(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075589
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】包装用積層フィルムおよび包装用袋
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20170130BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20170130BHJP
B65D 33/01 20060101ALI20170130BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20170130BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D65/40 A
B65D33/01
B65D30/02
B65D85/50 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-28010(P2012-28010)
(22)【出願日】2012年2月13日
(65)【公開番号】特開2013-163540(P2013-163540A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2015年2月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】392034414
【氏名又は名称】株式会社瓢月堂
(74)【代理人】
【識別番号】100090893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 敏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 妙美
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3190336(JP,B2)
【文献】
特開2000−296883(JP,A)
【文献】
特開2002−262784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 30/02
B65D 33/01
B65D 65/40
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する収容部の内側面から順に、少なくとも、プラスチック基材フィルム、接着剤層、通気性を有する多孔性材料層を順次積層した包装用袋を構成する包装用積層フィルムにおいて、
前記プラスチック基材フィルムと前記通気性を有する多孔性材料層は、前記接着剤層によって全面が接着され、
前記内側面側から前記プラスチック基材フィルムの途中まで切り込まれた平面視H字状の切込み部を複数設け、
前記切込み部の縦幅(5b)は、前記切込み部の横幅(5a)の2倍であり、
前記収容部の内圧が上昇した際に、前記切込み部が裂けて前記プラスチック基材フィルムを貫通する隙間が形成され、
前記切込み部に形成される隙間の開閉により前記収容部内の内圧の放出および外気侵入の遮断を行い、
前記隙間は、前記通気性を有する多孔性材料層の復元力によって閉塞されることを特徴とする、包装用積層フィルム。
【請求項2】
前記切込み部の横幅(5a)は0.3mmであり、前記切込み部の縦幅(5b)は0.6mmであることを特徴とする、請求項1に記載の包装用積層フィルム。
【請求項3】
前記包装用積層フィルムは、前記プラスチック基材フィルムの前記内側面にさらに接着剤層、吸水性を有する多孔性材料層を順次積層させたことを特徴とする、請求項1または2に記載の包装用積層フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装用積層フィルムを袋状に成形してなる包装用袋。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装用積層フィルムをシール蓋に用いる包装用容器。
【請求項6】
内容物をおこわとすることを特徴とする、請求項4に記載の包装用袋。
【請求項7】
内容物をおこわとすることを特徴とする、請求項5に記載の包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の包装用袋や容器のシール蓋に用いる包装用積層フィルムに関し、より詳細には、包装用袋や容器の内部に密封された食品等の内容物を電子レンジ等により加熱し、包装用袋や容器の内圧が上昇した場合に、包装用袋や容器の破裂破損を未然に防止する包装用積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内容物を簡便に密封包装し、流通、保存する包装容器としては、積層フィルムの周縁部をヒートシールしてなる袋や、容器の蓋を積層フィルムでシールするものが多用されている。そして、近年においては、上記のように内容物を包装容器に密封し、密封されたままの状態で電子レンジ等を用いて加熱したりすることが行われている。ここで、上記のように内容物を包装容器に密封したままの状態で電子レンジ等を用いて加熱すると、内容物等から発生する蒸気や内部空気の膨張により密封包装された袋や容器における内圧が上昇し、遂には、包装用袋や容器のシール蓋を構成している包装用積層フィルムが膨張して破裂し、収納されている内容物等が外部に飛散したりこぼれ出るなどの不都合を生じるという問題があった。
【0003】
この問題を解決する方法としては、例えば特許文献1(特開2011−173618)にあるように、表面フィルムの裏面側にシーラント用フィルムが貼着されてなる包装用フィルム材において、表面フィルムの一部を貫通する空気抜き穴形成用の切込みを、シーラント用フィルムを貫通しないようにして設けることによって、内容物等から生じる水蒸気等を内圧の上昇によって形成される空気抜き穴を通して適切に外部に排出し、容器内における内圧が過剰に上昇することを防止することによって、包装用フィルム材が膨れて破裂することを防ぐ包装用フィルム材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−173618号公報
【0005】
ここで、特許文献1の包装用フィルム材においては、表面フィルムとシーラントフィルムの積層材であり、空気穴を形成した際には容器内部と容器外部とが穴を通じて直接通気する状態となるので、加熱後における内容物のバリア性が低下する。また、空気抜き穴の形状がX字状やC字状および直線状であり、加熱後の内部の圧力が低下した状態において
、空気抜き穴の形状がX字状の場合は、穴の中心である三角形状の先端が重なり合うこと
で隙間が大きく形成される。また、空気抜き穴の形状がC字状の場合は、穴の中心で2つの曲線が接する構成となっているために、接する部分がずれた場合には隙間が大きく形成される。従って、加熱後における内容物のバリア性が低下する。また、空気抜き穴の形状が直線状の場合は、穴が開き難いとともに穴が開いた際には直線状の方向に穴が裂けることによって加熱後における内容物のバリア性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、この発明の目的は、食品等の内容物を包装用積層フィルムによって構成される包装用袋やシール蓋に包装用積層フィルムを用いた容器等に密封したままの状態で電子レンジ等を用いて加熱すると、内容物等から発生する蒸気や内部空気の膨張により密封包装された袋や容器等における内圧が上昇して包装用袋や容器等が破裂することを簡単かつ適切に防止するとともに、内圧放出後の隙間の閉塞を容易とし、加熱後における内容物の外部汚染を防ぐことができる包装用積層フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、請求項1に記載の発明は、内容物を収容する収容部の内側面から順に、少なくとも、プラスチック基材フィルム、接着剤層、通気性を有する多孔性材料層を順次積層した包装用袋を構成する包装用積層フィルムにおいて、
前記プラスチック基材フィルムと前記通気性を有する多孔性材料層は、前記接着剤層によって全面が接着され、前記内側面側から前記プラスチック基材フィルムの途中まで切り込まれた平面視H字状の切込み部を複数設け、前記切込み部の縦幅(5b)は、前記切込み部の横幅(5a)の2倍であり、前記収容部の内圧が上昇した際に、前記切込み部が裂けて前記プラスチック基材フィルムを貫通する隙間が形成され、前記切込み部に形成される隙間の開閉により前記収
容部内の内圧の放出および外気侵入の遮断を行
い、前記隙間は、前記通気性を有する多孔性材料層の復元力によって閉塞されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の包装用積層フィルムにおいて、
前記切込み部の横幅(5a)
は0.3mm
であり、前記切込み部の縦幅(5b)
は0.6mmであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の包装用積層フィルムにおいて、前記包装用積層フィルムは、前記プラスチック基材フィルム
の前記内側面にさらに接着剤層、吸水性を有する多孔性材料層を順次積層させたことを特徴とする。
【0012】
請求項
4に記載の発明は、請求項1〜
3のいずれか1項に記載の包装用積層フィルムを袋状に成形してなる包装用袋である。
【0013】
請求項
5に記載の発明は、請求項1〜
3のいずれか1項に記載の包装用積層フィルムをシール蓋に用いる包装用容器である。
【0014】
請求項
6に記載の発明は、請求項
4に記載の包装用袋において、内容物をおこわとすることを特徴とする。
【0015】
請求項
7に記載の発明は、請求項
5に記載の包装用容器において、内容物をおこわとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の請求項1に記載の発明は、内容物を収容する収容部の内側面から順に、少なくとも、プラスチック基材フィルム、接着剤層、通気性を有する多孔性材料層を順次積層した包装用袋を構成する包装用積層フィルムにおいて、
前記プラスチック基材フィルムと前記通気性を有する多孔性材料層は、前記接着剤層によって全面が接着され、前記内側面側から前記プラスチック基材フィルムの途中まで切り込まれた平面視H字状の切込み部を複数設け、前記切込み部の縦幅(5b)は、前記切込み部の横幅(5a)の2倍であり、前記収容部の内圧が上昇した際に、前記切込み部が裂けて前記プラスチック基材フィルムを貫通する隙間が形成され、前記切込み部に形成される隙間の開閉により前記収容部内の内圧の放出および外気侵入の遮断を行
い、前記隙間は、前記通気性を有する多孔性材料層の復元力によって閉塞されることを特徴とするので、食品等の内容物を包装用積層フィルムによって構成される包装用袋やシール蓋に包装用積層フィルムを用いた包装用容器等に密封したままの状態で電子レンジ等を用いて加熱した場合に、内容物等から発生する蒸気や内部空気の膨張により密封包装された袋や容器等における内圧が上昇して包装用袋や容器等が破裂することを切込み部に形成される隙間の開閉によって簡単かつ適切に防止するとともに、内圧放出後の隙間の閉塞を容易とし、加熱後における内容物の外部汚染を防ぐことができる。また、隙間の形成性がよく、隙間の形状にばらつきが発生しないので、良好に加熱調理することができる。また、隙間の閉塞性がよいので、外部汚染を防ぐ効果が高い。
また、加熱調理前の包装用袋や包装用容器が高い密閉性を保ち、内容物の外部汚染を防ぐことができる。また、加熱調理時に内容物等から発生する蒸気や内部空気の膨張により密封包装された袋や容器等における内圧が上昇した際、切込み部が容易に切断されて隙間が形成されるので内圧の放出を良好に行うことができ、容器等が破裂することを簡単かつ適切に防止することができる。
【0017】
また、本願発明の請求項2に記載の発明は、
前記切込み部の横幅(5a)
は0.3mm
であり、前記切込み部の縦幅(5b)
は0.6mmであることを特徴とするので、縦略115mm、横略55mm、高さ略45mmの収容部を有するガゼット形状の包装用袋に、内容物を略45gのおこわとして密封収容し、包装用袋を密封したままの状態で電子レンジ等を用いて加熱した場合に、包装用袋が破裂することを簡単かつ適切に防止し、内圧放出後の隙間の閉塞を容易とし、加熱後における内容物のおこわの外部汚染を防ぐとともに、おこわを良好に加熱調理することができる。
【0018】
また、本願発明の請求項3に記載の発明は、前記包装用積層フィルムは、前記プラスチック基材フィルム
の前記内側面にさらに接着剤層、吸水性を有する多孔性材料層を順次積層させたことを特徴とするので、加熱によって内容物等から発生する蒸気や内容物表面に浮いた余分な油脂を吸水性を有する多孔性材料層によって吸収することができ、良好な加熱調理ができる。
【0021】
また、本願発明の請求項
4に記載の発明は、請求項1〜
3のいずれか1項に記載の包装用積層フィルムを袋状に成形してなる包装用袋であるので、食品等の内容物を密封したままの状態で電子レンジ等を用いて加熱した場合に、内容物等から発生する蒸気や内部空気の膨張により密封包装された袋における内圧が上昇して包装用袋が破裂することを簡単かつ適切に防止するとともに、内圧放出後の隙間の閉塞を容易とし、加熱後における内容物の外部汚染を防ぐ包装用袋を提供できる。
【0022】
また、本願発明の請求項
5に記載の発明は、請求項1〜
3のいずれか1項に記載の包装用積層フィルムをシール蓋に用いる包装用容器であるので、食品等の内容物を密封したままの状態で電子レンジ等を用いて加熱した場合に、内容物等から発生する蒸気や内部空気の膨張により密封包装された包装用容器における内圧が上昇して包装用容器が破裂することを簡単かつ適切に防止するとともに、内圧放出後の隙間の閉塞を容易とし、加熱後における内容物の外部汚染を防ぐ包装用容器を提供できる。
【0023】
また、本願発明の請求項
6に記載の発明は、内容物をおこわとすることを特徴とするので、包装用積層フィルムによって構成される包装用袋におこわを密封したままの状態で電子レンジ等を用いて加熱した場合に、おこわから発生する蒸気や内部空気の膨張により密封包装された包装用袋における内圧が上昇して包装用袋が破裂することを簡単かつ適切に防止し、内圧放出後の隙間の閉塞を容易とし、加熱後における内容物のおこわの外部汚染を防ぐとともに、おこわを良好に加熱調理することができる。
【0024】
また、本願発明の請求項
7に記載の発明は、内容物をおこわとすることを特徴とするので、シール蓋に包装用積層フィルムを用いた包装用容器におこわを密封したままの状態で電子レンジ等を用いて加熱した場合に、おこわから発生する蒸気や内部空気の膨張により密封包装された包装用容器における内圧が上昇して包装用容器が破裂することを簡単かつ適切に防止し、内圧放出後の隙間の閉塞を容易とし、加熱後における内容物のおこわの外部汚染を防ぐとともに、おこわを良好に加熱調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一例を示す、包装用積層フィルムの断面図である。
【
図2】本発明の一例を示す、包装用積層フィルムの断面図である。
【
図3】本発明の一例を示す、包装用積層フィルムの内容物を収容部に収容する内側面の模式図である。
【
図4】本発明の一例を示す、包装用積層フィルムを袋状に成形してなる包装用袋の斜視図である。
【
図5】本発明の一例を示す、包装用積層フィルムをシール蓋に用いる包装用容器の断面図である。
【
図6】収
容部内の内圧が上昇した際の切込み部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は本発明の一例を示す、包装用積層フィルムの断面図、
図2は本発明の一例を示す、包装用積層フィルムの断面図、
図3は本発明の一例を示す、包装用積層フィルムの内容物を収容部に収容する内側面の模式図、
図4は本発明の一例を示す、包装用積層フィルムを袋状に成形してなる包装用袋の斜視図、
図5は本発明の一例を示す、包装用積層フィルムをシール蓋に用いる包装用容器の断面図、
図6は収
容部内の内圧が上昇した際の切込み部の拡大斜視図である。
【0027】
(1)包装用積層フィルム
本発明で使用する包装用積層フィルム1は、
図1に示すように、内容物を収容する収容部の内側面から順に、少なくとも、プラスチック基材フィルム4、接着剤層3、通気性を有する多孔性材料層2を順次積層して構成されている。プラスチック基材フィルム4を有することで、包装用積層フィルム1としての機械的、物理的、化学的強度を確保することができる。
【0028】
また、本発明では、
図2に示すように、上記構成における内側面に吸水性を有する多孔性材料層8を設け、内容物を収容する収容部の内側面から順に、少なくとも、吸水性を有する多孔性材料層8、接着剤層3、プラスチック基材フィルム4、接着剤層3、通気性を有する多孔性材料層2を順次積層する構成としてもよい。
【0029】
本発明では、上記構成層以外に、他の層を含んでいてもよい。このような他の層としては、表面処理層であり、例えば、プライマー層やアンカーコート層、その他、アンダーコート剤層などがある。
【0030】
また、本発明では、プラスチック基材フィルム4および/もしくは通気性を有する多孔性材料層2の表面処理層上に印刷層を有してもよく、印刷方法は特に限定されない。なお、鮮明な印刷を行うのに好適な表面処理としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理、グロー放電処理などがあり、プライマー、アンカーコート、アンダコート、接着剤の塗布によって形成された層に印刷層を形成することもできる。
【0031】
(2)プラスチック基材フィルム
本発明で使用しうるプラスチック基材としては、本発明の包装用積層フィルムの用途に足る機械的、物理的、化学的強度に優れ、ヒートシール性を有し、特に耐熱性、防湿性、耐ピンホール性、熱等によって伸びにくく、耐突き刺し性などにも優れる樹脂を広く使用することができる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂などの一種以上を好適に使用することができる。本発明においては、特にポリプロピレン系樹脂を好適に使用することができる。
【0032】
本発明において、プラスチック基材フィルム4は、上記樹脂の未延伸フィルムや一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムなどのいずれのものでも使用することができるが、本発明では、特に延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは2軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用することが好ましい。
【0033】
本発明において、プラスチック基材フィルム4の厚さは、強度、耐突き刺し性、剛性などが確保できれば特に限定はない。
【0034】
(3)通気性を有する多孔性材料層
本発明において、通気性を有する多孔性材料としては、紙や不織布などの多孔性のものであれば特に制限はないが、加工性および経済性の点から不織布を使用することが好ましく、不織布に用いられる繊維としては、特に制限はないが、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、レーヨン単体およびこれらの複合繊維が好ましい。
【0035】
(4)接着剤層
本発明において、プラスチック基材フィルム4と通気性を有する多孔性材料層2との積層などにラミネート用接着剤を使用することができる。この際、層間にプライマーを塗布してプライマー層を形成し、ついで該プライマー層の面にラミネート用接着剤を介してドライラミネート積層法を用いて積層してもよい。その他、いずれかの2層を積層する際に、ラミネート用接着剤を介してドライラミネート積層法により接着することができる。
【0036】
ラミネート用接着剤としては、ポリウレタン系接着剤やポリエチレン系接着剤等を使用することができ、その使用量には特に限定はなく、ロールコート、グラビアコート、キスコートその他のコート法や印刷法によって行うことができる。
【0037】
(5)表面処理
本発明において、プラスチック基材フィルム4と通気性を有する多孔性材料層2との接着、他の層と印刷層との接着の際に、予め表面処理を行うと、層間の密着性を向上させることができる。このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。
【0038】
(6)吸水性を有する多孔性材料層
本発明において、吸水性を有する多孔性材料としては、吸水性を有する紙や不織布などであれば特に制限はないが、耐熱性を有し、食品の安全性および衛生上の面から添加剤や処理剤を含まないものがよい。また、吸水性を有する多孔性材料層は単層でも複数の吸水性を有する多孔性材料層を積層したものでもよい。
【0039】
(7)包装用積層フィルムの製造方法
本発明の包装用積層フィルム1は、プラスチック基材フィルム4と通気性を有する多孔性材料層2を、適宜、ラミネート用接着剤層3を介して接着などして製造することができる。フィルムとしては、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等のいずれの膜でもよい。また、プラスチック基材フィルム4および通気性を有する多孔性材料層2が市販されている場合には、市販品を使用することもできる。
【0040】
そして、この包装用積層フィルム1において、内容物を収容する収容部の内側面のプラスチック基材フィルム4に、
図3に示すように、横幅5aが0.3mmおよび縦幅5bが0.6mmであるH字状の切込み部5を複数設ける。
【0041】
ここで、本発明の包装用袋としては、
図4に示すように、包装用積層フィルム1において、切込み部5が設けられたプラスチック基材フィルム4が対面するように配置し、外周部等をヒートシール等により接着させた周知の形態であるガゼット型袋、三方シール袋や合掌貼り袋等に適用できる。
【0042】
また、本発明の包装用容器としては、
図5に示すように、容器7の開口部が本発明の包装用積層フィルム1によって密封させられたものを作製できる。容器7を密封するにあたっては、切込み部5が設けられたプラスチック基材フィルム4が容器7の開口部の周囲におけるフランジ部9に対面するように配置し、前記フランジ部9にヒートシール等により接着させる。
【0043】
内容物としては、例えば、コロッケ、メンチカツ、おにぎり、焼きそば、その他等の冷凍食品、あるいは、はんぺん、さつまあげ、惣菜、その他等のチルド食品等でもよく、特に蒸す調理工程を有する食品のおこわ、蒸しパン、蒸しケーキ、中華まんじゅう、シュウマイ等が好ましいが、特に限定されるものではない。また、加熱調理方法は電子レンジによる加熱に限定されるものではなく、蒸し器を用いた加熱などであってもよい。
【0044】
そして、食品等の内容物を包装用積層フィルム1によって構成される包装用袋や容器等に密封したままの状態で電子レンジ等を用いて加熱した場合に、内容物等から発生する蒸気や内部空気の膨張により密封包装された袋や容器等における内圧が上昇すると、この圧力によって包装用袋や容器が膨らみ、包装用積層フィルム1に応力が発生する。この包装用積層フィルム1に発生した応力は、強度の弱い部位であるプラスチック基材フィルム4に設けたH字状の切込み部5に集中し、このプラスチック基材フィルム4のH字状の切込み部5を切断し、隙間6が形成される。
【0045】
そして、
図6に示すように、内容物等から発生する蒸気や内部空気は、プラスチック基材フィルム4の切断されたH字状の切込み部5の隙間6を通過するとともに、通気性を有する多孔性材料層2を通過することによって、外部に排出される。従って、収
容部内の圧力が減少し、包装用積層フィルム1に発生する応力も減少するので、通気性を有する多孔性材料層2は切断されることはなく、袋や容器等を構成するヒートシール部等が剥離することもなく、包装用袋や容器等が破裂すること防止する。
【0046】
また、通気性を有する多孔性材料層2は切断されていないため、加熱後の包装用積層フィルム1は、通気性を有する多孔性材料層2の復元力によってプラスッチク基材フィルム4のH字状の切込み部5の隙間6を閉じる方向に力が作用する。そして、隙間6が閉塞されることによって、外気の侵入を低減もしくは遮断する。さらに、蒸気や内部空気を外部へ排出する隙間6は直線を組み合わせることによって形成されるH字状であり、複数の端部が一点に集中している十字状等の形状ではないため、形成された隙間6の縁が上下に重なり合いにくく、隙間6の縁が合致しやすい。従って、隙間6が開いた状態のままとはなりにくいので、形成された隙間6の閉塞性がよく、外部汚染を防ぐ効果が高くなる。
【0047】
また、隙間6がH字状であるため、プラスッチク基材フィルム4には、二つに分割された端部5d、5eが形成される。この二つに分割された端部5d、5eを有することによって、プラスチック基材フィルム4に応力が加わる際、プラスチック基材フィルム4に大きな広がりを確保できるので、切込み端部5fにかかる応力を和らげることができ、切込み端部5fを起点として、さらに必要以上の切れ目がプラスチック基材フィルム1に形成されることがなく、隙間6が大きくなることはない。従って、隙間6の大きさにばらつきが発生しないので、加熱むらが生じずに良好に加熱調理することができる。また、切込み部5の横幅5aに対し、縦幅5bが2倍の幅を有するので、二つに分割される端部5d、5eが縦長の形状となり、隙間6が形成されやすくなる。従って、隙間6が形成されない切込み部5が発生しないので、加熱むらが生じずに良好に加熱調理することができる。
【0048】
ここで、通気性を有する多孔性材料層2は、切込み部5が切断された際に一緒に切断されない強度が必要であり、その強度を有するように通気性を有する多孔性材料層の材料や厚さを適宜選択する。また、通気度は、内部の蒸気等の気体を隙間6から十分に放出することができるのもである。
【0049】
また、切込み部5の深さは、通気性を有する多孔性材料層2を貫通しないものとし、プラスチック基材フィルム4の一部に達するまでであることが好ましい。また、袋や容器等における内圧が上昇した際に、切込み部5が袋や容器等を構成するヒートシール部等より先に裂けることができる深さである。また、内容物を密閉包装している加熱調理前の状態において、切込み部5が容易に裂けることがない深さである。
【0050】
そして、プラスチック基材フィルム4に設けられた複数のH字状の切込み部5の間隔は、内容物によって適宜設定することができ、切込み部5の間隔が広ければ加熱時における袋や容器内の内圧を高くでき、切込み部5の間隔が狭ければ袋や容器内の内圧を低くできるので、切込み部5の間隔を変えるだけで、内容物の調理手法に適した良好な加熱調理ができる。また、切込み部5の大きさや切込み深さ、プラスチック基材フィルム4の材質を適宜設定することによっても、同様に内容物の調理手法に適した良好な加熱調理ができる。
【0051】
また、
図2に示すように、内側面に吸水性を有する多孔性材料層8を設けた場合は、加熱によって内容物等から発生する蒸気や内容物表面に浮いた余分な油脂を吸水性を有する多孔性材料層8によって吸収することができるので、良好な加熱調理ができる。
【実施例】
【0052】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0053】
厚さ30μmのヒートシールタイプの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(例えば、二村化学工業株式会社製、商品名「FOH」)の上に印刷層を設け、印刷層上にラミネート用接着剤を塗布し、このラミネート用接着剤層の面に、不織布(例えば、国光製紙株式会社製、商品名「ニューソフロン 雲竜」)を重ね合わせ、両者をドライラミネートして積層した。
【0054】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム面側にH字状の金型を押付けることによって、
図3に示す各切込み部を横幅5a=0.3mm、縦幅5b=0.6mm、各切込み部毎の間隔を横方向10a=19.5mm、縦方向10b=14mmとする複数の切込み部を設け、本発明の包装用積層フィルムを製造した。
【0055】
得られた包装用積層フィルムから
図4に示すガゼット型袋を製造し、調理後に自然冷却されたおこわ略45gをガゼット型袋内に収納し、ガゼット型袋の開口部をヒートシールすることによって密閉状態にし、袋とともに冷凍する。ここで、このガゼット型袋は縦略115mm、横略55mm、高さ略45mmの収容部を有する。
【0056】
次に、冷凍されたおこわを袋とともに電子レンジで加熱調理を行った。調理の条件は、おこわが密閉収納された袋1個当り600Wで30秒間の加熱である。
【0057】
この加熱調理によって、通気性を有する多孔性材料層が切れることはなく、包装袋内の蒸気を外部に排出し、包装袋が破裂することはなかった。また、袋を製造するヒートシール部の剥離も見られなかった。さらに、加熱調理後のおこわの保存試験による細菌検査結果を表1に示す。保存試験の条件は、保存温度を30℃とし、開始時、24時間経過後、36時間経過後におけるおこわ1グラム当りの生菌と大腸菌群を調べた。食品衛生上問題となるような細菌の発生はなかった。
【0058】
【表1】
【0059】
以上詳述したように、本発明の包装用積層フィルム1は、内容物を収容する収容部の内側面から順に、少なくとも、プラスチック基材フィルム4、接着剤層3、通気性を有する多孔性材料層2を順次積層した包装用袋を構成する包装用積層フィルムにおいて、プラスチック基材フィルム4に平面視H字状の切込み部5を複数設け、H字状の各切込み部5の横幅5aに対し、H字状の各切込み部5の縦幅5bが2倍であるとともに、切込み部5に形成される隙間6の開閉により収
容部内の内圧の放出および外気侵入の遮断を行うものである。
【符号の説明】
【0060】
1 包装用フィルム材
2 通気性を有する多孔性材料層
3 接着剤層
4 プラスチック基材フィルム
5 切込み
5a H字状の切込みの横幅
5b H字状の切込みの縦幅
5c 加熱前のH字状の切込み位置
6 隙間
7 容器
8 吸水性を有する多孔性材料層