(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る歯車ポンプの実施の形態について説明する。
【0021】
(第1実施形態)
[歯車ポンプの全体構成]
図1に示すように、第1実施形態の歯車ポンプ1は、互いに噛み合う駆動歯車2及び従
動歯車3と、駆動歯車2及び従動歯車3をそれぞれ軸支する駆動軸4a、4b及び従動軸
5a、5bと、駆動歯車2、従動歯車3、駆動軸4a、4b及び従動軸5a、5bを収納
するケーシング6とを備えている。本実施形態の歯車ポンプ1は、作動流体(例えば作動
油)を貯留するタンクから供給される作動流体を吸い込んで昇圧した後、その作動流体を
吐出して液圧機器に供給するものである。
【0022】
ケーシング6は、断面形状が略8の字状をした内部空間(メガネ穴10)を有する本体
7と、本体7の一端面に螺着されたマウンティング8と、本体7の他端面に螺着されたカ
バー9とを有している。歯車ポンプ1において、マウンティング8及びカバー9によって
、本体7の内部に形成されたメガネ穴10が閉塞されている。
【0023】
図1および
図2に示すように、駆動歯車2及び従動歯車3は、それぞれ、はすば歯車と
して構成されており、ケーシング6の内部に形成されたメガネ穴10に挿入される。メガ
ネ穴10において、駆動軸4a、4bが駆動歯車2の両端面から軸方向に沿ってそれぞれ
延設され、従動軸5a、5bが従動歯車3の両端面から軸方向に沿ってそれぞれ延設され
る。駆動軸4aは、マウンティング8に形成された挿通穴8aに挿通されており、駆動軸
4aの端部には、図示しない駆動手段が接続される。歯車ポンプ1において、駆動歯車2
及び従動歯車3は、相互に噛合した状態で、メガネ穴10内に収納され、その歯先がメガ
ネ穴10の内周面に摺接するようになっている。
【0024】
ケーシング6の内部に形成されたメガネ穴10には、
図1において、駆動歯車2から左
方に向かって延在する駆動軸4aを支持するベアリングケース11と、従動歯車3から左
方に向かって延在する従動軸5aを支持するベアリングケース111が挿入される。ベア
リングケース11、111は、それぞれ、1つの支持穴を有しており、その支持穴内には
、駆動軸4aの軸受であるベアリング11a、従動軸5aの軸受であるベアリング111
aが設けられている。したがって、ベアリングケース11は、駆動軸4aがベアリング1
1aに挿通されることで駆動軸4aを回転自在に支持するとともに、ベアリングケース1
11は、従動軸5aがベアリング111aに挿通されることで従動軸5aを回転自在に支
持する。
【0025】
同様に、ケーシング6の内部に形成されたメガネ穴10には、
図1において、駆動歯車
2から右方に向かって延在する駆動軸4bを支持するベアリングケース12と、従動歯車
3から右方に向かって延在する従動軸5bを支持するベアリングケース112が挿入され
る。ベアリングケース12、112は、それぞれ、1つの支持穴を有しており、その支持
穴内には、駆動軸4bの軸受であるベアリング12a、従動軸5bの軸受であるベアリン
グ112aが設けられている。したがって、ベアリングケース12は、駆動軸4bがベア
リング12aに挿通されることで駆動軸4bを回転自在に支持するとともに、ベアリング
ケース112は、従動軸5bがベアリング112aに挿通されることで従動軸5bを回転
自在に支持する。
【0026】
駆動歯車2及び従動歯車3の両側には、2つの側板15a、15bがそれぞれ配置され
る。側板15aは、2つの貫通穴が形成された板状の部材であり、2つの貫通穴に、駆動
軸4a及び従動軸5aが挿通された状態で、駆動歯車2及び従動歯車3の端面に当接する
。同様に、側板15bは、2つの貫通穴が形成された板状の部材であり、2つの貫通穴に
、駆動軸4b及び従動軸5bが挿通された状態で、駆動歯車2及び従動歯車3の端面に当
接する。したがって、側板15aは、駆動歯車2及び従動歯車3と、ベアリングケース1
1、111との間に配置されるとともに、側板15bは、駆動歯車2及び従動歯車3と、
ベアリングケース12、112との間に配置される。
【0027】
ベアリングケース11、111における側板15aと対向する端面には、弾性を有する
シール部材11bが設けられている。シール部材11bは、ベアリングケース11、11
1と側板15aとの間の隙間を高圧側と低圧側とに区画するものである。ベアリングケー
ス11の他方の端面は、マウンティング8の端面に当接しており、これにより、ベアリン
グケース11、111は、その軸方向への移動が制限される。同様に、ベアリングケース
12、112における側板15bと対向する端面には、弾性を有するシール部材12bが
設けられている。シール部材12bは、ベアリングケース12、112と側板15bとの
間の隙間を高圧側と低圧側とに区画するものである。ベアリングケース12、112の他
方の端面は、カバー9の端面に当接しており、これにより、ベアリングケース12、11
2は、その軸方向への移動が制限される。
【0028】
歯車ポンプ1において、本体7には、
図3に示すように、その一方の側面にメガネ穴1
0の低圧空間に通じる吸込み穴7aが形成されるとともに、これと相対する他方の側面に
、メガネ穴10の高圧空間に通じる吐出し穴7bが形成されている。そして、吸込み穴7
a及び吐出し穴7bは、それぞれの軸線が駆動歯車2及び従動歯車3の回転軸間の中心に
位置するように設けられている。
【0029】
したがって、歯車ポンプ1では、ケーシング6の吸込み穴7aに、作動流体を貯留する
タンクからの配管が接続されるとともに、吐出し穴7bに、液圧機器へ向かう配管が接続
され、駆動歯車2の駆動軸4aを図示しない駆動手段によって回転させる。これにより、
駆動歯車2に噛み合った従動歯車3が回転し、メガネ穴10の内周面と駆動歯車2及び従
動歯車3の歯面によって囲まれた空間の作動流体が歯車の回転によって吐出し穴7b側に
移送され、駆動歯車2及び従動歯車3の噛み合い部を境として、吐出し穴7b側が高圧側
に、吸込み穴7a側が低圧側になる。
【0030】
作動流体が吐出し穴7b側に移送されることによって吸込み穴7a側が負圧になると、
タンク内の作動流体が配管及び吸込み穴7aを介して低圧側のメガネ穴10内に吸引され
、メガネ穴10の内周面と駆動歯車2及び従動歯車3の歯面によって囲まれた空間の作動
流体が歯車の回転によって吐出し穴
7b側に移送され、高圧に加圧されて吐出し穴
7b及
び配管を介して液圧機器に送られる。
【0031】
本実施形態の歯車ポンプ1では、
図1に示すように、ケーシング6の内部において、駆
動軸4bの端部(
図1の右端部)及び従動軸5bの端部(
図1の右端部)にそれぞれ対向
する駆動側空間16及び従動側空間116が設けられる。駆動側空間16及び従動側空間
116は、それぞれ、カバー9の端面に形成された凹部の内部に構成される。駆動側空間
16及び従動側空間116は、メガネ穴10から吐出圧(高圧)の作動流体が流入してき
て、低圧より高い圧力であり、且つ、吐出圧より低い所定の中間圧以下の圧力に維持され
得る。これにより、駆動歯車2及び従動歯車3が回転駆動されているときに、
図1におい
て、駆動軸4bの端部が駆動側空間16に供給された作動流体によって左方に押圧される
とともに、従動軸5bの端部が従動側空間116に供給された作動流体によって左方に押
圧される。したがって、駆動歯車2及び従動歯車3が回転駆動されているときに、駆動歯
車4及び従動歯車5には、歯の噛み合いによるスラスト力や、歯面に作用する液圧による
スラスト力や、歯の側面に作用する液圧によるスラスト力が作用し、駆動歯車2及び従動
歯車3が右方に向かって押圧されるが、そのスラスト力が、駆動側空間16内の作動流体
の圧力および従動側空間116内の作動流体の圧力によって打ち消される。
【0032】
まず、駆動軸4bの端部が駆動側空間16に供給された作動流体によって左方に押圧さ
れる構成について、
図1および
図4に基づいて説明する。
図4は、ピストン19の移動に
ついて説明する模式図であって、例えば大径部分19aの断面積と小径部分19bの断面
積との面積差を誇張して図示している。
【0033】
ベアリングケース12には、駆動軸4bの外周側において、駆動軸4bの軸方向に沿う
ように形成された筒孔17が設けられる。
図1において、筒孔17は、カバー9の端面に
向かって開口しており、その開口から左方に向かって延在し、筒孔17の開口は、駆動側
空間16に連通している。筒孔17は、開口側に配置された大径孔部17aと、大径孔部
17aより奥側に配置された小径孔部17bとを有している。小径孔部17bの内径は、
大径孔部17aの内径より僅かに小さい。
【0034】
ベアリングケース12には、筒孔17に対して直交方向に沿うように形成された3つの
連通路18a、18b、18cが設けられる。第1連通路18aは、筒孔17の開口近く
において大径孔部17aに連通可能に構成される。第2連通路18bは、大径孔部17a
に連通しており、第3連通路18cは、筒孔17の最奥側において小径孔部17bに連通
している。
【0035】
ベアリングケース12の筒孔17の内部には、ピストン19が配置されている。ピスト
ン19は、大径部分19aと、大径部分19aと一体に構成された小径部分19bとを有
している。ピストン19は、その大径部分19aが筒孔17の大径孔部17aに配置され
るとともに、その小径部分19bが筒孔17の小径孔部17bに配置されるように、ベア
リングケース12の筒孔17に挿入される。大径部分19aは、筒孔17の大径孔部17
aの内径と略同一の外径を有しており、小径部分19bは、筒孔17の小径孔部17bの
内径と略同一の外径を有している。
【0036】
ベアリングケース12の第1連通路18a及び第3連通路18cは、図示しない通路を
介して、メガネ穴10の低圧空間に連通しており、第2連通路18bは、図示しない通路
を介して、メガネ穴10の高圧空間に連通している。
【0037】
ピストン19の大径部分19aの右端面は、駆動側空間16に供給された中間圧の作動
流体によって左方に向かって押圧されるとともに、大径部分19aの左端面(小径部分1
9bのない部分)は、第2連通路18bに供給された吐出圧の作動流体によって右方に向
かって押圧される。なお、第3連通路18cは、メガネ穴10の低圧空間に連通しており
、小径部分19bの左端面は、第3連通路18c内の作動流体によって押圧されるが、小
径部分19bの左端面に作用する力は、大径部分19aの右端面に作用する力や大径部分
19aの左端面に作用する力と比べて、無視できる程度に小さいと考えられる。したがっ
て、ピストン19の大径部分19aは、その右端面に作用する力と、その左端面に作用す
る力との大小によって、筒孔17の内部を移動する。ピストン19の大径部分19aの右
端面に作用する力は、駆動側空間16に供給された中間圧の作動流体の圧力(P1)と、
大径部分19aの右端面の面積(S1)とを乗じることにより演算され、ピストン19の
大径部分19aの左端面に作用する力は、第2連通路18bに供給された吐出圧の作動流
体の圧力(P2:吐出圧)と、大径部分19aの左端面の面積(S2)とを乗じることに
より演算される。大径部分19aの左端面の面積(S2)は、大径部分19aの断面積か
ら小径部分19bの断面積を除くことによって演算される。
【0038】
図4(a)は、駆動側空間16と第1連通路18aとが連通しない状態(駆動側空間1
6が閉じた空間であることから、閉状態という)を示している。この状態では、ピストン
19の大径部分19aが、筒孔17の内部において第1連通路18aの全域と対向してい
るので、第1連通路18aが大径部分19aによって閉塞されている。駆動歯車2及び従
動歯車3が回転駆動されているとき、メガネ穴10の高圧空間内の作動流体は、駆動軸4
bとベアリング12aとの間の隙間を通過して、駆動側空間16に流れ込む。したがって
、駆動側空間16内の作動流体の圧力(P1)は、メガネ穴10の高圧空間の圧力に一致
するまで上昇しようとするので、ピストン19の大径部分19aの右端面に作用する力が
増加する。これに対し、ピストン19の大径部分19aの左端面に作用する力は、第2連
通路18b内の吐出圧の作動流体の圧力(P2)と、大径部分19aの左端面の面積(S
2)とを乗じたものであって、常に一定である。よって、閉状態になってから時間が十分
に経過しておらず、駆動側空間16の作動流体の圧力(P1)が所定圧力(所定の駆動側
中間圧)以下の場合、ピストン19の大径部分19aの右端面に作用する力が、ピストン
19の大径部分19aの左端面に作用する力より小さいので、駆動側空間16と第1連通
路18aは連通しない閉状態に維持される。
【0039】
図4(b)は、駆動側空間16と第1連通路18aとが連通する状態(駆動側空間16
が閉じてない空間であることから、開状態という)を示している。この状態では、ピスト
ン19の大径部分19aが、筒孔17の奥側に向かって左方に移動することによって、筒
孔17の内部において第1連通路18aの全域と対向してないので、第1連通路18aが
大径部分19aによって閉塞されていない。即ち、駆動歯車2及び従動歯車3が回転駆動
されているとき、メガネ穴10の高圧空間内の作動流体が、駆動軸4bとベアリング12
aとの間の隙間を通過して、駆動側空間16に流れ込み、駆動側空間16内の作動流体の
圧力(P1)が上昇し、ピストン19の大径部分19aの右端面に作用する力が、ピスト
ン19の大径部分19aの左端面に作用する力より大きくなって、ピストン19の大径部
分19aが左方に移動して、駆動側空間16と第1連通路18aとが連通する開状態に変
化したのである。その後、駆動側空間16内の作動流体は、第1連通路18aからメガネ
穴10の低圧空間に流れ出すことによって、駆動側空間16内の作動流体の圧力(P1)
が低圧と略同一の圧力まで低下し、ピストン19の大径部分19aの右端面に作用する力
が、ピストン19の大径部分19aの左端面に作用する力より小さくなって、ピストン1
9の大径部分19aが右方に移動して、
図4(a)の閉状態に変化する。
【0040】
このように、ピストン19は、駆動側空間16の圧力が吐出圧より低い所定の駆動側中
間圧以下のときに、駆動側空間16を吸入圧(低圧)へ作動流体を還流する第1連通路1
8a(低圧空間)に連通させないとともに、駆動側空間16の圧力が所定の駆動側中間圧
を超えたときに、駆動側空間16を第1連通路18a(低圧空間)に連通させる駆動側開
閉部材として機能する。ピストン19は、吐出圧の作動流体が導入される第2連通路18
b(高圧空間)に面する大径部分19aの左端面(閉動作受圧面)と、駆動側空間16に
面し且つ閉動作受圧面より大きい大径部分19の右端面(開動作受圧面)を有している。
ピストン19は、駆動軸4bの外周に配置されたベアリングケース12の筒孔17の内部
に配置される。
【0041】
次に、従動軸5bの端部が従動側空間116に供給された作動流体によって左方に押圧
される構成について、
図1および
図5に基づいて説明する。
図5は、ピストン119の移
動について説明する模式図であって、例えば大径部分119aの断面積と小径部分119
bの断面積との面積差を誇張して図示している。
【0042】
ベアリングケース112には、従動軸5bの外周側において、従動軸5bの軸方向に沿
うように形成された筒孔117が設けられる。
図1において、筒孔117は、カバー9の
端面に向かって開口しており、その開口から左方に向かって延在し、筒孔117の開口は
、従動側空間116に連通している。筒孔117は、開口側に配置された大径孔部117
aと、大径孔部117aより奥側に配置された小径孔部117bとを有している。小径孔
部117bの内径は、大径孔部117aの内径より僅かに小さい。
【0043】
ベアリングケース112には、筒孔117に対して直交方向に沿うように形成された3
つの連通路118a、118b、118cが設けられる。第1連通路118aは、筒孔1
17の開口近くにおいて大径孔部117aに連通可能に構成される。第2連通路118b
は、大径孔部117aに連通しており、第3連通路118cは、筒孔117の最奥側にお
いて小径孔部117bに連通している。
【0044】
ベアリングケース112の筒孔117の内部には、ピストン119が配置されている。
ピストン119は、大径部分119aと、大径部分119aと一体に構成された小径部分
119bとを有している。ピストン119は、その大径部分119aが筒孔117の大径
孔部117aに配置されるとともに、その小径部分119bが筒孔117の小径孔部11
7bに配置されるように、ベアリングケース112の筒孔117に挿入される。大径部分
119aは、筒孔117の大径孔部117aの内径と略同一の外径を有しており、小径部
分119bは、筒孔117の小径孔部117bの内径と略同一の外径を有している。
【0045】
ベアリングケース112の第1連通路118a及び第3連通路118cは、図示しない
通路を介して、メガネ穴10の低圧空間に連通しており、第2連通路118bは、図示し
ない通路を介して、メガネ穴10の高圧空間に連通している。
【0046】
ピストン119の大径部分19aの右端面は、従動側空間116に供給された中間圧の
作動流体によって左方に向かって押圧されるとともに、大径部分119aの左端面(小径
部分119bのない部分)は、第2連通路118bに供給された吐出圧の作動流体によっ
て右方に向かって押圧される。なお、第3連通路118cは、メガネ穴10の低圧空間に
連通しており、小径部分119bの左端面は、第3連通路118c内の作動流体によって
押圧されるが、小径部分119bの左端面に作用する力は、大径部分119aの右端面に
作用する力や大径部分119aの左端面に作用する力と比べて、無視できる程度に小さい
と考えられる。したがって、ピストン119の大径部分119aは、その右端面に作用す
る力と、その左端面に作用する力との大小によって、筒孔117の内部を移動する。ピス
トン119の大径部分119aの右端面に作用する力は、従動側空間116に供給された
中間圧の作動流体の圧力(P11)と、大径部分119aの右端面の面積(S11)とを
乗じることにより演算され、ピストン119の大径部分119aの左端面に作用する力は
、第2連通路118bに供給された吐出圧の作動流体の圧力(P2:吐出圧)と、大径部
分119aの左端面の面積(S12)とを乗じることにより演算される。大径部分119
aの左端面の面積(S12)は、大径部分119aの断面積から小径部分119bの断面
積を除くことによって演算される。
【0047】
図5(a)は、従動側空間116と第1連通路118aとが連通しない状態(従動側空
間116が閉じた空間であることから、閉状態という)を示している。
図4(a)と同様
に、閉状態になってから時間が十分に経過しておらず、従動側空間116の作動流体の圧
力(P11)が所定圧力(所定の従動側中間圧)以下の場合、ピストン119の大径部分
119aの右端面に作用する力が、ピストン119の大径部分119aの左端面に作用す
る力より小さいので、従動側空間116と第1連通路118aは連通しない閉状態に維持
される。
【0048】
図5(b)は、従動側空間116と第1連通路118aとが連通する状態(従動側空間
116が閉じてない空間であることから、開状態という)を示している。
図4(b)と同
様に、従動側空間116に作動流体が流れ込んで、従動側空間116の作動流体の圧力(
P11)が所定圧力(所定の従動側中間圧)を超えた場合、ピストン119の大径部分1
19aの右端面に作用する力が、ピストン119の大径部分119aの左端面に作用する
力より大きくなって、従動側空間116と第1連通路118aとが連通する開状態に変化
する。その後、従動側空間116内の作動流体は、第1連通路118aからメガネ穴10
の低圧側の空間に流れ出すことによって、従動側空間116内の作動流体の圧力(P11
)が低圧と略同一の圧力まで低下し、ピストン119の大径部分119aの右端面に作用
する力が、ピストン119の大径部分119aの左端面に作用する力より小さくなって、
ピストン119の大径部分119aが右方に移動して、
図5(a)の閉状態に変化する。
【0049】
このように、ピストン119は、従動側空間116の圧力が吐出圧より低い所定の従動
側中間圧以下のときに、従動側空間116を吸入圧(低圧)へ作動流体を還流する第1連
通路18a(低圧空間)に連通させないとともに、従動側空間116の圧力が所定の従動
側中間圧を超えたときに、従動側空間116を第1連通路118a(低圧空間)に連通さ
せる従動側開閉部材として機能する。ピストン119は、吐出圧の作動流体が導入される
第2連通路118b(高圧空間)に面する大径部分119aの左端面(閉動作受圧面)と
、従動側空間116に面し且つ閉動作受圧面より大きい大径部分119の右端面(開動作
受圧面)を有している。ピストン119は、従動軸5bの外周に配置されたベアリングケ
ース112の筒孔117の内部に配置される。
【0050】
駆動歯車2及び従動歯車3が回転駆動されているときに、駆動歯車4及び従動歯車5に
は、歯の噛み合いによるスラスト力や、歯面に作用する液圧によるスラスト力や、歯の側
面に作用する液圧によるスラスト力が作用するが、駆動歯車4(駆動軸4b)に作用する
合計スラスト力は、従動歯車5(従動軸5b)に作用する合計スラスト力より大きい。し
たがって、本実施形態の歯車ポンプ1では、駆動歯車2及び従動歯車3が回転駆動されて
いるときに、駆動軸4bが駆動側空間16内の作動流体の圧力によって左方に押圧される
力は、従動軸5bが駆動側空間16内の作動流体の圧力によって左方に押圧される力より
大きくなるように構成される。即ち、例えば、ピストン19、119において、それぞれ
、大径部分19a、119aの左端面(閉動作受圧面)に作用する圧力は吐出圧で一定で
あるので、大径部分19a、119aの左端面(閉動作受圧面)と大径部分19a、11
9aの右端面(開動作受圧面)とのそれぞれの面積差を変えることにより、所定の駆動側
中間圧および所定の従動側中間圧をそれぞれ調整することができる。本実施形態では、ピ
ストン19の大径部分19aの右端面(開動作受圧面)と、ピストン119の大径部分1
19aの右端面(開動作受圧面)とが同一の面積であって、ピストン19の大径部分19
aの左端面(閉動作受圧面)の面積が、ピストン119の大径部分119aの左端面(閉
動作受圧面)の面積より大きい。よって、本実施形態では、例えば、駆動側空間16と第
1連通路18aとが連通しない閉状態において、駆動側空間16内の中間圧が吐出圧の約
50%程度の圧力になったときに、ピストン19を左方に移動させることにより、駆動側
空間16と第1連通路18aとが連通する開状態に変化するとともに、従動側空間116
と第1連通路118aとが連通しない閉状態において、従動側空間116内の中間圧が吐
出圧の約20%程度の圧力になったときに、ピストン119を左方に移動させることによ
り、従動側空間116と第1連通路118aとが連通する開状態に変化するように構成さ
れる。
【0051】
<本実施形態の歯車ポンプの特徴>
本実施形態の歯車ポンプ1には、以下の特徴がある。
【0052】
本実施形態の歯車ポンプ1では、
駆動軸4および従動軸5の端部4b、5bに対向する駆動側空間16および従動側空間1
16を配置し、その駆動側空間16および従動側空間116内に流入する作動流体の圧力
によって、駆動軸4の端部4bおよび従動軸5の端部5bを押圧することにより、スラス
ト力を打ち消すことができる。したがって、軸端部4b、5bに接触するピストンによっ
て駆動歯車2及び従動歯車3の端部と側板15とが摩擦するのを防止するものと比べて、
機械効率が低下したり、部品が摩耗するのを防止できる。
【0053】
本実施形態の歯車ポンプ1では、高圧の作動流体が流入する駆動側空間16及び従動側
空間116の圧力を、それぞれ、高圧より低い駆動側中間圧および従動側中間圧以下に調
整することによって、駆動側空間16および従動側空間116内の作動流体の圧力に基づ
く駆動軸4の端部4bおよび従動軸5の端部5bへの押圧力が大きくなりすぎるのを防止
できる。
【0054】
本実施形態の歯車ポンプ1では、ピストン19、119の閉動作受圧面と開動作受圧面
との面積差を変えることにより、駆動側中間圧および従動側中間圧を、吐出圧に対する比
率を変更して、駆動側中間圧および従動側中間圧の高さを調整できる。
【0055】
本実施形態の歯車ポンプ1では、第2実施形態の歯車ポンプ201のように、ピストン
219、319が駆動軸4及び従動軸5と対向する部分に配置されたものと比べて、歯車
ポンプ1の全長を短くできる。
【0056】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る歯車ポンプ201について説明する。第2実施形態に係る
歯車ポンプ201が、第1実施形態に係る歯車ポンプ1と大きく異なる点は、駆動側空間
および従動側空間を開閉するピストンの構成と配置である。第2実施形態に係る歯車ポン
プ201のその他の構成は、第1実施形態に係る歯車ポンプ1と同様であるので、同一符
号を付して詳細説明は省略する。
【0057】
本実施形態の歯車ポンプ201では、
図6に示すように、ケーシング6の内部において
、駆動軸4bの端部(
図6の右端部)及び従動軸5bの端部(
図6の右端部)にそれぞれ
対向する駆動側空間216及び従動側空間316が設けられる。駆動側空間216及び従
動側空間316は、メガネ穴10から吐出圧(高圧)の作動流体が供給されるように構成
され、低圧より高い圧力であり、且つ、吐出圧より低い所定の中間圧以下の圧力に維持さ
れ得る。これにより、駆動歯車2及び従動歯車3が回転駆動されているときに、
図6にお
いて、駆動軸4bの端部が駆動側空間216に供給された作動流体によって左方に押圧さ
れるとともに、従動軸5bの端部が従動側空間316に供給された作動流体によって左方
に押圧される。したがって、駆動歯車2及び従動歯車3が回転駆動されているときに、駆
動歯車4及び従動歯車5には、歯の噛み合いによるスラスト力や、歯面に作用する液圧に
よるスラスト力や、歯の側面に作用する液圧によるスラスト力が作用し、駆動歯車2及び
従動歯車3の端部が右方に向かって押圧されるが、そのスラスト力が、駆動側空間216
内の作動流体の圧力および従動側空間316内の作動流体の圧力によって打ち消される。
【0058】
まず、駆動軸4bの端部が駆動側空間216に供給された作動流体によって左方に押圧
される構成について、
図6および
図7に基づいて説明する。
【0059】
カバー9には、第1連通路218a及び第2連通路218bが設けられる。第1連通路
218aは、図示しない通路を介して、メガネ穴10の低圧空間に連通しており、第2連
通路218bは、図示しない通路を介して、メガネ穴10の高圧空間に連通している。第
2連通路218bは、
図6において、駆動軸4b及び従動軸5bの右方に対応する部分を
有している。
【0060】
カバー9の端面には、駆動軸4bに対向する凹部209が設けられる。凹部209には
、円筒状の外周部材210が嵌入されている。外周部材210は、貫通孔である大径孔部
217aを有している。凹部209の底面と第2連通路218bとは、駆動軸4bの軸方
向に沿うように形成された貫通孔である小径孔部217bを介して連通している。大径孔
部217aと小径孔部217bとは、同軸上に配置され、筒孔217を構成する。したが
って、筒孔217は、駆動軸4b側に配置された大径孔部217aと、大径孔部217a
より第2連通路218b側に配置された小径孔部217bとを有している。小径孔部21
7bの内径は、大径孔部217aの内径より小さい。
【0061】
筒孔217の内部には、ピストン219が配置されている。ピストン219は、大径部
分219aと、大径部分219aと一体に構成された小径部分219bとを有している。
ピストン219は、その大径部分219aが筒孔217の大径孔部217aに配置される
とともに、その小径部分219bが筒孔217の小径孔部217bに配置される。大径部
分219aは、筒孔217の大径孔部217aの内径より大きい外径を有しており、小径
部分219bは、筒孔217の小径孔部217bの内径と略同一の外径を有している。
【0062】
外周部材210は、カバー9の凹部209の底面に対向する段部211を有している。
段部211は、外周部材210の内周側において全周に配置される。大径孔部217aの
内側に配置されたピストン219の大径部分219aは、段部211に対向する円錐状の
シール部212を有している。したがって、ピストン219は、そのシール部212が段
部211に当接する(押圧される)閉状態と、そのシール部212が段部211から離れ
た開状態とのいずれかを取り得る。
【0063】
カバー9に形成された第1連通路218aは、カバー9の凹部219の底面に連通して
いる。したがって、ピストン219が閉状態であるとき、駆動側空間216は、メガネ穴
10の低圧空間へ作動流体を還流する第1連通路218aと連通しないのに対し、ピスト
ン219が開状態であるとき、駆動側空間216は、メガネ穴10の低圧空間へ作動流体
を還流する第1連通路218aと連通する。
【0064】
ピストン219の大径部分219aの左端面(大径部分219aの左端面には、延在部
分219cが配置されているが、その延在部分219cがある部分を含む)は、駆動側空
間216に供給された中間圧の作動流体によって右方に向かって押圧されるとともに、小
径部分219aの右端面は、第2連通路218bに供給された吐出圧の作動流体によって
左方に向かって押圧される。したがって、ピストン219は、その大径部分219aの左
端面に作用する力と、その小径部分219aの右端面に作用する力との大小によって、筒
孔217の内部を移動する。ピストン19の大径部分19aの左端面に作用する力は、駆
動側空間216に供給された中間圧の作動流体の圧力(P101)と、大径部分219a
の左端面の面積(S101)とを乗じることにより演算され、ピストン219の小径部分
219aの右端面に作用する力は、第2連通路218bに供給された吐出圧の作動流体の
圧力(P2:吐出圧)と、小径部分219aの右端面の面積(S102)とを乗じること
により演算される。大径部分219aの左端面の面積(S101)は、大径部分219a
の左端面における外周部材の段部の内周側の部分の面積である。
【0065】
図7(a)は、駆動側空間216と第1連通路218aとが連通しない状態(駆動側空
間216が閉じた空間であることから、閉状態という)を示している。この状態では、ピ
ストン219の大径部分219aの左側面が、外周部材210の段部211に当接してい
る。駆動歯車2及び従動歯車3が回転駆動されているとき、メガネ穴10の高圧空間内の
作動流体は、駆動軸4bとベアリング12aとの間の隙間を通過して、駆動側空間216
に流れ込む。したがって、駆動側空間216内の作動流体の圧力(P101)は、メガネ
穴10の高圧空間の圧力に一致するまで上昇しようとするので、ピストン219の大径部
分219aの左端面に作用する力が増加する。これに対し、ピストン219の小径部分1
9bの右端面に作用する力は、第2連通路218b内の吐出圧の作動流体の圧力(P2:
吐出圧))と、小径部分219bの右端面の面積(S102)とを乗じたものであって、
常に一定である。よって、閉状態になってから時間が十分に経過しておらず、駆動側空間
216の作動流体の圧力(P101)が所定圧力(所定の駆動側中間圧)以下の場合、ピ
ストン219の大径部分219aの左端面に作用する力が、ピストン219の小径部分2
19bの右端面に作用する力より小さいので、駆動側空間216と第2連通路218bは
連通しない閉状態に維持される。
【0066】
図7(b)は、駆動側空間216と第1連通路218aとが連通する状態(駆動側空間
216が閉じてない空間であることから、開状態という)を示している。この状態では、
ピストン219の大径部分219aが、筒孔217を右方に移動することによって、ピス
トン219の大径部分219aの左側面が、外周部材210の段部211から離れている
。即ち、駆動歯車2及び従動歯車3が回転駆動されているとき、メガネ穴10の高圧空間
内の作動流体が、駆動軸4bとベアリング12aとの間の隙間を通過して、駆動側空間2
16に流れ込み、駆動側空間216内の作動流体の圧力(P101)が上昇し、ピストン
219の大径部分219aの左端面に作用する力が、ピストン19の小径部分219aの
右端面に作用する力より大きくなって、ピストン219の大径部分219aが右方に移動
して、駆動側空間216と第1連通路218aとが連通する開状態に変化したのである。
その後、駆動側空間216内の作動流体は、第1連通路218aからメガネ穴10の低圧
空間に流れ出すことによって、駆動側空間216内の作動流体の圧力(P101)が低圧
と略同一の圧力まで低下し、ピストン219の大径部分219aの左端面に作用する力が
、ピストン19の小径部分219bの右端面に作用する力より小さくなって、ピストン2
19の大径部分219aが左方に移動して、
図7(a)の閉状態に変化する。
【0067】
このように、ピストン219は、駆動側空間216の圧力が吐出圧より低い所定の駆動
側中間圧以下のときに、駆動側空間216を吸入圧(低圧)へ作動流体を還流する第1連
通路218a(低圧空間)に連通させないとともに、駆動側空間216の圧力が所定の駆
動側中間圧を超えたときに、駆動側空間216を第1連通路218a(低圧空間)に連通
させる駆動側開閉部材として機能する。ピストン219は、吐出圧(高圧)の作動流体が
導入される第2連通路218b(高圧空間)に面する小径部分219bの右端面(閉動作
受圧面)と、駆動側空間216に面し且つ閉動作受圧面より大きい大径部分219の左端
面(開動作受圧面)を有している。
【0068】
次に、従動軸5bの端部が従動側空間316に供給された作動流体によって左方に押圧
される構成について、
図6および
図8に基づいて説明する。
【0069】
カバー9には、第1連通路318a及び第2連通路218bが設けられる。第3連通路
318aは、図示しない通路を介して、メガネ穴10の低圧空間に連通しており、第2連
通路218bは、図示しない通路を介して、メガネ穴10の高圧空間に連通している。
【0070】
カバー9の端面には、従動軸5bに対向する凹部309が設けられる。凹部309には
、円筒状の外周部材310が嵌入されている。外周部材310は、貫通孔である大径孔部
317aを有している。凹部309の底面と第2連通路218bとは、従動軸5bの軸方
向に沿うように形成された貫通孔である小径孔部317bを介して連通している。大径孔
部317aと小径孔部317bとは、同軸上に配置され、筒孔317を構成する。したが
って、筒孔317は、従動軸5b側に配置された大径孔部317aと、大径孔部317a
より第2連通路218b側に配置された小径孔部317bとを有している。小径孔部31
7bの内径は、大径孔部317aの内径より小さい。
【0071】
筒孔317の内部には、ピストン319が配置されている。ピストン319は、大径部
分319aと、大径部分319aと一体に構成された小径部分319bとを有している。
ピストン319は、その大径部分319aが筒孔317の大径孔部317aに配置される
とともに、その小径部分319bが筒孔317の小径孔部317bに配置される。大径部
分319aは、筒孔317の大径孔部317aの内径より大きい外径を有しており、小径
部分319bは、筒孔317の小径孔部317bの内径と略同一の外径を有している。
【0072】
外周部材310は、カバー9の凹部309の底面に対向する段部311を有している。
段部311は、外周部材310の内周側において全周に配置される。大径孔部317aの
内側に配置されたピストン319の大径部分319aは、段部311に対向する円錐状の
シール部312を有している。したがって、ピストン319は、そのシール部312が段
部311に当接する(押圧される)閉状態と、そのシール部312が段部311から離れ
た開状態とのいずれかを取り得る。
【0073】
カバー9に形成された第1連通路218aは、カバー9の凹部309の底面に連通して
いる。したがって、ピストン319が閉状態であるとき、従動側空間316は、メガネ穴
10の低圧空間へ作動流体を還流する第1連通路318aと連通しないのに対し、ピスト
ン319が開状態であるとき、従動側空間316は、メガネ穴10の低圧空間へ作動流体
を還流する第1連通路318aと連通する。
【0074】
ピストン319の大径部分319aの左端面(大径部分319aの左端面には、延在部
分319cが配置されているが、その延在部分319cがある部分を含む)は、従動側空
間316に供給された中間圧の作動流体によって右方に向かって押圧されるとともに、小
径部分319aの右端面は、第2連通路218bに供給された吐出圧の作動流体によって
左方に向かって押圧される。したがって、ピストン319は、その大径部分319aの左
端面に作用する力と、その小径部分319aの右端面に作用する力との大小によって、筒
孔317の内部を移動する。ピストン319の大径部分319aの左端面に作用する力は
、従動側空間316に供給された中間圧の作動流体の圧力(P111)と、大径部分31
9aの左端面の面積(S111)とを乗じることにより演算され、ピストン319の小径
部分319aの右端面に作用する力は、第2連通路218bに供給された吐出圧の作動流
体の圧力(P2:吐出圧)と、小径部分319aの右端面の面積(S112)とを乗じる
ことにより演算される。大径部分319aの左端面の面積(S111)は、大径部分31
9aの左端面における外周部材の段部の内周側の部分の面積である。
【0075】
図8(a)は、従動側空間316と第1連通路318aとが連通しない状態(従動側空
間316が閉じた空間であることから、閉状態という)を示している。
図7(a)と同様
に、閉状態になってから時間が十分に経過しておらず、従動側空間316の作動流体の圧
力(P111)が所定圧力(所定の従動側中間圧)以下の場合、ピストン319の大径部
分319aの左端面に作用する力が、ピストン319の小径部分319bの右端面に作用
する力より小さいので、従動側空間316と第1連通路318aは連通しない閉状態に維
持される。
【0076】
図8(b)は、従動側空間316と第1連通路318aとが連通する状態(従動側空間
316が閉じてない空間であることから、開状態という)を示している。
図7(b)と同
様に、従動側空間316に作動流体が流れ込んで、従動側空間316の作動流体の圧力(
P111)が所定圧力(所定の従動側中間圧)を超えた場合、ピストン319の大径部分
319aの左端面に作用する力が、ピストン319の小径部分319bの右端面に作用す
る力より大きくなって、ピストン319の大径部分319aが右方に移動して、従動側空
間316と第1連通路318aとが連通する開状態に変化する。その後、従動側空間31
6内の作動流体は、第1連通路318aからメガネ穴10の低圧空間に流れ出すことによ
って、従駆側空間316内の作動流体の圧力(P111)が低圧と略同一の圧力まで低下
し、ピストン319の大径部分319aの左端面に作用する力が、ピストン319の小径
部分319bの右端面に作用する力より小さくなって、ピストン319の大径部分319
aが左方に移動して、
図8(a)の閉状態に変化する。
【0077】
このように、ピストン319は、従動側空間316の圧力が吐出圧より低い所定の従駆
側中間圧以下のときに、従動側空間316を吸入圧(低圧)へ作動流体を還流する第1連
通路318a(低圧空間)に連通させないとともに、従動側空間316の圧力が所定の従
動側中間圧を超えたときに、従動側空間316を第1連通路318a(低圧空間)に連通
させる従動側開閉部材として機能する。ピストン319は、吐出圧(高圧)の作動流体が
導入される第2連通路218b(高圧空間)に面する小径部分319bの右端面(閉動作
受圧面)と、従動側空間316に面し且つ閉動作受圧面より大きい大径部分319の左端
面(開動作受圧面)を有している。
【0078】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、ピストン219、319において、それぞれ
、小径部分219b、319bの右端面(閉動作受圧面)と大径部分219a、319a
の左端面(開動作受圧面)とのそれぞれの面積差を変えることにより、所定の駆動側中間
圧および所定の従動側中間圧をそれぞれ調整することができる。
【0079】
<本実施形態の歯車ポンプの特徴>
本実施形態の歯車ポンプ201には、以下の特徴がある。
【0080】
本実施形態の歯車ポンプ201では、第1実施形態の歯車ポンプ1と同様に、駆動軸4
および従動軸5の端部4b、5bに対向する駆動側空間216および従動側空間316を
配置し、その駆動側空間216および従動側空間316内に流入する作動流体の圧力によ
って、駆動軸4の端部4bおよび従動軸5の端部5bを押圧することにより、スラスト力
を打ち消すことができる。したがって、軸端部4b、5bに接触するピストンによって軸
端部4b、5bを押圧するものと比べて、機械効率が低下したり、部品が摩耗するのを防
止できる。その他、第1実施形態の歯車ポンプ1と同様の効果が得られる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これら
の実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した
実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の
意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0082】
上述の実施形態では、ピストンが吐出圧の作動流体が導入される高圧空間に面する閉動
作受圧面と、駆動側空間又は従動側空間に面し且つ閉動作受圧面より大きい開動作受圧面
とを有する場合について説明したが、ピストンの構成は変更してよい。
【0083】
上述の実施形態では、作動流体として作動油を使用する場合について説明したが、作動
流体として、その他の流体(例えば、水)を使用するものであってよい。
【0084】
上述の実施形態では、本発明が歯車ポンプに適用される場合について説明したが、本発
明は、歯車ポンプと同様に構成された歯車モータに適用されてよい。