特許第6075373号(P6075373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075373
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】導電性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/52 20140101AFI20170130BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20170130BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   C09D11/52
   H05K3/12 610B
   H05K1/09 D
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-511207(P2014-511207)
(86)(22)【出願日】2013年4月15日
(86)【国際出願番号】JP2013061166
(87)【国際公開番号】WO2013157514
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2015年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-92670(P2012-92670)
(32)【優先日】2012年4月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】川村 謙輔
(72)【発明者】
【氏名】馬越 英明
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−219042(JP,A)
【文献】 特開2008−280592(JP,A)
【文献】 特開2010−065267(JP,A)
【文献】 特開2004−179125(JP,A)
【文献】 特開2012−185944(JP,A)
【文献】 特開2009−270146(JP,A)
【文献】 特開2005−298921(JP,A)
【文献】 特開2006−118010(JP,A)
【文献】 特開2013−112807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00、
H05K 1/09、 1/16、 3/10− 3/26、 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基含有化合物を含む保護層を有し、平均粒径が1nm以上100nm以下の銀微粒子(A)と、アミノ基及びビニル基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)と、有機溶剤(C)とを含み、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量が、組成物の全量に対して、4〜8重量%であり、ポリマーのガラス転移温度が100℃以下であるポリマーフィルム用導電性インク組成物。
【請求項2】
銀微粒子(A)の保護層が、アミノ基含有化合物として、沸点100℃未満のアミノ基含有化合物(a−1)、及び沸点100℃以上のアミノ基含有化合物(a−2)を含み、(a−1)と(a−2)との重量比((a−1):(a−2))が、15:85〜70:30の範囲である請求項1に記載の導電性インク組成物。
【請求項3】
有機溶剤(C)が、溶解性パラメーター(SP値)が12(cal/cm1/2以下の有機溶剤である請求項1又は2記載の導電性インク組成物。
【請求項4】
ポリマーフィルムが、セラミック又は金属で表面がコーティングされたポリマーフィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項5】
請求項1〜の何れかに記載の導電性インク組成物を用いて形成した導電性回路パターン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性インク組成物に関し、詳しくは、例えば、ガラス転移温度100℃以下の樹脂からなるポリマーフィルムなどの耐熱性の低いフィルム基板上に導電性回路パターンを形成する際に、例えば120℃以下の低い温度での熱処理のみで、高い電気伝導性、及び基板との優れた密着性が得られ、回路パターンの大量生産に適した導電性インク組成物に関するものである。また、本発明は、当該導電性インク組成物を基板上に塗布し、熱処理させることによって得られる導電性回路パターンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業に代わる次世代の産業基盤として、柔軟性が特に高い樹脂基板に印刷によって回路形成(パターニング)を行う技術である「プリンテッドエレクトロニクス」が注目されている。この技術は、薄膜トランジスタ、抵抗、インダクター、コンデンサなどの基本的な回路部品から、電池、ディスプレイ、センサー、Radio Frequency Identification(RFID)タグ、太陽電池などに至るまで応用が可能であり、これにより、エレクトロニクス製品などの製造工程が劇的に簡便、かつ時間短縮化され、省資源、省エネルギーも同時に達成できることが期待されている。
【0003】
エレクトロニクス製品の中でも携帯情報端末の普及が著しいが、高機能化に伴い機器のサイズの巨大化により重量が増加する傾向にある。このため、市場からは携帯情報端末の軽量化が強く要望されている。また、軽量化及び意匠性の要求から携帯情報端末の厚みが薄くなったことにより、ディスプレイやセンサーなどに用いられるガラスが落下時に破損するなど、耐久性の向上が課題となっている。これらを解決する手段として、携帯情報端末を構成する部品の見直しなどにより、耐衝撃性の高い材料の採用が進んでいるが、根本的な解決には至っていない。そこで、携帯情報端末を構成する材料のうち、従来のプリント基板やガラス基板を、柔軟性に優れ、軽量なポリマーフィルムなどへ転換することが進められている。
【0004】
携帯情報端末にポリマーフィルム基板を用いる為には、ポリマーフィルム表面上に電気配線を形成することが必要である。ポリマーフィルム表面上に形成される電気配線パターンは、高導電性、基板への密着性、及び柔軟性に加え、精細な回路パターンを形成できることが要求される。
【0005】
一般に、ポリマーフィルム基板上に導電性回路パターンを形成する方法として、電気めっき法、無電解めっき法、スパッタリングなどの蒸着法、及び導電性ペーストの塗布法といった方法が挙げられる。しかしながら、電気めっき法、無電解めっき法は溶媒を大量に使用するため、廃液の処理コストが嵩む。また、スパッタリングなどの蒸着法は、大掛かりな装置が必要となるだけでなく、基板全面に蒸着した後、エッチングにより不要部分を除去しなければならないことから、高コストになる。
【0006】
その他の回路パターン形成方法として、焼成タイプ、又は熱硬化タイプの導電性インキやペーストを用いる方法がある。焼成タイプを用いる方法は、溶剤及びバインダー成分を一般に200℃以上の高温で加熱除去して、導電性微粒子を焼結又は互いに接触させることにより導電性を付与する方法である。熱硬化タイプを用いる方法は、導電性微粒子とバインダー成分である熱硬化性樹脂を含む組成物を硬化させ、硬化物中の導電性微粒子を互いに接触させることにより導電性を付与する方法である。
焼成タイプを用いる方法は、硬化物中に導電性粒子成分しか存在しないため低い比抵抗を達成できるが、硬化物と基板との界面に化学結合が存在せず、基板との密着性が低くなる傾向にある。とくに、表面が酸化インジウムスズ(ITO)などの表面張力が低い材料で構成された基板上に回路パターンを形成する場合、顕著に密着性が低くなる。
【0007】
一方、基板の材質に関しては、以前から用いられているプリント基板を軽量化する方法として、ビルドアップ工法を用いた多層基板が用いられている。しかし、これら方法は煩雑な工程が必要である。また、フレキシブルプリント基板は軽量かつ柔軟性に優れ、耐熱性にも優れているが、基板材料として、ポリイミドを用いているため、高コストとなる。より安価なフィルム材料として、ポリアミドやポリエステルなどを例示することができるが、熱可塑性樹脂であるため耐熱性が低く、従来の高温処理を要する導電性ペーストを用いることが困難である。
【0008】
また、ディスプレイなどの透明性や意匠性が要求される部分については、ガラス表面上に直接導電性回路を形成させる場合がある。しかし、ガラスは耐熱性に優れるが、重量、柔軟性、耐衝撃性の点で満足できるものではない。透明性や意匠性が要求される部分は、ガラスに代えて、ポリメチルメタクリレートのような透明プラスチック材料を用いる需要があると見込まれるが、前述の通り、透明プラスチック材料は、耐熱性の点からガラスに替わり得る材料ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−193594号
【特許文献2】特開2009−062523号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、比較的耐熱性が低い熱可塑性樹脂からなるポリマーフィルム基板上にも導電性回路パターンを形成することができ、かつ基板との密着性に優れ、高い導電性を有する導電性回路パターンを形成できる導電性インク組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、比較的耐熱性が低い熱可塑性樹脂からなるポリマーフィルム基板上にも形成されることができ、基板との密着性に優れ、高い導電性を有する導電性回路パターンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者は研究を重ね、導電性インク組成物が、アミノ基含有化合物を含む保護層を有する平均粒径が1nm以上100nm以下の銀微粒子(A)と、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)と、有機溶剤(C)とを含み、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量が、組成物の全量に対して約4〜8重量%であるか、又は銀微粒子(A)100重量部に対して約5〜13重量部であることにより、比較的低温の熱処理により導電性回路パターンを形成することができ、形成された回路パターンは、基板との密着性に優れ、高い導電性を有するものとなることを見出した。
【0012】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の導電性インク組成物、及び導電性回路パターンを提供する。
項1. アミノ基含有化合物を含む保護層を有し、平均粒径が1nm以上100nm以下の銀微粒子(A)と、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)と、有機溶剤(C)とを含み、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量が、組成物の全量に対して、4〜8重量%である導電性インク組成物。
項2. 銀微粒子(A)の保護層が、アミノ基含有化合物として、沸点100℃未満のアミノ基含有化合物(a−1)、及び沸点100℃以上のアミノ基含有化合物(a−2)を含み、(a−1)と(a−2)との重量比((a−1):(a−2))が、15:85〜70:30の範囲である項1に記載の導電性インク組成物。
項3. 官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の官能基が、アミノ基、イソシアネート基、シアノ基、ビニル基、エポキシ基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基である項1又は2記載の導電性インク組成物。
項4. 有機溶剤(C)が、溶解性パラメーター(SP値)が12(cal/cm1/2以下の有機溶剤である項1〜3の何れかに記載の導電性インク組成物。
項5. アミノ基含有化合物を含む保護層を有し、平均粒径が1nm以上100nm以下の銀微粒子(A)と、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)と、有機溶剤(C)とを含み、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量が、銀微粒子(A)の100重量部に対して、5〜13重量部である導電性インク組成物。
項6. 導電性インク組成物が、ポリマーのガラス転移温度が100℃以下であるポリマーフィルム用である項1〜5の何れかに記載の導電性インク組成物。
項7. ポリマーフィルムが、セラミック又は金属で表面がコーティングされたポリマーフィルムである項6に記載の導電性インク組成物。
項8. 項1〜5の何れかに記載の導電性インク組成物を用いて形成した導電性回路パターン。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性インク組成物を用いれば、例えば120℃以下の比較的低い温度での熱処理で基板上に回路パターンを形成できる。従って、例えば、ガラス転移温度が100℃以下であるような比較的耐熱性の低い熱可塑性ポリマーフィルム上にも、熱による収縮などの基板の変形を生じることなく、回路パターンを形成できる。
また、本発明の導電性インク組成物を用いて形成された回路パターンは基板との密着性に優れる。例えば、表面が酸化インジウムスズ(ITO)などの表面張力が低いセラミックス材料で構成された基板の当該表面上に回路パターンを形成する場合、一般に、回路パターンと基板との密着性が不十分になり易いが、本発明の導電性インク組成物を用いれば、このような表面を有する基板上にも密着性良好な回路パターンを形成できる。
また、本発明の導電性インク組成物を用いて形成された回路パターンは、実用上十分に高い比抵抗を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
導電性インク組成物
本発明の導電性インク組成物は、アミノ基含有化合物を含む保護層を有する平均粒径が1nm以上100nm以下の銀微粒子(A)、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)、及び有機溶剤(C)を含有する組成物である。
本発明の組成物は、1態様において、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量が、組成物の全量に対して、約4〜8重量%であり得る。また、別の態様において、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量が、銀微粒子(A)100重量部に対して、約5〜13重量部であり得る。
【0015】
銀微粒子(A)
本発明の導電性インク組成物における銀微粒子(A)は、アミノ基を有する化合物を含む保護層を有する平均粒径が約1〜100nmの銀微粒子であれば、特に制限なく用いることができる。
銀微粒子(A)の平均粒径は、約1〜50nmが好ましく、約5〜30nmがより好ましい。上記範囲の銀微粒子(A)を用いれば、銀微粒子が凝集し難く、有機溶剤(C)中に均一に分散する。また、銀の重量当たりの体積に対して保護層の重量当たりの体積が過剰になることないため、良好な低温焼結性が得られる。
本発明において、平均粒径は動的光散乱法により測定した値であり、具体的には、スペクトリス社製ゼータサイザーナノにより測定した値である。
銀微粒子(A)は、上記範囲内の異なる平均粒径の銀微粒子を2種類以上組合せて用いることもできる。
【0016】
銀微粒子(A)の形状は、目的とする導電性が得られるものであれば、特に限定されないが、例えば、球状、棒状などを例示することができ、これら複数の形状のものを混合して用いることもできる。
【0017】
平均粒径が100nm以下の銀微粒子(A)は、表面エネルギーが大きいことから凝集が起こりやすく、導電性インク組成物中での凝集防止のために、銀微粒子(A)の表面に保護層を有している必要がある。保護層は、アミノ基を有する化合物を含んでいればよく、その他には、本発明の効果に影響を与えない範囲で、通常銀微粒子(A)の保護層に用いられる化合物を制限なく含むことができる。保護層は、本発明の組成物を基板上に塗布した後の乾燥などの熱処理によって、速やかに、銀微粒子及び本発明の組成物から脱離、及び除去できるものであることが好ましい。
【0018】
保護層中のアミノ基を有する化合物の含有量は、保護層の全量に対して、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらにより好ましい。保護層構成成分の全てがアミノ基を有する化合物であってもよい。
【0019】
銀微粒子(A)の保護層に含まれるアミノ基を有する化合物は、導電性インク組成物中での銀微粒子(A)の分散性を良好にし、基板上に塗布した後の乾燥などの熱処理により保護層を脱離、除去し易くするために、常圧における沸点100℃未満のアミノ基を有する化合物(a−1)、及び常圧における沸点100℃以上のアミノ基を有する化合物(a−2)の双方を含んでいることが好ましい。
保護層中における沸点100℃未満のアミノ基を有する化合物(a−1)と沸点100℃以上のアミノ基を有する化合物(a−2)との重量比(a−1:a−2)は、約15:85〜70:30が好ましく、約30:70〜60:40がより好ましい。上記範囲内であれば、導電性インク組成物中での銀微粒子(A)の分散性が十分に良好になり、かつ熱処理により保護層を容易に脱離、除去することができる。
【0020】
常圧における沸点100℃未満のアミノ基を有する化合物(a−1)としては、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、1,2-ジメチルプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、イソアミルアミン、tert-アミルアミン、3-ペンチルアミン、アリルアミンなどを例示することができる。中でも、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミンが好ましい。
【0021】
常圧における沸点100℃以上のアミノ基を有する化合物(a−2)としては、n-アミルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、2-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、n-アミノデカン、n-アミノウンデカン、n-ドデシルアミン、n-トリデシルアミン、2−トリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、n-オレイルアミン、N-エチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアミノプロパン、N,N-ジブチルアミノプロパン、N,N-ジイソブチル-1,3-ジアミノプロパン、N-ラウリルジアミノプロパンなどのアミン化合物を例示することができる。中でも、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ドデシルアミン、n-オレイルアミン、N,N-ジメチルアミノプロパンが好ましい。
【0022】
常圧における沸点100℃未満のアミノ基を有する化合物(a−1)の沸点と、常圧における沸点100℃以上のアミノ基を有する化合物(a−2)の沸点との差は、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。また、220℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。この範囲であれば、導電性インク組成物中での銀微粒子(A)の分散性が一層良好になり、かつ熱処理により保護層を一層容易に脱離、除去することができる。
【0023】
銀微粒子(A)の導電性インク組成物中での安定性を向上させるために、銀微粒子(A)の保護層は、アミノ基を有する化合物の他に、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基、シアノ基、若しくはイソシアネート基を有する化合物、ケトン、アミド、若しくはエステル構造を有する化合物、又はこれらの2以上を有する化合物などを含むことができる。
【0024】
カルボキシル基を有する化合物としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸などを挙げることができる。
アルデヒド基を有する化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、ペリルアルデヒドなどを挙げることができる。
シアノ基を有する化合物としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アクリロニトリル、アジポニトリル、フタロニトリル、プロパンニトリル、マロノニトリル、マンデロニトリル、アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、アゾビスイソブチロニトリルなどを挙げることができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、メチルイソシアネート、エチルイソシアネートなどのモノイソシアネート類、およびトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネート類などを挙げることができる。
ケトン構造を有する化合物としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどを挙げることができる。
アミド構造を有する化合物としては、アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、カルバミドなどを挙げることができる。
エステル構造を有する化合物としては、酢酸メチル、酢酸エチル、サリチル酸メチル、ギ酸エチル、酪酸エチル、カプロン酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、吉草酸ペンチル、酪酸ペンチル、酢酸オクチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
【0025】
これらの化合物の含有量は、合計で、アミノ基を有する化合物100重量部に対して、約0.5〜25重量部が好ましく、約0.6〜23重量部がより好ましく、約0.7〜20重量部がさらにより好ましい。
【0026】
また、保護層は、本発明の効果に影響を与えない範囲で、保護目的の化合物以外に、保護層に通常用いることができる添加物等の化合物を含んでいてもよい。
【0027】
アミノ基含有化合物を含む保護層を有する銀微粒子(A)は、例えば、大研化学工業(株)、三ツ星ベルト(株)等の市販品を購入することができる。また、特開2009-270146、又は特開2010−265543に開示されている方法等に従い製造することもできる。
【0028】
導電性インク組成物中における、銀微粒子(A)の含有量は、特に制限されず、目的とする導電性が得られる範囲で、添加する他の成分に応じて適宜選択すればよい。中でも、回路パターンの導電性を良好にし、かつ導電性インク組成物中での銀微粒子の分散性を良好にして、生産性を良くするために、有機溶剤(C)100重量部に対して、約60〜900重量部が好ましく、約150〜600重量部がより好ましい。銀微粒子(A)の重量には、保護層の重量も含まれる。
【0029】
官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)
本発明の導電性インク組成物における官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)は、導電性インク組成物中の銀微粒子(A)と良好な結合を形成するために使用する。銀微粒子(A)の表面と官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の官能基との間に生ずる結合が、導電性インク組成物と基板との密着性において重要な役割を果たす。
【0030】
官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の官能基としては、カルボキシル基、フォスフィノ基、イソシアネート基、アミノ基、メルカプト基、シアノ基、チオシアネート基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基、グリシナト基、アルキルセレノ基、アルキルテルロ基、シラン基、アルコール基、アルデヒド基等を例示できる。中でも、イソシアネート基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、シアノ基、エポキシ基が好ましく、イソシアネート基、アミノ基、ビニル基、シアノ基、メルカプト基がより好ましく、イソシアネート基、アミノ基、シアノ基、メルカプト基がさらにより好ましい。
シロキサン骨格を有する化合物(B)は、1種の官能基を有してもよく、2種以上の官能基を有していてもよい。
【0031】
官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)としては、銀微粒子(A)と良好な結合を形成する点で、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、3-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアネート、3-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアネート、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-(メチルジメトキシシリル)プロパン-1-チオール、3-(トリエトキシシリル)プロピルアミン、3-(トリメトキシシリル)プロピルアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)は、市販品を用いてもよく、公知の合成方法により合成したものを用いてもよい。
【0032】
導電性インク組成物中の官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量は、添加する他の成分に応じて適宜選択すればよい。中でも、本発明の1態様において、導電性インク組成物の全量に対して、約4〜8重量部であればよく、約5〜7重量部が好ましい。上記範囲であれば、回路パターンと基剤との密着性が良好になり、かつ塗膜の乾燥不良による導電性低下が起こり難い。
【0033】
また、本発明の他の態様において、導電性インク組成物中の官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量は、銀微粒子(A)の100重量部に対して、5重量部以上が好ましく、6重量部以上がより好ましく、7重量部以上がさらにより好ましい。上記範囲であれば、回路パターンと基剤との密着性が良好になる。
また、導電性インク組成物中の官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量は、銀微粒子(A)の100重量部に対して、13重量部以下が好ましく、12重量部以下がより好ましく、11重量部以下がさらにより好ましい。上記範囲であれば、塗膜の乾燥不良による導電性低下が起こり難い。
銀微粒子(A)の100重量部に対する、導電性インク組成物中の官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量としては、約5〜13重量部、約5〜12重量部、約5〜11重量部、約6〜13重量部、約6〜12重量部、約6〜11重量部、約7〜13重量部、約7〜12重量部、約7〜11重量部が挙げられる。
【0034】
有機溶剤(C)
本発明の導電性インク組成物における有機溶媒(C)は、導電性インク組成物に含まれる各成分を均一に分散させるものであれば、特に制限無く用いることができる。有機溶媒(C)としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールなどのアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、スチレンモノマー、ミネラルスピリットなどの炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸磯ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;テルピネオール;ピネン;リモネン;メンタン;シメン;イソホロンなどを例示することができる。
有機溶媒(C)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0035】
中でも、銀微粒子を均一に分散させ易い点で、溶解性パラメーター(SP値)の値が12(cal/cm1/2以下の有機溶媒が好適に用いられ、10(cal/cm1/2以下のものがより好ましい。具体的には、ヘキサン(SP値:7.3)、シクロヘキサン(同8.2)、シクロヘキサノン(同9.9)、オクタン(同7.5)、トルエン(同8.8)、キシレン(同8.8)、メチルエチルケトン(同9.3)、メチルイソブチルケトン(同8.4)、エチレングコールモノエチルエーテル(同10.5)、シクロヘキサノール(同11.4)、テルピネオール(同11.1)、オクタノール(同10.3)、n−ブチルアルコール(同11.4)などを好適に用いることができる。
また、2種以上の有機溶剤を混合して、溶解性パラメーター(SP値)を12(cal/cm1/2以下に調製した混合溶媒も好適に用いることができる。例えば、有機溶剤の一方は溶解性パラメーター(SP値)が12(cal/cm1/2以上のものを用い、他方は溶解性パラメーター(SP値)が12(cal/cm1/2以下のものを用いて、溶解性パラメーター(SP値)が12(cal/cm1/2以下となる混合比率で調製した混合溶媒を用いることができる。
溶媒の溶解性パラメーター(SP値)、及び混合溶媒の溶解性パラメーター(SP値)は、Chem. Rev., 75(6), pp 731-753 (1975) に記載の方法によって求めることができる。
【0036】
導電性インク組成物中の有機溶剤(C)の含有量は、添加する他の成分に応じて適宜選択すればよい。この際、有機溶剤(C)の含有量が極端に不足すると各成分が均一に分散せず、また導電性回路パターン形成時に塗膜が適切に形成されないため、導電性が低下する。また、有機溶剤(C)の含有量が極端に過剰であると、銀微粒子の分散挙動が変化し凝集する恐れがあり、また塗膜が薄くなるため、導電性回路パターン形成時に十分な膜厚が得られず、導電性が低下する。従って、有機溶剤(C)の含有量は、導電性インク組成物中の各成分が良好に分散し、かつ導電性回路パターン形成時に適切な厚さの塗膜が形成されるような範囲とすることが好ましく、具体的には、導電性インク組成物全体重量に対して、例えば約2〜58重量%、好ましくは約4〜36重量%の範囲であればよい。有機溶媒の含有量は、導電性回路パターン形成方法に応じて適宜選択することができる。
【0037】
その他の成分
本発明の導電性インク組成物には、必要に応じて、本発明の効果に影響を与えない範囲で、粘度調製剤、導電助剤、チョーキング防止剤、酸化防止剤、pH調製剤、乾燥防止剤、密着性付与剤、防腐剤、消泡剤、レベリング剤などの、導電性インク組成物に添加される添加物を添加してもよい。
上記添加物のうち、粘度調製剤を用いて粘度を調整することにより多様な印刷方法に適用できる組成物を得ることができる。また、導電助剤を添加することでさらに高い導電性を得ることができる。
【0038】
粘度調製剤としては、高粘度化が必要な場合には、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂など各種ポリマー、カルボキシメチルセルロースなどの多糖類、パルミチン酸デキストリンなどの糖脂肪酸エステル、オクチル酸亜鉛などの金属石鹸、スメクタイトなどの膨潤性粘土鉱物、スパイクラベンダーオイル、石油を蒸留した鉱物性のペトロールなどを用いることができる。
また、低粘度化が必要な場合には、レベリング剤、表面張力調製剤、レジューサーなどを用いることができる。なお、粘度調製剤は、銀微粒子(A)の焼結反応を阻害するため、乾燥時に揮発できることが望ましい。また、粘度調製剤として高分子量のものを使用する場合、又は粘度調整剤を多量に使用する場合は、乾燥温度100℃程度では十分な揮発による除去が見込めないため、使用する粘度調製剤の分子量に応じて、添加量を極力少量に抑える必要がある。そのため、導電性インク組成物中における粘度調製剤の添加量は、有機溶媒(C)100重量部に対して、7重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましい。
【0039】
導電性インク組成物の調製方法
本発明の導電性インク組成物は、各成分を混合することにより調製できる。各成分の混合順序は特に限定されないが、作業性が良好である点で、有機溶媒(C)に銀微粒子(A)と官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)を添加し、通常用いられる攪拌方法によって混合することが好ましい。
添加剤を添加する場合は、有機溶媒(C)に、銀微粒子(A)、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)、及び添加剤を添加してもよく、有機溶媒(C)、銀微粒子(A)、及び官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)を混合した後に、それに添加剤を混合してもよい。
導電性インク組成物に粘度調製剤を添加する場合は、予め有機溶媒(C)に粘度調製剤を添加・攪拌した後、銀微粒子(A)と官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)を添加し、攪拌、混合することにより、各成分が均一に分散された導電性インク組成物となる。
【0040】
導電性インク組成物の各成分の混合方法は、各成分が導電性インク組成物中で均一に分散、混合できる方法であれば、特に限定されない。具体的には、メカニカルスターラー、マグネティックスターラー、超音波分散機、遊星ミル、ボールミル、三本ロールなどを用いる方法を例示することができる。得られる導電性インク組成物の均一性が良好になり、作業が簡便である点で、遊星ミルを用いることが好ましい。なお、混合条件は通常用いられる条件の中から適宜選択すればよい。
【0041】
導電性インク組成物の用途
本発明の導電性インク組成物は粘度を調整することで、特別な基板や技術を用いることなく、一般的な汎用機を用いて任意の導電性回路パターンを基板上に形成することができるものとなる。
【0042】
導電性回路パターンの形成方法に用いる基板としては、例えば、ガラス転移温度(Tg)100℃以下の熱可塑性樹脂からなるポリマーフィルムのような、耐熱性が低い基板材料を用いることができる。具体的には、ナイロン6,6(Tg=49℃)などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(同70℃)などのポリエステル、ポリプロピレン(同−20〜0℃)、ポリ塩化ビニル(同80℃)、ポリスチレン(同95℃)などのポリマーフィルムなどを例示することができる。さらに、上記ポリマーフィルムの表面に酸化インジウムスズ(ITO)のようなセラミック、又は金属などでコーティングされたポリマーフィルムにも好適に用いることができる。
【0043】
導電性回路パターンの形成方法としては、吐出法、印刷法などを例示することができる。吐出法としては、インクジェット法、ディスペンス法などを例示することができ、印刷法としては、スクリーン印刷のほか、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷などの輪転印刷を例示することができる。
【0044】
また、塗布後に熱処理による乾燥を行うことで、有機溶剤(C)や銀微粒子(A)表面の保護層などの除去を行えばよい。熱処理の方法としては、塗布された導電性回路パターンを効率的に加熱できるものであればよく、大気下あるいは所望の雰囲気下において加熱された気体を循環あるいは対流させた乾燥炉中で加熱する方法、赤外線ヒーター等の電磁波を用いる加熱方法、熱した金属やセラミックスとポリマーフィルムとを接触させて加熱する方法などが挙げられる。乾燥温度は、用いる有機溶剤(C)、及び基板の耐熱温度に応じて適時選択すればよいが、例えば、約60℃以上とすることができ、また、約200℃以下、中でも160℃以下、中でも120℃以下とすることができる。
熱処理による乾燥により、銀微粒子(A)の焼結反応を同時に行ってもよい。
【0045】
本発明の導電性インク組成物は基板に塗布し、乾燥した後、通常、銀微粒子(A)の焼結を促進するために熱処理(焼結反応)を行えばよい。これは、基板上に塗布した導電性インク組成物中の銀微粒子(A)以外の成分を揮発などで除去する一方、銀微粒子(A)同士を接触させて焼結に至らしめることにより、低い比抵抗を達成するためである。
焼結温度は、用いる銀微粒子(A)、及び銀微粒子(A)の保護層の組成に応じて、銀微粒子(A)以外の成分を揮発により除去でき、且つ基板として用いるポリマーフィルムの熱変形が起こらない温度であることが必要となる。例えば、約40℃以上とすることができ、また、約120℃以下、中でも約110℃以下、中でも約100℃以下とすることができる。焼結時間は約5〜120分間が好ましい。上記条件の熱処理で得られた導電性回路パターンは十分な導電性、及び高い基板密着性を有するものとなる。
なお、焼結反応においては、銀微粒子(A)以外の成分を全て除去することを必要とせず、基板との密着性を保持しつつ十分な導電性が得られる程度に銀微粒子(A)以外の成分を除去すればよい。
【0046】
本発明の導電性インク組成物を用いることで、熱処理によるフィルム収縮の影響を排除することができるため、本発明の導電性インク組成物は、印刷パターンの位置ずれの影響が大きい基板、例えば、フレキシブル回路基板、タッチパネル用基板、表示装置用基板などへの導電性回路パターン形成に好適に用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(1)導電性インク組成物の調製
実施例及び比較例の組成物の調製に用いた各成分を以下に示す。
【0049】
銀微粒子(A)
保護層を有する銀微粒子M1、M2を、特開2009−270146に記載の方法に基づいて作製した。
得られた銀微粒子の平均粒径、並びに保護層中に含まれる化合物、及びその含有量は以下の通りである。試薬は、和光純薬工業(株)製のものを用いた。平均粒径は、ゼータサイザーナノ(スペクトリス社)を用いて測定した。
【0050】
M1:
銀微粒子(平均粒径21nm)
オレイン酸(保護層の全量に対して1重量%)、n-ドデシルアミン;(保護層の全量に対して10重量%)n-オクチルアミン;(保護層の全量に対して74重量%)、n-ブチルアミン;(保護層の全量に対して15重量%)
M2:
銀微粒子(平均粒径21nm)
オレイン酸(保護層の全量に対して1重量%)、n-オクチルアミン;(保護層の全量に対して49重量%)、n-ブチルアミン;(保護層の全量に対して50重量%)
M3:
銀微粒子(平均粒径21nm)
オレイン酸(保護層の全量に対して30重量%)、カプリル酸(保護層の全量に対して70重量%)
【0051】
官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)
官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)として、下記のものを使用した。
B1:ビニルトリエトキシシラン(東京化成工業製)
B2:3-(トリエトキシシリル)プロピルアミン(東京化成工業製)
また、比較のため類似の構造を有する下記の化合物B3を使用した。
B3:チタンテトラノルマルブトキシド(マツモトファインケミカル製)
【0052】
有機溶剤(C)
有機溶剤(C)として、下記のものを使用した。
S1:シクロヘキサノール(SP値:11.4)
S2:トルエン(SP値:8.3)
S3:ヘキサン/2-プロパノール=3/2 混合溶媒(SP値:8.5)
【0053】
導電性インク組成物の調製方法
表1の組成に従い各成分を混合して、実施例1〜6及び比較例1〜5の導電性インク組成物を調製した。具体的には、銀微粒子(A)と溶媒(C)を同一容器に添加後、室温下、クラボウ製マゼルスターKK-250Sで1分間撹拌し、その後、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)を添加後、さらに1分間攪拌することによって調製した。表1において、銀微粒子(A)及び官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量は、有機溶剤(C)の含有量を100重量部とし、それに対する相対値(重量部)で表している。
【0054】

【表1】



















【0055】
なお、調製した各導電性インク組成物中で銀微粒子が均一に分散し、凝集していないことを確認するため、E型粘度計BROOKFIELD社製VISCOMETER DV-II+Proを用いて、25℃下、回転数0.5rpm−100rpm間を低回転から高回転(行き)、高回転から低回転(帰り)と変化させて、ずり応力値のヒステリシスカーブを描かせた。行きと帰りのずり応力値が各回転数で同じ値で、各導電性インク組成物中で銀微粒子(A)が凝集していないことを確認して、以下の各評価に用いた。
【0056】
(2)物性評価
(密着性評価)
基板として、50×50mmのサイズのITOスパッタリング処理PETフィルム(帝人化成製 HK188G-AB500H)を用いて行った。この基板表面に各導電性インク組成物をスピンコーターにて全面塗布し、100℃で30分の空気中乾燥を施して、乾燥後の塗布厚が1μmのサンプルを得た。このサンプルについて、JIS K5600により密着性を試験し、粘着テープを引き剥がした際に剥離せず残存したマス数を判定した。評価基準は以下の通りである。結果を表2に示す。
◎:25/25(剥離なし)
○:23/25以上、24/25以下
×:22/25以下
【0057】
(比抵抗評価)
四端子導電率計(三菱化学アナリテック製 ロレスターAX)を用いて、100×100mmの表面易接着処理PETフィルム(帝人化成製 HPE−50)上に導電性インク組成物をスピンコーターにて全面塗布し、100℃で30分の空気中乾燥を施して、乾燥後の塗布厚が1μmのサンプルを得た。サンプルの塗膜中央にて比抵抗を測定した。評価基準は以下の通りである。結果を表2に示す。
◎:5×10−6Ω・cm未満
○:5×10−6Ω・cm以上、1×10−5Ω・cm未満
×:1×10−5Ω・cm以上
【0058】
【表2】






【0059】
実施例1〜6では、PETフィルムとの密着性、及び比抵抗の両方について、良好な結果が得られた。
一方、比較例1は、保護層がアミノ基含有化合物を含まない銀微粒子を用いたため、良好な比抵抗が得られなかった。塗膜の外観が青み掛かっていることから、焼結反応が十分に進行していないためと考えられた。
比較例2は、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)に代えて他のカップリング剤を含むため、基板との密着性が無く、ほぼ全てのマスが剥離した。また、比較例3は、カップリング剤を全く含まないため、基板との密着性が無く、ほぼ全てのマスが剥離した。
また、比較例4は、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量が少なすぎるため(組成物の全量に対して3重量%、銀微粒子(A)の100重量部に対して4.4重量部)、基板との密着性が悪かった。
また、比較例5は、官能基を有するシロキサン骨格を有する化合物(B)の含有量が多すぎるため(組成物の全量に対して9重量%、銀微粒子(A)の100重量部に対して15.4重量部)、導電性に影響を与え、比抵抗が高くなりすぎた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の導電性インク組成物は、導電性の接着剤、電気回路配線、電磁波吸収体、光反射体などの各分野において有効に利用することができる。