(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
<フォトレジスト組成物>
当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体、[B]酸発生体及び[C]酸拡散制御剤を含有する。当該フォトレジスト組成物は、これらの成分以外にも、好適成分として、[D][C]酸拡散制御剤以外の酸拡散制御剤(以下、「[D]他の酸拡散制御体」ともいう)、[E]フッ素原子含有重合体及び[F]溶媒をさらに含有してもよく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について説明する。
【0021】
<[A]重合体>
[A]重合体は、酸解離性基を有する重合体である。[A]重合体は、酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう)以外にも、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を含む構造単位(II)をさらに有していることが好ましく、極性基を有する構造単位等のその他の構造単位をさらに有していてもよい。[A]重合体は、各構造単位をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0022】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、酸解離性基を含む構造単位である。構造単位(I)としては、下記式(4)で表される構造単位(I−1)等が挙げられる。
【0025】
上記式(4)中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
pは、上記式(p)で表される1価の酸解離性基である。
上記式(p)中、R
p1、R
p2及びR
p3は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20のシクロアルキル基である。但し、R
p2及びR
p3が互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20のシクロアルカンジイル基を形成してもよい。
【0026】
構造単位(I−1)としては、下記式(4−1)〜(4−4)で表される構造単位が好ましい。
【0028】
上記式(4−1)〜(4−4)中、R
Aは、上記式(4)と同義である。R
p1、R
p2及びR
p3は上記式(p)と同義である。i及びjは、それぞれ独立して、1〜4の整数である。
【0029】
上記式(4−1)〜(4−4)で表される構造単位としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0032】
上記式中、R
Aは、上記式(4)と同義である。
【0033】
構造単位(I)としては、上記式(4−1)で表される構造単位、式(4−2)で表される構造単位が好ましく、1−アルキル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましく、1−エチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がさらに好ましい。
【0034】
構造単位(I)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜100モル%が好ましく、20モル%〜80モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合が上記下限未満だと、当該フォトレジスト組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0035】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(II)をさらに有することで、現像液への溶解性を調整することができる。また、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジストパターンと基板との密着性を向上させることができる。
【0036】
構造単位(II)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0040】
上記式中、R
L1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0041】
構造単位(II)としては、これらの中で、ラクトン構造を含む構造単位、スルトン構造を含む構造単位が好ましく、ノルボルナンラクトン構造を含む構造単位、ノルボルナンスルトン構造を含む構造単位がより好ましい。
【0042】
構造単位(II)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%〜80モル%が好ましく、35モル%〜70モル%がより好ましく、40モル%〜60モル%がさらに好ましい。構造単位(II)の含有割合が上記下限未満だと、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジストパターンの基板への密着性が低下する場合がある。また、構造単位(II)の含有割合が上記上限を超えると、当該フォトレジスト組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0043】
[その他の構造単位]
[A]重合体は、上記構造単位(I)及び(II)以外のその他の構造単位を有していもよい。上記その他の構造単位としては、例えば、極性基を有する構造単位等が挙げられる(但し、構造単位(I)及び構造単位(II)に該当するものを除く)。上記極性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基等が挙げられる。これらの中で、ヒドロキシ基、カルボキシ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
この極性基を有する構造単位としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0045】
上記式中、R
Bは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0046】
上記極性基を有する構造単位の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜80モル%が好ましく、0モル%〜75モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%がさらに好ましい。極性基を有する構造単位の含有割合が上記上限を超えると、当該フォトレジスト組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0047】
[A]重合体は上記極性基を有する構造単位以外にも、その他の構造単位を有していてもよい。上記その他の構造単位の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、通常30モル%以下であり、20モル%以下が好ましい。上記その他の構造単位の含有割合が上記上限を超えると、当該フォトレジスト組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0048】
[A]重合体の含有量としては、当該フォトレジスト組成物の全固形分中、通常70質量%以上であり、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましい。
【0049】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば、各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤を用い、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。
【0050】
上記ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等が挙げられる。これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの重合に使用される溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間、1時間〜24時間が好ましい。
【0053】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、1,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましく、3,000以上20,000以下がさらに好ましく、5,000以上15,000が特に好ましい。[A]重合体のMwが上記下限未満だと、得られるレジスト膜の耐熱性が低下する場合がある。[A]重合体のMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0054】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
【0055】
本明細書における重合体のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本(以上、東ソー製)
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業製)
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0056】
[A]重合体中の低分子量部分(分子量1,000未満の部分をいう)の含有率としては、0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。[A]重合体中の低分子量部分の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物の断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び焦点深度をさらに向上させることができる。
【0057】
本明細書における重合体の低分子量部分の含有率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、ジーエルサイエンス社製Intersil ODS−25μmカラム(4.6mmφ×250mm)を使用し、以下の条件により測定される値である。
溶出溶媒:アクリロニトリル/0.1質量%リン酸水溶液
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
【0058】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、露光により酸を発生し、その酸により[A]重合体中の酸解離性基を解離させてカルボキシ基等の極性基を生成させ、その結果[A]重合体の現像液への溶解性が変化する。当該フォトレジスト組成物における[B]酸発生体の含有形態としては、後述するような低分子化合物の形態(以下、適宜「[B]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた酸発生基の形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0059】
[B]酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
【0060】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0061】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。
【0062】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0063】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0064】
N−スルホニルオキシイミド化合物としては、例えばN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等を挙げることができる。
【0065】
[B]酸発生剤としては、これらの中でも、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩がより好ましく、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネートがさらに好ましい。
【0066】
[B]酸発生体の含有量としては、[B]酸発生体が[B]酸発生剤の場合、当該フォトレジスト組成物の感度及び現像性を確保する観点から、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.5質量部以上20質量部以下がより好ましく、1質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。[B]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物の感度及び現像性が向上する。[B]酸発生体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0067】
<[C]酸拡散制御剤>
[C]酸拡散制御剤は、化合物(1)からなる。当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体及び[B]酸発生体に加えて、[C]酸拡散制御剤を含有することで、断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び焦点深度に優れる。[C]酸拡散制御剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0068】
[化合物(1)]
化合物(1)は、上記式(1)で表される。
【0069】
上記式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。但し、この炭化水素基のうちの2つ以上が互いに結合して、これらが結合する炭素原子と共に環構造を形成していてもよい。Aは、水素原子、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基及び炭素数3〜30の脂環式炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と、−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と、上記式(1)におけるカルボニル基と結合する部位となるn個の窒素原子とを組み合わせてなり、かつ原子量の総和が120以上であるn価の基である。上記鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子を含まない基で置換されていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。nは、1〜4の整数である。
【0070】
上記R
1、R
2及びR
3で表される1価の炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜10の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0071】
上記炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0072】
上記炭素数3〜10の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等の単環のシクロアルキル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等の多環のシクロアルキル基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基などが挙げられる。
【0073】
上記炭素数6〜10の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0074】
上記この炭化水素基のうちの2つ以上が互いに結合して形成する環構造としては、例えば、
シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロオクタン構造、シクロデカン構造等の単環のシクロアルカン構造;
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン構造、ビシクロ[2.2.2]オクタン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造等の多環のシクロアルカン構造などが挙げられる。
【0075】
上記R
1、R
2及びR
3としては、これらの中で、水素原子、鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0076】
上記R
1、R
2、R
3及びこれらが結合する炭素原子で構成される基としては、t−ブチル基、t−アミル基が好ましい。
【0077】
上記Aを構成する炭素数1〜30の鎖状炭化水素基としては、例えば、
メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン等のアルカン;
エテン、プロペン、n−ブテン、イソブテン、n−ペンテン、イソペンテン等のアルケン;
エチン、プロピン、ブチン、ペンチン等のアルキンなどの鎖状炭化水素から1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0078】
上記Aを構成する炭素数3〜30の脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン等の単環のシクロアルカン;
ノルボルナン、アダマンタン、トリシクロデカン等の多環のシクロアルカン;
シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロデセン等の単環のシクロアルケン;
ノルボルネン、トリシクロデセン等の多環のシクロアルケンなどの脂環式炭化水素から1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0079】
上記鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基が有していてもよいフッ素原子を含まない置換基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0080】
上記Aを構成する水素原子、上記鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と、−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを組み合わせた基としては、例えば、環状エーテル基、環状ケトン基、ラクトン基、スルトン基、環状アミノ基、環状スルホンアミド基、環状オキシスルホンアミド基、ラクタム基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルコキシスルホニル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシアルキル基、アシルアルキル基、アシルオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルキルスルホニルオキシアルキル基、アルキルイミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミドアルキル基、アルキルイミノスルホニルオキシアルキル基、アルコキシスルホニルアミドアルキル基、アルキルイミノカルボニルアルキル基、アルキルカルボニルイミノアルキル基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基等が挙げられる。
【0081】
上記Rで表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、例えば上記R
1、R
2及びR
3として例示した炭素数1〜10の1価の炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
【0082】
上記nとしては、化合物(1)の合成容易性の観点からは、1〜3の整数が好ましく、1又は2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0083】
上記Aの原子量の総和の下限としては120であり、150が好ましく、200がより好ましく、250がさらに好ましく、290が特に好ましい。Aの原子量の総和が上記下限未満であると、化合物(1)から露光後に生じる化合物の揮発性が高くなり、その結果、当該フォトレジスト組成物の断面形状の矩形性が悪化する傾向がある。
上記Aの原子量の総和の上限としては、1,000が好ましく、800がより好ましく、600がさらに好ましく、500が特に好ましい。Aの原子量の総和が上記上限を超えると、化合物(1)のレジスト膜中における分散性が低くなり、その結果、当該フォトレジスト組成物の断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び焦点深度が低下する傾向がある。
【0084】
化合物(1)としては、例えば、下記式(i1)〜(i21)で表される化合物(以下、「化合物(i1)〜(i−21)」ともいう)等が挙げられる。
【0087】
化合物(1)としては、上記式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」ともいう)が好ましい。
【0088】
上記式(2)中、R
1、R
2、R
3及びnは、上記式(1)と同義である。R
4は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。R
5は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。但し、R
4及びR
5が互いに結合して、これらが結合する窒素原子と共に脂環式構造を形成していてもよい。R
6は、水素原子、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基及び炭素数3〜30の脂環式炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と、−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを組み合わせたn価の基である。上記鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子を含まない基で置換されていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。但し、式(2)における[(R
4の式量+R
5の式量+窒素の原子量)×n+R
6の式量]は120以上である。
【0089】
上記R
4で表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、例えば、上記R
1、R
2及びR
3として例示した1価の炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
【0090】
上記R
5で表される炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、例えば、上記R
1、R
2及びR
3として例示した1価の炭化水素基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0091】
上記R
4及びR
5が互いに結合して、これらが結合する窒素原子と共に形成する環構造としては、例えば、
アザシクロプロパン構造、アザシクロブタン構造、アザシクロペンタン構造(ピロリジン構造)、アザシクロヘキサン構造(ピペリジン構造)、アザシクロヘプタン構造、アザシクロオクタン構造、アザシクロデカン構造等の単環のアザシクロアルカン構造;
アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン構造、アザビシクロ[2.2.2]オクタン構造、アザトリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン構造等の多環のアザシクロアルカン構造などが挙げられる。
これらの中で、単環のアザシクロアルカン構造が好ましく、アザシクロペンタン構造、アザシクロヘキサン構造がより好ましく、アザシクロヘキサン構造がさらに好ましい。
【0092】
上記R
6を構成する炭素数1〜30の鎖状炭化水素基としては、例えば、上記Aを構成する基として例示された鎖状炭化水素基と同様のもの等が挙げられる。
【0093】
上記R
6を構成する炭素数3〜30の脂環式炭化水素基としては、例えば、上記Aを構成する基として例示された脂環式炭化水素基と同様のもの等が挙げられる。
【0094】
上記R
6で表される水素原子、鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種と−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを組み合わせたn価の基としては、例えば、環状エーテル基、環状ケトン基、ラクトン基、スルトン基、環状アミノ基、環状スルホンアミド基、環状オキシスルホンアミド基、ラクタム基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルコキシスルホニル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシアルキル基、アシルアルキル基、アシルオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルキルスルホニルオキシアルキル基、アルキルイミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミドアルキル基、アルキルイミノスルホニルオキシアルキル基、アルコキシスルホニルアミドアルキル基、アルキルイミノカルボニルアルキル基、アルキルカルボニルイミノアルキル基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基等が挙げられる。
【0095】
上記R
6が有してもよいフッ素原子を含まない置換基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0096】
上記式(2)における[(R
4の式量+R
5の式量+窒素の原子量)×n+R
6の式量](以下、「原子量総和(1)」ともいう)の下限としては120であり、150が好ましく、200がより好ましく、250がさらに好ましく、290が特に好ましい。上記原子量総和(1)が上記下限未満であると、化合物(2)から露光後に生じる化合物の揮発性が高くなり、その結果、当該フォトレジスト組成物の断面形状の矩形性が悪化する傾向がある。
上記原子量総和(1)の上限としては、1,000が好ましく、800がより好ましく、600がさらに好ましく、500が特に好ましい。上記原子量総和(1)が上記上限を超えると、化合物(2)のレジスト膜中における分散性が低くなり、その結果、当該フォトレジスト組成物の断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び焦点深度が低下する傾向がある。なお、基の式量とは、基を構成する原子の原子量の総和をいう。
【0097】
化合物(2)としては、例えば、上記化合物(i1)〜(i15)、(i19)、(i20)等が挙げられる。
【0098】
化合物(2)としては、化合物(i)が好ましい。化合物(i)は上記式(3)で表される。
【0099】
上記式(3)中、R
1〜R
5は、上記式(2)と同義である。R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基及び炭素数3〜30の脂環式炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基、又はこれらの基と−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを組み合わせてなる基である。但し、R
7、R
8及びR
9のうちの2つ以上が互いに結合して、これらが結合する炭素原子と共に環構造を形成してもよい。Xは、−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−又は−NRCO−である。但し、式(3)におけるR
4、R
5、X、R
7、R
8及びR
9の式量並びに窒素及び炭素の原子量の合計は120以上である。
【0100】
上記R
7、R
8及びR
9で表される炭素数1〜30の鎖状炭化水素基及び炭素数3〜30の脂環式炭化水素基としては、例えば、上記式(1)のAにおける鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0101】
上記これらの基と−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを組み合わせてなる基としては、例えば、環状エーテル基、環状ケトン基、ラクトン基、スルトン基、環状アミノ基、環状スルホンアミド基、環状オキシスルホンアミド基、ラクタム基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルコキシスルホニル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシアルキル基、アシルアルキル基、アシルオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルキルスルホニルオキシアルキル基、アルキルイミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミドアルキル基、アルキルイミノスルホニルオキシアルキル基、アルコキシスルホニルアミドアルキル基、アルキルイミノカルボニルアルキル基、アルキルカルボニルイミノアルキル基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基等が挙げられる。
【0102】
上記R
7、R
8及びR
9としては、水素原子、鎖状炭化水素基、アルコキシカルボニルアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エトキシカルボニル基がより好ましく、水素原子、エトキシカルボニル基がさらに好ましい。
【0103】
上記R
7、R
8及びR
9のうちの2つ以上が互いに結合して、これらが結合する炭素原子と共に形成する環構造としては、例えば、
シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造等の単環の脂環式構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、カンファー構造等の多環の脂環式構造などが挙げられる。
これらの中で、多環の脂環式構造が好ましく、アダマンタン構造、カンファー構造がより好ましい。
【0104】
上記Xとしては、−O−、−COO−、−SO
2O−が好ましく、−COO−、−SO
2O−がより好ましく、−COO−*、−SO
2O−*(*は、上記式(3)のR
5と結合する部位を示す。)がさらに好ましい。
【0105】
上記式(3)におけるR
4、R
5、X、R
7、R
8及びR
9の式量並びに窒素及び炭素の原子量の合計(以下、「原子量総和(2)」ともいう)の下限としては120であり、150が好ましく、200がより好ましく、250がさらに好ましく、290が特に好ましい。上記原子量総和(2)が上記下限未満であると、化合物(i)から露光後に生じる化合物の揮発性が高くなり、その結果、当該フォトレジスト組成物の断面形状の矩形性が悪化する傾向がある。
上記原子量総和(2)の上限としては、1,000が好ましく、800がより好ましく、600がさらに好ましく、500が特に好ましい。上記原子量総和(2)が上記上限を超えると、化合物(i)のレジスト膜中における分散性が低くなり、その結果、当該フォトレジスト組成物の断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び焦点深度が低下する傾向がある。
【0106】
化合物(i)としては、例えば上記化合物(i−1)〜(i−15)等が挙げられる。
【0107】
化合物(i)は、例えば、下記反応スキームに従い、合成することができる。
【0109】
上記反応スキーム中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。但し、この炭化水素基のうちの2つ以上が互いに結合して、これらが結合する炭素原子と共に環構造を形成していてもよい。R
4は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。R
5は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。但し、R
4及びR
5が互いに結合して、これらが結合する窒素原子と共に脂環式構造を形成していてもよい。R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基及び炭素数3〜30の脂環式炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基、又はこれらの基と−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを組み合わせてなる基である。但し、R
7、R
8及びR
9のうちの2つ以上が互いに結合して、これらが結合する炭素原子と共に環構造を形成してもよい。Xは、−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−又は−NRCO−である。Y及びZは、縮合反応によりXを形成する基である。
【0110】
上記YとZの組み合わせ及び形成されるXとしては、例えば、以下等が挙げられる。
Y及びZのうちの一方がヒドロキシ基又はハロゲン原子、かつ他方がヒドロキシ基の場合、Xとして−O−が形成される。
Y及びZのうちの一方がヒドロキシ基、かつ他方がハロカルボニル基、カルボキシ基又は酸無水物基の場合、Xとして−COO−が形成される。
Y及びZのうちの一方がヒドロキシ基、かつ他方がハロスルホニル基又はスルホ基の場合、Xとして、−SO
2O−が形成される。
Y及びZのうちの一方が−NHR、かつ他方がハロゲン原子の場合、Xとして−NR−が形成される。
Y及びZのうちの一方が−NHR、かつ他方がハロスルホニル基又はスルホ基の場合、Xとして、−NRSO
2−が形成される。
Y及びZのうちの一方が−NHR、かつ他方がハロスルホニルオキシ基又はスルホオキシ基の場合、Xとして−NRSO
2O−が形成される。
Y及びZのうちの一方が−NHR、かつ他方がハロカルボニル基、カルボキシ基又は酸無水物基の場合、Xとして−NRCO−が形成される。
【0111】
上記Yを有する化合物と上記Zを有する化合物とを、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の塩基の存在下、ジクロロメタン等の溶媒中で反応させることにより、上記Xを有する化合物(i)を得ることができる。
【0112】
[C]酸拡散制御剤の含有量としては、当該フォトレジスト組成物のLWR性能、EL性能及び断面形状の矩形性を向上する観点からは、[B]酸発生剤に対して、1モル%〜100モル%が好ましく、3モル%〜70モル%がより好ましく、5モル%〜50モル%がさらに好ましい。[C]酸拡散制御剤の含有量を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物は断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び感度が向上する。
また、[C]酸拡散制御剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.5質量部以上20質量部以下がより好ましく、1質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。
【0113】
<任意成分>
[[D]他の酸拡散制御体]
当該フォトレジスト組成物は、必要に応じて、[D]他の酸拡散制御体を含有してもよい。当該フォトレジスト組成物は、[C]酸拡散制御剤に加えて、さらに[D]他の酸拡散制御体を含有することで、断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び焦点深度をさらに向上させることができる。[D]他の酸拡散制御体をさらに含有することで、上記効果をさらに向上させることができる理由については必ずしも明確ではないが、例えば、酸拡散制御剤を構成する化合物全体としての拡散度合いを調整することができること等が考えられる。[D]他の酸拡散制御体の当該フォトレジスト組成物における含有形態としては、後述するような低分子化合物である酸拡散制御剤の形態(以下、適宜「[D]他の酸拡散制御剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた酸拡散制御基の形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0114】
[D]他の酸拡散制御剤としては、例えば、下記式(5)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」ともいう)、窒素原子を3個有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0116】
上記式(5)中、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0117】
含窒素化合物(I)としては、例えば、n−ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
【0118】
含窒素化合物(II)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0119】
含窒素化合物(III)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリアミン化合物;ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体等が挙げられる。
【0120】
アミド基含有化合物としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0121】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリブチルチオウレア等が挙げられる。
【0122】
含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン等のピリジン類、ピラジン、ピラゾール等が挙げられる。
【0123】
また上記含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する化合物を用いることもできる。このような酸解離性基を有する含窒素有機化合物としては、例えば、N―(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン、N―(t−ブトキシカルボニル)イミダゾール、N―(t−ブトキシカルボニル)ベンズイミダゾール、N―(t−ブトキシカルボニル)−2−フェニルベンズイミダゾール、N―(t−ブトキシカルボニル)ジ−n−オクチルアミン、N―(t−ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N―(t−ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N―(t−ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
【0124】
また、[D]他の酸拡散制御体として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基としては、例えば、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物等が挙げられる。オニウム塩化合物としては、例えば、下記式(6−1)で表されるスルホニウム塩化合物、下記式(6−2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0126】
上記式(6−1)及び式(6−2)中、R
13〜R
17は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。E
−及びQ
−は、それぞれ独立して、OH
−、R
β−COO
−、R
β−SO
3−又は下記式(6−3)で表されるアニオンである。但し、R
βは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0128】
上記式(6−3)中、R
18は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。uは、0〜2の整数である。
【0129】
[D]他の酸拡散制御体の含有量としては、[D]他の酸拡散制御体が[D]他の酸拡散制御剤である場合、[B]酸発生剤に対して、1モル%〜100モル%が好ましく、3モル%〜70モル%がより好ましく、5モル%〜50モル%がさらに好ましい。[D]他の酸拡散制御剤の含有量が上記上限を超えると、当該フォトレジスト組成物の感度、断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び焦点深度が低下する場合がある。
また、[D]他の酸拡散制御剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0.1質量部〜15質量部がより好ましく、0.3質量部〜10質量部がさらに好ましい。
【0130】
[[E]含フッ素重合体]
当該フォトレジスト組成物は、[E]含フッ素重合体([A]重合体に該当するものを除く)を含有してもよい。当該フォトレジスト組成物が、[E]含フッ素重合体を含有することで、レジスト膜を形成した際に、膜中の含フッ素重合体の撥油性的特徴により、その分布がレジスト膜表面近傍で偏在化する傾向があり、液浸露光時における酸発生剤や酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、この[E]含フッ素重合体の撥水性的特徴により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。このように当該フォトレジスト組成物が[E]含フッ素重合体を含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト膜を形成することができる。
【0131】
[E]含フッ素重合体としては、フッ素原子を有する重合体である限り、特に限定されないが、当該フォトレジスト組成物中の[A]重合体よりも、フッ素原子含有率(質量%)が高いことが好ましい。[A]重合体よりもフッ素原子含有率が高いことで、上述の偏在化の度合いがより高くなり、得られるレジスト膜の撥水性及び溶出抑制性等の特性が向上する。
【0132】
[E]含フッ素重合体のフッ素原子含有率としては、1質量%以上が好ましく、2質量%〜60質量%がより好ましく、4質量%〜40質量%がさらに好ましく、7質量%〜30質量%が特に好ましい。[E]含フッ素重合体のフッ素原子含有率が上記下限未満だと、レジスト膜表面の疎水性が低下する場合がある。なお、重合体のフッ素原子含有率(質量%)は、
13C−NMRスペクトル測定により重合体の構造を求め、その構造から算出することができる。
【0133】
[E]含フッ素重合体としては、下記構造単位(Ea)及び構造単位(Eb)からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。[E]含フッ素重合体は、構造単位(Ea)及び構造単位(Eb)をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。
【0134】
[構造単位(Ea)]
構造単位(Ea)は、下記式(7a)で表される構造単位である。[E]含フッ素重合体は、構造単位(Ea)を有することでフッ素原子含有率を調整することができる。
【0136】
上記式(7a)中、R
Dは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−O−、−SO
2−O−NH−、−CO−NH−又は−O−CO−NH−である。R
Eは、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の1価の鎖状炭化水素基又は少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数4〜20の1価の脂肪族環状炭化水素基である。
【0137】
上記R
Eで表される少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の鎖状炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、パーフルオロn−プロピル基、パーフルオロi−プロピル基、パーフルオロn−ブチル基、パーフルオロi−ブチル基、パーフルオロt−ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0138】
上記R
Eで表される少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数4〜20の脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、モノフルオロシクロペンチル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロペンチル基、モノフルオロシクロヘキシル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシルメチル基、フルオロノルボルニル基、フルオロアダマンチル基、フルオロボルニル基、フルオロイソボルニル基、フルオロトリシクロデシル基、フルオロテトラシクロデシル基等が挙げられる。
【0139】
上記構造単位(Ea)を与える単量体としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、ジフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリル酸エステル、ジフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロノルボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロアダマンチル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロイソボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロトリシクロデシル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロテトラシクロデシル(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0140】
構造単位(Ea)の含有割合としては、[E]含フッ素重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜80モル%が好ましく、10モル%〜60モル%がより好ましく、15モル%〜40モル%がさらに好ましい。このような含有割合にすることによって液浸露光時においてレジスト膜表面のより高い動的接触角を発現させることができる。
【0141】
[構造単位(Eb)]
構造単位(Eb)は、下記式(7b)で表される構造単位である。[E]含フッ素重合体は、構造単位(Eb)を有することで疎水性が上がるため、当該フォトレジスト組成物から形成されたレジスト膜表面の動的接触角をさらに向上させることができる。
【0143】
上記式(7b)中、R
Fは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
19は、炭素数1〜20の(s+1)価の炭化水素基であり、R
19のR
20側の末端に酸素原子、硫黄原子、−NR’−、カルボニル基、−CO−O−又は−CO−NH−が結合された構造のものも含む。R’は、水素原子又は1価の有機基である。R
20は、単結合、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基又は炭素数4〜20の2価の脂肪族環状炭化水素基である。X
2は、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基である。A
1は、酸素原子、−NR”−、−CO−O−*又は−SO
2−O−*である。R”は、水素原子又は1価の有機基である。*は、R
19に結合する結合部位を示す。R
21は、水素原子又は1価の有機基である。sは、1〜3の整数である。但し、sが2又は3の場合、複数のR
20、X
2、A
1及びR
21はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0144】
上記R
21が水素原子である場合には、[E]含フッ素重合体のアルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができる点で好ましい。
【0145】
上記R
21で表される1価の有機基としては、例えば、酸解離性基、アルカリ解離性基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基等が挙げられる。
【0146】
上記構造単位(Eb)としては、例えば、下記式(7b−1)〜(7b−3)で表される構造単位等が挙げられる。
【0148】
上記式(7b−1)〜(7b−3)中、R
19’は、炭素数1〜20の2価の直鎖状、分岐状若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基である。R
F、X
2、R
21及びsは、上記式(7b)と同義である。sが2又は3である場合、複数のX
2及びR
21はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0149】
上記構造単位(7b)の含有割合としては、[E]含フッ素重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜90モル%が好ましく、5モル%〜85モル%がより好ましく、10モル%〜80モル%がさらに好ましい。このような含有割合にすることによって、当該フォトレジスト組成物から形成されたレジスト膜表面は、アルカリ現像において動的接触角の低下度を向上させることができる。
【0150】
[構造単位(Ec)]
[E]含フッ素重合体は、上記構造単位(Ea)及び(Eb)以外にも、酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(Ec)」ともいう。)を有してもよい(但し、構造単位(Eb)に該当するものを除く)。[E]含フッ素重合体が構造単位(Ec)を有することで、得られるレジストパターンの形状がより良好になる。構造単位(Ec)としては、上述した[A]重合体における構造単位(I)等が挙げられる。
【0151】
上記構造単位(Ec)の含有割合としては、[E]含フッ素重合体を構成する全構造単位に対し、10モル%〜90モル%が好ましく、20モル%〜85モル%がより好ましく、30モル%〜80モル%がさらに好ましく、50モル%〜75モル%が特に好ましい。構造単位(Ec)の含有割合が上記下限未満だと、レジストパターンにおける現像欠陥の発生を十分に抑制できない場合がある。構造単位(Ec)の含有割合が上記上限を超えると、得られるレジスト膜表面の疎水性が低下する場合がある。
【0152】
[他の構造単位]
また、[E]含フッ素重合体は、上記構造単位以外にも、例えば、アルカリ可溶性基を含む構造単位、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を含む構造単位、脂環式基を含む構造単位等の他の構造単位を有していてもよい。上記アルカリ可溶性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホンアミド基、スルホ基等が挙げられる。ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有する構造単位としては、上述した[A]重合体における構造単位(II)等が挙げられる。
【0153】
上記他の構造単位の含有割合としては、[E]含フッ素重合体を構成する全構造単位に対して、通常、30モル%以下であり、20モル%以下が好ましい。上記他の構造単位の含有割合が上記上限を超えると、当該フォトレジスト組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0154】
当該フォトレジスト組成物における[E]含フッ素重合体の含有量としては、[A]重合体の100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0.5質量部〜15質量部がより好ましく、1質量部〜10質量部がさらに好ましい。[E]含フッ素重合体の含有量が上記上限を超えると、当該フォトレジスト組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0155】
<[F]溶媒>
当該フォトレジスト組成物は、通常、[F]溶媒を含有する。[F]溶媒は、少なくとも[A]重合体、[B]酸発生体及び[C]酸拡散制御剤、並びに所望により含有される[D]他の酸拡散制御体等を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0156】
[F]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系溶媒、エステル系有機溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0157】
アルコール系溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0158】
エーテル系溶媒としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0159】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、2−ヘプタノン(メチル−n−ペンチルケトン)、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒:
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0160】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒等が挙げられる。
【0161】
エステル系溶媒としては、例えば、
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル等の酢酸エステル系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒;
ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒;
ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどが挙げられる。
【0162】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0163】
これらの中で、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒、環状ケトン系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンがさらに好ましい。当該フォトレジスト組成物は、[F]溶媒を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0164】
[その他の任意成分]
当該フォトレジスト組成物は、上記[A]〜[F]以外にも、その他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、偏在化促進剤、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等が挙げられる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0165】
(偏在化促進剤)
偏在化促進剤は、[E]含フッ素重合体を、より効率的にレジスト膜表面に偏析させる効果を有するものである。当該フォトレジスト組成物にこの偏在化促進剤を含有させることで、[E]含フッ素重合体の添加量を従来よりも少なくすることができる。従って、断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び焦点深度等の特性を損なうことなく、レジスト膜から液浸液への成分の溶出をさらに抑制したり、高速スキャンにより液浸露光をより高速に行うことが可能になり、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制するレジスト膜表面の疎水性を向上させることができる。このような偏在化促進剤として用いることができるものとしては、比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物を挙げることができる。このような化合物としては、具体的には、ラクトン化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物、多価アルコール等が挙げられる。
【0166】
上記ラクトン化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロニックラクトン、ノルボルナンラクトン等が挙げられる。
【0167】
上記カーボネート化合物としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0168】
上記ニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリル等が挙げられる。
上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン等が挙げられる。
【0169】
当該フォトレジスト組成物における偏在化促進剤の含有量としては、重合体の総量100質量部に対して、10質量部〜500質量部が好ましく、15質量部〜300質量部がより好ましく、20質量部〜100質量部がさらに好ましい。
【0170】
(界面活性剤)
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤;市販品としては、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、DIC製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子工業製)等が挙げられる。当該フォトレジスト組成物における界面活性剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0171】
(脂環式骨格含有化合物)
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0172】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば
1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン等が挙げられる。当該フォトレジスト組成物における脂環式骨格含有化合物の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常5質量部以下である。
【0173】
(増感剤)
増感剤は、[B]酸発生剤等からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該フォトレジスト組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0174】
増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。これらの増感剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。当該フォトレジスト組成物における増感剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0175】
<フォトレジスト組成物の調製方法>
当該フォトレジスト組成物は、例えば、[A]重合体、[B]酸発生体、[C]酸拡散制御剤、必要に応じて含有される任意成分及び[F]溶媒を所定の割合で混合することにより調製できる。当該フォトレジスト組成物は、混合後に、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することが好ましい。当該フォトレジスト組成物の固形分濃度としては、通常0.1質量%〜50質量%であり、0.5質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜20質量%がより好ましい。
【0176】
<レジストパターン形成方法>
本発明のレジストパターンの形成方法は、
当該フォトレジスト組成物でレジスト膜を形成する工程(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)
上記レジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)、及び
上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)
を有する。
【0177】
当該レジストパターン形成方法によれば、上述した当該フォトレジスト組成物を用いているので、広い焦点深度を発揮しつつ、断面形状の矩形性に優れ、LWRが小さくかつ高い解像度のレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0178】
[レジスト膜形成工程]
レジスト膜形成工程では、当該フォトレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、基板上に塗布することにより、レジスト膜を形成する。基板としては、例えばシリコンウェハ、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウェハ等が挙げられる。具体的には、得られるレジスト膜が所定の膜厚となるように当該フォトレジストを塗布した後、プレベーク(PB)することにより塗膜中の溶媒を気化させ、レジスト膜を形成する。PBの温度としては、通常60℃〜140℃であり、80℃〜120℃が好ましい。PBの時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0179】
[露光工程]
露光工程では、レジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜を露光する。この露光は、例えば、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)露光光を照射することにより行われる。露光光としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中でも、遠紫外線、電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、電子線がより好ましく、ArFエキシマレーザー光、電子線がさらに好ましい。
【0180】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により[B]酸発生体から発生した酸による[A]重合体の酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光された部分(露光部)と露光されていない部分(未露光部)の現像液に対する溶解性に差が生じる。PEB温度としては、通常50℃〜180℃であり、80℃〜130℃が好ましい。PEB時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0181】
[現像工程]
現像工程では、露光されたレジスト膜を、現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0182】
上記現像液としては、
アルカリ現像の場合、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
また、有機溶媒現像の場合、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、又は有機溶媒を含有する溶媒が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば、上述のフォトレジスト組成物の[F]溶媒として列挙した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n−ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2−ヘプタノンがより好ましい。
【0183】
また、液浸露光を行う場合は、露光工程の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液に不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、現像工程の前に溶媒により剥離する溶媒剥離型保護膜(例えば特開2006−227632号公報参照)、現像工程の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えばWO2005−069076号公報、WO2006−035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。但し、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0184】
<酸拡散制御剤>
本発明の酸拡散制御剤は、化合物(1)からなる。化合物(1)は、上記式(1)で表される。
【0185】
上記式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。但し、この炭化水素基のうちの2つ以上が互いに結合して、これらが結合する炭素原子と共に環構造を形成していてもよい。Aは、水素原子、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基及び炭素数3〜30の脂環式炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と、−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と、上記式(1)におけるカルボニル基と結合する部位となるn個の窒素原子とを組み合わせてなり、かつ原子量の総和が120以上であるn価の基である。上記鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子を含まない基で置換されていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。nは、1〜4の整数である。
【0186】
化合物(1)としては、化合物(2)が好ましい。
【0187】
上記式(2)中、R
1、R
2、R
3及びnは、上記式(1)と同義である。R
4は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。R
5は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。但し、R
4及びR
5が互いに結合して、これらが結合する窒素原子と共に脂環式構造を形成していてもよい。R
6は、水素原子、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基及び炭素数3〜30の脂環式炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と、−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを組み合わせたn価の基である。上記鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子を含まない基で置換されていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。但し、式(2)における[(R
4の式量+R
5の式量+窒素の原子量)×n+R
6の式量]は120以上である。
【0188】
化合物(2)としては、化合物(3)が好ましい。
【0189】
上記式(3)中、R
1〜R
5は、上記式(2)と同義である。R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基及び炭素数3〜30の脂環式炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基、又はこれらの基と−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを組み合わせてなる基である。但し、R
7、R
8及びR
9のうちの2つ以上が互いに結合して、これらが結合する炭素原子と共に環構造を形成してもよい。Xは、−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−又は−NRCO−である。但し、式(3)におけるR
4、R
5、X、R
7、R
8及びR
9の式量並びに窒素及び炭素の原子量の合計は120以上である。
【0190】
当該酸拡散制御剤については、当該フォトレジスト組成物の[C]酸拡散制御剤として説明している。
【0191】
<化合物>
本発明の化合物は、上記式(3)で表される。
【0192】
上記式(3)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。但し、この炭化水素基のうちの2つ以上が互いに結合して、これらが結合する炭素原子と共に環構造を形成していてもよい。R
4は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。R
5は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。但し、R
4及びR
5が互いに結合して、これらが結合する窒素原子と共に脂環式構造を形成していてもよい。R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基及び炭素数3〜30の脂環式炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基、又はこれらの基と−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを組み合わせてなる基である。但し、R
7、R
8及びR
9のうちの2つ以上が互いに結合して、これらが結合する炭素原子と共に環構造を形成してもよい。Xは、−O−、−CO−、−COO−、−SO
2O−、−NR−、−NRSO
2−、−NRSO
2O−又は−NRCO−である。但し、式(3)におけるR
4、R
5、X、R
7、R
8及びR
9の式量並びに窒素及び炭素の原子量の合計は120以上である。
【0193】
当該化合物は上述の化合物(i)であり、当該フォトレジスト組成物の[C]酸拡散制御剤の項で説明している。
【実施例】
【0194】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0195】
[
1H−NMR分析及び
13C−NMR分析]
化合物の
1H−NMR分析及び
13C−NMR分析、重合体の各構成単位含有割合及びフッ素原子含有率を求めるための
13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−ECX400、日本電子製)を使用して測定した。
【0196】
<化合物(i)の合成>
化合物(i)である化合物(i−1)〜(i−4)を以下の反応スキームに従い合成した。
【0197】
【化23】
【0198】
上記スキーム中、LがCかつR
αがアダマンチル基、エトキシカルボニルメチル基若しくはカンファー基、又はLがS=OかつR
αがメチル基である。
【0199】
[実施例1]
200mLのナスフラスコに、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン3.00g(13.9mmol)、トリエチルアミン2.11g(20.9mmol)、ジメチルアミノピリジン0.034g(0.279mmol)及びジクロロメタン40gを仕込み、氷浴にて0℃に冷却した。次に、そこへジクロロメタン20gに溶解させた1−アダマンチルカルボン酸クロライド3.32g(16.7mmol)を10分かけて滴下した。その後、0℃で30分攪拌した後、室温で20時間攪拌した。次いで、水を加えて反応を停止した後、ジクロロメタンで抽出し水洗した後、カラムクロマトグラフィーで精製することにより下記式(i−1)で表される化合物(以下、「化合物(i−1)」ともいう)を4.62g得た(収率87.8%)。
【0200】
[実施例2〜4]
実施例1において、1−アダマンチルカルボン酸クロライドの代わりに、対応する他の誘導体を用いた以外は、実施例1と同様に操作して、下記式(i−2)〜(i−4)で表される化合物をそれぞれ合成した。
【0201】
【化24】
【0202】
<重合体の合成>
[A]重合体及び[E]含フッ素重合体の合成に用いた各単量体を下記に示す。
【0203】
【化25】
【0204】
[[A]重合体の合成]
[合成例1]
化合物(M−1)9.01g(50モル%)及び化合物(M−2)10.99g(50モル%)を2−ブタノン40gに溶解し、さらに、重合開始剤としてのAIBN0.81g(化合物の合計モル数に対して5モル%)を溶解させて単量体溶液を調製した。20gの2−ブタノンを入れた100mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合反応溶液を水冷して30℃以下に冷却した。400gのメタノール中に、この冷却した重合反応溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。このろ別した白色粉末を80gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて、白色粉末状の重合体(A−1)を得た(収量15.6g、収率78%)。重合体(A−1)のMwは7,200であり、Mw/Mnは1.52であった。
13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)に由来する構造単位及び(M−2)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ50.2モル%及び49.8モル%であった。この重合体(A−1)中の低分子量部分の含有率は0.04質量%であった。
【0205】
[合成例2]
化合物(M−4)55.0g(65モル%)、化合物(M−5)45.0g(35モル%)、AIBN4g及びt−ドデシルメルカプタン1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合させた。重合反応終了後、重合反応溶液を1,000gのn−ヘキサン中に滴下して、重合体を凝固精製した。次いで、この重合体に、プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、さらに、メタノール150g、トリエチルアミン34g及び水6gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトン150gに溶解した後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過し、50℃で17時間乾燥させて、白色粉末の重合体(A−2)を得た(65.7g、収率76.6%)。重合体(A−2)は、Mwが10,000、Mw/Mnが2.1であった。
13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位及び化合物(M−5)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ65.4モル%及び34.6モル%であった。この重合体(A−2)中の低分子量部分の含有率は、0.05質量%であった。
【0206】
[[E]含フッ素重合体の合成]
[合成例3]
化合物(M−1)79.9g(70モル%)及び化合物(M−3)20.91g(30モル%)を100gの2−ブタノンに溶解し、さらに、重合開始剤としてのジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート4.77gを溶解させて単量体溶液を調製した。100gの2−ブタノンを入れた1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合反応溶液を水冷して30℃以下に冷却した。この重合反応溶液を2L分液漏斗に移液した後、150gのn−ヘキサンを用いてこの重合反応溶液を均一に希釈し、600gのメタノールを投入して混合し、次いで、30gの蒸留水を投入してさらに攪拌した後30分静置した。その後、下層を回収し、溶媒置換を行うことにより、重合体(E−1)の酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液とした(収率60%)。重合体(E−1)のMwは7,200であり、Mw/Mnは2.00であった。
13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)に由来する構造単位及び化合物(M−3)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ71.1モル%及び28.9モル%であった。重合体(E−1)中の低分子量部分の含有率は0.07質量%であった。
【0207】
<フォトレジスト組成物の調製>
フォトレジスト組成物の調製に用いた各成分を下記に示す。
【0208】
[[B]酸発生剤]
トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホネート(下記式(B−1)で表される化合物)
【0209】
【化26】
【0210】
[[C]酸拡散制御剤]
C−1:上記合成した化合物(i−1)(上記式(i−1)で表される化合物)
C−2:上記合成した化合物(i−2)(上記式(i−2)で表される化合物)
C−3:上記合成した化合物(i−3)(上記式(i−3)で表される化合物)
C−4:上記合成した化合物(i−4)(上記式(i−4)で表される化合物)
CC−1:N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン(下記式(CC−1)で表される化合物)
【0211】
【化27】
【0212】
[[F]溶媒]
F−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
F−2:シクロヘキサノン
【0213】
[[G]偏在化促進剤]
G−1:γ−ブチロラクトン
【0214】
<ArF露光用フォトレジスト組成物の調製>
[実施例5]
[A]重合体としての(A−1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)8.5質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C−1)30モル%([B]酸発生剤に対するモル%)、[E]フッ素原子含有重合体としての(E−1)3質量部、[F]溶媒としての(F−1)2,240質量部及び(F−2)960質量部並びに[G]偏在化促進剤としての(G−1)30質量部を混合し、フォトレジスト組成物(J−1)を調製した。
【0215】
[実施例6〜8及び比較例1]
表1に示す種類及び含有量の各成分を用いたこと以外は実施例5と同様に操作して、フォトレジスト組成物(J−2)〜(J−4)及び(CJ−1)を調製した。
【0216】
【表1】
【0217】
[ArF露光によるレジストパターンの形成]
(アルカリ現像の場合)
12インチのシリコンウェハ表面に、スピンコーター(CLEAN TRACK ACT12、東京エレクトロン製)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ARC66、ブルワーサイエンス製)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して各フォトレジスト組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR−S610C、NIKON製)を用い、NA=1.3、ダイポール(シグマ0.977/0.782)の光学条件にて、40nmラインアンドスペース(1L1S)マスクパターンを介して露光した。露光後、90℃で60秒間PEBを行った。その後、2.38質量%TMAH水溶液により現像し、次いで、水で洗浄、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0218】
(有機溶媒現像の場合)
上記「アルカリ現像の場合」において、現像液として2.38質量%のTMAH水溶液の代わりに酢酸n−ブチルを用い、水洗工程をなくしたこと以外は、上記「アルカリ現像の場合」と同様に操作して、ネガ型のレジストパターンを形成した。
【0219】
[評価]
形成した各レジストパターンの測定により、各フォトレジスト組成物の評価を行った。評価結果を表2に示す。表2中の「−」は、評価の基準であることを示す。レジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡(S−9380、日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。
【0220】
(LWR性能)
上記形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。線幅を任意のポイントで計50点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをLWR性能とした。LWR性能は、その値が小さいほど良好である。比較例1のフォトレジスト組成物の場合と比べて、10%以上のLWR性能の向上(LWR性能の値が90%以下になることをいう)があった場合は「A」(良好)と、10%未満のLWR性能の向上であった場合は「B」(不良)と評価した。
【0221】
(解像性)
上記最適露光量において解像される最小のレジストパターンの寸法を解像性とした。解像性は、その値が小さいほど良好であることを示す。比較例1のフォトレジスト組成物の場合と比べて、10%以上の解像性向上(解像性の値が90%以下になることをいう)が見られたものを「A」(良好)、10%未満の解像性向上であったものを「B」(不良)と評価した。
【0222】
(断面形状の矩形性)
上記最適露光量において解像されるレジストパターンの断面形状を観察し、レジストパターンの中間での線幅Lbと、レジストパターンの上部での線幅Laを測り、0.9≦(La/Lb)≦1.1である場合を「A」(良好)、(La/Lb)<0.9又は1.1<(La/Lb)である場合を「B」(不良)と評価した。
【0223】
(焦点深度)
上記最適露光量において解像されるレジストパターンにおいて深さ方向にフォーカスを変化させた際の寸法を観測し、ブリッジや残渣が無いままパターン寸法が基準の90%〜110%に入る深さ方向の余裕度を焦点深度とした。焦点深度は、その値が大きいほど良好であることを示す。比較例1のフォトレジスト組成物の場合と比べて、10%以上の焦点深度向上(焦点深度の値が110%以上になることをいう)が見られたものを「A」(良好)、10%未満の焦点深度向上であったものを「B」(不良)と評価した。
【0224】
【表2】
【0225】
<電子線露光用フォトレジスト組成物の調製>
[実施例9]
[A]重合体としての(A−2)100質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)20質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C−1)30モル%([B]酸発生剤に対するモル比)並びに[F]溶媒としての(F−1)4,280質量部及び(F−2)1,830質量部を混合してフォトレジスト組成物(J−5)を調製した。
【0226】
[実施例10〜12及び比較例2]
表3に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は実施例11と同様に操作して、フォトレジスト組成物(J−6)〜(J−8)を調製した。
【0227】
[電子線露光によるレジストパターンの形成]
8インチのシリコンウェハ表面にスピンコーター(CLEAN TRACK ACT8、東京エレクトロン製)を使用して、下記表3に示す各フォトレジスト組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後23℃で30秒間冷却し、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、簡易型の電子線描画装置(HL800D、日立製作所製、出力;50KeV、電流密度;5.0アンペア/cm
2)を用いて電子線を照射した。照射後、130℃で60秒間PEBを行った。その後、現像液として、2.38質量%TMAH水溶液を用い、23℃で30秒間現像した後、水で洗浄、乾燥し、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0228】
[評価]
上記形成した各レジストパターンについて、上記「ArF露光によるレジストパターンの形成」の場合と同様の評価(各評価の基準は、比較例2のフォトレジスト組成物の場合とした)を行った。評価結果を表3に合わせて示す。表3中の「−」は、評価の基準であることを示す。
【0229】
【表3】
【0230】
表2及び表3の結果から、実施例のフォトレジスト組成物によれば、ArF露光及び電子線露光の場合とも、また、アルカリ現像及び有機溶媒現像の場合とも、広い焦点深度を発揮しつつ、パターン形状に優れ、LWRが小さく、かつ高い解像度のレジストパターンが得られることが分かる。