特許第6075268号(P6075268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075268
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/12 20060101AFI20170130BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20170130BHJP
   H01G 9/12 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   H01M2/12 101
   H01M2/02 A
   H01G9/12 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-227028(P2013-227028)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-88382(P2015-88382A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】栗田 幹也
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−009317(JP,A)
【文献】 特開2013−020988(JP,A)
【文献】 特開2011−181214(JP,A)
【文献】 特許第5668772(JP,B2)
【文献】 特開2014−199823(JP,A)
【文献】 特開2014−203737(JP,A)
【文献】 特開2010−165590(JP,A)
【文献】 特開2015−069715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極組立体が収容されたケースに、当該ケース内の圧力をケース外に開放させる圧力開放弁を有する蓄電装置において、
前記圧力開放弁は周縁に平行な一対の直線部を含み、
前記圧力開放弁の弁体は、互いに交差する2本の直線溝を含む交差溝と、前記交差溝の端部付近に延設されている端部溝とを有し、
前記2本の直線溝に沿って延長し、前記圧力開放弁の周縁と交差する仮想直線を想定したとき、
前記仮想直線の各々は、前記直線部が延びる方向において前記直線部の両端部よりも内側で前記直線部と交差し、
前記仮想直線と前記圧力開放弁の周縁とによって囲まれる領域であって、かつ前記交差溝の交差部分を挟んで対向する一対の領域の組が2組想定され、
前記2組の一対の領域の組のうち、一方の組である第1の組の面積が他方の組である第2の組の面積以上であり、
前記第1の組の1つの領域を区画する前記仮想直線に沿う前記交差溝の各端部付近には、前記端部溝が互いに接近する方向に同一の前記領域内でそれぞれ延設されており、
前記端部溝に沿って延長する仮想線を想定したときに、前記仮想線は直線状に繋がることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記端部溝は前記交差溝の端部に繋がっている請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記圧力開放弁は周縁に前記直線部に交差する第2の直線部を含み、
前記端部溝は、各端部のうち、前記交差溝の端部から離間する側の端部に位置している直線溝を含み、
前記直線溝は前記第2の直線部に沿っている請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記端部溝は、弧溝と直線溝とを含み、前記端部溝の各端部のうち、前記交差溝の端部から離間する側の端部に前記直線溝が位置している請求項1〜3のうち何れか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記端部溝は、前記第1の組の領域内に前記交差溝の端部から前記直線部に沿って延設された第2の直線溝をさらに含み、前記第2の直線溝と前記直線溝との間を前記弧溝にて繋いだ形状である請求項4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記蓄電装置は、二次電池である請求項1〜請求項のうち何れか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、原動機となる電動機への供給電力を蓄える蓄電装置としてリチウムイオン電池などの二次電池が搭載されている。二次電池は、例えば、特許文献1に記載されるように、金属箔に負極活物質を塗布した負極電極と金属箔に正極活物質を塗布した正極電極との間をセパレータで絶縁し、層状に積層した電極組立体を有する。そして、二次電池のケースには電極組立体と電解液が収容されており、ケースの壁面にはケース内の圧力をケース外に開放させる圧力開放弁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4881409号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧力開放弁の弁体には、ケース内の圧力が所定圧に達したときに弁体の開裂を促進させる開裂溝が設けられている。例えば、図5に示すように、特許文献1に記載の圧力開放弁320には、弁体321の表面321aの中央に中央溝331が延設されている。中央溝331は、直線状に延びる一本の直線溝331aと、直線溝331aの両端部のそれぞれから斜め方向に延在する2本の直線溝336,337とで構成されている。そして、弁体321では、各直線溝336,337の端部336a,337aから、それぞれ弧溝332,333が延設されている。
【0005】
特許文献1に記載の圧力開放弁320では、弁体321が開裂する際に、弧溝332を延長する仮想線Y13a,Y13bに沿って折れ曲がるとともに、弧溝333を延長する仮想線Y14a,Y14bに沿って折れ曲がることになる。ここで、仮想線Y13a,Y13b及び仮想線Y14a,Y14bはそれぞれ円弧状に交差しているため、折り曲げ線が円弧状となり、折り曲げ線に沿って応力が集中しやすくなる。そして、弁体321が切断されやすくなるため、図6に示すように破片が飛散するおそれがある。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、圧力開放弁の開裂に際して破片が飛散することを抑制することのできる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための蓄電装置は、電極組立体が収容されたケースに、当該ケース内の圧力をケース外に開放させる圧力開放弁を有するものである。そして、蓄電装置では、圧力開放弁は周縁に平行な一対の直線部を含んでいる。圧力開放弁の弁体は、互いに交差する2本の直線溝を含む交差溝と、交差溝の端部付近に延設されている端部溝とを有している。そして交差溝を構成する2本の直線溝に沿って延長し、圧力開放弁の周縁と交差する仮想直線を想定したとき、仮想直線の各々は、直線部が延びる方向において直線部の両端部よりも内側で直線部と交差する。これにより、仮想直線と圧力開放弁の周縁とによって囲まれる領域であって、かつ交差溝の交差部分を挟んで対向する一対の領域の組が2組想定される。また、蓄電装置では、前記2組の一対の領域の組のうち、一方の組である第1の組の面積が他方の組である第2の組の面積以上であり、前記第1の組の1つの領域を区画する仮想直線に沿う交差溝の各端部付近には、端部溝が互いに接近する方向に同一の前記領域内でそれぞれ延設されており、端部溝に沿って延長する仮想線を想定したときに、仮想線は直線状に繋がる。
【0008】
上記構成によれば、圧力開放弁が開裂する際に、圧力開放弁が端部溝を延長する仮想線に沿って直線状に折れ曲がるようになる。このため、折り曲げ線が直線状となり、折り曲げ線に作用する応力が分散されるため、折り曲げ線に沿って圧力開放弁が切断されにくくなる。したがって、圧力開放弁の開裂に際して破片が飛散することを抑制することができる。
【0009】
端部溝としては、例えば交差溝の端部に繋がっているものが好ましい。
圧力開放弁の開裂が交差溝から端部溝に伝わりやすくなるため、第1の組の領域での開放を促進させることができる。したがって、ケース内の圧力を迅速に開放させることができる。
【0010】
圧力開放弁が周縁に上記直線部に交差する第2の直線部を含む場合では、端部溝としては、端部溝の各端部のうち、交差溝の端部から離間する側の端部に位置している直線溝を含み、直線溝が圧力開放弁の第2の直線部に沿っているものが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、圧力開放弁の周縁に沿って圧力開放弁を開放させることができる。したがって、圧力開放弁の開口を大きくすることができ、ケース内の圧力を迅速に開放させることができる。
【0012】
端部溝としては、弧溝と直線溝とを含み、端部溝の各端部のうち、交差溝の端部から離間する側の端部に直線溝が位置しているものが好ましい。
上記構成によれば、圧力開放弁が開裂する際に、端部溝の弧溝に沿って滑らかに圧力開放弁が折れ曲がるようになる。このため、圧力開放弁の開裂を促進させることができる。また、端部溝の直線溝が、端部溝の各端部のうち、交差溝の端部から離間する側の端部に位置しているため、圧力開放弁が開裂する際に直線溝に沿って折れ曲がるようになり、折り曲げ線に沿って切断されにくくなり破片が飛散することを抑制することができる。
端部溝としては、第1の組の領域内に交差溝の端部から直線部に沿って延設された第2の直線溝をさらに含み、第2の直線溝と直線溝との間を弧溝にて繋いだ形状とすることが好ましい。
【0013】
上記蓄電装置において、前記蓄電装置の好適な例としては、二次電池を挙げることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、圧力開放弁の開裂に際して破片が飛散することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】二次電池の外観を示す斜視図。
図2】弁体の表面を示す平面図。
図3】別例における弁体の表面を示す平面図。
図4】別例における弁体の表面を示す平面図。
図5】従来の弁体の表面を示す平面図。
図6】従来の弁体が開裂した際の弁体の表面を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、蓄電装置を具体化した一実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
図1に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、ケース11に電極組立体12が収容されている。また、ケース11には、電極組立体12とともに電解液も収容されている。ケース11は、有底筒状のケース本体13と、ケース本体13に電極組立体12を挿入する開口部を閉塞する平板状の蓋体14とからなる。ケース本体13と蓋体14は、何れも金属製(例えば、ステンレスやアルミニウム製)である。また、この実施形態の二次電池10は、ケース本体13が有底四角筒状であり、蓋体14が矩形平板状であることから、その外観が角型をなす角型電池である。また、この実施形態の二次電池10は、リチウムイオン電池である。
【0017】
電極組立体12は、正極電極、負極電極、及び正極電極と負極電極を絶縁するセパレータを有する。正極電極は、正極金属箔(アルミニウム箔)の両面に正極活物質を塗布して構成される。負極電極は、負極金属箔(銅箔)の両面に負極活物質を塗布して構成される。そして、電極組立体12は、複数の正極電極と複数の負極電極を交互に積層するとともに、両電極の間にセパレータを介在した積層構造とされている。また、電極組立体12には、正極端子15と負極端子16が電気的に接続されている。これらの正極端子15と負極端子16の各一部分は、蓋体14からケース11外に露出している。また、正極端子15及び負極端子16には、ケース11から絶縁するためのリング状の絶縁リング17aがそれぞれ取り付けられている。
【0018】
ケース11の蓋体14には、ケース11(ケース本体13)内に電解液を注入するための注液孔14cが穿設されており、注液孔14cは封止部材19によって閉塞されている。また、ケース11の蓋体14には、ケース11内の圧力が上昇し過ぎないように、ケース11内の圧力が所定の圧力である開放圧に達した場合に開裂し、ケース11内の圧力をケース11外に開放させる圧力開放弁20が設けられている。圧力開放弁20の開放圧は、ケース11自体やケース本体13と蓋体14の接合部に亀裂や破断などが生じ得る前に開裂し得る圧力に設定されている。そして、圧力開放弁20は、蓋体14の板厚よりも薄い薄板状の弁体21を有する。弁体21は、蓋体14の表面14aに凹設された凹部22の底に位置しており、蓋体14と一体的に成形されている。すなわち、圧力開放弁20は、弁体21上の表面21aがケース11の蓋体14の表面14aの一部となっている。
【0019】
図2に示すように、この実施形態の圧力開放弁20は、全体が矩形状であり、且つ四隅が弧状の周縁を有する。すなわち、圧力開放弁20の周縁は、一対の直線部23,24と一対の直線部25,26とを弧部27,28,29,30で繋いだ形状をなしている。なお、圧力開放弁20の弁体21は、圧力開放弁20の周縁に沿っており、圧力開放弁20と同様に、全体が矩形状であって、四隅が弧状となっている。
【0020】
また、弁体21は、表面21aに開裂溝を有する。開裂溝は、交差溝31と、交差溝31の端部から延設される2本の端部溝32及び2本の端部溝33と、直線部23,24に沿う2本の直線溝34及び2本の直線溝35と、からなる。この実施形態において、交差溝31と、端部溝32,33と、直線溝34,35とは、何れも断面形状がV字状をなす溝である。
【0021】
交差溝31は、弁体21の中央において交差部PでX字状に交差する2本の直線溝36,37からなる。直線溝36,37に沿って延長される仮想直線Y1,Y2は、圧力開放弁20の周縁と交差する。なお、本実施形態の仮想直線Y1,Y2は、直線溝36,37を直線溝36,37の幅方向で二等分する線としてそれぞれ想定される仮想線である。
【0022】
2本の端部溝32は、直線溝32a,32cと、これら直線溝32a,32cの端部を繋ぐ弧溝32bとからなる。2本の端部溝33は、直線溝33a,33cと、これら直線溝33a,33cの端部を繋ぐ弧溝33bとからなる。
【0023】
2本の端部溝32のうち、一方の端部溝32の直線溝32aは、直線溝36の一方の端部36aに繋がっており、端部36aから直線部25に近づく方向に直線部23に沿って延在している。また、2本の端部溝32のうち、他方の端部溝32の直線溝32aは、直線溝37の一方の端部37aに繋がっており、端部37aから直線部25に近づく方向に直線部24に沿って延在している。
【0024】
2本の端部溝32のうち、一方の端部溝32の弧溝32bは、直線溝32aの端部のうちで直線溝36の端部36aと繋がる端部とは反対側の端部と繋がっており、この直線溝32aの端部から弧部27に沿って弧状に延在している。また、2本の端部溝32のうち、他方の端部溝32の弧溝32bは、直線溝32aの端部のうちで直線溝37の端部37aと繋がる端部とは反対側の端部と繋がっており、この直線溝32aの端部から弧部28に沿って弧状に延在している。
【0025】
2本の端部溝32のうち、一方の端部溝32の直線溝32cは、弧溝32bの端部から直線部24に近づく方向に直線部25に沿って延在している。また、2本の端部溝32のうち、他方の端部溝32の直線溝32cは、弧溝32bの端部から直線部23に近づく方向に直線部25に沿って延在している。そして、これら2本の端部溝32の直線溝32cは、互いに接近する方向に延設されている。
【0026】
2本の直線溝34のうち、一方の直線溝34は、直線溝32aの端部のうちで直線溝36の端部36aと繋がる端部と繋がっており、この直線溝32aの端部から直線部26に近づく方向に直線部23に沿って延在している。2本の直線溝34のうち、他方の直線溝34は、直線溝32aの端部のうちで直線溝37の端部37aと繋がる端部と繋がっており、この直線溝32aの端部から直線部26に近づく方向に直線部24に沿って延在している。
【0027】
2本の端部溝33のうち、一方の端部溝33の直線溝33aは、直線溝37の一方の端部37bに繋がっており、端部37bから直線部26に近づく方向に直線部23に沿って延在している。また、2本の端部溝33のうち、他方の端部溝33の直線溝33aは、直線溝36の一方の端部36bに繋がっており、端部36bから直線部26に近づく方向に直線部24に沿って延在している。
【0028】
2本の端部溝33のうち、一方の端部溝33の弧溝33bは、直線溝33aの端部のうちで直線溝37の端部37bと繋がる端部とは反対側の端部と繋がっており、この直線溝33aの端部から弧部29に沿って弧状に延在している。また、2本の端部溝33のうち、他方の端部溝33の弧溝33bは、直線溝33aの端部のうちで直線溝36の端部36bと繋がる端部とは反対側の端部と繋がっており、この直線溝33aの端部から弧部30に沿って弧状に延在している。
【0029】
2本の端部溝33のうち、一方の端部溝33の直線溝33cは、弧溝33bの端部から直線部24に近づく方向に直線部26に沿って延在している。また、2本の端部溝33のうち、他方の端部溝33の直線溝33cは、弧溝33bの端部から直線部23に近づく方向に直線部26に沿って延在している。そして、これら2本の端部溝33の直線溝33cは、互いに接近する方向に延設されている。
【0030】
2本の直線溝35のうち、一方の直線溝35は、直線溝33aの端部のうちで直線溝37の端部37bと繋がる端部と繋がっており、この直線溝33aの端部から直線部25に近づく方向に直線部23に沿って延在している。2本の直線溝35のうち、他方の直線溝35は、直線溝33aの端部のうちで直線溝36の端部36bと繋がる端部と繋がっており、この直線溝33aの端部から直線部25に近づく方向に直線部24に沿って延在している。
【0031】
そして、交差溝31に沿う仮想直線Y1,Y2を想定したとき、弁体21の表面21aには、仮想直線Y1,Y2と圧力開放弁20の周縁とによって囲まれる複数の領域S1,S2,S3,S4が想定される。領域S1と領域S2とは、直線部23,24を含む領域であり、互いに交差溝31の交差部Pを対称の中心として点対称である。すなわち、領域S1と領域S2とは、交差溝31の交差部Pを挟んで対向する一対の領域の組となっている。また、領域S3と領域S4は、直線部25,26と弧部27,28,29,30を含む領域であり、互いに交差部Pを対称の中心として点対称である。すなわち、領域S3と領域S4とは、交差溝31の交差部Pを挟んで対向する一対の領域の組となっている。そして、弁体21の表面21aに有する4つの領域S1〜S4の面積は、第1の組としての領域S3,S4の組の方が、第2の組としての領域S1,S2の組に比較して大きい。すなわち、領域S3の面積が領域S1の面積よりも大きく、領域S2の面積よりも大きい。領域S4の面積が領域S1の面積よりも大きく、領域S2の面積よりも大きい。そして、領域S3の面積と領域S4の面積とを合わせた面積が、領域S1の面積と領域S2の面積とを合わせた面積よりも大きい。
【0032】
また、上記のように弁体21の表面21aに領域S1〜S4を想定した場合、直線溝36,37からそれぞれ延設されている端部溝32は、同一の領域S3に位置する。すなわち、2本の端部溝32のうち、一方の端部溝32の直線溝32cと、他方の端部溝32の直線溝32cとが、同一の領域S3内でそれぞれ延設されている。そして、端部溝32の直線溝32cに沿って延長する仮想線Y3aと、端部溝32の直線溝32cに沿って延長する仮想線Y3bとは、直線状に繋がる。なお、本実施形態の仮想線Y3a,Y3bは、端部溝32の直線溝32cを直線溝32cの幅方向で二等分する線として想定される仮想線である。
【0033】
また、上記のように弁体21の表面21aに領域S1〜S4を想定した場合、直線溝36,37からそれぞれ延設されている端部溝33は、同一の領域S4に位置する。すなわち、2本の端部溝33のうち、一方の端部溝33の直線溝33cと、他方の端部溝33の直線溝33cとが、同一の領域S4内でそれぞれ延設されている。そして、端部溝33の直線溝33cに沿って延長する仮想線Y4aと、端部溝33の直線溝33cに沿って延長する仮想線Y4bとは、直線状に繋がる。なお、本実施形態の仮想線Y4a,Y4bは、端部溝33の直線溝33cを直線溝33cの幅方向で二等分する線として想定される仮想線である。
【0034】
次に、本実施形態の作用について説明する。
弁体21の開裂溝には、ケース11の内側から加わる圧力によって応力が発生する。そして、ケース11内の圧力が開放圧に達すると、最も応力が集中している交差部P付近の直線溝36,37を起点として弁体21が開裂する。この開裂により、弁体21は、領域S1〜S4を区画する直線溝36,37に沿って4つの領域S1〜S4に分断される。また、直線溝36,37の開裂が端部溝32,33及び直線溝34,35に繋がる端部36a,36b,37a,37bに達すると、端部溝32,33及び直線溝34,35の開裂も始まる。
【0035】
このとき、本実施形態では、領域S3,S4の面積を領域S1,S2の面積に比較して大きくしているため、領域S3,S4の方が領域S1,S2に比較して受圧面積が大きい。このため、弁体21に対してケース11の内側から加わる圧力の受圧量は、領域S3,S4の方が領域S1,S2に比較して大きくなる。
【0036】
このように弁体21の表面21aに有する開裂溝が開裂すると、弁体21は、4つの領域S1〜S4に分断されつつ、外側にめくれ上がることによって、圧力開放弁20には大きな開口が生じる。そして、ケース11内の圧力は、圧力開放弁20に生じた開口を通じてケース11外に開放される。
【0037】
こうして弁体21が開裂する際には、端部溝32,33を延長する仮想線Y3a,Y3b,Y4a,Y4bに沿って折れ曲がることになる。ここで、仮に仮想線Y3a,Y3b,Y4a,Y4b上の一部分に応力が集中すると、特に上記のように受圧面積の大きい領域S3,S4では、作用する応力が大きくなるため、弁体21が切断されて破片が飛散するおそれがある。
【0038】
本実施形態では、仮想線Y3aと仮想線Y3bとが直線状に繋がるとともに、仮想線Y4aと仮想線Y4bとが直線状に繋がるため、弁体21が開裂する際に、弁体21が仮想線Y3a,Y3b,Y4a,Y4bに沿って直線状に折れ曲がるようになる。そして、弁体21の折り曲げ線が直線状となり、折り曲げ線に作用する応力が分散されるため、折り曲げ線に沿って弁体21が切断されにくくなる。
【0039】
したがって、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)仮想線Y3a,Y3bと仮想線Y4a,Y4bとがそれぞれ直線状に繋がるように端部溝32,33の直線溝32c,33cを配置したので、折り曲げ線に沿って弁体21が切断され難い。その結果、圧力開放弁20の開裂に際して破片が飛散することを抑制することができる。
【0040】
(2)端部溝32,33の直線溝32a,33aと交差溝31の直線溝36,37の端部36a,36b,37a,37bとを繋げたため、圧力開放弁20の開裂が交差溝31から端部溝32,33に伝わりやすくなっている。このため、領域S3,S4での弁体21の開放を促進させることができ、ケース11内の圧力を迅速に開放させることができる。
【0041】
(3)端部溝32,33は圧力開放弁20の周縁に沿っているため、圧力開放弁20の周縁に沿って圧力開放弁20を開放させることができる。したがって、圧力開放弁20の開口を大きくすることができ、ケース11内の圧力を迅速に開放させることができる。
【0042】
(4)端部溝32,33は、弧溝32b,33bと、直線溝32c,33cとを含んでいるため、圧力開放弁20が開裂する際に、弧溝32b,33bに沿って滑らかに圧力開放弁20が折れ曲がるようになる。このため、圧力開放弁20の開裂を促進させることができる。また、圧力開放弁20が開裂する際に直線溝32c,33cに沿って折れ曲がるようになるため、折り曲げ線に沿って切断されにくくなり破片が飛散することを抑制することができる。
【0043】
(5)本実施形態の圧力開放弁20の弁体21のように、弧部を有する形状で構成されている弁体では、開口面積を大きくする等の理由により、弧部に沿う弧溝を弁体の表面に設けることが望ましい。こうした弧溝は直線溝と比較して開裂し難い。このため、弧溝の開裂が進展せずに弁体の開口面積として十分な面積が得られず、ケース内の圧力を開放させるときの迅速性が損なわれるおそれがある。本実施形態の圧力開放弁20では、圧力開放弁20の弧部27,28,29,30に沿う弧溝32b,33bが位置する領域S3,S4の受圧面積を、領域S1,S2の受圧面積と比較して大きくしている。このため、弧溝32b,33bを有する圧力開放弁20であっても、弧溝32b,33bの開裂が促進されることで領域S3,S4が外側に開き易くなる。その結果、圧力開放弁20の開口を大きくすることができ、ケース11内の圧力を迅速に開放させることができる。また、本実施形態では、弁体21が端部溝32,33の直線溝32c,33cの仮想線Y3a,Y3b,Y4a,Y4bに沿って直線状に折れ曲がるため、圧力開放弁20の領域S3,S4の受圧面積を大きくしても、折り曲げ線に沿って切断されにくくなり破片が飛散することを抑制することができる。
【0044】
なお、上述の実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
図3に示すように、圧力開放弁として、平行な2つの直線部23,24を弧部125,126で繋いだトラック形状の周縁を有する圧力開放弁120を採用してもよい。この形態では、端部溝32,33のうち、直線溝32a,33aは圧力開放弁120の周縁に沿う一方、弧溝32b,33b及び直線溝32c,33cは圧力開放弁120の周縁に沿っていない。こうした形態によっても、上記実施形態で得ることのできる効果(1)〜(4)と同様の効果を得ることができる。
【0045】
○ 上記変形例で、圧力開放弁120の周縁の弧部125,126に沿うように端部溝32,33の弧溝32b,33bを延在させてもよい。この形態では、弧溝32b,33bと繋がるように直線溝32c,33cを配置する。こうした形態によれば、上記変形例で得ることのできる効果に加えて、上記実施形態で得ることのできる効果(5)と同様の効果を得ることができる。
【0046】
図2に示す上記実施形態での圧力開放弁20や、図3に示す上記各変形例での圧力開放弁120において、直線溝34,35を省略して、開裂溝として、交差溝31と端部溝32,33のみを配置しても良い。
【0047】
図2に示す上記実施形態での圧力開放弁20や、図3に示す上記各変形例での圧力開放弁120において、端部溝32,33の直線溝32a,33aを省略して、端部溝32,33として、弧溝32b,33bと直線溝32c,33cのみを配置しても良い。こうした形態では、端部溝32,33の弧溝32b,33bと直線溝36,37の端部36a,36b,37a,37bとが繋がるように、端部溝32,33を位置させることが望ましい。
【0048】
図4に示すように、圧力開放弁として、一対の直線部223,224と一対の直線部225,226とを角部で繋いだ周縁を有する圧力開放弁220を採用してもよい。図4に例示する圧力開放弁220では、周縁の四辺が同一長さであり、交差溝31の直線溝36,37に沿って延長する仮想直線Y1,Y2が圧力開放弁220の周縁の対角線上に位置している。すなわち、圧力開放弁220では、交差溝31の交差部Pを挟んで対向する領域S5,S6と領域S7,S8とが同一の面積を有している。また、圧力開放弁220の周縁の四隅には、直線部225,226に沿って延在する直線状の端部溝232,233と、直線部223,224に沿って延在する直線状の端部溝234,235とが位置している。すなわち、この形態での端部溝232,233,234,235は、直線状の溝のみで構成されている。そして、端部溝234に沿って延長する仮想線Y5a,Y6aと、端部溝235に沿って延長する仮想線Y5b,Y6bとが、直線状に繋がる。2本の端部溝232のうち、一方の端部溝232に沿って延長する仮想線Y7aと、他方の端部溝232に沿って延長する仮想線Y7bとが、直線状に繋がる。2本の端部溝233のうち、一方の端部溝233に沿って延長する仮想線Y8aと、他方の端部溝233に沿って延長する仮想線Y8bとが、直線状に繋がる。こうした形態によっても、上記実施形態で得ることのできる効果(1)〜(3)と同様の効果を得ることができる。
【0049】
図4に示した圧力開放弁220の周縁を、領域S7,S8の面積が領域S5,S6の面積よりも大きい関係にある矩形状に変更してもよい。こうした形態では、端部溝234,235を省略して、開裂溝として、交差溝31と端部溝232,233のみを配置しても良い。要するに、互いの仮想線Y7a,Y7b,Y8a,Y8bが直線状に繋がる端部溝232,233が、領域S5,S6の組と領域S7,S8の組とのうち、一方の領域の組の面積以上の面積を有する他方の組の領域に少なくとも延設されていればよい。
【0050】
図2に示した本実施形態での圧力開放弁20や、図3に示した圧力開放弁120等、図4に示した圧力開放弁220と周縁の形状の異なる圧力開放弁を採用する場合においても、端部溝232,233,234,235のように直線溝のみで構成される端部溝を弁体の表面に延在させてもよい。
【0051】
○ 端部溝32,33,232,233,234,235は、圧力開放弁20,120,220の周縁に沿うものでなくてもよい。こうした形態によれば、上記実施形態で得ることのできる効果(1)、(2)、及び(4)と同様の効果を得ることができる。
【0052】
○ 端部溝32,33,232,233,234,235は、交差溝31の直線溝36,37の端部36a,36b,37a,37bに繋がっておらず、直線溝36,37の端部36a,36b,37a,37b付近に延設される形態を採用してもよい。こうした形態によれば、上記実施形態で得ることのできる効果(1)及び(2)〜(5)と同様の効果を得ることができる。
【0053】
○ 仮想線Y3a,Y3b,Y4a,Y4b,Y5a,Y5b,Y6a,Y6b,Y7a,Y7b,Y8a,Y8bは、直線溝32c,33cや端部溝232,233,234,235の幅方向の縁に沿う線であってもよい。
【0054】
○ 仮想直線Y1,Y2は、直線溝36,37の幅方向の縁に沿う線であってもよい。
○ 交差溝31を、X字状に代えて、Y字状に変更してもよい。
○ 弁体21の裏面に開裂溝を設けてもよい。
【0055】
○ 開裂溝の断面形状を変更してもよい。
○ ケース11のケース本体13を構成するケース壁に圧力開放弁20,120,220を設けてもよい。
【0056】
○ ケース11の形状を変更してもよい。例えば、ケース11は円筒型でもよい。
○ 圧力開放弁20をケース11とは別体部品とし、その圧力開放弁20をケース11に接合してもよい。接合は、例えば溶接(例えばレーザ溶接)などで行う。
【0057】
○ 電極組立体12は、積層型に限らず、帯状の正極電極と帯状の負極電極を捲回して層状に積層した捲回型でもよい。
○ 二次電池10は、リチウムイオン二次電池であったが、これに限らず、他の二次電池であってもよい。要するに、正極活物質層と負極活物質層との間をイオンが移動するとともに電荷の授受を行うものであればよい。また、蓄電装置としてキャパシタでもよい。
【0058】
○ 二次電池10は、車両電源装置として自動車に搭載してもよいし、産業用車両に搭載しても良い。また、定置用の蓄電装置に適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0059】
(イ)電極組立体が収容されたケースに、当該ケース内の圧力をケース外に開放させる圧力開放弁を有する蓄電装置において、前記圧力開放弁は、交差溝と、前記交差溝の端部付近に延設されている端部溝とを有し、前記交差溝に沿って延長し、前記圧力開放弁の周縁と交差する仮想直線を想定したとき、前記仮想直線と前記圧力開放弁の周縁とによって囲まれる領域であって、かつ前記交差溝の交差部分を挟んで対向する一対の領域の組が2組想定され、前記2組の一対の領域の組のうち、一方の組である第1の組の面積が他方の組である第2の組の面積以上であり、前記端部溝は、弧溝と直線溝とからなり、前記端部溝の端部のうち、前記交差溝の端部から離間する側の端部に前記直線溝が位置し、前記第1の組の1つの領域を区画する前記仮想直線に沿う前記交差溝の各端部付近には、前記端部溝が互いに接近する方向に同一の前記領域内でそれぞれ延設されており、前記端部溝に沿って延長する仮想線を想定したときに、前記仮想線は直線状に繋がることを特徴とする蓄電装置。
【0060】
(ロ)電極組立体が収容されたケースに、当該ケース内の圧力をケース外に開放させる圧力開放弁を有する蓄電装置において、前記圧力開放弁は、交差溝と、前記交差溝の端部付近に延設されている直線状の端部溝とを有し、前記交差溝に沿って延長し、前記圧力開放弁の周縁と交差する仮想直線を想定したとき、前記仮想直線と前記圧力開放弁の周縁とによって囲まれる領域であって、かつ前記交差溝の交差部分を挟んで対向する一対の領域の組が2組想定され、前記2組の一対の領域の組のうち、一方の組である第1の組の面積が他方の組である第2の組の面積以上であり、前記第1の組の1つの領域を区画する前記仮想直線に沿う前記交差溝の各端部付近には、前記端部溝が互いに接近する方向に同一の前記領域内でそれぞれ延設されており、前記端部溝に沿って延長する仮想線を想定したときに、前記仮想線は直線状に繋がることを特徴とする蓄電装置。
【符号の説明】
【0061】
10…二次電池、11…ケース、12…電極組立体、13…ケース本体、14…蓋体、20,120,220…圧力開放弁、21…弁体、21a…表面、23,24,25,26,223,224,225,226…直線部、27,28,29,30,125,126…弧部、31…交差溝、32,33,232,233,234,235…端部溝、32a,32c,33a,33c,36,37…直線溝、32b,33b…弧溝、36a,36b,37a,37b…端部、P…交差部、S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8…領域、Y1,Y2…仮想直線、Y3a,Y3b,Y4a,Y4b,Y5a,Y5b,Y6a,Y6b,Y7a,Y7b,Y8a,Y8b…仮想線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6