特許第6075348号(P6075348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075348
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20170130BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20170130BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20170130BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20170130BHJP
   H02J 3/18 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   H02J3/12
   H02J3/16
   H02J3/38 130
   H02J13/00 301A
   H02J3/18 128
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-203078(P2014-203078)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-73153(P2016-73153A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】谷 祐志
【審査官】 桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/114582(WO,A1)
【文献】 特開2014−135872(JP,A)
【文献】 特開2014−23332(JP,A)
【文献】 特開2013−255375(JP,A)
【文献】 特開2012−114989(JP,A)
【文献】 特開2011−36091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 − 5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧調整用変圧器が二次側に出力する電圧の目標電圧を制御することにより、所定の条件により複数の区域に区分けされる太陽光発電装置と系統連系する配電線の電圧を調整する電圧調整装置であって、
前記太陽光発電装置に応じた太陽光の日射量を検出し、前記日射量が前の時点よりも大きくなった場合、前記電圧調整用変圧器の目標電圧が低くなるように制御し、前記日射量が前の時点よりも小さくなった場合、前記電圧調整用変圧器の目標電圧が高くなるように制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記複数の区域のいずれかの区域の前記太陽光発電装置に、前記太陽光発電装置から送電を受ける電力負荷が接続されている場合、
前記太陽光発電装置の設置位置に対応する区域で検出された前記日射量と、日射量と前記太陽光発電装置の発電量の関係を示す発電特性と、に基づいて、区域ごとの前記太陽光発電装置の発電量を算出し、
前記区域ごとの前記太陽光発電装置の発電量を前記区域ごとの前記電力負荷を重みとして加重平均した値と、前記電圧調整用変圧器のシフト制御量の関係を示す電圧変動特性と、に基づいて、前記電圧調整用変圧器の目標電圧を制御する
ことを特徴とする電圧調整装置。
【請求項2】
過去の複数の日時の日射量に関するデータに基づいて作成された、日射量の変化の傾向を示すデータを記憶部に備え、
前記制御部は、一定期間に検出された前記日射量の変化の傾向と、前記日射量の変化の傾向を示すデータとに基づいて、前記電圧調整用変圧器の目標電圧を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の電圧調整装置。
【請求項3】
前記電圧調整用変圧器の上流側に、前記電圧調整用変圧器に電力供給する第2の電圧調整用変圧器が設置されている場合、
前記制御部は、前記日射量、日射量と前記太陽光発電装置の発電量の関係を示す発電特性、及び発電量と前記第2の電圧調整用変圧器のシフト制御量の関係を示す第2の電圧変動特性とに基づいて、前記第2の電圧調整用変圧器の目標電圧を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電圧調整装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記日射量、日射量と前記太陽光発電装置の発電量の関係を示す発電特性、及び発電量と前記電圧調整用変圧器のシフト制御量の関係を示す電圧変動特性とに基づいて、段階的に前記電圧調整用変圧器の目標電圧を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至いずれか一項に記載の電圧調整装置。
【請求項5】
前記太陽光発電装置と系統連系する配電線に静止型無効電力補償装置が設置されている場合、
前記制御部は、前記日射量が前の時点から所定量以上変化したとき、前記電圧調整用変圧器の目標電圧を制御することに代えて、前記静止型無効電力補償装置の投入により配電線の電圧が調整されるように制御する
ことを特徴とする請求項1乃至いずれか一項に記載の電圧調整装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記電圧調整用変圧器が二次側に出力する電圧を監視する電圧継電器の目標電圧を制御することにより、前記電圧調整用変圧器が二次側に出力する電圧を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至いずれか一項に記載の電圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーを利用した発電システムの導入が進み、太陽光発電装置や太陽光発電装置が各地に建設されている。自然エネルギーを利用した発電システムは、自然現象の変化に応じて急激に発電量が変動するため、配電系統における配電線の電圧を適正範囲(低圧配電線の電圧が101±6V)に維持することが、困難であるという問題点を有している。特に、太陽光発電装置や太陽光発電装置が、分散型電源として各地に設置された場合、分散型電源からの発電量は、配電線の電圧上昇及び電圧降下に著しい影響を与える。このような状況下、配電線の電圧の安定化対策としては、過去に計測された気象情報等をもとに、予め、発電量の変動を予測する等の方法がとられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−019583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、太陽光発電に用いられる太陽光の日射量は、ゲリラ豪雨等により天候が急変する場合がある。そのため、特許文献1のような風速等の気象情報の予測データを用いて電圧調整をする方法では、太陽光発電の発電量の変動速度に追従しきれず、一時的に、配電線の電圧が適正範囲から逸脱するという事態が生じている。
【0005】
一方、太陽光発電装置等の分散型電源の発電量の変化に起因して、配電線の電圧の変動が生じた場合、その変動を即座に検出するのは困難である。加えて、一般に、配電線の電圧を調整するためには、電圧調整用変圧器(例えば、負荷時タップ切換用変圧器)が用いられるが、電圧調整用変圧器がタップを切り換えるためには、数十秒程度、時間がかかることもあり、電圧調整用変圧器は、急激な電圧の変化には対応しきれないという問題を有している。
【0006】
そこで、本発明は、太陽光発電装置により供給される発電量の変動に追従を可能とする、配電線の電圧を調整する電圧調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決する主たる本発明は、電圧調整用変圧器が二次側に出力する電圧の目標電圧を制御することにより、所定の条件により複数の区域に区分けされる太陽光発電装置と系統連系する配電線の電圧を調整する電圧調整装置であって、太陽光発電装置に応じた太陽光の日射量を検出し、日射量が前の時点よりも大きくなった場合、電圧調整用変圧器の目標電圧が低くなるように制御し、日射量が前の時点よりも小さくなった場合、電圧調整用変圧器の目標電圧が高くなるように制御する制御部を備え、制御部は、複数の区域のいずれかの区域の太陽光発電装置に、太陽光発電装置から送電を受ける電力負荷が接続されている場合、太陽光発電装置の設置位置に対応する区域で検出された日射量と、日射量と太陽光発電装置の発電量の関係を示す発電特性と、に基づいて、区域ごとの太陽光発電装置の発電量を算出し、区域ごとの太陽光発電装置の発電量を区域ごとの電力負荷を重みとして加重平均した値と、電圧調整用変圧器のシフト制御量の関係を示す電圧変動特性と、に基づいて、電圧調整用変圧器の目標電圧を制御することを特徴とする電圧調整装置である。本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、太陽光発電装置の発電量の変動に追従するように、配電線の電圧を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態における電力系統の構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態における線路電圧調整用変圧器の構成を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態における太陽光発電装置の設置位置を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態における電圧調整装置の構成を示す図である。
図5A】本発明の第1実施形態における日射量データを示す図である。
図5B】本発明の第1実施形態における発電特性データを示す図である。
図5C】本発明の第1実施形態における電圧変動特性データを示す図である。
図6】本発明の第1実施形態における配電線の電圧変動を説明する図である。
図7】本発明の第1実施形態における電圧調整装置の制御を説明する図である。
図8】本発明の第1実施形態における電圧調整装置の制御を説明する図である。
図9】本発明の第2実施形態における日射量の変化の傾向を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
<第1実施形態>
===電力系統の構成について===
本実施形態は、太陽光発電装置と系統連系する配電線において、日射量が急変した場合でも、配電線中の電圧が適正範囲(例えば、需要家への供給電圧が101±6V)に維持されるように、電圧調整装置が、日射量に基づいて、電圧調整用変圧器(系統電圧調整用変圧器、線路電圧調整用変圧器)の目標電圧を制御する点に特徴を有する。
【0012】
以下、図1図2図3を参照して本実施形態における電力系統の構成の一例について説明する。
【0013】
図1に、本実施形態に係る電力系統の一例を示す。本実施形態に係る電力系統は、連系変電所の系統電圧調整用変圧器100から、高圧母線LL、高圧配電線L1を介して、下流側の需要家R1〜R4に送電する構成となっている。又、本実施形態に係る電力系統は、高圧配電線L1中の各点に太陽光発電装置G1〜G4が接続され、太陽光発電装置G1〜G4の発電による高圧配電線L1の電圧変動を、系統電圧調整用変圧器100、線路電圧調整用変圧器200及び電圧調整装置300により調整する構成となっている(図1中の点線は信号経路を表す)。
【0014】
尚、図1中のメッシュN1、N2、N3、N4は、夫々、高圧配電線L1のA点、B点、D点、E点から分岐して接続された太陽光発電装置G1〜G4及び需要家R1〜R4の群である。メッシュN1、N2、N3、N4は、太陽光発電装置G1〜G4の発電に起因する高圧配電線L1(及び低圧配電線)の電圧変動を推定するため、所定の条件で区分けされた領域であり、例えば、図3に示すように、日本列島における中国地方を、20km四方の略矩形で区画した区域である。尚、図1中のA点、B点、C点、D点、E点は、系統電圧調整用変圧器100に近い上流側から下流側に向かう途中において、高圧配電線L1から分岐する地点を表す。
【0015】
系統電圧調整用変圧器100は、連系変電所に設置され、下流側の高圧配電線の全体の電圧を調整する装置である。系統電圧調整用変圧器100は、例えば、負荷時タップ切換器付変圧器であり、発電機又は他の変電所(図示せず)から受電した特別高圧(例えば、110kV)の電力を高圧(例えば、6.6kV)の電力に変電して、高圧母線LLを介して高圧配線線L1及びその他の配電線(図示せず)に送電する。尚、系統電圧調整用変圧器100は、系統電圧調整用変圧器100が二次側に出力する電圧(以下、「系統電圧調整用変圧器100の出力電圧」と言う)を、計器用変圧器(図示せず)を介して監視する電圧継電器110(図示せず)からの指示に応じて、タップ切換により変圧比を変更して、下流側の電圧を調整している。
【0016】
高圧配電線L1は、系統電圧調整用変圧器100が送電する下流側の電線であり、各地域に鉄塔により延設されている。高圧配電線L1は、連系変電所から受電した高電圧(6.6kV)の電力を柱上変圧器Tr1〜Tr4を介して、低電圧(100V) の電力に変換して、低圧配電線により、各地域の需要家R1〜R4に送電している。尚、高圧配電線L1及び低圧配電線は、三相交流の電力を送電する三相三線式の電線である。
【0017】
柱上変圧器Tr1〜Tr4は、高圧側に高圧配電線L1が接続され、低圧側に低圧配電線が接続され、例えば、6.6kVの高電圧と、100Vの低電圧とを相互に変圧する。尚、柱上変圧器Tr1〜Tr4は、夫々、高圧配電線L1のA点、B点、D点、E点から分岐して、需要家R1〜R4に電力を供給している。
【0018】
需要家R1〜R4は、例えば、家電製品や誘導型電動機を電力負荷として有し、柱上変圧器Tr1〜Tr4を介して低圧配電線に受電した電力を、それらの電力負荷に使用する。尚、柱上変圧器Tr1〜Tr4の変圧比は一定値に固定されており、高圧配電線L1に電圧変動が生じた場合、需要家R1〜R4が使用する低圧配電線の電圧も変動し、使用する家電製品や誘導型電動機に電気的に悪影響を及ぼすことになる。柱上変圧器Tr1〜Tr4の変圧比は、通常時、系統電圧調整用変圧器100から送電される電力の電圧降下を考慮して、各々、低圧配電線への供給電圧が適正範囲(101±6V)となるように設定されている。
【0019】
太陽光発電装置G1〜G4は、太陽光を利用して発電を行い、発電した電力を、需要家R1〜R4等に向けて送電する装置である。太陽光発電装置G1〜G4は、例えば、フォトダイオードにより構成され、太陽光発電装置G1〜G4夫々が設置された位置に照射される太陽光を、電気エネルギーに変換して発電を行う。そして、太陽光発電装置G1〜G4は、発電した電力をパワーコンディショナーにより所定の電圧(例えば、100V)、所定の周波数(例えば、60Hz)の交流電力に変換して、夫々の装置に接続された低圧配電線を介して需要家R1〜R4に送電する。太陽光発電装置G1〜G4が発電した電力は、主に、需要家R1〜R4の有する電力負荷で消費され、需要家R1〜R4の消費電力が少ないときは、高圧配電線L1に向けて送電される。
【0020】
日射量検出装置T1〜T4は、例えば、フォトダイオードにより構成され、日射量により生ずる起電力の電圧値を測定することにより、日射量を検出する。そして、日射量検出装置T1〜T4は、検出した日射量(例えば、1分間の平均値)を、電圧調整装置300に対して出力する。尚、本実施形態では、太陽光発電装置G1〜G4の夫々の設置位置に応じた発電量の変動を推定するため、メッシュN1〜N4ごとに日射量検出装置T1〜T4が設置されている。
【0021】
日射量検出装置T1〜T4は、CPU等から構成される制御部、不揮発性メモリ、揮発性メモリ等から構成される記憶部、通信コントローラ等から構成される通信部を備え、それらにより、電圧調整装置300とデータ通信が可能となっている。そして、日射量検出装置T1〜T4は、制御部が所定のプログラムを実行することで、日射量を検出し、検出した日射量を記憶部に格納するとともに、所定のタイミングで(例えば、1秒間隔)、通信部を用いて電圧調整装置300に対して、当該日射量に関するデータを送信する。尚、日射量検出装置T1〜T4は、太陽光発電装置G1〜G4と一体として構成され、太陽光発電装置G1〜G4の発電量に応じて、日射量を検出する装置であっても良い。
【0022】
図2に、本実施形態に係る線路電圧調整用変圧器200の一例を示す。線路電圧調整用変圧器200は、高圧配電線L1のC点に設置され、電圧継電器210により変圧比が制御されて、その下流側の電圧を調整する装置である。そして、電圧継電器210は、電圧調整装置300とデータ通信して、基準とする目標電圧が電圧調整装置300に制御される構成となっている。尚、本実施形態では、特に、下流側のE地点の電圧変動を調整する必要があるため、線路電圧調整用変圧器200について説明するが、電圧継電器110も、電圧継電器210と同様の構成を備え、電圧調整装置300の制御により系統電圧調整用変圧器100の出力電圧の調整もなされる。
【0023】
線路電圧調整用変圧器200は、例えば、系統電圧調整用変圧器100と同様に、負荷時タップ切換器付変圧器であり、高圧配電線L1の上流側から高圧(例えば、6.5kV)の電力を受電し、下流側の電圧が適正値(例えば、6.6kV)を維持するように変圧して、下流側に送電する。尚、図2中では、三相の配電線のうち一相分の単巻変圧器のみを表しているが、線路電圧調整用変圧器200は、三相の電線の一次側と二次側を夫々がY結線で構成されるとともに、三相夫々に単巻変圧器を備え、各相で同一レベルとなるように三相のタップが一括して切り換えられる構成となっている。
【0024】
電圧継電器210は、例えば、デジタル電圧継電器であり、計器用変圧器PTを介して、線路電圧調整用変圧器200が二次側に出力する電圧(以下、「線路電圧調整用変圧器200の出力電圧」と言う)を検出し、線路電圧調整用変圧器200の出力電圧が目標電圧に近づくように、線路電圧調整用変圧器200を制御する装置である。電圧継電器210は、CPU等から構成される制御部、不揮発性メモリ、揮発性メモリ等から構成される記憶部、通信コントローラ等から構成される通信部を備え、所定のプログラムを実行することで、各種機能を実現している。
【0025】
電圧継電器210は、具体的には、計器用変圧器PTを介して検出した電圧を、入力信号変換回路を介して適当な電圧に変換し、A/D変換回路を介してデジタル情報として取得して、基準電圧(目標電圧+0.5V(上限値)、目標電圧−0.5V(下限値))と比較する。そして、当該検出した電圧が目標電圧の上限値よりも大きいときは、線路電圧調整用変圧器200に対して1タップ下げの指示信号を出力し、当該検出した電圧が目標電圧の下限値よりも小さいときは、線路電圧調整用変圧器200に対して1タップ上げの指示信号を出力することにより、線路電圧調整用変圧器200の出力電圧が目標電圧に近づくように、線路電圧調整用変圧器200を制御する。
【0026】
又、電圧継電器210は、電圧調整装置300とデータ通信して、調整指示に応じた目標電圧となるように設定する。即ち、基準とする目標電圧が電圧調整装置300に制御されることにより、日射量変化に起因する太陽光発電装置G1〜G4の発電量の変動に対応することを可能としている。
【0027】
尚、電圧調整装置300は、太陽光発電装置G1〜G4に応じた日射量を日射量検出装置T1〜T4から取得して、日射量が前の時点よりも小さくなった場合には、線路電圧調整用変圧器200の出力電圧が高くなるように、日射量が前の時点よりも大きくなった場合には、線路電圧調整用変圧器200の出力電圧が低くなるように、電圧継電器210の目標電圧を制御する装置である(電圧調整装置300の構成及び動作の詳細については、後述する)。そして、系統電圧調整用変圧器100、及び線路電圧調整用変圧器200は、電圧調整装置300によって、太陽光発電装置G1〜G4の発電量の変動に起因して、高圧配電線L1の電圧変動が生じる前に、又は、即座にタップ切換をすることが可能となる。
【0028】
===電圧調整装置の構成について===
以下、図4図5A図5Cを参照して、本実施形態における電圧調整装置の構成について説明する。図4に、本実施形態に係る電圧調整装置300の内部構成の一例を示す。電圧調整装置300は、制御部310、記憶部320、通信部330、表示部340、入力部350を備えるコンピュータである。
【0029】
制御部310は、バス360を介して、記憶部320、通信部330、表示部340、入力部350を構成するハードウェアとデータ通信を行うとともに、それらの動作を制御する。又、制御部310は、検出された日射量に応じて線路電圧調整用変圧器200及び系統電圧調整用変圧器100の目標電圧を制御する機能を有する(機能の詳細は後述する)。制御部310は、例えば、CPUが記憶部320に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0030】
記憶部320は、電圧調整装置300を制御するコンピュータプログラム及び演算処理の中間データを記憶するとともに、制御部310による線路電圧調整用変圧器200及び系統電圧調整用変圧器100の目標電圧の制御を実現するため、日射量データM1、発電特性データM2、電圧変動特性データM3、電力系統データM4を記憶する領域を有する(データの内容の詳細は後述する)。記憶部320は、例えば、不揮発性メモリ(磁気ディスク、フラッシュメモリ、ROM)、揮発性メモリ(RAM)によって構成される。
【0031】
通信部330は、通信回線400を介して、日射量検出装置T1〜T4、及び線路電圧調整用変圧器200の出力電圧を制御する電圧継電器210、系統電圧調整用変圧器100の出力電圧を制御する電圧継電器110とデータ通信する。通信部330は、例えば、通信コントローラによって構成され、電圧調整装置300は、LAN(通信回線400)を介して、日射量検出装置T1〜T4から、各点で検出された日射量及び風向に関するデータを取得する。又、電圧調整装置300は、電圧継電器110とLAN(通信回線N)を介して接続され、これらの装置の目標電圧の制御を行う。
【0032】
表示部340は、制御部310により演算処理された結果(例えば、日射量に基づいて数秒後に予測される太陽光発電装置の発電量や、高圧配電線L1の電圧の変動量)を、電圧調整装置300の使用者に識別可能に表示する。表示部340は、例えば、液晶ディスプレイによって構成される。
【0033】
入力部350は、電圧調整装置300の使用者がデータ(例えば、電力系統に関するデータ)を入力した場合、記憶部320に記憶させる。入力部350は、例えば、キーボードによって構成される。
【0034】
=記憶部のデータ構成について=
ここで、記憶部320が有する日射量データM1、発電特性データM2、電圧変動特性データM3、電力系統データM4について説明する。
【0035】
日射量データM1は、日射量検出装置T1〜T4夫々と対応付けて記憶された、日射量検出装置T1〜T4から取得した日射量に関するデータ、及び日射量検出装置T1〜T4の設置位置に関するデータである。図5Aに、本実施形態に係る日射量データM1の一例を示す。日射量データM1は、例えば、1秒間隔で、日射量検出装置T1〜T4夫々から取得した日射量(1分間の平均日射量)に関するデータである。そして、記憶部320は、日射量検出装置T1〜T4から日射量に関するデータを取得するごとに、日射量データM1の更新を行う。尚、記憶部320は、過去に日射量検出装置T1〜T4から取得した日射量に関するデータを日射量データM1として蓄積している。又、日射量に関するデータは、太陽光発電装置G1〜G4の発電量を判断するためのデータであり、具体的な日射量の数値に代えて、日射量のレベルを示すデータであってもよい。又、太陽光発電装置G1〜G4夫々の、太陽方向を向く方向に応じた発電量を算出するため、あわせて太陽光に対する検出角度をデータとして保持していてもよい。又、日射量検出装置T1〜T4の日射量データが中央管理装置に記憶されている場合、中央管理装置を介して日射量データを取得してもよい。
【0036】
又、日射量検出装置T1〜T4の設置位置に関するデータは、日射量検出装置T1〜T4夫々の設置位置が、区分けされたメッシュのうち、どのメッシュに対応するかを表すデータである。尚、日射量検出装置T1〜T4の設置位置に関するデータは、太陽光発電装置G1〜G4夫々の設置位置における日射量を検出するためのデータであり、太陽光発電装置G1〜G4夫々の設置位置と対応づけることができればよく、例えば、緯度経度等の座標データであってもよい。
【0037】
発電特性データM2は、日射量と太陽光発電装置G1〜G4の発電特性の関係を示すデータである。図5Bに、本実施形態に係る発電特性データM2の一例をグラフ化して示す。ここで、図5Bの横軸は、日射量(W/m2)を表し、縦軸は、太陽光発電装置G1〜G4の発電量(kW)を表す。図5Bは、日射量が増加するに応じて、発電量もリニアに増加することを表している。電圧調整装置300は、発電特性データM2を用いて、太陽光発電装置G1〜G4の発電量の変動を推定する。尚、太陽光発電装置の発電量とは、太陽光発電装置の出力電力(W)、又は、出力電力と発電時間の積(W・s)を表す。尚、発電特性データM2は、太陽光発電装置G1〜G4ごとに保持しておき、夫々の設置位置の日射量(W/m2)に応じて、太陽光発電装置G1〜G4ごとの発電量を算出するのが望ましい。
【0038】
電圧変動特性データM3は、太陽光発電装置G1〜G4の発電量に応じて線路電圧調整用変圧器200、系統電圧調整用変圧器100で変更するべき目標電圧の関係を示すデータである。図5Cに、本実施形態に係る電圧変動特性データM3の一例をグラフ化して示す。図5Cは、太陽光発電装置G1〜G4の発電量と、線路電圧調整用変圧器200の目標電圧を低下させるべき量(以下、「シフト制御量」と言う)の関係を表している。尚、図5Cの横軸は、太陽光発電装置G1〜G4の合計の発電量(kW)を表し、縦軸は、線路電圧調整用変圧器200のシフト制御量(V)を表す。
【0039】
電圧変動特性データM3は、太陽光発電装置の接続された配電線の電力系統に基づいて設定される。本実施形態では、太陽光発電装置G1〜G4は、夫々高圧配電線L1のA点、B点、D点、E点に接続されているから、太陽光発電装置G1〜G4の発電に伴うA点、B点、D点、E点における電圧変動を算出することにより、シフト制御量を算出することができる。本実施形態では、高圧配電線L1の最も下流側に位置するE点の電圧が適正範囲(例えば、需要家への供給電圧が101±6V)に維持されるように、線路電圧調整用変圧器200及び系統電圧調整用変圧器100のシフト制御量が設定されている。
【0040】
電圧変動特性データM3は、太陽光発電装置G3、G4の発電量(kW)を、需要家R3、R4の電力負荷(kW)で加重平均した値と、シフト制御量の関係を表すデータであってもよい。これにより、高圧配電線L1に流入してD点、E点に電圧変動を生じさせる発電量を、D点、E点の電力負荷(kW)に応じた値として算出することができる。尚、太陽光発電装置G3、G4の発電量(kW)を、需要家R3、R4の電力負荷(kW)で加重平均した値とは、例えば、以下の式(1)を用いて算出される。
【0041】
【数1】
(但し、W3、W4は需要家R3、R4の電力負荷(kW)を表し、Q3、Q4は太陽光発電装置G3、G4の発電量(kW)を表す)
この場合、電圧調整装置300は、式(1)で算出した調整対象の発電量Q’が、高圧配電線L1に流入してE点に電圧変動を生じさせる調整対象の発電量であるとして、当該発電量Q’に基づいて、電圧変動特性データM3から線路電圧調整用変圧器200のシフト制御量を算出する。式(1)を用いることによって、電力負荷R1〜R4を考慮した高圧配電線L1の電圧変動を簡易に算出することができる。尚、電力負荷W3、W4は、各メッシュN3、N4内に設けられている需要家R3、R4の電力負荷の電力消費量に応じた量を示している。例えば、電力負荷W3、W4は、需要家R3、R4と電気事業者との間の電気契約に基づいて定められている契約電力量に応じて予め定められていることとしてもよい。又、例えば、電力負荷W3、W4は、柱上変圧器Tr3,Tr4の容量に応じて予め定められていることとしてもよい。又、例えば、電力負荷W3、W4は、電力負荷W3、W4の電力消費量を所定時間毎に測定するスマートメータ等の測定結果に基づいて算出されることとしてもよい。
【0042】
そして、電圧変動特性データM3のシフト制御量は、例えば、太陽光発電装置G1〜G4の調整対象の発電量Q’(出力電力)、高圧配電線L1の線路インピーダンス、高圧配電線L1のE点の電圧(目標電圧)等から求まる係数に基づいて、式(2)により算出することができる。
【0043】
【数2】
尚、本実施形態では、線路電圧調整用変圧器200は、主に、高圧配電線L1のD点、E点の電圧変動を調整する役割を担い、系統電圧調整用変圧器100が、主に、高圧配電線L1のA点、B点の電圧変動を調整する。そのため、電圧変動特性データM3は、太陽光発電装置G1〜G4の発電量と線路電圧調整用変圧器200のシフト制御量の関係を示すデータと、太陽光発電装置G1〜G4の発電量と系統電圧調整用変圧器100のシフト制御量の関係を示すデータとは別個に記憶されている。このとき、系統電圧調整用変圧器100の電圧変動特性データM3については、線路電圧調整用変圧器200と同様の手法により、太陽光発電装置G1、G2の発電量(kW)及び需要家R1、R2の電力負荷(kW)に基づいて、系統電圧調整用変圧器100の目標電圧を算出してもよい。又、線路電圧調整用変圧器200の電圧変動特性データM3は、上流側の電圧変動も考慮するため、太陽光発電装置G1、G2の発電量(kW)及び需要家R1、R2の電力負荷(kW)による影響も加味して、線路電圧調整用変圧器200の目標電圧を算出するデータであってもよい。尚、電圧変動特性データM3は、太陽光発電装置G1〜G4の発電量(W)からシフト制御量を算出可能とするように演算式の形式で記憶されてもよいし、データテーブルとして記憶されてもよい。
【0044】
電力系統データM4(図示せず)は、電力系統、電力需要量に基づいて算出された各点における目標電圧、電力系統内の配電線、電力系統内に設置された装置に関するデータである。具体的には、電力系統データM4は、最上流の発電機(図示せず)から、各点の需要家に電力を送電する現在の電力系統や、事故発生時等において電力系統が切り替えられた場合の電力系統に関するデータを有する。又、電力系統データM4は、当該電力系統における配電線の線路インピーダンス、太陽光発電装置G1〜G4の設置位置、遮断器(図示せず)の配電線における設置位置、柱上変圧器Tr1〜Tr4の配電線における設置位置及び変圧比、静止型無効電力補償装置(図示せず)の設置位置及び投入状態等に関するデータを有する。尚、各装置の設置位置とは、配電線における接続位置を表す。又、太陽光発電装置G1〜G4の設置位置に関するデータは、太陽光発電装置G1〜G4の対応するメッシュ領域(N1、N2、N3、N4)に関するデータを含む。又、電力系統データM4は、各装置と通信回線400を介して通信するため、各装置の通信アドレスに関するデータを含む。そして、電力系統データM4は、これらの情報を、各装置の装置識別情報と関連付けて、装置ごとに記憶する。
【0045】
又、電力系統データM4は、電力系統内の配電線の電圧を適正範囲(低圧配電線の電圧が101±6V)に保つべく、高圧配電線L1の各点で維持すべき適正電圧に関するデータを有する。
【0046】
===電圧調整装置の動作について===
以下、図6図7を参照して、電圧調整装置300の動作について説明する。
【0047】
始めに、図6を参照して、電圧調整装置300が動作しない場合の配電線の電圧変動について説明する。図6は、高圧配電線L1の各点における電圧を、風速が変化する前後で比較したものである。尚、図6の縦軸は、高圧配電線L1の電圧(線間電圧)を表し、かっこ内の数値は、柱上変圧器Tr1〜Tr4で変圧された後の低圧配電線の電圧(需要家に供給される電力の電圧)を表す。
【0048】
本実施形態に係る電力系統においては、系統電圧調整用変圧器100、線路電圧調整用変圧器200は、予め定められた目標電圧に近づくように出力電圧が制御されている。尚、高圧配電線L1の電圧は、図6に示すように、系統電圧調整用変圧器100から離れるに従って需要家R1〜R4の使用する電力負荷と配電線インピーダンスにより電圧降下が生じることから、C点に設置された線路電圧調整用変圧器200の出力電圧を調整することで、下流側(D点、E点)の電圧を適正範囲に維持している。しかし、太陽光発電装置G1〜G4の発電量の変化に起因して、高圧配電線L1の電圧が急激に変化した場合、特に、線路電圧調整用変圧器200の下流側の電圧が適正範囲(D点、E点に接続された低圧配電線の電圧が101±6V)を逸脱してしまう。例えば、図6(上図)に示すにように晴天の状態では、高圧配電線L1と太陽光発電装置G1〜G4の連結点には、多量の電力が送電されるため、D点、E点の電圧は、一定の電圧上昇が生じている。一方、ゲリラ豪雨等が発生した場合(図6の下図)、太陽光発電装置G1〜G4の発電量は急激に減少する結果、線路電圧調整用変圧器200が受電する電圧も低下することも相俟って、D点、E点の電圧も急激に低下し、適正範囲(低圧配電線の電圧が101±6V)を逸脱し、ひいては電力系統全体で、電圧崩壊を招くことにもなり得る。
【0049】
この点、下流側の電圧の変動に対応するべく、線路電圧降下補償器(Line-Drop Compensator:LDC)を用いて線路電圧調整用変圧器の目標電圧を自動で調整する方法や、下流側の各地点に計測器を設置して配電線の電圧を計測するという方法も考えられる。しかし、本実施形態のように、分散型電源(太陽光発電装置G1〜G4)が接続されている場合、電流の変化を正確に把握することができないため、線路電圧降下補償器では、対処することは困難である。又、下流側の各地点で配電線の電圧を計測するという方法であっても、線路電圧調整用変圧器200の出力電圧が変更されるまでの間には、各地点の計測器による電圧変動の計測、計測器から線路電圧調整用変圧器200への通知、線路電圧調整用変圧器200のタップ切換が行われる必要があり、一定時間(少なくとも数十秒以上)を要するため、配電線の急激な電圧変動には対応することができない。
【0050】
そこで、本実施形態に係る電圧調整装置300は、太陽光発電装置G1〜G4に応じた日射量を検出することにより、太陽光発電装置G1〜G4の発電量の変動を事前に、又は即座に検出する。そして、電圧調整装置300は、高圧配電線L1の電圧変動の前段階で、電圧継電器210及び電圧継電器110の目標電圧を変化させることにより、線路電圧調整用変圧器200及び系統電圧調整用変圧器100の出力電圧を制御し、上記の事態を防止する。
【0051】
ここで、図7図8を参照して、本実施形態に係る電圧調整装置300による線路電圧調整用変圧器200の目標電圧の制御について説明する。
【0052】
図7は、日射量の変化のタイミングと、電圧調整装置300が目標電圧を制御するタイミングを表した図である。又、図8は、電圧調整装置300による目標電圧の制御方法を表した図である。尚、図7の下図において、横軸(t)は時間軸、左側の縦軸(VE)はE点における電圧(低圧配電線の電圧に換算した値)、右側の縦軸(V200)は線路電圧調整用変圧器200の目標電圧を表す。
【0053】
図7の線路電圧調整用変圧器200の目標電圧は、t1までは、晴天(例えば、250W/m2)が検出されていることから低め(シフト制御量を高め)に設定されている。そして、目標電圧は、t1のタイミングからt3のタイミングの間に、日射量が急速に減少する(例えば、250W/m2から50W/m2)ことが検出されたことから、目標電圧は、これに応じて、即座に、高め(シフト制御量を低め)になるように変更されることを表している。
【0054】
一方、図7の太陽光発電装置G1〜G4の下流側のE点の配電線電圧は、t1のタイミング前から、日射量の減少により、太陽光発電装置G1〜G4の発電が徐々に減少し、電圧降下が生じる。しかし、E点の配電線電圧は、日射量の減少に応じて、線路電圧調整用変圧器200の目標電圧が高くなるように制御されるため、即座に、t2のタイミングからt4のタイミングにかけて、線路電圧調整用変圧器200のタップ切換(タップ上げ)がなされる。これによって、E点の配電線の電圧は、日射量変化に追従するように制御され、大幅な電圧降下を生じることなく、適正範囲(低圧配電線の電圧が101±6V)に維持される。
【0055】
図8は、電圧調整装置300が、図7に示した動作を行うための具体的な制御方法を表す。図8のS0〜S4は、電圧調整装置300の制御部310がコンピュータプログラムに従って順に実行する工程を表す。尚、ここで、太陽光発電装置G1〜G4の発電量に応じて電圧変動が発生するのは、特に下流側のE点の配電線電圧であることから、線路電圧調整用変圧器200の動作について主に説明する。
【0056】
S0は、線路電圧調整用変圧器200に設定すべき予測目標電圧を算出するための初期工程である。具体的には、電圧調整装置300は、電力系統データM4、現在の電力系統(各装置の高圧配電線L1における接続位置等)、電力需要量の予測値、高圧配電線L1の線路インピーダンス、高圧配電線L1の各点の適正電圧等を設定する。これにより、電圧調整装置300は、太陽光発電装置G1〜G4を考慮しない場合における、各時間帯における線路電圧調整用変圧器200(及び系統電圧調整用変圧器100)の予測目標電圧を算出し、予め設定する。
【0057】
即ち、電圧調整装置300は、S4の工程においては、本工程で事前に設定した各時間帯の予測目標電圧から、太陽光発電装置G1〜G4の発電量に応じたシフト制御量を減じた値を、線路電圧調整用変圧器200(及び系統電圧調整用変圧器100)の正規の目標電圧として設定して、線路電圧調整用変圧器200(及び系統電圧調整用変圧器100)の出力電圧の制御を行う。又、このとき、演算処理に必要な変数の初期設定等を行う。
【0058】
S1は、日射量検出装置T1〜T4から日射量データを取得する工程である。本工程は、例えば、電圧調整装置300が、日射量検出装置T1〜T4に対して1秒間隔で日射量データを要求して、日射量検出装置T1〜T4が、当該要求に応じて日射量データを電圧調整装置300に送信することにより行われる。そして、電圧調整装置300は、日射量検出装置T1〜T4から取得した日射量データを、記憶部320に記憶する。
【0059】
S2は、発電特性データM2を用いて、日射量から太陽光発電装置G1〜G4の発電量を算出する工程である。即ち、電圧調整装置300は、日射量が、前の時点の日射量と比較して大きくなった場合、太陽光発電装置G1〜G4の発電量が増加すると推定されるため、線路電圧調整用変圧器200の目標電圧を低くするべく、本工程を行う。又、日射量が、前の時点の日射量と比較して小さくなった場合、太陽光発電装置G1〜G4の発電量が減少すると推定されるため、線路電圧調整用変圧器200の目標電圧を高くするべく、本工程を行う。
【0060】
このとき、電圧調整装置300が基準とする前の時点とは、日射量検出装置T1〜T4から直前に取得した日射量、又は、日射量検出装置T1〜T4から直前に取得した日射量を含む一定期間(例えば、1分間)の平均値等を意味する。又、電圧調整装置300は、タップ切換のチャタリングを防止するため、前の時点の日射量から一定値以上の変化がない場合(例えば、日射量レベルが同じ)は、本工程を行うことなく、S1の工程に戻って、一定期間の日射量を加算して、日射量に一定量変化があるまで待機処理を行ってもよい。尚、発電特性データM2と電圧変動特性データM3に基づいて、予め、日射量と線路電圧調整用変圧器200のシフト制御量の対応関係を算出している場合、本工程は省略することができる。
【0061】
S3は、電圧変動特性データM3を用いて、太陽光発電装置G1〜G4の発電量から、線路電圧調整用変圧器200の目標電圧の変更すべき値を算出する工程である。本工程で、電圧調整装置300は、S2の工程で算出した太陽光発電装置G1〜G4の発電量から、電圧変動特性データM3を用いて、換算される線路電圧調整用変圧器200のシフト制御量を算出する。そして、算出したシフト制御量と前の時点のシフト制御量の差を算出することにより、目標電圧の変更すべき値を算出することができる。即ち、本工程では、日射量の変化に応じて、太陽光発電装置G1〜G4の発電量が変動するため、これに応じて変更するべき目標電圧の値を算出する。尚、本工程は、電圧継電器210で変更すべき目標電圧の値を算出する代わりに、電圧継電器210で設定すべき目標電圧自体を算出するものであってもよい。又、その際、現在の高圧配電線L1の各点の電圧、電流、有効電力、無効電力等を取得し、これらと電圧変動特性データM3に基づいて、現時点の電力負荷の消費電力量等を考慮した最適な目標電圧を再度算出してもよい。
【0062】
尚、電圧調整装置300は、太陽光発電装置G1〜G4の発電量の変動が一定以上であり、C点の電圧調整も必要であると判断した場合、系統電圧調整用変圧器100の出力電圧(目標電圧)も変更する。この場合、電圧調整装置300は、上記と同様に、電圧変動特性データM3の太陽光発電装置G1〜G4の発電量と系統電圧調整用変圧器100のシフト制御量の関係を示すデータに基づいて、系統電圧調整用変圧器100の目標電圧を制御する。
【0063】
S4は、S3で算出した変更すべき目標電圧となるように、電圧継電器210の目標電圧を制御する工程である。本工程で、電圧調整装置300は、S3で算出した変更すべき目標電圧の値だけ、電圧継電器210が目標電圧を変更するように、電圧継電器210に指示信号を出力する。そして、電圧継電器210が、目標電圧を当該指示信号に応じた電圧に設定することにより、線路電圧調整用変圧器200の出力電圧は目標電圧に近づくように制御される。これにより、電圧継電器210は、高圧配電線L1の電圧変動が生じる前に、線路電圧調整用変圧器200にタップ切換を行わせる。尚、このとき、電圧調整装置300は、上流側の系統電圧調整用変圧器100の目標電圧も変更すべきと判断した場合、S4の工程で算出した目標電圧に応じて、同様に、電圧継電器110の目標電圧も制御する。
【0064】
電圧調整装置300は、以上の工程を繰り返すことにより、太陽光発電装置G1〜G4の発電量の急激に変動した場合でも、高圧配電線L1の電圧を適正範囲に維持することができる。
【0065】
以上、本実施形態に係る電圧調整装置300によれば、線路電圧調整用変圧器200は、日射量変化に追従するように、早急に制御されることにより、大幅な電圧降下を生じさせることなく、配電線の電圧を適正範囲(低圧配電線の電圧が101±6V)に維持することができる。特に、電圧調整装置300は、発電特性データM2、電圧変動特性データM3を用いて、太陽光発電装置G1〜G4の発電量の変動分を、即座に、線路電圧調整用変圧器200の出力電圧に変換することにより、配電線の電圧を常に適正範囲(低圧配電線の電圧が101±6V)に維持することができる。
【0066】
又、本実施形態に係る電圧調整装置300は、線路電圧調整用変圧器200に加えて、系統電圧調整用変圧器100等の上流側の電圧変動にも対処することが可能であり、夫々の装置が順に電圧降下を認識して、電圧調整を行っていく場合に比して、早急な対処が可能である。
【0067】
<第2実施形態>
本実施形態に係る電圧調整装置300’は、一定時間内に検出された日射量の変化の傾向と、過去に検出された日射量等を統計処理して求めた日射量の変化の傾向と、に基づいて、線路電圧調整用変圧器200の目標電圧を制御する。尚、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0068】
本実施形態は、日射量は、季節、時間帯、天候等に応じて、同様の変化の傾向を示すという理解に基づく。そこで、本実施形態に係る電圧調整装置300’は、太陽光発電装置G1〜G4の設置位置における過去の複数の日時の日照量、季節、時間帯、天候、気圧等の気象情報(日射量に関するデータ)に基づいて、日照量、季節、時間帯、天候、気圧等の気象情報の関係を、統計処理(例えば、回帰分析)により算出する。そして、電圧調整装置300’は、季節、時間帯、天候、気圧等の気象情報を設定することにより、数パターンの1日の日射量の変化の傾向を示すデータの推定データが設定し得るように、日射量変化傾向データM5として記憶部320’に記憶しておく。
【0069】
図9に、本実施形態に係る日射量変化傾向データM5の一例をグラフ化して示す。図9は、天候が晴れた春の日の一日の日射量の変化の傾向と、途中でゲリア豪雨等が発生した場合における1日の日射量の変化の傾向を表している。当該データによると、日射量が急速に小さくなるときの傾向を把握することが可能となる。そのため、電圧調整装置300’は、例えば、図9に示す傾向データを予め設定しておくことにより、日射量が急速に小さくなったことを検出した場合、次の時点(例えば、1分後)においても同様の変化の傾向を示すものと推定する。即ち、電圧調整装置300’は、取得した現時点の日射量を含む一定時間の日射量の傾向から次の時点の日射量を推定し、当該推定した次の時点の日射量に基づいて、線路電圧調整用変圧器200の目標電圧を制御することにより、早急に、線路電圧調整用変圧器200の目標電圧を制御して、高圧配電線L1の電圧調整を行うことが可能となる。
【0070】
尚、日射量の変化の傾向の近似度は、一定時間の日射量データと、例えば、季節、気圧、天候、時間帯等の情報に基づいて設定した日射量変化傾向データM5とを周知の近似計算することにより行うことができる。又、日射量変化傾向データM5についても、重回帰分析等、周知の統計分析により算出することができる。そのため、これらの説明は省略する。
【0071】
以上、本実施形態によれば、電圧調整装置300’は、太陽光発電装置G1〜G4の発電量が変動する前段階で、線路電圧調整用変圧器200の目標電圧を調整することが可能となり、線路電圧調整用変圧器200のタップ切換が、高圧配電線L1の電圧変動に追従できず、高圧配電線L1の電圧が適正範囲を逸脱するという事態を確実に防止することができる。
【0072】
<その他の実施形態>
尚、第1実施形態では、電圧調整装置300は、複数の日射量検出装置T1〜T4から日射量に関するデータを取得し、当該データと太陽光発電装置G1〜G4の位置関係とに基づいて、各太陽光発電装置G1〜G4の発電量を算出して、線路電圧調整用変圧器200のシフト制御量を算出した。しかし、高圧配電線L1に系統連系する太陽光発電装置の設置されている領域が狭い場合、電圧調整装置300は、一の日射量検出装置のみを用いて、線路電圧調整用変圧器200のシフト制御量を算出してもよい。
【0073】
又、上記各実施形態では、電圧調整装置300は、線路電圧調整用変圧器200の目標電圧を変更することにより、線路電圧調整用変圧器200の下流側の高圧配電線L1の電圧変動を調整する態様を示した。しかし、静止型無効電力補償装置(Static Var Compensator:SVC)が、線路電圧調整用変圧器200の下流側の高圧配電線L1に設置されている場合、電圧調整装置300は、前の時点との日射量の変化が所定量以上のときには、線路電圧調整用変圧器200の目標電圧の調整に代えて、静止型無効電力補償装置の投入により、電圧変動に対処してもよい。静止型無効電力補償装置は、サイリスタ等の半導体スイッチを用いて配電線の無効電力を調整する装置であり、負荷時タップ切替器付変圧器のタップ切換動作に比して短時間で動作が可能である(数100ms程度)。そのため、電圧調整装置300は、図8のS0工程において、静止型無効電力補償装置の設置位置、投入可能状態を予め設定しておき、検出した日射量と前の時点の日射量の変化が所定量以上のときには、静止型無効電力補償装置により高圧配電線L1の電圧調整を行う。この場合、電圧調整装置300は、線路電圧調整用変圧器200による電圧調整が間に合わない場合でも、高圧配電線L1の電圧が適正範囲を逸脱するという事態を確実に防止することができる。尚、その際、電圧調整装置300が静止型無効電力補償装置に対して調整指示を出力してもよいし、静止型無効電力補償装置が電圧変動を検出して、即座に自動で動作する場合は、電圧調整装置300から調整指示を出力しなくともよい。
【0074】
又、上記各実施形態では、太陽光発電装置G1〜G4が高圧配電線L1に接続されている場合に、電圧調整装置300が線路電圧調整用変圧器200の目標電圧を制御することで、高圧配電線L1の電圧調整を行う態様について説明した。しかし、電圧調整装置300は、太陽光発電装置G1〜G4が系統電圧調整用変圧器100の母線LLに接続されている場合に、系統電圧調整用変圧器100の目標電圧を制御することで、母線LLの電圧調整を行う態様についても、同様に適用し得る。
【0075】
又、上記各実施形態では、電圧調整装置300と電圧継電器210を別体の装置としたが、電圧調整装置300と電圧継電器210を一体として構成されてもよく、その場合、電圧継電器210に、上記した電圧調整装置300の制御部の機能を備えさせればよい。
【0076】
上記各実施形態は、以下の記載により特定される発明を開示するものである。
【0077】
前述した課題を解決する主たる本発明は、電圧調整用変圧器100、200が二次側に出力する電圧の目標電圧を制御することにより、太陽光発電装置G1〜G4と系統連系する配電線L1の電圧を調整する電圧調整装置300であって、太陽光発電装置G1〜G4に応じた太陽光の日射量を検出し、日射量が前の時点よりも大きくなった場合、電圧調整用変圧器100、200の目標電圧が低くなるように制御し、日射量が前の時点よりも小さくなった場合、電圧調整用変圧器100、200の目標電圧が高くなるように制御する制御部310、を備えることを特徴とする電圧調整装置300を開示した。これによって、電圧調整用変圧器100、200は、日射量変化に追従するように、早急に制御されることにより、大幅な電圧降下を生じさせることなく、配電線の電圧を適正範囲(低圧配電線の電圧が101±6V)に維持することができる。
【0078】
ここで、制御部310は、日射量、日射量と太陽光発電装置G1〜G4の発電量の関係を示す発電特性、及び発電量と電圧調整用変圧器100、200のシフト制御量の関係を示す電圧変動特性とに基づいて、電圧調整用変圧器100、200の目標電圧を制御するものであってもよい。これによって、電圧調整装置300は、検出された日射量に応じた目標電圧を設定することができる。
【0079】
ここで、電圧調整装置300は、過去の複数の日時の日射量に関するデータに基づいて作成された、日射量の変化の傾向を示すデータM5を記憶部320に備え、制御部310は、一定期間に検出された日射量の変化の傾向と、日射量の変化の傾向を示すデータM5とに基づいて、電圧調整用変圧器100、200の目標電圧を制御するものであってもよい。これによって、電圧調整装置300は、太陽光発電装置G1〜G4の発電量が変動する前段階で、電圧調整用変圧器100、200の目標電圧を調整することが可能となり、電圧調整用変圧器100、200のタップ切換が、高圧配電線L1の電圧変動に追従できず、高圧配電線L1の電圧が適正範囲を逸脱するという事態を確実に防止することができる。
【0080】
ここで、太陽光発電装置G1〜G4の設置位置は、所定の条件により複数の区域N1〜N4に区分けされ、制御部310は、太陽光発電装置G1〜G4の設置位置に対応する区域N1〜N4で検出された日射量を、太陽光発電装置G1〜G4に応じた太陽光の日射量として、電圧調整用変圧器100、200の目標電圧を制御するものであってもよい。これによって、電圧調整装置300は、すべての太陽光発電装置かと通信して日射量を取得する必要がなくなる。
【0081】
ここで、複数の区域N1〜N4のいずれかの区域で、太陽光発電装置から送電を受ける電力負荷が接続されている場合、制御部310は、対応する区域で検出された日射量と、日射量と太陽光発電装置の発電量の関係を示す発電特性と、に基づいて、区域ごとの太陽光発電装置の発電量を算出し、区域ごとの太陽光発電装置の発電量を太陽光発電装置に接続された電力負荷R1〜R4を重みとして加重平均した値と、電圧調整用変圧器のシフト制御量の関係を示す電圧変動特性と、に基づいて、電圧調整用変圧器の目標電圧を制御するものであってもよい。これによって、電力負荷R1〜R4を考慮した配電線L1の電圧変動を簡易に算出することができる。
【0082】
ここで、電圧調整用変圧器100、200の上流側に、電圧調整用変圧器100、200に電力供給する第2の電圧調整用変圧器100、200が設置されている場合、制御部310は、日射量、日射量と太陽光発電装置G1〜G4の発電量の関係を示す発電特性M2、及び発電量と第2の電圧調整用変圧器100、200のシフト制御量の関係を示す第2の電圧変動特性M3とに基づいて、第2の電圧調整用変圧器100、200の目標電圧を制御するものであってもよい。これによって、電圧調整装置300は、太陽光発電装置G1〜G4の発電量の変動に伴う系統電圧調整用変圧器100等の上流側の電圧変動にも対処することが可能であり、夫々の装置が順に電圧降下を認識して、電圧調整を行っていく場合に比して、早急な対処が可能である。
【0083】
ここで、制御部310は、日射量、日射量と太陽光発電装置G1〜G4の発電量の関係を示す発電特性M2、及び発電量と電圧調整用変圧器100、200のシフト制御量の関係を示す電圧変動特性M3とに基づいて、段階的に電圧調整用変圧器100、200の目標電圧を制御するものであってもよい。これによって、電圧調整装置300は、太陽光発電装置G1〜G4の発電量が変動するタイミングにあわせて、配電線L1の電圧調整を行うことが可能となる。
【0084】
ここで、太陽光発電装置G1〜G4と系統連系する配電線L1に静止型無効電力補償装置が設置されている場合、制御部310は、日射量が前の時点から所定量以上変化したとき、電圧調整用変圧器100、200の目標電圧を制御することに代えて、静止型無効電力補償装置の投入により配電線L1の電圧が調整されるように制御するものであってもよい。これによって、電圧調整装置300は、電圧調整用変圧器100、200による電圧調整が間に合わない場合でも、高圧配電線L1の電圧が適正範囲を逸脱するという事態を確実に防止することができる。
【0085】
ここで、制御部310は、電圧調整用変圧器100、200が二次側に出力する電圧を監視するとともに、タップ切換信号を出力する電圧継電器110、210の目標電圧を制御することにより、電圧調整用変圧器100、200が二次側に出力する電圧を制御するものであってもよい。
【0086】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0087】
100 系統電圧調整用変圧器
200 線路電圧調整用変圧器
110 電圧継電器
210 電圧継電器
300 電圧調整装置
400 通信回線
G1〜G4 太陽光発電装置
Tr1〜Tr4 柱上変圧器
R1〜R4 需要家
T1〜T4 日射量検出装置
LL 高圧母線
L1 高圧配電線
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9