特許第6075650号(P6075650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6075650皮膚及び/又は粘膜の治療及び/又はケアに有用なペプチド並びに化粧品若しくは医薬組成物におけるそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075650
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】皮膚及び/又は粘膜の治療及び/又はケアに有用なペプチド並びに化粧品若しくは医薬組成物におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20170130BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20170130BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20170130BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20170130BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   C07K7/06ZNA
   A61K8/64
   A61K37/02
   A61P17/00
   A61Q19/00
【請求項の数】15
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2014-500416(P2014-500416)
(86)(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公表番号】特表2014-510090(P2014-510090A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2012055250
(87)【国際公開番号】WO2012130771
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月19日
(31)【優先権主張番号】201130441
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】ES
(31)【優先権主張番号】61/467,643
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510230218
【氏名又は名称】リポテック,エセ.ア.
【氏名又は名称原語表記】LIPOTEC,S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア アントン,ホセ マリア
(72)【発明者】
【氏名】アルミニャーナ ドメネク,ヌリア
(72)【発明者】
【氏名】フェルーレ モンティエル,アントニオ ヴィセンテ
【審査官】 植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−536205(JP,A)
【文献】 特表2008−537962(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/091893(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/00−7/66
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
−A−AA−AA−AA−AA−AA−R (I)
のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩において、
AAは、−Ser−、−Thr−及び−Tyr−からなる群から選択され;
AAは、−Pro−及び−Val−からなる群から選択され;
AAは、−Ala−からなる群から選択され;
AAは、−Glu−、−Gly−及び−Val−からなる群から選択され;
AAは、−Gly−からなる群から選択され;
AAは、−Gln−、−Gly−、−His−及び−Pro−からなる群から選択され
は、H、置換又は非置換の非環式脂肪族基及びR−CO−からなる群から選択され、ここで、Rは、H及び置換又は非置換の非環式脂肪族基からなる群から選択され;
は、−NR及び−Oらなる群から選択され、ここで、R及びRは、独立して、H、置換又は非置換の非環式脂肪族基からなる群から選択され;
ただし、R及びRは、αアミノ酸ではない;
ことを特徴とする、ペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドにおいて、Rが、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイル及びパルミトイルからなる群から選択され、AAが、−L−Tyr−、AAが、−L−Pro−、AAが、−L−Ala−、AAが、−L−Glu−、AAが、−L−Gly−、AAが、−L−Gln−であり、Rが、−NR又は−ORであり、ここで、R及びRは、独立して、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシル及びヘキサデシルから選択されることを特徴とする、ペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチドにおいて、Rが、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイル及びパルミトイルからなる群から選択され、AAが、−L−Ser−、AAが、−L−Val−、AAが、−L−Ala−、AAが、−L−Val−、AAが、−L−Gly−、AAが、−L−Gln−であり、Rが、−NR又は−ORであり、ここで、R及びRは、独立して、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシル及びヘキサデシルから選択されることを特徴とする、ペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチドにおいて、Rが、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイル及びパルミトイルからなる群から選択され、AAが、−L−Ser−、AAが、−L−Pro−、AAが、−L−Ala−、AAが、−L−Gly−、AAが、−L−Gly−、AAが、−L−Pro−であり、Rが、−NR又は−ORであり、ここで、R及びRは、独立して、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシル及びヘキサデシルから選択されることを特徴とする、ペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩において、皮膚及び/又は粘膜の治療及び/又はケアでの使用を目的とすることを特徴とする、一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩において、AQP−3の調節での使用を目的とすることを特徴とする、一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩において、コラーゲン合成の刺激での使用、あるいは前記皮膚及び/又は粘膜の水和での使用、あるいは前記皮膚バリア機能の改善での使用、あるいはまた、前記皮膚及び/又は粘膜の上皮再形成及び/又は治癒での使用を目的とすることを特徴とする、一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩において、前記皮膚の老化及び/又は光老化の徴候の治療、予防及び/又は修復での使用を目的とすることを特徴とする、ペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩において、乾癬、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、湿疹、海綿質状態、浮腫、遺伝性魚鱗癬、老人性乾皮症、膣の乾燥、手掌角化症、足底角化症、シワ、表情ジワ、ストレッチマーク、皮膚の老化、皮膚の光老化、皮膚癌、治癒若しくは上皮再形成障害、慢性潰瘍、挫瘡、ケロイド、肥厚性瘢痕、蜂巣炎、オレンジピールスキン、弾性線維症、光線性弾性線維症、角化症、酒さ、毛細血管拡張症、赤色膿疹、眼の下の腫れ、眼の周りのクマ、静脈瘤、脱毛症、歯肉炎、歯周炎、炎症過程及び水泡性類天疱瘡からなる群から選択される前記皮膚及び/又は粘膜の病態、障害及び/又は疾患の前記治療及び/又はケアでの使用を目的とすることを特徴とする、一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を美容的又は薬学的に有効な量で含むと共に、少なくとも1種の美容的若しくは薬学的に許容可能な賦形剤又は補助剤を含有することを特徴とする、美容又は医薬組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物において、一般式(I)の前記ペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩が、リポソーム、混合リポソーム、オレオソーム、ニオソーム、エトソーム、ミリカプセル、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノ構造脂質担体、スポンジ、シクロデキストリン、小胞、ミセル、界面活性剤の混合ミセル、界面活性剤−リン脂質混合ミセル、ミリスフェア、マイクロスフェア、ナノスフェア、リポスフェア、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ミニ粒子、ミリ粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子及び固体脂質ナノ粒子からなる群から選択される美容若しくは医薬用送達系又は徐放系に組み込まれるか、あるいは、タルク、ベントナイト、シリカ、デンプン及びマルトデキストリンからなる群から選択される、美容的若しくは薬学的に許容可能な固体有機ポリマー又は固体無機支持体上に吸着されていることを特徴とする、組成物。
【請求項12】
請求項10または11に記載の組成物において、クリーム、多相エマルジョン、無水組成物、水性分散液、オイル、ミルク、バルサム、フォーム、ローション、ジェル、クリームジェル、水性アルコール溶液、水性グリコール溶液、ヒドロゲル、リニメント、血清、石鹸、シャンプー、コンディショナー、しょう液、軟膏、ムース、ポマード、粉末、棒状製剤、ペンシル型製剤、スプレー、エアロゾル、カプセル、ゼラチンカプセル、ソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、糖衣錠、顆粒、チューイングガム、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル、多糖フィルム、ゼリー及びゼラチンからなる群から選択される製剤中に提供されることを特徴とする、組成物。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の組成物において、目元コンシーラー、メークアップファンデーション、メイク落としローション、メイク落としミルク、アイシャドウ、口紅、リップグロス、リッププロテクター、及びパウダーからなる群から選択される製品に組み込まれていることを特徴とする、組成物。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の組成物において、一般式(I)の前記ペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩が、布、不織布又は医療装置に組み込まれていることを特徴とする、組成物。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項に記載の組成物において、他のAQP−3調節剤、アクアポリン調節剤、アクアポリンファミリー由来のタンパク質、他のコラーゲン合成刺激剤、PGC−1α合成を調節する薬剤、PPARγの活性を調節する薬剤、脂肪細胞のトリグリセリド含有量を増加又は減少させる薬剤、脂肪細胞分化を刺激又は遅延させる薬剤、脂肪分解剤又は脂肪分解を刺激する薬剤、抗セルライト剤、脂肪生成剤、アセチルコリン受容体凝集の阻害剤、筋収縮の阻害剤、抗コリン作動薬、エラスターゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、メラニン合成の刺激若しくは阻害剤、美白若しくは脱色剤、着色促進剤、セルフタンニング剤、老化防止剤、NO−シンターゼ阻害剤、5α−レダクターゼ阻害剤、リシル−及び/若しくはプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、酸化防止剤、遊離ラジカル捕捉剤及び/若しくは大気汚染からの保護剤、反応性カルボニル種捕捉剤、抗糖化剤、抗ヒスタミン剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、乳化剤、皮膚軟化剤、有機溶媒、液体噴霧剤、スキンコンディショナー、湿潤剤、水分を保持する物質、αヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸、保湿剤、表皮加水分解酵素、ビタミン、アミノ酸、タンパク質、顔料若しくは着色剤、色素、生体ポリマー、ゲル化ポリマー、増粘剤、界面活性剤、軟化剤、結合剤、保存料、シワ防止剤、眼の下の腫れを軽減若しくは治療することができる薬剤、剥離剤、落屑剤、角質溶解剤、抗菌剤、抗真菌剤、静真菌剤、殺菌剤、静菌剤、真皮若しくは表皮の高分子合成を刺激する薬剤及び/又はそれらの分解を阻害若しくは予防することができる薬剤、エラスチン合成刺激剤、デコリン合成刺激剤、ラミニン合成刺激剤、デフェンシン合成刺激剤、シャペロン合成刺激剤、cAMP合成刺激剤、熱ショックタンパク質、HSP70合成刺激剤、熱ショックタンパク質合成刺激剤、ヒアルロン酸合成刺激剤、フィブロネクチン合成刺激剤、サーチュイン合成刺激剤、脂質及び角質層成分の合成刺激剤、セラミド、脂肪酸、コラーゲン分解を阻害する薬剤、エラスチン分解を阻害する薬剤、セリンプロテアーゼの阻害剤、線維芽細胞増殖の刺激剤、角化細胞増殖の刺激剤、脂肪細胞の刺激剤、メラノサイト増殖の刺激剤、角化細胞分化の刺激剤、アセチルコリンエステラーゼの阻害剤、皮膚弛緩剤、グリコサミノグリカン合成刺激剤、抗過角化症剤、面皰分解剤、抗乾癬剤、抗皮膚炎剤、抗湿疹剤、DNA修復剤、DNA保護剤、安定化剤、抗掻痒剤、敏感肌の治療及び/又はケアのための薬剤、固化剤、再緻密化剤、再構築剤、抗ストレッチマーク剤、結合剤、皮脂産生の調節剤、抗発汗剤、治癒刺激剤、治癒共補助剤、上皮再形成の刺激剤、上皮再形成の共補助剤、サイトカイン成長因子、鎮静剤、抗炎症剤、麻酔薬、毛細血管循環及び/若しくは微小循環に作用する薬剤、血管新生の刺激剤、血管透過性の阻害剤、ベノトニック剤、細胞代謝に作用する薬剤、真皮−表皮接合を改善する薬剤、発毛誘発剤、発毛阻害若しくは抑制剤、香料、キレート剤、植物エキス、精油、海産物エキス、生物発酵プロセスから得られる薬剤、無機塩、細胞エキス、日焼け止め並びに紫外線A及び/又はBに対して作用する有機若しくは無機光保護剤、あるいはこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の補助剤を美容的又は薬学的に有効な量でさらに含むことを特徴とする、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクアポリン−3(AQP−3)を調節することができるペプチド、並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜中でのコラーゲン合成を刺激することができるペプチド、並びに皮膚及び/若しくは粘膜の治療並びに/又はケアに有用なこれらのペプチドを含有する美容若しくは医薬組成物、好ましくはAQP−3の調節及び/若しくはコラーゲン合成の刺激によって改善する、又は予防される皮膚及び/若しくは粘膜の病態、疾患及び/若しくは病状の治療並びに/又はケアを目的とする、上記美容若しくは医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
表皮は、皮膚の最も外側の層である。その細胞は、地球上での生活を可能にするのに不可欠な防水機構のバリアを付与するように分化する。外部と接触するため、表皮は、身体中の他のどの組織よりも頻繁かつ直接に損傷を受けることから、その組織化は、修復及び再生する作用機構の能力に左右される。
【0003】
表皮は、3つの層すなわち主要層(基底層、顆粒層及び角質層)を有する層化組織であるが、これは、角化細胞の増殖と分化の間の堅固な均衡によるものである。基底層中の細胞が分化を経ると、その増殖能力を失い、徐々に角質層に接近する。基底層は、角化細胞からなり、その特有の活性は、ケラチンの合成であるが、ケラチンは、中間径フィラメントを形成し、表皮にその硬度を付与する原因となるタンパク質である。有棘細胞の数層がこの基底層に存在し、有棘層の上に顆粒層が位置する。顆粒層は、表皮の不浸透性を維持するのに不可欠であり、これが、その最も重要な機能である。顆粒層は、さらに、代謝的に活性の細胞と死細胞との間に境界を標識する。こうした死細胞は、細胞小器官が次第に消滅して、それらが外部に向かって移動すると共にケラチンによってその細胞質が充填される結果生じるものであり、細胞は、密に詰まったケラチンで完全に充填されて、均一な比率に縮小される。これらの死細胞は、基底層から出現してから約1週間後に皮膚の表面から剥がれる。角質層のこの特有の組織は、皮膚を保護する役割を果たし、また、既定量の水分を保持しながら、一定レベルの柔軟性を維持することも可能にしている。角質層の水和は、外観、代謝、力学的性質、及びバリアとしての皮膚の機能を決定する上で必須である。
【0004】
皮膚の老化は、2つの異なるプロセス、すなわち内因性老化と外因性老化を含む複合プロセスである。前者は、遺伝的因子によるものであるため、皮膚だけではなく、身体のあらゆる器官に影響を及ぼす。外因性老化は、環境因子、例えば、汚染物質、煙草の煙、紫外線、風、寒冷気候などへの暴露によって起こる。2つのプロセスは、外部にさらされる皮膚の部位で重なり、また、化学的プロセスを共有する。加齢及び皮膚の老化は、皮膚の外観の目に見える変化の現れ、並びに、手触りで知覚される変化の現れであると理解され、例えば、限定されないが、以下のものが挙げられる:皮膚の不連続性の発生、例えば、シワ、小ジワ、表情ジワ、ストレッチマーク、肌溝、深いシワ、でこぼこ若しくは肌荒れ、毛穴の拡大、水分の低下、弾力性の低下、ハリの減少、滑らかさの減少、変形からの回復能力の低下、反発性の低下、頬のたるみなどの皮膚のたるみ、眼の下のたるみの出現又は二重あごの出現、中でも、皮膚の色の変化、例えば、斑痕、赤変、クマ、あるいは、特に年齢によるシミ若しくはソバカスなどの皮膚色素沈着領域の出現、分化異常、角化高進、弾性線維症、角化症、脱毛、オレンジピールスキン、コラーゲン構造の減少、並びに角質層、真皮、表皮、血管系(例えば、クモ状静脈若しくは毛細血管拡張症の出現)又は皮膚近傍の組織のその他の組織学的変化。
【0005】
老化の最も明らかな徴候の1つは、コラーゲンの減少及び皮膚の弾力性低下の両方に起因するシワの出現である。超微細構造レベルでは、皮膚のコラーゲンネットワークは、総コラーゲン含量の減少にもかかわらず、加齢と共に密度が増してくる。弾性線維は、次第に衰え、断片に分解して、皮膚の弾性の減少及びシワの出現を引き起こす。このプロセスは、人生の比較的早い段階で開始し、40歳を超えると加速する。女性は、閉経後毎年2.1%のコラーゲンが失われていき、閉経から5年後には30%のコラーゲンが失われることが立証されている[Brincat M.et al.,“A study of the decrease of skin collagen content,skin thickness,and bone mass in the postmenopausal woman”Obstet.Gynecol.,(1987),70,840−845]。従って、シワ及び小ジワの量の増加、皮膚の弾力性の低下がみとめられると、女性は、「乾燥肌」又は緊皮の感触を覚える。
【0006】
このプロセスは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のファミリーの作用によりさらに悪化するが、これは、細胞外マトリックス(コラーゲン及びエラスチン)並びに基底板の高分子成分を集合的に分解することができるタンパク質分解酵素(エンドプロテイナーゼ)のファミリーである。コラーゲン線維の分解は、特に、日光にさらされる部位、例えば、顔、耳、ネックライン、頭皮、手及び腕の皮膚において、たるみ及び皮膚の出現を引き起こし、これは望ましくない。
【0007】
さらに、紫外線、特にUVA及びUVBへの長時間の暴露は、MMP合成を刺激して、コラーゲンを破壊する[Fisher G.J.et al.,“Pathophysiology of premature skin aging induced by ultraviolet light”.New Eng.J.Med.,(1997),337,1419−1429;Fisher G.J.,“Ultraviolet irradiation increases matrix metalloproteinase−8 protein in human skin in vivo”.J.Invest.Dermatol.,,(2001),117,219−226]が、これは、光老化の主な原因の1つである。
【0008】
皮膚及び/又は粘膜の様々な病態、障害及び疾患の原因の1つが、低レベルのコラーゲン(その合成の低減、又はその分解の増大のいずれかによる)にあることがみいだされている。中でも、特に以下を挙げることができる:慢性潰瘍、乾癬[Flisiak I.et al.,“Effect of psoriasis activity on metalloproteinase−1 and tissue inhibitor of metalloproteinase−1 in plasma and lesional scales”.Acta Derm Venereol.,(2006),86,17−21]、歯肉炎及び歯周炎などの口腔病態、皮膚癌[Kerkelae E. et al.,” Matrix metalloproteinases in tumor progression:focus on basal and squamous cell skin cancer”.Exp Dermatol.,(2003),12,109−125]、転移[Sato H.et al.,“Roles of membrane−type matrix metalloproteinase−1 in tumor invasion and metastasis”.Cancer Sci.,(2005),96,212−217]、皮膚炎 [Katoh N.et al.,“Increased levels of serum tissue inhibitor of metalloproteinase−1 but not metalloproteinase−3 in atopic dermatitis”.Clin.Exp.Immunol.,(2002),127,283−288]、酒さ、毛細血管拡張症、赤色膿疹、眼の下の腫れ、眼の周りのクマ、静脈瘤、脱毛症[Jarrousse F.et al.,“Identification of clustered cells in human hair follicle responsible for MMP−9 gelatinolytic activity:consequences for the regulation of hair growth”.Int.J.Dermatol.,(2001),40,385−392]、蜂巣炎、オレンジピールスキン、治癒若しくは上皮再形成障害、並びにストレッチマーク。皮膚炎には、炎症、例えば、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、敏感肌及び湿疹などを引き起こす皮膚病態、障害若しくは疾患が含まれる。従って、これらの病態、障害及び疾患はすべて、コラーゲン合成を刺激する化合物により治療が可能である。
【0009】
老化及び光老化した皮膚における水和の低下は、皮膚へのシワの出現、さらには皮膚バリア機能への変化のもう1つの原因である。皮膚の水分は、脂質合成[Rawlings A.V.et al.,“Abnormalitites in stratum corneum structure lipid composition and desmosome degradation in soap−induced winter xerosis”.J.Soc.Cosmet.Chem.,(1994),45,203−220]、表皮のDNA合成[Denda M.et al.,“Low humidity stimulates epidermal DNA synthesis and amplifies the hyperproliferative response to barrier disruption:implication for seasonal exacerbations of inflammatory dermatoses”.J.Invest.Dermatol.,(1998),111,873−878]、バリアとしてのその機能[Denda M.et al.,“Exposure to a dry environment enhances epidermal permeability barrier function”.,J.Invest.Dermatol.,(1998),111,858−863]及び皮膚の厚さ[Sato J.et al.,“Dry condition affects desquamation of stratum corneum in vivo”.J.Dermatol.Sci.,(1998),18,163−169]に影響を及ぼしうる。天然保湿因子(NMF)は、角質層に存在し、水分保持に好都合な吸湿性を有する分子の混合物である。一般的に、皮膚の水分は、サンプルがどこで採取されるかに応じて変動する。従って、生細胞の基底層及び基底上層中の含水率は約75%であるが、角質層中の含水率は、10〜15%以下減少する。大気中の相対湿度、蒸発による水分喪失を補う表皮の能力、及び水分を保持する角質層の内因性の能力は、皮膚の含水率を決定する他の因子である。表皮を介した水の輸送を制御する作用機構はまだ完全に明らかになってはいないが、角質層、その下の皮膚中の生細胞及び大気の間の連続的な水の交換の存在は明らかなようであり、このプロセスには、関与する複数の因子が存在することがわかっている。それらのうち、角質層の組成物(その含有する低分子量オスモライト又は遊離アミノ酸などのその他の分子を含む)が、特に関連している。というのは、角質層の表面部分における高濃度のNa、K及びClイオン並びに低濃度の水の存在が証明されており、これによって、皮膚から表皮角化細胞への水及び溶質の勾配が発生するためである。タンパク質AQP−3は、水分の喪失による乾燥又は表皮角化細胞層中の水勾配の散逸から角質層を保護するように、経表皮浸透性を促進することを担う主要なタンパク質と考えられる。
【0010】
AQP−3は、相同性内在性膜タンパク質のファミリーのメンバーであり、また、生体膜を介して、水、グリセロール、及びその他の小溶質(例:尿素)の輸送の促進を担うアクアグリセロポリンのサブクラスのメンバーである。哺乳動物の場合、アクアポリンのファミリーは、13の相同性タンパク質(AQP−1〜AQP−13)を含み、これらは、3つのグループ:水チャネル、アクアグリセロポリン及び非オーソドックス(unorthodox)アクアポリンに分類することができる。
【0011】
水チャネルは、水のみを輸送することができ、アクアグリセロポリンは、水とグリセロール、また場合によっては他の小溶質を輸送することができ;第3群のアクアポリンは、特殊な特性を有するか、あるいは、まだ分類されていない[Rojek A.et al.,“A current view of the mammalian aquaglyceroporins”Annu.Rev.Physiol.,(2008),70,301−327]。多様なアクアポリンを哺乳動物の皮膚にみいだすことができ、AQP−3は、ヒト表皮中に最も豊富に存在する[Sougrat R.et al.,“Functional expression of AQP−3 in human skin epidermis and reconstructed epidermis”,J.Invest.Dermatol.,(2002),118,678−685]。AQP−3は、皮膚だけではなく、尿路、気道、消化管、及び集合管などのその他の器官の組織にも存在する。
【0012】
AQP−3が作用する分子機構の様々な仮定がある。皮膚における水の輸送は、角質層下の浸透勾配に従って起こるが、角質層では、浸透性は、AQP−3によって媒介されると考えられている。皮膚の様々な層でpHが変動する(角質層の下では5から7まで変動しうる)ため、顆粒−角質表皮界面での顕著な不浸透性の場合のように、皮膚の浸透性を調節することが可能である。これに関して、輸送された水は、生存表皮細胞の層に対して固定化作用を有し、角質層の下に位置する皮膚層の水和を促進する。角質層には、低濃度の水と高濃度の溶質が存在し、これによって、皮膚の最外部層と生存角化細胞層との間に水と溶質の勾配が生じる[Takenouchi M.et al.,“Hydration characteristics of pathologic stratum corneum−evaluation of bound water”,J.Invest.Dermatol.,(1986),87,574−576]。AQP−3は、皮膚の表面からの水の蒸発から角質層を保護するための経表皮浸透性の改善に関与すると考えられている。もう1つの可能性は、AQP−3が、表皮角化細胞層の幅を介した水勾配の分散において特定の役割を有することである。顆粒層と角質層との間の含水率の不連続性によって、角質細胞間に位置する高度に組織された脂質−水層構造が存在することが可能になり、これは、浸透性の皮膚のバリアの維持のためには不可欠の構造である。
【0013】
AQP−3が欠失したノックアウトマウスに特有の表現型特徴の1つは、皮膚の乾燥であるが、これは、角質層、従って、表皮の水和におけるAQP−3の役割の最も優れた証明の1つである。AQP−3の欠失に伴う皮膚へのその他の変化は、弾力性の低下、バリア機能の回復の遅延、並びに創傷の治癒時間の遅延である[Hara M.et al.,“Glycerol replacement corrects defective skin hydration,elasticity,and barrier function in aquaporin−3−deficient mice”.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,(2003),100,7360−7365;Ma T.et al.,“Impaired stratum corneum hydration in mice lacking epidermal water channel aquaporin−3”.,J.Biol.Chem.,(2002),277,17147−17153;Hara M.et al.,“Selectively reduced glycerol in skin of aquaporin−3−deficient mice may account for impaired skin hydration,elasticity,and barrier recovery”.J.Biol.Chem.,(2002),277,46616−46621]。AQP−3はまた、角化細胞の分化及び増殖の調節に重要な役割を有し[Bellemere G. et al.,“Retinoic acid increases aquaporin 3 expression in normal human skin”.J.Invest.Dermatol.,(2008),128,542−548]、皮膚バリア機能の維持に寄与する。AQP−3は、カベオリンリッチ膜マイクロドメイン中にホスホリパーゼD2と一緒に共局在化して、グリセロールと一緒にホスホリパーゼ2を提供することにより、ホスファチジルグリセロールを生成し、これが、次には、初期分化を開始することができる[Zheng X.et al.,“Aquaporin 3 colocates with phospholipase d2 in caveolin−rich membrane microdomains and is downregulated upon keratinocyte differentiation”.J.Invest.Dermatol.,(2003),121,1487−1495]。
【0014】
皮膚及び/又は粘膜の様々な病態、障害及び疾患の原因の1つは、皮膚の水分の減少である。これらの疾患の中でも、特に以下を挙げることができる:アトピー性皮膚炎[Watanabe M.et al.,“Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis”.Arch.Dermatol.,(1991),127,1689−1692]、湿疹[Thune P.,“Evaluation of the hydration and the water−holding capacity in atopic skin and so−called dry skin”.Acta Derm.Venereol.Suppl.(Stockh).,(1989),144,133−135]、乾癬[Tagami H.,“Quantitative measurements of water concentration of the stratum corneum in vivo by high−frequency current”.Acta Derm.Venereol.Suppl.(Stockh),(1994),185,29−33]、足底角化症、老人性乾皮症、[Horii I.et al.,“Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin”.Br.J.Dermatol.,(1989),121,587−592]、遺伝性魚鱗癬[Hara M.et al.,“Amelanotic acral melanoma masquerading as fibrous histiocytic tumours.Three case reports”.Acta Derm.Venereol.,(1993),73,283−285]、表皮に対する変化、例えば、海綿質状態[Boury−Jamot M.et al.,“Expression and function of aquaporins in human skin:Is aquaporin−3 just a glycerol transporter?”.Biochim.Biophys.Acta,(2006),1758,1034−1042]又は膣乾燥[韓国特許出願公開第20080024868A号明細書]。従って、これらの病態、障害及び疾患はすべて、AQP−3を調節する化合物で治療可能である。
【0015】
AQP−3と皮膚の老化及び光老化との関係も証明されている。表皮は、加齢及び太陽光線への暴露に従ってAQP−3発現の低下を被ることが証明されている[Dumas M.et al.,“Histological variation of Japanese skin with ageing”.Int.J.Cosm.Sci.,(2005),27,47−50]。
【0016】
従って、皮膚及び/又は粘膜におけるコラーゲン線維及び水和は、皮膚の均衡を維持し、老化及び/又は光老化の徴候を軽減、遅延及び/又は予防することを可能にする上で極めて重要である。老化及び/又は光老化の徴候を軽減、遅延及び/又は予防しながら、皮膚のコラーゲンレベル及び/又は水和、並びに皮膚の滑らかで、しかも引き締まった外観の保持を維持することを意図する作用を有する製品を利用可能にすることが重要である。皮膚中の高いコラーゲン含有率又は皮膚の水和は、多くの異なる方法で達成することができる。一方で、加齢による皮膚の劣化という負の作用を阻止するようにコラーゲン合成を誘導する物質を用いることができる。皮膚の水和を増大するようにAQP−3を調節する物質を用いることができる。
【0017】
従来の技術では、コラーゲン合成の開始剤として有効な活性成分があり、例えば、アスコルビン酸及びその誘導体、特に、パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、並びにアスコルビルα及びβグルコシド、レチノール及びレチノールの誘導体、例えば、レチノイン酸、レチナール、レチノール、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニル、又は植物エキス、例えば、アロエ属全種(Aloe spp)又はセンテラ属全種(Centella spp)のエキスが挙げられる。また、コラーゲン合成を誘導するのによく用いられる活性成分群には、カルニチン、カルニシンなどのペプチド及びペプチド誘導体、並びにマトリキン由来のペプチド(例:リシル−トレオニル−トレオニル−リシル−セリン)などのペプチドも含まれる。さらに、アジアティック酸、マデカシン酸、マデカソシド、アジアチコシド、ツボクサ(Centella asiatica)のエキス、ニアシンアミド、アスタキサンチン、例えば、酵母及びエンバク(Avena sativa)由来のグルカン、ダイズ(Glycine max)のエキス、ダイズイソフラボン、例えば、ゲニステイン、ダイドゼイン、ルチン、クリシン、モリン、ビンロウジ(areca nut)のアルカロイド、フォルスコリン、ベツリン酸、オオバコ属全種(Plantago spp)のエキス、TGF−β、イチョウ(Ginkgo biloba)のエキス、グルタミン、及びグリコール酸は、コラーゲン合成の刺激因子として用いられている。
【0018】
また、アクアポリンの欠失に関連する障害の症状を軽減するために、皮膚中のアクアポリンレベルを増加することができる市販の化合物も多数存在する。美容品及び医薬品産業は、これを認識しているため、皮膚中のAQP−3発現の増大をもたらす分子又はエキスをみいだす相当の取り組みをしてきており、そのようなものとして、中でも、以下が挙げられる:キサンチン、カフェイン、ギンセノシド、ビタミンB3若しくはニアシン[米国特許出願公開第2007/0009474A1号明細書]、ビタミンA若しくはレチノイン酸/全トランス型レチノイン酸(ATRA)[Bellemere G.et al.,“Retinoic acid increases aquaporin 3 expression in normal human skin”.J.Invest.Dermatol.,(2008),128 542−548]、レチノイン酸トコフェリル[特開第2006−290873号公報]、ステロイド誘導体、特に、エクジステロイドの使用[米国特許出願公開第5609873A号明細書;米国特許第7060693B1号明細書]、グリセリルグルコシド[国際公開第2007/124991A1号パンフレット]、グリセリルグルコシド[米国特許出願公開第2009/0130223A1号明細書]、アクアポリンの配列に由来するペプチド[仏国特許出願公開第2925500A1号明細書]、特定の合成ペプチド[仏国特許出願公開第2925501A1号明細書]、アジュガ・ツルケスタニカ(Ajuga turkestanica)[欧州特許第1231893B1号明細書]、リンゴ(Pyrus malus)のエキス[仏国特許出願公開第28899949A1号明細書]、バンダ・セルレア(Vanda coerulea)のエキス[仏国特許出願公開第2928090A1号明細書]、ワカメ(Undaria pinnatifida)などの褐藻類のエキス[仏国特許出願公開第2903015A1号明細書]、ラミナリア・ディジタータ(Laminaria digitata)のエキス[欧州特許出願公開第1994923A2号明細書]、ピプタデニア・コルブリナ(Piptadenia colubrina)のエキス[国際公開第2009/106934A1号パンフレット]、ノウゼンハレン(Tropaeolaceae)属由来の植物及びサフラン(Crocus sativus)種のエキス[特開第2004−168732号公報;特開第2005−343882号公報]又はザクロ(Punica granatum)のエキス[仏国特許出願公開第2831058A1号明細書]。
【0019】
しかしながら、既存の化合物及び/又はエキスが豊富に存在するにもかかわらず、美容、医薬及び食品分野では、コラーゲン合成を刺激することができる、並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜の水和を増大させることできる、先行技術において公知の化合物に代わる物質の開発に依然として関心が寄せられている。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、前述の問題に対する解決策を提供する。驚くことに、本発明の出願人は、特定の合成ペプチドによって、アクアポリンの発現及び/又はコラーゲン合成の刺激が調節されうることをみいだした。これにより、本発明者らは、これらの合成ペプチドが、アクアポリンAQP−3を調節する、及び/又はコラーゲン合成を刺激することができるという結論を下した。これらのペプチドは、AQP−3の調節及び/又はコラーゲン合成の刺激によって改善するか、又は予防される病態、障害及び/又は疾患の治療及び/又はケアに有用であり、皮膚の水和、皮膚のバリア機能を改善し、並びに/又は、皮膚の老化及び/若しくは光老化の徴候を治療、予防及び/若しくは修復する。
【0021】
定義
本発明の理解を容易にするために、本発明に関して用いられるいくつかの用語及び表現の意味を記載する。
【0022】
本発明に関して、「AQP−3調節」とは、AQP−3合成の増大及び低減、並びにその活性の増強又は阻害の両方であると理解される。
【0023】
本発明に関して、「皮膚」とは、最も上の層、すなわち角質層から、最も下の層、すなわち皮下まで(両方を含む)の、皮膚を含む層であると理解される。これらの層は、中でも、角化細胞、線維芽細胞、メラニン細胞及び/又は脂肪細胞などの様々な細胞型から構成される。本発明に関して、「皮膚」という用語は、頭皮を含む。
【0024】
本明細書に関して用いられる場合、用語「治療」とは、疾患若しくは障害を緩和又は除去する、あるいはこの疾患若しくは障害に関連する1つ以上の症状を軽減又は除去することを目的として、本明細書のペプチドを投与することを指す。用語「治療」はまた、疾患若しくは障害の生理学的結果を緩和又は除去する能力も包含する。
【0025】
本発明に関して、「ケア」は、疾患及び/又は障害の予防を含む。
【0026】
本発明で用いられる場合、用語「予防」とは、疾患若しくは障害の出現又は発現を、その出現前に、予防、遅延、あるいは阻止する本発明のペプチドの能力を指す。
【0027】
本発明に関して、用語「老化」とは、加齢(自然老化)によって、あるいは日光(光老化)又は環境因子(例えば、煙草の煙、低温若しくは風などの極端な気候条件、化学的汚染物質若しくは汚染源など)に対する暴露を介して、皮膚が被る変化を指し、外から目に見える変化及び/又は手触りで知覚される変化をすべて含み、このようなものとして、限定されないが、以下のものが挙げられる:皮膚の不連続性の発生、例えば、シワ、小ジワ、表情ジワ、ストレッチマーク、肌溝、深いシワ、でこぼこ若しくは肌荒れ、毛穴の拡大、水和の低下、弾力性の低下、ハリの減少、滑らかさの減少、変形からの回復能力の低下、反発性の低下、頬のたるみなどの皮膚のたるみ、眼の下の腫れの出現又は二重あごの出現、中でも、皮膚の色の変化、例えば、斑痕、赤変、クマ、あるいは、皮膚色素沈着部位、例えば、特に年齢によるシミ若しくはソバカスの出現、分化異常、角化高進、弾性線維症、角化症、脱毛、オレンジピールスキン、コラーゲン構造の減少、並びに、中でも、角質層、真皮、表皮、血管系(例えば、クモ状静脈若しくは毛細血管拡張症の出現)又は皮膚近傍の組織の他の組織学的変化。用語「光老化」は、皮膚の早期老化を招く紫外線への皮膚の長時間暴露による一群のプロセスを併せて含むが、これは、例えば、限定されないが、ハリのなさ、たるみ、色の変化又はまだらな色素沈着、異常及び/若しくは過剰な角化などの老化と同じ物理的特徴を呈する。また、煙草の煙への暴露、汚染、並びに気候条件(例えば、低温及び/若しくは風)への暴露など、様々な環境因子もすべて、皮膚の老化に寄与する。
【0028】
本明細書では、アミノ酸に用いられる略称は、Eur.J.Biochem.(1984)138:9−37に明示されているIUPAC−IUB Commission of Biochemical Nomenclatureの規則に従う。
【0029】
従って、例えば、Alaは、NH−CH(CH)−COOHを表し、Ala−は、NH−CH(CH)−CO−を表し、−Alaは、−NH−CH(CH)−COOHを表す。ーAlaーはーNH−CH(CH)−CHーを表す。従って、ペプチド結合を表すハイフンは、記号の右側に位置するとき、アミノ酸の1−カルボキシル基(ここでは、従来の非イオン化型で示す)からOHを除いた形であり、記号の左側に位置するとき、アミノ酸の2−アミノ基からHを除いた形であり;両方の修飾を同じ記号に適用することができる(表1を参照)。

【0030】
略称「Ac−」は、本明細書において、アセチル基(CH−CO−)を示すのに用いられ、略称「Palm−」は、パルミトイル基(CH−(CH14−CO−)を示すのに用いられる。
【0031】
本発明において用いられる用語「非環式脂肪基」は、例えば、限定されないが、直鎖状又は分枝状アルキル、アルケニル及びアルキニル基を包含する。
【0032】
用語「アルキル基」とは、1〜24、好ましくは1〜16、より好ましくは1〜14、さらに好ましくは1〜12、さらにまた好ましくは1、2、3、4、5若しくは6個の炭素原子を有し、単結合を介して分子の残りの部分と結合する、直鎖状又は分枝状の飽和基を指し、例えば、限定されないが、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、ラウリル、ヘキサデシル、オクタデシル、アミル、2−エチルヘキシル、2−メチルブチル、5−メチルヘキシルなどが挙げられる。
【0033】
用語「アルケニル基」とは、2〜24、好ましくは2〜16、より好ましくは2〜14、さらに好ましくは2〜12、さらにまた好ましくは2、3、4、5若しくは6個の炭素原子を、共役又は非共役である1個以上の炭素−炭素二重結合、好ましくは1、2若しくは3個の炭素−炭素二重結合と共に有し、単結合を介して分子の残りの部分と結合する、直鎖状又は分枝状の基を指し、例えば、限定されないが、ビニル、オレイル、リノレイル基などが挙げられる。
【0034】
用語「アルキニル基」とは、2〜24、好ましくは2〜16、より好ましくは2〜14、さらに好ましくは2〜12、さらにまた好ましくは2、3、4、5若しくは6個の炭素原子を、共役又は非共役である1個以上の炭素−炭素三重結合、好ましくは1、2若しくは3個の炭素−炭素三重結合と共に有し、単結合を介して分子の残りの部分と結合する、直鎖状又は分枝状の基を指し、例えば、限定されないが、エチニル基、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニルなどのペンチニルなどが挙げられる。
【0035】
本発明において用いられる用語「アリシクリル(alycyclyl)基」は、例えば、限定されないが、シクロアルキル又はシクロアルケニル又はシクロアルキニル基を包含する。
【0036】
用語「シクロアルキル」とは、3〜24、好ましくは3〜16、より好ましくは3〜14、さらに好ましくは3〜12、さらにまた好ましくは3、4、5若しくは6個の炭素原子を有し、単結合を介して分子の残りの部分と結合する、飽和単環式又は多環式の脂肪族基を指し、例えば、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、オクタヒドロインデン、デカヒドロナフタレン、ドデカヒドロフェナレンなどが挙げられる。
【0037】
用語「シクロアルケニル」とは、5〜24、好ましくは5〜16、より好ましくは5〜14、さらに好ましくは5〜12、さらにまた好ましくは5若しくは6個の炭素原子を、共役又は非共役である1個以上の炭素−炭素二重結合、好ましくは1、2若しくは3個の炭素−炭素二重結合と共に有し、単結合を介して分子の残りの部分と結合する、非芳香族単環式又は多環式の脂肪族基を指し、例えば、限定されないが、シクロペント−1−エン−1−イル基などが含まれる。
【0038】
用語「シクロアルキニル」とは、8〜24、好ましくは8〜16、より好ましくは8〜14、さらに好ましくは8〜12、さらにまた好ましくは8若しくは9個の炭素原子を、1個以上の炭素−炭素三重結合、好ましくは1、2若しくは3個の炭素−炭素三重結合(結合又は非結合)と共に有し、単結合を介して分子の残りの部分と結合する、非芳香族単環式又は多環式の脂肪族基を指し、例えば、限定されないが、シクロオクト−2−イン−1−イル基などが挙げられる。
【0039】
用語「アリール基」とは、6〜30、好ましくは6〜18、より好ましくは6〜10、さらに好ましくは6〜10個の炭素原子を有し、炭素−炭素結合を介して結合又は縮合した1、2、3若しくは4個の芳香環を含む、芳香族基を指し、例えば、限定されないが、中でも、フェニル、ナフチル、ジフェニル、インデニル、フェナントリル若しくはアントラニルが挙げられ;あるいは、この用語は、アラルキル基を指す。
【0040】
用語「アラルキル基」とは、7〜24個の炭素原子を有する、芳香族基により置換されたアルキル基を指し、例えば、限定されないが、−(CH1〜6−フェニル、−(CH1〜6−(1−ナフチル)、−(CH1〜6−(2−ナフチル)、−(CH1〜6−CH(フェニル)などが挙げられる。
【0041】
用語「ヘテロシクリル基」は、3〜10員の炭酸水素環を指し、この環の1個以上の原子、好ましくは環の1、2若しくは3個の原子は、炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素若しくはイオウであり、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。本発明の目的のために、複素環は、単環式、二環式若しくは三環式の環系であってよく、これは、縮合環系を含んでよく;ヘテロシクリルラジカル中の窒素、炭素若しくはイオウ原子は、任意選択で酸化されていてもよく;窒素原子は、任意選択で四級化されていてもよく;並びに、ヘテロシクリルラジカルは、部分的又は完全に飽和していてもよいし、あるいは、芳香属であってもよい。最も好ましくは、用語「ヘテロシクリル」は、5又は6員の環を指す。
【0042】
用語「ヘテロアリールアルキル基」は、置換又は非置換芳香族ヘテロシクリル基で置換されたアルキル基を指し、このアルキル基は、1〜6個の炭素原子を有し、また、芳香族ヘテロシクリルは、2〜24個の炭素原子と1〜3個の炭素以外の原子を有し、例えば、限定されないが、−(CH1〜6−イミダゾリル、−(CH1〜6−トリアゾリル、−(CH1〜6−チエニル、−(CH1〜6−フリル、−(CH1〜6−ピロリジニルなどが挙げられる。
【0043】
この技術分野では理解されているように、前述した基には、ある程度の置換が存在し得る。従って、本発明のいずれの基にも置換があり得る。本発明の基における置換された基について本明細書で言及する場合、記載されたラジカルが、1つ以上の置換基により1つ以上の位置で、好ましくは1、2若しくは3つの位置、より好ましくは1又は2つの位置、さらに好ましくは1つの位置で、置換されうることを意味する。このような置換基としては、例えば、限定されないが、C〜Cアルキル;ヒドロキシル;C〜Cアルコキシル;アミノ;C〜Cアミノアルキル;C〜Cカルボニルオキシル;C〜Cオキシカルボニル;フッ化物、塩素、臭素及びヨウ素などのハロゲン;シアノ;ニトロ;アジド;C〜Cアルキルスルホニル;チオール;C〜Cアルキルチオ;C〜C30アリールオキシ、例えば、フェノキシル;−NR(C=NR)NRが挙げられ;ここで、R及びRは、独立して、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜C10シクロアルキル、C〜C18アリール、C〜C17アラルキル、3〜10員のヘテロシクリル、又はアミノ基の保護基からなる群から選択される。
【0044】
本発明の化合物
本発明のペプチドは、一般式(I):
−W−X−AA−AA−AA−AA−AA−AA−Y−Z−R(I)
それらの立体異性体、その混合物及び/又はそれらの美容的若しくは薬学的に許容可能な塩によって定義され、これは、以下を特徴とする:
AAは、−Ser−、−Thr−及び−Tyr−からなる群から選択され;
AAは、−Pro−及び−Val−からなる群から選択され;
AAは、−Ala−及び−Gly−からなる群から選択され;
AAは、−Glu−、−Gly−及び−Val−からなる群から選択され;
AAは、−Gly−及び−Ala−からなる群から選択され;
AAは、−Gln−、−Gly−、−His−及び−Pro−からなる群から選択され;
W、X、Y、Zは、アミノ酸であり、互いに独立してそれらの中から選択され;
n、m、p及びqは、互いに独立してそれらの中から選択され、0又は1の値を有し;
n+m+p+qは、2以下であり;
は、H、置換又は非置換の非環式脂肪族基、置換又は非置換アリシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロアリールアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アラルキル及びR−CO−からなる群から選択され、ここで、Rは、H、置換又は非置換の非環式脂肪族基、置換又は非置換アリシクリル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アラルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル及び置換又は非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され;
は、−NR、−OR及び−SRからなる群から選択され、ここで、R及びRは、独立して、H、置換又は非置換の非環式脂肪族基、置換又は非置換アリシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロアリールアルキル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換アラルキルからなる群から選択され;
ただし、R及びRは、αアミノ酸ではなく;
AAが−Gly−であり、かつAAが−Pro−であるとき、AAは、−Val−であり;また、
W又はXが−Val−で、Y又はZが−Arg−で、AAが−Ser−で、AAが−Pro−で、AAが−Glu−で、AAが−Ala−で、またAAが−Gln−であるとき、AAは、−Gly−であるものとする。
【0045】
基R及びRは、ペプチド配列のアミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)にそれぞれに結合される。
【0046】
本発明の好ましい実施形態によれば、Rは、H又はR−CO−からなる群から選択され、ここで、Rは、以下からなる群から選択される:置換又は非置換C〜C24アルキルラジカル、置換又は非置換C〜C24アルケニル、置換又は非置換C〜C24アルキニル、置換又は非置換C〜C24シクロアルキル、置換又は非置換C〜C24シクロアルケニル、置換又は非置換C〜C24シクロアルキニル、置換又は非置換C〜C30アリール、置換又は非置換C〜C24アラルキル、3〜10員の置換又は非置換ヘテロシクリル環、並びに2〜24個の炭素原子と、1〜3個の炭素以外の原子、及び1〜6個の炭素原子のアルキル鎖を有する置換又は非置換ヘテロアリールアルキル。より好ましくは、Rは、H、アセチル、tert−ブタノイル、ヘキサノイル、2−メチルヘキサノイル、シクロヘキサンカルボキシル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、オレオイル、及びリノレオイルから選択される。さらに好ましくは、Rは、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイル又はパルミトイルである。さらに好ましい実施形態では、Rは、アセチル又はパルミトイルである。
【0047】
本発明の好ましい別の実施形態によれば、Rは、−NR、−OR又は−SRであり、ここで、R及びRは、独立して、以下からなる群から選択される:H、置換又は非置換C〜C24アルキル、置換又は非置換C〜C24アルケニル、置換又は非置換C〜C24アルキニル、置換又は非置換C〜C24シクロアルキル、置換又は非置換C〜C24シクロアルケニル、置換又は非置換C〜C24シクロアルキニル、置換又は非置換C〜C30アリール、置換又は非置換C〜C24アラルキル、3〜10員の置換又は非置換ヘテロシクリル環、並びに2〜24個の炭素原子と、1〜3個の炭素以外の原子を有し、アルキル鎖が1〜6個の炭素原子である置換又は非置換ヘテロアリールアルキル。任意選択で、R及びRは、飽和又は不飽和の炭素−炭素結合を介して結合し、窒素原子と共に環を形成してもよい。より好ましくは、Rは、−NR又は−ORであり、ここで、R及びRは、独立して、以下からなる群から選択される:H、置換又は非置換C〜C24アルキル、置換又は非置換C〜C24アルケニル、置換又は非置換C〜C24アルキニル、置換又は非置換C〜C10シクロアルキル、置換又は非置換C〜C15アリール、及び3〜10員の置換又は非置換ヘテロシクリル環、並びに3〜10員の環と、1〜6個の炭素原子のアルキル鎖とを含む置換又は非置換ヘテロアリールアルキル。より好ましくは、R及びRは、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシル、又はヘキサデシルからなる群から選択される。さらに好ましくは、Rは、Hであり、Rは、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシル、又はヘキサデシルからなる群から選択される。さらにまた好ましい実施形態によれば、Rは、−OH及び−NHから選択される。
【0048】
本発明の別の実施形態によれば、Rは、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイル又はパルミトイルからなる群から選択され、AAは、−L−Tyr−、AAは、−L−Pro−、AAは、−L−Ala−、AAは、−L−Glu−、AAは、−L−Gly−、AAは、−L−Gln−であり、Rは、−NR又は−ORであり、ここで、R及びRは、独立して、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシル及びヘキサデシルから選択され、好ましくは、Rは、−OH又は−NHである。より好ましくは、Rは、アセチル又はパルミトイルであり、Rは、−NHである。さらに好ましくは、n、m、p及びqは、0である。
【0049】
本発明の別の実施形態によれば、Rは、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイル又はパルミトイルからなる群から選択され、AAは、−L−Ser−、AAは、−L−Val−、AAは、−L−Ala−、AAは、−L−Val−、AAは、−L−Gly−、AAは、−L−Gln−であり、Rは、−NR又は−ORであり、ここで、R及びRは、独立して、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシル及びヘキサデシルから選択され、好ましくは、Rは、−OH又は−NHである。より好ましくは、Rは、アセチル又はパルミトイルであり、Rは、−NHである。さらに好ましくは、n、m、p及びqは、0である。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、Rは、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイル又はパルミトイルからなる群から選択され、AAは、−L−Ser−、AAは、−L−Pro−、AAは、−L−Ala−、AAは、−L−Gly−、AAは、−L−Gly−、AAは、−L−Pro−であり、Rは、−NR又は−ORであり、ここで、R及びRは、独立して、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシル及びヘキサデシルから選択され、好ましくは、Rは、−OH又は−NHである。より好ましくは、Rは、アセチル又はパルミトイルであり、Rは、−NHである。さらに好ましくは、n、m、p及びqは、0である。
【0051】
本発明の別の実施形態によれば、Rは、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイル及びパルミトイルからなる群から選択され、好ましくは、Rは、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイル及びパルミトイルからなる群から選択され、また、Rは、−OH及び−NHからなる群から選択される。
【0052】
本発明の別の実施形態によれば、n、m、p及びqは、0である。
【0053】
好ましくは、式(I)のペプチドは、以下からなる群から選択される:

これらの立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩。
【0054】
本発明のペプチドは、立体異性体又は立体異性体の混合物として存在し得る;例えば、これらを含むアミノ酸は、L−、D−立体配置を有することも、又は、互いに独立したラセミ体であることもできる。従って、不斉炭素の数と、どの異性体又は異性体混合物が存在するかに応じて、異性体混合物、並びにラセミ混合物若しくはジアステレオマー混合物、又は純粋なジアステレオマー若しくは鏡像異性体を得ることができる。本発明のペプチドの好ましい構造は、純粋な異性体、すなわち鏡像異性体又はジアステレオマーである。
【0055】
例えば、AAが、Ser−であり得ると記載される場合、AAは、−L−Ser−、−D−Ser−又はこれら両方のラセミ若しくは非ラセミ混合物から選択されることが理解される。同様に、AAが、−Pro−であり得ると記載される場合、AAは、−L−Pro−、−D−Pro−又はこれら両方のラセミ若しくは非ラセミ混合物であり得ることが理解される。本発明に記載する調製方法によって、当業者は、正しい立体配座を有するアミノ酸を選択することにより、本発明のペプチドの立体異性体の各々を取得することができる。
【0056】
本発明に関して、用語「アミノ酸」は、天然又は非天然の、遺伝コードでコードされたアミノ酸、及びコードされていないアミノ酸を意味する。コードされていないアミノ酸の例としては、限定されないが、特に、以下が挙げられる:シトルリン、オルニチン、サルコシン、デスモシン、ノルバリン、4−アミノ酪酸、2−アミノ酪酸、2−アミノイソ酪酸、6−アミノヘキサン酸、1−ナフチルアラニン、2−ナフチルアラニン、2−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−クロロフェニルアラニン、2,3−ジアミノプロピオン酸、2,4−ジアミノ酪酸、シクロセリン、カルニチン、シスチン、ペニシルアミン、ピログルタミン酸、チエニルアラニン、ヒドロキシプロリン、アロ−イソロイシン、アロ−トレオニン、イソニペコチン酸、イソセリン、フェニルグリシン、スタチン、β−アラニン、ノルロイシン、N−メチルアミノ酸、αアミノ酸及びβアミノ酸、並びにこれらの誘導体。非天然アミノ酸の一覧表は、 D.C. Roberts及びF. Vellaccioによる論文:”Unusual amino acids in peptide synthesis”(The Peptides,Vol.5(1983),Chapter VI,Gross E.and Meienhofer J.,Eds.,Academic Press,New York,USA)、又は当分野の専門企業の商品カタログにみることができる。
【0057】
本発明に関して、n、m、p及びqが、0ではないとき、W、X、Y及び/又はZの性質は、本発明のペプチドの活性を妨害するのではなく、AQP−3の調節及び/又はコラーゲン合成の刺激に寄与するか、あるいは、これらに影響を及ぼさないことは、明らかに理解されよう。
【0058】
本発明によって提供されるペプチドの美容的及び薬学的に許容可能な塩もまた、本発明の分野でみいだされる。用語「美容的及び薬学的に許容可能な塩」とは、動物、また、より具体的にはヒトへの使用が認められる塩を意味し、例えば、限定されないが、中でも、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛若しくはアルミニウムのような無機塩、又は、例えば、限定されないが、中でも、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アルギニン、リシン、ヒスチジン若しくはピペラジンのような有機塩である塩基付加塩、あるいは、例えば、限定されないが、中でも、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、安息香酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、コハク酸塩、オレイン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩若しくはグルコン酸塩のような有機塩、又は、例えば、限定されないが、中でも、塩化物、硫酸塩、ホウ酸塩若しくは炭酸塩のような無機塩である酸付加塩を形成するのに用いられる塩を形成するために用いられる塩を含む。塩の性質は、美容的及び薬学的に許容可能な限りにおいて、決定的ではない。本発明のペプチドの美容的及び薬学的に許容可能な塩は、当分野では公知の従来の方法によって得ることができる[“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.,(1977),66,1−19]。
【0059】
本発明の別の態様は、皮膚及び/又は粘膜の治療及び/又はケアに使用するための、本発明に記載する一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩に関する。
【0060】
別の特定の態様では、本発明は、AQP−3の調節に使用するための、本発明に記載する一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩に関する。
【0061】
別の特定の態様では、本発明は、コラーゲン合成の刺激に使用するための、本発明に記載する一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩に関する。
【0062】
別の特定の態様では、本発明は、皮膚及び/又は粘膜の水和に使用するための、本発明に記載する一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩に関する。
【0063】
本発明の一態様は、皮膚バリア機能を改善するための、本発明に記載する一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩に関する。
【0064】
本発明の一態様は、皮膚及び/又は粘膜の上皮再形成及び/又は治癒に使用するための、本発明に記載する一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩に関する。
【0065】
本発明の一態様は、皮膚の老化及び/又は光老化の治療及び/又は予防に使用するための、本発明に記載する一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩に関する。
【0066】
本発明の一態様は、顔のシワの治療及び/又は軽減に使用するための、本発明に記載する一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩に関する。
【0067】
別の特定の態様では、本発明は、以下からなる群から選択される皮膚及び/又は粘膜の病態、障害及び/又は疾患の治療及び/又はケアに使用するための、本発明に記載する一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩に関する:表皮中の水の非効率若しくは異常な輸送に関連する皮膚及び/又は粘膜の疾患及び/又は障害、乾癬、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、湿疹、海綿質状態、浮腫、遺伝性魚鱗癬、老人性乾皮症、膣の乾燥、手掌角化症、足底角化症、シワ、表情ジワ、ストレッチマーク、皮膚の老化、皮膚の光老化、皮膚癌、治癒若しくは上皮再形成障害、慢性潰瘍、挫瘡(ニキビ)、ケロイド、肥厚性瘢痕、蜂巣炎、オレンジピールスキン、弾性線維症、光線性弾性線維症、角化症、酒さ、毛細血管拡張症、赤色膿疹、眼の下の腫れ、眼の周りのクマ、静脈瘤、脱毛症、歯肉炎、歯周炎、炎症過程及び水泡性類天疱瘡。
【0068】
別の特定の態様では、本発明の治療及び/又はケアは、局所又は経皮適用によって実施され、好ましくは、局所又は経皮適用は、イオン浸透療法、超音波導入、エレクトロポレーション、機械的圧力、浸透圧勾配、密封療法、マイクロインジェクション、圧力による無針注射、微小電気パッチ、又はこれらのいずれかの組合せによって実施される。
【0069】
別の特定の態様では、治療及び/又はケアは、経口投与によって実施される。
【0070】
調製方法
本発明のペプチド、それらの立体異性体、又はそれらの美容的若しくは薬学的に許容可能な塩の合成は、先行技術において公知の従来の方法に従って実施することができ、そのような方法として、例えば、以下を用いたものがある:固相ペプチド合成法[Stewart J.M.and Young J.D.,“Solid Phase Peptide Synthesis,2nd edition”,(1984),Pierce Chemical Company,Rockford,Illinois;Bodanzsky M.,Bodanzsky A.“The practice of Peptide Synthesis”,(1984),Springer Verlag, New Cork;Lloyd−Williams P.,Albericio F.,Giralt E.“Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins”,(1997),CRC,Boca Raton,FL,USA]、液相合成、固相合成法と液相合成法の組合せ、又は酵素的合成法[Kullmann W.,“Proteases as catalysts for enzymic syntheses of opioid peptides”,(1980),J.Biol.Chem.,255,8234−8238]。ペプチドはまた、所望の配列を産生させることを目的とする生物工学的方法によって作製することもできるし、又は、動物、真菌、若しくは好ましくは植物由来のタンパク質の制御された加水分解により、少なくとも所望の配列を含むペプチド断片を遊離させることによって作製することもできる。
【0071】
例えば、本発明の式(I)のペプチドを取得する方法は、以下:
−N末端が保護され、C末端が遊離であるアミノ酸を、N末端が遊離であり、C末端が保護されているか、又は固体支持体に結合しているアミノ酸とカップリングするステップ;
−N末端の保護基を除去するステップ;
−所望のペプチド配列が得られるまで、配列のカップリングと、N末端の保護基の除去を繰り返すステップ;
−C末端の保護基を除去するか、又は固体支持体を切断するステップ
を含む。
【0072】
好ましくは、C末端は、固体支持体に結合しており、上記の方法は固相で実施される。従って、本方法は、N末端が保護され、かつC末端が遊離であるアミノ酸を、N末端が遊離であり、かつC末端がポリマー支持体に結合しているアミノ酸とカップリングするステップ;N末端の保護基を除去するステップ;及び、所望の長さのペプチドを得るのに必要な回数だけ上記の順序を繰り返すステップ、これに続いて、最後に、元のポリマー支持体から、合成されたペプチドを切断するステップを含む。
【0073】
アミノ酸の側鎖の官能基は、合成全体を通して、一時的又は永久的な保護基で好適に保護された状態が維持され、ポリマー支持体からのペプチドの切断ステップと同時に、又はこのステップとは独立に脱保護することができる。
【0074】
あるいは、固相合成は、ペプチドをポリマー支持体と、又はポリマー支持体に予め結合させたアミノ酸とカップリングさせるという、収束的な方法(convergent strategy)を用いて実施することができる。収束的合成方法は、当業者には公知であり、Lloyd−Williams P.et al,“Convergent solid−phase peptide synthesis”,(1993),Tetrahedron,49,11065−11133に記載されている。
【0075】
本方法は、先行技術で公知の標準的方法及び条件を用いて、ランダムな順序で、N末端及びC末端の脱保護並びに/又はポリマー支持体からのペプチドの切断の追加ステップを含んでもよく、その後に、これら末端の官能基を修飾することができる。N末端及びC末端の任意の修飾は、式(I)のペプチドがポリマー支持体に結合した状態で実施してもよいし、あるいは、このペプチドをポリマー支持体から分離した後に実施してもよい。
【0076】
任意選択で、Rは、本発明のペプチドのN末端と、R−X化合物(Rは、前述した意味であり、Xは、脱離基、例えば、限定されないが、中でも、トシル基、メシル基及びハロゲン基である)との反応によって導入してもよく;これは、適切な塩基及び溶媒の存在下での、求核置換反応により実施するが、その際、N−C結合形成に関与しない官能基を有する断片は、一時的又は永久的保護基で好適に保護されている。
【0077】
任意選択で、及び/又は加えて、Rラジカルの導入は、適切な溶媒及び塩基(例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)若しくはトリエチルアミン)又は添加剤(例えば、1−ヒドロキシベンゾチリアゾール(HOBt)若しくは1−ヒドロキシアザベンゾトリアゾール(HOAt))及び脱水剤(例えば、中でも、カルボジイミド、ウロニウム塩、ホスホニウム塩若しくはアミジニウム塩)の存在下で、化合物HR(ここで、Rは、−OR、−NR又は−SRである)と、式(I)(ここで、Rは、−OHである)のペプチドに対応する相補的断片の反応によって、又は、例えば、塩化チオールを用いてハロゲン化アシルを予め形成し、これにより、本発明の一般式(I)のペプチドを取得する(その際、N−C結合形成に関与しない官能基を有する断片は、一時的又は永久的保護基で好適に保護される)ことによって、導入してもよいし、あるいは、Rラジカルは、ポリマー支持体からのペプチド切断ステップと同時に行う組込みによって導入してもよい。
【0078】
当業者であれば、C末端及びN末端の脱保護/切断ステップ並びに後のそれらの誘導体化は、先行技術で公知の方法に従い、異なる順序で実施できることは容易に理解されよう。
【0079】
用語「保護基」は、有機官能基をブロックし、制御された条件下で除去することができる基を意味する。保護基、それらの相対的反応性、並びにそれらが不活性状態を維持する条件については、当業者に公知である。
【0080】
アミノ基の代表的保護基の例としては、中でも、以下:酢酸アミド、安息香酸アミド、ピバリン酸アミドなどのアミド;ベンジルオキシカルボニル(Cbz若しくはZ)、2−クロロベンジル(ClZ)、パラ−ニトロベンジルオキシカルボニル(pNZ)、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル(Troc)、2−(トリメチルシリル)エチルオキシカルボニル(Teoc)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)若しくはアリルオキシカルボニル(Alloc)、トリチル(Trt)、メトキシトリチル(Mtt)、2,4−ジニトロフェニル(Dnp)、N−[1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘクス−1−イリデン)エチル(Dde)、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソ−シクロヘキシリデン)−3−メチルブチル(ivDde)、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエトキシカルボニル(Adpoc)があり、Boc又はFmocが好ましい。
【0081】
カルボキシル基の代表的保護基の例としては、中でも、以下:tert−ブチルエステル(tBu)、アリルエステル(All)、トリフェニルメチルエステル(トリチルエステル、Trt)、シクロヘキシルエステル(cHx)、ベンジルエステル(Bzl)、オルト−ニトロベンジルエステル、パラ−ニトロベンジルエステル、パラ−メトキシベンジルエステル、トリメチルシリルエチルエステル,2−フェニルイソプロピルエステル、フルオレニルメチルエステル(Fm)、4−(N−[1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)−3−メチルブチル]アミノ)ベンジルエステル(Dmab)があり、本発明の好ましい保護基は、All、tBu、cHx、Bzl及びTrtエステルである。
【0082】
三官能価アミノ酸の側鎖は、N末端及びC末端の保護基とは独立に(orthogonal)、一時的又は永久的保護基によって、合成プロセスの間、保護することができる。
【0083】
チロシン側鎖のヒドロキシル基は、中でも、2−ブロモベンジルオキシカルボニル基(2−BrZ)、tert−ブチル(tBu)、アリル(All)、ベンジル(Bzl)又は2,6−ジクロロベンジル(2,6−ジClZ)で保護することができる。トレオニン及びセリン側鎖は、tBu、Bzl、Trt及びAcからなる群から選択される保護基によって保護することができる。ヒスチジン側鎖は、Tos、Dnp、メチル(Me)、Boc、ベンジルオキシメチル(Bom)、Bzl、Fmoc、Mts、Trt及びMttからなる群から選択される保護基によって保護される。グルタミン側鎖のアミド基は、トリチル基(Trt)又はキサンチル基(Xan)によって保護することもできるし、あるいは、非保護のまま用いることもできる。グルタミン酸側鎖のカルボキシル基の保護のためには、中でも、以下に挙げるようなエステルを用いることができる:tert−ブチルエステル(tBu)、アリルエステル(All)、トリフェニルメチルエステル(トリチルエステル、Trt)、シクロヘキシルエステル(cHx)、ベンジルエステル(Bzl)、オルト−ニトロベンジルエステル、パラ−ニトロベンジルエステル、パラ−メトキシベンジルエステル、トリメチルシリルエチルエステル、2−フェニルイソプロピルエステル、フルオレニルメチルエステル(Fm)又は4−(N−[1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)−3−メチルブチル]アミノ)ベンジルエステル(Dmab)。
【0084】
好ましい実施形態では、用いられる保護基の方法は、アミノ基がBocで保護され、カルボキシル基がBzl、cHx又はAllで保護され、チロシン側鎖が2−BrZ又はBzlで保護され、セリン及びトレオニン側鎖がBzl基で保護され、ヒスチジン側鎖がTos又はBom基で保護され、グルタミン酸側鎖がBzl、cHx又はAllで保護され、グルタミンがその側鎖で保護されずに用いられる方法である。
【0085】
別の好ましい実施形態では、用いられる保護基の方法は、アミノ基がFmocで保護され、カルボキシル基がtBu、All又はTrtで保護され、チロシン側鎖がtBuで保護され、セリン及びトレオニン側鎖がtBu基で保護され、ヒスチジン側鎖がTrt又はMtt基で保護され、グルタミン酸側鎖がtBu又はAllで保護され、グルタミンがその側鎖においてTrt基で保護される方法である。
【0086】
上記及びその他の別の保護基の例、それらの導入及び除去については、文献[Atherton B.and Sheppard R.C.,“Solid Phase Peptide Synthesis:A practical approach”,(1989),IRL Oxford University Press」にみることができる。用語「保護基」は、固相合成に用いられるポリマー支持体も含む。
【0087】
合成が、完全に又は部分的に固相で行われる場合、本発明の方法で用いることができる固体支持体としては、ポリスチレン支持体、ポリスチレンにグラフトしたポリエチレングリコールなどが挙げられ、例えば、限定されないが、以下:p−メチルベンズヒドリルアミン樹脂(MBHA)[Matsueda G.R.et al,“A p−methylbenzhydrylamine resin for improved solid−phase synthesis of peptide amides”.Peptides,(1981),2,45−50]、2−クロロトリチル樹脂[Barlos K.et al.,“Darstellung geschuetzter Peptid−Fragmente unter Einsatz substituierter Triphenylmethyl−Harze”.Tetrahedron Lett.,(1989),30,3943−3946;Barlos K. et al.,“Veresterung von partiell geschuetzten Peptid−Fragmenten mit Harzen.Einsatz von 2−Chlorotritylchlorid zur Synthese von Leu1−Gastrin I”.Tetrahedron Lett.,(1989),30,3947−3951]、TentaGel(登録商標)樹脂(Rapp Polymere GmbH)、ChemMatrix(登録商標)樹脂(Matrix Innovation, Inc)などがあり、これらは、ポリマー支持体からのペプチドの脱保護及び切断を同時に行うことを可能にする不安定リンカー、例えば、5−(4−アミノメチル−3,5−ジメトキシフェノキシ)吉草酸(PAL)[Albericio F.et al.,“Preparation and application of the 5−(4−(9−fluorenylmethyloxycarbonyl)aminomethyl−3,5−dimethoxy−phenoxy)valeric acid (PAL) handle for the solid−phase synthesis of C−terminal peptide amides under mild conditions”.J.Org.Chem.,(1990),55,3730−3743]、2−((AM)[Rink H.,“Solid−phase synthesis of protected peptide fragments using a trialkoxy−diphenyl−methylester resin”.Tetrahedron Lett.,(1987),28,3787−3790]、Wang[Wang S.S.,“p−Alkoxybenzyl Alcohol Resin and p−Alkoxybenzyloxycarbonyl hydrazide Resin for Solid Phase Synthesis of Protected Peptide Fragments.”J.Am.Chem.Soc.,,(1973),95,1328−1333]などを含んでいても、いなくてもよい。
【0088】
本発明の美容又は医薬組成物
本発明のペプチドは、AQP−3を調節する、及び/又はコラーゲン合成を刺激するために、ペプチドと、哺乳動物の身体、好ましくはヒトの身体の作用部位とを接触させるあらゆる手段によって、これらのペプチドを含有する組成物の形態で、投与することができる。
【0089】
このために、本発明の別の態様は、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物、及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を、少なくとも1種の美容的若しくは薬学的に許容可能な補助剤と共に含む美容又は医薬組成物である。これらの組成物は、当業者には公知の従来の手段により調製することができる[“Harry’s Cosmeticology”,Seventh edition,(1982),Wilkinson J.B.,Moore R.J.,ed.Longman House,Essex,GB]。
【0090】
本発明のペプチドは、その配列の性質又はN末端及び/若しくはC末端において考えられる任意の修飾に応じて、様々な水溶性を有する。従って、本発明のペプチドは、水溶液によって組成物に組み込むことができ、水溶性ではないものは、例えば、限定されないが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレン、グリコール、グリセリン、ブチレングリコール若しくはポリエチレングリコール又はこれらのいずれかの組合せなど、美容的若しくは薬学的に許容可能な従来の溶媒中で可溶化することができる。
【0091】
投与すべき本発明のペプチドの美容的若しくは薬学的に有効な量、及びそれらの用量は、患者の年齢、状態、治療及び/又はケアしようとする病態、障害若しくは疾患の性質又は重症度、投与の経路及び頻度、並びに用いるペプチドの具体的性質などを含む様々な因子に応じて変動する。
【0092】
「美容的若しくは薬学的に有効な量」とは、無毒性であるが、所望の効果をもたらすのに十分な本発明の1若しくは複数のペプチドの量を意味する。本発明のペプチドは、所望の効果を達成するのに、美容的若しくは薬学的に有効な濃度で、本発明の美容又は医薬組成物中に用いられ;これは、好ましい形態で、組成物の全重量に対し、0.00000001%(重量)〜20%(重量);好ましくは、0.000001%(重量)〜15%(重量)、より好ましくは、0.0001%(重量)〜10%(重量)、さらに好ましくは、0.0001%(重量)〜5%(重量)である。
【0093】
また、本発明のペプチド若しくはそれらの機能的に同等の変異型、それらの立体異性体、それらの混合物、及び/又はそれらの美容的若しくは薬学的に許容可能な塩は、美容若しくは医薬用送達系及び/又は徐放系に組み込むことができる。
【0094】
用語「送達系」は、本発明のペプチドと一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤若しくは担体を意味する。これらの美容又は医薬用担体は、水、油類、又は界面活性剤などの液体であってよく、例えば、限定されないが、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油、ヒマシ油、ポリソルベート、ソルビタンエステル、硫酸エーテル、硫酸塩、ベタイン、グリコシド、マルトシド、脂肪アルコール、ノノキシノール、ポロキサマー、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、デキシトロース、グリセロール、ジギトニンなど、石油、動物、植物若しくは合成由来のものを含む。当業者には、本発明のペプチドを投与することができる様々な送達系で用いることができる希釈剤は周知である。
【0095】
用語「徐放」は、従来の意味で、ある期間もわたって、化合物を徐々に放出する送達系であって、好ましくは、必ずしも必要ではないが、ある期間にわたって比較的一定の化合物放出レベルで提供する、化合物の送達系に関して用いる。
【0096】
送達系又は徐放系の例としては、限定されないが、以下:リポソーム、混合リポソーム、オレオソーム、ニオソーム、エトソーム、ミリカプセル、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノ構造脂質担体、スポンジ、シクロデキストリン、小胞、ミセル、界面活性剤の混合ミセル、界面活性剤−リン脂質混合ミセル、ミリスフェア、マイクロスフェア、ナノスフェア、リポスフェア、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ミニ粒子、ミリ粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子及び固体脂質ナノ粒子が挙げられ、さらには、活性原理のより高い浸透を達成する、及び/又はその薬物動態学的及び薬力学的特性を改善するために添加することができるマイクロエマルジョン及びナノエマルジョンがある。好ましい送達又は徐放系は、リポソーム、界面活性剤−リン脂質混合ミセル、マイクロエマルジョンを含むナノカプセル及びマイクロエマルジョン、より好ましくは逆ミセルの内部構造を有する油中水形マイクロエマルジョンである。
【0097】
徐放系は、先行技術で公知の方法によって調製することができ、これらを含む組成物は、例えば、粘着性パッチ、非粘着性パッチ、密封パッチ、微小電気パッチなどの局所若しくは経皮投与により、あるいは、全身投与、例えば、限定されないが、経口経路、又は鼻内、直腸、皮下の埋め込み若しくは注射、又は特定の身体部分への直接埋め込み若しくは注射などの非経口経路により、投与することができ、好ましくは、比較的一定量の本発明のペプチドを放出すべきである。徐放系に含まれるペプチドの量は、例えば、組成物を投与する部位、本発明のペプチドの放出の動態及び持続時間、並びに治療並びに/又はケアしようとする病態、障害及び/若しくは疾患の性質に応じて変動しうる。
【0098】
本発明のペプチドは、固体の有機ポリマー又は固体の無機基材に吸着させてもよく、このような支持体として、例えば、限定されないが、特に、タルク、ベントナイト、シリカ、デンプン若しくはバクガデキストリンなどが挙げられる。
【0099】
本発明のペプチド、それらの立体異性体、その混合物、及び/又はそれらの美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を含有する組成物は、皮膚と直接接触する布、不織布及び医療装置に組み込んでもよく、このようにして、身体の水分、皮膚のpH若しくは身体温度のために、布、不織布及び医療装置への固定系の生分解、又はこれらと身体との摩擦のいずれかによって、本発明のペプチドを放出させることができる。さらに、本発明のペプチドは、身体と直接接触する衣服を製造するのに用いられる布及び不織布に組み込むこともできる。好ましくは、本発明のペプチドを含有する布、不織布及び医療装置は、AQP−3の調節及び/又はコラーゲン合成の刺激により改善する、若しくは予防される皮膚及び/又は粘膜の病態、障害及び/若しくは疾患の治療並びに/又はケアに用いられる。
【0100】
前述した送達系及び/又は徐放系を含む、布、不織布、衣服及び医療装置、並びにこれらにペプチドを固定化するための手段の例は、文献に見ることができ、先行技術において公知である[Schaab C.K.“Impregnating Fabrics With Microcapsules”,(1986),HAPPI May 1986;Nelson G.“Application of microencapsulation in textiles”.Int.J.Pharm.,(2002),242,55−62;“Biofunctional Textiles and the Skin”.Curr.Probl.Dermatol.,(2006),v.33;Hipler U.C.and Elsner P.,eds.S.Karger AG,Basel,Switzerland;Malcom R.K.;McCullagh S.D.et al.,“Controlled release of a model antibacterial drug from a novel self−lubricating silicone biomaterial”.,J.Cont.Release,(2004),97,313−320]。好ましい布、不織布、衣服及び医療装置は、帯具、ガーゼ、Tシャツ、ソックス、ストッキング、下着、腰帯、手袋、オムツ、生理用ナプキン、包帯、ベッドカバー、拭き取り布、粘着性パッチ、非粘着性パッチ、密封パッチ、微小電気パッチ及び/又はフェイスマスクである。
【0101】
本発明のペプチド、それらの立体異性体、その混合物、及び/又はそれらの美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を含む美容又は医薬組成物は、局所、経皮、経口若しくは非経口適用の様々な種類の組成物に用いることができ、これらは、任意選択で、所望の投与形態を製剤化するのに必要な美容的若しくは薬学的に許容可能な賦形剤を含んでいてもよい。当業者には、本発明のペプチドを含む美容又は医薬組成物に用いることができる様々な賦形剤は周知である。
【0102】
局所又は経皮適用の組成物は、任意の固体、液体若しくは半固体の製剤として製造することができ、例えば、限定されないが、クリーム、例えば、限定されないが、水中の油及び/若しくはシリコーンのエマルジョン、油中及び/若しくはシリコーン中の水のエマルジョン、水/油/水型エマルジョン若しくは水/シリコーン/水型エマルジョン、及び油/水/油型若しくはシリコーン/水/シリコーン型エマルジョンなどの多相エマルジョン、無水組成物、水性分散液、オイル、ミルク、バルサム、フォーム、ローション、ジェル、クリームジェル、水性アルコール溶液、水性グリコール溶液、ヒドロゲル、リニメント、血清(sera)、石鹸、シャンプー、コンディショナー、しょう液(serums)、多糖フィルム、軟膏、ムース、ポマード、粉末、棒状製剤(bars)、ペンシル型製剤(pencils)、及びスプレー若しくはエアロゾルなどがあり、つけたままのタイプ(leave−on)の製剤及び洗い流しタイプ(rinse−off)の製剤を含む。これらの局所又は経皮用の製剤は、当業者に公知の技術を用いて、様々なタイプの固体付帯品、例えば、限定されないが、帯具、ガーゼ、Tシャツ、ソックス、ストッキング、下着、腰帯、手袋、オムツ、生理用ナプキン、包帯、ベッドカバー、拭き取り布、粘着性パッチ、非粘着性パッチ、密封パッチ、微小電気パッチ若しくはフェイスマスクに組み込んでもよいし、又は、中でも、メークアップファンデーション(例えば、液体ファンデーション及びコンパクトファンデーション)、メイク落としローション、メイク落としミルク、目元コンシーラー、アイシャドウ、口紅、リッププロテクター、リップグロス、並びにパウダーなどの多種のメークアップ製品に組み込んでもよい。
【0103】
本発明の美容又は医薬組成物は、本発明のペプチドの経皮吸収を高める薬剤を含んでもよく、このような薬剤として、例えば、限定されないが、中でも、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセタミド、ジメチルホルムアミド、界面活性剤、アゾン(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)、アルコール、尿素、エトキシジグリコール、アセトン、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールがある。さらに、本発明の美容又は医薬組成物は、本発明のペプチドの浸透を高める目的で、イオン浸透療法、超音波導入、エレクトロポレーション、微小電気パッチ、機械的圧力、浸透圧勾配、密封療法、マイクロインジェクション、若しくは例えば酸素圧による注射などの、圧力による無針注射、又はこれらのいずれかの組合せを用いて、治療しようとする局所部位に適用することができる。適用部位は、治療及び/又はケアしようとする病態、障害及び/又は疾患の性質によって決定される。
【0104】
さらに、本発明のペプチド、それらの立体異性体、及び/又はそれらの美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を含む美容組成物は、様々なタイプの経口投与用製剤として用いることができ、好ましくは、限定されないが、ゼラチンカプセル、ソフトカプセル、ハードカプセルなどのカプセル、糖衣錠を含む錠剤、粉末、顆粒、チューイングガム、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル、多糖フィルム、ゼリー若しくはゼラチン、及び当業者には公知のその他の任意の形態などの、経口美容品若しくは薬剤の形態で用いられる。特に、本発明のペプチドは、限定されないが、食事バー、又は圧縮若しくは非圧縮粉末などの機能性食品又は栄養強化食品の任意の形態に組み込むことができる。これらの粉末は、水、ジュース、ソーダ、乳製品、ダイズ由来品に溶解させてもよいし、又は食事バーに組み込んでもよい。本発明のペプチドは、限定されないが、食品産業で一般的な脂肪成分、水性成分、湿潤剤、保存料、食感付与剤、香味料、香料、酸化防止剤及び着色料などの一般的賦形剤及び補助剤と一緒に、経口組成物又は補助食品用に製剤化することができる。
【0105】
本発明のペプチド、それらの立体異性体、その混合物及び/又はそれらの美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を含む美容又は医薬組成物は、局所若しくは経皮経路と同様、その他の適切ないずれの経路でも投与することができ、例えば、経口又は非経口経路があり、その目的のために、本組成物は、所望される投与形態の製剤化に必要な薬学的に許容可能な賦形剤を含む。本発明に関して、用語「非経口」とは、鼻内、耳介、眼、膣、尿道、直腸経路、皮下、皮内、血管内注射、例えば、静脈内、筋内、眼内、硝子体内、角膜内、脊髄内、髄内、頭蓋内、頸管内、脳内、髄膜内、関節内、肝臓内、胸内、気管内、鞘内及び腹腔内注射、並びに任意の別の同様の注射若しくは注入技術を含む。当業者は、本発明のペプチドを含有する美容又は医薬組成物を投与することができる様々な手段について精通している。
【0106】
本発明に記載する美容又は医薬組成物に含まれる美容的若しくは薬学的に許容可能な補助剤の中でも、皮膚及び/又は粘膜の治療及び/又はケアのために同組成物に一般に用いられる追加成分として、例えば、限定されないが、以下:他のAQP−3調節剤、アクアポリン調節剤、アクアポリンファミリー由来のタンパク質、他のコラーゲン合成刺激剤、PGC−1α合成を調節する薬剤、PPARγの活性を調節する薬剤、脂肪細胞のトリグリセリド含有量を増加又は減少させる薬剤、脂肪細胞分化を刺激又は遅延させる薬剤、脂肪分解剤又は脂肪分解を刺激する薬剤、抗セルライト剤、脂肪生成剤、アセチルコリン受容体凝集の阻害剤、筋収縮の阻害剤、抗コリン作動薬、エラスターゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、メラニン合成の刺激若しくは阻害剤、美白若しくは脱色剤、着色促進剤、セルフタンニング剤、老化防止剤、NO−シンターゼ阻害剤、5α−レダクターゼ阻害剤、リシル−及び/若しくはプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、酸化防止剤、遊離ラジカル捕捉剤及び/若しくは大気汚染からの保護剤、反応性カルボニル種捕捉剤、抗糖化剤、抗ヒスタミン剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、乳化剤、皮膚軟化剤、有機溶媒、液体噴霧剤、湿潤剤などのスキンコンディショナー、水分を保持する物質、αヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸、保湿剤、表皮加水分解酵素、ビタミン、アミノ酸、タンパク質、顔料若しくは着色剤、色素、生体ポリマー、ゲル化ポリマー、増粘剤、界面活性剤、軟化剤、結合剤、保存料、シワ防止剤、眼の下の腫れを軽減若しくは治療することができる薬剤、剥離剤、落屑剤、角質溶解剤、抗菌剤、抗真菌剤、静真菌剤、殺菌剤、静菌剤、真皮若しくは表皮の高分子合成を刺激する薬剤及び/又はそれらの分解を阻害若しくは予防することができる薬剤、コラーゲン合成刺激剤、エラスチン合成刺激剤、デコリン合成刺激剤、ラミニン合成刺激剤、デフェンシン合成刺激剤、シャペロン合成刺激剤、cAMP合成刺激剤、熱ショックタンパク質、HSP70合成刺激剤、熱ショックタンパク質合成刺激剤、ヒアルロン酸合成刺激剤、フィブロネクチン合成刺激剤、サーチュイン合成刺激剤、脂質及び角質層成分(セラミド、脂肪酸など)の合成刺激剤、コラーゲン分解の阻害剤、エラスチン分解の阻害剤、カテプシンGなどのセリンプロテアーゼの阻害剤、線維芽細胞増殖の刺激剤、角化細胞増殖の刺激剤、脂肪細胞の刺激剤、メラノサイト増殖の刺激剤、角化細胞分化の刺激剤、アセチルコリンエステラーゼの阻害剤、皮膚弛緩剤、グリコサミノグリカン合成刺激剤、抗過角化症剤、面皰分解剤、抗乾癬剤、抗皮膚炎剤、抗湿疹剤、DNA修復剤、DNA保護剤、安定化剤、抗掻痒剤、敏感肌の治療及び/又はケアのための薬剤、固化剤(firming agents)、再緻密化剤(redensifying agent)、再構築剤、抗ストレッチマーク剤、結合剤、皮脂産生の調節剤、抗発汗剤、治癒刺激剤、治癒共補助剤、上皮再形成の刺激剤、上皮再形成の共補助剤、サイトカイン成長因子、鎮静剤、抗炎症剤、麻酔薬、毛細血管循環及び/若しくは微小循環に作用する薬剤、血管新生の刺激剤、血管透過性の阻害剤、ベノトニック剤(venotonic agents)、細胞代謝に作用する薬剤、真皮−表皮接合を改善する薬剤、発毛誘発剤、発毛阻害若しくは抑制剤、香料、香料、キレート剤、植物エキス、精油、海産物エキス、生物発酵プロセスから得られる薬剤、無機塩、細胞エキス、日焼け止め並びに紫外線A及び/又はBに対して作用する有機若しくは無機光保護剤、あるいはこれらの混合物などが挙げられるが、これらの物質は、組成物のその他の成分、特に、本発明の組成物に含まれる一般式(I)のペプチドと、物理的及び化学的に適合性であるものとする。同様に、これらの追加成分の性質は、本発明のペプチドの利点を許容されない程度まで改変させてはならない。これらの追加成分の性質は、合成であっても、又は植物エキスのように天然であってもよく、生物工学的方法、若しくは合成方法と生物工学的方法の組合せから得られるものでもよい。さらに別の例は、“CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary & Handbook”,12th Edition,(2008)に見ることができる。本発明に関して、生物工学的方法は、生物又はその一部において、活性成分、若しくはその一部を生成するあらゆる方法であると理解される。
【0107】
さらに、本発明の美容又は医薬組成物は、以下の群から選択される、美容的若しくは薬学的に有効な量の少なくとも1つの化合物、オイル若しくは蝋を含んでもよい:湿潤剤、水分を保持する物質、モイスチャライザー及び皮膚軟化剤、例えば、限定されないが、中でも、ポリオール及びポリエーテル、例えば、グリセリン、エチルヘキシルグリセリン、カプリリルグリコール、ペンチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール及びその誘導体、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、Glycereth−26、Sorbeth−30;パンテノール;ピログルタミン酸及びその塩若しくは誘導体;アミノ酸、例えば、セリン、プロリン、アラニングルタミン酸塩若しくはアルギニン;エクトイン及びその誘導体;N−(2−ヒドロキシエチル)アセトアミド;ピロリドンカルボン酸(PCA);N−ラウロイル−ピロリドンカルボン酸;N−ラウロイル−L−リシン;N−α−ベンゾイル−L−アルギニン;尿素;クレアチン;α−及びβ−ヒドロキシ酸、例えば、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸若しくはサリチル酸、及びその塩;ポリグリセリルアクリレート;糖及び多糖、例えば、グルコース、混合異性化糖、ソルビトール、ペンタエリスリトール、イノシトール、キシリトール、ソルビトール、トレハロース及びその誘導体、グルクロン酸ナトリウム、カラゲナン(ヤハズツノマタ(Chondrus crispus))又はキトサン;グルコサミノグリカン、例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体;あらゆる形態のアロエベラ(aloe vera);ハチミツ;可溶性コラーゲン;レシチン及びホスファチジルコリン;セラミド;コレステロール及びそのエステル;トコフェロール及びそのエステル、例えば、酢酸トコフェリル若しくはリノール酸トコフェリル;長鎖アルコール、例えば、セテアリルアルコール、ステアリン酸アルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、イソセチルアルコール若しくはオクタデカン−2−オル;長鎖アルコールエステル、例えば、乳酸ラウリル、酢酸ミリスチル若しくはC12〜C15アルキル安息香酸塩;脂肪酸、例えば、ステアリン酸、イソステアリン酸若しくはパルミチン酸;多価不飽和脂肪酸(PUFA);ソルビタン、例えば、ジステアリン酸ソルビタン;グリセリド、例えば、モノリシノレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、クエン酸ステアリン酸グリセリル若しくはカプリル酸及びカプリン酸トリグリセリド;スクロースエステル、例えば、パルミチン酸スクロース若しくはオレイン酸スクロース;ブチレングリコールエステル、例えば、ジカプリレート及びジカプレート;脂肪酸エステル、例えば、イソステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソブチル、ステアリン酸イソセチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、パルミチン酸セチル、ジ−n−セバシン酸、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、リノール酸イソプロピル、2−エチルヘキシルパルミチン酸、2−エチルヘキシルヤシ脂肪酸、オレイン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル;スクアレン;ミンクオイル;ラノリン及びその誘導体;アセチル化ラノリンアルコール;シリコーン誘導体、例えば、シクロメチコーン、ジメチコーン若しくはジメチルポリシロキサン;Antarcticine(登録商標)[INCI:シュードアルテロモナス(Pseudoalteromonas)発酵エキス]、Xpertmoist(商標)[INCI:グリセリン、シュードアルテロモナス(Pseudoalteromonas)発酵エキス、キサンタンガム(Xanthan Gum)、プロリン、アラニン、セリン、エチルヘキシルグリセリン、カプリリルグリコール]、Bodyfensine(商標)[INCI:アセチルジペプチド−3アミノヘキサノエート]、又はHyadisine(商標)[INCI:シュードアルテロモナス(Pseudoalteromonas)発酵エキス](Lipotecにより市販されている);石油;鉱油;鉱蝋及び合成蝋;蜜蝋(白蝋);パラフィン;又は植物由来の蝋及びオイル、例えば、キャンデリラ蝋(キャンデリラ(Euphorbia cerifera))、カルナウバ蝋(カルナウバヤシ(Copernicia cerifera))、シアバター(シアバターノキ(Butirospermum parkii))、カカオ脂(カカオ(Theobroma cacao))、ヒマシ油(トウゴマ(Ricinus communis))、ヒマワリ油(ヒマワリ(Helianthus annuus))、オリーブ油(オリーブ(Olea europaea))、ココナッツ油(ココヤシ(Cocos nucifera))、パーム油(ギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis))、麦芽油(コムギ(Triticum vulgare))、スイートアーモンド油(アーモンド(Prunus amygdalus dulces))、ジャコウバラ種子油(ロサ・モスカータ(Rosa moschata))、野生ダイズ油(ダイズ(Glycine soja))、ブドウ種子油(ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera))、カレンデュラ油(キンセンカ(Calendula officinalis))、ホホバ油(ホホバ(Simmonsis chinensis))、マンゴー油(マンゴー(Mangifera indica))、アボカド油(アボカド(Persea gratissima))、及び/又はこれらの混合物。
【0108】
本発明の別の態様は、一般式(I)の少なくとも1つの本発明のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を美容的若しくは薬学的に有効な量で含むと共に、限定されないが、中でも、ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera)、ロサ・カニーナ(Rosa canina)、ウコン(Curcuma longa)、カカオ(Theobroma cacao)、イチョウ(Ginkgo biloba)、レオントポジウム・アルピヌム(Leontopodium alpinum)若しくはデュナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)のエキス又は加水分解エキスからなる群から選択される少なくとも1種のシワ防止剤及び/又は老化防止剤、あるいはまた、限定されないが、中でも、Matrixyl(登録商標)[INCI:パルミトイルペンタペプチド−4]、Matrixyl3000(登録商標)[INCI:パルミトイルテトラペプチド−7、パルミトイルオリゴペプチド]、Essenskin(商標)[INCI:ヒドロキシメチオニンカルシウム]、Renovage[INCI:テプレノン]若しくはDermaxyl(登録商標)[INCI:パルミトイルオリゴペプチド](Sederma/Crodaから市販されている)、Vialox(登録商標)[INCI:ペンタペプチド3]、Syn(登録商標)Ake(登録商標)[INCI:ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミドジアセテート]、Syn(登録商標)−Coll[INCI:パルミトイルトリペプチド−5]、Phytaluronate[INCI:ローカストビーン(Ceratonia siliqua)ガム]若しくはPreregen(登録商標)[INCI:ツルマメ(Glycine soja)(ダイズ)タンパク質、オキシドレダクターゼ](Pentapharm/DSMから市販されている)、Myoxinol(商標)[INCI:加水分解オクラ(Hibiscus esculentus)エキス]、Syniorage(商標)[INCI:アセチルテトラペプチド−11]、Dermican(商標)[INCI:アセチルテトラペプチド−9]若しくはDN AGE(商標)LS[INCI:カシア・アラタ(Cassia alata)葉エキス](Laboratoires Serobiologiques/Cognisから市販されている)、Algisum C(登録商標)[INCI:メチルシラノールマンヌロエート]若しくはHydroxyprolisilane CN(登録商標)[INCI:メチルシラノールヒドロキシプロリンアスパルテート](Exsymolから市販されている)、Argireline(登録商標)[INCI:アセチルヘキサペプチド−8]、SNAP−7[INCI:アセチルヘプタペプチド−4]、SNAP−8[INCI:アセチルオクタペプチド−3]、Leuphasyl(登録商標)[INCI:ペンタペプチド−18]、Inyline(商標)[INCI:アセチルヘキサペプチド−30]、Aldenine(登録商標)[INCI:加水分解コムギタンパク質、加水分解ダイズタンパク質、トリペプチド1]、Preventhelia(商標)[INCI:ジアミノプロピオニルトリペプチド−33]、Decorinyl(登録商標)[INCI:トリペプチド−10シトルリン]、Trylagen(登録商標)[INCI:シュードアルテロモナス(Pseudoalteromonas)発酵エキス、加水分解コムギタンパク質、加水分解ダイズタンパク質、トリペプチド10シトルリン、トリペプチド1]、Eyeseryl(登録商標)[INCI:アセチルテトラペプチド−5]、Peptide AC29[INCI:アセチルトリペプチド−30シトルリン]、Relistase(商標)[INCI:アセチルアルギニルトリプトフィルジフェニルグリシン]、Thermostressine(登録商標)[INCI:アセチルテトラペプチド−22]、Lipochroman 6[INCI:ジメチルメトキシクロマノール]、Chromabright(商標)[INCI:ジメチルメトキシクロマニルパルミテート]、Antarcticine(登録商標)[INCI:シュードアルテロモナス(Pseudoalteromonas)発酵エキス]、dGlyage(商標)[INCI:リシンHCl、レシチン、トリペプチド−9シトルリン]、Vilastene(商標)[INCI:リシンHCl、レシチン、トリペプチド−10シトルリン]若しくはHyadisine(商標)[INCI:シュードアルテロモナス(Pseudoalteromonas)発酵エキス](Lipotecから市販されている)、Kollaren(登録商標)[INCI:トリペプチド1、デキストラン](Institut Europeen de Biologie Cellulaireから市販されている)、Collaxyl(登録商標)IS[INCI:ヘキサペプチド−9]、Laminixy IS(商標)[INCI:ヘプタペプチド]、Orsirtine(商標)GL[INCI:イネ(Oryza sativa)(コメ)エキス]、D’Orientine(商標)IS[INCI:フェニックス・ダクチリフェラ(Phoenix dactylifera)(ナツメヤシ)種子エキス]、Phytoquintescine(商標)[INCI:ヒトツブコムギ(トリチカム・モノコッカム)(Triticum monococcum))エキス]若しくはQuintescine(商標)IS[INCI:ジペプチド−4](Vincience/ISPから市販されている)、BONT−L−Peptide[INCI:パルミトイルヘキサペプチド−19](Infinitec Activosから市販されている)、Deepaline(商標)PVB[INCI:パルミトイル加水分解コムギタンパク質]若しくはSepilift(登録商標)DPHP[INCI:ジパルミトイルヒドロキシプロリン](Seppicから市販されている)、Gatuline(登録商標)Expression[INCI:アクメラ・オレラセア(Acmella oleracea)エキス]、Gatuline(登録商標)In−Tense[INCI:スピランテス・アクメラ(Spilanthes acmella)花エキス]若しくはGatuline(登録商標)Age Defense 2[INCI:ジュグランス・レジア(クルミ)種子エキス](Gattefosseから市販されている)、Thalassine(商標)[INCI:藻エキス](Biotechmarineから市販されている)、ChroNOline(商標)[INCI:カプロオイルテトラペプチド−3]若しくはThymulen−4[INCI:アセチルテトラペプチド−2](Atrium Innovations/Unipex Groupから市販されている)、EquiStat[INCI:リンゴ(Pyrus malus)果実エキス、ツルマメ(Glycine soja)種子エキス]若しくはJuvenesce[INCI:エトキシジグリコール及びカプリル酸トリグリセリド、レチノール、ウルソール酸、フィトナジオン、イロマスタット](Coletica/Engelhard/BASFから市販されている)、Ameliox[INCI:カルノシン、トコフェロール、マリアアザミ(Silybum marianum)果実エキス]若しくはPhytoCellTec Malus Domestica[INCI:リンゴ(Malus domestica)果実細胞培養物](Mibelle Biochemistryから市販されている)、Bioxilift[INCI:ピンピネラ・アニスム(Pimpinella anisum)エキス]若しくはSMS Anti−Wrinkle(登録商標)[INCI:アンノナ・スクアモサ(Annona squamosa)種子エキス](Silabから市販されている)、Ca2+チャネルのアンタゴニスト(例えば、限定されないが、アルべリン、マンガン若しくはマグネシウム塩、特定の2級若しくは3級アミン、レチノール及びその誘導体、イデベノン及びその誘導体)、コエンザイムQ10及びその誘導体、ボスウェリア酸(boswellic acid)及びその誘導体、GHK並びにその誘導体及び/若しくはその塩、カルノシン及びその誘導体、DNA修復酵素(例えば、限定されないが、フォトリアーゼ若しくはT4エンドヌクレアーゼV)、又は塩化物チャネルアゴニスト、及び/又はこれらの混合物が例として挙げられる、シワ防止剤及び/又は老化防止剤である、少なくとも1種の合成化合物若しくは生物工学的に得られる産物も、美容的若しくは薬学的に有効な量で含有する、美容又は医薬組成物に関する。
【0109】
本発明の別の態様は、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を美容的若しくは薬学的に有効な量で含み、さらに、少なくとも1種のAQP−3調節剤、例えば、限定されないが、中でも、ザクロ(Punica granatum)、アジュガ・ツルケスタニカ(Ajuga turkestanica)、ツボクサ(Centella asiatica)、キハダ(Phellodendron amurense)、ブラジルナッツ(Bertholletia)、オタネニンジン(Panax ginseng)のエキス若しくは加水分解エキス、グリセリルグリコシド、ヘキソシルグリセリド及び/又は(ヘキソシル)ヘキソシルグリセリド;環状AMP類似体;PKA−(アデニリルシクラーゼ)活性化因子;ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えば、限定されないが、カフェイン若しくはテオフィリン、無機塩、例えば、アルカリ土類塩、塩化物を含むアルカリ塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、リン酸水素、線状若しくは環状オリゴリン酸、炭酸塩若しくは重炭酸塩アニオン、特に塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ホウ砂、ケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化リチウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、亜硫酸アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、皮膚によって生成される酸由来の塩、例えば、ナトリウムリポネート、クエン酸ナトリウム、乳酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム;600g/モル以下の糖、例えば、限定されないが、ソルビトール、マンニトール、スクロース、グルコース;アミノ酸、例えば、限定されないが、アスパラギン、グリシン、アラニン、ビタミンA及びそのエステル、特に、ビタミンAパルミテート及びアセテート;ビタミンE及びそのエステル、特に、ビタミンEパルミテート及びアセテート;ビタミンC及びその誘導体、特にリン酸アスコルビルマグネシウム;キサンチン、特にカフェイン;アジアティック酸、マデカシン酸、マデカソシド、エラグ酸、ダイズサポニン、純粋海水、アスパラギン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、環状AMP、D−キシロース、ヒアルロン酸、グルコン酸カルシウム、イソフラボン、グリチルリチン酸アンモニウム、コルチコステロイド、レスベラトロール若しくはパイセイド、及び/又はこれらの混合物も、美容的若しくは薬学的に有効な量で含有する、美容又は医薬組成物に関する。
【0110】
さらに、本発明は、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を美容的若しくは薬学的に有効な量で含み、さらに、治癒刺激剤、治癒共補助剤及び/又は上皮再形成剤、例えば、限定されないが、中でも、アリストロキア・クレマチス(Aristoloquia clematis)、ツボクサ(Centella asiatica)、ロサ・モスカータ(Rosa moschata)、エキナセア・アングスチフォリア(Echinacea angustifolia)、ヒレイリソウ(Symphytum officinal)、スギナ(Equisetum arvense)、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)、ミモザ・テヌイフローラ(Mimosa tenuiflora)、アボガド(Persea gratisima)、アフリカプルーン(Prunus africanum)、トーメンチラ・エレクタ(Tormentilla erecta)、及びアロエベラ(Aloe vera)のエキス若しくは加水分解エキス、Polyplant(登録商標)Epithelizing[INCI:トウキンセンカ(Calendula officinalis)、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)、カミツレ(Chamomilla recutita)、ローズマリー(Rosmarinus officinalis)](Provitalから市販されている)、Cytokinol(登録商標)LS 9028[INCI:加水分解カゼイン、加水分解酵母タンパク質、リシンHCl](Serobiologiquesから市販されている)/Cognis o Deliner(登録商標)[INCI:トウモロコシ(Zea mays)(トウモロコシ)粒エキス](Coletica/Engelhardから市販されている)の少なくとも1つを美容的若しくは薬学的に有効な量で含有し、並びに/又は、例えば、限定されないが、中でも、以下:アラントイン、カドヘリン、インテグリン、セレクチン、ヒアルロン酸受容体、免疫グロブリン、線維芽細胞成長因子、結合組織増殖因子、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、表皮増殖因子、インスリン様増殖因子、角化細胞増殖因子、コロニー刺激因子、トランスフォーミング増殖因子β、腫瘍壊死因子α、インターフェロン、インターロイキン、マトリックスメタロプロテアーゼ、タンパク質チロシンホスファターゼ受容体、Antarcticine(登録商標)[INCI:シュードアルテロモナス(Pseudoalteromonas)発酵エキス]、Bodyfensine(登録商標)[INCI:アセチルジペプチド−3アミノヘキサノエート]若しくはDecorinyl(商標)[INCI:トリペプチド−10シトルリン]、Trylagen(登録商標)[INCI:シュードアルテロモナス(Pseudoalteromonas)発酵エキス、加水分解コムギタンパク質、加水分解ダイズタンパク質、トリペプチド−10シトルリン、トリペプチド−1]、Xpertmoist(商標)[INCI:グリセリン、シュードアルテロモナス(Pseudoalteromonas)発酵エキス、キサンタンガム(Xanthan Gum)、プロリン、アラニン、セリン、エチルヘキシルグリセリン、カプリリルグリコール]、Serilesine(登録商標)[INCI:ヘキサペプチド−10]若しくはThermostressine(商標)[INCI:アセチルテトラペプチド−22](Lipotecから市販されている)、及び/又はこれらの混合物などが例として挙げられる、治癒刺激剤、治癒共補助剤及び/又は上皮再形成剤である、合成化合物、エキス若しくは生物工学的方法からの産物の少なくとも1つを、美容的若しくは薬学的に有効な量で含有する、美容又は医薬組成物に関する。
【0111】
本発明の別の態様は、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、それらの混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を美容的若しくは薬学的に有効な量で含み、さらにまた、抗乾癬、抗皮膚炎及び/又は抗湿疹剤、例えば、限定されないが、中でも、コルチコステロイド、例えば、クロベタゾール、ベタメタゾン、デキサメタゾン、ハロベタゾール、ジフロラゾン、フルオシノニド、ハルシノニド、アムシノニド、デソキシメタゾン、トリアムシノロン、アセトニド、モメタゾン、フルチカゾン、フルシノロン、アセトニド、フルランドレノリド、デソニド、プレドニカルベート、ヒドロコルチゾン、カルシポトリエン、ビタミンD、アントラリン、カルシトリオール、サリチル酸;コールタール、石炭産業由来の産物及び副産物;タール、石油蒸留由来の産物及び副産物、タザロテン、抗生物質、アゾチオプリン、コルチシン、5−フルオロウラシル、フマル酸エステル、ヒドロキシ尿素、ミコフェノール酸モフェチル、プロピルチオウラシル、スルファサラジン、6−チオグアニン、カルシネウリン阻害剤、例えば、限定されないが、タクロリムス及びピメクロリムス;あるいは、局所的に適用されるレチノイド、例えば、限定されないが、トレチノイン、及び/又はこれらの混合物の少なくとも1つを、美容的若しくは薬学的に有効な量で含有する、美容又は医薬組成物に関する。
【0112】
適用
本発明の一態様は、皮膚及び/又は粘膜の治療及び/又はケアのための美容又は医薬組成物の調製における、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0113】
さらに、本発明の別の態様は、AQP−3調節のための美容又は医薬組成物の調製における、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0114】
さらに、本発明の別の態様は、コラーゲン合成刺激のための美容又は医薬組成物の調製における、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0115】
本発明の別の特定の態様は、皮膚及び/又は粘膜の水和のための美容又は医薬組成物の調製における、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0116】
本発明の一態様は、皮膚バリア機能を改善するための美容又は医薬組成物の調製における、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0117】
本発明の一態様は、皮膚及び/又は粘膜の上皮再形成及び/又は治癒のための美容又は医薬組成物の調製における、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0118】
本発明の一態様は、皮膚の老化及び/又は光老化の治療及び/又はケアのための美容又は医薬組成物の調製における、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0119】
本発明の別の態様は、顔のシワの治療及び/又は軽減のための美容又は医薬組成物の調製における、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0120】
本発明の別の態様は、表皮中の水の非効率若しくは異常な輸送に関連する皮膚及び/又は粘膜の疾患及び/又は障害、乾癬、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、湿疹、海綿質状態、浮腫、遺伝性魚鱗癬、老人性乾皮症、膣の乾燥、手掌角化症、足底角化症、シワ、表情ジワ、ストレッチマーク、皮膚の老化、皮膚の光老化、皮膚癌、治癒若しくは上皮再形成障害、慢性潰瘍、挫瘡(ニキビ)、ケロイド、肥厚性瘢痕、蜂巣炎、オレンジピールスキン、弾性線維症、光線性弾性線維症、角化症、酒さ、毛細血管拡張症、赤色膿疹、眼の下の腫れ、眼の周りのクマ、静脈瘤、脱毛症、歯肉炎、歯周炎、炎症過程及び水泡性類天疱瘡からなる群から選択される、AQP−3調節及び/又はコラーゲン合成の刺激によって改善するか、又は予防される皮膚及び/又は粘膜の病態、障害及び/又は疾患の治療及び/又はケアのための、美容的又は医薬組成物の調製における、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0121】
別の態様では、本発明は、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を、美容的若しくは薬学的に有効な量で投与することを含む、皮膚の治療及び/又はケアの方法に関する。
【0122】
別の態様では、本発明は、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を、美容的若しくは薬学的に有効な量で投与することを含む、AQP−3の調節の方法に関する。
【0123】
別の態様では、本発明は、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を、美容的若しくは薬学的に有効な量で投与することを含む、コラーゲン合成の方法に関する。
【0124】
別の態様では、本発明は、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を、美容的若しくは薬学的に有効な量で投与することを含む、皮膚及び/又は粘膜の水和の方法に関する。
【0125】
別の態様では、本発明は、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を、美容的若しくは薬学的に有効な量で投与することを含む、皮膚バリア機能を改善する方法に関する。
【0126】
別の態様では、本発明は、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を、美容的若しくは薬学的に有効な量で投与することを含む、皮膚及び/又は粘膜の上皮再形成及び/又は治癒の方法に関する。
【0127】
別の態様では、本発明は、一般式(I)の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を、美容的若しくは薬学的に有効な量で投与することを含む、皮膚の老化及び/又は光老化を治療及び/又は予防する方法に関する。
【0128】
別の態様では、皮膚の老化及び/又は光老化を治療及び/又は予防する方法は、顔のシワを軽減及び/又は治療する方法に関する。
【0129】
別の特定の態様では、本発明は、表皮中の水の非効率若しくは異常な輸送に関連する皮膚及び/又は粘膜の疾患及び/又は障害、乾癬、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、湿疹、海綿質状態、浮腫、遺伝性魚鱗癬、老人性乾皮症、膣の乾燥、手掌角化症、足底角化症、シワ、表情ジワ、ストレッチマーク、皮膚の老化、皮膚の光老化、皮膚癌、治癒若しくは上皮再形成障害、慢性潰瘍、挫瘡(ニキビ)、ケロイド、肥厚性瘢痕、蜂巣炎、オレンジピールスキン、弾性線維症、光線性弾性線維症、角化症、酒さ、毛細血管拡張症、赤色膿疹、眼の下の腫れ、眼の周りのクマ、静脈瘤、脱毛症、歯肉炎、歯周炎、炎症過程及び水泡性類天疱瘡からなる群から選択される、AQP−3調節及び/又はコラーゲン合成の刺激によって改善するか、又は予防される皮膚及び/又は粘膜の様々な病態、障害及び/又は疾患の治療及び/又はケアの方法であって、少なくとも1つの一般式(I)のペプチド、その立体異性体、その混合物及び/又はその美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を、美容的若しくは薬学的に有効な量で投与することを含む方法
に関する。
【0130】
皮膚及び/又は粘膜の治療及び/又はケアのための美容又は医薬組成物の例としては、中でも、クリーム、限定されないが、水中の油及び/若しくはシリコーンのエマルジョン、油及び/若しくはシリコーン中の水のエマルジョン、水/油/水型エマルジョン若しくは水/シリコーン/水型エマルジョン、及び油/水/油若しくはシリコーン/水/シリコーン型エマルジョンなどの多相エマルジョン、無水組成物、水性分散液、オイル、ミルク、バルサム、フォーム、ローション、ジェル、クリームジェル、水性アルコール溶液、水性グリコール溶液、リニメント、血清(sera)、石鹸、しょう液(serums)、多糖フィルム、軟膏、ムース、ポマード、粉末、棒状製剤(bars)、ペンシル型製剤(pencils)、及びスプレー若しくはエアロゾルなどがあり、つけたままのタイプ(leave−on)の製剤及び洗い流しタイプ(rinse−off)の製剤を含み、さらには、拭き取り布、ヒドロゲル、粘着性パッチ、非粘着性パッチ、微小電気パッチ若しくはフェイスマスク、メークアップファンデーション(例えば、液体ファンデーション及びコンパクトファンデーション)、メイク落としローション、メイク落としミルク、目元コンシーラー、アイシャドウ、口紅、リッププロテクター、リップグロス、並びにパウダーなどのメークアップ製品などが挙げられる。
【0131】
本発明のペプチド、それらの立体異性体及び/又はそれらの美容的若しくは薬学的に許容可能な塩を含む組成物は、病態、障害及び/又は疾患の治療及び/又はケアを行う必要に応じて、皮膚及び/又は粘膜に適用してよく、経口若しくは非経口投与してもよい。
【0132】
適用又は投与の頻度は、各被検体の必要性に応じて、大幅に変動しうるものであり、推奨される適用又は投与に従い、月1回から1日に10回、好ましくは週1回から1日に4回、より好ましくは週3回から1日に3回、さらにより好ましくは1日に1回又は2回である。
【0133】
本明細書に提供する以下の具体的な実施例は、本発明の本質を説明するものである。これらの実施例は、あくまで説明を目的として含まれるに過ぎず、本明細書において請求される本発明に対する制限として解釈すべきではない。
【実施例】
【0134】
全般的方法
試薬及び溶媒はすべて合成グレードであり、追加の処理を行うことなく使用する。
【0135】
略称
アミノ酸に用いられる略称は、Eur.J.Biochem.(1984)138:9−37に概説されている1983 IUPAC−IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature recommendationsの規則に従う。
【0136】
(R)は、樹脂;2,6−ジClZは、2,6ジクロロベンジル;2−BrZは、2−ブロモベンジルオキシカルボニル;2−ClTrt−(R)は、2−クロロトリチル樹脂;Acは、アセチル;Adpocは、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエトキシ−カルボニル;Alaは、アラニン;Allは、アリル;Allocは、アリルオキシカルボニル;AMは、2−[4−アミノメチル−(2,4−ジメトキシフェニル)]フェノキシ酢酸;AQP−3は、アクアポリン−3;Argは、アルギニン;Bocは、tert−ブチルオキシカルボニル;Bomは、ベンジルオキシメチル;Bzlは、ベンジル;c.u.は、コルネオメトリー単位;カルセイン−AMは、カルセインのアセトメトキシ誘導体;cAMPは、環状アデノシン一リン酸;Cbzは、カルボキシベンジル;cHxは、シクロヘキシル;ClZは、2−クロロベンジル;C末端は、カルボキシ末端;DCMは、ジクロロメタン;Ddeは、N−[1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘクス−1−イリデン)エチル;DIEAは、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン;DIPCDIは、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド;Dmabは、4−(N−[1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)−3−メチルブチル]アミノ)ベンジル;DMEMは、ダルベッコ改変イーグル培地;DMFは、N,N−ジメチルホルムアミド;DNAは、デオキシリボ核酸;Dnpは、2,4−ジニトロフェノール;ELISAは、酵素結合イムノソルベント検定法;equivは、当量;ESI−MSは、エレクトロスプレーイオン化質量分析;FBSは、ウシ胎児血清;Fmは、フルオレニルメチル;Fmocは、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル;Gluは、グルタミン酸;Glnは、グルタミン;Glyは、グリシン;HDFaは、ヒト成人皮膚線維芽細胞;Hisは、ヒスチジン;HOAtは、11−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール;HOBtは、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール;HPLC、高性能液体クロマトグラフィー;HSP70は、熱ショックタンパク質70kDa;INCIは、International Nomenclature of Cosmetic Ingredients;ivDdeは、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)−3−メチル−ブチル;MBHA、p−メチルベンズヒドリルアミン;Meは、メチル;MeCNは、アセトニトリル;MeOHは、メタノール;MMPは、マトリックスメタロプロテアーゼ;mRNAは、メッセンジャーリボ核酸;Mtsは、メシチレンスルホニル;Mttは、メトキシトリチル若しくはメチルトリチル;NMFは、天然保湿因子;N末端は、アミノ末端;PALは、5−(4−アミノメチル−3,5−ジメトキシフェノキシ)吉草酸;Palmは、パルミトイル;PBSは、リン酸緩衝食塩水;PCAは、ピロリドンカルボン酸;PCRは、ポリメラーゼ連鎖反応;PGC−1αは、PPARγコアクチベーター1α;pNZは、p−ニトロベンジルオキシカルボニル;PPARγは、ペロキソーム増殖剤活性化受容体;Proは、プロリン;PUFAsは、多価不飽和脂肪酸;q.s.は、十分量;q.s.p.は、〜に対する十分量;RNAは、リボ核酸;Serは、セリン;tBuは、tert−ブチル;Teocは、2−(トリメチルシリル)エチルオキシカルボニル;TFAは、トリフルオロ酢酸;TGF−βは、トランスフォーミング増殖因子−β;THFは、テトラヒドロフラン;TISは、トリイソプロピルシラン;Tosは、トシル又はp−トルエンスルホニル;Trocは、2,2,2トリクロロエトキシカルボニル;Trtは、トリフェニルメチル若しくはトリチル;Tyrは、チロシン;ULVは、単層小胞;UVAは、紫外線A;UVBは、紫外線B;Valは、バリン;Xanは、キサンチル;Zは、ベンジルオキシカルボニル。
【0137】
化学合成
合成プロセスはすべて、多孔性ポリエチレンディスクを取り付けたポリプロピレンシリンジにおいて実施した。試薬及び溶媒はすべて、合成グレードであり、追加の処理を行うことなく使用した。溶媒及び可溶性試薬は、吸引によって除去した。Fmoc基は、ピペリジン−DMF(2:8、v/v)で除去した(1x1分、1x5分、5mL/g樹脂)[Lloyd−Williams P.et al.(1997)“Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins”CRC,Boca Raton(FL,USA)]。脱保護、カップリング、及び再度の脱保護の各ステップ間の洗浄は、各回に10mL溶媒/g樹脂のDMF(3x1分)を用いて実施した。カップリング反応は、3mL溶媒/g樹脂で行った。カップリングの制御は、ニンヒドリン試験[Kaiser E.et al.,Anal.Biochem.,(1970),34:595−598]又はクロラニル試験[Christensen T.,Acta Chem.Scand.,(1979),33B:763−766]の実施により行った。合成反応及び洗浄はすべて、25℃で実施した。
【0138】
HPLCクロマトグラフィー分析は、30℃に温度自動調節した逆相カラム(250x4.0mm、Kromasil C、5μm、Akzo Nobel, Sweden)を用いて、島津(Shimazu)(京都、日本)の機器で実施した。溶出は、水(+0.1%TFA)中のアセトニトリル(+0.07%TFA)の勾配を用いて、流速1mL/分で実施し、検出は220nmで実施した。可動相として4:1のMeCN:HO(+0.1%TFA)の混合物を用い、流速0.2mL/分で、WATERS Alliance ZQ 2000検出装置において、エレクトロスプレーイオン化質量分析を実施した。
【0139】
実施例1
Fmoc−W−X−AA−AA−AA−AA−AA−AA−Y−Z−O−2−ClTrt−(R)(AAは、−L−Tyr−、−L−Thr−又は−L−Ser−であり;AAは、−L−Pro−又は−L−Val−であり;AAは、−L−Ala−又は−L−Gly−であり;AAは、−L−Val−、−L−Glu−又は−Gly−であり;AAは、−L−Ala−又は−Gly−であり;AAは、−L−Pro−、−L−His−、−Gly−又は−L−Gln−であり;n、m、p及びqは、0である)の取得。
【0140】
5.37gのFmoc−L−Gln(Trt)−OH、2.62gのFmoc−Gly−OH、5.45gのFmoc−L−His(Trt)−OH、又は2.97gのFmoc−L−Pro−OH(8.8mモル;1当量)を55mLのDCMに溶解させて、これに1.3mLのDIEA(7.6mモル;0.86当量)を添加したものを、乾燥2−クロロトリチル樹脂(5.5g;8.8mモル)にカップリングさせた。これらを5分間撹拌した後、2.5mLのDIEAを添加した(14.6mモル;1.66当量)。この混合物を40分間反応させた。4.4mLのMeOHで処理することによって、残留塩化物基をブロックした。
【0141】
N末端のFmoc基を、全般的方法に記載したように脱保護し、6.54gのFmoc−Gly−OH又は7.25gのFmoc−L−Ala−OH(22mモル;2.5当量)を、DIPCDI(3.39mL、22mモル、2.5当量)及びHOBt(3.37g、22mモル、2.5当量)の存在下、溶媒としてDMFを用いて、ペプチジル樹脂上に1時間カップリングさせた。次に、これらの樹脂を全般的方法に記載したように洗浄した後、Fmoc基の脱保護を繰り返して、次のアミノ酸をカップリングさせた。記載したプロトコルに従い、7.47gのFmoc−L−Val−OH、6.54gのFmoc−Gly−OH又は9.76gのFmoc−L−Glu(OtBu)−OH(22mモル;2.5当量);6.54gのFmoc−Gly−OH又は7.25gのFmoc−L−Ala−OH(22mモル;2.5当量);7.42gのFmoc−L−Pro−OH又は7.47gのFmoc−L−Val−OH(22mモル;2.5当量)、続いて10.11gのFmoc−L−Tyr(tBu)−OH、8.74gのFmoc−L−Thr(tBu)−OH又は8.44gのFmoc−L−Ser(tBu)−OH(22mモル;2.5当量)のカップリングを、各カップリングにおいて3.37gのHOBt(22mモル;2.5当量)及び3.39mLのDIPCDI(22mモル;2.5当量)の存在下で順次行った。
【0142】
合成後、ペプチジル樹脂をDCMで洗浄し(5x3分)、窒素気流下で乾燥させた。
【0143】
実施例2
Fmoc−W−X−AA−AA−AA−AA−AA−AA−Y−Z−AM−MBHA−(R)(AAは、−L−Tyr−、−L−Thr−又は−L−Ser−であり;AAは、−L−Pro−又は−L−Val−であり;AAは、−L−Ala−又は−L−Gly−であり;AAは、−L−Val−、−L−Glu−又は−Gly−であり;AAは、−L−Ala−又は−Gly−であり;AAは、−L−Pro−、−L−His−、−Gly−又は−L−Gln−であり;n、m、p及びqは、0である)の取得。
【0144】
0.73mモル/g(5mモル)で官能化した6.85gのFmoc−AM−MBHA樹脂を、Fmoc基を除去する目的で、記載した一般的プロトコルに従ってピペリジン−DMFで処理した。4.22gのFmoc−L−Pro−OH、7.75gのFmoc−L−His(Trt)−OH、3.72gのFmoc−Gly−OH又は7.63gのFmoc−L−Gln(Trt)−OH(12.5mモル;2.5当量)を、DIPCDI(1.93mL;12.5mモル;2.5当量)及びHOBt(1.93g;12.5mモル;2.5当量)の存在下、溶媒としてDMFを用いて、1時間にわたり脱保護樹脂に組み込んだ。
【0145】
次に、これらの樹脂を全般的方法に記載したように洗浄した後、Fmoc基の脱保護を繰り返して、次のアミノ酸をカップリングさせた。前述したプロトコルに従い、3.72gのFmoc−Gly−OH又は4.12gのFmoc−L−Ala−OH(12.5mモル;2.5当量);4.24gのFmoc−L−Val−OH、5.54gのFmoc−L−Glu(OtBu)−OH又は3.72gのFmoc−Gly−OH(12.5mモル;2.5当量);3.72gのFmoc−Gly−OH又は4.12gのFmoc−L−Ala−OH(12.5mモル;2.5当量);4.24gのFmoc−L−Val−OH又は4.22gのFmoc−L−Pro−OH(12.5mモル;2.5当量);続いて5.74gのFmoc−L−Tyr(tBu)−OH、4.97gのFmoc−L−Thr(tBu)−OH又は4.79gのFmoc−L−Ser(tBu)−OH(12.5mモル;2.5当量)のカップリングを、各カップリングにおいて1.93gのHOBt(12.5mモル;2.5当量)及び1.93mLのDIPCDI(12.5mモル;2.5当量)の存在下で順次行った。
【0146】
合成後、ペプチジル樹脂をDCMで洗浄し(5x3分)、窒素気流下で乾燥させた。
【0147】
実施例3
FmocN末端保護基除去のための一般的手順
実施例1及び2で得られたペプチジル樹脂のN末端Fmoc基を全般的方法で述べたように、脱保護した(DMF中の20%ピペリジン、1x5分+1x20分)。ペプチジル樹脂をDMF(5x1分)、DCM(4x1分)、ジエチルエーテル(4x1分)で洗浄した後、真空下で乾燥させた。
【0148】
実施例4
実施例3で得られたペプチジル樹脂上にRパルミトイル基を導入するための手順
DMF(1mL)に予め溶解させたパルミチン酸(10mモル;10当量)2.56gを、1.53gのHOBt(10mモル;10当量)及び1.54mLのDIPCDI(10mモル;10当量)の存在下で、実施例3で得られたペプチジル樹脂1mモル上に添加した。これらを15時間にわたって反応させた後、得られた樹脂をTHF(5x1分)、DCM(5x1分)、DMF(5x1分)、MeOH(5x1分)、DMF(5x1分)、THF(5x1分)、DMF(5x1分)、DCM(4x1分)、エーテル(3x1分)で洗浄してから、真空下で乾燥させた。
【0149】
実施例5
実施例3で得られたペプチジル樹脂上にRアセチル基を導入するための手順
実施例3で得られたペプチジル樹脂1mモルを、25当量のDIEAの存在下で、溶媒として5mLのDMFを用いて、25当量の無水酢酸で処理した。これを30分反応させた後、ペプチジル樹脂をDMF(5x1分)、DCM(4x1分)、ジエチルエーテル(4x1分)で洗浄し、真空乾燥させた。
【0150】
実施例6
実施例3、4及び5で得られたペプチジル樹脂の切断手順
実施例3、4及び5で得られた乾燥ペプチジル樹脂200mgを、室温にて撹拌しながら2時間、5mLのTFA:TIS:HO(90:5:5)で処理した。濾液を50mLの冷ジエチルエーテル上に収集して、多孔性ポリエチレンディスクを取り付けたポリプロピレンシリンジを通して濾過した後、50mLのジエチルエーテルで5回洗浄した。最終析出物を真空下で乾燥させた。
【0151】
得られたペプチドを、HO中(+0.1%TFA)のMeCN(+0.07%TFA)の勾配でHPLC分析したところ、全てのケースで80%を超える純度を示した。得られたペプチドの同一性は、ESI−MSで確認した。
【0152】
実施例7
ポリマー支持体の切断手順及びR置換アミンによる官能化:Fmoc−W−X−AA−AA−AA−AA−AA−AA−Y−Z−NH−(CH15−CH(AAは、−L−Tyr−、−L−Thr−又は−L−Ser−であり;AAは、−L−Pro−又は−L−Val−であり;AAは、−Gly−又は−L−Ala−であり;AAは、−L−Val−、−L−Glu−又は−Gly−であり;AAは、−Gly−又は−L−Ala−であり;AAは、−L−Pro−、−L−His−、−Gly−又は−L−Gln−であり;n、m、p及びqは、0である)の取得。
【0153】
予めKOHの存在下で真空乾燥しておいた実施例5のペプチジル樹脂Ac−W−X−AA−AA−AA−AA−AA−AA−Y−Z−O−2−ClTrt−(R)の150mgを、DCM中の3%TFA溶液3mLで5分処理することにより、側鎖が完全に保護されたペプチドAc−W−X−AA−AA−AA−AA−AA−AA−Y−Z−OHが得られた。濾液を50mLの冷ジエチルエーテル上に収集して、この処理を3回繰り返した。エーテル性溶液を室温及び減圧下で蒸発乾固させ、析出物をHO中の50%MeCNに溶解してから、凍結乾燥した。得られた粗ペプチドの10mgを計量してフラスコに導入し、3当量のヘキサデシルアミン及び25mLの無水DMFを添加した。2当量のDIPCDIを添加し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、47℃で反応させた。反応は、出発物質が消滅するまで、HPLCでモニタリングし、24〜48時間後に完了した。溶媒を蒸発乾固させた後、DCMで2回共蒸発させた。得られた残留物[側鎖が完全に保護されたAc−W−X−AA−AA−AA−AA−AA−AA−Y−Z−NH−(CH15−CH]を25mLのTFA−DCM−アニソール混合物(49:49:2)中に再懸濁させ、室温にて30分間反応させた。250mLの冷ジエチルエーテルを添加し、溶媒を減圧下で蒸発させた後、エーテルによる共蒸発をさらに2回実施した。残留物をHO中の50%MeCNの混合物に溶解してから、凍結乾燥した。
【0154】
得られたペプチドを、HO(+0.1%TFA)中のMeCN(+0.07%TFA)の勾配でHPLC分析したところ、全てのケースで60%を超える純度を示した。得られたペプチドの同一性は、ESI−MSで確認した。
【0155】
実施例8
ヒトAQP−3プロモーター活性の調節
AQP−3遺伝子のプロモーターの調節能力を、ヒトAQP−3プロモーターの調節下で、ルシフェラーゼ遺伝子で安定にトランスフェクトした角化細胞の細胞系で評価した。ウェル当たり20,000〜30,000個の細胞を接種し、DMEM培地で24時間インキュベートした後、本発明のペプチドを0.5mg/mLで添加し、さらに16〜24時間インキュベートした。DMEM培地(担体)を負の対照として用いた。プロモーターの活性の測定は、製造業者の指示に従って、Steady−Glo(登録商標)Luciferase Assay System(PROMEGA)キットを用いて実施した。ルミノメーターにより630nmでルミネッセンス値を読み取り、プロモーターの活性を決定し、これを負の対照の値に対して標準化した。
【0156】
表2に、試験条件下で、10%を超えるヒトAQP−3プロモーターの活性の刺激の値を示したペプチドを詳細に示す。


【0157】
実施例9
AQP−3遺伝子の転写に対するペプチドAc−L−Ser−L−Ile−L−Tyr−L−Val−L−Ala−L−Thr−NH及びAc−L−Ser−L−Val−L−Val−L−Val−L−Arg−L−Thr−NHの作用
遺伝子AQP−3の発現レベルを定量的リアルタイムPCRによって測定した。成人の皮膚由来のヒト角化細胞系をウェル当たり10,000〜20,000細胞の密度で、EpiLife(商標)培地(Cascade Biologics)において3〜5日間インキュベートし、次に、本明細書のペプチドと一緒にさらに16〜24時間インキュベートした後、細胞を溶解させて、RNAを抽出した。PCRは定量的リアルタイムで、TaqMan(登録商標) Gene Expression Cells−to−CT(Applied Biosystems)キットを、製造業者の指示に従い用いて、また、適切なプローブ(AQP−3遺伝子には、TaqMan(登録商標)Hs00185020_m1プローブを、また、真核生物リボソームサブユニット18Sには、Taqman(登録商標)Hs99999901_s1プローブ、発現の内在性制御)と一緒に実施し、得られた値を非処理(担体)のAQP−3mRNAの基底レベルに対して標準化した。
【0158】
表3に、記載した濃度の様々なペプチドと一緒にインキュベートした後の、AQP−3遺伝子のmRNAの相対定量値を示す。

【0159】
実施例10
ヒト皮膚線維芽細胞におけるI型コラーゲンの刺激
ヒト皮膚線維芽細胞(HDFa、Cascade Biologics)におけるI型コラーゲンを刺激する本発明のペプチドの能力を、ELISA(酵素結合イムノソルベント検定法)を用いて培養物中で評価した。線維芽細胞を、その増殖のための特定の因子を添加したM106において増殖させた。ウェル当たり50,000細胞を接種して、37℃で、5%COの加湿空気を用いて、インキュベートした。24時間後、本発明のペプチドを添加し、さらに48時間インキュベートし、その後、上澄みを回収した。
【0160】
96ウェルプレートに、50μLの標準ウシI型コラーゲン(Sigma)又は事前に回収した上澄みを塗布した。加湿雰囲気において、4℃で一晩かけてコラーゲンをウェルに吸収させた。プレートを3回洗浄した後、3%ウシ血清アルブミンで1時間にわたりブロックした後、一次抗I型コラーゲン抗体(Sigma)と一緒に2時間インキュベートした。続いて、二次抗体であるヤギ抗マウスIgG−HRP(Molecular Probes)を添加した。撹拌しながら、リン酸基質でプレートを30分間インキュベートし、3MのHSOを添加することにより、反応を停止した。吸光度をプレートリーダー(Genios,Tecan)により490nmで測定し、コラーゲンの濃度を標準線形回帰線と比較することによって決定した。

【0161】
実施例11
ヒト表皮角化細胞の増殖に対するAc−L−Ser−L−Pro−L−Ala−Gly−Gly−L−Pro−NHの作用
細胞増殖を蛍光による細胞生存率検定方法により評価したが、この方法では、カルセイン−AMのその蛍光形態への酵素的変換によって、生細胞を死細胞から識別する。
【0162】
ヒト角化細胞を、ウシ胎児血清(FBS,Cultek)を添加したDMEMにおいて、集密が達成されるまで培養した。次に、トリプシンを用いて細胞を分離し、96ウェルプレートに、ウェル当たり100,000細胞の密度で接種した。5%COの加湿雰囲気下、37℃で、DMEMにおける24時間のインキュベーション後、新鮮な培地を様々な濃度の本発明の産物と一緒に添加した。負の対照として、DMEMで処理した細胞を用いた。細胞を同じ条件下でさらに24時間インキュベートし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS,Sigma)に0.4μMで希釈したカルセイン−AM(Molecular Probes)100μlで、培地を交換した。37℃で30分のインキュベーション後、プレートリーダー(Genios Tecan)により励起波長485nm(λexc)及び蛍光波長530nm(λem)で蛍光を測定した。総増殖率をT/C x 100(式中、Tは、本発明のペプチドで処理したウェルの蛍光であり、Cは、DMEMで処理した対照ウェルの蛍光である)として計算した。
【0163】
表5に、記載した濃度の本発明のペプチドと一緒にインキュベートした後の、表皮角化細胞増殖の刺激の値を示す。

【0164】
ペプチドAc−L−Ser−L−Pro−L−Ala−Gly−Gly−L−Pro−NHは、ヒト角化細胞の増殖を2.5mg/mLで31%刺激した。従って、このペプチドは、皮膚バリア機能を改善する。
【0165】
実施例12
Ac−L−Tyr−L−Pro−L−Ala−L−Glu−Gly−L−Gln−NHを含むナノ構造脂質担体のコアセルベートの調製
好適な容器中に、以下のものを記載の順に添加した:水[INCl:水(アクア)]、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸[INCl:ヒドロキシプロピルデンプンリン酸]、スクレロチウムガム[INCl:スクレロチウムガム]、ヒアルロン酸ナトリウム[INCl:ヒアルロン酸ナトリウム]、プロパンジオール[INCl:プロパンジオール]、フェノキシエタノール[INCl:フェノキシエタノール](A相成分)。A相からの成分の混合物を65℃に加熱した。
【0166】
別の容器中に、セスキオレイン酸ソルビタン[INCl:セスキオレイン酸ソルビタン]、及びイソヘキサデカン[INCl:イソヘキサデカン]を添加し(B相成分)、60〜65℃で溶解させた。
【0167】
第3の容器中で、水[INCl:水(アクア)]、Ac−L−Tyr−L−Pro−L−Ala−L−Glu−Gly−L−Gln−NH、ダイズ油[INCl:ダイズ(ツルマメ(Glycine Soja))油]、トリステアリン酸ソルビタン[INCl:トリステアリン酸ソルビタン]及びセチルPEG/PPG−10/1ジメチコン[INCl:セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン]を混合した(B1相成分)。
【0168】
別の容器中で、水[INCl:水(アクア)]及びQuat−soy LDMA−25[INCl:水(アクア)、ラウリルジモノウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク質]を混合した(C相成分)。
【0169】
別の容器中で、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸[INCl:ヒドロキシプロピルデンプンリン酸]、スクレロチウムガム[INCl:スクレロチウムガム]を混合した(D相成分)。
【0170】
B1相をB相に添加した。この混合物を、定速で撹拌しながらA相に添加して、マイクロ流体化した。C相とD相を定速で撹拌しながら添加することにより、表6に示す比率を有する組成物を得た。

【0171】
実施例13
Ac−L−Ser−L−Val−L−Ala−L−Val−Gly−L−Gln−NHを含む油中水型マイクロエマルジョン(w/o)の調製
好適な容器中に、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド[INCl:カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド]、オレイン酸[INCl:オレイン酸]、Edenor LS2M GS[INCl:ステアリン酸、パルミチン酸]及びセラミド[INCl:セラミド3]を添加し(A1相成分)、この混合物を80〜85℃に加熱した。
【0172】
βシトステロール[INCl:βシトステロール](A2相)及びグリコシルセラミドIRB3[INCl:レシチン、糖脂質](A3相)を定速で撹拌しながら添加した後、これを放置して40℃まで冷却させた。
【0173】
マツヨイグサ(Evening primrose)油[INCl:マツヨイグサ油(メマツヨイグサ(Oenothera biennis))油]、ボラージ種子油[INCl:ルリジサ(Borago Officinalis)種子油]、ビタミンFグリセリルエステルCLR(商標)[INCl:リノール酸グリセリル、リノール酸グリセリル]、及び酢酸トコフェリル[INCl:酢酸トコフェリル]を撹拌しながら混合し(B相成分)、これをA相と40℃で混合した。
【0174】
個別の容器中に、イソステアリン酸[INCl:イソステアリン酸]及びEmpipearl XA 500(商標)[INCl:水(アクア)、ラウレス硫酸ナトリウム、セテアリン酸グリコール、コカミドDEA、ホルムアルデヒド]を定速で撹拌しながら添加した(C相成分)後、変性アルコール[INCl:Alcohol Denat]、Ac−L−Ser−L−Val−L−Ala−L−Val−Gly−L−Gln−NH(C1相成分)を添加した。C及びC1相成分の混合物をA1、A2、A3相及びB相の最初の混合物に、定速で撹拌しながら添加することにより、表7に示す比率を有する美容組成物を得た。

【0175】
実施例14
Ac−L−Ser−L−Pro−L−Ala−Gly−Gly−L−Pro−NHを含むフェイシャル美容組成物の調製
好適な容器中に、水[INCl:水(アクア)]、ペンチレングリコール[INCl:ペンチレングリコール]、及びベンジルアルコール[INCl:ベンジルアルコール]を互いに混合した(A相成分)。カルボマー[INCl:カルボマー](A1相成分)及びセチルリン酸カリウム[INCl:セチルリン酸カリウム]をA相に定速で撹拌しながら添加して(A2相成分)、完全に溶解させた。混合物を65〜70℃に加熱した。
【0176】
ヤシ脂肪酸エチルヘキシル[INCl:ヤシ脂肪酸エチルヘキシル]、C12〜C15アルキルベンゾエート[INCl:C12〜C15アルキルベンゾエート]、Phytocream 2000(商標)[INCl:ステアリン酸グリセリル、セテアリルアルコール、カリウムパルミトイル加水分解コムギタンパク質]、フェノキシエタノール[INCl:フェノキシエタノール]、酢酸トコフェリル[INCl:酢酸トコフェリル]及びジメチコン[INCl:ジメチコン]を計量して別の容器に導入し(B相成分)、この混合物を65〜70℃で混合した。B相をA相に添加した。これを冷却して、Sepigel 305(商標)[INCl:ポリアクリルアミド、水(アクア)、C13〜14イソパラフィン、ラウレス−7]を、定速で撹拌しながらこれに添加した(C相成分)。水酸化ナトリウム[INCl:水酸化ナトリウム(20%水溶液)]でpHを調節し(D相成分)、香料を添加した(E相)。撹拌しながら、Ac−L−Ser−L−Pro−L−Ala−Gly−Gly−L−Pro−NHを添加することにより(F相)、表8に示す比率を有する美容組成物を得た。

【0177】
実施例15
乾燥肌の治療に対する実施例14の組成物の作用
乾燥肌を持つ30〜50歳(平均年齢43.1歳)の白人女性20人に対し、皮膚の水和試験を実施した。試験の全期間を通じて、被験者は、試験部位に、異なる別の製品を使用せず、また、紫外線への露出も避けた。被験者らは、顔の半分に実施例14の組成物を、また他方の半分にプラセボ組成物(ペプチドを含まない実施例14と同じ組成物)を56日間にわたって1日に2回塗った。皮膚の水和は、Courage & KhazakaコルネオメーターCM825を用いて、試験の前と後に計器により評価した。測定から得られた値は、角質層に含まれる水分量に直接比例するものであり、皮膚表面の水和レベルを表している。
【0178】
測定中、温度及び湿度を一定に維持する目的で、生物気候室(24±2℃;50±10%大気湿度)内で試験を実施した。各測定については、同じ部位内の隣接地点で実施した3つのコルネオメーター読取りの平均値を採用した。平均値と、計器による水和の値の偏差を各測定について計算した。各測定点について、試験の開始時での皮膚水和と比較した皮膚水和の増加を決定し、実施例14の製剤によってもたらされる皮膚水和の増加を、プラセボ製剤によって提供される皮膚水和の増加と比較して計算した。
【0179】
試験中に測定したパラメータの変化についての統計的分析をBonferroni試験を用いて実施した。統計的有意性の閾値を5%に設定した。
【0180】
実施例14のクリームを用いた皮膚のケアによって得られた皮膚水和の増加を表9に示す。

【0181】
得られた結果は、実施例14の製剤が、プラセボ製剤と比較して、2時間後に37.6%、8時間後に107.6%、また、56日後に130.9%多く水和することを示している。