(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1及び第2の表面を有する支持体と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層とからなる接着シートと、第1及び第2の表面を有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シートであって、
JIS B 0601に準拠して測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)が100nm以上であり、
JIS B 0601に準拠して測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)が100nm以上であり、
保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)と、支持体の第1の表面の算術平均粗さ(Ras1)との合計が120nm以上であり、
保護フィルムが、プラスチック材料からなるフィルムであり、
樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、
支持体が、樹脂組成物層と接合する面に非シリコーン離型剤からなる離型層を有する離型層付き支持体である、保護フィルム付き接着シート。
第1及び第2の表面を有する支持体と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層とからなる接着シートと、第1及び第2の表面を有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シートであって、
非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)が100nm以上であり、
非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)が100nm以上であり、
保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)と、支持体の第1の表面の算術平均粗さ(Ras1)との合計が120nm以上であり、
保護フィルムが、プラスチック材料からなるフィルムであり、
樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、
支持体が、樹脂組成物層と接合する面に非シリコーン離型剤からなる離型層を有する離型層付き支持体である、保護フィルム付き接着シート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0012】
[保護フィルム付き接着シート]
本発明の保護フィルム付き接着シートは、第1及び第2の表面を有する支持体と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層とからなる接着シートと、第1及び第2の表面を有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含み、保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Ra
p1)が100nm以上であり、保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Ra
p2)が100nm以上であることを特徴とする。
【0013】
図1に、本発明の保護フィルム付き接着シートの概略断面図を示す。本発明の保護フィルム付き接着シート1は、第1の表面2a及び第2の表面2bを有する支持体2と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層3からなる接着シート4と、第1の表面5a及び第2の表面5bを有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルム5とを含む。
【0014】
保護フィルム付き接着シートは、通常、ロール状に巻き取られることで、ロール状保護フィルム付き接着シートとして保管、運搬することができる。
図2に、ロール状保護フィルム付き接着シートの概略図を示す。
図2に示すように、一般的に、ロール状保護フィルム付き接着シート11は、心材9と、該心材にロール状に巻き取られた保護フィルム付き接着シート1とを含む。
【0015】
図3には、巻きずれのないロール状保護フィルム付き接着シートの概略断面図を示す。
図3は、心材の軸心を通過する面における概略断面図である。保護フィルム付き接着シートを心材にロール状に巻き取った時点においては、
図3に示すように、ロール状に巻き取られた保護フィルム付き接着シート1の端面(
図3中の左端面と右端面)は、心材9の軸心に垂直な方向に延在する。
【0016】
図4には、巻きずれの生じたロール状保護フィルム付き接着シートの概略断面図を示す。
図4は、
図3と同様に、心材の軸心を通過する面における概略断面図である。ロール状に巻き取られた保護フィルム付き接着シート1の端面(
図4中の左端面と右端面)は、内周部においては心材9の軸心に垂直な方向に延在するものの、外周部においては心材9の軸心に沿った一方の方向(
図4中の左方向)に変位する。本発明においては、斯かる変位を「巻きずれ」といい、巻きずれの程度は、ロール状に巻き取られた保護フィルム付き接着シート1の端面の変位量(
図4中の「d」)にて評価する。該変位量dが5mm以上となると、オートカッター装置内に保護フィルム付き接着シートを搬入し難くなり、歩留まりが低下してしまう。
【0017】
<保護フィルム>
保護フィルムは、樹脂組成物層表面を物理的ダメージから守り、またゴミ等の異物付着を防止するなどの目的で使用されてきた。本発明者らは、両面の表面粗度が特定の範囲にある保護フィルムを使用することによって、ロール状に巻き取った際に巻ずれの発生を抑制し得ると共に、オートカッター装置における保護フィルム剥離時に樹脂剥がれを生じない保護フィルム付き接着シートを実現し得ることを見出したものである。
【0018】
巻きずれの発生を抑制する観点から、樹脂組成物層と接合しない保護フィルムの表面、すなわち保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Ra
p1)は、100nm以上であり、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上、さらに好ましくは250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、又は450nm以上である。該算術平均粗さ(Ra
p1)の上限は特に限定されないが、通常、1500nm以下、1200nm以下などとし得る。
【0019】
オートカッター装置における保護フィルム剥離時の樹脂剥がれを防止する観点から、樹脂組成物層と接合する保護フィルムの表面、すなわち保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Ra
p2)は、100nm以上であり、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上である。無機充填材含有量の高い樹脂組成物層を使用する場合や、オートカッター装置における保護フィルム付き接着シートの搬送速度が高い場合においても樹脂剥がれを十分に防止する観点から、該算術平均粗さ(Ra
p2)は、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上、500nm以上又は550nm以上であることがさらに好ましい。該算術平均粗さ(Ra
p2)の上限は特に限定されないが、通常、1500nm以下、1200nm以下などとし得る。
【0020】
保護フィルムの第1及び第2の表面の算術平均粗さは、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。非接触型表面粗さ計の具体例としては、ビーコインスツルメンツ社製の「WYKO NT3300」が挙げられる。保護フィルムの第1及び第2の表面の算術平均粗さは、例えば、非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定することができる。したがって、一実施形態において、本発明の保護フィルム付き接着シートは、第1及び第2の表面を有する支持体と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層とからなる接着シートと、第1及び第2の表面を有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含み、非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Ra
p1)が100nm以上であり、非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Ra
p2)が100nm以上であることを特徴とする。Ra
p1及びRa
p2の好適な範囲は、上記のとおりである。
保護フィルムの第1及び第2の表面の算術平均粗さはまた、接触型表面粗さ計を用いてJIS B 0601(ISO 4287)に準拠して測定してもよい。したがって、一実施形態において、本発明の保護フィルム付き接着シートは、第1及び第2の表面を有する支持体と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層とからなる接着シートと、第1及び第2の表面を有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含み、JIS B 0601に準拠して測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Ra
p1)が100nm以上であり、JIS B 0601に準拠して測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Ra
p2)が100nm以上であることを特徴とする。Ra
p1及びRa
p2の好適な範囲は、上記のとおりである。
【0021】
保護フィルムとしては、プラスチック材料からなるフィルムが好適に用いられる。プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下、「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下、「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。好適な一実施形態において、保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される1種以上の材料を含む。
【0022】
保護フィルムの市販品としては、例えば、王子エフテックス(株)製の「二軸延伸ポリプロピレンフィルム」が挙げられる。
【0023】
保護フィルムとしては、樹脂組成物層と接合する表面、すなわち第2の表面に離型層を有する離型層付き保護フィルムを使用してもよい。離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック(株)製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」などが挙げられる。離型層付き保護フィルムを使用する場合、離型層表面の算術平均粗さが上記Ra
p2の条件を満たすことが好ましい。
【0024】
保護フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。保護フィルムの厚さの上限は、好ましくは75μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下、さらにより好ましくは30μm以下又は25μm以下である。好適な一実施形態において、保護フィルムの厚さは、10〜30μmの範囲である。なお、離型層付き保護フィルムを使用する場合、離型層付き保護フィルムの全体厚さが上記範囲にあることが好適である。
【0025】
<支持体>
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0026】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、保護フィルムについて説明したものと同様の材料を使用してよい。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。好適な一実施形態において、支持体は、ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
【0027】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0028】
巻きずれの発生を抑制する観点から、樹脂組成物層と接合しない支持体の表面、すなわち支持体の第1の表面の算術平均粗さ(Ra
s1)は、保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Ra
p1)と支持体の第1の表面の算術平均粗さ(Ra
s1)との合計が好ましくは120nm以上、より好ましくは170nm以上、さらに好ましくは220nm以上、さらにより好ましくは270nm以上、320nm以上、370nm以上、420nm以上、又は470nm以上となるように、選択することが好適である。Ra
p1とRa
s1との合計の上限は特に限定されないが、通常、1500nm以下、1200nm以下などとしてよい。
【0029】
樹脂組成物層と接合する支持体の表面、すなわち支持体の第2の表面の算術平均粗さ(Ra
s2)は特に限定されないが、オートカッター装置における保護フィルム剥離時の樹脂剥がれをより一層防止し得る観点から、保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Ra
p2)よりも低いことが好適である。Ra
p2の値にもよるが、該算術平均粗さ(Ra
s2)は、好ましくは(Ra
p2−50)nm以下、より好ましくは(Ra
p2−100)nm以下、さらに好ましくは(Ra
p2−150)nm以下、又は(Ra
p2−200)nm以下である。該算術平均粗さ(Ra
s2)の下限は特に限定されず、0.1nm以上、0.5nm以上などとしてよい。
【0030】
支持体の第1及び第2の表面の算術平均粗さは、保護フィルムについて説明したものと同じ方法にて測定し得る。なお、Ra
p1とRa
s1との合計を求める場合、Ra
p1とRa
s1とは、同じ方法にて測定した値を用いる。例えば、(1)JIS B 0601に準拠して測定したRa
p1とRa
s1とを用いて、Ra
p1とRa
s1との合計を求めてもよく、(2)非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定したRa
p1とRa
s1とを用いて、Ra
p1とRa
s1との合計を求めてもよい。Ra
p2とRa
s2に関しても同様であり、Ra
p2とRa
s2とは同じ方法にて測定した値を用いる。
【0031】
プラスチックフィルム支持体の市販品としては、例えば、東レ(株)製の「ルミラーR56」、「ルミラーR80」、「ルミラーT6AM」(PETフィルム)、帝人デュポンフィルム(株)製の「G2LA」(PETフィルム)、「テオネックスQ83」(PENフィルム)、宇部興産(株)製の「ユーピレックス−S」(ポリイミドフィルム)、(株)カネカ製の「アピカルAH」、「アピカルNPI」(ポリイミドフィルム)などが挙げられる。
【0032】
支持体は、樹脂組成物層と接合する表面、すなわち第2の表面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。また、支持体としては、第2の表面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層に使用する離型剤は、保護フィルムについて説明した離型剤と同様とし得る。離型層付き支持体を使用する場合、離型層表面の算術平均粗さが上記Ra
s2の条件を満たすことが好ましい。
【0033】
支持体の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、15μm以上又は20μm以上である。支持体の厚さの上限は、好ましくは75μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは40μm以下である。好適な一実施形態において、支持体の厚さは、10〜50μmの範囲である。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体の全体厚さが上記範囲にあることが好適である。
【0034】
<樹脂組成物層>
樹脂組成物層は、得られる絶縁層の熱膨張率を低く抑える観点から、無機充填材を含むことが好ましい。樹脂組成物層中の無機充填材の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、55質量%以上又は60質量%以上である。先述のとおり、本発明者らは、無機充填材含有量の高い樹脂組成物層を使用する場合、樹脂剥がれの問題が特に顕著となることを確認している。この点、両面の表面粗度が特定の範囲にある保護フィルムを使用する本発明によれば、無機充填材含有量の高い樹脂組成物層を使用してもオートカッター装置における保護フィルム剥離時に樹脂剥がれは生じ難い。よって、本発明の保護フィルム付き接着シートにおいては、樹脂剥がれの問題を生ずることなく、樹脂組成物層中の無機充填材の含有量を更に高めることができる。例えば、樹脂組成物層中の無機充填材の含有量は、62質量%以上、64質量%以上、66質量%以上、68質量%以上、70質量%以上、72質量%以上、又は74質量%以上にまで高めてよい。
【0035】
樹脂組成物層中の無機充填材の含有量の上限は、得られる絶縁層の機械強度の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0036】
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0037】
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられ、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SO−C2」、「SO−C1」が挙げられる。
【0038】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、その上に微細な配線を形成し得る絶縁層を得る観点から、3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下、0.7μm以下、又は0.5μm以下がさらに好ましい。一方、適度な粘度を有し取り扱い性の良好な樹脂ワニスを得る観点から、無機充填材の平均粒径は、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上、0.07μm以上、又は0.1μm以上がさらに好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA−500」、「LA−750」、「LA−950」等を使用することができる。
【0039】
その上に微細な配線を形成し得る絶縁層を得る観点から、分級により粗大な粒子が除去された無機充填材を使用することが好ましい。一実施形態において、分級により粒径10μm以上の粒子が除去された無機充填材を使用することが好ましく、分級により粒径5μm以上の粒子が除去された無機充填材を使用することがより好ましい。
【0040】
好適な一実施形態において、平均粒径が0.01μm〜3μmであり、かつ、分級により粒径10μm以上の粒子が除去された無機充填材を使用する。
【0041】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0042】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m
2以上が好ましく、0.1mg/m
2以上がより好ましく、0.2mg/m
2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m
2以下が好ましく、0.8mg/m
2以下がより好ましく、0.5mg/m
2以下が更に好ましい。
【0043】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA−320V」等を使用することができる。
【0044】
樹脂組成物層は、熱硬化性樹脂及び硬化剤をさらに含むことが好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましい。したがって一実施形態において、樹脂組成物層は、無機充填材、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む。
【0045】
−エポキシ樹脂−
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物層が得られる。また、得られる絶縁層の破断強度も向上する。
【0047】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032H」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス(株)製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、ダイセル化学工業(株)製の「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA7311」、「EXA7311−G3」、「EXA7311−G4」、「EXA7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製の「PG−100」、「CG−500」、三菱化学(株)製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1〜1:5の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)接着シートの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)接着シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する絶縁層を得ることができるなどの効果が得られる。上記i)〜iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3〜1:4.5の範囲がより好ましく、1:0.6〜1:4の範囲がさらに好ましい。
【0050】
樹脂組成物層中のエポキシ樹脂の含有量は、好ましくは3質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜35質量%、さらに好ましくは10質量%〜30質量%である。
【0051】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、さらにより好ましくは110〜1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0052】
−硬化剤−
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、及びシアネートエステル系硬化剤が挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着強度の観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着強度を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学(株)製の「SN−170」、「SN−180」、「SN−190」、「SN−475」、「SN−485」、「SN−495」、「SN−375」、「SN−395」、DIC(株)製の「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−3018」、「LA−1356」、「TD2090」等が挙げられる。
【0055】
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えばハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0056】
活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンタレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0057】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
【0058】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
【0059】
シアネートエステル系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。具体例としては、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート))、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の市販品としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0060】
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、得られる絶縁層の機械強度や耐水性を向上させる観点から、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2〜1:2の範囲が好ましく、1:0.3〜1:1.5の範囲がより好ましく、1:0.4〜1:1の範囲がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。
【0061】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物層は、上述の無機充填材、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有する。中でも、樹脂組成物は、無機充填材としてシリカを、エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との混合物(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂の質量比は好ましくは1:0.1〜1:5、より好ましくは1:0.3〜1:4.5、さらに好ましくは1:0.6〜1:4)を、硬化剤としてフェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上を、それぞれ含むことが好ましい。斯かる特定の成分を組み合わせて含む樹脂組成物層に関しても、無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤の好適な含有量は上述のとおりである。
【0062】
樹脂組成物層は、必要に応じて、熱可塑性樹脂、硬化促進剤、難燃剤及び有機充填材からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0063】
−熱可塑性樹脂−
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000〜70,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、20,000〜60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0065】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YL7553」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0066】
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製の電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0067】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0068】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0069】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0070】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0071】
樹脂組成物層中の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは0.1質量%〜20質量%、より好ましくは0.5質量%〜10質量%、さらに好ましくは1質量%〜5質量%である。
【0072】
−硬化促進剤−
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物層中の硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂と硬化剤の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、0.05質量%〜3質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0073】
−難燃剤−
難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物中の難燃剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%〜10質量%、より好ましくは1質量%〜9質量%である。
【0074】
−有機充填材−
有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられ、ゴム粒子が好ましい。
【0075】
ゴム粒子としては、ゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体である限り特に限定されず、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。ゴム粒子としては、具体的には、XER−91(日本合成ゴム(株)製)、スタフィロイドAC3355、AC3816、AC3816N、AC3832、AC4030、AC3364、IM101(以上、アイカ工業(株)製)パラロイドEXL2655、EXL2602(以上、呉羽化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0076】
有機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.005μm〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.2μm〜0.6μmの範囲である。有機充填材の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤に有機充填材を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR−1000」)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。樹脂組成物層中の有機充填材の含有量は、好ましくは1質量%〜10質量%、より好ましくは2質量%〜5質量%である。
【0077】
−他の成分−
樹脂組成物層は、必要に応じて、他の成分を含んでいてもよい。斯かる他の成分としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤及び硬化性樹脂等の樹脂添加剤等が挙げられる。樹脂組成物層は、ガラスクロスに樹脂組成物を含浸したプリプレグであっても良い。
【0078】
樹脂組成物層の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。樹脂組成物層の厚さの上限は特に限定されないが、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは200μm以下、150μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、又は20μm以下である。好適な一実施形態において、樹脂組成物層の厚さは1〜25μmである。
【0079】
本発明の保護フィルム付き接着シートは、例えば、下記工程(1)及び(2)を含む製造方法により製造することができる。
(1)支持体と接合するように樹脂組成物層を設けて接着シートを形成する工程
(2)上記(1)で得た接着シートの樹脂組成物層と接合するように保護フィルムを設ける工程
【0080】
工程(1)において、樹脂組成物層は、公知の方法で、支持体と接合するように設けることができる。例えば、溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどの塗布装置を用いて支持体表面に塗布し、樹脂ワニスを乾燥させて樹脂組成物層を設けることができる。
【0081】
樹脂ワニスの調製に用いる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。溶剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
樹脂ワニスの乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の乾燥方法により実施してよい。樹脂組成物層中に溶剤が多く残留すると、硬化後に膨れが発生する原因となるため、樹脂組成物層中の残留溶剤量が通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50〜150℃で3〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を設けることができる。
【0083】
工程(2)において、工程(1)で得た接着シートの樹脂組成物層と接合するように保護フィルムを設ける。
【0084】
工程(2)は、ロールやプレス圧着等で保護フィルムを接着シートの樹脂組成物層にラミネート処理することにより実施してよい。ラミネート処理の条件は特に限定されず、例えば、後述するプリント配線板の製造方法について説明する条件と同様としてよい。
【0085】
上記の保護フィルム付き接着シートの製造方法は、ロール状に巻き取られた支持体から支持体を連続的に搬送し、樹脂ワニスの塗布及び乾燥により支持体上に樹脂組成物層を形成した後、樹脂組成物層と接合するように保護フィルム(ロール状に巻き取られた保護フィルムを利用し得る)を設けることにより、連続的に実施することができる。
【0086】
得られた保護フィルム付き接着シートをロール状に巻き取ることで、ロール状保護フィルム付き接着シートを製造することができる。得られるロール状保護フィルム付き接着シートは、巻きずれの発生を有利に抑制することができる。ロール状保護フィルム付き接着シートの巻きずれに対する耐性は、高さ10cmの落下試験により評価することができる。ここで、高さ10cmの落下試験とは、ロール状保護フィルム付き接着シートを、心材の軸心が床面に垂直となり且つ心材の下端が床面から10cmの高さとなるように固定した後、床面に自然落下させる試験をいう。当該落下試験においては、心材の下端が床面に衝突する際に生じる衝撃によって、ロール状に巻き取られた保護フィルム付き接着シートには、心材の軸心に沿って下方向に力が加わることとなる。本発明のロール状保護フィルム付き接着シートは、高さ10cmの落下試験において、変位量dを5mm未満に抑えることが可能である。
【0087】
本発明の保護フィルム付き接着シートは、ロール状に巻き取った際に巻ずれの発生を抑制し得ると共に、オートカッター装置における保護フィルム剥離時に樹脂剥がれを生じ難い。したがって本発明の保護フィルム付き接着シートは、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用保護フィルム付き接着シート)に好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の層間絶縁層用保護フィルム付き接着シート)により好適に使用することができ、その上にメッキにより導体層が形成される層間絶縁層を形成するために(メッキにより導体層を形成するプリント配線板の層間絶縁層用保護フィルム付き接着シート)にさらに好適に使用することができる。
【0088】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明のロール状保護フィルム付き接着シートを用いて形成された絶縁層を含む。
【0089】
一実施形態において、本発明のプリント配線板は、オートカッター装置と真空ラミネート装置とを使用して、下記(I)、(II)及び(III)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)本発明のロール状保護フィルム付き接着シートを用いて、カットされた接着シートが内層基板の表面に設けられた積層体を形成する工程
(II)積層体を加熱及び加圧し、内層基板に接着シートをラミネート処理する工程
(III)接着シートの樹脂組成物層を熱硬化し、絶縁層を形成する工程
【0090】
−工程(I)−
工程(I)において、本発明のロール状保護フィルム付き接着シートを用いて、カットされた接着シートが内層基板の表面に設けられた積層体(以下、単に「積層体」ともいう。)を形成する。
【0091】
工程(I)は、オートカッター装置を用いて実施することができる(特開2014−24961号公報参照)。
【0092】
一実施形態において、工程(I)は、下記(a−1)乃至(a−4)を含む。
(a−1)本発明のロール状保護フィルム付き接着シートから保護フィルム付き接着シートを搬送しながら、保護フィルムを剥離すること
(a−2)樹脂組成物層が露出した接着シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように配置すること
(a−3)接着シートの一部を支持体側から加熱及び加圧することで部分的に接着シートを内層基板に接着すること
(a−4)接着シートを内層基板のサイズに応じてカッターでカットすることにより、カットされた接着シートを内層基板の表面に設けること
【0093】
以下、
図5を参照しつつ、上記(a−1)乃至(a−4)について説明する。
【0094】
まずロール状保護フィルム付き接着シート11を、オートカッター装置10にセットする。
図5においては、内層基板6の片面(
図5において上面)に接着シート4を設ける態様を示し、内層基板6の上方に1本のロール状保護フィルム付き接着シート11がセットされている。以下においては、斯かる
図5の記載に基づいて、内層基板6の片面に接着シート4を設ける態様について説明するが、内層基板6の下方にも1本のロール状保護フィルム付き接着シート11をさらにセットし、内層基板6の両面に接着シート4を設けてもよい。
【0095】
(a−1)において、本発明のロール状保護フィルム付き接着シート11から保護フィルム付き接着シート1を搬送しながら、保護フィルム5を剥離する。
【0096】
先述のとおり、ロール状保護フィルム付き接着シートに関しては、ロール状に巻き取ってからプリント配線板の製造に供するまでの間に、外部からの衝撃等によって巻きずれが生じる場合があった。巻きずれが生じたロール状保護フィルム付き接着シートを使用すると、オートカッター装置内に保護フィルム付き接着シートを搬入し難くなり、歩留まりが低下してしまう場合があった。これに対し、本発明のロール状保護フィルム付き接着シートは巻きずれが生じ難く、オートカッター装置内への保護フィルム付き接着シートの円滑な搬入を実現し得る。
【0097】
保護フィルム5は、例えば、保護フィルム付き接着シート1が保護フィルム取り出し具13を通過する際に接着シート4から剥離することができる。剥離された保護フィルム5は保護フィルム巻き取りロール12により回収することができる。なお、保護フィルム取り出し具13の形状、機構は、本発明の保護フィルム付き接着シートを用いる限り特に限定されない。
【0098】
保護フィルム5が剥離されて樹脂組成物層が露出した接着シート4は、内層基板6へと搬送される。
【0099】
(a−1)における保護フィルム付き接着シート11(あるいは接着シート4)の搬送速度は、特に限定されないが、プリント配線板の生産速度の向上に寄与する観点から、1m/分以上であることが好ましい。
【0100】
本発明の保護フィルム付き接着シートは、搬送速度が高い条件下でも保護フィルム剥離時の樹脂剥がれを生じ難い。よって、上記搬送速度は2m/分以上、3m/分以上、4m/分以上、又は5m/分以上とすることもできる。このように本発明の保護フィルム付き接着シートを使用することにより、プリント配線板の生産速度に著しく寄与することができる。
【0101】
(a−2)において、樹脂組成物層が露出した接着シート4を、樹脂組成物層が内層基板6と接合するように配置する。例えば、コンベア装置15により搬送される内層基板6に対して、誘導ロール16及び17により接着シート4を位置合わせすることができる。
【0102】
なお、本発明において、「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。
【0103】
(a−3)において、接着シート4の一部を支持体側から加熱及び加圧することで部分的に接着シート4を内層基板6に接着する。接着は、接触式ヒーター装置18等を使用して実施することができる。
【0104】
樹脂組成物層の組成にもよるが、通常、60℃〜130℃(好ましくは60℃〜120℃)の温度にて、1秒間〜20秒間(好ましくは5秒間〜15秒間)程度、部分的に接着シート4を内層基板6に圧着する。圧着時の圧力は、好ましくは0.02kgf/cm
2〜0.25kgf/cm
2(0.196N/m
2〜2.45N/m
2)の範囲、より好ましくは0.05kgf/cm
2〜0.20kgf/cm
2(0.49N/m
2〜1.96N/m
2)の範囲である。
【0105】
(a−4)において、接着シート4を内層基板6のサイズに応じてカッター14でカットすることにより、カットされた接着シートを内層基板の表面に設ける。
【0106】
上記の(a−1)乃至(a−4)は全て、オートカッター装置内で連続的に実施することができる。市販されているオートカッター装置としては、例えば、伯東(株)製ドライフィルムラミネーターMachシリーズ、新栄機工(株)製オートカッターFAC500、SAC−500/600などが挙げられる。
【0107】
工程(I)にて形成される積層体は、カットされた接着シートが内層基板の表面に設けられた積層体であり、これは、カットされた接着シートが内層基板の表面に仮付けされた積層体である。
【0108】
−工程(II)−
工程(II)は、工程(I)で得られた積層体を加熱及び加圧し、内層基板に接着シートをラミネート処理する工程である。かかる工程(II)において、接着シートの全体を内層基板の表面にラミネート処理する。
【0109】
加圧は、例えば、支持体側から接着シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。接着シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を接着シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に接着シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0110】
工程(II)は、真空ラミネート装置を用いて真空ラミネート法により実施することができる。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。工程(II)は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
【0111】
ラミネート処理の後、支持体を剥離して樹脂組成物層を露出させる。あるいは、支持体の剥離は、工程(III)の後に実施してもよい。
【0112】
−工程(III)−
工程(III)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
【0113】
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0114】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は120〜240℃の範囲(好ましくは150〜210℃の範囲、より好ましくは170〜190℃の範囲)、硬化時間は5〜90分間の範囲(好ましくは10〜75分間、より好ましくは15〜60分間)とすることができる。
【0115】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5〜150分間、より好ましくは15〜120分間)予備加熱してもよい。
【0116】
本発明のプリント配線板の製造方法は、絶縁層に穴あけする穴あけ工程、該絶縁層を粗化処理する粗化工程、粗化された絶縁層表面にメッキにより導体層を形成するメッキ工程、及び導体層に回路を形成する回路形成工程をさらに含んでもよい。これらの工程は、当業者に公知である、プリント配線板の製造に用いられている各種方法に従って行うことができる。
【0117】
プリント配線板を製造するに際しては、(IV)絶縁層に穴あけする工程、(V)絶縁層を粗化処理する工程、(VI)絶縁層表面に導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(IV)乃至(VI)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(III)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(III)と工程(IV)との間、工程(IV)と工程(V)の間、又は工程(V)と工程(VI)との間に実施してよい。
【0118】
[半導体装置]
本発明のプリント配線板を用いて、半導体装置を製造することができる。
【0119】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、「部」は質量部を意味する。
【0121】
〔測定方法・評価方法〕
まず各種測定方法・評価方法について説明する。
【0122】
<算術平均粗さの測定>
支持体及び保護フィルムの表面の算術平均粗さは、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値により求めた。各サンプルについて、無作為に選んだ10点の平均値を求めることにより測定した。表面の算術平均粗さはまた、JIS B 0601に準拠して測定した。
【0123】
<ロール状保護フィルム付き接着シートの巻ずれの評価>
実施例及び比較例で製造したロール状保護フィルム付き接着シートについて、高さ10cmの落下試験により巻きずれを評価した。高さ10cmの落下試験は、ロール状保護フィルム付き接着シートを、心材の軸心が床面に垂直となり且つ心材の下端が床面から10cmの高さとなるように固定した後、床面に自然落下させることにより実施した。そして、落下試験後のロール状保護フィルム付き接着シートについて変位量dを測定し(
図4参照)、下記評価基準に従って、巻きずれの評価を行った。
評価基準:
○:変位量dが5mm未満
×:変位量dが5mm以上
【0124】
<オートカッター装置における保護フィルム剥離時の樹脂剥がれの評価>
実施例及び比較例で製造したロール状保護フィルム付き接着シートを、オートカッター装置(新栄機工(株)製「SAC−500」)にセットした。本評価においては、回路基板の上下に1本ずつロール状保護フィルム付き接着シートをセットした。
【0125】
ロール状保護フィルム付き接着シートから、搬送速度5m/分にて保護フィルム付き接着シートを搬送しながら、保護フィルムを剥離した。樹脂組成物層の露出した接着シートを、その樹脂組成物層が回路基板(510×340mmサイズ)と接合するように、回路基板の両面に、連続して30枚(片面当たり)、仮付けを行った(仮付け時の回路基板の搬送速度2m/分、仮付け温度100℃、仮付け時間10秒間、仮付け圧力0.15kgf/cm
2)。これにより、回路基板の両面に接着シートが仮付けされた積層体30枚を得た。
【0126】
仮付け時の状態を観察し、下記評価基準に従って、保護フィルム剥離時の樹脂剥がれの評価を行った。
評価基準:
○:異常なし(樹脂剥がれなし)
×:樹脂剥がれあり
【0127】
<実施例1>
(1)樹脂ワニスの調製
ビスフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量約165、新日鉄住金化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)6部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量約185、三菱化学(株)製「YX4000HK」)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量約290、日本化薬(株)製「NC3000H」)10部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のメチルエチルケトン(MEK)溶液)10部を、ソルベントナフサ30部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(水酸基当量146、DIC(株)製「LA−1356」、固形分60%のMEK溶液)8部、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)10部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分2質量%のMEK溶液)4部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド、平均粒径1μm)2部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO−C2」、平均粒径0.5μm、分級により5μm以上の粒子を除去、単位表面積当たりのカーボン量0.38mg/m
2)130部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。樹脂ワニス中の無機充填材の含有量(不揮発成分換算)は、75.4質量%であった。
【0128】
(2)保護フィルム付き接着シートの作製
支持体として、非シリコーン系離型剤(リンテック(株)製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ(株)製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm)を用意した。該支持体について、樹脂組成物層と接合しない表面、すなわち第1の表面の算術平均粗さ(Ra
s1)は80nm(JIS B 0601)、樹脂組成物層と接合する表面、すなわち第2の表面の算術平均粗さ(Ra
s2)は18nm(JIS B 0601)であった。該支持体の離型面に、ダイコーターにて樹脂ワニスを塗布し、80℃〜110℃(平均100℃)にて3分間乾燥させ、樹脂組成物層を形成した。樹脂組成物層の厚さは20μmであった。次いで、樹脂組成物層と接合するように保護フィルムを設けた。保護フィルムとしては、両面が粗面であるポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「二軸延伸ポリプロピレンフィルム、製品名:HS413」、厚さ15μm、表面粗度は表1参照)を使用した。
【0129】
(3)ロール状保護フィルム付き接着シートの作製
保護フィルム付き接着シートをロール状に巻き取ることで、ロール状保護フィルム付き接着シートを得た(巻き取り長20m)。
【0130】
<実施例2>
保護フィルムとして両面が粗面であるポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「二軸延伸ポリプロピレンフィルム、製品名:HS430」、厚さ20μm、表面粗度は表1参照)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ロール状保護フィルム付き接着シートを作製した。
【0131】
<実施例3>
(1)樹脂ワニスの調製
ソルベントナフサの配合量を15部に変更し、球形シリカの配合量を70部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製した。樹脂ワニス中の無機充填材の含有量(不揮発成分換算)は、62.3質量%であった。
【0132】
(2)保護フィルム付き接着シート(プリプレグ)の作製
上記の樹脂ワニスを、(株)有沢製作所製1027ガラスクロス(厚さ19μm)に含浸し、縦型乾燥炉にて110℃で5分間乾燥させプリプレグを作製した。プリプレグ中の樹脂組成物の含有量は81質量%、プリプレグの厚さは50μmであった。その後、ロールラミネーター(大成ラミネーター(株)製「VA770」)を用いて、プリプレグの片面に非シリコーン系離型剤(リンテック(株)製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ(株)製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm、Ra
s1:80nm、Ra
s2:18nm)を、プリプレグのもう片面に保護フィルムをラミネートした。保護フィルムとしては、両面が粗面であるポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「二軸延伸ポリプロピレンフィルム、製品名:HS413」、厚さ15μm、表面粗度は表1参照)を使用した。
【0133】
(3)ロール状保護フィルム付き接着シートの作製
保護フィルム付き接着シートをロール状に巻き取ることで、ロール状保護フィルム付き接着シートを得た(巻き取り長20m)。
【0134】
<実施例4>
保護フィルムとして両面が粗面であるポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「二軸延伸ポリプロピレンフィルム、製品名:HS430」、厚さ20μm、表面粗度は表1参照)を使用した以外は、実施例3と同様にして、ロール状保護フィルム付き接着シートを作製した。
【0135】
<比較例1>
保護フィルムとして片面が粗面であるポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「アルファンMA−411」、厚さ15μm、表面粗度は表1参照)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ロール状保護フィルム付き接着シートを作製した。
【0136】
<比較例2>
保護フィルムとして片面が粗面であるポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「アルファンMA−411」、厚さ15μm、表面粗度は表1参照)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ロール状保護フィルム付き接着シートを作製した。
【0137】
<比較例3>
保護フィルムとして両面が平滑面であるポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「アルファンFG−201」、厚さ25μm、表面粗度は表1参照)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ロール状保護フィルム付き接着シートを作製した。
【0138】
<比較例4>
保護フィルムとして片面が粗面であるポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「アルファンMA−411」、厚さ15μm、表面粗度は表1参照)を使用した以外は、実施例3と同様にして、ロール状保護フィルム付き接着シートを作製した。
【0139】
<比較例5>
保護フィルムとして片面が粗面であるポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「アルファンMA−411」、厚さ15μm、表面粗度は表1参照)を使用した以外は、実施例3と同様にして、ロール状保護フィルム付き接着シートを作製した。
【0140】
<比較例6>
保護フィルムとして両面が平滑面であるポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「アルファンFG−201」、厚さ25μm、表面粗度は表1参照)を使用した以外は、実施例3と同様にして、ロール状保護フィルム付き接着シートを作製した。
【0141】
結果を表1に示す。
【0142】
【表1】