特許第6075622号(P6075622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6075622放射線不透過性減圧マニホルド、システム、及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075622
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】放射線不透過性減圧マニホルド、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   A61M27/00
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-557259(P2012-557259)
(86)(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公表番号】特表2013-521893(P2013-521893A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】US2011027987
(87)【国際公開番号】WO2011112866
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2014年3月7日
(31)【優先権主張番号】61/313,386
(32)【優先日】2010年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/044,212
(32)【優先日】2011年3月9日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ジムニツキー,ドミトリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイル,ニール
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0027414(US,A1)
【文献】 特開昭63−189150(JP,A)
【文献】 特開2005−312941(JP,A)
【文献】 特表2008−502425(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/100440(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に放射線不透過性のマニホルドパッドの製造方法であって、
ポリマー発泡体を含み、且つマニホルド部材の中を通る複数の流路を形成する複数のストラットを有するマニホルド部材を提供するステップであって、前記複数のストラットが外表面を有する、ステップと、
放射線不透過剤を提供するステップと、
前記マニホルド部材及び前記放射線不透過剤を加熱容器において摂氏60度〜110度の範囲の高温で加熱するステップであって、それによりラジオグラフィを使用した検出に十分な量で前記マニホルド部材の中を通る前記複数のストラットの前記外表面を実質的にコーティングするステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記マニホルドパッドを洗浄するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記放射線不透過剤が分子状ヨウ素を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1又は2又は3の何れか1項に記載の方法において、前記マニホルド部材を加熱するステップが、摂氏70度〜90度の範囲の高温で加熱することを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2乃至4の何れか1項に記載の方法において、前記加熱するステップが、前記マニホルド部材及び前記放射線不透過剤を加熱容器において実質的に大気圧で加熱することを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1又は2又は3の何れか1項に記載の方法において、前記加熱するステップが、前記マニホルド部材及び前記放射線不透過剤を加熱容器において実質的に大気圧で加熱することを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1又は2又は3の何れか1項に記載の方法において、前記加熱するステップが、前記マニホルド部材及び前記放射線不透過剤を加熱容器において3〜6時間にわたり実質的に大気圧で加熱することを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2乃至7の何れか1項に記載の方法において、前記マニホルド部材を提供するステップが、銀を含有する開放気泡発泡体を提供することを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1又は請求項3乃至7の何れか1項に記載の方法において、前記マニホルド部材を加熱した後に前記マニホルドパッドを洗浄するステップをさらに含み、前記マニホルドパッドが少なくとも2時間洗浄されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1又は請求項3乃至8の何れか1項に記載の方法において、
前記マニホルドパッドを通風するステップと、
前記マニホルド部材を2度目に加熱するステップであって、それにより任意の過剰なヨウ素を除去するステップと、
前記マニホルド部材を2度目に加熱した後に前記マニホルドパッドを洗浄するステップと、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1又は8又は9又は10に記載の方法において、前記マニホルド部材を加熱した後に前記マニホルドパッドを洗浄するステップをさらに含み、及び
前記マニホルド部材を提供するステップが開放気泡発泡体を提供することを含み、
前記放射線不透過剤が分子状ヨウ素を含み、及び
前記加熱するステップが、前記マニホルド部材及び前記放射線不透過剤を加熱容器において3〜6時間にわたり実質的に大気圧で加熱することを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
前記放射線不透過剤がヨウ素であり、
前記加熱するステップが、物理蒸着を使用して、前記放射線不透過剤が前記ストラット外表面の少なくとも70パーセント(70%)を被覆するように前記放射線不透過剤を前記開放気泡発泡体上に堆積させることを含み、
前記開放気泡発泡体を洗浄すること、及び
前記開放気泡発泡体を乾燥させることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記物理蒸着後に前記開放気泡発泡体を通風するステップと、
前記開放気泡発泡体を加熱するステップであって、それにより任意の過剰なヨウ素を除去するステップと、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、米国特許法第119条(e)に基づき、あらゆる目的から参照により本明細書に援用される2010年3月12日に出願された「Radio Opaque,Reduced−Pressure Manifolds,Systems,and Methods」と題される米国仮特許出願第61/313,386号明細書の出願の利益を主張する。
【0002】
本明細書における開示は、概して医学的治療システムに関し、より詳細には、しかし限定としてではなく、放射線不透過性減圧マニホルド、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医療状況に応じて、とりわけ減圧療法による組織部位の肉芽形成の促進又は組織部位における流体のドレナージに、減圧が用いられ得る。本明細書で使用されるとき、特に指示されない限り、「又は」は相互排他性を必要とするものではない。減圧療法及び減圧によるドレナージの双方とも、多くの場合に減圧の組織部位へのマニホルディング、すなわち分配が関わる。
【発明の概要】
【0004】
例示的な非限定的実施形態によれば、患者における組織部位の治療用システムは、減圧を分配するための、且つ組織部位に隣接して配置されるマニホルドパッドを含み、このマニホルドパッドは放射線不透過性である。このシステムは、マニホルドパッド及び患者の表皮の一部分を被覆するためのシーリング部材をさらに含む。このシステムはまた、マニホルドパッドに減圧を供給するための、マニホルドに流体連結される減圧源も含む。マニホルドパッドは、外表面積及び複数の流路を有するマニホルド部材と、ラジオグラフィを使用した検出に十分な量でマニホルド部材上に堆積される放射線不透過剤とを含む。
【0005】
別の例示的な非限定的実施形態によれば、実質的に放射線不透過性のマニホルドパッドの製造方法は、ポリマー発泡体を含み、且つ外表面を有するマニホルド部材を提供するステップと、放射線不透過剤を提供するステップと、マニホルド部材及び放射線不透過剤を加熱容器において加熱するステップであって、それによりラジオグラフィを使用した検出に十分な量でマニホルド部材の外表面をコーティングするステップとを含む。
【0006】
別の例示的な非限定的実施形態によれば、組織部位において減圧を分配するためのマニホルドパッドは、ポリマー発泡体から形成された、且つ複数の流路とストラット外表面を有する複数のストラットとを有するマニホルド部材を含む。このマニホルドパッドは、ラジオグラフィを使用した検出に十分な量でマニホルド部材のストラットに連係される放射線不透過剤をさらに含み、及び複数のストラットのストラット外表面は、放射線不透過剤により少なくとも50パーセント(50%)被覆される。
【0007】
例示的実施形態の他の特徴及び利点は、以下の図面及び詳細な説明を参照することで明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、マニホルド部材と放射線不透過剤とを含むマニホルドパッドを用いる減圧治療システムの例示的な非限定的実施形態の概略図であり、一部は断面で示す。
図2図2は、図1における範囲2の拡大図である。
図3図3は、図1及び図2のマニホルドパッドからのストラットの断面図である。
図4図4は、マニホルド部材と放射線不透過剤とを含むマニホルドパッドの製造方法の例示的な非限定的実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の非限定的な例示的実施形態の詳細な説明では、本明細書の一部をなす添付の図面が参照される。それらの実施形態は、当業者による本発明の実施が可能となるよう十分詳細に説明され、及び本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく他の実施形態を利用し得ること、且つ妥当な構造的、機械的、電気的、及び化学的変更を行い得ることが理解される。本明細書に記載される実施形態の当業者による実施を可能とするのに不要な詳細を避けるため、説明では当業者に公知の特定の情報が省略されることもある。従って以下の詳細な説明は、限定する意味で解釈されてはならず、例示的実施形態の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0010】
ここで図1図3を参照すると、組織部位102、例えば創傷104の治療用減圧治療システム100が示される。創傷104には、限定なしに、開放創、外科的切開創、又は患部組織などの、組織に関する任意の異常が含まれ得る。減圧治療システム100は、創傷104を含む組織部位102との関連において示され、この創傷104は、表皮106、すなわち概して皮膚、及び真皮108の中を通り、下皮、すなわち皮下組織110にまで達する。減圧治療システム100を使用して組織、例えば任意の深さの創傷、並びに開放創を含む多くの異なる種類の創傷を治療し得る。組織部位102は、骨組織、脂肪組織、筋組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱、靱帯、又は任意の他の組織を含め、任意のヒト、動物、又は他の生物の生体組織であってよい。
【0011】
減圧治療システム100は、マニホルドパッド111と、シーリング部材116と、減圧サブシステム118とを含む。マニホルドパッド111はマニホルド部材112と放射線不透過剤114とを含む。マニホルドパッド111は、減圧を分配し、且つ放射線不透過性を可能にするよう機能する。放射線不透過性とは、電磁気、例えばX線又は他の放射線が特定の材料を通過する能力を相対的に有しないことを指す。放射線不透過剤114はマニホルド部材112と連係し、マニホルドパッド111を、ラジオグラフィを使用した位置特定に十分な放射線不透過性にする。例えば、放射線不透過剤114はマニホルド部材112上に堆積され、それにより結合され、又は他の方法で連係され得る。放射線不透過剤114は、例えば、物理蒸着によりマニホルド部材112上に堆積される放射線不透過性の気化性物質であってもよい。マニホルドパッド111については以下にさらに説明する。
【0012】
シーリング部材116は、組織部位102を覆う流体シールを提供する。「流体シール」、又は「シール」は、特定の減圧源又はサブシステムが関与することを所与として、所望の部位に減圧を維持するために適切なシールを意味する。減圧治療システム100は、シーリング部材116と患者の表皮106との間に流体シールを形成するための取付け装置120を含み得る。マニホルドパッド111は、シーリング部材116の組織側に向く(内側に向く)表面132と組織部位102との間に位置決め可能である。マニホルドパッド111の患者側に向く表面122が創傷104と向かい合う。
【0013】
本明細書で使用されるとき用語「マニホルド」は、概して、組織部位、例えば組織部位102への減圧の適用、そこへの流体の送達、又はそこからの流体の除去を補助するために提供される物質又は構造を指す。マニホルド部材112は、典型的には複数の流路又は通路を含み、マニホルド部材112の周囲に供給される流体を分配し、及びそこから流体を取り除く。複数の流路又は通路は互いに接続していてもよい。マニホルド部材112は、組織部位、例えば組織部位102と接触して配置すること、及び組織部位102に減圧を分配することが可能な生体適合性材料であってもよい。マニホルド部材の例としては、限定なしに、流路を形成するように構成された構造要素を有する装置、例えば、気泡質の発泡体、開放気泡発泡体、多孔質組織集合体、及び流路を含む、又は流路を含むように硬化させた発泡体を挙げることができる。従って、例えばマニホルド部材112は多孔質であってもよく、発泡体、ガーゼ、フェルトマット、又は他の材料から作製されてもよい。マニホルド部材112は多孔質材料、例えば発泡体から直接形成されても、又は多孔質に加工される材料、例えば穴が施された固形部材から形成されてもよい。
【0014】
一例示的実施形態において、マニホルド部材112は、複数の相互接続するストラット124又はフィラメントを含む多孔質発泡体である。ストラット124は、マニホルド部材112を通じる流路として働く複数の相互接続する気泡又は空隙126の形成に役立ち得る。非限定的な例として、多孔質発泡体はポリウレタン製の開放気泡網状発泡体、例えば、San Antonio,TexasのKinetic Concepts,Incorporatedにより製造されるGranuFoam(登録商標)材、又はSan Antonio,TexasのKinetic Concepts,Incorporatedにより製造されるGranufoam Silver(登録商標)材などであってもよい。別の非限定的な例として、同様にSan Antonio,TexasのKinetic Concepts,Incorporatedから入手可能なホワイトフォーム(White Foam)などのポリビニルアルコール発泡体が、状況によっては用いられ得る。マニホルドパッド111は、放射線不透過剤114を有するものであり、減圧を分配(又はマニホルディング)する。
【0015】
シーリング部材116は第1の表面130と組織側に向く(内側に向く)表面132とを含む。シーリング部材116は、シーリング部材116の一部分が創傷104の周縁を越えて延在して延長部134を形成する形でシーリング部材116が創傷104に重なるようにサイズが整えられ得る。シーリング部材116は、流体シールを提供する任意の材料であってよい。シーリング部材116は、例えば不透過性又は半透性のエラストマー性材料であってもよい。「エラストマー性」は、エラストマーの特性を有することを意味する。これは概して、ゴム様の特性を有する高分子材料を指す。より具体的には、ほとんどのエラストマーが100%より大きい極限伸び及び著しい大きさの弾力性を有する。材料の弾力性とは、その材料が弾性変形から回復する能力を指す。エラストマーの例としては、限定はされないが、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエン単量体、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ポリウレタン、EVAフィルム、コポリエステル、及びシリコーンを挙げることができる。シーリング部材材料のさらなる具体例としては、シリコーンドレープ、3M Tegaderm(登録商標)ドレープ、Avery Dennisonから入手可能なものなどのアクリルドレープが挙げられる。
【0016】
取付け装置120を使用して、シーリング部材116を患者の表皮106又は別の層、例えばガスケット若しくはさらなるシーリング部材に保持し得る。取付け装置120は様々な形をとり得る。例えば、取付け装置120は、シーリング部材116の延長部134に適用される医学的に許容可能な感圧性接着剤であってもよい。或いは、感圧性接着剤はシーリング部材116の全幅に及んでもよい。代替的な取付け装置としては、限定はされないが、加熱活性化接着剤、シーリングテープ、両面シーリングテープ、ペースト、親水コロイド、ハイドロゲル、フック、又は縫合糸を挙げることができる。
【0017】
減圧サブシステム118は減圧源136を含み、これは多くの異なる形をとることができる。減圧源136は減圧を提供し、真空ポンプ、壁面吸い込み、又は他の供給源などの、減圧を供給する任意の装置であってよい。組織部位102に加えられる減圧の大きさ及び性質は、典型的には用途に応じて異なり得るが、減圧は、典型的には−5mmHg〜−500mmHg、及びより典型的には−100mmHg〜−300mmHgであり得る。例えば、限定なしに圧力は、−90、−100、−110、−120、−130、−140、−150、−160、−170、−180、−190、又は−200mmHgであり得る。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「減圧」は概して、治療に供されている組織部位における周囲圧力より低い圧力を指す。ほとんどの場合、この減圧は、患者が居るところの大気圧より低いものとなり得る。或いは減圧は、組織部位における静水圧より低いものであり得る。送り込まれる減圧は一定であっても、変化してもよく(パターン化されて、又はランダムに)、連続的に送られても、又は間欠的に送られてもよい。組織部位に加えられる圧力の説明に用語「真空」及び「負圧」が用いられ得るが、組織部位に加えられる実際の圧力は、通常完全な真空と関連付けられる圧力より大きい圧力であり得る。本明細書における使用に合わせて、減圧又は真空圧の増加は、典型的には絶対圧力の相対的な低下を指す。特に指示されない限り、本明細書に記載される圧力の値はゲージ圧である。
【0019】
減圧導管138が減圧源136及び減圧インタフェース146を流体連結する。減圧源136により発生した減圧は、減圧導管138によりキャニスタ142に、及び減圧インタフェース146に送られる。一例示的実施形態において、減圧インタフェース146は、San Antonio,TexasのKinetic Concepts,Inc.から入手可能なTRAC(登録商標)テクノロジーポートである。減圧インタフェース146により、減圧をシーリング部材116の下側の内側部分内に実現すること、及びマニホルド部材112内に実現することが可能となる。この例示的実施形態では、エルボポート148がシーリング部材116を通ってマニホルド部材112まで延在するが、数多くの構成が可能である。
【0020】
動作時、マニホルドパッド111は組織部位102、例えば創傷104に近接して配置され得る。シーリング部材116は、延長部134が創傷102の周縁を越えて延在するようにマニホルドパッド111を覆って配置され得る。延長部134は取付け装置120によって患者の表皮106に固定することができ、それにより患者の表皮106の一部分及びマニホルドパッド111を覆う流体シールが形成される。次に減圧インタフェース146が、まだ設置されていない場合には適用され得る。減圧導管138を使用して減圧インタフェース146及び減圧源136が流体連結される。
【0021】
減圧サブシステム118が駆動され得る。減圧下、流体は組織部位102からマニホルドパッド111に、及び減圧導管138を通ってキャニスタ142に送られ得る。十分な治療期間後、シーリング部材116が取り外され、マニホルドパッド111が取り出され得る。
【0022】
マニホルドパッド111は時に取り出しが困難なことがあり、これは組織が内方成長すること、及び時にマニホルドパッド111が、組織部位102の小さい一部分に嵌め込むため医療提供者により切断されることに起因する。時にマニホルドパッド111は極めて複雑な形状に切断され、深い創傷の裂け目に嵌め込まれる。この種の状況では、マニホルドパッド111のあらゆる部分が組織部位102から取り出されたことを確実にすることが求められ得る。そのような場合に、マニホルドパッド111のあらゆる部分が取り出されたことを医療提供者がラジオグラフィを用いて確認することが、放射線不透過剤114によって可能となる。ラジオグラフィを用いると、マニホルドパッド111のいずれかの部分が残っている場合には、マニホルドパッド111の放射線不透過剤114が検出可能なレベルでX線像又は他の結果に現れる。マニホルドパッド111の一部が残っている場合、それは、外科的インターベンション、例えばシャープデブリードマン、又は他の技法を用いて取り除かれ得る。
【0023】
マニホルドパッド111の任意の残っている部分の位置を特定するためには、マニホルド部材112が放射線不透過剤114で実質的に被覆されなければならない。加えて、放射線不透過剤114は十分な放射線不透過性を有しなければならない。マニホルド部材112は外表面積、すなわちストラット外面範囲を有し、これはマニホルド部材112のうち、流体に浸されたときに流体に接触する部分である。外表面積は少なくとも50%の被覆、少なくとも70%の被覆、少なくとも90%の被覆、100%の被覆、又は50〜100%の間のいずれかの大きさであり得る。平均百分率は、ストラットの外面の表面積を近似し、及びストラットの外面範囲を決定し、及び放射線不透過剤により被覆されるストラットの外面範囲を決定することにより決定され得る。一つの例示的な非限定的例として、ストラットは写真に撮って計測され得る。ストラットの外面の表面積が決定され、放射線不透過剤で被覆されたストラットの表面積が決定され得る。次に被覆率が決定され得る。図3では、マニホルド部材112のストラット124の外表面積は実質的に放射線不透過剤114で被覆されている。
【0024】
最初に減圧治療システム100との関連においてマニホルドパッド111を示した。しかしながら、マニホルドパッド111は、減圧を伴う、又は伴わない他の状況下で用いられ得ることが理解されなければならない。ここでマニホルドパッド111についてさらに詳細に説明する。マニホルドパッド111の調製には、数多くの手法をとることができる。温度及び時間が、マニホルド部材112上に堆積する放射線不透過剤114の量に影響を及ぼす2つの変数である。可能性のある他の機能に加え、得られるマニホルドパッド111は抗菌部材として働き得る。ここで、マニホルドパッド111に関連するいくつかの非限定的な例を提供する。
【実施例】
【0025】
実施例1
図1図4、主として図4を参照して、マニホルドパッド111の製造方法200の一つの非限定的な理論上の例を提供する。最初に、202に示されるとおり、マニホルド部材112及び放射線不透過剤114を提供する。
【0026】
マニホルド部材112は、マニホルド部材について前述した材料のいずれであってもよい。さらなる非限定的な例としては、KCIから入手可能なGranufoam(登録商標)材又はGranufoam(登録商標)silver材が挙げられる。次に気化性形態又は溶液ベースの形態の放射線不透過剤材料114をマニホルド部材112に適用する。例えば、分子状ヨウ素(I)を放射線不透過剤又は放射線不透過性の気化性物質として用い得る。
【0027】
放射線不透過剤114(例えば、放射線不透過性の気化性物質)は、マニホルド部材112に対し、例えばストラット124上に、物理蒸着などの任意の好適な技法を用いて適用される。従って方法200では、204に示されるとおり、マニホルド部材112と放射線不透過剤114とを加熱して蒸着させる。放射線不透過剤114は同様に他の方法でも適用され得る。用いる手法に関わらず、相互接続するストラット124の一部分、又はその実質的な大部分、例えば>80%又は>90%又は>95%が、放射線不透過剤114で被覆される。
【0028】
マニホルド部材112及び放射線不透過剤114が置かれるチャンバの温度は、摂氏約70度〜90度、及びより典型的には摂氏80度〜90度の高温まで昇温される。この高温は第1の期間、例えば3〜6時間、及びより典型的には4〜5時間にわたり維持される。圧力は実質的に大気圧、例えば約101.325kPa(海面位)に維持される。
【0029】
第1の期間の後、206に示されるとおり、マニホルド部材112はここでマニホルド部材112の少なくとも一部と連係した放射線不透過剤114を有し、そのマニホルド部材112を取り出して、通風又は冷却によりほぼ室温、例えば概して68°F(20℃)〜77°F(25℃)の範囲にする。208に提案されるとおり、次にマニホルド部材112を再びチャンバに置き、典型的には摂氏70度〜110度の範囲、及びより典型的には、この例では摂氏約80度の高温に第2の期間にわたり加熱して、過剰なヨウ素、例えば未結合のヨウ素を取り除く。この時点におけるこの例の結果は、約27〜31%(マニホルドパッドの質量)のヨウ素が放射線不透過剤114としてマニホルド部材112に堆積していなければならない。
【0030】
次にステップ210でマニホルド部材112は洗浄され得る。例えば、マニホルド部材112を水洗液に2又は3時間入れてもよい。質量損失をモニタし得る。次にステップ212で放射線不透過剤114を有するマニホルド部材112を乾燥し、マニホルドパッド111としての使用準備が整う。マニホルドパッド111は、減圧を分配するよう機能し、抗菌体として働き、及び放射線不透過性である。
【0031】
実施例2
第2の非限定的な例では、マニホルド部材112としてGranufoam(登録商標)材のサンプルを使用した。このサンプルを、放射線不透過剤114又は放射線不透過性の気化性物質の形成に用いた固体ヨウ素と共にチャンバに置いた。サンプル及びヨウ素は、チャンバ内に表1に示すとおりの様々な温度で2時間保持した。固体ヨウ素を使用したため、手順はドラフトで実施した。取り出すと、マニホルド部材112はここでヨウ素が堆積しており、それを室温で一晩通風させた。通風後、サンプルを100℃に15分間加熱して未結合のヨウ素、又は過剰なヨウ素を除去した。ヨウ素のGranufoam(登録商標)材との結合に対する温度の影響を以下の表1に示す。ラジオグラフィを使用して、得られたサンプルの放射線不透過性を確認した。
【0032】
【0033】
実施例3
第3の非限定的な例では、マニホルド部材112として銀を含む発泡体のサンプル、例えばGranufoam(登録商標)−Silverを使用した。サンプルを、放射線不透過剤114又は放射線不透過性の気化性物質としての固体ヨウ素と共にチャンバに置いた。サンプル及び放射線不透過性の気化性物質は、チャンバ内に表2に示すとおりの様々な温度で2時間保持した。ヨウ素の堆積に加え、銀及びヨウ素が関わる化学反応が起こり、ヨウ化銀(AgI)塩になる。この塩は、マニホルド部材112が洗浄されても、大部分の放射線不透過剤をその場に保つのに役立つ。
【0034】
取り出すと、発泡体サンプルはここでそれに連係したヨウ素を有し、その発泡体サンプルを室温で一晩通風した。通風後、サンプルを100℃に15分間加熱して未結合のヨウ素、又は過剰なヨウ素を除去した。ヨウ素とGranufoam(登録商標)Silver材との結合に対する温度の影響を表2に示す。ラジオグラフィを使用して、得られたサンプルの放射線不透過性を確認した。
【0035】
【0036】
実施例4
第4の非限定的な例では、上記の実施例2及び実施例3、すなわちGranufoam(登録商標)及びGranufoam(登録商標)Silverの放射線不透過剤114としてのヨウ素との間の100℃での反応に従い調製したGranufoam(登録商標)材のサンプルを提供した。サンプルを脱イオン水中に3時間置いた。サンプルを水から取り出し、セパレータを備える遠心機の円錐管に置き、3000r.p.mで30分間遠心した。次に、モニタしている質量から一定の重量に達したことが示されるまで、サンプルを60℃で乾燥した。未処理の(ヨウ素で処理していない)マニホルド部材、例えばGranufoam(登録商標)及びGranufoam(登録商標)−Silverのサンプルを、対照としてとった。元の発泡体重量並びに水処理及び乾燥後の発泡体重量を表3に示す。
【0037】
表3が示すとおり、100℃でヨウ素処理したGranufoam(登録商標)材のサンプルは、水での処理後にその質量の約18%が失われた。Granufoam(登録商標)Silverのサンプルはその重量の僅か約3.5%が失われたに過ぎなかった。未処理のGranufoam(登録商標)材及びGranufoam(登録商標)−Silver材の重量は水での処理に影響を受けない。ラジオグラフィを使用して、得られたサンプルの放射線不透過性を確認した。
【0038】
【0039】
Granufoam(登録商標)ヨウ素発泡体は、最初は発泡体によるヨウ素の物理的吸収が主因となって重量が増加するが、次にヨウ素の一部が水により除去され、そのため水でリンスした後は軽くなる。Granufoam(登録商標)−Silver−ヨウ素の場合、ヨウ素の物理的吸収に加え、銀及びヨウ素が関わる化学反応が起こってヨウ化銀(AGI)塩となる。この塩は不溶性で、洗浄の間に除去されず、しかし他の部分、例えば吸収された部分が、少なくとも一部は除去され得る。
【0040】
実施例5
マニホルド部材112、例えば発泡体により吸収される放射線不透過剤114、例えばヨウ素の量は、反応温度及び曝露時間の双方を変えることにより調整、又は調節することができる。第5の非限定的な例は、少なくとも一部においてこの効果を実証する。発泡体サンプルのGranufoam(登録商標)発泡体及びGranufoam(登録商標)Silver発泡体を提供した。発泡体サンプルを、放射線不透過剤としてのヨウ素と共にチャンバに入れた。チャンバの圧力は実質的に大気圧レベルに維持した。次に、発泡体サンプルをチャンバから取り出し、上記で実施例2に説明する手順に従い通風した。
【0041】
表4に示すとおり、概して反応温度及び曝露時間が増加するほど、発泡体サンプルにおけるヨウ素の吸収が多くなる。サンプルの各々は、処理したGranufoam(登録商標)Silverサンプルである。ラジオグラフィを使用して、得られたサンプルの放射線不透過性を確認した。特に、発泡体はブタの皮膚上に置かれ、動物の下にX線フィルムが位置した。以下のX線パラメータ:74kVp、76〜80mAhで像を取得した。
【0042】
【0043】
実施例6
先述のとおり、マニホルドパッド111は微生物の増殖を阻害する働きをし得る。ある試験において、マニホルドパッド111の例示的な非限定的例の抗菌特性を検討した。この例では、Granufoam(登録商標)発泡体及びGranufoam(登録商標)−Silver発泡体をマニホルド部材112として使用して作製した、及びヨウ素を放射線不透過剤114として使用したマニホルドパッド111のサンプルを使用した。実験では、微生物増殖の阻害領域を計測した。例えば処理したGranufoam(登録商標)発泡体及びGranufoam(登録商標)−silver発泡体の、マニホルドパッド111のサンプルを、厚さ5mm及び直径8mmの断片に予め切断し、エチルアルコールで洗浄した。乾燥したサンプルの重量は0.009〜0.01gの範囲で様々であった。発泡体サンプルをチャンバに、固体ヨウ素の層の約3センチメートル上方において90℃で2時間置いた。ヨウ素との反応後の発泡体サンプルの質量は、0.022〜0.023gの範囲であった。サンプルの一部を滅菌水で2時間洗浄し、一晩乾燥させた。洗浄及び乾燥したサンプルの重量は、0.012〜0.013gの範囲であった。
【0044】
American Type Culture Collection(ATCC)の培養物である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC(登録商標)番号#33591)(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)種)及び大腸菌(ミグラ)カステラーニ・アンド・シャルマース(Escherichia coli(Migula)Castellani and Chalmers)(ATCC(登録商標)番号#10536)を含水させて、次に増殖プレートにストリーキングし、ブロス溶液中37℃で18時間接種した。これらの生物は、Manassas,VirginiaのAmerican Type Culture Collection(www.atcc.org)から入手可能である。2つの菌株の各々について2〜4×10CFU/mlに達するまでプレートをインキュベートした。試験を先に進める前に、API同定ストリップを使用して細菌種を確認した。
【0045】
滅菌ピンセットを使用して発泡体サンプルを100mmプレートに移した。発泡体サンプルを滅菌鉗子で優しく押して、各発泡体サンプルが寒天表面に付着したことを確かめた。125μlの生理食塩水を発泡体サンプルの上面に投与して含水させ、抗菌剤をフラッシュして発泡体に通した。プレートを室温に約30分間保持した。次にプレートを反転させた位置にして37℃で18時間インキュベートした。インキュベーション後、各皿に関してクリアな領域を計測した。細菌の増殖が起こらなかった領域(阻害領域)が、細菌増殖の阻害に必要な薬物の最小濃度に対応した。対応してG(+)及びG(−)微生物に有効な標準として30μgのバンコマイシン及び10μgのゲンタマイシンをとった。平均阻害領域を表5に示す。マニホルドパッド(この場合、ヨウ素で処理した発泡体サンプル)は極めて高い抗菌効果−抗生物質標準の効果に優る−を示す。
【0046】
【0047】
ヨウ素が好ましいが、他の放射線不透過剤114を使用してもよい。例えば、臭素、ヨウ素の臭素との組み合わせ、及び高原子番号を有する何らかの他の元素(バリウム塩)が放射線不透過性を提供し得る。物理蒸着を使用してもよく、本例ではそれが示されるが、また放射線不透過剤を溶液ベースの形態で使用して、水洗液で適用してもよい。高含量のヨウ素の何らかのポリマーを使用してもよい。このポリマーを有機溶媒に溶解し、コーティングとしてGranufoam(登録商標)材に適用することができる。同様に、他の放射線不透過性の生体適合性材料、例えば、チタン、タンタル、ストロンチウムを、金属塩又は結合塩のいずれかで、コーティングに作用する好適な方法を用いてマニホルド部材に適用することができる。別の例示的な非限定的実施形態では、マニホルド部材はポリビニルアルコール発泡体、例えばホワイトフォーム(White Foam)であってもよく、使用し得るが、しかしヨウ素又は他の放射線不透過剤は、典型的には製造中に適用され得る。
【0048】
本発明及びその利点は、特定の例示的な非限定的実施形態との関連において開示したが、様々な変更、置き換え、並べ換え、及び改変を、添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの本発明の範囲から逸脱することなく行い得ることは理解されなければならない。いずれか一つの実施形態に関係して説明される任意の特徴が、任意の他の実施形態にも適用可能であり得ることは理解されるであろう。
【0049】
上記に説明する利益及び利点は一実施形態に関連することもあり、又はいくつかの実施形態に関連することもあることは理解されるであろう。さらに、「一つの(an)」項目に対する言及が、そうした項目の1つ以上を指すことが理解されるであろう。
【0050】
本明細書で説明する方法のステップは、任意の好適な順序で実施されても、又は適切な場合には同時に実施されてもよい。
【0051】
適切な場合には、上記に説明する例のいずれかの態様を、他の説明される例のいずれかの態様と組み合わせることで、同等の又は異なる特性を有し、且つ同じ又は異なる問題に対処するさらなる例を形成してもよい。
【0052】
上記の好ましい実施形態の説明は単に例として提供されるに過ぎず、当業者により様々な変形例が作成され得ることは理解されるであろう。上記の明細書、例及びデータは、本発明の例示的実施形態の構造及び使用についての完全な説明を提供する。本発明の様々な実施形態が、ある程度の具体性をもって、又は1つ以上の個別の実施形態を参照して上記に説明されるが、当業者は、特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく開示される実施形態の変形例を数多く作成し得る。
図1
図2
図3
図4