(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る液剤吐出装置1Aの構成を示した図である。液剤吐出装置1Aは、気体の圧力により液剤9Aを吐出する装置である。この液剤吐出装置1Aは、特に、チクソ性を示す液剤9Aを吐出する用途に適している。
図1に示すように、液剤吐出装置1Aは、貯留容器30A、加圧用気体供給経路81A、吐出用気体供給経路82A、第1切替部61A、および制御部40Aを有する。
【0015】
貯留容器30Aは、その内周面31Aに取り囲まれた内部空間32Aを有する。液剤9Aは、当該内部空間32Aに貯留される。また、貯留容器30Aの下部には、液剤9Aを吐出する吐出部33Aが設けられている。貯留容器30Aの内部空間32Aと、吐出部33Aとは、貯留容器30Aに設けられた孔またはスリット34Aを介して、連通している。
【0016】
加圧用気体供給経路81Aは、気体供給源70Aと貯留容器30Aとを、第1圧力調整部71Aを介して接続する。第1圧力調整部71Aは、その下流側の気圧を、大気圧より高い第1の気圧に調整する。吐出用気体供給経路82Aは、気体供給源70Aと貯留容器30Aとを、第2圧力調整部72Aを介して接続する。第2圧力調整部72Aは、その下流側の気圧を、第1の気圧よりも低くかつ大気圧よりも高い第2の気圧に調整する。なお、気体供給源70Aは、液剤吐出装置1Aの内部に設けられていてもよく、液剤吐出装置1Aの外部に設けられていてもよい。
【0017】
第1切替部61Aは、貯留容器30Aの接続先を切り替える手段である。本実施形態では、加圧用気体供給経路81Aに設けられた開閉弁611Aと、吐出用気体供給経路82Aに設けられた開閉弁612Aとで、第1切替部61Aが構成されている。開閉弁612Aを閉じて開閉弁611Aを開くと、貯留容器30Aが加圧用気体供給経路81Aに接続される。一方、開閉弁611Aを閉じて開閉弁612Aを開くと、貯留容器30Aが吐出用気体供給経路82Aに接続される。これらの開閉弁611A,612Aは、制御部40Aにより動作制御される。
【0018】
この液剤吐出装置1Aにおいて、貯留容器30Aからチクソ性を示す液剤9Aを吐出するときには、まず、開閉弁612Aを閉じて開閉弁611Aを開く。そうすると、加圧用気体供給経路81Aから供給される気体により、液剤9Aを含む貯留容器30A内が、第1の気圧に昇圧される。その結果、貯留容器30A内の液剤9Aに、第1の気圧がかかる加圧状態となる。これにより、チクソ性を示す液剤9Aの流動性が高まる。
【0019】
次に、開閉弁611Aを閉じて開閉弁612Aを開く。そうすると、貯留容器30Aの接続先が、加圧用気体供給経路81Aから吐出用気体供給経路82Aに切り替わる。それにより、貯留容器30A内が、第1の気圧と第2の気圧との中間値よりも低い目標気圧に向けて減圧された後、第2の気圧に調整される。その結果、吐出用気体供給経路82Aから供給される気体により、貯留容器30A内の液剤9Aに、第2の気圧がかかる吐出状態となる。これにより、貯留容器30Aから対象物90Aへ向けて、液剤9Aが吐出される。
【0020】
このように、この液剤吐出装置1Aでは、対象物90Aに対して液剤9を吐出する1回の吐出工程の中に、貯留容器1A内を第1の気圧に昇圧する工程と、貯留容器1A内を減圧する工程と、貯留容器1A内を第2の気圧に調整する工程とが、含まれる。
【0021】
また、この液剤吐出装置1Aでは、気体の圧力を利用して、液剤9Aの流動性を高める。このため、貯留容器30Aの振動を抑えながら、チクソ性を示す液剤9Aを定量吐出できる。また、この液剤吐出装置1Aでは、加圧状態から吐出状態への気圧の切り替えが、気体供給経路81A,82Aを変更することによって実現される。このため、気圧の切り替えに遅延が生じにくい。したがって、貯留容器30Aから液剤9Aを精度よく定量吐出できる。
【0022】
<2.第2実施形態>
<2−1.液剤吐出装置1の構成>
図2は、本発明の第2実施形態に係る液剤吐出装置1の外観図である。この液剤吐出装置1は、気体の圧力を利用して、対象物90の表面に液剤9を定量吐出する装置である。液剤吐出装置1は、例えば、自動車、電子機器、通信機器、フラットパネルディスプレイ、光ディスク、二次電池等の製造工程において、種々の対象物の表面に、接着剤、オイル、グリス等の液剤9を塗布するために使用される。特に、この液剤吐出装置1は、チクソ性を示す液剤を吐出する用途に適している。
【0023】
図2に示すように、液剤吐出装置1は、本体ボックス10と、本体ボックス10に接続された外部配管21と、外部配管21の先端に取り付けられた貯留容器30とを有する。
【0024】
本体ボックス10は、金属または樹脂からなる筐体である。本体ボックス10の内部には、内部配管22およびマイクロコントローラ40が収容されている。内部配管22は、外部配管21へ気体を供給するための配管である。マイクロコントローラ40は、液剤吐出装置1の各部を動作制御する制御部である。また、本体ボックス10の前面には、表示部11および操作部12が設けられている。表示部11は、マイクロコントローラ40から出力される種々の情報を表示する。操作部12は、マイクロコントローラ40に対して種々のコマンドを入力するスイッチやボタンにより構成されている。
【0025】
図3は、液剤吐出装置1が搭載された液剤塗布システム100の一例を示す概要図である。
図3の液剤塗布システム100は、対象物90を保持しながら水平方向に搬送する搬送機構101を有する。液剤吐出装置1の貯留容器30は、搬送機構101に保持された対象物90の上方に配置される。液剤塗布システム100を動作させると、搬送機構101による対象物90の搬送と、貯留容器30からの液剤9の吐出とが、同時に行われる。これにより、対象物90の上面に、液剤9が塗布される。
【0026】
このような液剤塗布システム100では、貯留容器30からの単位時間当たりの液剤9の吐出量にばらつきがあると、対象物90の上面に塗布される液剤9の厚みが不均一となる。したがって、対象物90の上面に液剤9を均一に塗布するためには、貯留容器30からの単位時間当たりの液剤9の吐出量を、一定に維持することが好ましい。すなわち、貯留容器30から精度よく定量吐出できることが好ましい。以下では、液剤9を精度良く定量吐出するための液剤吐出装置1の構成および制御について、詳しく説明する。
【0027】
図4は、液剤吐出装置1の給気系および制御系の構成を示した図である。
図4に示すように、液剤吐出装置1は、上流配管50、第1分岐配管51、第2分岐配管52、中継配管53、下流配管54、吸引配管55、および排気配管56を含む気体の流路を有する。上述した外部配管21は、下流配管54の供給方向下流側の一部分に相当する。また、上述した内部配管22は、下流配管54の供給方向上流側の一部分と、上流配管50、第1分岐配管51、第2分岐配管52、中継配管53、吸引配管55、および排気配管56とに相当する。
【0028】
上流配管50の供給方向上流側の端部には、給気部60が設けられている。給気部60は、清浄空気や窒素ガス等の気体を供給する気体供給源に接続される。気体供給源は、液剤吐出装置1の一部であってもよく、あるいは、液剤吐出装置1の外部に設置された工場内ユーティリティであってもよい。上流配管50の下流側の端部には、第1分岐配管51の上流側の端部と、第2分岐配管52の上流側の端部とが、接続されている。第1分岐配管51および第2分岐配管52は、並列に配置されている。
【0029】
第1分岐配管51の経路上には、第1レギュレータ71が設けられている。第1レギュレータ71は、給気部60から供給される気体を減圧して、下流に位置する第1三方弁61側へ送る機構である。第1レギュレータ71の下流側の気圧は、第1レギュレータ71の上流側の気圧以下で、かつ、大気圧よりも高い第1の気圧P1に、調整される。このように、本実施形態では、第1レギュレータ71が、「第1圧力調整部」を構成している。
【0030】
第2分岐配管52の経路上には、第2レギュレータ72と気体タンク73とが、設けられている。第2レギュレータ72は、給気部60から供給される気体を減圧して、下流に位置する第1三方弁61側へ送る機構である。第2レギュレータ72の下流側の気圧は、第2レギュレータ72の上流側の気圧よりも低く、第1の気圧P1よりも低く、かつ、大気圧よりも高い第2の気圧P2に、調整される。このように、本実施形態では、第2レギュレータ72が、「第2圧力調整部」を構成している。
【0031】
第2レギュレータ72において減圧された気体は、気体タンク73に充填される。そして、後述する第1三方弁61を第2分岐配管52側へ切り替えると、気体タンク73内の気体が、下流側へ供給される。このように、気体を一旦気体タンク73に充填することで、第2分岐配管52から中継配管53に供給される気体の圧力が安定する。その結果、後述する吐出状態において、貯留容器30から液剤9を精度よく吐出できる。
【0032】
第1分岐配管51および第2分岐配管52と、中継配管53との間には、第1三方弁61が配置されている。第1三方弁61は、第1入力ポート、第2入力ポート、および出力ポートを有する。第1入力ポートには、第1分岐配管51の供給方向下流側の端部が、接続される。すなわち、第1入力ポートは、配管を介して第1レギュレータ71に接続される。第2入力ポートには、第2分岐配管52の供給方向下流側の端部が、接続される。すなわち、第2入力ポートは、配管を介して第2レギュレータ72に接続される。また、出力ポートには、中継配管53の供給方向上流側の端部が接続される。
【0033】
第1三方弁61を第1分岐配管51側へ切り替えると、第1分岐配管51と中継配管53とが接続されるとともに、第2分岐配管52と中継配管53との間が閉鎖される。一方、第1三方弁61を第2分岐配管52側へ切り替えると、第2分岐配管52と中継配管53とが接続されるとともに、第1分岐配管51と中継配管53との間が閉鎖される。
【0034】
中継配管53および吸引配管55と、下流配管54との間には、第2三方弁62が配置されている。第2三方弁62は、第1切替ポート、第2切替ポート、および固定ポートを有する。第1切替ポートには、中継配管53の供給方向下流側の端部が接続される。第2切替ポートには、吸引配管55の吸引方向上流側の端部が接続される。また、固定ポートには、下流配管54の供給方向上流側の端部が接続される。
【0035】
第2三方弁62を中継配管53側へ切り替えると、中継配管53と下流配管54とが接続されるとともに、吸引配管55と下流配管54との間が閉鎖される。一方、第2三方弁62を吸引配管55側へ切り替えると、吸引配管55と下流配管54とが接続されるとともに、中継配管53と下流配管54との間が閉鎖される。
【0036】
下流配管54の下流側の端部には、貯留容器30が接続されている。貯留容器30は、その内周面31に取り囲まれた内部空間32を有する。液剤9は、当該内部空間32に貯留される。また、貯留容器30の下部には、液剤9を吐出する吐出部33が取り付けられる。貯留容器30の内部空間32と、吐出部33とは、貯留容器30に設けられた孔またはスリット34を介して連通する。なお、貯留容器30には、例えば、シリンジまたはバレルを用いることができる。
【0037】
本実施形態では、上流配管50、第1分岐配管51、中継配管53、および下流配管54によって、加圧用気体供給経路81が構成されている。加圧用気体供給経路81においては、給気部60と貯留容器30とが、第1レギュレータ71を介して接続される。また、本実施形態では、上流配管50、第2分岐配管52、中継配管53、および下流配管54によって、吐出用気体供給経路82が構成されている。吐出用気体供給経路82においては、給気部60と貯留容器30とが、第2レギュレータ72を介して接続される。
【0038】
そして、貯留容器30が加圧用気体供給経路81に接続される加圧状態と、貯留容器30が吐出用気体供給経路82に接続される吐出状態とが、第1三方弁61によって切り替えられる。加圧状態においては、貯留容器30内の液剤9に、第1の気圧P1がかかる。これにより、チクソ性を示す液剤9の流動性が高まる。また、その後、加圧状態から吐出状態に切り替えると、貯留容器30内の液剤9に、第2の気圧P2がかかる。そうすると、貯留容器30から液剤9が吐出される。
【0039】
上述の通り、本実施形態では、第1三方弁61が、加圧状態と吐出状態とを切り替える第1切替部として機能している。三方弁を用いれば、加圧用気体供給経路81と吐出用気体供給経路82との双方に開閉弁を設ける場合より、第1切替部を小型化できる。また、複数の開閉弁の動作を同期させる必要がないため、第1切替部の制御が容易となる。
【0040】
また、この液剤吐出装置1では、気体の圧力を利用して、液剤9の流動性を高める。このため、貯留容器30の振動を抑えながら、チクソ性を示す液剤9を定量吐出できる。
【0041】
仮に、加圧状態から吐出状態への切り替えを、単一の経路に設けられた電空レギュレータの設定圧を変更することにより実現しようとすると、電空レギュレータの設定圧を変更した後、配管内の圧力が変化するまでに、ある程度の遅延が生じる。しかしながら、この液剤吐出装置1では、加圧状態から吐出状態への気圧の切り替えが、気体の供給経路を変更することにより実現されている。このため、気圧の切り替えに遅延が生じにくい。したがって、貯留容器30から液剤9を精度よく定量吐出できる。
【0042】
ここで、第2レギュレータ72に、圧力の調整精度が高いレギュレータを使用すれば、吐出状態において、液剤9を精度よく定量吐出できる。一方、第1レギュレータ71には、第2レギュレータほどの精度は要求されない。このため、第2レギュレータ72に、第1レギュレータ71より圧力の調整精度が高いレギュレータを使用することが好ましい。具体的には、第1レギュレータ71に、直動式のレギュレータを使用し、第2レギュレータ72に、直動式より精度の高いパイロット式のレギュレータを用いるとよい。
【0043】
また、本実施形態では、加圧用気体供給経路81においては、第1レギュレータ71と貯留容器30とが、気体タンクを介することなく接続されている。一方、吐出用気体供給経路82においては、第2レギュレータ72と貯留容器30とが、気体タンク73を介して接続されている。すなわち、加圧用気体供給経路81および吐出用気体供給経路82のうち、吐出用気体供給経路82のみに、気体タンクが設けられている。このようにすれば、吐出用気体供給経路82における気体の圧力が安定し、貯留容器30から液剤9を、より精度よく吐出できる。また、加圧用気体供給経路81に気体タンクを設けないことにより、液剤吐出装置1の製造コストを低減できる。
【0044】
なお、吐出用気体供給経路82上の気体タンク73は、省略されてもよい。また、加圧用気体供給経路81と吐出用気体供給経路82との双方に、気体タンク73が設けられていてもよい。
【0045】
排気配管56は、上流配管50と排気部63とを繋いでいる。排気部63は、工場内の排気ラインに接続されるか、または大気開放される。また、排気配管56には、ニードルバルブ74とエジェクタ75とが設けられている。そして、吸引配管55は、第2三方弁62の第2切替ポートと、エジェクタ75とを繋いでいる。給気部60から供給される高圧の気体の一部は、ニードルバルブ74を通って、エジェクタ75へ送られる。そうすると、エジェクタ75の吸引配管55側の接続ポートに負圧が生じる。すなわち、本実施形態では、エジェクタ75が、外圧より低い圧力をもつ負圧発生部を構成している。なお、負圧発生部は、液剤吐出装置1の外部に設けられていてもよい。
【0046】
第2三方弁62を吸引配管55側へ切り替えると、吸引配管55と下流配管54とが接続される。そうすると、上述した負圧によって、貯留容器30内の気体が吸引配管55へ吸引される吸引状態となる。すなわち、本実施形態では、吸引配管55および排気配管56によって、吸引経路83が構成されている。
【0047】
中継配管53には、第1圧力センサ76が設けられている。第1圧力センサ76は、中継配管53における気体の圧力を検出する。また、吸引配管55には、第2圧力センサ77が設けられている。第2圧力センサ77は、吸引配管55における気体の圧力を検出する。
【0048】
マイクロコントローラ40は、液剤吐出装置1の各部を動作制御する制御部である。
図4中に概念的に示したように、マイクロコントローラ40は、上述した第1三方弁61、第2三方弁62、第1圧力センサ76、および第2圧力センサ77と、それぞれ電気的に接続されている。マイクロコントローラ40は、第1圧力センサ76および第2圧力センサ77から計測値を受信する。また、マイクロコントローラ40は、予め設定されたプログラムや外部からの入力信号を参照しながら、第1三方弁61および第2三方弁62の動作を制御する。これにより、液剤吐出装置1における液剤9の吐出処理が進行する。
【0049】
なお、本実施形態では、限られた処理のみを行うマイクロコントローラ40により、制御部が構成されているが、本発明の制御部は、CPUやメモリを有する拡張性の高いパーソナルコンピュータであってもよい。また、本発明の制御部は、プログラマブルロジックコントローラなどのマイクロプロセッサを用いた機器であってもよい。
【0050】
<2−2.吐出処理について>
続いて、上述した液剤吐出装置1において、チクソ性を示す液剤9を吐出する処理について、説明する。
図5は、液剤吐出装置1における吐出処理の流れを示すフローチャートである。
図6は、
図5中のステップS3の処理を、より詳細に示したフローチャートである。
図7は、吐出処理時における第1圧力センサ76の計測値の変化の概略を示すグラフである。
図8は、吐出処理時における第1三方弁61および第2三方弁62の切り替えと、第1圧力センサ76の計測値の変化と、対象物90への液剤9の付着の有無と、を示すグラフである。
【0051】
この液剤吐出装置1では、予め貯留容器30の内部に、チクソ性を示す液剤9が貯留される。ステップS1の直前には、貯留容器30の内部において、液剤9が静止している。このため、液剤9は、高粘度、すなわち、流動性が低い状態となっている。
【0052】
液剤9を吐出するときには、まず、マイクロコントローラ40が、第1三方弁61および第2三方弁62を制御する。これにより、
図8中のグラフIに示すように、第1三方弁61を第1分岐配管51側に接続する。また、
図8中のグラフIIに示すように、第2三方弁62を、中継配管53側に接続する。すなわち、貯留容器30を、加圧用気体供給経路81に接続する。
【0053】
そうすると、
図8中のグラフIIIに示すように、加圧用気体供給経路81から供給される気体により、液剤9を含む貯留容器30A内が、第1の気圧P1に昇圧される。その結果、貯留容器30内の液剤9に、第1の気圧P1がかかる加圧状態となる(ステップS1)。
【0054】
貯留容器30内の液剤9に、第1の気圧P1をかけると、貯留容器30の内部において液剤9が僅かに流動する。それにより、液剤9の粘度が低下する。すなわち、液剤9の流動性が高まる。
【0055】
マイクロコントローラ40は、貯留容器30が加圧用気体供給経路81に接続された後の経過時間、すなわち、ステップS1の継続時間が、予め設定された時間t1に到達したかどうかを監視する(ステップS2)。経過時間の計測は、例えば、マイクロコントローラ40に搭載されたタイマーにより行われる。そして、計測された時間が時間t1に到達するまで、加圧状態を維持する(ステップS2においてNo)。
【0056】
なお、時間t1は、貯留容器30の吐出部33から、対象物へ液剤9が吐出されない程度の、短い時間とされる。例えば、時間t1は、後述する時間t2より短い時間とされる。また、時間t1は、後述する時間t2の1/2倍以下であれば、より好ましい。時間t1は、例えば1秒以下とすればよい。具体的には、時間t1を、例えば0.1〜1秒とすればよい。
【0057】
計測された時間が時間t1に到達すると(ステップS2においてYes)、マイクロコントローラ40は、第1三方弁61および第2三方弁62を制御する。これにより、貯留容器30が加圧用気体供給経路81に接続された状態から、貯留容器30が吐出用気体供給経路82に接続される状態に、気体の供給経路を切り替える(ステップS3)。
【0058】
ステップS3の処理について、
図6を参照しながら、より詳細に説明する。ステップS3では、まず、マイクロコントローラ40が、第1三方弁61および第2三方弁62を制御する。これにより、
図8中のグラフIに示すように、第1三方弁61を第2分岐配管52側へ切り替える。また、
図8中のグラフIIに示すように、第2三方弁62を、吸引配管55側へ切り替える。すなわち、貯留容器30を、吸引経路83に接続する(ステップS31)。
【0059】
そうすると、貯留容器30内の気体が吸引経路83へ吸引される吸引状態となる(ステップS32)。その結果、
図8中のグラフIIIに示すように、貯留容器30内の気圧が低下する。ここで、貯留容器30は、吸引経路83に接続されることにより、エジェクタ75により生じる目標気圧に向けて、減圧される。すなわち、本願において「目標気圧に向けて減圧する」とは、目標気圧の気体で満たされた空間に接続することで急激に減圧することを意味する。ただし、結果として、必ずしも目標気圧に達することを必要としない。また、目標気圧は、大気圧または大気圧より低い気圧であることが望ましいが、必ずしも大気圧または大気圧より低い気圧でなくてもよい。目標気圧は、第1の気圧P1と第2の気圧P2との中間値よりも低ければよく、第2の気圧であってもよく、第2の気圧より低くてもよい。
【0060】
次に、マイクロコントローラ40が、第2三方弁62を制御する。これにより、
図8中のグラフIIに示すように、第2三方弁62を、中継配管53側に接続する。すなわち、貯留容器30を、吐出用気体供給経路82に接続する(ステップS33)。そうすると、気体タンク73に充填された気体が、第2分岐配管52、中継配管53、および下流配管54を通って貯留容器30へ供給される。また、当該気体により、
図8中のグラフIIIに示すように、貯留容器30内が、第2の気圧P2に調整され、貯留容器30内の液剤9に、第2の気圧P2がかかる吐出状態となる(ステップS4)。その結果、貯留容器30から対象物90へ向けて、液剤9が吐出される。
【0061】
上述のように、本実施形態の液剤吐出装置1では、気体の圧力を利用して、液剤9の流動性を高める。このため、貯留容器30の振動を抑えながら、チクソ性を示す液剤9を定量吐出できる。また、加圧状態から吐出状態への気圧の切り替えは、気体の供給経路を変更することによって実現される。このため、切り替え時に遅延が生じにくい。したがって、液剤9を精度よく定量吐出できる。
【0062】
特に、本実施形態では、上述したステップS31〜S32において、貯留容器30内に残存する気圧を低下させた後に、ステップS33において、貯留容器30を吐出用気体供給経路82に接続する。このようにすれば、貯留容器30に残存する気体が、吐出用気体供給経路82へ逆流することを、抑制できる。したがって、貯留容器30内の液剤9にかかる圧力を、より迅速に第2の気圧P2に切り替えることができる。その結果、ステップS4において、貯留容器30から液剤9をより精度よく定量塗布できる。
【0063】
マイクロコントローラ40は、貯留容器30が吐出用気体供給経路82に接続された後の経過時間、すなわち、ステップS4の継続時間が、予め設定された時間t2に到達したかどうかを監視する(ステップS5)。経過時間の計測は、例えば、マイクロコントローラ40に搭載されたタイマーにより行われる。そして、計測された時間が時間t2に到達するまで、吐出状態を維持する(ステップS5においてNo)。
【0064】
計測された時間が時間t2に到達すると(ステップS5においてYes)、マイクロコントローラ40は、第2三方弁62を制御する。これにより、
図8中のグラフIIに示すように、第2三方弁62を、吸引配管55側へ切り替える。すなわち、貯留容器30を、吸引経路83に接続する(ステップS6)。
【0065】
そうすると、貯留容器30内の気体が吸引経路83へ吸引される吸引状態となる(ステップS7)。すなわち、エジェクタ75により生じる負圧によって、貯留容器30内の気体が、吸引経路83へ吸引される。その結果、
図8中のグラフIIIに示すように、貯留容器30内の気圧が、第2の気圧P2より低い圧力まで低下する。これにより、液剤9の吐出を急速に停止させることができる。このようにすれば、吐出完了後の貯留容器30から、液剤9が余分に垂れ落ちることを防止できる。したがって、貯留容器30からの液剤9の吐出量を、より規定の量に近付けることができる。
【0066】
また、
図8中のグラフIVに示すように、上述したステップS1〜S3は、対象物90への液剤9の付着が開始される前に実行される。そして、ステップS4において、対象物90への液剤9の付着が開始される。このため、対象物90への液剤9の付着が行われる最中に、貯留容器30内の圧力の変化および液剤9の粘度の変化が、生じにくい。したがって、液剤9の単位時間あたりの付着量を、より精度よく一定に維持できる。
【0067】
特に、本実施形態では、対象物90への液剤9の付着だけではなく、貯留容器30からの液剤9の吐出自体が、ステップS4において開始される。すなわち、上述したステップS1〜S3は、貯留容器30からの液剤9の吐出が開始される前に実行される。そして、ステップS4において、貯留容器30からの液剤9の吐出が開始される。このため、液剤9の吐出中に、貯留容器30内の圧力の変化および液剤の粘度の変化が生じにくい。したがって、液剤9の単位時間あたりの吐出量を、より精度よく一定に維持できる。
【0068】
なお、液剤吐出装置1が搭載された液剤塗布システム100は、複数の対象物90に対して、液剤9を順次に吐出する構成であってもよい。例えば、複数の対象物90を順次に搬送しながら、液剤塗布システム100内の液剤吐出装置1が、上述したステップS1〜S7の動作を、繰り返し行うようにしてもよい。その際、複数の対象物90に対する液剤9の吐出量を一定とするために、液剤吐出装置1は、対象物90ごとに、液剤9を加圧して流動性を高めるようにするとよい。
【0069】
すなわち、複数の対象物90に順次に液剤9を吐出する場合であっても、個々の対象物90に対する1回の吐出工程に、上述したステップS1〜S7が含まれていることが好ましい。そして、搬送機構101を動作させながら、ステップS1〜S7を含む1回の吐出工程を、繰り返し行うことにより、複数の対象物90に対して、液剤9の吐出を順次に行うことが好ましい。
【0070】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0071】
図9は、一変形例に係る吐出処理時の第1圧力センサの計測値の変化を示すグラフである。
図9の例では、ステップS32の吸引状態において、貯留容器30内の気圧が、第2の気圧P2より低い圧力P3まで低下している。このようにすれば、貯留容器を吐出用気体供給経路へ接続したときに、貯留容器に残存する気体が、吐出用気体供給経路へ逆流することを、より抑制できる。
【0072】
図10は、他の変形例に係る液剤吐出装置1Bの給気系および制御系の構成を示した図である。
図10の例では、上流配管50Bに、第1レギュレータ71Bが配置され、第2分岐配管52Bに、第2レギュレータ72Bが配置されている。すなわち、第1レギュレータ71Bと第2レギュレータ72Bとが、直列に配置されている。この場合、吐出用気体供給経路82Bにおいては、給気部60Bと貯留容器30Bとが、第1レギュレータ71Bと第2レギュレータ72Bとの双方を介して接続される。このような構成であっても、第2レギュレータ72Bの下流側の気圧が、最終的に第2の気圧P2になっていれば、上記実施形態と同様の吐出動作を行うことができる。
【0073】
図11は、他の変形例に係る液剤吐出装置1Cの給気系および制御系の構成を示した図である。
図11の液剤吐出装置1Cでは、第1三方弁が省略されている。そして、給気部60Cと第2三方弁62Cとを繋ぐ配管57Cが、第1分岐配管および第2分岐配管に分岐していない。また、配管57Cの経路上には、電空レギュレータ78Cが設けられている。電空レギュレータ78Cは、マイクロコントローラ40Cから入力される電気信号に基づき、開度を調節する。これにより、給気部60Cから供給される気体を、任意の圧力に減圧する。
【0074】
図11の構成を採用すれば、電空レギュレータ78Cを用いて、貯留容器30C内の気圧を、第1の気圧P1から第2の気圧P2へ切り替えることができる。したがって、液剤9Cの流動性を高めた後に、貯留容器30Cから液剤9Cを吐出することができる。また、この場合であっても、気体の圧力を利用して、液剤9Cの流動性を高めることは、上記の実施形態と変わらない。このため、貯留容器30Cの振動を抑えながら、チクソ性を示す液剤9Cを定量吐出できる。
【0075】
また、上記の実施形態では、第1圧力調整部および第2圧力調整部が、それぞれ、単一のレギュレータにより構成されていたが、本発明の第1圧力調整部および第2圧力調整部は、それぞれ、複数のレギュレータにより構成されていてもよい。例えば、直列に接続された複数のレギュレータにより、段階的に減圧がなされる構成となっていてもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、第1圧力調整部および第2圧力調整部にレギュレータを用いていたが、本発明の第1圧力調整部および第2圧力調整部は、レギュレータ以外の機器であってもよい。例えば、第1圧力調整部および第2圧力調整部は、下流側の気圧を、上流側の気圧より高い気圧に調整するものであってもよい。ただし、加圧によって気圧を調整するより、減圧によって気圧を調整する方が、気体の圧力を精度よく調整しやすい。
【0077】
また、本発明の液剤吐出装置は、チクソ性を示す液剤を吐出する用途に適しているが、チクソ性を示す液剤専用の装置でなくてもよい。
【0078】
また、液剤吐出装置1の細部の構成については、本願の各図に示された構成と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。