(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075724
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】微細レジストパターン形成用組成物およびそれを用いたパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/40 20060101AFI20170130BHJP
C08F 12/22 20060101ALI20170130BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
G03F7/40 511
C08F12/22
C08F20/10
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-219657(P2012-219657)
(22)【出願日】2012年10月1日
(65)【公開番号】特開2014-71424(P2014-71424A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年5月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511293803
【氏名又は名称】アーゼッド・エレクトロニック・マテリアルズ(ルクセンブルグ)ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】山 本 和 磨
(72)【発明者】
【氏名】石 井 雅 弘
(72)【発明者】
【氏名】關 藤 高 志
(72)【発明者】
【氏名】柳 田 浩 志
(72)【発明者】
【氏名】中 杉 茂 正
(72)【発明者】
【氏名】能 谷 剛
【審査官】
高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−064829(JP,A)
【文献】
特開平02−132444(JP,A)
【文献】
特開2011−257499(JP,A)
【文献】
特開2010−049247(JP,A)
【文献】
特開2008−310314(JP,A)
【文献】
特開2013−145290(JP,A)
【文献】
特開2013−117710(JP,A)
【文献】
特開2009−265505(JP,A)
【文献】
特開2011−033679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学増幅型レジスト組成物を用いてネガ型レジストパターンを形成させる方法において、レジストパターンを太らせることによってパターンを微細化するために用いられる微細パターン形成用組成物であって、ヒドロキシアリール基を有する繰り返し単位を含むポリマーと、前記ネガ型レジストパターンを溶解させない有機溶
剤とを含んでなり、
前記ポリマーを構成する全繰り返し単位のモル数を基準として、ヒドロキシアリール基を有する繰り返し単位の割合が60モル%以上であり、かつ
前記繰り返し単位が、下記式:
【化1】
からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーに由来するもの
(以下のポリマーを除く
【化2】
分子量(Mw)=6,800
分散度(Mw/Mn)=1.77、および
【化3】
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.85)である、微細パターン形成用組成物。
【請求項2】
前記有機溶剤が、2−ヘプタノン、または酢酸ブチルを含んでなる、請求項1に記載の微細パターン形成用組成物。
【請求項3】
前記組成物が、2−ヘプタノン、または酢酸ブチルを80重量%以上含んでなる、請求項1または2に記載の微細パターン形成用組成物。
【請求項4】
前記繰り返し単位が、下記式:
【化4】
からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーに由来するものである、請求項
1〜3のいずれか一項に記載の微細パターン形成用組成物。
【請求項5】
前記繰り返し単位が、下記式:
【化5】
からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーに由来するものである、請求項
1〜4のいずれか一項に記載の微細パターン形成用組成物。
【請求項6】
前記繰り返し単位が、下記式:
【化6】
からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーに由来するものである、請求項
1〜5のいずれか一項に記載の微細パターン形成用組成物。
【請求項7】
(1)半導体基板上に化学増幅型フォトレジスト組成物を塗布してフォトレジスト層を形成する工程、
(2)前記フォトレジスト層で被覆された前記半導体基板を露光する工程、
(3)前記露光後に有機溶剤現像液で現像する工程、
(4)前記フォトレジストパターンの表面に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の微細パターン形成用組成物を塗布する工程、
(5)塗布済みのフォトレジストパターンを加熱する工程、および
(6)過剰の微細パターン形成用組成物洗浄して除去する工程
を含んでなることを特徴とする微細化されたネガ型レジストパターンの形成方法。
【請求項8】
前記工程(1)と、前記工程(4)とで、同一の塗布装置を用いる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(6)において、2−ヘプタノンあるいは酢酸ブチルを使用する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
化学増幅型レジスト組成物を用いてネガ型レジストパターンを形成させる方法において、レジストパターンを太らせることによってパターンを微細化するために用いられる微細パターン形成用組成物であって、ヒドロキシアリール基を有する繰り返し単位を含むポリマーと、前記ネガ型レジストパターンを溶解させない有機溶
剤と、界面活性剤、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、および防カビ剤からなる群から選択される添加剤とからなり、
前記ポリマーを構成する全繰り返し単位のモル数を基準として、ヒドロキシアリール基を有する繰り返し単位の割合が60モル%以上であり、かつ
前記繰り返し単位が、下記式:
【化7】
からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーに由来するもの
(以下のポリマーを除く
【化8】
分子量(Mw)=6,800
分散度(Mw/Mn)=1.77、および
【化9】
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.85)である、微細パターン形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の製造プロセスにおいて、レジストパターンを形成させた後、さらにそれを太らせることにより微細なサイズのレジストパターンを得るための組成物、およびそれを用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、半導体デバイスの製造過程におけるレジストパターンの微細化が求められている。一般的にレジストパターンは、光リソグラフィー技術を用いて、例えば露光されることによってアルカリ性現像液に対する溶解性が高くなるポジ型レジストを用い、レジストを露光した後にアルカリ性現像液を用いて、露光された部分を除去し、ポジ型パターンを形成する。しかし、微細なレジストパターンを安定的に得るためには、露光光源と露光方法に依存する部分が大きく、その光源や方式を提供できる高価で特別な装置や周辺材料が必要であり、莫大な投資が必要となる。
【0003】
このため、従来のレジストパターン形成方法を用いた後、より微細なパターンを得るための様々な技術が検討されている。その中で実用的な方法は、従来の方法で安定的に得られる範囲で形成されたレジストパターンに水溶性の樹脂および必要に応じて添加剤を含む組成物(以下簡単のために微細パターン形成用組成物ということがある)を覆い、レジストパターンを太らせて、ホール径または分離幅を微細化させるものである。
【0004】
このような方法としては、例えば以下のような技術が知られている。
(1)形成されたレジストパターンを酸によって架橋しえる微細パターン形成用組成物で覆い、加熱によりレジストパターン中に存在する酸を拡散させ、レジストとの界面に架橋層をレジストパターンの被覆層として形成させ、現像液で非架橋部分を取り除くことでレジストパターンを太らせ、レジストパターンのホール径または分離幅が微細化される方法(特許文献1および2参照)。
(2)形成されたレジストパターンに、(メタ)アクリル酸モノマーと水溶性ビニルモノマーとからなるコポリマーを含む微細パターン形成用組成物レジストパターンに塗布し、熱処理により、レジストパターンを熱収縮させてパターンを微細化させる方法(特許文献3参照)。
(3)アミノ基、特に1級アミンを含むポリマーを含有する、フォトレジストパターンを被覆するための水溶性微細パターン形成用組成物(特許文献4参照)。
【0005】
これらの方法においては、基板上にレジスト組成物を塗布する工程と、レジストパターン表面に微細パターン形成用組成物を塗布する工程との2回の塗布操作が行われる。このような場合、工程設備の簡略化のために、2回の塗布操作を同一の塗布装置を用いて行うことが行われることが多い。また、レジストパターンの製造はクリーンルーム内で行われることが一般的であるが、塗布装置を兼用することができれば限られたクリーンルーム内のスペースを節約することができる。
ところが、本発明者らの検討によると、レジスト組成物の塗布と微細パターン形成用組成物の塗布とを同一の塗布装置により行うと問題が起こり得ることが判明した。すなわち、塗布装置においては組成物の塗布を行うと、一般的に過剰の組成物が廃液として排出される。また、エッジリンス液などの洗浄液により過剰の組成物が除去される際、組成物と洗浄液との混合物も廃液として排出される。この廃液は配管を通過して装置外に排出されるが、その都度配管洗浄を行わない限りは廃液が配管内に付着して残留するのが一般的である。このため、レジスト組成物の塗布と、微細パターン形成用組成物とを同一の塗布装置で塗布した場合、配管内でレジスト組成物と微細パターン形成用組成物とが接触する。このとき、従来の微細パターン形成用組成物では固形物が析出することがあった。そのような固形物が発生すると、配管の詰りが起こるので生産性が低下してしまうのでその改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−73927号公報
【特許文献2】特開2005−300853号公報
【特許文献3】特開2003−84459号公報
【特許文献4】特開2008−518260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような課題に鑑みて、従来の微細パターン形成用組成物と同等以上の微細パターンを形成することができると同時に、一般的なフォトレジスト組成物との相溶性に優れた微細パターン形成用組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による微細パターン形成用組成物は、化学増幅型レジスト組成物を用いてネガ型レジストパターンを形成させる方法において、レジストパターンを太らせることによってパターンを微細化するために用いられるものであって、ヒドロキシアリール基を有する繰り返し単位を含むポリマーと、前記ネガ型レジストパターンを溶解させない有機溶剤とを含んでなることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明によるネガ型レジストパターンの形成方法は、
(1)半導体基板上に化学増幅型フォトレジスト組成物を塗布してフォトレジスト層を形成する工程、
(2)前記フォトレジスト層で被覆された前記半導体基板を露光する工程、
(3)前記露光後に有機溶剤現像液で現像する工程、
(4)前記フォトレジストパターンの表面に、前記微細パターン形成用組成物を塗布する工程、
(5)塗布済みのフォトレジストパターンを加熱する工程、および
(6)過剰の微細パターン形成用組成物洗浄して除去する工程
を含んでなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レジストパターンを太らせることによって、より微細なパターンを形成することができる微細パターン形成用組成物が提供される。この微細パターン形成用組成物により形成されたレジストパターンは、従来の微細パターン形成用組成物を用いて形成させたレジストパターンと同等以上の高いドライエッチング耐性を具備しているものである。さらに、本発明による微細パターン形成用組成物は、フォトレジスト組成物の塗布に用いられた塗布装置と同一の塗布装置を用いた場合、フォトレジスト組成物と本発明による微細形成パターン形成用組成物とが混合しても固形分を析出しないので配管詰まりが起こりにくく、効率的に半導体素子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明すると以下の通りである。
【0012】
微細パターン形成用組成物
本発明による微細パターン形成用組成物は、特定の構造を含むポリマーと溶剤とを含んでなる。本発明において用いられるポリマーは、繰り返し単位中にヒドロキシアリール基を含むものである。ここでヒドロキシアリール基とは、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格など、芳香環を含む骨格に、一つ以上のヒドロキシ基(−OH)が結合したものである。中心となる骨格は、芳香族を含むものであれば特に限定されないが、溶剤に対する溶解性などの観点から、ベンゼン骨格またはナフタレン骨格であることが好ましい。また、ヒドロキシ基は2以上結合していてもよい。また本発明の効果を損なわない範囲で、ヒドロキシ基以外の置換基が結合してもよい。具体的にはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシ基、スルホ基、およびアミノ基などが挙げられる。また、アリール基を構成する二つの炭素原子に結合した炭化水素鎖が環状構造を形成してもよい。
【0013】
このようなヒドロキシアリール基は、ポリマーの主鎖または側鎖のいずれの部分に存在してもよい。
【0014】
このような繰り返し単位としては、具体的には下記のモノマーに由来するものが挙げられる。
【化1】
【0015】
すなわち、これらのモノマーを重合させることによって、本発明に用いるポリマーを製造することができる。ヒドロキシアリール基を含むモノマーはこれらに限定されず、芳香族環に多数のヒドロキシ基が結合しているものや、その他の置換基が結合していてもよい。
【0016】
本発明におけるポリマーは、ヒドロキシアリール基を含む繰り返し単位だけで構成されていてもよいが、その他の繰り返し単位を含んでもよい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルコールなどに由来する繰り返し単位を含んでもよい。このような場合、ヒドロキシアリール基を有する繰り返し単位の割合が多いほうが、本発明の効果が顕著になる傾向にある。このため、ポリマーを構成する全繰り返し単位のモル数を基準として、ヒドロキシアリール基を有する繰り返し単位の割合が60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。
【0017】
なお、本発明において、ポリマーを2種類以上組み合わせて用いることができる。このとき、ヒドロキシアリール基を有する繰り返し単位の割合が低いポリマーや、ヒドロキシアリール基を全く含まないポリマーを組み合わせることも可能である。しかしながら、本発明による効果を確保するためには、すべてのポリマーの繰り返し単位数の総数を基準として、ヒドロキシアリール基を有する繰り返し単位の割合が前記した割合であることが好ましい。
【0018】
また、本発明において用いられる、ポリマーの分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が一般に3,000〜200,000、好ましくは5,000〜150,000の範囲から選択される。なお、本発明において重量平均分子量とは、ゲル透過クロマトグラフィを用いて測定した、ポリスチレン換算平均重量分子量をいう。
【0019】
また、溶剤としては微細パターン形成用組成物を塗布するのに先立って形成されるレジストパターンを溶解しないものが用いられる。具体的には、ケトン類、エステル類などの有機溶媒から、レジストパターンの溶解性を考慮しながら選択することができる。具体的には、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン(以下MIBKという)、酢酸ブチル、酢酸プロピル、および酢酸ペンチルなどが挙げられる。これらのうち、特に2−ヘプタノン、酢酸ブチルが好ましい。レジストパターンを溶解しやすい乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下PGMEAという)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGMEという)、シクロヘキサノンなどは適当ではない。
【0020】
本発明による微細パターン形成用組成物は、前記した通りの特定の構造を含むポリマーを含むものであるが、ポリマーの濃度は対象となるレジストパターンの種類やサイズ、目的とするパターンサイズなどに応じて任意に選択することができる。しかし、前記の特定の構造を含むポリマーの濃度は組成物の全重量を基準として、一般に0.1〜10重量%、好ましくは1.0〜7.0重量%とされる。
【0021】
本発明による微細パターン形成用組成物は、必要に応じてその他の添加剤を含むこともできる。このような添加剤としては、界面活性剤、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、および防カビ剤が挙げられる。
【0022】
パターン形成方法
次に、本発明による微細なレジストパターンの形成方法について説明する。本発明の微細パターン形成用組成物が適用される代表的なパターン形成方法をあげると、次のような方法が挙げられる。
【0023】
まず、必要に応じて前処理された、シリコン基板等の基板の表面に化学増幅型フォトレジストをスピンコート法など従来から公知の塗布法により塗布して、化学増幅型フォトレジスト層を形成させる。化学増幅型フォトレジストの塗布に先立ち、反射防止膜を基板表面に形成させてもよい。このような反射防止膜により断面形状および露光マージンを改善することができる。
【0024】
本発明のパターン形成方法には、従来知られている何れの化学増幅型フォトレジストを用いることができる。化学増幅型フォトレジストは、紫外線などの光の照射により酸を発生させ、この酸の触媒作用による化学変化により光照射部分のアルカリ現像液に対する溶解性を上げてパターンを形成するもので、例えば、光照射により酸を発生させる酸発生化合物と、酸の存在下に分解しフェノール性水酸基或いはカルボキシル基のようなアルカリ可溶性基が生成される酸感応性基含有樹脂からなるもの、アルカリ可溶樹脂と架橋剤、酸発生剤からなるものが挙げられる。
【0025】
本発明においては、有機溶剤現像液を用いて、アルカリ可溶性基が生成されていない箇所を除去する方法によって形成された、フォトレジストパターンを使用している。そのため、通常のアルカリ性現像液で現像した場合にはポジ型として機能する化学増幅型フォトレジストを用いて、露光部分がパターンとして残るネガ型フォトレジストパターンを形成している。
【0026】
基板上に形成された化学増幅型フォトレジスト層は、必要に応じて、例えばホットプレート上でプリベークされて化学増幅型フォトレジスト中の溶剤が除去され、厚さが通常50nm〜500nm程度のフォトレジスト膜とされる。プリベーク温度は、用いる溶剤或いは化学増幅型フォトレジストにより異なるが、通常50〜200℃、好ましくは70〜150℃程度の温度で行われる。
【0027】
フォトレジスト膜はその後、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、軟X線照射装置、電子線描画装置など公知の照射装置を用い、必要に応じマスクを介して露光が行われる。
【0028】
露光後、必要に応じベーキングを行った後、例えばパドル現像などの方法で現像が行われ、レジストパターンが形成される。本発明ではレジストの現像は、有機溶剤現像液を用いて行われる。有機溶剤現像液は、露光によってアルカリ水溶液に可溶化したフォトレジスト膜部分を溶解させず、露光されていない、アルカリ水溶液に不溶なフォトレジスト膜部分を溶解させる効果があるものならば任意のものを用いることができる。一般に、アルカリ水溶液に不溶なフォトレジスト膜部分は有機溶剤に溶解しやすいため、比較的広い範囲から有機溶剤現像液を選択することができる。使用し得る有機溶剤現像液として使用できる有機溶剤は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤から選択することができる。
【0029】
ケトン系溶剤としては、1−オクタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等を挙げることができる。
【0030】
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、n−酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤を挙げることができる。
【0031】
アルコール系溶剤としては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール等のアルコールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
【0032】
エーテル系溶剤としては、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0033】
アミド系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が使用できる。
【0034】
炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0035】
なお、これらの有機溶剤は2種類以上を組み合わせて用いることができ、また本発明の効果を損なわない範囲で、水などの無機溶剤を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
現像処理後、リンス液を用いてレジストパターンのリンス(洗浄)が行われることが好ましい。本発明においてのリンス工程では、アルカン系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄することが好ましい。
【0037】
現像後のリンス工程で用いられるリンス液としては、例えば、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。これらの溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。
【0038】
リンス液中の含水率は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。リンス液には、界面活性剤を適当量さらに添加して使用することもできる。
【0039】
引き続き、本発明による微細パターン形成用組成物を適用してパターンの微細化を行うが、それに先立って、レジストパターンの表面に、レジストパターンを溶解しない水や有機溶剤を塗布することができる。このような処理によって、組成物の塗布性を改良し、組成物を均一に塗布することができる。すなわち、組成物に界面活性剤等の塗布性を改良するための添加剤を用いずに、塗布性を改良することができる。このような処理はプリウエット処理と呼ばれることがある。
【0040】
次いで、このレジストパターンを覆うように本発明による微細パターン形成用組成物を塗布し、レジストパターンと微細パターン形成用組成物との相互作用によって、レジストパターンを太らせる。ここで起こる相互作用は、ポリマーがレジストへ浸透したり、付着したりすることであると考えられ、それによってレジストパターンが太るものと考えられる。
【0041】
すなわちレジストパターンの表面のうち、形成された溝や孔の内壁に本発明による微細パターン形成組成物が浸透または付着などしてパターンが太り、その結果レジストパターン間の幅が狭まり、レジストパターンのピッチサイズまたはホール開口サイズを実効的に限界解像以下に微細化することが可能となる。
【0042】
本発明によるパターン形成方法において、微細パターン形成用組成物を塗布する方法は、例えばフォトレジスト樹脂組成物を塗布する際に従来から使用されている、スピンコート法などの任意の方法を用いることができる。
【0043】
微細パターン形成用組成物が塗布された後のレジストパターンは、必要に応じプリベークされる。プリベークは、一定の温度で加熱することにより行っても、段階的に温度を昇温させながら加熱することによって行ってもよい。微細パターン形成用組成物を塗布した後の加熱処理の条件は、例えば40〜200℃、好ましくは80〜160℃、の温度、10〜300秒、好ましくは30〜120秒程度である。このような加熱は、ポリマーのレジストパターンへの浸透や付着を促進するものである。
【0044】
微細パターン形成用組成物の塗布および加熱後に、レジストパターンは太り、レジストパターンのライン幅は太くなり、ホールパターンの孔径は小さくなる。このような寸法の変化量は、加熱処理の温度と時間、使用するフォトレジスト樹脂組成物の種類などに応じて適宜調整することができる。したがって、レジストパターンをどの程度まで微細化させるか、言い換えればレジストパターンのライン幅をどの程度広げ、ホールパターンの孔径をどの程度小さくすることが必要とされるかにより、これら諸条件を設定すればよい。しかし、レジストパターンの寸法変化量は微細パターン形成用組成物の適用の前後の差が、5〜30nmとするのが一般的である。
【0045】
レジストパターンを実質的に微細化させた後、レジストに対して作用しなかった過剰の微細パターン形成用組成物を、必要に応じて水や溶剤によりリンス処理して除去することができる。このようなリンス処理のために用いられる水または溶剤としては、レジストパターンに浸透または付着した微細パターン形成組成物に対しては溶解性が低く、浸透していないまたは付着していない過剰の組成物に対しては溶解性が高いものが選択される。より好ましいのは、微細パターン形成用組成物に用いられている溶剤、特に純水をリンス処理に用いることが好ましい。
【0046】
このようにして得られたレジストパターンは、現像直後のレジストパターンが微細パターン形成用組成物の作用によってパターンの寸法が変化し、実質的に微細化されている。そして、本発明による微細化パターン形成用組成物を用いて製造されたレジストパターンは半導体素子の製造に当たって、より微細なパターンを有する半導体素子等の製造に有用なものである。
【0047】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
【0048】
レジストパターン形成例
スピンコーター(東京エレクトロン株式会社製)にて、下層反射防止膜AZ ArF−1C5D(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を8インチシリコンウェハーに塗布し、200℃にて、60秒間ベークを行い、膜厚37nmの反射防止膜を得た。その上に感光性樹脂組成物AZ AX2110P(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を、110℃にて60秒間ベークを行い120nmの膜厚を得た。得られたウエハーをArF線(193nm)の露光波長を有する露光装置(株式会社ニコン製)を用いて、パターン露光を行い、110℃にて、60秒間ベークした。さらに、2−ヘプタノンを現像液として30秒間現像処理(ネガ型現像)を行い、ピッチ110nm、ホールサイズ60nmのレジストパターンを得た。
【0049】
ポリマー合成例(PQMA/MAdMA(80/20)コポリマーの合成)
撹拌器、凝縮器および温度制御装置を取り付けた反応器にメチルアミルケトン(2100部)、4−ヒドロキシフェニルメタクリレート(PQMA、670部)、2−メチルアダマンタン−2−イルメタクリレート(MAdMA、220部)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチレート)(ラジカル重合開始剤、9部)を投入し、溶解させてモノマー溶液を調製し、窒素ガスで30分間パージした。さらに、80℃に保持された加熱装置に反応器を入れて、モノマー溶液を80℃で6時間保持した。
【0050】
室温に冷却した後、n−ヘプタン(15000部)に投入し、沈殿を形成させた。得られた白色沈殿物を減圧ろ過で単離した。沈殿物をテトラヒドロフラン(2000部)に溶解させた。得られた溶液をn−ヘプタン(15000部)に投入し、沈殿を形成させた。得られた白色沈殿物を減圧ろ過で単離し、真空オーブン中で一晩50℃にて乾燥させて、
白色粉体状のPQMA/MAdMA(80/20)コポリマーを得た。
【0051】
モノマーの種類または配合比を変更したほかは同様にして、表1に示されるポリマーを合成した。なお、コポリマーの合成に用いたモノマーは以下の通りである。
【化2】
【0052】
微細パターン形成用組成物の調製
各種ポリマーを各種溶媒に溶解させて、微細パターン形成用組成物を調製した。それぞれの組成物に含まれる成分およびその含有量は表1に示された通りであった。
【0053】
ホールパターン縮小量の測定
調製された組成物をレジストパターン1にスピンコーターを用いて塗布し、130℃で60秒間加熱したのち、2−ヘプタノンによって洗浄し、乾燥した。得られたホールパターンの寸法を測定し、微細パターン形成用組成物によるホールパターンの縮小量を測定した。また、形成された微細パターン形状を目視により評価した。評価基準は以下の通りである。
A: パターン形状が矩形である
B: 形状が歪んでいるが、パターン形状を確認できる
C:パターンが崩れている状態で、形状を確認することができない
【0054】
溶解性の評価
レジスト組成物として、感光性樹脂組成物AZ AX2110P(以下、レジスト1という)およびAZ AX1120P(以下、レジスト2という)(いずれも商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を準備した。これらの組成物50gと微細パターン形成用組成物50gとを混合し、1時間振盪した後、混合物の状態を目視評価した。評価基準は以下に示す通りとした。
A: 混合物が透明で、沈殿、浮遊物が確認されない
B: 混合物に濁りが認められるが、沈殿物または浮遊物は認められない
C: 混合物中に沈殿物または浮遊物が確認される
得られた結果は表1に示す通りであった。
【表1】
表中、N/Aは測定不能であることを示す
【0055】
ドライエッチング耐性の評価
スピンコーター(東京エレクトロン株式会社製)にて、感光性樹脂組成物(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)をシリコンウェハーに塗布し、130℃にて、60秒間ベークを行い、膜厚F1(レジスト)を測定した。つぎにドライエッチング装置(株式会社アルバック製)を用い、エッチングを行った後に、ドライエッチング後の膜厚F2(レジスト)を測定した。
【0056】
また、同様の条件により、シリコンウェハーに各微細パターン形成用組成物を塗布し、感光性樹脂組成物の場合と同様に、ドライエッチングの前後での膜厚F1およびF2を測定した。
【0057】
これらの測定値を用い、以下の式からそれぞれのドライエッチング耐性を算出した。
(エッチング耐性)=(F1−F2)/(F1(レジスト1)−F2(レジスト1))
【0058】
得られた結果は表2に示す通りであった。
【表2】