特許第6075696号(P6075696)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075696
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20170130BHJP
【FI】
   A63B53/04 E
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-265440(P2013-265440)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-119844(P2015-119844A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年6月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511055393
【氏名又は名称】株式会社ササキ
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 政浩
【審査官】 中澤 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−148287(JP,A)
【文献】 特開2011−125611(JP,A)
【文献】 特開2012−179275(JP,A)
【文献】 特開平06−055324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの金属ヘッド原形成型体から切削加工によるアイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを切削工作機械によって数値設定することができる金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法であって、
金属を熱した状態で金型に入れて、キャビティ面部からホーゼル部にかけて水平面を有する突出部が形成されると共に、ソール部とクラウン部には夫々フェース側に水平面を有する張り出し翼部が形成された金属ヘッド原形成型体を鍛造成型する金型鍛造工程と、
前記突出部に少なくとも2以上の位置決め穴と少なくとも1以上のネジ穴を形成するネジ穴・穿穴工程と、
前記突出部に形成された位置決め穴により3軸切削工作機械用固定冶具上に金属ヘッド原形成型体が位置決めされつつ載置され、かつ、該突出部に形成されたネジ穴により3軸切削工作機械用固定冶具と金属ヘッド原形成型体とを固定した状態で、3軸切削工作機械によりフェース面部とホーゼル部の上半分を切削加工すると共に、前記各張り出し翼部に少なくとも1以上の位置決め穴と少なくとも1以上のネジ穴を形成するフェース面部加工工程と、
前記各張り出し翼部に形成された位置決め穴により5軸切削工作機械用固定冶具上に金属ヘッド原形成型体が前記フェース面部加工工程に対し上下反転した状態で位置決めされつつ載置され、かつ、各張り出し翼部に形成されたネジ穴により5軸切削工作機械用固定冶具と金属ヘッド原形成型体とを固定した状態で、5軸切削工作機械によりキャビティ面部とホーゼル部の下半分を切削加工すると共に、該ホーゼル部のネジ部を同時に形成するキャビティ面部加工工程と、
ソール部に形成された張り出し翼部とクラウン部に形成された張り出し翼部を切断する張り出し翼部切断工程と、
バレル加工、研磨加工、メッキ加工が行われる仕上げ工程と、
から構成されることを特徴とする金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法において、
ソール部に形成された張り出し翼部及びクラウン部に形成された張り出し翼部のうち少なくとも一方若しくは両方の切断が、前記キャビティ面部加工工程において同時に行われて成ることを特徴とする請求項1に記載の金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの金属ヘッド原形成型体から切削加工によるアイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを工作機械によって数値設定することができる金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法と、その製造方法で製造された金属製ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりの金属製ゴルフクラブヘッドは、主に鋳型による鋳造法と、ハンマー打法による鍛造法と、工作機械による削り出し加工法とによって製造されている。
【0003】
鋳型による鋳造法においては、大量生産が可能で廉価であるが、鋳型枠を製造するクラブ番手ごとに必要とするものであって、鋳型に溶かした鋳鉄を流し込む際に、内部欠陥(ピンホール)の発生が存在することで、全体強度や衝撃強度などの機械的特性が充分に得られないという問題があると共に、同じ品番でありながらロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックの製法上の形状精度誤差が出てしまい、ツアープロや上級者の使用にあたっては、調整器を使った手作業によるロフト角ならびにライ角の調整を必要とするものであった。
【0004】
また、ハンマー打法による鍛造法においては、金属組織が緻密化して安定しているため打球感とコントロール性に優れるが、鍛造金型枠を必要としたり、職人による手作業や熟練度に頼る加工を必要とするため、前記鋳造同様、同じ品番でありながらロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックの製法上の形状精度誤差が出てしまい、ツアープロや上級者の使用にあたっては、調整器を使った手作業によるロフト角ならびにライ角の調整を必要とするものであった。
【0005】
一方、工作機械による削り出し加工法においては、素材を工作機械にチャッキングする工程において専用の取り付け治具を用いた位置決め時間や切削工数が多くかかることから、複雑な形状のゴルフクラブヘッド製作には製造コストがかかり過ぎて量産化に向かないものであった。さらに、キャビティアイアンが主流になりつつある昨今では、フェース部の裏面のキャビティ部を深く削り込むのに高度なプログラム制御による高性能の三次元NC工作機械が必要とされ、製造コストを圧迫する一因ともなっている。
【0006】
そこで、上記の鋳造法における問題点を解決する超精密のロストワックス鋳造法が開発され、ゴルフクラブヘッドの表面精度を上げるため機械的仕上げ加工や表面処理加工などの必要性、鋳造時の材料の歩留まりが悪いなどの問題点を解決している。
【0007】
さらに、上記における問題点を解決しようとするゴルフクラブヘッド又はその原型を効率よくかつ高精度で製造することができる「ゴルフクラブヘッド又はその原型の製造方法」(特許文献1参照)や、仕上げ加工の際にしっかりと保持・固定しておいてその仕上げ加工を高精度に行うことができる「ゴルフクラブヘッド、その製造方法及びヘッド素材」(特許文献2参照)などが提案されている。
【0008】
しかしながら、上記のゴルフクラブヘッドの製造方法の何れの提案も、ゴルフクラブヘッドのフェース面部とキャビティ面部を同時加工するに留まる製造法の提案であって、ロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを形成するホーゼル部の切削加工をフェース面部やキャビティ面部の切削加工と同時加工するものではないため、一つの金属ヘッド原形成型体から切削加工による全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを工作機械によって数値設定して高精度のゴルフクラブヘッドを製造するものではなかった。
【0009】
また、以上の問題点を解決しようとする本出願人による一つの金属製ブロックから切削加工によって全番手における金属製ゴルフクラブヘッドを製作することができる「金属性ゴルフクラブヘッドの製造方法とその製造方法で製造された金属性ゴルフクラブヘッド」(特許文献3参照)が提案されている。
【0010】
しかしながら、上記の提案は、押し出し加工による成型された金属製ブロックを工作機械でゴルフクラブヘッド形状に切削加工する手段を採用しているため、切削代ろが肉厚となることによって切削加工時間が多大となって、高価な三次元工作機械を長時間にわたって稼動させなければならないという問題点があった。
【0011】
本出願人は、以上のような問題点を解決するにあたり、一つの金属ヘッド原形成型体から切削加工によるアイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを工作機械によって数値設定することができる「金属性ゴルフクラブヘッドの製造方法と、その製造方法で製造された金属性ゴルフクラブヘッド」の提案に至るものである。
【0012】
【特許文献1】特開平6-55324号公報
【特許文献2】特開2011-125611号公報
【特許文献3】特開2012-179275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み、一つの金属ヘッド原形成型体から切削加工によるアイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを工作機械によって数値設定することができる金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法と、その製造方法で製造された金属製ゴルフクラブヘッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、一つの金属ヘッド原形成型体から切削加工によるアイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを工作機械によって数値設定することができる金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法であって、金属を熱した状態で金型に入れて、キャビティ面部からホーゼル部にかけて水平面を有する突出部が形成されると共に、ソール部とクラウン部には夫々フェース側に水平面を有する張り出し翼部が形成された金属ヘッド原形成型体を鍛造成型する金型鍛造工程と、該突出部に少なくとも2以上の位置決め穴と少なくとも1以上のネジ穴を形成するネジ穴・穿穴工程と、該突出部に形成された位置決め穴により3軸切削工作機械用固定冶具上に金属ヘッド原形成型体が位置決めされつつ載置され、かつ、該突出部に形成されたネジ穴により3軸切削工作機械用固定冶具と金属ヘッド原形成型体とを固定した状態で、3軸切削工作機械によりフェース面部とホーゼル部の上半分を切削加工すると共に、各張り出し翼部に少なくとも1以上の位置決め穴と少なくとも1以上のネジ穴を形成するフェース面部加工工程と、各張り出し翼部に形成された位置決め穴により5軸切削工作機械用固定冶具上に金属ヘッド原形成型体がフェース面部加工工程に対し上下反転した状態で位置決めされつつ載置され、かつ、各張り出し翼部に形成されたネジ穴により5軸切削工作機械用固定冶具と金属ヘッド原形成型体とを固定した状態で、5軸切削工作機械によりキャビティ面部とホーゼル部の下半分を切削加工すると共に、該ホーゼル部のネジ部を同時に形成するキャビティ面部加工工程と、ソール部に形成された張り出し翼部とクラウン部に形成された張り出し翼部を切断する張り出し翼部切断工程と、バレル加工、研磨加工、メッキ加工が行われる仕上げ工程と、から成る手段を採る。
【0015】
また、本発明は、前記金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法において、ソール部に形成された張り出し翼部及びクラウン部に形成された張り出し翼部のうち少なくとも一方若しくは両方の切断が、キャビティ面部加工工程において同時に行われる手段を採用し得る。
【0016】
さらに、本発明は、上記製造方法により製造された金属製ゴルフクラブヘッドである。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法によれば、切削工作機械の切削加工プログラムを変更することによって、ゴルフクラブヘッドの形状や、ロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを個人データに合わせて細かく数値設定することができるといった、優れた効果を奏する。
【0018】
また、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法によれば、金属ヘッド原形成型体が、アイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを含有する形状ならびに肉厚寸法を有して成型されるため、一つの金属ヘッド原形成型体でアイアンクラブの全番手におけるゴルフクラブヘッドが切削工作機械で切削加工できるといった、優れた効果を奏する。
【0019】
さらに、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法によれば、切削工作機械での切削工程がオールミーリングで同時加工するため、同一品番のロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックの製法上の形状精度誤差が殆どない高精度かつ同一のアイアンゴルフクラブヘッドの提供が可能になるもので、切削加工後のホーゼル部におけるロフト角ならびにライ角の手作業による微調整作業が不要であるといった、優れた効果を奏する。
【0020】
またさらに、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法によれば、使用者の体型やスイングスピード・軌道の測定データに基づいたロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを備えた試作品を容易に製作できるといった、優れた効果を奏する。
【0021】
さらにまた、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法によれば、ロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックの異なる試作品が容易に製作することが可能であるため、多様な角度の異なった現物試作品で試し打ちができるといった、優れた効果を奏する。
【0022】
そして、本発明にかかる製造方法により製造された金属製ゴルフクラブヘッドによれば、多品種ならびに小ロット生産が可能になるため、短期間のモデルチェンジにも対応可能であるといった、優れた効果を奏する。
【0023】
そしてまた、本発明にかかる製造方法により製造されたゴルフクラブヘッドによれば、ヘッド加工と同時にデザイン装飾文字やロゴマークならびにスコアラインなども簡単に加工できるといった、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドの製造工程を示すチャート図である。(実施例1)
図2】本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドの金型鍛造工程を示す説明図である。
図3】本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドのネジ穴・穿穴工程を示す説明図である。
図4】本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドのフェース面部加工工程を示す説明図である。
図5】本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドのキャビティ面部加工工程を示す説明図である。
図6】本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドの張り出し翼部切断工程を示す説明図である。
図7】本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドの製造方法で製造された金属製ゴルフクラブヘッドを示す説明図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10の製造方法は、金型鍛造工程S1と、ネジ穴・穿穴工程S2と、フェース面部加工工程S3と、キャビティ面部加工工程S4と、張り出し翼部切断工程S5と、仕上げ工程S6と、で構成される製造方法であって、一つの金属ヘッド原形成型体から切削加工によるアイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを切削工作機械によって数値設定することができる手段を採ったことを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10の製造方法ならびにその製造方法により製造された金属製ゴルフクラブヘッド10の実施形態を、図面に基づき詳細に説明する。
【0026】
なお、本発明は、形状や寸法等、下記の実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の要旨に逸脱しない範囲で任意に変更することができる。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10の製造工程を示すチャート図である。すなわち、一つの金属ヘッド原形成型体20から切削加工によるアイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを切削工作機械によって数値設定することができる金属製ゴルフクラブヘッド10の製造方法であって、金型鍛造工程S1と、ネジ穴・穿穴工程S2と、フェース面部加工工程S3と、キャビティ面部加工工程S4と、張り出し翼部切断工程S5と、仕上げ工程S6と、で構成されている。
【0028】
金型鍛造工程S1は、金属を熱した状態で金型に入れて金属ヘッド原形成型体20を鍛造成型する工程であって、主に軟鉄、20C、25C、SS400、ステンレス鋼、チタン、チタン合金などの丸棒素材を1200℃に熱してエアーハンマーで荒打ちまたは仕上げ打ち加工後、鍛造金型に嵌められて成型される。
【0029】
図2は、かかる金型鍛造工程S1により鍛造成型された金属ヘッド原形成型体20を示す説明図である。
該金属ヘッド原形成型体20には、キャビティ面部40からホーゼル部にかけて水平面41aを有する突出部41が形成されると共に、ソール部21とクラウン部22には夫々フェース側に水平面50aを有する張り出し翼部50が形成されて成り、平面肉厚部がフェース面部30とキャビティ面部40に相当し、突出部41と張り出し翼部50がチャッキング部に相当し、斜め立ち上がり部はホーゼル部60に相当する形状で成型される。
【0030】
また、金属ヘッド原形成型体20は、各加工箇所にアイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを含有する形状ならびに肉厚寸法を有して成型されており、一つの金属ヘッド原形成型体20でアイアンクラブの全番手におけるゴルフクラブヘッドが工作機械によって製作可能な形状を有している。
【0031】
図3は、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10のネジ穴・穿穴工程S2を示す説明図である。
本発明にかかるネジ穴・穿穴工程S2は、金型鍛造成型された金属ヘッド原形成型体20のキャビティ面部40に形成される突出部41に、少なくとも2以上の位置決め穴43と少なくとも1以上のネジ穴42を形成する工程であって、後工程のフェース面部加工工程S3において金属ヘッド原形成型体20を3軸切削工作機械用固定冶具70に固定するネジ穴42及び位置決め用の穴43を穿設する工程である。
【0032】
金属ヘッド原形成型体20のキャビティ面部40に形成される突出部41に少なくとも2以上の位置決め穴43と少なくとも1以上のネジ穴42を形成することによって、後工程のフェース面部加工工程S3において正確無比な高精度のフェース面部30の加工が実現可能になると共に、切削加工において全番手毎の専用固定冶具を必要としないものである。
【0033】
図4は、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10のフェース面部加工工程S3を示す説明図であり、図4(a)は金属ヘッド原形成型体20の全体斜視図を示し、図4(b)は金属ヘッド原形成型体20の切削加工時における断面説明図である。
本発明にかかるフェース面部加工工程S3は、前工程で突出部41に形成された位置決め穴43により3軸切削工作機械用固定冶具70上に金属ヘッド原形成型体20が位置決めされ、かつ、該突出部41に形成されたネジ穴42により3軸切削工作機械用固定冶具70と金属ヘッド原形成型体20とを固定した状態で、3軸切削工作機械によりフェース面部30とホーゼル部60の上半分を切削加工すると共に、前記各張り出し翼部50に少なくとも1以上の位置決め穴52と少なくとも1以上のネジ穴51を形成する工程である。
【0034】
本発明におけるフェース面部加工工程S3は、金属ヘッド原形成型体20の上半分とスコアライン31を切削加工すると共に、フェース面部30が後工程における切削基準面になことから、従来にない同一かつ高精度の金属製ゴルフクラブヘッド10の提供を可能とするものである。
【0035】
図5は、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10のキャビティ面部加工工程S4を示す説明図であり、図5(a)は金属ヘッド原形成型体20の全体斜視図を示し、図5(b)は金属ヘッド原形成型体20の切削加工時における断面説明図である。
本発明にかかるキャビティ面部加工工程S4は、前工程のフェース面部加工工程S3で各張り出し翼部50に形成された位置決め穴52により5軸切削工作機械用固定冶具71上に金属ヘッド原形成型体20が該フェース面部加工工程S3に対し上下反転した状態で位置決めされつつ載置され、かつ、各張り出し翼部50に形成されたネジ穴51により5軸切削工作機械用固定冶具71と金属ヘッド原形成型体20とを固定した状態で、5軸切削工作機械によりキャビティ面部40とホーゼル部60の下半分を切削加工すると共に、該ホーゼル部60のネジ部61を同時に形成する工程である。
【0036】
本発明におけるキャビティ面部加工工程S4は、5軸切削工作機械を使用することで寸法取りと角度取りが自在であって、キャビティ面部40の加工とホーゼル部60の加工とを同時に加工することが可能であるため、ロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどの従来加工できなかった相対角度の精度設定が可能となると共に、刻印やデザイン装飾文字の刻設加工を可能とするものである。
【0037】
図6は、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドの張り出し翼部切断工程を示す説明図である。
本発明にかかる張り出し翼部切断工程S5は、前工程のキャビティ面部加工工程S4で役目を終えて取り残されたソール部21及びクラウン部22に形成された張り出し翼部50を、切り離す工程である。
【0038】
本発明における張り出し翼部50は、金属ヘッド原形成型体20のソール部21とクラウン部22の外方に突出して形成されるもので、該張り出し翼部50があることによって、5軸切削工作機械でのキャビティ面部40・ホーゼル部60の下半分の切削加工とホーゼル部60のネジ部61の形成加工とを同時加工する前記キャビティ面部加工工程S4において、金属ヘッド原形成型体20を5軸切削工作機械固定冶具71にブレや振動もなく確実に固定することができることから、従来にない高精度の金属製ゴルフクラブヘッド10の提供を可能とする。
【0039】
ところで、かかる張り出し翼部切断工程S5において行われるソール部21に形成された張り出し翼部50またはクラウン部22に形成された張り出し翼部50の何れか一方の切断について、前記キャビティ面部加工工程S4において同時に切断してしまう態様も可能である。かかる態様を採用することで、張り出し翼部切断工程S5での張り出し翼部50の切断作業を簡略化して、作業効率の向上に資することとなる。
【0040】
また、かかる張り出し翼部切断工程S5において行われるソール部21に形成された張り出し翼部50及びクラウン部22に形成された張り出し翼部50の両方の切断について、前記キャビティ面部加工工程S4において同時に切断してしまう態様も可能である。かかる態様を採用することで、張り出し翼部切断工程S5を省略することが可能となり、作業効率の向上に資することとなる。
【0041】
本発明にかかる仕上げ工程S6は、金属ヘッド原形成型体20全体にバレル加工、研磨加工、メッキ加工が行われる工程である。
【0042】
かかる仕上げ工程S6において、前段の各工程で切削加工された金属ヘッド原形成型体20をバレル加工、研磨加工、クロムメッキを施し、さらに刻設文字などに入色し、最終品質検査を行なって完成品となる。
【実施例2】
【0043】
図7は、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10の製造方法により製造された金属製ゴルフクラブヘッド10を示す説明図であり、図7(a)は金属製ゴルフクラブヘッド10のフェース側全体斜視図を示し、図7(b)は金属製ゴルフクラブヘッド10のキャビティ側全体斜視図を示している。
【0044】
本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10は、上記実施例1で説明した通り、金属を熱した状態で金型に入れて、キャビティ面部40からホーゼル部60にかけて水平面41aを有する突出部41が形成されると共に、ソール部21とクラウン部22には夫々フェース側に水平面50aを有する張り出し翼部50が形成された金属ヘッド原形成型体20を鍛造成型する金型鍛造工程S1と、突出部41に少なくとも2以上の位置決め穴43と少なくとも1以上のネジ穴42を形成するネジ穴・穿穴工程S2と、突出部41に形成された位置決め穴43により3軸切削工作機械用固定冶具70上に金属ヘッド原形成型体20が位置決めされつつ載置され、かつ、該突出部41に形成されたネジ穴42により3軸切削工作機械用固定冶具70と金属ヘッド原形成型体20とを固定した状態で、3軸切削工作機械によりフェース面部30とホーゼル部60の上半分を切削加工すると共に、各張り出し翼部50に少なくとも1以上の位置決め穴52と少なくとも1以上のネジ穴51を形成するフェース面部加工工程S3と、各張り出し翼部50に形成された位置決め穴52により5軸切削工作機械用固定冶具71上に金属ヘッド原形成型体20がフェース面部加工工程S3に対し上下反転した状態で位置決めされつつ載置され、かつ、各張り出し翼部50に形成されたネジ穴51により5軸切削工作機械用固定冶具71と金属ヘッド原形成型体20とを固定した状態で、5軸切削工作機械によりキャビティ面部40とホーゼル部60の下半分を切削加工すると共に、該ホーゼル部60のネジ部61を同時に形成するキャビティ面部加工工程S4と、ソール部21に形成された張り出し翼部50とクラウン部22に形成された張り出し翼部50を切断する張り出し翼部切断工程S5と、バレル加工、研磨加工、メッキ加工が行われる仕上げ工程S6と、により製造される。
【0045】
すなわち、上記製造方法によれば、一つの金属ヘッド原形成型体20から切削加工によるアイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを工作機械によって数値設定することができるため、その製造方法により製造された金属製ゴルフクラブヘッド10は、クラブスペックの製法上の形状精度誤差が殆どない高精度なアイアンゴルフクラブヘッドとなる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の金属製ゴルフクラブヘッド10の製造方法と、その製造方法により製造された金属製ゴルフクラブヘッド10は、工作機械による3軸並びに5軸の切削加工を行うことで、一つの金属ヘッド原形成型体20から全番手におけるゴルフクラブヘッドを製作することができると共に、アイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを工作機械によって数値設定を可能とし、さらに高精度且つ同一スペックの量産を可能することから、本発明の産業上の利用可能性は極めて高いものと思料する。
【符号の説明】
【0047】
10 金属製ゴルフクラブヘッド
20 金属ヘッド原形成型体
21 ソール部
22 クラウン部
30 フェース面部
31 スコアライン
40 キャビティ面部
41 突出部
41a 水平面
42 ネジ穴
43 位置決め穴
50 張り出し翼部
50a 水平面
51 ネジ穴
52 位置決め穴
60 ホーゼル部
61 ネジ部
70 3軸切削工作機械固定冶具
71 5軸切削工作機械固定冶具
S1 金型鍛造工程
S2 ネジ穴・穿穴工程
S3 フェース面部加工工程
S4 キャビティ面部加工工程
S5 張り出し翼部切断工程
S6 仕上げ工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7