【実施例1】
【0027】
図1は、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10の製造工程を示すチャート図である。すなわち、一つの金属ヘッド原形成型体20から切削加工によるアイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを切削工作機械によって数値設定することができる金属製ゴルフクラブヘッド10の製造方法であって、金型鍛造工程S1と、ネジ穴・穿穴工程S2と、フェース面部加工工程S3と、キャビティ面部加工工程S4と、張り出し翼部切断工程S5と、仕上げ工程S6と、で構成されている。
【0028】
金型鍛造工程S1は、金属を熱した状態で金型に入れて金属ヘッド原形成型体20を鍛造成型する工程であって、主に軟鉄、20C、25C、SS400、ステンレス鋼、チタン、チタン合金などの丸棒素材を1200℃に熱してエアーハンマーで荒打ちまたは仕上げ打ち加工後、鍛造金型に嵌められて成型される。
【0029】
図2は、かかる金型鍛造工程S1により鍛造成型された金属ヘッド原形成型体20を示す説明図である。
該金属ヘッド原形成型体20には、キャビティ面部40からホーゼル部にかけて水平面41aを有する突出部41が形成されると共に、ソール部21とクラウン部22には夫々フェース側に水平面50aを有する張り出し翼部50が形成されて成り、平面肉厚部がフェース面部30とキャビティ面部40に相当し、突出部41と張り出し翼部50がチャッキング部に相当し、斜め立ち上がり部はホーゼル部60に相当する形状で成型される。
【0030】
また、金属ヘッド原形成型体20は、各加工箇所にアイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを含有する形状ならびに肉厚寸法を有して成型されており、一つの金属ヘッド原形成型体20でアイアンクラブの全番手におけるゴルフクラブヘッドが工作機械によって製作可能な形状を有している。
【0031】
図3は、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10のネジ穴・穿穴工程S2を示す説明図である。
本発明にかかるネジ穴・穿穴工程S2は、金型鍛造成型された金属ヘッド原形成型体20のキャビティ面部40に形成される突出部41に、少なくとも2以上の位置決め穴43と少なくとも1以上のネジ穴42を形成する工程であって、後工程のフェース面部加工工程S3において金属ヘッド原形成型体20を3軸切削工作機械用固定冶具70に固定するネジ穴42及び位置決め用の穴43を穿設する工程である。
【0032】
金属ヘッド原形成型体20のキャビティ面部40に形成される突出部41に少なくとも2以上の位置決め穴43と少なくとも1以上のネジ穴42を形成することによって、後工程のフェース面部加工工程S3において正確無比な高精度のフェース面部30の加工が実現可能になると共に、切削加工において全番手毎の専用固定冶具を必要としないものである。
【0033】
図4は、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10のフェース面部加工工程S3を示す説明図であり、
図4(a)は金属ヘッド原形成型体20の全体斜視図を示し、
図4(b)は金属ヘッド原形成型体20の切削加工時における断面説明図である。
本発明にかかるフェース面部加工工程S3は、前工程で突出部41に形成された位置決め穴43により3軸切削工作機械用固定冶具70上に金属ヘッド原形成型体20が位置決めされ、かつ、該突出部41に形成されたネジ穴42により3軸切削工作機械用固定冶具70と金属ヘッド原形成型体20とを固定した状態で、3軸切削工作機械によりフェース面部30とホーゼル部60の上半分を切削加工すると共に、前記各張り出し翼部50に少なくとも1以上の位置決め穴52と少なくとも1以上のネジ穴51を形成する工程である。
【0034】
本発明におけるフェース面部加工工程S3は、金属ヘッド原形成型体20の上半分とスコアライン31を切削加工すると共に、フェース面部30が後工程における切削基準面にな
ることから、従来にない同一かつ高精度の金属製ゴルフクラブヘッド10の提供を可能とするものである。
【0035】
図5は、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10のキャビティ面部加工工程S4を示す説明図であり、
図5(a)は金属ヘッド原形成型体20の全体斜視図を示し、
図5(b)は金属ヘッド原形成型体20の切削加工時における断面説明図である。
本発明にかかるキャビティ面部加工工程S4は、前工程のフェース面部加工工程S3で各張り出し翼部50に形成された位置決め穴52により5軸切削工作機械用固定冶具71上に金属ヘッド原形成型体20が
該フェース面部加工工程S3に対し上下反転した状態で位置決めされつつ載置され、かつ、各張り出し翼部50に形成されたネジ穴51により5軸切削工作機械用固定冶具71と金属ヘッド原形成型体20とを固定した状態で、5軸切削工作機械によりキャビティ面部40とホーゼル部60の下半分を切削加工すると共に、該ホーゼル部60のネジ部61を同時に形成する工程である。
【0036】
本発明におけるキャビティ面部加工工程S4は、5軸切削工作機械を使用することで寸法取りと角度取りが自在であって、キャビティ面部40の加工とホーゼル部60の加工とを同時に加工することが可能であるため、ロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどの従来加工できなかった相対角度の精度設定が可能となると共に、刻印やデザイン装飾文字の刻設加工を可能とするものである。
【0037】
図6は、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッドの張り出し翼部切断工程を示す説明図である。
本発明にかかる張り出し翼部切断工程S5は、前工程のキャビティ面部加工工程S4で役目を終えて取り残されたソール部21及びクラウン部22に形成された張り出し翼部50を、切り離す工程である。
【0038】
本発明における張り出し翼部50は、金属ヘッド原形成型体20のソール部21とクラウン部22の外方に突出して形成されるもので、該張り出し翼部50があることによって、5軸切削工作機械でのキャビティ面部40・ホーゼル部60の下半分の切削加工とホーゼル部60のネジ部61の形成加工とを同時加工する前記キャビティ面部加工工程S4において、金属ヘッド原形成型体20を5軸切削工作機械固定冶具71にブレや振動もなく確実に固定することができることから、従来にない高精度の金属製ゴルフクラブヘッド10の提供を可能とする。
【0039】
ところで、かかる張り出し翼部切断工程S5において行われるソール部21に形成された張り出し翼部50またはクラウン部22に形成された張り出し翼部50の何れか一方の切断について、前記キャビティ面部加工工程S4において同時に切断してしまう態様も可能である。かかる態様を採用することで、張り出し翼部切断工程S5での張り出し翼部50の切断作業を簡略化して、作業効率の向上に資することとなる。
【0040】
また、かかる張り出し翼部切断工程S5において行われるソール部21に形成された張り出し翼部50及びクラウン部22に形成された張り出し翼部50の両方の切断について、前記キャビティ面部加工工程S4において同時に切断してしまう態様も可能である。かかる態様を採用することで、張り出し翼部切断工程S5を省略することが可能となり、作業効率の向上に資することとなる。
【0041】
本発明にかかる仕上げ工程S6は、金属ヘッド原形成型体20全体にバレル加工、研磨加工、メッキ加工が行われる工程である。
【0042】
かかる仕上げ工程S6において、前段の各工程で切削加工された金属ヘッド原形成型体20をバレル加工、研磨加工、クロムメッキを施し、さらに刻設文字などに入色し、最終品質検査を行なって完成品となる。
【実施例2】
【0043】
図7は、本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10の製造方法により製造された金属製ゴルフクラブヘッド10を示す説明図であり、
図7(a)は金属製ゴルフクラブヘッド10のフェース側全体斜視図を示し、
図7(b)は金属製ゴルフクラブヘッド10のキャビティ側全体斜視図を示している。
【0044】
本発明にかかる金属製ゴルフクラブヘッド10は、上記実施例1で説明した通り、金属を熱した状態で金型に入れて、キャビティ面部40からホーゼル部60にかけて水平面41aを有する突出部41が形成されると共に、ソール部21とクラウン部22には夫々フェース側に水平面50aを有する張り出し翼部50が形成された金属ヘッド原形成型体20を鍛造成型する金型鍛造工程S1と、突出部41に少なくとも2以上の位置決め穴43と少なくとも1以上のネジ穴42を形成するネジ穴・穿穴工程S2と、突出部41に形成された位置決め穴43により3軸切削工作機械用固定冶具70上に金属ヘッド原形成型体20が位置決めされつつ載置され、かつ、該突出部41に形成されたネジ穴42により3軸切削工作機械用固定冶具70と金属ヘッド原形成型体20とを固定した状態で、3軸切削工作機械によりフェース面部30とホーゼル部60の上半分を切削加工すると共に、各張り出し翼部50に少なくとも1以上の位置決め穴52と少なくとも1以上のネジ穴51を形成するフェース面部加工工程S3と、各張り出し翼部50に形成された位置決め穴52により5軸切削工作機械用固定冶具71上に金属ヘッド原形成型体20が
フェース面部加工工程S3に対し上下反転した状態で位置決めされつつ載置され、かつ、各張り出し翼部50に形成されたネジ穴51により5軸切削工作機械用固定冶具71と金属ヘッド原形成型体20とを固定した状態で、5軸切削工作機械によりキャビティ面部40とホーゼル部60の下半分を切削加工すると共に、該ホーゼル部60のネジ部61を同時に形成するキャビティ面部加工工程S4と、ソール部21に形成された張り出し翼部50とクラウン部22に形成された張り出し翼部50を切断する張り出し翼部切断工程S5と、バレル加工、研磨加工、メッキ加工が行われる仕上げ工程S6と、により製造される。
【0045】
すなわち、上記製造方法によれば、一つの金属ヘッド原形成型体20から切削加工によるアイアンクラブの全番手におけるロフト角、ライ角、フェース角、重量バランスなどのクラブスペックを工作機械によって数値設定することができるため、その製造方法により製造された金属製ゴルフクラブヘッド10は、クラブスペックの製法上の形状精度誤差が殆どない高精度なアイアンゴルフクラブヘッドとなる。