特許第6075338号(P6075338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075338
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ハイブリッド建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   E02F9/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-145000(P2014-145000)
(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公開番号】特開2016-20601(P2016-20601A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】中住 晃
(72)【発明者】
【氏名】上村 佑介
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−112102(JP,A)
【文献】 特開2009−044891(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/157606(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/073661(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/42,3/43,3/84,3/85
E02F 9/00−9/28
B60K 6/20−6/547
B60W 10/00−20/50
B60R 16/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、この下部走行体上に旋回自在に搭載された上部旋回体と、ハイブリッド機器とを備えたハイブリッド建設機械であって、
上記上部旋回体のベースとしてのアッパーフレームは、センターセクションの左右両側にサイドデッキが設けられて成り、上記ハイブリッド機器が左右いずれか一方のサイドデッキに設置されており、
上記ハイブリッド機器は平面視多角形のケーシングを有し、このケーシングに、冷却または暖機用の流体配管が接続される配管接続口と、電力または制御信号を授受するための電線が接続される接続端子が設けられ
上記配管接続口と接続端子とが上記ケーシングの互いに異なる面に設けられており、
上記サイドデッキに設置された上記ケーシングは、水平方向に沿って互いに連結された前後面および左右面を備え、
上記接続端子が上記ケーシングの上記前後面に配置され、上記配管接続口が上記ケーシングの上記左右面に配置されたことを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項2】
上記接続端子を上記配管接続口よりも高位置に設けたことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド建設機械。
【請求項3】
上記接続端子が上記ケーシングの前面に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド建設機械。
【請求項4】
上記配管接続口は、
上記ケーシングの上記左右面のうちの一方に配置され、上記冷却または暖機用の流体を前記ケーシング内に流入させるイン配管接続口と、
上記ケーシングの上記左右面のうちの他方に配置され、上記冷却または暖機用の流体を前記ケーシングから流出させるアウト配管接続口と、
を備えることを特徴とする請求項3記載のハイブリッド建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド機器に対する流体配管及び電線の接続構造を改良したハイブリッド建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
ショベルは、図5に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が地面に対して鉛直となる軸のまわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2のベースとなるアッパーフレーム3上にキャビン4等の各種設備、機器類が搭載されるとともに、アッパーフレーム前部に、ブーム5、アーム6、バケット7を備えた作業アタッチメントAが装着されて構成される。
【0004】
なお、この明細書においては、キャビン4の位置を左側前部とし、これを基準に「前後」「左右」の方向性をいうものとする。
【0005】
アッパーフレーム3は、図6に詳しく示すように、補強部材とアタッチメント取付部材を兼ねる左右一対の縦板8,8を備えたセンターセクションCと、このセンターセクションCの左右両側に設けられたサイドデッキD1,D2によって構成され、センターセクションCの後部に動力源としてのエンジン9が設置される。
【0006】
ハイブリッドショベルにおいては、このエンジン9のたとえば右側に、発電機作用と電動機作用を行うハイブリッド機器としての発電電動機10が油圧ポンプ11と左右に並んで配置される。
【0007】
エンジン9の左側には、エンジン冷却用のラジエータ12及び冷却ファン13に加えて、ハイブリッド機器冷却用の冷却器14及び冷却ポンプ15が設置される。
【0008】
一方、右サイドデッキD2には、前部に、発電電動機10の動作を制御する制御ユニット(インバータ)16と、図示しないハイブリッド電源としての蓄電装置が、たとえば制御ユニット16を上にした上下積層配置で設けられるとともに、その後方にタンク(たとえば燃料タンク)17が設置される。
【0009】
なお、蓄電装置が制御ユニット16とは別の位置に配置される場合もあるし、燃料タンク17に代えて作動油タンクが設置される場合や、両タンクが前後または左右に並んで設置される場合もある。
【0010】
また、センターセクションCのほぼ中央部に旋回駆動源としての旋回電動機18が設置される。
【0011】
このようなハイブリッドショベルにおいては、ハイブリッド機器(発電電動機10、制御ユニット16、蓄電装置、旋回電動機18)同士が、電力の授受を行うための動力ケーブルや制御信号をやり取りする信号ケーブル等の電線によって接続される(特許文献1参照)。
【0012】
また、これらハイブリッド機器は冷却や暖機を必要とするため、特許文献2に示されるように、機器同士、及び機器と冷却器14及び冷却ポンプ15が流体配管(以下、本発明の実施形態を含めて、冷却/暖機用の媒体として水を用いる水配管の場合で説明する)によって接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2012−184586号公報
【特許文献2】特開2012−154092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように水配管と電線がアッパーフレーム3上に混じって配索されるハイブリッドショベルの場合、水配管と電線の両者が接続されるハイブリッド機器において次のような問題が生じていた。
【0015】
たとえば、制御ユニット16は平面視四角形のケーシングを備え、このケーシングの側面に設けられた配管接続口に水配管、接続端子に電線(動力ケーブル及び信号ケーブル)がそれぞれ接続される。
【0016】
この場合、配管と電線の接続部分がケーシングの同じ面で接近していると、もし配管接続部分やその近傍で接続不良や配管のひび割れ、破裂等による水漏れが発生すると、漏れた水が直接電線または接続端子に降りかかるおそれがあった。
【0017】
そこで本発明は、一つのハイブリッド機器に流体配管と電線の双方が接続される状況において、機器に対する流体配管の接続部分またはその近傍で流体漏れが発生しても、漏れた流体が電線または端子に直接降りかかる事態を回避して安全性を高めることができるハイブリッド建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決する手段として、本発明に係るハイブリッド建設機械は、下部走行体と、この下部走行体上に旋回自在に搭載された上部旋回体と、ハイブリッド機器とを備えたハイブリッド建設機械であって、上記上部旋回体のベースとしてのアッパーフレームは、センターセクションの左右両側にサイドデッキが設けられて成り、上記ハイブリッド機器が左右いずれか一方のサイドデッキに設置されており、上記ハイブリッド機器は平面視多角形のケーシングを有し、このケーシングに、冷却または暖機用の流体配管が接続される配管接続口と、電力または制御信号を授受するための電線が接続される接続端子が設けられ上記配管接続口と接続端子とが上記ケーシングの互いに異なる面に設けられており、上記サイドデッキに設置された上記ケーシングは、水平方向に沿って互いに連結された前後面および左右面を備え、上記接続端子が上記ケーシングの上記前後面に配置され、上記配管接続口が上記ケーシングの上記左右面に配置されたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、配管と電線を互いに異なる面でケーシング(配管接続口、接続端子)に接続するため、もし配管接続部分や配管からの流体漏れが発生しても、漏れた流体が直接電線または接続端子に直接降りかかるおそれがない。また、こうすれば、上部旋回体の旋回時に、万一、サイドデッキに設置されたハイブリッド機器が外部障害物と接触しても接続端子に被害が及ぶおそれがないため、断線等の深刻なトラブルを回避することができる。
【0020】
本発明において、上記接続端子を上記配管接続口よりも高位置に設けるのが望ましい(請求項2)。
【0021】
この構成によれば、配管接続部分から漏れた流体(とくに水)が周りに溜まっても、接続端子までは到達しにくいため、安全性がさらに高くなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、一つのハイブリッド機器に流体配管と電線の双方が接続される状況において、機器に対する流体配管の接続部分またはその近傍で流体漏れが発生しても、漏れた流体が電線または端子に直接降りかかる事態を回避して安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態にかかるハイブリッドショベルにおけるアッパーフレームとその機器配置及び配管、配線状態を示す平面図である。
図2図1の一部拡大図である。
図3図2の部分の拡大斜視図である。
図4図3のIV−IV線拡大断面図である。
図5】本発明の適用対象であるハイブリッドショベルの概略側面図である。
図6】ハイブリッドショベルにおけるアッパーフレームとその機器配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を図1図4によって説明する。
【0027】
実施形態は、背景技術の説明に合わせてハイブリッドショベルを適用対象としている。
【0028】
実施形態において、次の点は図5,6に示す従来技術と同じである。
【0029】
(i) 上部旋回体のベースとなるアッパーフレーム3は、補強部材とアタッチメント取付部材を兼ねる左右一対の縦板8,8を備えたセンターセクションCと、このセンターセクションCの左右両側に設けられた梁構造体であるサイドデッキD1,D2によって構成され、センターセクションCの後部に動力源としてのエンジン9が設置される点。
【0030】
(ii) ハイブリッド機器として、エンジン9のたとえば右側に、発電機作用と電動機作用を行う発電電動機10が油圧ポンプ11と左右に並んで配置され、これらがエンジン9によって駆動される点。
【0031】
(iii) エンジン9の左側には、エンジン冷却用のラジエータ12及び冷却ファン13に加えて、ハイブリッド機器冷却用の冷却器14及び冷却ポンプ15が設置される点。
【0032】
(iv) 右サイドデッキD2には、他のハイブリッド機器として、前部に、発電電動機10の動作を制御する制御ユニット(インバータ)16と、図示しないハイブリッド電源である蓄電装置が上下積層配置で設けられるとともに、その後方にタンク(たとえば燃料タンク)17が設置される点。
【0033】
(v) センターセクションCのほぼ中央部に旋回駆動源としての旋回電動機18が設置される点。
【0034】
(vi) ハイブリッド機器(発電電動機10、制御ユニット16、蓄電装置、旋回電動機18)同士が、電線、すなわち、電力の授受を行うための動力ケーブル19a,19bや制御信号をやり取りする信号ケーブル20によって接続される点。
【0035】
(vii) これらハイブリッド機器は冷却や暖機を必要とするため、機器同士、及び機器と冷却器14及び冷却ポンプ15が流体配管(水配管)21,22によって接続される点。
【0036】
図1,2において、ハイブリッド機器同士を接続する電線のうち動力ケーブル19a,19bを太線の一点鎖線で、信号ケーブル20を太線の二点鎖線でそれぞれ示す。なお、以下、動力、信号各ケーブル19a,19b,20を一括して「電線」と表記する場合がある。
【0037】
動力ケーブル19a,19bは発電電動機10と制御ユニット16の間や、制御ユニット16と旋回電動機18の間に配線され、信号ケーブル20は制御ユニット16と上位コントローラ27(図1参照)の間等に配線される。
【0038】
一方、図1,2において、水配管のうち、制御ユニット16に流入するイン配管21を黒塗り矢印付きの太線で、制御ユニット16から流出するアウト配管22を白抜き矢印付きの太線でそれぞれ示す。
【0039】
イン配管21は、冷却器14−発電電動機10−旋回電動機18−制御ユニット16の経路で配索される。
【0040】
また、アウト配管22は、制御ユニット16−冷却ポンプ15−冷却器14の経路で配索される。
【0041】
なお、左右の縦板8,8には、適宜の位置で電線19,20及び配管21,22を通すための複数の通し穴(一括符号「26」を付している)が設けられる。
【0042】
上記のように制御ユニット16には、電線(動力、信号各ケーブル)19a,19b,20と水配管(イン、アウト両配管)21,22の双方が接続されるため、もし配管接続部分やその近傍で接続不良や配管のひび割れ、破裂等による水漏れが発生すると、電線19a,19b,20に被害が及ぶ可能性がある。
【0043】
そこで実施形態では、この制御ユニット16に対して次の配索構造がとられている。
【0044】
制御ユニット16は、図3,4に示すように平面視四角形のケーシング23内に制御部が収容されて成り、図3,4に示す台枠24及びマウント部材25を介して右サイドデッキD2の前部に設置されている。
【0045】
また、ケーシング23には、前面に、動力用接続端子J1,J2及び信号用接続端子J3が設けられ、動力ケーブル19a,19bが動力用接続端子J1,J2に、信号ケーブル20が信号用接続端子J3にそれぞれ接続される。
【0046】
さらに、ケーシング右側面にイン配管接続口P1、左側面にアウト配管接続口P2がそれぞれ設けられ、この両接続口P1,P2にイン、アウト両配管21,22が接続される。
【0047】
すなわち、実施形態においては、第1の特徴点として、制御ユニット16の配管接続口P1,P2がケーシング23の左右の側面、各接続端子J1,J2,J3が前面にそれぞれ設けられ、水配管21,22と電線19a,19b,20をケーシング23の互いに異なる面で接続するように構成されている。
【0048】
この構成により、もし配管接続部分やその近くの配管からの水漏れが発生しても、漏れた水が直接電線19a,19b,20または接続端子J1〜J3に降りかかるおそれがない。
【0049】
また、第2の特徴点として、図4に示すように、各接続端子J1〜J3が配管接続口P1,P2よりも高位置に設けられている。図4中、αはこれらの高さ方向の位置ずれ量を示す。
【0050】
こうすれば、配管接続部分から漏れた水が周りに溜まっても、接続端子J1〜J3までは到達しにくいため、安全性をさらに高めることができる。
【0051】
さらに、実施形態によると、ケーシング23の各接続端子J1〜J3が、右サイドデッキD2の車幅方向の外側(右側)を避けて前側に設けられているため、機械旋回時に、万一、右サイドデッキD2に設置された制御ユニット16が外部障害物と接触することがあっても、接続端子J1〜J3には被害が及ぶ可能性が低いため、断線による制御停止等の深刻なトラブルを回避することができる。
【0052】
他の実施形態
(1) 接続端子J1〜J3を、配管接続口P1,P2と異なる面であること条件としてケーシング23の後側、または車幅方向の内側に配置してもよい。
【0053】
(2) 制御ユニット16を左サイドデッキD1に設置してもよい。
【0054】
(3) 上記実施形態では、配管接続口P1,P2と接続端子J1〜J3の両者が設けられるハイブリッド機器として制御ユニット16を例にとったが、本発明は、制御ユニット16と同様の条件を備えた他のハイブリッド機器(たとえば発電電動機10や蓄電装置)に対しても上記同様に適用することができる。
【0055】
(4) 本発明はショベルに限らず、ショベルを母体として構成されるハイブリッド式の解体機や破砕機等、他のハイブリッド建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 上部旋回体のアッパーフレーム
C アッパーフレームを構成するセンターセクション
D1 同、左サイドデッキ
D2 同、右サイドデッキ
16 制御ユニット
19a,19b 電線(動力ケーブル)
20 電線(信号ケーブル)
21,22 イン、アウト両水配管
23 制御ユニットのケーシング
J1〜J3 接続端子
P1,P2 配管接続口
図1
図2
図3
図4
図5
図6