特許第6075500号(P6075500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6075500
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20170130BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   F25B1/00 304L
   F25B1/00 304Q
   F25B1/00 361D
   F25B1/00 371C
   F25B49/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-193139(P2016-193139)
(22)【出願日】2016年9月30日
【審査請求日】2016年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-195329(P2015-195329)
(32)【優先日】2015年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 東
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴仁
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−132807(JP,A)
【文献】 特開2004−263948(JP,A)
【文献】 特開昭58−104465(JP,A)
【文献】 実開昭53−55855(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(21)と、放熱器(23)と、電動膨張弁からなる膨張機構(51)と、蒸発器(52)と、が接続されることによって構成される冷媒回路(10)と、前記冷媒回路に充填された冷媒を前記圧縮機、前記放熱器、前記膨張機構、前記蒸発器の順に循環させる冷凍サイクル運転を行う制御部(8)と、を備える冷凍装置において、
前記制御部は、前記冷凍サイクル運転時に、前記膨張機構の開度制御を行うようになっており、前記膨張機構の開度が変動している時の前記冷媒、前記圧縮機及び/又は前記膨張機構の状態量に関する第1判定条件、及び/又は、前記膨張機構の開度が変動していない時の前記冷媒、前記圧縮機及び/又は前記膨張機構の状態量に関する第2判定条件に基づいて、前記冷媒回路に適切な前記膨張機構が設けられているどうかの膨張機構適否判定を行う、
冷凍装置(1)。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1判定条件に基づいて前記膨張機構の弁口径が前記冷媒回路に適切な弁口径に比べて大きいかどうかを判定し、前記第2判定条件に基づいて前記膨張機構の弁口径が前記冷媒回路に適切な弁口径に比べて小さいかどうかを判定する、
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記冷凍サイクル運転時に、前記蒸発器の出口における前記冷媒の過熱度である蒸発器出口過熱度に基づいて前記膨張機構の開度制御を行っており、
前記制御部は、前記蒸発器出口過熱度の変動幅が過熱度変動判定値を超えるかどうかに基づいて、前記第1判定条件を満たすかどうかを判定する、
請求項1又は2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記冷凍サイクル運転時に、前記冷凍サイクル運転における低圧圧力に基づいて前記圧縮機の容量制御を行っており、
前記制御部は、前記低圧圧力の変動幅が低圧変動判定値を超えるかどうかに基づいて、前記第1判定条件を満たすかどうかを判定する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記冷凍サイクル運転時に、前記冷凍サイクル運転における低圧圧力が目標低圧になるように前記圧縮機の容量制御を行っており、
前記制御部は、前記膨張機構が最大開度に達し、かつ、前記低圧圧力が前記目標低圧よりも低いかどうかに基づいて、又は、前記膨張機構が最大開度に達し、かつ、前記圧縮機の容量が最小容量に達しているかどうかに基づいて、前記第2判定条件を満たすかどうかを判定する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記冷媒回路は、前記放熱器と前記膨張機構との間に第2の膨張機構(28)をさらに有しており、
前記制御部は、前記冷凍サイクル運転として、前記冷媒回路に充填された冷媒を前記圧縮機、前記放熱器、前記第2の膨張機構、前記膨張機構、前記蒸発器の順に循環させる運転を行っており、
前記制御部は、前記第1判定条件を満たすものと判定した場合に、前記第2の膨張機構の開度を小さくする制御を行う、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置、特に、圧縮機と、放熱器と、電動膨張弁からなる膨張機構と、蒸発器と、が接続されることによって構成される冷媒回路と、冷媒回路に充填された冷媒を圧縮機、放熱器、膨張機構、蒸発器の順に循環させる冷凍サイクル運転を行う制御部と、を備える冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1(特開2011−252623号公報)に示すように、圧縮機と、庫外熱交換器(放熱器)と、電動膨張弁からなる庫内膨張弁(膨張機構)と、庫内熱交換器(蒸発器)が接続されることによって構成される冷媒回路を備える冷凍装置がある。圧縮機や庫外熱交換器は、庫外ユニット(熱源ユニット)に設けられ、庫内膨張弁や庫内熱交換器は、庫内ユニット(利用ユニット)に設けられている。そして、冷凍装置は、庫外ユニットに庫内ユニットを接続することによって構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の冷凍装置においては、既設の利用ユニットを流用しつつ熱源ユニットを交換することによって、冷凍装置の更新を行う場合がある。そして、冷凍装置の更新時においては、冷媒についても、既設の冷凍装置の冷媒回路において使用していたものとは異なるものに変更する場合がある。この場合には、既設の利用ユニットに更新前の冷媒とは異なる冷媒が流れることになるため、更新前後の冷媒の物性等の違いによっては、既設の膨張機構をそのまま流用することができず、更新後の冷媒に適した膨張機構を選定して交換する必要がある。
【0004】
しかし、このような膨張機構の交換を含めた冷凍装置の更新にあたっては、膨張機構の選定ミスや交換忘れが発生するおそれがあるため、更新後の冷凍装置において、冷媒回路に適切な膨張機構が設けられているかどうかを判定できるようにすることが望ましい。
【0005】
本発明の課題は、圧縮機と、放熱器と、電動膨張弁からなる膨張機構と、蒸発器と、が接続されることによって構成される冷媒回路と、冷媒回路に充填された冷媒を圧縮機、放熱器、膨張機構、蒸発器の順に循環させる冷凍サイクル運転を行う制御部と、を備える冷凍装置において、冷媒回路に適切な膨張機構が設けられているかどうかを判定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点にかかる冷凍装置は、圧縮機と、放熱器と、電動膨張弁からなる膨張機構と、蒸発器と、が接続されることによって構成される冷媒回路と、冷媒回路に充填された冷媒を圧縮機、放熱器、膨張機構、蒸発器の順に循環させる冷凍サイクル運転を行う制御部と、を備えている。そして、ここでは、制御部が、冷凍サイクル運転時に、膨張機構の開度制御を行うようになっており、膨張機構の開度が変動している時の冷媒、圧縮機及び/又は膨張機構の状態量に関する第1判定条件、及び/又は、膨張機構の開度が変動していない時の冷媒、圧縮機及び/又は膨張機構の状態量に関する第2判定条件に基づいて、冷媒回路に適切な膨張機構が設けられているどうかの膨張機構適否判定を行う。
【0007】
ここでは、第1判定条件によって、開度制御を行っている膨張機構の開度が変動している状況であるにもかかわらず、状態量が安定しない運転状態になっているどうかを判定する。また、第2判定条件によって、開度制御を行っている膨張機構の開度が変動していないにもかかわらず、異常な状態量を示す運転状態になっているかどうかを判定する。そして、ここでは、第1判定条件や第2判定条件を満たすような運転状態が、冷媒回路に適切な膨張機構が設けられていないことに起因して発生しているものとするのである。
【0008】
このように、ここでは、開度制御を行っている膨張機構の動作状況(開度変動の有無)に応じて現れる状態量に基づく第1判定条件や第2判定条件によって、冷媒回路に適切な膨張機構が設けられているどうかの膨張機構適否判定を行うことができる。
【0009】
第2の観点にかかる冷凍装置は、第1の観点にかかる冷凍装置において、制御部が、第1判定条件に基づいて膨張機構の弁口径が冷媒回路に適切な弁口径に比べて大きいかどうかを判定し、第2判定条件に基づいて膨張機構の弁口径が冷媒回路に適切な弁口径に比べて小さいかどうかを判定する。
【0010】
適切な弁口径よりも大きい弁口径の膨張機構が冷媒回路に設けられると、膨張機構が小さめの開度範囲で制御されることが多くなるため、膨張機構の開度制御を行っているにもかかわらず、状態量が安定しにくい場合がある。また、適切な弁口径よりも小さい弁口径の膨張機構が冷媒回路に設けられると、膨張機構の開度が大きめの開度範囲で制御されることが多くなるため、膨張機構の開度制御を行っているにもかかわらず、異常な状態量を示す場合がある。
【0011】
そこで、ここでは、上記のように、第1判定条件を満たす場合には、膨張機構の弁口径が冷媒回路に適切な弁口径に比べて大きいものと判定し、第2判定条件を満たす場合には、膨張機構の弁口径が冷媒回路に適切な弁口径に比べて小さいものと判定するようにしている。
【0012】
これにより、ここでは、膨張機構の交換を含めた冷凍装置の更新後の冷凍サイクル運転において、第1判定条件や第2判定条件を満たすかどうかを判定することで、膨張機構の選定ミスや交換忘れが発生していないかどうかを発見することができる。
【0013】
第3の観点にかかる冷凍装置は、第1又は第2の観点にかかる冷凍装置において、制御部が、冷凍サイクル運転時に、蒸発器の出口における冷媒の過熱度である蒸発器出口過熱度に基づいて膨張機構の開度制御を行っている。そして、ここでは、制御部が、蒸発器出口過熱度の変動幅が過熱度変動判定値を超えるかどうかに基づいて、第1判定条件を満たすかどうかを判定する。
【0014】
蒸発器出口過熱度に基づいて膨張機構の開度制御を行う場合において、適切な膨張機構が冷媒回路に設けられていると、膨張機構の開度制御によって蒸発器出口過熱度が安定し、蒸発器出口過熱度の変動幅は小さく抑えられる。一方、適切な弁口径よりも大きい弁口径の膨張機構が冷媒回路に設けられている場合のように適切な膨張機構が冷媒回路に設けられていないと、膨張機構の開度制御にもかかわらず蒸発器出口過熱度が安定せず、蒸発器出口過熱度の変動幅は大きくなる。
【0015】
そこで、ここでは、上記のように、蒸発器出口過熱度の変動幅が過熱度変動判定値を超える場合には、膨張機構の開度変動に対して蒸発器出口過熱度の変動が大きい状態で膨張機構の開度制御が行われているものと判定する、すなわち、第1判定条件を満たすものと判定するようにしている。
【0016】
このように、ここでは、第1判定条件を満たすかどうかの指標となる状態量として、蒸発器出口過熱度を使用し、膨張機構の開度制御による蒸発器出口過熱度の安定の程度に基づいて、冷媒回路に適切な膨張機構が設けられているどうかを判定することができる。
【0017】
第4の観点にかかる冷凍装置は、第1〜第3の観点のいずれかにかかる冷凍装置において、制御部が、冷凍サイクル運転時に、冷凍サイクル運転における低圧圧力に基づいて圧縮機の容量制御を行っている。そして、ここでは、制御部が、低圧圧力の変動幅が低圧変動判定値を超えるかどうかに基づいて、第1判定条件を満たすかどうかを判定する。
【0018】
冷凍サイクル運転における低圧圧力に基づいて圧縮機の容量制御を行う場合において、適切な膨張機構が冷媒回路に設けられていると、膨張機構の開度制御に伴って低圧圧力が変動しても、その変動幅は小さいものである。一方、適切な弁口径よりも大きい弁口径の膨張機構が冷媒回路に設けられている場合のように適切な膨張機構が冷媒回路に設けられていないと、膨張機構の開度制御に伴って低圧圧力が変動すると、その変動幅は大きなものになる。
【0019】
そこで、ここでは、上記のように、低圧圧力の変動幅が低圧変動判定値を超える場合には、膨張機構の開度変動に対して低圧圧力の変動が大きい状態で膨張機構の開度制御が行われているものと判定する、すなわち、第1判定条件を満たすものと判定するようにしている。
【0020】
このように、ここでは、第1判定条件を満たすかどうかの指標となる状態量として、低圧圧力を使用し、膨張機構の開度制御に伴う低圧圧力の安定の程度に基づいて、冷媒回路に適切な膨張機構が設けられているどうかを判定することができる。
【0021】
第5の観点にかかる冷凍装置は、第1〜第4の観点のいずれかにかかる冷凍装置において、制御部が、冷凍サイクル運転時に、冷凍サイクル運転における低圧圧力が目標低圧になるように圧縮機の容量制御を行っている。そして、ここでは、制御部が、膨張機構が最大開度に達し、かつ、低圧圧力が目標低圧よりも低いかどうかに基づいて、又は、膨張機構が最大開度に達し、かつ、圧縮機の容量が最小容量に達しているかどうかに基づいて、第2判定条件を満たすかどうかを判定する。
【0022】
冷凍サイクル運転における低圧圧力が目標低圧になるように圧縮機の容量制御を行う場合において、適切な膨張機構が冷媒回路に設けられていると、膨張機構が最大開度に達しており冷媒の循環流量を多くしやすい状況であるにもかかわらず、低圧圧力が目標低圧まで達しないほど低くなることはなく、また、圧縮機の容量が最小容量まで低下することもないため、膨張機構の開度制御の範囲が広いものといえる。一方、適切な弁口径よりも小さい弁口径の膨張機構が冷媒回路に設けられている場合のように適切な膨張機構が冷媒回路に設けられていないと、膨張機構が最大開度に達しており冷媒の循環流量を多くしやすい状況であるにもかかわらず、低圧圧力が目標低圧まで達しないほどよりも低い状態になったり、また、圧縮機の容量が最小容量になることがあるため、膨張機構の開度制御の範囲が狭いものといえる。
【0023】
そこで、ここでは、上記のように、膨張機構が最大開度に達し、かつ、低圧圧力が目標低圧よりも低い場合、又は、膨張機構が最大開度に達し、かつ、圧縮機の容量が最小容量に達している場合には、低圧圧力が目標低圧になるように圧縮機の容量制御を行うのにあたり、膨張機構の開度制御の範囲が狭すぎる、すなわち、第2判定条件を満たすものと判定するようにしている。
【0024】
このように、ここでは、第2判定条件を満たすかどうかの指標となる状態量として、低圧圧力や圧縮機の容量を使用し、膨張機構が最大開度に達している場合における低圧圧力や圧縮機の容量の程度に基づいて、冷媒回路に適切な膨張機構が設けられているどうかを判定することができる。
【0025】
第6の観点にかかる冷凍装置は、第1〜第5の観点のいずれかにかかる冷凍装置において、冷媒回路が、放熱器と膨張機構との間に第2の膨張機構をさらに有しており、制御部が、冷凍サイクル運転として、冷媒回路に充填された冷媒を圧縮機、放熱器、第2の膨張機構、膨張機構、蒸発器の順に循環させる運転を行っている。そして、制御部は、第1判定条件を満たすものと判定した場合に、第2の膨張機構の開度を小さくする制御を行う。
【0026】
第1判定条件によって、開度制御を行っている膨張機構の開度が変動している状況であるにもかかわらず、状態量が安定しない運転状態になっているものと判定された場合には、このような運転状態を改善して、冷凍サイクル運転を安定させることが好ましい。
【0027】
そこで、ここでは、上記のように、第1判定条件を満たすものと判定した場合には、放熱器と膨張機構との間に設けられた第2の膨張機構の開度を小さくする制御を行うようにしている。
【0028】
これにより、膨張機構を大きめの開度範囲で制御させることができるようになり、膨張機構の開度制御だけでは状態量が安定しない運転状態を改善することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、開度制御を行っている膨張機構の動作状況(開度変動の有無)に応じて現れる状態量に基づく第1判定条件や第2判定条件によって、冷媒回路に適切な膨張機構が設けられているどうかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態にかかる冷凍装置の概略構成図である。
図2】冷凍装置の制御ブロック図である。
図3】膨張機構適否判定処理を示すフローチャートである。
図4】冷却運転時における低圧圧力又は蒸発器出口過熱度の経時変化を示す図である。
図5】変形例における膨張機構適否判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明にかかる冷凍装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる冷凍装置の実施形態の具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0032】
(1)冷凍装置の構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる冷凍装置1の概略構成図である。冷凍装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによって、冷蔵倉庫や店舗のショーケースの庫内等の利用側空間の冷却を行う装置である。冷凍装置1は、主として、熱源ユニット2と、利用ユニット5と、熱源ユニット2と利用ユニット5とを接続する液冷媒連絡管6及びガス冷媒連絡管7と、を有している。そして、冷凍装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路10は、熱源ユニット2と利用ユニット5とを、液冷媒連絡管6及びガス冷媒連絡管7を介して接続することによって構成されている。尚、ここでは、冷凍装置1が、既設の利用ユニット5を流用しつつ、既設の熱源ユニットを新設の熱源ユニット2に交換することによって更新されたものである。また、冷凍装置1の更新にあたって、冷媒についても、既設の冷凍装置の冷媒回路において使用していたもの(例えば、R22やR407C)とは異なるもの(例えば、R410AやR32)に変更されている。
【0033】
<利用ユニット>
利用ユニット5は、上記のように、液冷媒連絡管6及びガス冷媒連絡管7を介して熱源ユニット2に接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
【0034】
次に、利用ユニット5の構成について説明する。
【0035】
利用ユニット5は、主として、利用側膨張弁51(膨張機構)と、利用側熱交換器52(蒸発器)と、を有している。また、利用ユニット5は、利用側熱交換器52の液側端と液冷媒連絡管6とを接続する利用側液冷媒管53と、利用側熱交換器52のガス側端とガス冷媒連絡管7とを接続する利用側ガス冷媒管54と、を有している。
【0036】
利用側膨張弁51は、開度制御が可能な電動膨張弁であり、利用側液冷媒管53に設けられている。
【0037】
利用側熱交換器52は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能して庫内空気(利用側空気)を冷却する熱交換器である。ここで、利用ユニット5は、利用ユニット5内に利用側空気を吸入して、利用側熱交換器52において冷媒と熱交換させた後に、利用側空間に供給するための利用側ファン55を有している。すなわち、利用ユニット5は、利用側熱交換器52を流れる冷媒の加熱源としての利用側空気を利用側熱交換器52に供給するファンとして、利用側ファン55を有している。利用側ファン55は、利用側ファン用モータ56によって回転駆動されるようになっている。
【0038】
利用ユニット5には、各種のセンサが設けられている。具体的には、利用側ガス冷媒管54に、利用側熱交換器52のガス側端(蒸発器の出口)における冷媒の温度である蒸発器出口温度Tgを検出する蒸発器出口温度センサ57が設けられている。さらに、利用側熱交換器52又は利用側ファン55の周辺には、利用ユニット5内に吸入される利用側空気の温度Trを検出する利用側空気温度センサ58が設けられている。
【0039】
利用ユニット5は、利用ユニット5を構成する各部の動作を制御する利用側制御部50を有している。そして、利用側制御部50は、利用ユニット5の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、熱源ユニット2との間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0040】
<熱源ユニット>
熱源ユニット2は、上記のように、液冷媒連絡管6及びガス冷媒連絡管7を介して利用ユニット5に接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
【0041】
次に、熱源ユニット2の構成について説明する。
【0042】
熱源ユニット2は、主として、圧縮機21と、熱源側熱交換器23(放熱器)と、レシーバ24と、過冷却器25と、インジェクション管26と、熱源側膨張弁28と、液側閉鎖弁29と、ガス側閉鎖弁30と、を有している。また、熱源ユニット2は、圧縮機21の吐出側と熱源側熱交換器23のガス側端とを接続する第1熱源側ガス冷媒管31と、熱源側熱交換器23の液側端と液冷媒連絡管6とを接続する熱源側液冷媒管32と、圧縮機21の吸入側とガス冷媒連絡管7とを接続する第2熱源側ガス冷媒管33と、を有している。
【0043】
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)が圧縮機用モータ22によって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。また、ここでは、圧縮機用モータ22は、インバータにより運転周波数Fcの制御が可能であり、これにより、圧縮機21の容量制御が可能になっている。
【0044】
熱源側熱交換器23は、冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の放熱器として機能する熱交換器である。ここで、熱源ユニット2は、熱源ユニット2内に庫外空気(熱源側空気)を吸入して、熱源側熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための熱源側ファン34を有している。すなわち、熱源ユニット2は、熱源側熱交換器23を流れる冷媒の冷却源としての熱源側空気を熱源側熱交換器23に供給するファンとして、熱源側ファン34を有している。熱源側ファン34は、熱源側ファン用モータ35によって回転駆動されるようになっている。
【0045】
レシーバ24は、放熱器としての熱源側熱交換器23において凝縮した冷媒を一時的に溜める容器であり、熱源側液冷媒管32に設けられている。
【0046】
過冷却器25は、レシーバ24において一時的に溜められた冷媒をさらに冷却する熱交換器であり、熱源側液冷媒管32のレシーバ24の下流側の部分に設けられている。
【0047】
インジェクション管26は、熱源側液冷媒管32を流れる冷媒の一部を分岐して圧縮機21に戻す冷媒管であり、ここでは、熱源側液冷媒管32の過冷却器25の下流側の部分から分岐して、圧縮機21の圧縮行程の途中に戻すように設けられている。インジェクション管26は、熱源側液冷媒管32から分岐されて圧縮機21に戻す途中で過冷却器25を通過するように設けられている。インジェクション管26のうち過冷却器25の入口に至るまでの部分には、インジェクション弁27が設けられている。インジェクション弁27は、開度制御が可能な電動膨張弁であり、インジェクション管26を流れる冷媒を過冷却器25に流入させる前に減圧するようになっている。このように、過冷却器25は、インジェクション管26を通じて熱源側液冷媒管32から分岐した冷媒を冷却源として、レシーバ24において一時的に溜められた冷媒を冷却するようになっている。
【0048】
熱源側膨張弁28は、開度制御が可能な電動膨張弁であり、熱源側液冷媒管32の過冷却器25の下流側の部分に設けられている。
【0049】
液側閉鎖弁29は、熱源側液冷媒管32の液冷媒連絡管6との接続部分に設けられた手動弁である。
【0050】
ガス側閉鎖弁30は、第2熱源側液冷媒管33のガス冷媒連絡管7との接続部分に設けられた手動弁である。
【0051】
熱源ユニット2には、各種のセンサが設けられている。具体的には、熱源ユニット2の圧縮機21周辺には、圧縮機21の吸入側における冷媒の圧力である吸入圧力LPを検出する吸入圧力センサ36と、圧縮機21の吐出側における冷媒の圧力である吐出圧力HPを検出する吐出圧力センサ37と、が設けられている。
【0052】
熱源ユニット2は、熱源ユニット2を構成する各部の動作を制御する熱源側制御部20を有している。そして、熱源側制御部20は、熱源ユニット2の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、利用ユニット5の利用側制御部50との間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。すなわち、利用側制御部50と熱源側制御部20とが通信可能に接続されることによって、冷凍装置1全体の運転制御を行う制御部8が構成されている。
【0053】
制御部8は、図2に示されるように、各種センサ36、37、57、58の検出信号を受けることができるように接続されるとともに、これらの検出信号等に基づいて各種機器21、27、34、51等を制御することができるように接続されている。ここで、図2は、冷凍装置1の制御ブロック図である。
【0054】
このように、冷凍装置1の冷媒回路10は、主として、圧縮機21と、熱源側熱交換器23(放熱器)と、電動膨張弁からなる利用側膨張弁51(膨張機構)と、利用側熱交換器52(蒸発器)と、が接続されることによって構成されている。そして、冷凍装置1の制御部8は、冷媒回路10に充填された冷媒を圧縮機21、熱源側熱交換器23(放熱器)、利用側膨張弁51(膨張機構)、利用側熱交換器52(蒸発器)の順に循環させる冷却運転(冷凍サイクル運転)を行うようになっている。
【0055】
(2)冷凍装置の基本動作
次に、冷凍装置1の基本動作及び制御について、図1及び図2を用いて説明する。
【0056】
冷凍装置1は、基本動作として、冷媒回路10に充填された冷媒が、主として、圧縮機21、熱源側熱交換器23(放熱器)、レシーバ24、過冷却器25、熱源側膨張弁28、利用側膨張弁51(膨張機構)、利用側熱交換器52(蒸発器)の順に循環する冷却運転(冷凍サイクル運転)を行うようになっている。この冷却運転においては、インジェクション管26を通じて熱源側液冷媒管32を流れる冷媒の一部が分岐されて、過冷却器25を通過した後に、圧縮機21に戻されるようになっている。尚、以下に説明する冷凍装置1の基本動作としての冷却運転及び制御は、冷凍装置1の構成機器を制御する制御部8によって行われる。
【0057】
冷媒回路10に充填された冷媒は、まず、圧縮機21に吸入されて冷凍サイクルにおける低圧から高圧になるまで圧縮された後に吐出される。ここで、冷凍サイクルにおける低圧圧力は、吸入圧力センサ36によって検出される吸入圧力LPである。また、圧縮機21は、利用ユニット5で要求される冷却負荷に応じて容量制御が行われるようになっている。具体的には、利用側空気の温度Trとその目標値Trtとの温度差ΔTr(=Tr−Trt)に基づいて利用ユニット5で要求される冷却負荷を得る。そして、この利用ユニット5で要求される冷却負荷に応じて、冷凍サイクルにおける低圧LPの目標値LPtを設定し、冷凍サイクルにおける低圧圧力LPが目標低圧LPtになるように、圧縮機21の運転周波数Fcを制御するようにしている。圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、第1熱源側ガス冷媒管31を通じて、熱源側熱交換器23のガス側端に流入する。
【0058】
熱源側熱交換器23のガス側端に流入したガス冷媒は、熱源側熱交換器23において、熱源側ファン34によって供給される熱源側空気と熱交換を行って放熱して凝縮し、過冷却状態の液冷媒になり、熱源側熱交換器23の液側端から流出する。
【0059】
熱源側熱交換器23の液側端から流出した液冷媒は、熱源側液冷媒管32の熱源側熱交換器23からレシーバ24までの間の部分を通じて、レシーバ24の入口に流入する。
【0060】
レシーバ24に流入した液冷媒は、レシーバ24において飽和状態の液冷媒として一時的に溜められた後に、レシーバ24の出口から流出する。
【0061】
レシーバ24の出口から流出した液冷媒は、熱源側液冷媒管32のレシーバ24から過冷却器25までの間の部分を通じて、過冷却器25の熱源側液冷媒管32側の入口に流入する。
【0062】
過冷却器25に流入した液冷媒は、過冷却器25において、インジェクション管26を流れる冷媒と熱交換を行ってさらに冷却されて過冷却状態の液冷媒になり、過冷却器25の熱源側液冷媒管32側の出口から流出する。このとき、熱源側液冷媒管32を流れる冷媒の一部は、インジェクション管26に分岐され、インジェクション弁27によって冷凍サイクルにおける中間圧になるまで減圧される。インジェクション弁27によって減圧された後のインジェクション管26を流れる冷媒は、過冷却器25のインジェクション管26側の入口に流入する。過冷却器25のインジェクション管26側の入口に流入した冷媒は、過冷却器25において、熱源側液冷媒管32を流れる冷媒と熱交換を行って加熱されてガス冷媒になる。そして、過冷却器25において加熱された冷媒は、過冷却器25のインジェクション管26側の出口から流出して、圧縮機21の圧縮行程の途中に戻される。
【0063】
過冷却器25の熱源側液冷媒管32側の出口から流出した液冷媒は、熱源側液冷媒管32の過冷却器25と熱源側膨張弁28との間の部分を通じて、熱源側膨張弁28に流入する。このとき、過冷却器25の熱源側液冷媒管32側の出口から流出した液冷媒の一部は、熱源側液冷媒管32の過冷却器25と熱源側膨張弁28との間の部分からインジェクション管26に分岐されるようになっている。
【0064】
熱源側膨張弁28に流入した液冷媒は、熱源側膨張弁28によって減圧された後に、液側閉鎖弁29、液冷媒連絡管6及び利用側液冷媒管53の一部を通じて、利用側膨張弁51に流入する。
【0065】
利用側膨張弁51に流入した冷媒は、利用側膨張弁51によって冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧されて、利用側液冷媒管53の利用側膨張弁51から利用側熱交換器52までの間の部分を通じて、利用側熱交換器52の液側端に流入する。
【0066】
利用側熱交換器52の液側端に流入した冷媒は、利用側熱交換器52において、利用側ファン55によって供給される利用側空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒になり、利用側熱交換器52のガス側端(蒸発器の出口)から流出する。ここで、利用側熱交換器52の出口における冷媒の過熱度が蒸発器出口過熱度SHであり、そして、この蒸発器出口過熱度SHに基づいて利用側膨張弁51の開度制御が行われるようになっている。具体的には、低圧圧力LPをその相当飽和温度Te(=蒸発温度)に換算し、蒸発器出口温度Tgからこの相当飽和温度Teを差し引くことによって得る。そして、この蒸発器出口過熱度SHが目標過熱度SHtになるように、利用側膨張弁51の開度を制御するようにしている。
【0067】
利用側熱交換器52のガス側端から流出したガス冷媒は、利用側ガス冷媒管54、ガス冷媒連絡管7、ガス側閉鎖弁30及び第2熱源側ガス冷媒管33を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
【0068】
このようにして、冷凍装置1における冷却運転(冷凍サイクル運転)が行われる。
【0069】
(3)膨張機構適否判定処理
上記のように、冷凍装置1は、既設の利用ユニット5を流用しつつ、既設の熱源ユニットを新設の熱源ユニット2に交換することによって更新されたものであり、また、更新にあたっては、冷媒も既設のものとは異なるものに変更されている。この場合には、既設の利用ユニット5に更新前の冷媒とは異なる冷媒が流れることになるため、更新前後の冷媒の物性等の違いを考慮して、既設の利用側膨張弁51(膨張機構)をそのまま流用することができず、更新後の冷媒に適した利用側膨張弁51を選定して交換する必要がある。
【0070】
しかし、このような利用側膨張弁51の交換を含めた冷凍装置の更新にあたっては、利用側膨張弁51の選定ミスや交換忘れが発生するおそれがあるため、更新後の冷凍装置1において、冷媒回路10に適切な利用側膨張弁51が設けられているかどうかを判定できるようにすることが望ましい。
【0071】
そこで、冷凍装置1では、更新後の最初の冷却運転(冷凍サイクル運転)時に、冷媒回路10に適切な利用側膨張弁51が設けられているかどうかの膨張機構適否判定処理を行うようにしている。次に、この膨張機構適否判定処理について、図1図4を用いて説明する。ここで、図3は、膨張機構適否判定処理を示すフローチャートであり、図4は、冷却運転時における低圧圧力LP又は蒸発器出口過熱度SHの経時変化を示す図である。また、尚、以下に説明する膨張機構適否判定処理も、冷凍装置1の構成機器を制御する制御部8によって行われる。
【0072】
まず、制御部8は、ステップST1において、利用側膨張弁51の開度が変動している時の冷媒、圧縮機21及び/又は利用側膨張弁51の状態量に関する第1判定条件を満たすかどうかを判定する。
【0073】
ここで、第1判定条件は、蒸発器出口過熱度SHに基づく利用側膨張弁51の開度制御、及び、冷凍サイクルにおける低圧圧力LPに基づく圧縮機21の容量制御を伴う冷却運転時において、開度制御を行っている利用側膨張弁51の開度が変動している状況であるにもかかわらず、状態量が安定しない運転状態になっているどうかを判定するための条件である。そして、ここでは、第1判定条件を満たすような運転状態が、冷媒回路10に適切な利用側膨張弁51が設けられていないこと、特に、利用側膨張弁51の弁口径が冷媒回路10に適切な弁口径に比べて大きいこと、に起因して発生しているものとしている。なぜなら、適切な弁口径よりも大きい弁口径の利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられると、利用側膨張弁51が小さめの開度範囲で制御されることが多くなるため、利用側膨張弁の開度制御を行っているにもかかわらず、状態量が安定しにくい場合があるからである。
【0074】
そして、第1判定条件の1つとしては、蒸発器出口過熱度SHの変動幅が過熱度変動判定値ΔSHsを超えるかどうかがある。蒸発器出口過熱度SHに基づいて利用側膨張弁51の開度制御を行う場合において、適切な利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられていると、利用側膨張弁51の開度制御によって蒸発器出口過熱度SHが安定し、蒸発器出口過熱度SHの変動幅は小さく抑えられる。例えば、図4の二点鎖線で図示された蒸発器出口過熱度SHの経時変化のように、蒸発器出口過熱度SHと所定時間(例えば、10分間)内における蒸発器出口過熱度SHの平均値SHaとの差の絶対値ΔSHが、過熱度変動判定値ΔSHsを超えない場合である。一方、適切な弁口径よりも大きい弁口径の利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられている場合のように適切な利用側膨張弁51が冷媒回路に設けられていないと、利用側膨張弁51の開度制御にもかかわらず蒸発器出口過熱度SHが安定せず、蒸発器出口過熱度SHの変動幅は大きくなる。例えば、図4の実線で図示された蒸発器出口過熱度SHの経時変化のように、所定時間(例えば、10分間)内における蒸発器出口過熱度SHの変動幅ΔSHが、過熱度変動判定値ΔSHsを超える場合である。このように、ここでは、蒸発器出口過熱度SHの変動幅ΔSHが過熱度変動判定値ΔSHsを超える場合には、利用側膨張弁51の開度変動に対して蒸発器出口過熱度SHの変動が大きい状態で利用側膨張弁51の開度制御が行われているものと判定するのである。
【0075】
そして、制御部8は、このような蒸発器出口過熱度SHに基づく第1判定条件を満たす場合には、ステップST2の処理に移行して、適切な弁口径よりも大きい弁口径の利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられている旨の異常が発生していることを報知し、第1判定条件を満たさない場合には、ステップST3の処理に移行する。
【0076】
また、別の第1判定条件として、低圧圧力LPの変動幅ΔLPが低圧変動判定値ΔLPsを超えるかどうかがある。冷凍サイクルにおける低圧圧力LPに基づいて圧縮機21の容量制御を行う場合において、適切な利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられていると、利用側膨張弁51の開度制御に伴って低圧圧力LPが変動しても、その変動幅ΔLPは小さいものである。例えば、図4の二点鎖線で図示された低圧圧力LPの経時変化のように、低圧圧力LPと所定時間(例えば、10分間)内における目標低圧LPtとの差の絶対値ΔLPが、低圧変動判定値ΔLPsを超えない場合である。一方、適切な弁口径よりも大きい弁口径の利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられている場合のように適切な利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられていないと、利用側膨張弁51の開度制御に伴って低圧圧力LPが変動すると、その変動幅ΔLPは大きなものになる。例えば、図4の実線で図示された低圧圧力LPの経時変化のように、所定時間(例えば、10分間)内における低圧圧力LPの変動幅ΔLPが、低圧変動判定値ΔLPsを超える場合である。このように、ここでは、低圧圧力Lの変動幅ΔLPが低圧変動判定値ΔLPsを超える場合には、利用側膨張弁51の開度変動に対して低圧圧力LPの変動が大きい状態で利用側膨張弁51の開度制御が行われているものと判定するのである。
【0077】
そして、制御部8は、このような低圧圧力LPに基づく第1判定条件を満たす場合にも、ステップST2の処理に移行して、適切な弁口径よりも大きい弁口径の利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられている旨の異常が発生していることを報知し、第1判定条件を満たさない場合には、ステップST3の処理に移行する。
【0078】
尚、ここでは、第1判定条件として、蒸発器出口過熱度SHに基づく第1判定条件及び低圧圧力LPに基づく第1判定条件の2つを採用しているが、いずれか一方の第1判定条件だけを採用してもよい。
【0079】
次に、制御部8は、ステップST3において、利用側膨張弁51の開度が変動していない時の冷媒、圧縮機21及び/又は利用側膨張弁51の状態量に関する第2判定条件を満たすかどうかを判定する。
【0080】
ここで、第2判定条件は、蒸発器出口過熱度SHに基づく利用側膨張弁51の開度制御、及び、冷凍サイクルにおける低圧圧力LPに基づく圧縮機21の容量制御を伴う冷却運転時において、開度制御を行っている利用側膨張弁51の開度が変動していないにもかかわらず、異常な状態量を示す運転状態になっているかどうかを判定するための条件である。そして、ここでは、第2判定条件を満たすような運転状態が、冷媒回路10に適切な利用側膨張弁51が設けられていないこと、特に、利用側膨張弁51の弁口径が冷媒回路10に適切な弁口径に比べて小さいこと、に起因して発生しているものとしている。なぜなら、適切な弁口径よりも小さい弁口径の利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられると、利用側膨張弁51の開度が大きめの開度範囲で制御されることが多くなるため、利用側膨張弁51の開度制御を行っているにもかかわらず、異常な状態量を示す場合があるからである。
【0081】
そして、第2判定条件としては、利用側膨張弁51が最大開度(例えば、全開開度)に達し、かつ、低圧圧力LPが目標低圧LPtよりも低いかどうか、又は、利用側膨張弁51が最大開度(例えば、全開開度)に達し、かつ、圧縮機21の容量が最小容量(例えば、最低周波数Fcm)に達しているかどうか、がある。冷凍サイクルにおける低圧圧力LPが目標低圧LPtになるように圧縮機21の容量制御を行う場合において、適切な利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられていると、利用側膨張弁51が最大開度に達しており冷媒の循環流量を多くしやすい状況であるにもかかわらず、低圧圧力LPが目標低圧LPtまで達しないほど低くなることはなく、また、圧縮機21の容量が最小容量まで低下することもないため、利用側膨張弁51の開度制御の範囲が広いものといえる。一方、適切な弁口径よりも小さい弁口径の利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられている場合のように適切な利用側膨張弁51が冷媒回路に設けられていないと、利用側膨張弁51が最大開度に達しており冷媒の循環流量を多くしやすい状況であるにもかかわらず、低圧圧力LPが目標低圧LPtまで達しないほどよりも低い状態になったり、また、圧縮機21の容量が最小容量になることがあるため、利用側膨張弁51の開度制御の範囲が狭いものといえる。このように、ここでは、利用側膨張弁51が最大開度に達し、かつ、低圧圧力LPが目標低圧LPtよりも低い場合、又は、利用側膨張弁51が最大開度に達し、かつ、圧縮機21の容量が最小容量に達している場合には、低圧圧力LPが目標低圧Lptになるように圧縮機21の容量制御を行うのにあたり、利用側膨張弁51の開度制御の範囲が狭すぎるものと判定するのである。尚、第2判定条件を満たすかどうかの判断にあたっては、誤判定を抑制するために、上記の条件を満たす低圧圧力LPや圧縮機21の容量の状態が所定時間(例えば、10分間)継続している場合に限定してもよい。
【0082】
そして、制御部8は、このような第2判定条件を満たす場合には、ステップST4の処理に移行して、適切な弁口径よりも小さい弁口径の利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられている旨の異常が発生していることを報知し、第2判定条件を満たさない場合には、適切な弁口径の利用側膨張弁51が冷媒回路10に設けられているとして、膨張機構適否判定処理を終了する。
【0083】
このように、ここでは、開度制御を行っている利用側膨張弁51の動作状況(開度変動の有無)に応じて現れる状態量に基づく第1判定条件や第2判定条件によって、冷媒回路10に適切な利用側膨張弁51が設けられているどうかの膨張機構適否判定を行うことができる。
【0084】
特に、ここでは、利用側膨張弁51の交換を含めた冷凍装置の更新後の冷却運転において、第1判定条件や第2判定条件を満たすかどうかを判定することで、利用側膨張弁51の選定ミスや交換忘れが発生していないかどうかを発見することができる。すなわち、ステップST1、ST2において、第1判定条件を満たして弁口径が大きい旨の異常が報知された場合には、利用側膨張弁51の選定ミスで弁口径が大きいものに交換されてしまっている、又は、利用側膨張弁51の交換忘れで既設の弁口径が大きい利用側膨張弁のままになっている等の不具合が発生していることを発見することができるのである。
【0085】
また、ここでは、第1判定条件を満たすかどうかの指標となる状態量として、蒸発器出口過熱度SHや低圧圧力LPを使用し、利用側膨張弁51の開度制御による蒸発器出口過熱度SHの安定の程度や利用側膨張弁51の開度制御に伴う低圧圧力LPの安定の程度に基づいて、冷媒回路10に適切な利用側膨張弁51が設けられているどうかを判定することができる。
【0086】
また、ここでは、第2判定条件を満たすかどうかの指標となる状態量として、低圧圧力LPや圧縮機21の容量を使用し、利用側膨張弁51が最大開度に達している場合における低圧圧力LPや圧縮機21の容量の程度に基づいて、冷媒回路10に適切な利用側膨張弁51が設けられているどうかを判定することができる。
【0087】
(4)変形例
<A>
上記実施形態(図3参照)では、制御部8が、膨張機構適否判定処理のステップST1において、蒸発器出口過熱度SHの変動幅ΔSHが過熱度変動判定値ΔSHsを超えたり、低圧圧力LPの変動幅ΔLPが低圧変動判定値ΔLPsを超えることによって、第1判定条件を満たすと判定した場合には、ステップST2において、適切な弁口径よりも大きい弁口径の利用側膨張弁51(膨張機構)が冷媒回路10に設けられている旨の異常が発生していることを報知するようにしている。
【0088】
しかし、このような利用側膨張弁51の異常が発生していたとしても、このような運転状態を改善して、冷却運転を安定させて、利用側空間の冷却を継続できるようにすることが好ましい。
【0089】
そこで、ここでは、図5に示すように、制御部8が、膨張機構適否判定処理のステップST1において、第1判定条件を満たすと判定した場合には、ステップST2の報知処理とともに、ステップST5において、第2の膨張機構としての熱源側膨張弁28の開度を小さくする制御を行うようにしている。
【0090】
このような熱源側膨張弁28(第2の膨張機構)の開度制御を行うと、下流側にある利用側膨張弁51(膨張機構)に送られる冷媒の圧力を低下させることができるため、利用側膨張弁51の開度を大きめの開度範囲で制御させることができる。これにより、利用側膨張弁51の開度制御だけでは状態量が安定しない運転状態を改善すること、すなわち、蒸発器出口過熱度SHの変動幅や低圧圧力LPの変動幅ΔLPを小さくすることができ、冷却運転を安定させることができる。
【0091】
しかも、ここでは、制御部8は、蒸発器出口過熱度SHの変動幅ΔSHが過熱度変動判定値ΔSHs以下になるまで、又は、低圧圧力LPの変動幅ΔLPが低圧変動判定値ΔLPs以下になるまで、熱源側膨張弁28(第2の膨張機構)の開度を小さくする制御を行うようにしている。このため、蒸発器出口過熱度SHの変動幅ΔSHや低圧圧力LPの変動幅ΔLPを確実に小さくすることができるようになっている。
【0092】
<B>
上記実施形態及び変形例Aでは、膨張機構適否判定処理のステップST3において、第2判定条件を満たすかどうかの指標となる状態量として、低圧圧力LPや圧縮機21の容量を使用しているが、これに限定されるものではない。例えば、第2判定条件として、利用側空気温度Trとその目標値Trtとの温度差ΔTrが温度差判定値ΔTrsを超えるかどうかによって、第2判定条件を満たすかどうかを使用してもよい。
【0093】
<C>
上記実施形態及び変形例A、Bでは、更新後の最初の冷却運転(冷凍サイクル運転)時に膨張機構適否判定処理を行うことで、利用側膨張弁51(膨張機構)の選定ミスや交換忘れが発生していないかどうかを発見するようにしている。しかし、膨張機構適否判定処理の用途は、設置初期の利用側膨張弁51の選定ミスや交換忘れの発見に限定されるものではなく、他の用途にも使用可能である。
【0094】
例えば、更新後の最初の冷却運転時の膨張機構適否判定処理後においても、冷却運転時の膨張機構適否判定処理を行うようにしてもよい。この場合には、利用側膨張弁51内部の弁孔の詰まりが発生した時に、第2判定条件を満たす状態、すなわち、弁口径が小さくなったときと同様の状態を示すため、これにより、冷媒回路10に適切な利用側膨張弁51が設けられているどうかを判定することができる。また、利用側膨張弁51の弁体や弁孔の異常摩耗が発生した時に、第1判定条件を満たす状態、すなわち、弁口径が大きくなったときと同様の状態を示すため、これにより、冷媒回路10に適切な利用側膨張弁51が設けられているどうかを判定することができる。そして、このような場合にも、上記変形例Aと同様に、熱源側膨張弁28の開度を小さくする制御を行うことで、利用側膨張弁51の異常をカバーしながら、冷却運転を継続することができる。
【0095】
<D>
上記実施形態及び変形例A〜C(図1参照)では、冷凍サイクル運転として冷却運転を行う冷凍装置1を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、利用側熱交換器52を冷媒の放熱器として機能させ、かつ、熱源側熱交換器23を冷媒の蒸発器として機能させる冷凍サイクル運転も行うことができるようにするため、第1及び第2熱源側ガス冷媒管31、32に四路切換弁を設けて、利用側熱交換器52の逆サイクル除霜運転を行えるようにしたり、空調用途(冷房運転と暖房運転)に使用できるようにした冷凍装置においても、上記の膨張機構適否判定処理を適用することができる。
【0096】
<E>
また、上記実施形態及び変形例A〜Dでは、利用ユニット5が1台だけであるが、複数台であってもよい。
【0097】
また、上記実施形態及び変形例A〜Dでは、蒸発器出口過熱度SHを得る際に、低圧圧力LPを蒸発温度Teに換算するようにしているが、利用側熱交換器52(蒸発器)に温度センサを設けて蒸発温度Teを検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、圧縮機と、放熱器と、電動膨張弁からなる膨張機構と、蒸発器と、が接続されることによって構成される冷媒回路と、冷媒回路に充填された冷媒を圧縮機、放熱器、膨張機構、蒸発器の順に循環させる冷凍サイクル運転を行う制御部と、を備える冷凍装置に対して、広く適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 冷凍装置
8 制御部
10 冷媒回路
21 圧縮機
23 熱源側熱交換器(放熱器)
28 熱源側膨張弁(第2の膨張機構)
51 利用側膨張弁(膨張機構)
52 利用側熱交換器(蒸発器)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【特許文献1】特開2011−252623号公報
【要約】
【課題】圧縮機と、放熱器と、電動膨張弁からなる膨張機構と、蒸発器と、が接続されることによって構成される冷媒回路と、冷媒回路に充填された冷媒を圧縮機、放熱器、膨張機構、蒸発器の順に循環させる冷凍サイクル運転を行う制御部と、を備える冷凍装置において、冷媒回路に適切な膨張機構が設けられているかどうかを判定できるようにする。
【解決手段】制御部(8)は、冷凍サイクル運転時に、膨張機構(51)の開度制御を行うようになっており、膨張機構(51)の開度が変動している時の冷媒、圧縮機(21)及び/又は膨張機構(51)の状態量に関する第1判定条件、及び/又は、膨張機構(51)の開度が変動していない時の冷媒、圧縮機(21)及び/又は膨張機構(51)の状態量に関する第2判定条件に基づいて、冷媒回路(10)に適切な膨張機構(51)が設けられているどうかの膨張機構適否判定を行う。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5