特許第6075687号(P6075687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6075687活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075687
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/16 20060101AFI20170130BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170130BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20170130BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   C09D175/16
   C09D7/12
   C09D5/00 Z
   C09D183/04
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-45108(P2013-45108)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2013-213207(P2013-213207A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2016年2月29日
(31)【優先権主張番号】特願2012-53357(P2012-53357)
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一紀
(72)【発明者】
【氏名】辻 孝介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕二
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−162908(JP,A)
【文献】 特開平02−000618(JP,A)
【文献】 特開平09−316157(JP,A)
【文献】 特開平05−078599(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/001773(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 175/16
C09D 5/00
C09D 7/12
C09D 183/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子末端に(メタ)アクリロイル基を有し、ガラス転移温度が−40〜−10℃であるポリエステル系ウレタン樹脂(A)、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有し、ガラス転移温度が50〜70℃であるポリエステル系ウレタン樹脂(B)、および表面調整剤(C)を含有し、かつ、(A)成分と(B)成分の使用重量比〔(A)/(B)〕が60/40〜95/5であることを特徴とする、活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物。
【請求項2】
(A)成分が、ジカルボン酸類(a1)、ジオール類(a2)およびトリオール類(a3)を反応させてなる分岐状のポリエステルポリオール(A’)に、下記一般式(1)〜(4)で表わされるいずれか1種のイソシアネート基含有化合物を反応させて得られるものであり、(B)成分が、ジカルボン酸類(b1)、ジオール類(b2)および必要に応じてトリオール類(b3)を反応させてなる直鎖状または分岐状のポリエステルポリオール(B’)に、下記一般式(1)〜(4)で表わされる1種のイソシアネート基含有化合物を反応させて得られる、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物。
一般式(1):
【化1】
(式中、R1は水素またはメチル基を、R2はアルキレン基またはアルキレンエーテル基を、Xはイソシアネート基またはブロックドイソシアネート基を示す)
一般式(2):
【化2】
(式中、R3、R5、R7は水素またはメチル基を、R4、R6はアルキレン基またはアルキレンエーテル基を、Xはイソシアネート基またはブロックドイソシアネート基を示す)
一般式(3):
【化3】

(R8は水素またはメチル基を、R9はアルキレン基を示す)
一般式(4):
【化4】

(R10は水素またはメチル基を、R11はアルキレン基を示す)
【請求項3】
(A)成分と(B)成分の(メタ)アクリロイル基の含有量が順に0.5〜2.0mmol/gおよび0.2〜1.5mmol/gである、請求項1〜2のいずれかの活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物。
【請求項4】
(A)成分と(B)成分の数平均分子量が順に4500〜8000および2500〜6000である、請求項1〜3のいずれかの活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物。
【請求項5】
表面調整剤(C)がシリコーン系表面調整剤である請求項1〜4のいずれかの活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物。
【請求項6】
さらに光重合開始剤(D)を含有する、請求項1〜5のいずれかの活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物。
【請求項7】
さらに反応性希釈剤(E)を含有する、請求項1〜6のいずれかの活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物。
【請求項8】
有機溶剤(F)の溶液として使用する、請求項1〜7のいずれかの活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傷が生じても短時間に消失する自己修復性の塗膜を各種基材の表面に形成できる、活性エネルギー線硬化型の塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫、電子レンジ等の家電品や、携帯電話、パーソナルコンピューター等の情報機器といった各種の工業製品は、その表面に、輸送時や特に使用時において擦傷が無数に生じ得る。また、自動車や自動二輪車といった車両の場合には、ボンネットやガソリンタンクの表面に、移動時のチッピング傷や洗浄時のブラシ傷等が発生し得る。
【0003】
そこで、それら工業製品の部材をゴム弾性のある塗膜でコーティングし、その表面に生じた傷を自然に消失させる手段が採られることがあり、例えば特許文献1には、所定の水酸基価および数平均分子量を有するポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを含有するポリウレタン系の塗料組成物が開示されている。
【0004】
しかし、当該組成物は熱硬化性であるため基材の種類が限定される場合があり、また硬化塗膜を得るために比較的長時間を要するため生産性にも劣る。また、得られる塗膜も自己修復性が不十分であり、例えば金属ブラシ等で強く擦ると傷痕が残ってしまう。
【0005】
そこで斯界では、生産性に優れる方法として、製品の部材の表面を紫外線硬化型樹脂等でハードコートし、塗膜に傷自体がつかないようにする方法がとられることもある。例えば特許文献2には、塗膜の表面硬度を保ちつつ自己修復性を発現するものとして、(メタ)アクリル樹脂にジイソシアネート化合物を介して(メタ)アクリロイル基を導入してなる紫外線硬化性の(メタ)アクリル樹脂(以下、ポリマー(メタ)アクリレートという)を用いた表面コーティング剤が開示されている。
【0006】
しかし、ポリマー(メタ)アクリレートは活性エネルギー線の照射により瞬時に硬化するため塗膜が硬化収縮しやすく、基材との密着性が不十分となったり、場合によりクラックが発生したりする懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−86762号公報
【特許文献2】特開2010−65168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、各種基材との密着性が良好であり、クラックもなく、かつ生じた傷が短時間に消失する自己修復性の塗膜を形成可能な、非ポリマー(メタ)アクリレートタイプの活性エネルギー線硬化型塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、活性エネルギー線硬化型の塗料組成物であっても、ガラス転移温度が異なる二種の(メタ)アクリロイル基含有ポリエステルを組み合わせて得られる塗料であれば、前記課題を解決可能なことを見出した。
【0010】
即ち本発明は、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有し、ガラス転移温度が−40〜−10℃であるポリエステル系ウレタン樹脂(A)、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有し、ガラス転移温度が50〜70℃であるポリエステル系ウレタン樹脂(B)、および表面調整剤(C)を含有し、かつ、(A)成分と(B)成分の使用重量比〔(A)/(B)〕が60/40〜95/5であることを特徴とする、活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物;(A)成分が、ジカルボン酸類(a1)、ジオール類(a2)およびトリオール類(a3)を反応させてなる分岐状のポリエステルポリオール(A’)に、下記一般式(1)〜(4)で表わされるいずれか1種のイソシアネート基含有化合物を反応させて得られるものであり、(B)成分が、ジカルボン酸類(b1)、ジオール類(b2)および必要に応じてトリオール類(b3)を反応させてなる直鎖状または分岐状のポリエステルポリオール(B’)に、下記一般式(1)〜(4)で表わされるいずれか1種のイソシアネート基含有化合物を反応させて得られる前記活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物
一般式(1):
【化1】
(式中、R1は水素またはメチル基を、R2はアルキレン基またはアルキレンエーテル基を、Xはイソシアネート基またはブロックドイソシアネート基を示す)
一般式(2):
【化2】
(式中、R3、R5、R7は水素またはメチル基を、R4、R6はアルキレン基またはアルキレンエーテル基を、Xはイソシアネート基またはブロックドイソシアネート基を示す)
一般式(3):
【化3】

(R8は水素またはメチル基を、R9はアルキレン基を示す)
一般式(4):
【化4】

(R10は水素またはメチル基を、R11はアルキレン基を示す));(A)成分と(B)成分の(メタ)アクリロイル基の含有量が順に0.5〜2.0mmol/gおよび0.2〜1.5mmol/gである前記活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物;(A)成分と(B)成分の数平均分子量が順に4500〜8000および2500〜6000である前記活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物;表面調整剤(C)がシリコーン系表面調整剤である前記活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物;さらに光重合開始剤(D)を含有する前記活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物;さらに反応性希釈剤(E)を含有する、請求項1〜6のいずれかの活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物;有機溶剤(F)の溶液として使用する前記活性エネルギー線硬化型自己修復性塗料組成物、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗料組成物によれば、金属やプラスチック等の各種基材の表面に、密着性に優れる自己修復性の塗膜を短時間で形成できる。また、この塗膜は適度な柔軟性を有しているためクラックも生じない。また、この塗膜は耐ブロッキング性に優れているため、例えば本発明の塗料組成物を塗工したフィルムを巻きとった後、巻戻しの際に塗膜の剥がれや巻戻し音が低減する等の利点がある。その他、耐スリップ性や耐湿熱性が良好であり、例えば高温高湿の使用環境下においても欠陥が生じにくい。
【0012】
それゆえ、本発明の塗料組成物は、自動車や自動二輪車といった車両のボディー部材(ボンネット、ガソリンタンク等)や冷蔵庫や電子レンジ等の家電製品の部材(側板、ドア材等)、携帯電話やパーソナルコンピューター等の情報機器の筐体といった各種工業製品の上塗り塗料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の塗料組成物は、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有し、ガラス転移温度が−40〜−10℃であるポリエステル系ウレタン樹脂(A)(以下、(A)成分という)、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有し、ガラス転移温度が50〜70℃であるポリエステル系ウレタン樹脂(B)(以下、(B)成分という)、および表面調整剤(C)(以下、(C)成分という)を含有する。
【0014】
(A)成分は、前記ガラス転移温度を有し、分子末端が(メタ)アクリロイル基であるポリエステル系ウレタン樹脂であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、ジカルボン酸類(a1)(以下、(a1)成分という)、ジオール類(a2)(以下、(a2)成分という)、およびトリオール類(a3)(以下、(a3)成分という)を反応させてなる分岐状のポリエステルポリオール(A’)に、一般式(1)〜(4)のイソシアネート基含有化合物のうち少なくとも1種類を反応させて得られる(メタ)アクリロイル基含有ポリエステル系ウレタン樹脂が好ましい。
【0015】
(a1)成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;これらのジエステル化合物等が挙げられ、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
(a2)成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖状脂肪族ジオール;ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール等の分岐状脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、ダイマー酸を水素化して得られるジオール、水添ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物等の脂環状ジオール等の低分子ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の他、オリゴマーポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールなどの高分子ポリオールが挙げられ、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。(a2)成分としては、(A)成分のガラス転移温度を考慮すると、直鎖状脂肪族ジオールおよび/または分岐状脂肪族ジオールのみを使用するのが好ましい。
【0017】
(a3)成分としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール等が挙げられ、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
(A’)成分は、各種公知の方法で製造できる。具体的には、(a1)成分〜(a3)成分を、常圧下または減圧下において、通常150〜280℃程度および5〜10時間程度の条件で、一括的にまたは逐次的に反応させる方法が挙げられる。また、(A’)成分の諸物性は(a1)成分〜(a3)成分の種類を変更したり、圧力条件を変更したりすることによって調節可能である。また、反応の際には、三酸化アンチモンや酸化ジブチルスズ等のエステル化触媒や、反応溶媒として後述の有機溶剤を使用することができる。
【0019】
(a1)成分〜(a3)成分の使用量は、(A)成分のガラス転移温度を考慮して適宜決定すればよく、通常は、(a1)成分と(a2)成分および(a3)成分とのモル比、即ち(a1):(a2+a3)が1:1程度であり、かつ、(a2)成分および(a3)成分の合計モル数における(a3)成分のモル数、即ち(a3)/(a2+a3)が5〜30%程度、好ましくは10〜25%となる範囲である。
【0020】
前記イソシアネート基含有化合物としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、前記一般式(1)〜(4)で表されるイソシアネート基含有化合物のうち1種類を単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用できる。なお、式(1)および(2)中、R、RおよびRのアルキレン基は炭素数が通常1〜3程度、アルキレンエーテル基も炭素数は通常2〜6程度である。
【0021】
前記一般式(1)で表されるイソシアネート基含有化合物としては、例えば、Xがイソシアネート基のものとして2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリル酸2−(2−イソシアネートエトキシ)エチル、アクリル酸2−(2−イソシアネートエトキシ)エチル等が挙げられ、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、市販品としては、例えば、カレンズMOI、カレンズAOI、カレンズMOI−EG(いずれも昭和電工(株)製、商標)等が挙げられる。
【0022】
一般式(2)で表わされるイソシアネート基含有化合物としては、例えばXがイソシアネート基のものとして、1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられ、市販品としては、例えば、カレンズBEI等が挙げられる。
【0023】
一般式(3)および(4)で表わされるイソシアネート基含有化合物としては、例えばイソホロンジイソシアネートと少なくとも1種類以上の水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物等が挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、水酸基と(メタ)アクリレート基とを有するものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0024】
なお、一般式(1)〜(4)におけるXがブロックドイソシアネートの場合は、所望の温度に加熱することにより脱離する化合物であれば特に制限なく使用することができる。ブロック化剤としては、メチルエチルケトオキシム等のオキシム化合物、ε−カプロラクタム等のラクタム化合物、フェノール、マロン酸ジエチルエステル、アセト酢酸エステル、アセチルアセトン、亜硫酸ナトリウム、エチレンイミンなどが挙げられる。これらのブロック化剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。具体的には、アクリル酸2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、メタクリル酸2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられ、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、ブロックドイソシアネートの市販品としては、例えば、カレンズMOI−BM等が挙げられる。
【0025】
(A’)成分とイソシアネート基含有化合物は、各種公知の方法で反応させることができる。具体的には、例えば、(A’)成分と前記イソシアネート基含有化合物を通常50〜150℃程度の温度でウレタン化反応させればよく、その際、各種公知のウレタン化触媒や、反応溶媒として後述の有機溶剤を使用することができる。また、(A’)成分は1種類のみを使用しても2種類以上の混合物として使用しても良い。
【0026】
ウレタン化触媒としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ジオクテート、モノブチル錫トリオクテート、ジブチル錫脂肪酸塩が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。ウレタン化触媒の使用量は特に限定されないが、(A’)成分とイソシアネート基含有化合物の合計重量に対して固形分換算で通常0〜2重量%程度、好ましくは0.01〜0.1重量%となる範囲で使用できる。
【0027】
イソシアネート基含有化合物の使用量は特に限定されないが、通常、該イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基の当量値(NCO)と、(A’)成分の水酸基の当量値(OH)との比率(NCO/OH)が0.5〜1程度、好ましくは0.8〜1程度となる範囲であればよい。
【0028】
こうして得られる(A)成分は、主に塗膜の自己修復性の観点より、ガラス転移温度が−40〜−10℃、好ましくは−30〜−15℃である。
【0029】
(B)成分も、所定のガラス転移温度を有し、分子末端が(メタ)アクリロイル基であるポリエステル系ウレタン樹脂であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、ジカルボン酸類(b1)(以下、(b1)成分という)、ジオール類(b2)(以下、(b2)成分という)、およびトリオール類(b3)(以下、(b3)成分という)を反応させてなる直鎖または分岐状のポリエステルポリオール(B’)(以下、(B’)成分という)に、前記一般式(1)〜(4)で表されるイソシアネート基含有化合物のうち少なくとも1種類を反応させることにより得られるものが好ましい。なお、(b1)成分〜(b3)成分としては、前記(a1)成分〜(a3)成分と同一のものを使用でき、(B’)成分としては、直鎖のものが好ましい。
【0030】
(B’)成分も、(A’)成分と同様の方法で製造できる。また、(b1)成分〜(b3)成分の使用量は、(B)成分のガラス転移温度を考慮して適宜決定すればよく、通常は、(b1)成分と(b2)成分および(b3)成分とのモル比、即ち(b1):(b2+b3)が1:1程度であり、かつ、(b2)成分および(b3)成分のモル数、即ち(b3)/(b2+b3)が0〜30%程度、好ましくは0〜5%、さらに好ましくは0%となる範囲である。
【0031】
また、(B’)成分と前記イソシアネート基含有化合物の反応条件(温度、使用量等)も、(A’)成分のそれと同様である。その際、(B’)成分は1種類のみを使用しても2種類以上の混合物として使用しても良い。
【0032】
こうして得られる(B)成分は、主に塗膜の自己修復性の観点より、ガラス転移温度が50〜70℃、好ましくは55〜65℃である。
【0033】
なお、(A)成分と(B)成分の他の物性は特に限定されないが、例えば(メタ)アクリロイル基の含有量は、主に塗膜の自己修復性の観点より、順に0.5〜2.0mmol/g程度および0.2〜1.5mmol/g程度であるのが好ましく、1.0〜1.5mmol/gおよび0.5〜1.0mmol/gであるのがより好ましい。
【0034】
また、(A)成分と(B)成分の数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算値をいう。以下、同様。)も特に限定されないが、主に塗膜傷の自己修復性の点より、順に4500〜8000程度および2500〜6000程度であるのが好ましく、5000〜7000および3000〜5000であるのがより好ましい。
【0035】
(C)成分は、主に塗膜の自己修復性および耐ブロッキング性や耐スリップ性を確保する目的で使用する。具体例としては、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等のシリコーン系表面調整剤や、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸等のフッ素系表面調整剤、パーフルオロ変性シリコーン等のシリコーン−フッ素系表面調整剤、ポリエーテル変性アクリルポリマー、ポリエステル変性アクリルポリマー、パーフルオロアルキル変性アクリルポリマー等のアクリル系表面調整剤が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも耐ブロッキング性およびスリップ性の観点より、シリコーン系表面調整剤が好ましい。
【0036】
本発明の組成物には、必要に応じて各種の光重合開始剤(D)(以下、(D)成分という)を含めることができる。具体的には、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−シクロヘキシルフェニルケトン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、エチル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、メチルベンゾイルホルメート、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンソフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン等が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0037】
また、本発明の組成物には、必要に応じてさらに各種公知の反応性希釈剤(E)(以下、(E)成分という)を含めることができる。具体的には、例えば、単官能(メタ)アクリレート化合物〔スチレン、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル等〕、2官能(メタ)アクリレート化合物〔ヘキサメチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4ーブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレングリコールジアクリレート等〕、3官能(メタ)アクリレート化合物〔トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、εカプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等〕、4官能(メタ)アクリレート化合物〔ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート〕、5官能以上の(メタ)アクリレート化合物〔ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート等〕などが挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明の塗料組成物は、各種公知の有機溶剤(F)(以下、(F)成分という)の溶液(ワニス)として利用できる。(F)成分としては、例えば、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150(いずれもエクソン化学(株)製)、トルエン、キシレン等の炭化水素系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ぎ酸エチル、プロピオン酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート等のエステル系有機溶剤;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤が挙げられる。これらの中でも(A)成分および(B)成分に対する溶解力の点より炭化水素系有機溶剤および/またはケトン系有機溶剤が好ましい。
【0039】
本発明の塗料組成物における各成分の含有量は特に限定されないが、(A)〜(F)成分の全量を100重量%(固形分換算)とした場合において、通常は以下の通りである。
(A)成分および(B)成分の合計:30〜60重量%、好ましくは35〜55重量%
(C)成分:0.1〜2重量%程度、好ましくは0.1〜1重量%
(D)成分:0〜10重量%程度、好ましくは1〜5重量%
(E)成分:0〜20重量%程度、好ましくは0〜10重量%
(F)成分:39.9〜65重量%程度、好ましくは43.9〜60重量%程度
【0040】
但し、(A)成分と(B)成分の使用重量比〔(A)/(B)〕は、主に塗膜の自己修復性の点より、通常60/40〜95/5程度、好ましくは75/35〜95/5程度、いっそう好ましくは80/20〜95/5(いずれも固形分換算)の必要がある。
【0041】
なお、(A)成分と(B)成分には水酸基が残存している場合があり、この水酸基と反応させることにより塗膜の硬度を調整する目的で、各種公知のジイソシアネート化合物を用いることができる。具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートや、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、それらの三量体等が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
また、本発明の組成物には、充填剤、離型剤、難燃剤、粘度調節剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、消泡剤、着色剤、安定剤等の添加剤も適宜配合できる。
【0043】
本発明の塗料組成物は、金属、プラスチック、ガラス等の各種基材に適用できる。金属としては、鉄、アルミニウム、アルミめっき鋼板、チンフリー鋼板(TFS)、ステンレス鋼板、リン酸亜鉛処理鋼板、亜鉛・亜鉛合金めっき鋼板(ボンデ鋼板)等の処理鋼板が挙げられる。また、プラスチックとしては、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PE)、ABS、FRP等が挙げられる。
【0044】
塗工方法としては、スプレー法、ナチュラルロールコート法、リバースロールコート、カーテンフローコート法等が挙げられ、塗工量は通常10〜30g/m程度である。
【0045】
前記基材に塗工した本発明の塗料組成物は、乾燥させた後、活性エネルギー線を照射することにより、自己修復性の塗膜を与える。活性エネルギー線としては紫外線や電子線が挙げられ、紫外線光源としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置が挙げられる。また、光量、光源、搬送速度等の条件は適宜調整すればよく、例えば高圧水銀灯を使用する場合には、照度が通常100〜200mW/cm程度、照射時間は通常1〜10秒程度である。
【実施例】
【0046】
以下、合成例、実施例および比較例をあげて本発明を詳細に説明するが、これらによって何ら限定されるものではない。なお、各例中、部は特記しない限り重量基準である。
【0047】
なお、各合成例において、ガラス転移温度は市販の測定装置(製品名「DSC 8230B」、理学電機(株)製)を用いて得た値である。また、数平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法(測定装置:東ソー(株)製HLC-8120、カラム:TSKgelG2000H、TSKgelG4000H)によるポリスチレン換算値である。
【0048】
[(A)成分の製造]
合成例1
撹拌機、温度計および窒素ガス導入管、還流脱水装置を備えたフラスコに、イソフタル酸456.3部及びアジピン酸401.3部、ならびにエチレングリコール66.5部、1,6−ヘキサンジオール548.2部およびトリメチロールプロパン127.8部を仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら反応系を250℃まで徐々に昇温させ、さらに3時間保持した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、さらにテトラブチルチタネート0.18部を加え30分保温した後、1.3kPaで2時間減圧重縮合反応を行った。その後、トルエン1574.5gを仕込み、ワニスとした後、イソシアネート基含有化合物(商品名「カレンズAOI」、昭和電工(株)製)を257.4部ならびにオクチル酸錫(商品名「スタノクト」、(株)エーピーアイコーポレーション)5.1部を仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が−25℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が1.2mmol/g、数平均分子量が5400、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(A−1)のワニスを得た。
【0049】
合成例2
合成例1と同様のフラスコにイソフタル酸550.6部およびアジピン酸322.8部、ならびにエチレングリコール89.1部、ネオペンチルグリコール74.7部、1,6−ヘキサンジオール466.4部およびトリメチロールプロパン96.4部を仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら反応系を250℃まで徐々に昇温させ、さらに3時間保温した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、さらにテトラブチルチタネート0.18部を加え30分保温した後、1.3kPaで2時間減圧重縮合反応を行った。その後、トルエン1544.3部を仕込み、ワニスとした後、カレンズAOIを222.7部ならびにスタノクトを4.6部仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が−16℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が1.0mmol/g、数平均分子量が4900、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(A−2)のワニスを得た。
【0050】
合成例3
合成例1と同様のフラスコにイソフタル酸322.7部およびアジピン酸527.1部、ならびにエチレングリコール67.2部、1,6−ヘキサンジオール553.9部およびトリメチロールプロパン129.1部を仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら反応系を250℃まで徐々に昇温させ、さらに3時間保温した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、さらにテトラブチルチタネート0.18部を加え30分保温した後、1.3kPaで2時間減圧重縮合反応を行った。その後、トルエン1567.8部を仕込み、ワニスとした後、カレンズAOIを250.8部ならびにスタノクトを 5.0部仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が−35℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が1.1mmol/g、数平均分子量が5600、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(A−3)のワニスを得た。
【0051】
合成例4
合成例1と同様のポリエステル樹脂を合成し、その後、トルエン1600.7部を仕込み、ワニスとした後、イソシアネート基含有化合物(商品名「カレンズMOI」、昭和電工(株)製)を283.0部ならびにスタノクトを5.7部仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が−25℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が1.1mmol/g、数平均分子量が5400、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(A−4)のワニスを得た。
【0052】
合成例5
合成例1と同様のポリエステル樹脂を合成し、その後、トルエン1753.1部を仕込み、ワニスとした後、イソシアネート基含有化合物(商品名「カレンズBEI」、昭和電工(株)製)を436.0部ならびにスタノクトを 5.1部仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が−25℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が2.1mmol/g、数平均分子量が5400、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(A−5)のワニスを得た。
【0053】
合成例6
予め、攪拌機、温度計、および窒素ガス導入管を備えたフラスコに、トルエン309.6部、イソホロンジイソシアネート202.7部、2−ヒドロキシエチルアクリレート105.9部、スタノクト1.0部を仕込み、100℃で4時間保持し、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物の不揮発分50重量%の溶液(I)を得た。
その後、合成例1と同様のポリエステル樹脂を合成し、トルエン1312.0部を仕込み、ワニスとした後、上記(I)を619.2部ならびにスタノクトを3.1部加え、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が−25℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が0.5mmol/g、数平均分子量が5400、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(A−6)のワニスを得た。
【0054】
合成例7
合成例1と同様のポリエステル樹脂を合成し、その後、トルエン1593.8部を仕込み、ワニスとした後、カレンズAOI103.0部、カレンズMOI84.9部、カレンズBEI87.2部および前記(I)を123.4部ならびにスタノクトを6.7部仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が−25℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が1.3mmol/g、数平均分子量が5400、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(A−7)のワニスを得た。
【0055】
合成例8
合成例1と同様のフラスコにイソフタル酸187.9部およびセバチン酸810.8部、ならびに2−メチル−1,3−プロパンジオール481.7部およびトリメチロールプロパン119.6部を仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら反応系を250℃まで徐々に昇温させ、さらに3時間保温した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、さらにテトラブチルチタネート0.18部を加え30分保温した後、1.3kPaで2時間減圧重縮合反応を行った。その後、酢酸ブチル1500.5部を仕込み、ワニスとした後、カレンズAOIを184.8部ならびにスタノクトを3.7部仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が−25℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が0.9mmol/g、数平均分子量が7400、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(A−8)のワニスを得た。
【0056】
合成例9 (A)の比較合成例
[(メタ)アクリロイル基を有さないポリエステルポリオールの製造]
合成例1と同様のフラスコに、イソフタル酸516.5部、アジピン酸454.3部、エチレングリコール100.3部、1,6−ヘキサンジオール620.5部、トリメチロールプロパン108.5部を仕込んだ。加熱溶融して留出する水を系外に除きながら250℃まで徐々に昇温し、さらに3時間保持した。次に、装置を真空減圧装置に替え、さらにテトラブチルチタネート0.18部を加え30分保温後、1.3kPaで2時間減圧重縮合反応を行い、その後、トルエンを1400部仕込み、ガラス転移点が−25℃、水酸基価が52mgKOH/g、および数平均分子量が7000である、(メタ)アクリロイル基を有さないポリエステルポリオール(イ)の淡黄色透明溶液を得た。
【0057】
[(B)成分の製造]
合成例10
合成例1と同様のフラスコに、テレフタル酸452.2部およびイソフタル酸839.9部、エチレングリコール94.1部、ネオペンチルグリコール368.3部、ビスフェノールAのエチレンオキシド2mol付加物1745.5部を仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら250℃まで反応系を徐々に昇温させ、さらに3時間保持した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、さらにテトラブチルチタネート0.18部を加え30分保温した後、1.3kPaで1時間減圧重縮合反応を行った。その後、トルエン3186.6gを仕込み、ワニスとした後、カレンズAOIを310.4部ならびにスタノクト6.2部を仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が59℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が0.7mmol/g、数平均分子量が4400、不揮発分が重量%のポリエステル系ウレタン樹脂(B−1)のワニスを得た。
【0058】
合成例11
合成例と同様のポリエステル樹脂を合成し、その後、トルエン3218.1部を仕込み、ワニスとした後、カレンズMOIを341.3部ならびにスタノクトを6.8部仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が59℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が0.7mmol/g、数平均分子量が4400、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(B−2)のワニスを得た。
【0059】
合成例12
合成例9と同様のポリエステル樹脂を合成し、その後、トルエン3402.0部を仕込み、ワニスとした後、カレンズBEIを525.8部ならびにスタノクトを6.2部仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が59℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が1.3mmol/g、数平均分子量が4400、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(B−3)のワニスを得た。
【0060】
合成例13
予め、攪拌機、温度計、および窒素ガス導入管を備えたフラスコに、トルエン388.8部、イソホロンジイソシアネート244.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート143.1部、スタノクト1.2部を仕込み、100℃で4時間保持し、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの反応生成物の不揮発分50重量%の溶液(II)を得た。
その後、合成例9と同様のポリエステル樹脂を合成し、トルエン2870.0部を仕込み、ワニスとした後、上記(II)を777.6部ならびにスタノクトを2.7部加え、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が59℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が0.3mmol/g、数平均分子量が4400、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(B−4)のワニスを得た。
【0061】
合成例14
合成例9と同様のポリエステル樹脂を合成し、その後、トルエン3209.8部を仕込み、ワニスとした後、カレンズAOI124.2部、カレンズMOI102.4部、カレンズBEI105.2部および前記(I)を148.9部ならびにスタノクトを8.1部仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が59℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が0.8mmol/g、数平均分子量が4400、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(B−5)のワニスを得た。
【0062】
合成例15
合成例1と同様のフラスコにテレフタル酸453.0部およびイソフタル酸841.3部、ならびにエチレングリコール94.3部、ネオペンチルグリコール326.8部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物1748.4部およびトリメチロールプロパン36.2部を仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら反応系を250℃まで徐々に昇温させ、さらに3時間保温した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、さらにテトラブチルチタネート0.18部を加え30分保温した後、1.3kPaで1時間減圧重縮合反応を行った。その後、トルエン3337.5部を仕込み、ワニスとした後、カレンズAOIを462.0部ならびにスタノクトを9.2部仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が64℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が1.0mmol/g、数平均分子量が4300、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(B−6)のワニスを得た。
【0063】
合成例16
合成例1と同様のフラスコに、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル963.8部、エチレングリコール272.9部およびネオペンチルグリコール1061.8部を仕込んだ。次いで、加熱溶融して留出するメタノールを系外に除きながら210℃まで反応系を徐々に昇温させ、さらに1時間保持した。その後、イソフタル酸1030.4部およびアジピン酸164.8部を仕込み、加熱溶融して留出する水を系外に除きながら250℃まで反応系を徐々に昇温させ、さらに3時間保持した。次に、このフラスコに真空減圧装置を接続し、さらにテトラブチルチタネート0.18部を加え30分保温した後、1.3kPaで1時間減圧重縮合反応を行った。その後、酢酸ブチル3171.9部を仕込み、ワニスとした後、カレンズAOIを296.0部ならびにスタノクトを5.9部仕込み、窒素雰囲気下、80℃で3時間保持し、ガラス転移点が56℃、(メタ)アクリロイル基の含有量が0.7mmol/g、数平均分子量が4600、不揮発分が50重量%であるポリエステル系ウレタン樹脂(B−7)のワニスを得た。
【0064】
合成例17 (B)の比較合成例
[(メタ)アクリロイル基を有さないポリエステルポリオールの製造]
合成例1と同様のフラスコに、テレフタル酸452.2部、イソフタル酸839.9部、エチレングリコール94.1部、ネオペンチルグリコール368.3部、ビスフェノールAのエチレンオキシド1:2mol付加物1745.5部を仕込んだ。加熱溶融して留出する水を系外に除きながら250℃まで徐々に昇温し、さらに3時間保持した。次に、装置を真空減圧装置に替え、さらにテトラブチルチタネート0.18部を加え30分保温後、1.3kPaで1時間減圧重縮合反応を行い、その後、トルエンを2800部仕込み、ガラス転移点が59℃、水酸基価が43mgKOH/g、および数平均分子量が4000である、(メタ)アクリロイル基を有さないポリエステルポリオール(B−8)の淡黄色透明溶液を得た。
【0065】
[塗料組成物の調製]
実施例1
合成例1と同様のフラスコに、各々固形分換算で(A−1)成分42.5部、(B−1)成分7.5部、光開始剤(商品名「イルガキュア184」、チバ・ジャパン(株)製)を3.5部、シリコン系表面調整剤(商品名「BYK−UV3500」、ビッグケミー・ジャパン(株)製)を0.4部、トルエン50.0部、メチルエチルケトンを15.8部仕込み、25℃で1時間撹拌し、不揮発分が45重量%の光硬化性塗料組成物を調製した。その組成を表3に示す。
【0066】
実施例2〜18、比較例1〜6
原料および使用量を表3(実施例)および表4(比較例)に示すよう変更した他は実施例1と同様にして不揮発分が45重量%の光硬化性塗料組成物をそれぞれ調製した。
【0067】
比較例7
実施例11と同様のフラスコに、各々固形分換算で合成例9で得られた(A−9)成分((A)成分の比較合成例)成分を37.5部、合成例17で得られた(B−8)成分((B)成分の比較合成例)を12.5部、ヘキサメチレンジイソシアネートヌレート3量体(商品名「SDC111」、日本ポリウレタン工業(株)製)を4.8部、シリコン系レベリング剤(商品名「BYK375」、ビッグケミー・ジャパン(株)製)を0.5部、トルエン/メチルエチルケトンの混合溶剤(重量比75/25)を82.9部仕込み、25℃で10分間撹拌し、不揮発分が40重量%の熱硬化性塗料組成物を調製した。その組成を表4に示す。
【0068】
比較例8および9
原料および使用量を表4に示すよう変更した他は実施例1と同様にして不揮発分が40重量%の熱硬化性塗料組成物を調製した。
【0069】
<塗膜の作製>
実施例1の光硬化性塗料組成物を、乾燥膜厚が15μmとなるようにポリカーボネート(PC)板(70mm×120mm、厚さ2mm)にバーコーターで塗布し80℃の乾燥機で5分間乾燥させて後、紫外線照射装置(商品名「UV−152」、ウシオ電機(株)製)を用い、365nmの紫外線検出器で積算光量が400mJ/cmとなるよう紫外線を照射し、試験片を得た。また、ABS樹脂板(70mm×150mm、厚さ2mm)、ボンデ鋼板(120mm×200cm、厚さ0.3mm)についても同様の条件で試験片を得た。実施例2〜18および比較例1〜6の塗料組成物についても同様にして試験片を得た。
【0070】
また、比較例7〜9の熱硬化性塗料組成物については、乾燥膜厚が15μmとなるように上記ポリカーボネート板およびボンデ鋼板(120mm×200cm、厚さ0.3mm)にバーコーターで塗布し100℃の乾燥機で30分間乾燥させて試験片を得た。
【0071】
<塗膜の自己修復性>
実施例1〜18と比較例1〜9についてはポリカーボネート(PC)試験片を用い、室温下、各塗膜の表面を真鍮ブラシ(アズワン(株)製)で強く擦り、傷をつけた後、塗膜の自己修復性を以下の基準で目視評価した。
【0072】
5:10秒以内に傷が修復する。
4:10秒を超え、20秒以内に傷が修復する。
3:10分経過した後も擦傷痕が若干認められる。
1:10分経過した後においても明らかな擦傷痕が認められる。
【0073】
<塗膜のクラック>
実施例と比較例の各塗膜を目視確認したが、いずれもクラックは生じていなかった。
【0074】
<密着性試験>
実施例および比較例のポリカーボネート(PC)試験片、ABS試験片およびボンデ鋼板試験片を用い、それぞれの試験片についてJIS K5600に準じて碁盤目剥離試験を行い、塗膜の剥離状態を以下の基準で評価した。
【0075】
5:100/100〜95/100
3:94/100〜60/100
1:59/100〜0/100
【0076】
<耐ブロッキング性試験>
実施例および比較例のボンデ鋼板試験板を、20℃の雰囲気下で1時間放置した後、塗面を指で触って、塗面のタック感を以下の基準で評価した。数値が大きいほど耐ブロッキング性に優れることを意味する。
【0077】
5:塗面にタックを感じない。
3:塗面に若干のタックを感じる。
1:塗面に著しいタックを感じる。
【0078】
<塗膜の耐湿熱性>
実施例1〜18と比較例1〜9についてはポリカーボネート(PC)試験片を用い、50℃、95%の高温高湿下で400時間保管した後、常温に戻した際の塗膜の外観を以下の評価基準に基づき目視で評価した。
(外観)
5:変化なし
3:白濁している
また、高温高湿処理した後の塗膜の自己修復性についても前記と同様の基準により目視評価した。
【0079】
【表1】
【0080】
表1のモノマー組成の数値はモル比(モル%)である。
【0081】
【表2】
【0082】
表2のモノマー組成の数値はモル比(モル%)である。
【0083】
【表3】
【0084】
表3中、成分種の数値は、固形分換算の部数である。
【0085】
【表4】
【0086】
表3中、成分種の数値は、固形分換算の部数である。