反映させて記憶部に記憶し、利用情報を監視部に送信する。
  監視部は、利用情報を受信すると、仮識別情報が受信した利用情報に反映されていると判定した場合、仮識別情報を監視部の識別情報として記憶部に記憶する。
 
【発明の効果】
【0009】
  実施の態様によれば、電池モジュールの識別情報の設定を容易にできるという効果を奏する。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、電池パックの一実施例を示す図である。
【
図2】
図2は、利用情報と仮識別情報のデータ構造の一実施例を示す図である。
【
図3】
図3は、電池制御部の動作の一実施例を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、監視部の動作の一実施例を示すフロー図である。
 
【発明を実施するための形態】
【0011】
  以下図面に基づいて、実施形態について詳細を説明する。
  
図1は、電池パックの一実施例を示す図である。
図1に示す電池パック1は、電池制御部2、電池モジュール3a、3b、3c、3d(以降、電池モジュール3と呼ぶこともある)を有している。電池モジュール3それぞれには、組電池4a、4b、4c、4d(以降、組電池4と呼ぶこともある)と組電池4それぞれの状態を監視する監視部5a、5b、5c、5d(以降、監視部5と呼ぶこともある)とを有している。なお、
図1には電力配線については示されていない。
 
【0012】
  なお、電池パック1は車両などに設けることが考えられる。車両は、例えば、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、リフト、電動リーチリフトなどである。
 
【0013】
  電池制御部2は、制御部、記憶部および周辺回路を有し、信号線6(例えば、CANバス)を介して並列に接続されている監視部5と通信をし、電池モジュール3の充放電の監視と制御をする。電池制御部2は、例えば、電池制御ECU(Electronic Control Unit)などが考えられる。電池制御部2の制御部はCPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)など)を用いることが考えられる。記憶部は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリなどが考えられる。なお、記憶部にはパラメータ値、変数値などのデータを記録してもよいし、実行時のワークエリアとして用いてもよい。また、制御部が記憶部を有している場合には記憶部を用いなくてもよい。
 
【0014】
  電池制御部2は、監視部5を識別する識別情報が利用されているか否かを示す情報である後述する利用情報を、監視部5に送信する。利用情報は、識別情報が利用されているか否かを示す情報(利用状況を示す情報)である。
 
【0015】
  電池制御部2は、監視部5から後述する仮識別情報を受信すると、仮識別情報を利用情報に反映させて記憶部に記憶し、利用情報を監視部5に送信する。
  監視部5a、5b、5c、5dは、制御部、記憶部および周辺回路を有し、電池制御部2と通信をし、電池モジュール3の充放電の監視をする。監視部5は、例えば、電池監視ECUなどが考えられる。監視部5の制御部はCPU、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイス(FPGA、PLDなど)を用いることが考えられる。監視部5の記憶部は、例えばROM、RAMなどのメモリなどが考えられる。なお、記憶部にはパラメータ値、変数値などのデータを記録してもよいし、実行時のワークエリアとして用いてもよい。また、制御部が記憶部を有している場合には記憶部を用いなくてもよい。
 
【0016】
  監視部5は、電池制御部2から利用情報を受信すると、利用情報を参照して、利用されていない識別情報である仮識別情報を算出し、仮識別情報を電池制御部2に送信する。
  監視部5は、利用情報を受信すると、仮識別情報が受信した利用情報に反映されていると判定した場合、仮識別情報を監視部5の識別情報として記憶部に記憶する。
 
【0017】
  図2は、利用情報と仮識別情報のデータ構造の一実施例を示す図である。
  利用情報は、電池モジュール3それぞれを識別するための識別情報と、電池モジュール3それぞれの利用状況を示す情報を有する。
図2の利用情報201の「識別情報」それぞれは電池モジュール3それぞれに割り振られる識別情報が、ビット位置に対応付けられて記憶されている。本例では、8ビットの左側から順番にビット位置を表す「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」を、電池モジュール3それぞれの識別情報として対応付けている。
 
【0018】
  次に、電池モジュール3の利用状況を示す情報は、本例では「0」「1」「1」「1」「0」「0」「0」「0」により表され、識別情報「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」(ビット位置)に対応付けられて記憶されている。「0」は識別情報が未定である(利用されていない)ことを示す。すなわち、電池モジュール3が交換され、識別情報が未定である(利用されていない)ことを示す。「1」は既に識別情報が利用されていることを示す。
 
【0019】
  仮識別情報は、監視部5が算出した識別情報である。
図2の仮識別情報202の「仮識別情報」には、算出した仮識別情報であるビット位置を表す「1」が記憶されている。
  
図2の利用情報203は、「識別情報」を示すビット位置「1」に、仮識別情報「1」が反映されたことを示している。即ち、仮識別情報により、利用情報の利用状況を示す情報が「0」から「1」へ更新されたことを示している。
 
【0020】
  なお、本例ではビット位置を表す情報を用いて仮識別情報を示したが、ビット位置を表す情報に限定されるものではなく、仮識別情報として仮の番号(例えば正の整数)を用いてもよい。 
 
【0021】
  電池制御部の動作について説明する。
  
図3は、電池制御部の動作の一実施例を示すフロー図である。
  ステップS1では、電池制御部2が現在の監視部5の識別情報の利用状況を示す利用情報を生成する。例えば、電池モジュール3を交換する際に、電池モジュール3が抜かれたことを検出すると利用情報が生成される。または、電池パックに設けられたスイッチが利用者により操作されたことを検出すると利用情報が生成される。または、ウェークアップ時や電池パックに接続されたサービスツールなどからの信号を検出して利用情報を生成してもよい。
 
【0022】
  ステップS2では、電池制御部2が監視部5に利用情報をブロードキャストで送信する。
  ステップS3では、電池制御部2が監視部5から仮識別情報を取得したか否かを判定し、仮識別情報を取得した場合(Yes)にはステップS4に移行し、それ以外の場合(No)にはステップS3で仮識別情報を取得するまで待つ。ただし、一定時間経過しても仮識別情報を取得できない場合にはステップS1に移行してもよい。
 
【0023】
  ステップS4では、取得した仮識別情報が既に利用されているか否かを電池制御部2が判定をし、利用されていない場合(No)にはステップS5に移行する。利用されている場合(Yes)にはステップS1に移行して、再度利用情報を生成してブロードキャストで送信する。
 
【0024】
  ステップS5では、仮識別情報が利用されていない場合に、仮識別情報を送信した電池モジュールの仮識別情報を、電池制御部2が識別情報として確定して記憶部に記憶する。具体的には、
図2の利用情報201のうち、仮識別情報が示す識別情報に対応するビット位置の情報を「0」から「1」へ更新して、更新されたビットに対応する識別情報を確定する。
 
【0025】
  なお、ステップS3で、複数の監視部5から複数の仮識別情報を取得する場合、ステップS5では、複数の仮識別情報を集約する。そして、複数の仮識別情報であるビット位置を表す情報が異なる場合、即ち、複数の仮識別情報であるビット位置を表す情報が重複しない場合は、電池制御部2が識別情報として確定して記憶部に記憶する。また、複数の仮識別情報であるビット位置を表す情報が同じ場合、即ち、複数の仮識別情報であるビット位置を表す情報が重複する場合は、電池制御部2は識別情報として確定しない。
その後、確定した識別情報を反映させた利用情報を、電池制御部2が監視部5にブロードキャストで送信する。なお、複数の仮識別情報が重複したために識別情報が確定されない場合でも、電池制御部2が監視部5に利用情報をブロードキャストで送信する。これにより、監視部5は、自身が送信した仮識別情報が識別情報として確定されなかった(反映されなかった)ことを知ることができる。
 
【0026】
  ステップS6では、電池モジュール3すべての識別情報が確定したか否かを判定し、識別情報がすべて確定している場合(Yes)には処理を終了し、すべてが確定していない場合(No)にはステップS3に移行して、確定していない電池モジュール3の監視部5からの仮識別情報を待つ。
 
【0027】
  監視部の動作について説明する。
  
図4は、監視部の動作の一実施例を示すフロー図である。
  ステップS401では、監視部5が利用情報を取得したか否かを判定し、取得した場合(Yes)にはステップS402に移行する。それ以外の場合(No)にはステップS401で仮識別情報を取得するまで待つ。ただし、一定時間経過しても仮識別情報を取得できない場合には利用情報の再送要求をしてもよい。
 
【0028】
  ステップS402では、監視部5の記憶部に識別情報が確定されていない場合(No)にはステップS403に移行し、既に識別情報が確定されている場合(Yes)にはこの処理を終了する。なお、識別情報が確定されていることを電池制御部2へ通知してもよい。
 
【0029】
  ステップS403では、監視部5が監視部5と接続されているセンサにより計測された計測値を取得し、その計測値を用いて仮識別情報を算出する。仮識別情報の算出は、例えば、電流計や電圧計などのうち1つ以上のセンサが計測した値を入力として、ランダムな値を計算により求める。または、計測した値の下位の値を直接用いることが考えられる。
 
【0030】
  ステップS404では、監視部5が利用情報を参照し、算出した仮識別情報が既に利用されているか否かを判定し、利用されていない場合(No)にはステップS405に移行する。利用されている場合(Yes)にはステップS403に移行して、算出した仮識別情報をインクリメントまたはデクリメントするなどして仮識別情報の内容を変更する。利用されていない仮識別情報が算出されるまで仮識別情報を変更する。
 
【0031】
  ステップS405では、監視部5が仮識別情報を電池制御部2へ送信する。
  ステップS406では、監視部5が利用情報を取得したか否かを判定し、取得した場合(Yes)にはステップS407に移行する。それ以外の場合(No)にはステップS406で仮識別情報を取得するまで待つ。ただし、一定時間経過しても仮識別情報を取得できない場合には利用情報の再送要求をしてもよい。
 
【0032】
  ステップS407では、仮識別情報が利用情報に反映されているか否かを監視部5が判定し、反映されている場合(Yes)にはステップS408に移行する。即ち、ステップS406で取得した利用情報201のうち、監視部5が送信した仮識別情報であるビット位置を表す情報と同じビット位置の情報が「1」であるかどうか確認する。情報が「1」であれば、監視部5が送信した仮識別情報が利用情報に反映されたと判定し、情報が「0」であれば、仮識別情報が利用情報に反映されてないと判定する。反映されていない場合(No)にはステップS401に移行する。
 
【0033】
  ステップS408では、監視部5が仮識別情報を識別情報として確定して記憶部に記憶する。
  本実施形態によれば、識別情報を監視部が決めることにより、電池モジュールの識別情報の設定を容易にできるという効果を奏する。
 
【0034】
  また、出荷時や電池モジュールを組み換える際に識別情報を自動で設定することで、製造工程や販売店サービス時の手間を省くことができる。
  また、識別情報の設定は、電池モジュールが交換された場合に限らず、電池パックが組み立てられた場合などの初期設定でも実施可能である。
 
【0035】
  また、電池モジュールの識別情報に、電池モジュールの監視部の識別情報も含まれる。
  また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
 
 
【符号の説明】
【0036】
  1  電池パック、
  2  電池制御部、
  3、3a、3b、3c、3d  電池モジュール、
  4、4a、4b、4c、4d  組電池、
  5、5a、5b、5c、5d  監視部、
  6  信号線、
  201、203  利用情報、
  202  仮識別情報、