【実施例】
【0047】
以下、実施例
及び参考例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例
及び参考例により制限されない。
【0048】
[
参考例1]
本参考例では、ポリマーとして厚み0.5mmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートを用いて、ポリマーの発泡処理を行った。
【0049】
[ポリマー処理装置]
本参考例のポリマー処理方法に使用したポリマー処理装置について説明する。
図2に示すポリマー処理装置1000は、主に、内部に処理対象となるポリマーを収容する高圧容器100と、高圧容器100の温度を制御する温度制御機構200と、高圧容器100へ加圧二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置300と、高圧容器100を回転させることにより、高圧容器の収容物を攪拌するローラー式攪拌機400と、高圧容器100から二酸化炭素を排気する二酸化炭素排出機構500を備える。
【0050】
高圧容器100は、中心軸mを回転中心とし、一方の底面1aに開口部を有する円筒形容器1と、円筒形容器1の開口部を封止可能な容器蓋2と、円筒形容器1の他方の底面1bに取り付けられる円筒形容器保持部材3を備える。円筒容器保持部材3には、円筒形容器保持部材3を貫通する2つの貫通穴3a、3bがそれぞれ形成されている。円筒形容器1及び容器蓋2は、中心軸mを回転軸として回転可能である。一方、円筒形容器保持部材3は、図示しない支持体によりポリマー処理装置1000の設置部位に固定されている。円筒形容器保持部材3は、ベアリングを介して円筒形容器1を回転可能に保持している。
【0051】
円筒形容器1は、内槽4と、内槽4に溶接された外槽5を有し、これらにより二重構造が形成されている。内槽4の内部空間6には処理対象となるポリマーが収容され、内槽4と外槽5との間には温度調節された水が循環する流路7が形成される。
本参考例では、内部空間6の容積が20Lである高圧容器100を用いた。
【0052】
図3に示すように、内槽4及び外槽5の間には、内槽4と外槽5とを接続する接続部45a、45bが存在する。接続部45a、45bは、中心軸mと並行に延在し、中心軸mを対称軸とした回転対称な位置関係に配置されている。したがって、
図4に示すように、流路7の形状は略円筒形であるが、接続部45a、45bにより一方の端部7aから2分割され、半円筒状の流路7b、7cを形成している。接続部45a、45bは流路7の他方の端部7dには達しておらず、流路7b、7cは、他方の端部7d付近で合流している。
【0053】
図2に示すように、流路7の一方の端部7aは、円筒形容器1の底面1bに達している。したがって、流路7は円筒形容器1の底面1bにおいて円筒形容器保持部材3の貫通穴3a、3bと通じている。一方、流路7の他方の端部7dは、円筒形容器1の底面1aには達していない。
【0054】
更に、円筒形容器1の底面1a付近の側面下部には、内部空間6へ加圧二酸化炭素を供給するための導入口19が設けられ、側面上部には、内部空間6から二酸化炭素を排出するための排出口20が設けられている。導入口19及び排出口20には、二酸化炭素供給装置300、二酸化炭素排出機構500がそれぞれ接続している。更に、導入口19には、二酸化炭素供給装置300とは別に、圧力計P6及び背圧弁23が接続している。背圧弁23を所定の圧力に設定することで、高圧容器100へ加圧二酸化炭素を供給した後の高圧容器100内部の圧力を所定の圧力以下に保持することができる。
【0055】
温度制御機構200は、水の温度を−20〜45℃に制御可能な温度制御機構と、温度制御した水を外部装置へ循環させる循環ポンプを備える。温度制御機構200からは、2本のホース8a、8bが伸びており、高圧容器100の円筒形容器保持部材3の2つの貫通穴3a、3bにそれぞれ接続している。温度制御機200は、温度制御した水をホース8a、8b及び貫通穴3a、3bを介して、高圧容器100内の流路7へ循環させることにより、高圧容器100の温度を制御する。
本参考例の円筒形容器1は回転するが、流路7は円筒形容器1の底面1bにおいて、回転しない円筒形容器保持部材3の貫通穴3a、3bと常に接している。これにより、円筒形容器1が回転中であっても、温度制御機構200は、温度制御した水を流路7へ循環させて高圧容器100の温度を制御することができる。
【0056】
二酸化炭素供給装置300は、主に、並列に接続された3つの第1の二酸化炭素貯蔵容器10と、3つの第1の二酸化炭素貯蔵容器10を覆う断熱壁11と、断熱壁11内部の温度を制御する図示しない空気調節機と、断熱壁11の外に配置され、3つの第1の二酸化炭素貯蔵容器10に並列に接続される第2の二酸化炭素貯蔵容器12を備える。
本参考例では、第1及び第2の二酸化炭素貯蔵容器10、12として、30kg入り二酸化炭素ボンベを用いた。
【0057】
第1の二酸化炭素貯蔵容器10は、内部に充填(密閉)された液相(第1の液体二酸化炭素)13aと気相(第1の気体二酸化炭素)13bからなる第1の加圧二酸化炭素13と、第1の二酸化炭素貯蔵容器10から液相13aを取り出すためのサイフォン管14を備える。
【0058】
第2の二酸化炭素貯蔵容器12は、内部に充填(密閉)された液相(第2の液体二酸化炭素)15aと気相(第2の気体二酸化炭素)15bからなる第2の加圧二酸化炭素15と、第2の二酸化炭素貯蔵容器の気相15bを取り出す管16と、第2の二酸化炭素貯蔵容器12の下部に取り付けられ、第2の二酸化炭素貯蔵容器12を加熱するヒーター17を備える。第2の二酸化炭素貯蔵容器は、減圧弁18を介して、3つの第1の二酸化炭素貯蔵容器10に並列に接続している。また、3つの第1の二酸化炭素貯蔵容器10及び第2の二酸化炭素貯蔵容器12には、それから取り出される加圧二酸化炭素の圧力を示す圧力計P1〜P4がそれぞれ設けられており、更に、減圧弁18と第1の二酸化炭素貯蔵容器10の間には圧力計P5が設けられている。
【0059】
3つの第1の二酸化炭素貯蔵容器10は、接続ジョイント21及びバルブ22を介して、円筒形容器1の下部に設けられた導入口19に接続している。二酸化炭素供給装置300は、第1の二酸化炭素貯蔵容器10内の液相13aをサイフォン管14を用いて、高圧容器100の内部空間6へ供給する。また、第1の二酸化炭素貯蔵容器10内の液相13aの量が減少すると、高圧容器100へ供給する加圧二酸化炭素の供給圧力が低下して不安定になるが、
本参考例では、第1の二酸化炭素貯蔵容器10へ第2の二酸化炭素貯蔵容器12から気相15bを供給し、第1の二酸化炭素貯蔵容器10内の力の低下を防ぐことができる。尚、高圧容器100と第1の二酸化炭素貯蔵容器10とは、接続ジョイント21で切り離すことによって、物理的に分離することができる。
【0060】
ローラー式攪拌機400は、中心軸mと並行に延在する複数本の円柱状のローラー26と、ローラー26を回転させる回転台27を備え、複数本のローラー26上に高圧容器100が回転可能に戴置される。ローラー式攪拌機400は、ローラー26を回転させることにより、その上に戴置される高圧容器100を回転させる。したがって、ローラー26の回転方向と、高圧容器100の回転方向は、互いに逆回転となる。ローラー26の回転方向、回転速度及び回転時間を制御することにより、高圧容器100の回転方向、回転速度及び回転時間を制御することができる。
【0061】
二酸化炭素排出機構500は、主に、排出される二酸化炭素の質量と流量を計測可能なコリオリ流量計30と、排出される二酸化炭素に機能性材料等が含有されている場合に二酸化炭素から機能性材料を遠心分離するサイクロン31から構成される。コリオリ流量計30及びサイクロン31は、それぞれ排気バルブ32、33を介して接続ジョイント34に接続し、更に、自動バルブ35を介して円筒形容器1の上部に設けられた排出口20に接続している。尚、高圧容器100と二酸化炭素排出機構500とは、接続ジョイント34を切り離すことによって、物理的に分離することができる。
【0062】
[ポリマー処理]
まず、上述したポリマー処理装置1000において、温度制御機構200から冷却水を高圧容器100内部に設けられた流路7へ循環させ、高圧容器100の温度を10℃に制御(冷却)した。
【0063】
次に、高圧容器100の容器蓋2を取り外し、円筒形容器1の開口部から内部空間6へPETシートを挿入し、PETシートを高圧容器100に収容した。内部空間6内に収容するPETシートの量(仕込み量)を増やして高圧容器内の加圧二酸化炭素占有スペースを減らすために、PETシートはセパレータを介して反物状に巻いた状態で収容した。セパレータを介して巻くことで、PETシートが重なり合う部分が加圧二酸化炭素と接触しやすくなる。このとき、高圧容器内は常圧であり、常圧下においてPETシート及びセパレータは高圧容器の内容積の90vol%を占めた。したがって、
本参考例における加圧二酸化炭素占有スペースは、10vol%であった。
【0064】
円筒形容器1の開口部を容器蓋2により封止した後、高圧容器100と二酸化炭素供給装置300との間のバルブ22を開放し、二酸化炭素供給装置300から第1の二酸化炭素貯蔵容器10の貯蔵する液相13aをサイフォン管14で吸い上げ、図示しない高圧流量計で調整しながら100ml/minの一定流量で、高圧容器100下部に設けられた導入口19より液体二酸化炭素を内部空間6へ供給した。液体二酸化炭素の供給圧力は、各第1の二酸化炭素貯蔵容器10に設けた圧力計P1〜P3により測定し、6.0〜6.5MPaとした。
【0065】
本参考例では、二酸化炭素供給装置300において、3つの第1の二酸化炭素貯蔵容器10を覆う断熱壁11の内部は図示しない空気調節機により20±3℃に制御した。第1の二酸化炭素貯蔵容器10において、高圧容器100へ第1の液体二酸化炭素13aを供給することによりその量が減少すると、第1の液体二酸化炭素(液相)13aと第1の気体二酸化炭素(気相)13bの界面で液相が気化し、高圧容器100への第1の液体二酸化炭素13aの供給圧力が低下するという不都合が生じる。
本参考例では、第1の二酸化炭素貯蔵容器10に接続される第2の二酸化炭素貯蔵容器12をヒーター17により加熱し、30〜35℃程度に制御した。これにより、第2の二酸化炭素貯蔵容器内の第2の気体二酸化炭素15bの圧力が上昇し、第2の二酸化炭素貯蔵容器12に設けた圧力計P4の表示は7.5〜8.5MPaとなった。第1の二酸化炭素貯蔵容器10と第2の二酸化炭素貯蔵容器12との間に設けた圧力計P5が示す値が6.5MPaとなるように、減圧弁18により第2の気体二酸化炭素15bの圧力を減圧した後、第1の二酸化炭素貯蔵容器10に導入した。このように、
本参考例では、第1の加圧二酸化炭素13よりも圧力の高い第2の気体二酸化炭素15bを第1の二酸化炭素貯蔵容器10へ供給することにより、第1の液体二酸化炭素13aの量が減少しても、高圧容器100への加圧二酸化炭素の供給圧力は低下することがなく、各圧力計P1〜P3の表示は、6.0〜6.5MPaに安定に維持された。
【0066】
また、
本参考例では、次に説明する方法により、高圧容器100の内部空間6に液体二酸化炭素を満充填した。高圧容器100と二酸化炭素排出機構500との間に設けられた自動バルブ35、更にコリオリ流量計30へ続く排気バルブ32を開き、液体二酸化炭素を高圧容器100下部に設けられた導入口19より内部空間6へ供給しながら、高圧容器100上部に設けられた排出口20から、内部空間6に存在する空気、気体二酸化炭素等の気体を排出した。排出口20から排出された気体は、コリオリ流量計30により質量をモニターし、密度の高い液体二酸化炭素を検知したタイミングで自動バルブ35を閉じた。これにより、高圧容器100の内部空間6に液体二酸化炭素を満充填できた。
本参考例では、圧力約6MPaである液体二酸化炭素を約1.5kg、高圧容器100に充填した。加圧二酸化炭素の供給量は、高圧容器100が戴置されている円柱状ローラー26を介して供給前後の高圧容器100の重量を測定し、供給前後の重量変化からもとめた。
【0067】
高圧容器100の内部空間6を液体二酸化炭素で満充填した後、接続ジョイント21、34において、二酸化炭素供給装置300、二酸化炭素排出機構500をそれぞれ高圧容器100から物理的に切り離した。二酸化炭素供給装置300、二酸化炭素排出機構500をそれぞれ高圧容器100から切り離した後、ローラー式攪拌機400のローラー26を回転されることにより、その上に戴置されている高圧容器100を回転速度50rpmで回転させた。高圧容器を回転させながら、温度制御機構200から温度制御した水を流路7へ循環させて高圧容器100を加熱し、高圧容器100の温度を40℃に制御した。高圧容器100の温度が上昇したことに伴い、高圧容器100内部の加圧二酸化炭素の圧力も上昇した。
本参考例では、導入口19に接続する背圧弁23の値を20MPaに設定することで、高圧容器100内部の圧力が20MPaを越えないように調整した。
【0068】
高圧容器100内部の圧力が20MPaに達した後、高圧容器100を回転させながら、その状態で2時間保持した。その後、温度制御機構200から冷却水を高圧容器100内の流路7へ循環させ、高圧容器100冷却し、その温度を10℃に制御した。このとき、高圧容器100内の圧力は5MPaまで低下した。その後、ローラー式攪拌機400のローラー26の回転を停止させることにより、高圧容器100の回転を停止した。高圧容器100の回転停止後、接続ジョイント34において、二酸化炭素排出機構500を接続した。高圧容器100と二酸化炭素排出機構500の間に設けられている自動バルブ35及び排気バルブ33を開放し、高圧容器100内部の二酸化炭素を排出することで、高圧容器100内部の圧力を大気圧まで低下させた。尚、
本参考例では、排気する二酸化炭素には機能性材料等は含まれていないので、サイクロン31は使用しなかった。
【0069】
高圧容器100の容器蓋2を取り外し、内部空間6からPETシートを取り出した。PETシートは、十分に冷却された状態であり発泡していなかった。次に、高圧容器100から取り出した反物状のPETシートを広げて反物状に丸める前の状態に戻し、150℃の電気炉で5分間加熱した。加熱されたPETシートは発泡した。発泡したPETシートに形成された発泡セルの平均セル径は0〜15μm程度と微細であった。この結果から、
本参考例では、ポリマー処理装置1000において実施した処理により、PETシートに発泡セルを形成するのに十分な量の加圧二酸化炭素を浸透させることができたことがわかった。
【0070】
[
参考例2]
本参考例では、ポリマーとして糸状のナイロン繊維を用い、機能性材料として染料を用いてポリマーの改質処理(染色処理)を行った。ナイロンとしてナイロン6を用い、染料として青色染料であるBlue35を用いた。
本参考例のポリマー処理には、
参考例1と同様に
図2に示すポリマー処理装置1000を用いた。
【0071】
まず、
参考例1と同様の方法で、高圧容器100の温度を10℃に制御(冷却)した。次に、ナイロン繊維を円筒状の芯材の周囲に巻き付けた状態で、円筒形容器1の開口部から内部空間6へ挿入し、ナイロン繊維を高圧容器100に収容した。このとき、高圧容器内は常圧であり、常圧下においてナイロン繊維及び芯材は高圧容器の内容積の93vol%を占めた。したがって、
本参考例における加圧二酸化炭素占有スペースは、7vol%であった。
【0072】
更に、
本参考例では、ナイロン繊維と共に青染料も粉末状態のまま高圧容器100内へ20g収容した。
本参考例で用いた青染料(Blue35)は、加圧二酸化炭素への溶解度が低く、二酸化炭素供給装置300の第1の二酸化炭素貯蔵容器10の液相13aに溶解させることは困難だからである。
【0073】
次に、
参考例1と同様の方法で、二酸化炭素供給装置300から第1の二酸化炭素貯蔵容器10の貯蔵する液相13aを高圧容器100の内部空間6へ供給し、内部空間6に液体二酸化炭素を満充填した。
本参考例では、圧力約6MPaである液体二酸化炭素を約1.2kg高圧容器100に充填した。尚、この時点では、青染料は、供給された加圧二酸化炭素と接触しているが、加圧二酸化炭素への溶解度が低いため十分に溶解していないと考えられる。
【0074】
高圧容器100の内部空間6を液体二酸化炭素で満充填した後、
参考例1と同様の方法で、二酸化炭素供給装置300、二酸化炭素排出機構500をそれぞれ高圧容器100から物理的に切り離した。高圧容器100から二酸化炭素供給装置300及び二酸化炭素排出機構500を切り離した後、
参考例1と同様の方法で、高圧容器100を回転速度50rpmで回転させながら加熱し、高圧容器100の温度を40℃に制御した。高圧容器100の温度が上昇したことに伴い、高圧容器100内部の加圧二酸化炭素の圧力も上昇した。
本参考例では、導入口19に接続する背圧弁23の設定値を
参考例1よりも高い30MPaとした。高圧容器100内の加圧二酸化炭素の到達圧力は、22MPaであった。このように、背圧弁23の設定値を高く設定することで、処理中に加圧二酸化炭素及び染料が高圧容器の外部に排気されることを防止した。
【0075】
高圧容器100内部の圧力が22MPaに達した後、高圧容器100を回転させながら、その状態で1時間保持した。その後、
本参考例では、
参考例1とは異なり、高圧容器100を冷却せずに高圧容器100の回転を停止した。高圧容器100の回転停止後、接続ジョイント34において、二酸化炭素排出機構500を接続した。高圧容器100と二酸化炭素排出機構500の間に設けられている自動バルブ35、排気バルブ33を開放し、高圧容器100内部の二酸化炭素を排出した。二酸化炭素の排出時、サイクロン31を駆動させ、ナイロン繊維に浸透せず、排出される二酸化炭素中に含有される染料を遠心分離することにより回収した。
【0076】
加圧二酸化炭素の排出後、高圧容器100の容器蓋2を取り外し、内部からナイロン繊維を取り出した。ナイロン繊維は濃い青に染色されていた。この結果から、ポリマー処理装置1000において実施した処理により、ナイロン繊維を染色するのに十分な量の染料が、加圧二酸化炭素と共にナイロン繊維に浸透したことがわかった。高圧容器100を加熱することで、その内部の加圧二酸化炭素の温度及び圧力が上昇し、それに伴って青染料の加圧二酸化炭素への溶解度も上昇し、加圧二酸化炭素と共に染料がナイロン繊維に浸透したと推測される。
【0077】
更に、染色されたナイロン繊維をエタノールに1週間浸漬させた。エタノールは、染料の良溶媒である。1週間の浸漬後、エタノールは着色しなった。この結果から、
本参考例で染色されたナイロン繊維が超臨界無水染色の利点である高堅牢性を有することがわかった。
【0078】
[
実施例1]
本実施例では、ポリマーとして厚み0.5mmのナイロンシートを用い、機能性材料として無電解メッキの触媒として機能するパラジウム錯体を用いてポリマーの改質処理を行った。ナイロンとしてナイロン6を用い、パラジウム錯体としてヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)を用いた。本実施例のポリマー処理には、
参考例1と同様に
図2に示すポリマー処理装置1000を用いた。
【0079】
まず、
参考例1と同様の方法で、高圧容器100の温度を10℃に制御(冷却)した。次に、
参考例1と同様に、ナイロンシートをセパレータを介して反物状に巻いた状態で、円筒形容器1の開口部から内部空間6へ挿入し、ナイロンシートを高圧容器100に収容した。このとき、高圧容器内は常圧であり、常圧下においてナイロンシート及びセパレータは高圧容器の内容積の95vol%を占めた。したがって、本実施例における加圧二酸化炭素占有スペースは、5vol%であった。
【0080】
本実施例に用いたパラジウム錯体は、加圧二酸化炭素に対する溶解度が高く、液体二酸化炭素に溶解する。本実施例では、二酸化炭素供給装置300の第1の二酸化炭素貯蔵容器10に貯蔵される第1の液体二酸化炭素13aにパラジウム金属錯体を溶解させた。液体二酸化炭素中のパラジウム錯体濃度は0.1g/Lとした。
【0081】
参考例1と同様の方法で、パラジウム錯体の溶解した第1の液体二酸化炭素13aを高圧容器100の内部空間6へ供給し、内部空間6に液体二酸化炭素を満充填した。本実施例では、圧力約6MPaである液体二酸化炭素を約1.0kg高圧容器100に充填した。
【0082】
高圧容器100の内部空間6に液体二酸化炭素を満充填した後、
参考例1と同様の方法で、二酸化炭素供給装置300、二酸化炭素排出機構500をそれぞれ高圧容器100から物理的に切り離した。高圧容器100から二酸化炭素供給装置300及び二酸化炭素排出機構500を切り離した後、
参考例1と同様の方法で、高圧容器100を回転速度50rpmで回転させながら加熱し、高圧容器100の温度を40℃に制御した。高圧容器100の温度が上昇したことに伴い、高圧容器100内部の加圧二酸化炭素の圧力も上昇した。本実施例では、導入口19に接続する背圧弁23の設定値は、
参考例2と同様に30MPaとした。高圧容器100内の加圧二酸化炭素の到達圧力は、22MPaであった。このように、背圧弁23の設定値を高く設定することで、
参考例2と同様に、処理中に加圧二酸化炭素及びパラジウム錯体が高圧容器の外部に排気されることを防止した。
【0083】
高圧容器100内部の圧力が22MPaに達した後、高圧容器100を回転させながら、その状態で1時間保持した。その後、本実施例では、
参考例2と同様に、高圧容器100を冷却せずに高圧容器100の回転を停止した。高圧容器100の回転停止後、接続ジョイント34において、二酸化炭素排出機構500を接続した。高圧容器100と二酸化炭素排出機構500の間に設けられている自動バルブ35、排気バルブ33を開放し、高圧容器100内部の二酸化炭素を排出した。二酸化炭素の排出時、サイクロン31を駆動させ、ナイロンシートに浸透せず、排出される二酸化炭素中に含有されるパラジウム錯体を遠心分離することにより回収した。
【0084】
加圧二酸化炭素の排出後、高圧容器100の容器蓋2を取り外し、内部からナイロンシートを取り出した。ナイロンシートは、本来の白色から薄茶色に変色していた。この変色は、パラジウム錯体がナイロンシートに浸透していることを示す。
【0085】
次に、高圧容器100から取り出した反物状のナイロンシートを広げて反物状に丸める前の状態に戻し、ナイロンシートに浸透したパラジウム錯体を熱還元するために、150℃の電気炉で10分間加熱した。
【0086】
ナイロンシートを電気炉で加熱した後、200mm×200mmの大きさに切り出し、以下に説明する方法で無電解メッキを行った。まず、ナイロンシートを80℃、濃度75vol%の1,3−ブタンジオール水溶液に5分間浸漬し、その後、85℃の無電解ニッケルリンメッキ液(奥野製薬工業製、トップニコロンRCH)に浸漬した。浸漬後5分で、ナイロンシート全面にニッケルリン膜が形成された。
【0087】
次に、ニッケルリン膜の上に、電解メッキ法により、銅メッキ膜を20μm形成し、ニッケルリン膜及び銅メッキ膜からなる金属膜を有する試料を作製した。作製した試料の金属膜の密着強度を引っ張り試験機を用いて測定した。その結果、本実施例で作製した試料の金属膜は10N/cmと高い密着強度を有していた。
【0088】
以上の結果から、本実施例では、ポリマー処理装置1000において実施した処理により、加圧二酸化炭素と共にパラジウム錯体がナイロンシートに浸透し、ナイロンシートが無電解メッキ可能なように改質されたことがわかった。また、本実施例で処理されたナイロンシートは、無電解メッキ液に浸漬後5分という短時間でメッキ膜を形成することができ、更に、形成されたメッキ膜が高い密着強度を有することがわかった。