特許第6075372号(P6075372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075372
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】物質特性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3559 20140101AFI20170130BHJP
【FI】
   G01N21/3559
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-508037(P2014-508037)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2013059298
(87)【国際公開番号】WO2013147038
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-73652(P2012-73652)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市沢 康史
(72)【発明者】
【氏名】堀越 久美子
(72)【発明者】
【氏名】節田 和紀
(72)【発明者】
【氏名】千田 直道
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−136452(JP,A)
【文献】 特開2004−163312(JP,A)
【文献】 特開2012−026746(JP,A)
【文献】 特開平05−087733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるn個の波長の光を被測定物質に照射する光源照射部と、
前記被測定物質に照射された後の各波長の光の強度を検出する検出部と、
記憶領域を有し、行および列のそれぞれがn次以下の行列で表わされ前記記憶領域に記憶された補正係数を用いて、検出された各波長の少なくとも一部の波長の光の強度を補正し、補正後の各波長の光の相対強度に基づいて指標値を算出し、前記指標値と前記被測定物質の特性値とを対応付けた検量線が、前記記憶領域に一本の検量線として記憶されており、該一本の検量線を参照して前記指標値を前記特性値に変換して出力する、演算処理部と、
を備え、
前記演算処理部は、
用意された複数種類の被測定物質のそれぞれについて特性値を変化させて前記光源照射部から前記異なるn個の波長の光を照射して前記検出部によって検出された各波長の光の強度に対応した信号値を取得し、該信号値を設定された補正係数の値によって補正し、補正後の信号値の相対強度比に基づいて、変化させた前記特性値毎に指標値を算出する処理と、
前記複数種類の被測定物質毎に算出した前記特性値毎の指標値を用いて、前記複数種類の被測定物質毎の各検量線を作成する処理と、
作成した前記被測定物質毎の各検量線の一致度を評価する評価処理と、
を行い、
前記評価処理による評価の結果、前記一致度が予め定められた基準値未満であれば、前記設定された補正係数の値を変更し、変更された補正係数の値を用いて前記信号値の補正以降の処理を繰り返し、前記一致度が予め定められた基準値以上であれば、そのとき設定されている値を補正係数として決定し、
前記決定された補正係数が前記記憶領域に記憶された補正係数とされ、前記決定された補正係数で得られた前記被測定物質毎の各検量線から前記記憶領域に記憶された一本の検量線が求められる、ことを特徴とする物質特性測定装置。
【請求項2】
異なるn個の波長の光を被測定物質に照射する光源照射部と、
前記被測定物質に照射された後の各波長の光の強度を検出する検出部と、
記憶領域を有し、n次の正方行列で表わされ前記記憶領域に記憶された補正係数を用いて、検出された各波長の光の強度を補正し、補正後の各波長の光の相対強度に基づいて指標値を算出し、前記指標値と前記被測定物質の特性値とを対応付けた検量線が、前記記憶領域に一本の検量線として記憶されており、該一本の検量線を参照して前記指標値を前記特性値に変換して出力する、演算処理部と、
を備え、
前記演算処理部は、
用意された複数種類の被測定物質のそれぞれについて特性値を変化させて前記光源照射部から前記異なるn個の波長の光を照射して前記検出部によって検出された各波長の光の強度に対応した信号値を取得し、該信号値を設定された補正係数の値によって補正し、補正後の信号値の相対強度比に基づいて、変化させた前記特性値毎に指標値を算出する処理と、
前記複数種類の被測定物質毎に算出した前記特性値毎の指標値を用いて、前記複数種類の被測定物質毎の各検量線を作成する処理と、
作成した前記被測定物質毎の各検量線の一致度を評価する評価処理と、
を行い、
前記評価処理による評価の結果、前記一致度が予め定められた基準値未満であれば、前記設定された補正係数の値を変更し、変更された補正係数の値を用いて前記信号値の補正以降の処理を繰り返し、前記一致度が予め定められた基準値以上であれば、そのとき設定されている値を補正係数として決定し、
前記決定された補正係数が前記記憶領域に記憶された補正係数とされ、前記決定された補正係数で得られた前記被測定物質毎の各検量線から前記記憶領域に記憶された一本の検量線が求められる、ことを特徴とする物質特性測定装置。
【請求項3】
前記光源照射部は、各波長の光を発光するn個のLED(Light Emitting Diode)を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の物質特性測定装置。
【請求項4】
前記光源照射部は、前記n個のLEDをそれぞれ異なる周波数で変調して駆動し、
前記検出部は、周波数変調された信号から特定の周波数の信号を検出する周波数弁別器を備えていることを特徴とする請求項3に記載の物質特性測定装置。
【請求項5】
前記光源照射部は、
前記LEDの光を反射、 拡散して同時に前記被測定物質に照射することを特徴とする請求項3または4に記載の物質特性測定装置。
【請求項6】
前記光源照射部は、
各波長の光の空間ユニフォーミティーを揃えるチューブリフレクタまたはライトパイプを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の物質特性測定装置。
【請求項7】
前記被測定物質は紙であり、
前記特性は水分率であり、
前記異なるn個の波長の光は、3波長以上であり、水分に吸収される波長の光と、セルロースに吸収される波長の光と、水分およびセルロースのいずれにも吸収されにくい波長の光とを含んでいることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の物質特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる波長の光を被測定物質に照射し、被測定物質に照射された後の各波長の光の相対強度に基づいて、被測定物質の特性を測定する物質特性測定装置に関し、特に、スペクトルの半値幅が極狭の光でなくても高精度の測定を行なえる物質特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続的に紙を製造する抄紙工程において水分率の制御が重要である。このため、抄紙ラインを移動する紙の水分率を、オンラインで測定する水分測定装置が必要とされている。水分測定装置には、いくつかの方式が実用化されているが、オンラインで使用される水分測定装置としては、近赤外線を利用した赤外線水分測定装置が広く用いられている。
【0003】
赤外線水分測定装置では、水分に吸収され、紙の主成分であるセルロースに吸収されない波長の光と、水分に吸収されず、セルロースに吸収される波長の光を測定対象の紙に透過させる。そして、受光部で測定されるそれぞれの波長の強度比に基づいて紙中の水分率を算出する。このとき、紙の散乱や混合物、坪量、灰分、リグニング、着色料、コーティング等による影響を排除するために、水分にもセルロースにも吸収されない波長の光を参照光として用いることも行なわれている。
【0004】
図6は、従来の赤外線水分測定装置の構成を示すブロック図である。本図に示すように、従来の赤外線水分測定装置40では、光源として、スペクトラムが連続的でブロードなハロゲンランプ410が一般に用いられている。ハロゲンランプ410からの光は、投光レンズ411を介して、フィルタホイール420に装着されたバンドパスフィルタ421に導かれる。
【0005】
本図の例では、水分、セルロースともに吸収されない波長λaの参照光を透過させるバンドパスフィルタ421aと、水分に吸収され、セルロースに吸収されない波長λbの光を透過させるバンドバスフィルタ421bと、セルロースに吸収され、水分に吸収されない波長λcの光を透過させるバンドパスフィルタ421cの3種類をフィルタホイール420に装着しているが、参照光を複数波長とするために4種類以上のバンドパスフィルタ421を用いる場合もある。
【0006】
各波長の光は、フィルタホイール420の回転にしたがって、順次出力される。ここでは、破線矩形枠Aに示すように、時刻t1に波長λaの光が出力され、時刻t2に波長λbの光が出力され、時刻t3に波長λcの光が出力されるものとする。他の波長成分を含むことによる測定精度の低下を招かないように、各バンドパスフィルタ421は、出力する光のスペクトラムの半値幅が極狭になるような仕様が求められる。
【0007】
バンドパスフィルタ421を透過した光は、測定対象の紙700に当てられるが、本例の赤外線水分測定装置40では、感度を高めるために、紙700を、入射孔が設けられた上部反射鏡431と出射孔が設けられた下部反射鏡432とで挟んで、抄紙ライン上を移動する紙700の中を光が何度も通過するようにしている。
【0008】
下部反射鏡432の出射孔から抜け出た光はPbSセル等の受光素子440で検出され、検出信号がアンプ441で増幅される。増幅された検出信号は、破線矩形枠Bに示すように、各バンドパスフィルタ421からの出力時刻に対応した時系列で得られる。すなわち、時刻t1に得られた信号Vaは、波長λaの光の強度に対応し、時刻t2に得られた信号Vbは、波長λbの光の強度に対応し、時刻t3に得られた信号Vcは、波長λcの光の強度に対応する。
【0009】
増幅された検出信号は、演算処理部450に入力され、指標値算出部451において、各波長に対応した検出信号の強度比に基づいて指標値が算出される。そして、水分率算出部452が、あらかじめ用意された検量線453を参照して、指標値を水分率に変換して出力する。検量線453は、電子天秤等で測定した正確な水分率と赤外線水分測定装置40で得られた指標値とを対応付けたデータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】日本国特開平5−118984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように従来の赤外線水分測定装置40では、水分、セルロースともに吸収されない波長λaの参照光と、水分に吸収され、セルロースに吸収されない波長λbの光と、セルロースに吸収され、水分に吸収されない波長λcの光を用いて、それぞれの光の透過強度を測定することで水分率の測定を行なっている。
【0012】
図7は、横軸に波長、縦軸に透過強度を表わした図であり、同じ紙における水分率5%と、水分率15%の波長毎の吸収特性を示している。本来、水分率による特性の差は、水分にだけ吸収される波長λbにおいてのみ差Dbとして表われるのが理想であるが、実際は、波長λa、波長λcとも、差Da、差Dcが生じており、水分の影響を受けていることが分かる。
【0013】
このため、測定された強度比をそのまま用いて指標値を算出し、水分率に変換しても、無視できない誤差が生じるおそれがある。
【0014】
また、測定に用いる光のスペクトラムの半値幅が広いと、他の波長成分を含むことになり、検量線の紙種銘柄毎のばらつき具合が大きくなることが分かっている。紙種銘柄毎に検量線を用意するのは現実的でなく、検量線の紙種銘柄毎のばらつきによる測定精度の低下を招かないように、従来は各波長のスペクトラムの半値幅が極狭になるようなバンドパスフィルタ421が用いられているが、このようなバンドパスフィルタ421は、光量の減衰が大きい。このため、厚い紙まで測定可能とするためには、大出力のハロゲンランプ410を用いなければならず、冷却機構、電源等による装置の大型化や高価格化を招来する。
【0015】
仮に、スペクトルの半値幅の広い光で高精度の測定を行なうことができれば、それぞれの波長に対応したLED(Light Emitting Diode)を光源として用いることができるようになる。LEDは、スペクトルの半値幅は広いが、ハロゲンランプと比較してメンテナンスが容易であり寿命も長く、低消費電力、安価のため、利点が大きい。また、必要な波長で発光させることでバンドパスフィルタ421を省くことができるようになり、フィルタホイール420のような機械的な可動部の摩耗や故障のリスクを無くすことができる。
【0016】
さらに、スペクトルの半値幅の広い光で高精度の測定を行なうことができれば、光源としてハロゲンランプ410を用いた場合でも、バンドパスフィルタ421に要求される半値幅に関する仕様を低下させることができるため、光量の減衰量が少なくなり、装置の大型化や高価格化を防ぐことができる。
【0017】
そこで、本発明は、異なる波長の光を被測定物質に照射し、被測定物質に照射された後の各波長の光の相対強度に基づいて、被測定物質の特性を測定する物質特性測定装置において、スペクトルの半値幅が極狭の光でなくても高精度の測定を行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の物質特性測定装置は、異なるn個の波長の光を被測定物質に照射する光源照射部と、前記被測定物質に照射された後の各波長の光の強度を検出する検出部と、n次の正方行列で表わされる補正係数を用いて、検出された各波長の光の強度を補正し、補正後の各波長の光の相対強度に基づいて前記被測定物質の特性を示す指標値を算出する演算処理部と、
を備えたことを特徴とする。
ここで、前記演算処理部は、前記指標値を算出すると、さらに、前記指標値と特性値とを対応付けた検量線を参照して前記指標値を特性値に変換し、前記補正係数は、複数種の被測定物質について、検量線の一致度が所定基準を満たすように定めることができる。
また、前記光源照射部は、各波長の光を発光するn個のLED(Light Emitting Diode)を備えることができる。
このとき、前記光源照射部は、前記n個のLEDをそれぞれ異なる周波数で変調して駆動し、前記検出部は、周波数変調された信号から特定の周波数の信号を検出する周波数弁別器を備えることができる。
また、前記光源照射部は、前記LEDの光を反射、拡散して同時に前記被測定物質に照射することができる。
いずれの場合も、前記被測定物質は紙であり、前記特性は水分率であり、前記異なるn個の波長の光は、3波長以上であり、水分に吸収される波長の光と、セルロースに吸収される波長の光と、水分およびセルロースのいずれにも吸収されにくい波長の光とを含むことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、異なる波長の光を被測定物質に照射し、被測定物質に照射された後の各波長の光の相対強度に基づいて、被測定物質の特性を測定する物質特性測定装置において、スペクトルの半値幅が極狭の光でなくても高精度の測定を行なえるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る赤外線水分測定装置の構成を示すブロック図である。
図2】補正係数と検量線の決定手順について説明するフローチャートである。
図3】検量線の例を示す図である。
図4】赤外線水分測定装置の測定手順について説明するフローチャートである。
図5】本実施形態に係る赤外線水分測定装置の別構成を示すブロック図である。
図6】従来の赤外線水分測定装置の構成を示すブロック図である。
図7】同じ紙における水分率5%と、水分率15%の波長毎の吸収特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、本発明の物質特性測定装置を、赤外線を利用して紙中の水分率を測定する赤外線水分測定装置に適用した場合について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る赤外線水分測定装置の構成を示すブロック図である。本図に示すように、赤外線水分測定装置10は、波長λa、波長λb、波長λcで発光する3つのLEDを搭載したLEDユニット110を光源として用いている。LEDユニット110には冷却機能を備えることが望ましい。本実施形態では、LEDを光源とすることで、光源や冷却装置の小型化が可能となっている。一般に、オンライン測定装置では、複数センサを測定ヘッドに同時搭載するため、装置の小型化は有効である。
【0023】
波長λaは、水分、セルロースともに吸収されない波長であり、例えば、1.7μmとすることができる。波長λbは、水分に吸収され、セルロースに吸収されない波長であり、例えば、1.9μmとすることができる。波長λcは、セルロースに吸収され、水分に吸収されない波長であり、例えば、2.1μmとすることができる。
【0024】
LEDユニット110に搭載されたLEDは、LED駆動部120にドライブされて発光する。このとき、LEDは電気的変調が可能であることから、LED駆動部120は変調部121を備えており、それぞれのLEDを、異なる周波数で変調して発光させる。変調周波数は、例えば、数kHz程度とすることができる。LEDを変調発光させる理由は、後段の各波長の信号検出時において、雑音の少ない周波数帯域で信号を検出するためである。また、LEDを変調発光させることにより、オンライン測定時に、高温状態の紙700が発生する近赤外線の影響も受けにくくなり、測定精度の向上が期待される。
【0025】
図1の破線矩形枠Aに示すように、LEDユニット110が出射するそれぞれの波長の光は、従来のバンドパスフィルタを通した光と比較して半値幅が広くなっているが、フィルタホイールを用いていないため、時刻t0において同時に発光させ、紙700に同時に照射することができる。このため、紙700が抄紙ライン上で移動している場合であっても、各波長の光を同一の地点に当てて測定することが可能となる。従来は、各波長の光を順次照射していたため、各波長の光が紙700の異なる地点に当たっていたのに対して、測定むらの改善が期待される。また、機械的な可動部であるフィルタホイールを用いていないため、装置の小型化に加え、摩耗や故障のリスクを無くすことができ、信頼性、耐久性、保守性が向上する。
【0026】
LEDユニット110から出射されたそれぞれの波長の光は、発光位置が異なるため、空間ユニフォーミティーが乱れている。そこで、LEDユニット110の直近に、内面を高反射率の反射材で囲った多角形のチューブリフレクタ130を配置している。チューブリフレクタ130に代えて、ライトパイプを用いてもよい。チューブリフレクタ130、ライトパイプともに角柱または出口方向に広がった角錐の形状が好ましい。これにより、各波長の光を適切に混色し、空間ユニフォーミティーの揃った光を高効率で測定対象の紙700に導くことが可能となる。
【0027】
本図の例では、さらに効果を高めるために、チューブリフレクタ130の出口付近に拡散シート131を設けているが、紙厚等の測定対象物の性質に応じて、拡散シート131を省いたり、拡散シート131の拡散強度を調整したりすることができる。
【0028】
チューブリフレクタ130の先には、入射孔が設けられた薄型の上部反射鏡141が、反射面を被測定物質の紙700側に向けて配置されている。そして、出射孔が設けられたほぼ同形の下部反射鏡142が、光軸を合わせて対向配置されている。それぞれの反射鏡の被測定物質側には紙粉や水分の混入を防ぐための薄いガラスウィンドウ143、144が貼られている。以上のブロックは、光源照射部として機能する。
【0029】
下部反射鏡142の出射孔から抜け出た光は、3つの波長に感度の高いフォトダイオード等の受光素子150で3つの波長が重畳した波形として検出される。検出信号が初段のアンプ151で増幅され、さらに周波数弁別器152に入力される。これらのブロックは、検出部として機能する。
【0030】
周波数弁別器152は、周波数変調のなされた信号から原信号波を検出する装置であり、雑音の少ない周波数帯域で信号を検出することにより、ノイズに埋もれた微小信号の検出や、より高感度の信号検出を行なうことができる。これにより、高坪量の紙の測定精度も向上する。本実施形態では、LEDを周波数変調してドライブしているため、周波数弁別器152を用いて各波長の信号を精度よく検出することができる。
【0031】
周波数弁別器152は、既知のものを用いることができ、例えば、FFTを用いて検出対象の周波数成分を抽出する方式や、特定の周波数の信号を検出して増幅させるロックインアンプを用いることができる。この場合、位相調整を必要としない2相構成とし、乗算器を2つ設けてそれぞれ90度位相差のある信号を乗算してX成分とY成分とに分けて検出した後、ベクトル演算して入力信号の振幅値として求めるようにする。これに変調部121が施した変調信号を乗算することで、検出対象の信号の振幅が直流成分に変換されるので、ローパスフィルタを用いて不要な成分を取り除いて検出対象の波長に対応する信号を検出することができる。この構成を波長毎に3組設ければよい。そして、検出されたそれぞれの波長の光強度に対応する信号のゲインを調整し、出力する。光照射による測定と各波長の光強度に対応した信号の検出は、複数回繰り返すことが望ましい。
【0032】
周波数弁別器152の出力は、演算処理部160に入力される。本図に示すように、演算処理部160はフィルタ部161、測定値補正部162、指標値算出部163、水分率算出部164を備えている。
【0033】
フィルタ部161は、測定結果のばらつきを低減するために、移動平均等により、検出された各波長の光強度に対応した信号の平均化処理を行なう。
【0034】
測定値補正部162は、各波長の光強度に対応した信号値を、補正係数165を用いて補正する。波長数が3つの場合、補正係数は、3×3の正方行列で表わすことができる。測定値補正部162は、補正前の各波長の光強度に対応した値(Va,Vb,Vc)を[数1]にしたがって補正を行ない、補正後の値(Va',Vb',Vc')を得る。これにより、各波長の相互の影響を補正することができる。補正係数165の決定手順については後述する。
【数1】
指標値算出部163は、補正後の信号値(Va',Vb',Vc')の相対強度比に基づいて指標値を算出する。指標値の算出方法は、従来と同様とすることができる。
【0035】
水分率算出部164は、あらかじめ作成された検量線166を参照して、指標値算出部163が算出した指標値を水分率に変換して出力する。
【0036】
次に、補正係数165と検量線166の決定手順について図2のフローチャートを参照して説明する。この手順は、赤外線水分測定装置10の出荷前において製造側が実行するものであり、原則的にユーザが行なう必要がない。このため、ユーザは、従来と同様の測定操作により精度の高い測定を行なうことが可能となる。
【0037】
まず、複数種複数銘柄の紙を用意し、それぞれの紙について、水分率を変化させて赤外線水分測定装置10で測定を行ない、補正前の各波長の光強度に対応した信号値(Va,Vb,Vc)を取得する(S101)。水分率は、電子天秤等を用いて正確な値を測定しておくものとする。
【0038】
補正係数を決定するにあたり、補正係数の初期値を設定しておく(S102)。初期値は、例えば、[数2]に示すような補正を行なわないことと同値の3×3の基本行列とすることができる。
【数2】
次に、設定された補正係数を用いて、種類銘柄毎に測定値信号(Va,Vb,Vc)を補正する(S103)。補正は、[数1]にしたがって行なうことができる。そして、補正後の信号値(Va',Vb',Vc')の相対強度比に基づいて指標値を種類銘柄毎に算出する(S104)。
【0039】
指標値は、水分率毎に算出されるため、算出された指標値を用いて、種類銘柄毎に検量線を作成する(S105)。図3(a)は、紙種A、紙種B、紙種C、紙種D毎に作成した検量線の例を示している。本図は、補正係数が初期値で、各検量線のばらつきが大きい状態を示している。このような状態では、紙種銘柄毎に検量線を用意しなければならず、実用化には向かない。
【0040】
種別銘柄毎の検量線を作成すると、各検量線の一致度を評価する(S106)。一致度の評価は、例えば、重回帰分析により1つの近似曲線を求め、近似曲線と各検量線との誤差の合計を算出することにより行なうことができる。
【0041】
評価の結果、一致度があらかじめ定められた基準値未満であれば(S107:No)、補正係数を変更する(S108)。補正係数の変更アルゴリズムは、近傍探索法、モンテカルロ法等任意の手法を用いることができる。そして、変更された補正係数を用いて測定値補正(S103)以降の処理を繰り返し、各検量線の一致度の評価を行なう。
【0042】
評価の結果、一致度が基準値以上であれば(S107:Yes)、そのとき設定されている値を補正係数として決定する(S109)。図3(b)は、各検量線の一致度が基準値を超えた状態を示している。
【0043】
補正係数を決定すると、実際の測定に用いる検量線を決定する(S110)。実際の測定に用いる検量線は、例えば、決定した補正係数で得られた紙種銘柄毎の検量線に対する重回帰分析により求めた近似曲線とすることができる。図3(c)は、決定した補正係数で得られた紙種銘柄毎の検量線から求められた検量線を示している。この検量線166を用いることにより、紙種銘柄毎の検量線は不要となる。
【0044】
以上の手順にしたがって、補正係数と検量線とを決定すると、補正係数165、検量線166として演算処理部160内の記憶領域に記録する。
【0045】
次に、赤外線水分測定装置10の水分率計測手順について図4のフローチャートを参照して説明する。すでに上記図2の手順により、補正係数165と検量線166とが決定されて、演算処理部160内の記憶領域に記録されているものとする。
【0046】
まず、LEDユニット110からの各波長が混在した光を紙700に照射し、受光素子150で検出した後、周波数弁別器152で波長毎の信号値を得る測定処理を実行する(S201)。測定処理は複数回繰り返すことが望ましい。この場合、演算処理部160のフィルタ部161が測定結果を平均化する。
【0047】
そして、演算処理部160の測定値補正部162が、補正係数165を参照して、測定結果の補正を行ない(S202)、指標値算出部163が、補正された測定結果に基づいて指標値の算出を行なう(S203)。指標値が算出されると、水分率算出部164が、検量線166を参照して、水分率に変換して出力する(S204)。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の赤外線水分測定装置10によれば、波長相互の影響を補正可能な補正係数165を用いて測定結果を補正しているため、スペクトルの半値幅が極狭の光でなくてもでも高精度の測定結果を得ることができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、LEDユニット110を光源として用いていたが、従来同様にハロゲンランプ410を光源として用いる場合にも本発明を適用することができる。また、LD(Laser Diode)等を光源として用いることもできる。図5は、ハロゲンランプ410を用いた赤外線水分測定装置に本発明を適用した場合の構成を示すブロック図である。従来と同じブロックについては同じ符号を付して、説明を簡略化している。
【0050】
ハロゲンランプ410を用いた赤外線水分測定装置20では、ハロゲンランプ410からの光は、投光レンズ411を介して、フィルタホイール420に装着されたバンドパスフィルタ422に導かれる。
【0051】
このとき、フィルタホイール420に装着するバンドパスフィルタ422は、出力する光のスペクトラムの半値幅が極狭である必要はない。このため、光量の減衰を小さくすることができ、高坪量の紙まで測定可能とする場合であっても、ハロゲンランプ410の大型化を回避することができる。
【0052】
バンドパスフィルタ422を透過した光は、上部反射鏡431、下部反射鏡432に挟まれた測定対象の紙700に当てられる。下部反射鏡432の出射孔から抜け出た光は受光素子440で検出され、検出信号がアンプ441で増幅される。ハロゲンランプ410は、電気的変調に適さないため、周波数弁別器は用いていない。
【0053】
増幅された検出信号は、演算処理部160に入力され、測定値補正部162が、補正係数165を参照して補正する。なお、フィルタ部161を設けて、複数回の測定結果を平均化するようにしてもよい。次いで、指標値算出部163において、各波長に対応した検出信号の強度比に基づいて指標値が算出される。そして、水分率算出部164が、検量線166を参照して、指標値を水分率に変換して出力する。補正係数165、検量線166は、上述の手順によって決定されたものである。
【0054】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されない。例えば、参照光の波長を増やして、異なる4波長以上の光を被測定物質である紙700に照射するようにしてもよい。あるいは、セルロースに吸収される波長を除く2波長の光を被測定物質に照射して測定し、セルロース量については別の測定装置、例えば、坪量計等で測定した値を用いるようにしてもよい。この場合、波長の数に合わせて、補正係数の次数を設定する。例えば、4つの波長であれば、補正係数を4×4の正方行列とし、5つの波長であれば、補正係数を5×5の正方行列とすればよい。また、2つの波長であれば、補正係数を2×2の正方行列とすればよい。
【0055】
また、補正係数の次数と波長の数は必ずしも同一である必要は無い。実施形態の説明では、3つの光源に全てLEDを用いていて相互の波長域に重なりがあるため3×3の正方行列で補正をする事例を示したが、波長数nに対してm×m(mはnよりも小さい整数)の正方行列で補正を行うことも可能である。m×mの正方行列による補正後のn個の波長の光の相対強度に基づいて指標値の算出を行う。この場合、n×nの正方行列による補正係数を用いた場合と比較して改善効果の度合は劣ると考えられるが、補正による改善効果自体は得られることが見込まれる。
【0056】
また、波長数nに対して、n×nの正方行列から、補正が必要ない行あるいは列を省いた非正方行列を用いることも可能である。
たとえば、3つの光源のうちの1つにレーザダイオード(LD)を採用できるような場合である。LED同志は波長領域が重なり合うため、お互いの波長による影響を補正する必要がある。また、LEDの波長がLDの波長まで広がっている場合には、LEDの波長の検出光の強度に対してLDの波長による影響を補正する必要がある。一方、一般的にLDの半値幅は極狭のため、他のLEDの波長による影響を受けない。したがって、LEDの波長の検出光の強度に対しては補正が必要だが、LDの波長の検出光の強度に対しては補正が不要となるケースがある。このような場合に、LDの波長の検出光の強度に対する補正に対応する行あるいは列をなくした非正方行列を補正係数として用いることが可能である。なお、LDの波長を水分、セルロースともに吸収されない波長λaに設定すれば出力がそのまま被測定物質の透過率に相当することになり装置や測定値の管理が容易になるという利点もある。
【0057】
また、相互補正を行なうことで、照射する光の波長を、厳密に管理する必要がなくなるため、通信等に用いられる安価な波長帯のLEDを流用したり、長波長で透過率に優れた波長帯のLEDを選択することも考えられる。また、透過型の赤外線水分測定装置について説明したが、反射型の赤外線水分測定装置や、マイクロ波を利用した水分測定装置に本発明を適用することも可能である。
【0058】
さらに、測定結果から得られる指標値の算出方法や、検量線により変換される特性を変更することで、紙の表面性、透過散乱性、坪量、塗工量、灰分含有率等の特性を測定する装置に本発明を適用することも可能である。
【0059】
本出願は、2012年3月28日に提出された日本国特許出願(特願2012−073652)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0060】
10…赤外線水分測定装置、20…赤外線水分測定装置、40…赤外線水分測定装置、110…LEDユニット、120…LED駆動部、121…変調部、130…チューブリフレクタ、131…拡散シート、141…上部反射鏡、142…下部反射鏡、143…ガラスウィンドウ、150…受光素子、151…アンプ、152…周波数弁別器、160…演算処理部、161…フィルタ部、162…測定値補正部、163…指標値算出部、164…水分率算出部、165…補正係数、166…検量線、410…ハロゲンランプ、411…投光レンズ、420…フィルタホイール、421…バンドパスフィルタ、421…各バンドパスフィルタ、431…上部反射鏡、432…下部反射鏡、440…受光素子、441…アンプ、450…演算処理部、451…指標値算出部、452…水分率算出部、453…検量線
図1
図2
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図4
図5
図6
図7