(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記確率分布蓄積手段の確率分布は、移動対象物毎に、移動速度の平均値ν及び標準偏差σによって予め規定された確率分布であることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、通信事業者設備としては、その携帯端末が配下となる基地局の位置情報の履歴を収集することができる。そこで、本願の発明者らは、基地局位置情報のみから、ユーザが搭乗する移動対象物を推定することが好ましい、と考えた。この場合、携帯端末は、GPS機能を起動させる必要もないし、測位情報や加速度データをサーバへ送信する必要もない。しかしながら、このような基地局位置情報は、空間的粒度が粗くかつ時間間隔が一定でないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明では、携帯端末の測位機能を起動させることなく、通信事業者設備によって取得可能な、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定でない基地局位置情報を用いて、ユーザが搭乗する移動対象物を推定することができる通信設備装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、広域無線通信網に接続されており、携帯端末を所持したユーザが搭乗する移動対象物を推定する装置であって、
携帯端末毎に、通信された日時刻及びその基地局位置情報を対応付けた複数の通信履歴を蓄積した通信履歴蓄積手段と、
移動対象物毎に、距離lの移動に要する時間tの確率分布を蓄積した確率分布蓄積手段と、
基地局毎に又は全ての基地局について、当該基地局を中心とした所定半径距離に基づく領域をk(k>2)等分に予め分割して設定する領域分割手段と、
移動対象物毎に、確率分布蓄積手段の確率分布を用いて、先の基地局の各分割領域から後の基地局の各分割領域に対する全ての組み合わせについて移動確率を算出する移動確率算出手段と、
時間経過に応じた携帯端末と接続する基地局の変化に基づいて移動確率算出手段を繰り返すように制御し、移動対象物毎に、時間経過に応じた各基地局の各分割領域の移動確率をノードとする存在確率の木構造を生成する存在確率算出手段と、
存在確率算出手段の木構造について、存在確率が最も高いリーフにおける移動対象物を、当該携帯端末を所持したユーザが利用していると推定する移動対象物推定手段と
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
移動確率算出手段は、
先の分割領域及び後の分割領域に複数の任意の点を散布し、先の任意の点から後の任意の点へ間の距離lについて、先の基地局に接続した時刻と後の基地局に接続した時刻との間の時間tを要する移動確率を、移動対象物毎に、確率分布を用いて算出し、
移動対象物毎に、複数の任意の点の間の移動確率の平均値を、先の分割領域から後の分割領域へ当該移動対象物が利用されたであろう移動確率とすることも好ましい。
【0010】
本発明の装置における他の実施形態によれば、確率分布蓄積手段の確率分布は、移動対象物毎に、移動速度の平均値ν及び標準偏差σによって予め規定された確率分布であることも好ましい。
【0011】
本発明の装置における他の実施形態によれば、確率分布は、以下の式によって算出されることも好ましい。
【数1】
tn:先の時刻
tn+1:後の時刻
Ptn:先の時刻tnにおける任意の第1の点
Ptn+1:後の時刻tn+1における任意の第2の点
l
Ptn,Ptn+1:第1の点Ptnと第2の点Ptn+1との間の距離
g:第1の点Ptnから第2の点Ptn+1への時間tn+1−tnで移動できる確率
【0012】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
通信履歴蓄積手段の複数の通信履歴を、所定時間の時間窓(時間区間)に分割する時間窓分割手段と、
時間窓毎に、複数の基地局位置情報に基づく位置の確率分布が、多峰性である場合には「移動」と判定する移動判定手段と
を更に有し、
移動確率算出手段は、移動と判定された所定数以上連続する時間窓について、移動確率を算出することも好ましい。
【0013】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
移動判定手段は、時間窓毎に、
(S1)任意の点(位置情報)を、最初の中心点とし、
(S2)中心点から、第1の閾値の半径の円に含まれる点を用いて、重心を算出し、
(S3)重心と現在の中心点との差が、第2の閾値以下であるか否かを判定し、
(S4)S3によって偽と判定された場合、その重心を次の中心点として、再びS2へ戻って、変化量が第2の閾値以下に収まるまで繰り返し、
(S5)S3によって真と判定された場合、その重心を代表点位置情報とし、
最後に、当該時間窓について、代表点位置情報の種類数が、複数個の場合には「移動」と判定することも好ましい。
【0014】
本発明の装置における他の実施形態によれば、
移動判定手段は、最後に、当該時間窓について、全ての代表点が第1の閾値又は第2の閾値の半径の円周領域内に収まる場合、収束した代表点の種類数が1個であるとみなすことも好ましい。
【0015】
本発明によれば、前述した装置を、広域無線通信網に接続した通信設備装置であって、通信履歴蓄積手段に通信履歴を蓄積するために、
基地局識別子及び基地局位置情報を対応付けて記憶する基地局位置情報管理手段と、
携帯端末を配下に接続させる基地局から、携帯端末毎における通信された日時刻及びその基地局識別子の通信履歴を収集する通信履歴収集手段と、
基地局位置情報管理手段を用いて、通信履歴毎に、基地局識別子に対応する基地局位置情報を更に対応付ける位置情報履歴生成手段と
を更に有することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、広域無線通信網に接続されており、携帯端末を所持したユーザが搭乗する移動対象物を推定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
携帯端末毎に、通信された日時刻及びその基地局位置情報を対応付けた複数の通信履歴を蓄積した通信履歴蓄積手段と、
移動対象物毎に、距離lの移動に要する時間tの確率分布を蓄積した確率分布蓄積手段と、
基地局毎に又は全ての基地局について、当該基地局を中心とした所定半径距離に基づく領域をk(k>2)等分に予め分割して設定する領域分割手段と、
移動対象物毎に、確率分布蓄積手段の確率分布を用いて、先の基地局の各分割領域から後の基地局の各分割領域に対する全ての組み合わせについて移動確率を算出する移動確率算出手段と、
時間経過に応じた携帯端末と接続する基地局の変化に基づいて移動確率算出手段を繰り返すように制御し、移動対象物毎に、時間経過に応じた各基地局の各分割領域の移動確率をノードとする存在確率の木構造を生成する存在確率算出手段と、
存在確率算出手段の木構造について、存在確率が最も高いリーフにおける移動対象物を、当該携帯端末を所持したユーザが利用していると推定する移動対象物推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、広域無線通信網に接続された通信設備装置について、携帯端末を所持したユーザが搭乗する移動対象物を推定する方法であって、
携帯端末毎に、通信された日時刻及びその基地局位置情報を対応付けた複数の通信履歴を蓄積した通信履歴蓄積部と、
移動対象物毎に、距離lの移動に要する時間tの確率分布を蓄積した確率分布蓄積部と、
基地局毎に又は全ての基地局について、当該基地局を中心とした所定半径距離に基づく領域をk(k>2)等分に予め分割して設定する領域分割部と
を有し、
通信履歴蓄積部に蓄積された通信履歴について、移動対象物毎に、確率分布蓄積
部の確率分布を用いて、先の基地局の各分割領域から後の基地局の各分割領域に対する全ての組み合わせについて移動確率を算出する第1のステップと、
時間経過に応じた携帯端末と接続する基地局の変化に基づいて
第1のステップを繰り返すように制御し、移動対象物毎に、時間経過に応じた各基地局の各分割領域の移動確率をノードとする存在確率の木構造を生成する第2のステップと、
第2のステップの木構造について、存在確率が最も高いリーフにおける移動対象物を、当該携帯端末を所持したユーザが利用していると推定する第3のステップと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の通信設備装置、プログラム及び方法によれば、携帯端末の測位機能を起動させることなく、通信事業者設備によって取得可能な、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定でない基地局位置情報を用いて、ユーザが搭乗する移動対象物を推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1は、移動対象物の移動を表す空間的な外観図である。
【0022】
ユーザに所持された携帯端末(例えば携帯電話機やスマートフォン)は、いずれの位置にあっても、常に、基地局の配下にあってその基地局と通信し続けている。
図1によれば、ユーザは、移動対象物に搭乗しており、携帯端末の移動は、その移動対象物の移動と同じものとなる。
【0023】
多数の基地局を統合する通信事業者設備では、携帯端末毎に、空間的粒度が粗く、且つ、時間間隔が一定でない基地局位置情報を常に収集することができる。「空間的粒度が粗く」とは、位置情報同士の地理的な距離が比較的長いことを意味する。また、「時間間隔が一定でない」とは、位置情報の取得時間間隔が比較的ばらついていることを意味する。
【0024】
広域無線通信網(携帯電話網)に接続された基地局3は、その配下に位置する携帯端末2と通信することによって、その日時刻を通信履歴として取得する。通信履歴は、携帯端末に対するユーザ操作を要するメールの送受信やWebページの閲覧の時に限られない。携帯端末にインストールされたアプリケーションが自動的に実行するデータの送受信の時にも、基地局3によって携帯端末2からの通信履歴として取得される。
【0025】
図1によれば、移動対象物として、「電車」「自転車」「自動車」が表されている。移動対象物毎に、基地局の通信履歴が、時間経過に応じて以下のように推移している。
「電車」 :基地局3A->基地局3B->基地局3C
「自転車」 :基地局3B->基地局3E
「自動車」:基地局3A->基地局3B->基地局3D
【0026】
図2は、本発明における移動対象物を推定する装置の機能構成図である。
【0027】
本発明における装置1は、携帯端末を所持したユーザが搭乗する移動対象物を推定するものであって、通信履歴を予め蓄積したものである。また、装置1は、通信履歴を予め蓄積することなく、広域無線通信網(携帯電話網)に設置することによって基地局3から通信履歴を収集する通信設備装置であってもよい。
【0028】
図2によれば、移動対象物推定用の装置1は、本発明の特徴機能として、通信履歴蓄積部120と、確率分布蓄積部121と、領域分割部122と、移動確率算出部123と、存在確率算出部124と、移動対象物推定部125と、アプリケーション処理部13とを有する。アプリケーション処理部13は、本発明によって推定された各ユーザが搭乗する移動対象物に基づいて、様々なサービスを実行する。通信インタフェース部を除くこれら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、
図2によれは、各機能構成部を用いた処理の流れは、移動対象物を推定する方法としても理解できる。
【0029】
また、装置1は、広域無線通信網(携帯電話網)に設置された通信設備装置である場合、通信履歴蓄積部121へ通信履歴を蓄積するために、オプション機能として、広域通信網に接続する通信インタフェース部10と、基地局位置情報管理部111と、通信履歴収集部112と、位置情報履歴生成部113とを更に有する。また、通信履歴蓄積部120から出力された通信履歴に対して、時間窓分割部114と、移動判定部115とを更に有することも好ましい。以下では、装置1は、通信設備装置であるものとして説明する。
【0030】
[基地局位置情報管理部111]
基地局位置情報管理部111は、基地局識別子と基地局位置情報とを対応付けて記憶する。
【0031】
図3は、基地局位置情報の表である。基地局識別子毎に、緯度・経度の基地局位置情報が対応付けられている。
図3によれば、基地局1は、緯度35.825及び経度139.510の位置に設置されていることが理解できる。また、基地局3は、緯度35.825及び経度139.520の位置に設置されていることが理解できる。尚、このような基地局位置情報は、基地局位置情報管理部111内に予め蓄積したものであってもよいし、通信インタフェース部10を介して各基地局3から取得するものであってもよい。
【0032】
[通信履歴収集部112]
通信履歴収集部112は、携帯端末2を配下に接続させる基地局3から、携帯端末2毎における日時刻及び基地局識別子の通信履歴を収集する。
【0033】
図4は、通信履歴の表である。通信履歴は、基地局3が携帯端末2からの通信を受け付けた記録である。通信履歴は、以下のように、携帯端末2の「端末識別子」(アドレス、電話番号、識別番号等)毎に、「日時刻」及び「基地局識別子」が対応付けられている。
通信履歴(端末識別子、日時刻、基地局識別子)
図4における最初のログによれば、携帯端末0001は、2010年6月15日17:54:50に、基地局3と通信したことが記録されている。また、携帯端末0001は、2010年6月15日17:57:00には、基地局1と通信したことが記録されている。
【0034】
[位置情報履歴生成部113]
位置情報履歴生成部113は、基地局位置情報管理部111を用いて、通信履歴毎に、基地局識別子に対応する基地局位置情報を更に対応付ける。その通信履歴は、通信履歴蓄積部120へ出力される。
【0035】
図5は、通信履歴に基地局位置情報を対応付けた表である。
図5の表は、
図4の表の基地局識別子の部分に、
図3の基地局の緯度・経度が対応付けられたものである。
図5における最初のログによれば、携帯端末0001は、2010年6月15日17:54:50に、緯度35.825及び経度139.520の基地局と通信したことが理解できる。また、携帯端末0001は、2010年6月15日17:57:00に、緯度35.825及び経度139.510の基地局と通信したことが理解できる。
【0036】
[通信履歴蓄積部120]
通信履歴蓄積部120は、位置情報履歴生成部113から出力された通信履歴を蓄積する。
【0037】
[時間窓分割部114]
時間窓分割部114は、通信履歴蓄積部120から出力された複数の通信履歴を、所定の時間窓(時間区間)に分割する。時間窓は、時間幅T及びシフト幅Sによって決定される。シフト幅Sとは、開始時刻をSだけ遅らせたものである。即ち、T>Sの場合、時間窓は、T−Sだけ重畳することとなる。
【0038】
時間幅Tは、「どの時間幅で移動と判定するか」を決めるパラメータである。時間窓内に所定数以上の位置情報がない場合には滞在/移動の判定が難しい。そのために、時間幅Tは、全体の通信履歴数から判断して、時間窓内にできる限り所定数以上の位置情報が入るように決める必要がある。
【0039】
また、シフト幅Sは、その幅を短くすると、滞在時間区間の時間解像度が増す。一方で、その幅を長くすると、時間窓の数が多くなるため、計算量が増大する。従って、シフト幅Sは、アプリケーションが求める時間解像度及び処理時間に応じて決める必要がある。
【0040】
図6は、各時間窓の表である。
図6によれば、T=20分及びS=10分とした場合における、各時間窓の開始時刻及び終了時刻を表す。
図6によれば、時間窓1は、17:50:00〜18:09:59であり、T=00:20:00となっている。また、時間窓2は、18:00:00〜18:19:59であり、時間窓1に対してS=00:10:00となっている。
【0041】
図7は、
図5の表を、
図6の時間窓で分割した表である。
図7によれば、時間窓1には、5個の通信履歴が記録されており、時間窓3には、8個の通信履歴が記録されている。
【0042】
[移動判定部115]
移動判定部115は、時間窓毎に、複数の基地局位置情報に基づく位置の確率分布が、多峰性である場合には「移動」と判定し、そうでない場合には「滞在」と判定する。「多峰性」とは、位置の確率分布が複数の山の形状をしていることを意味する。即ち、1つの時間窓(例えば20分)について、多峰性であるということは、その位置について「移動」と判定することができる。逆に、位置の確率分布が1つの山の形状をしている場合、単峰性を意味する。1つの時間窓について、単峰性であるということは、その位置について「滞在」中と判定することができる。
【0043】
尚、移動判定部115は、後述する時間クラスタリング部128のために、所定数以上の通信履歴が記録されていない時間窓については、「未判定」とすることも好ましい。例えば所定数2個以上の通信履歴が記録されていない時間窓については、「未判定」とする。
【0044】
図8は、多峰性か否かを判定するためのフローチャートである。
【0045】
図8によれば、移動判定部115は、位置情報の確率分布が多峰性か否かを判定するため、代表点計算処理を実行する。その結果、代表点の種類数が複数個であれば多峰性であって「移動」中と判定され、代表点の種類数が1個であれば単峰性であって「滞在」中と判定される。
【0046】
代表点計算処理は、各時間窓に含まれる複数の位置情報について、以下のステップによって実行される。
(S1)任意の点(位置情報)を、最初の中心点とする。
(S2)中心点から、第1の閾値(例えば2km)の半径の円に含まれる点(位置情報)を用いて、重心を算出する。
(S3)次に、重心と現在の中心点との差(変化量)が、第2の閾値(例えば100m)以下であるか否かを判定する。
(S4)S3によって偽と判定された場合、その重心を次の中心点とする。そして、再びS2へ戻り、変化量が第2の閾値以下に収まるまで繰り返す。
(S5)S3によって真と判定された場合、その重心(収束した点)を代表点とする。
そして、最後に、各時間窓について、収束した代表点の種類数が、1個の場合には「滞在」と判定し、複数個の場合には「移動」と判定する。尚、収束した代表点が全て、第2の閾値の半径の円周領域内に収まる場合、収束した代表点の種類数が1個であるとみなしてもよい。尚、ここで、当該時間窓について、全ての代表点が第1の閾値又は第2の閾値の半径の円周領域内に収まる場合、収束した代表点の種類数が1個であるとみなすことも好ましい。
【0047】
以下では、
図7の時間窓1及び時間窓3について、具体的に滞在/移動を、代表点抽出処理を用いて判定する。
【0048】
(時間窓1における移動判定)
(1)時間窓1の点(35.825、139.52)に関する1回目の重心を計算する。時間窓1の点(35.825、139.52)と時間窓1に含まれるその他の点の距離はすべて2km以内であるので、その他の点すべての平均をとると(35.824、139.514)となる。
(2)時間窓1の点(35.825、139.52)に関する2回目の重心を計算する。2回目の重心計算では、中心点を(35.824、139.514)とする。中心点と時間窓1に含まれるその他の点の距離はすべて2km以内であるので、その他の点すべての平均をとると(35.824、139.514)となる。
(3)1回目と2回目の重心計算の結果は同じであり変化量は100m以下であるので、時間窓1の点(35.825、139.52)の代表点は(35.824、139.514)となる。
(4)時間窓1の点(35.825、139.51)に関する1回目の重心を計算する。時間窓1の点(35.825、139.510)と時間窓1に含まれるその他の点の距離はすべて2km以内であるので、その他の点すべての平均をとると(35.824、139.514)となる。
(5)時間窓1の点(35.825、139.51)に関する2回目の重心を計算する。2回目の重心計算では、中心点を(35.824、139.514)とする。中心点と時間窓1に含まれるその他の点の距離はすべて2km以内であるので、その他の点すべての平均をとると(35.824、139.514)となる。
(6)1回目と2回目の重心計算の結果は同じであり、変化量は100m以下であるので、時間窓1の点(35.825、139.51)の代表点は(35.824、139.514)となる。
(7)時間窓1の点(35.820、139.51)に関する1回目の重心を計算する。時間窓1の点(35.820、139.510)と時間窓1に含まれるその他の点の距離はすべて2km以内であるので、その他の点すべての平均をとると(35.824、139.514)となる。
(8)時間窓1の点(35.820、139.51)に関する2回目の重心を計算する。2回目の重心計算では、中心点を(35.824、139.514)とする。中心点と時間窓1に含まれるその他の点の距離はすべて2km以内であるので、その他の点すべての平均をとると(35.824、139.514)となる。
(9)1回目と2回目の重心計算の結果は同じであり、変化量は100m以下であるので、時間窓1の点(35.820、139.51)の代表点は(35.824、139.514)となる。
以上より、計算された代表点はいずれの点についても(35.824、139.514)であり、代表点の種類数は1であるので、時間窓1は「滞在」と判定される。
【0049】
(時間窓3における移動判定)
(1)時間窓3の点(35.825、139.51)に関する1回目の重心を計算する。時間窓3の点(35.825、139.510)と時間窓3に含まれるその他の点の距離を計算すると、(35.825、139.51)、(35.820、139.51)、(35.820、139.51)、(35.825、139.52)、(35.820、139.51)は2km以内であるがそれ以外は2kmを超えるので、上述の点の平均をとると(35.822、139.512)となる。
(2)時間窓3の点(35.825、139.51)に関する2回目の重心を計算する。2回目の重心計算では、中心点を(35.822、139.512)とする。中心点と時間窓3に含まれるその他の点の時間窓3に含まれるその他の点の距離を計算すると、(35.825、139.51)、(35.820、139.51)、(35.820、139.51)、(35.825、139.52)、(35.820、139.51)、は2km以内であるがそれ以外は2kmを超えるので、上述の点の平均をとると(35.822、139.512)となる。
(3)1回目と2回目の重心計算の結果は同じであり、変化量は100m以下であるので、時間窓3の点(35.825、139.51)の代表点は(35.822、139.512)となる。
(4)時間窓3の点(35.850、139.53)に関する1回目の重心を計算する。時間窓3の点(35.850、139.530)と時間窓3に含まれるその他の点の距離を計算すると、(35.850、139.53)、(35.850、139.53)は2km以内であるがそれ以外は2kmを超えるので、上述の点の平均をとると(35.850、139.53)となる。
(5)時間窓3の点(35.850、139.53)に関する2回目の重心を計算する。2回目の重心計算では、中心点を(35.850、139.53)とする。中心点と時間窓3に含まれるその他の点の時間窓3に含まれるその他の点の距離を計算すると、(35.850、139.53)、(35.850、139.53)は2km以内であるがそれ以外は2kmを超えるので、上述の点の平均をとると(35.850、139.53)となる。
(6)1回目と2回目の重心計算の結果は同じであり、変化量は100m以下であるので、時間窓3の点(35.850、139.53)の代表点は(35.850、139.53)となる。
(7)時間窓3のその他の点の代表点の計算は省略する。
以上より、計算された代表点は(35.822、139.512)、(35.850、139.53)(以下省略)と2以上であるため、時間窓3は「移動」と判定される。
【0050】
尚、移動判定部115は、時間窓毎に、複数の基地局位置情報に対してカーネル密度推定(Kernel density estimation)を用いて単峰性か否かを判定することも好ましい。カーネル密度推定とは、確率変数の確率密度関数を推定するべく、ある母集団の標本のデータを外挿する方法である。この方法によれば、カーネル関数を用いて、峰となるコブを導出することができる。
【0051】
[確率分布蓄積部121]
確率分布蓄積部121は、移動対象物毎に、距離lの移動に要する時間tの確率分布を蓄積する。確率分布は、移動対象物毎に、移動速度の平均値ν及び標準偏差σによって予め規定された以下の式によって算出される。
【数2】
tn:先の時刻
tn+1:後の時刻
Ptn:先の時刻tnにおける任意の第1の点
Ptn+1:後の時刻tn+1における任意の第2の点
l
Ptn,Ptn+1:第1の点Ptnと第2の点Ptn+1との間の距離
g:第1の点Ptnから第2の点Ptn+1への時間tn+1−tnで移動できる確率
【0052】
[領域分割部122]
領域分割部122は、基地局毎に又は全ての基地局について、当該基地局を中心とした所定半径距離rに基づく領域(例えば円領域)を、k(k>2)等分に予め分割して設定する。
【0053】
図9は、分割領域間を移動した距離を表す説明図である。
【0054】
図9によれば、基地局を中心とした所定半径距離rに基づく円領域が、2(k=2)等分に分割されている。ここで、時刻tnに第1の点Ptn(領域3A1)に位置する移動対象物は、時刻tn+1に第2の点Ptn+1(領域3B1)へ移動している。また、その距離は、l
Ptn,Ptn+1で表されている。
【0055】
図10は、k=3,4の分割領域を表す説明図である。
【0056】
図10(a)は、基地局を中心とした所定半径距離rに基づく円領域が、3(k=3)等分に分割されている。また、
図10(b)は、基地局を中心とした所定半径距離rに基づく円領域が、4(k=4)等分に分割されている。
【0057】
尚、等分kに基づく分割領域の角度θを、適応的に変化させるものであってもよい。
図10によれば、第1の点Ptnと第2の点Ptn+1とを結ぶ直線を基準線として、複数の領域に分割されている。
【0058】
また、所定距離半径rを、適応的に変化させるものであってもよい。例えば、時刻tnに半径rである場合、時刻tn+1には、半径r×α(α>1)とする。例えばΔtn=tn+1−tnとした場合、αはΔtnに比例して大きくなる。
【0059】
[移動確率算出部123]
移動確率算出部123は、移動対象物毎に、確率分布蓄積部121の確率分布を用いて、先の基地局の各分割領域から後の基地局の各分割領域に対する全ての組み合わせについて移動確率を算出する。例えば
図9の場合、移動対象物毎に、時刻tnにおける領域3A1の第1の点Ptnから、時刻tn+1における領域3B2の第2の点Ptn+1へ移動する確率を算出する。これは、移動対象物毎に、移動速度の確率分布が異なることを利用したものである。
【0060】
図11は、分割領域間の移動確率を算出するための任意の点の散布を表す説明図である。
【0061】
図11によれば、移動確率算出部123は、先の分割領域及び後の分割領域に複数の任意の点を散布する。そして、先の任意の点から後の任意の点へ間の距離lについて、先の基地局に接続した時刻と後の基地局に接続した時刻との間の時間tを要する移動確率を、移動対象物毎に、確率分布を用いて算出する。
【0062】
図12は、先の分割領域から後の分割領域へ任意の点を結ぶ線分それぞれに、自動車及び電車における移動確率を表す説明図である。
【0063】
図12によれば、領域3A1及び領域3B2にそれぞれ、4個の任意の点が散布され、破線矢印によって4本の線分が表されている。先の時刻tn=9:00:20から後の時刻tn+1=9:05:20までの間の距離は、移動対象物の速度に依存する。ここで、各移動対象物の移動速度は確率分布に従うものとする。移動確率蓄積部121に蓄積された移動速度の確率分布を用いることによって、移動時間及び距離から、その移動確率が算出される。
【0064】
図12(a)によれば、対象物「自動車」の移動速度について、平均値ν=30km/h、及び、標準偏差σ=√350であるとする。そして、その移動確率は、確率分布N(30km,350)に従うとする。線分1について、距離=3kmとすると、移動対象物「自動車」で移動したであろう移動確率は、以下のようになる。
【数3】
≒0.00112 (但しΔt=1/3600)
線分2について、距離=3.2kmとすると、移動対象物「自動車」で移動したであろう移動確率は、上述の式によって、0.00142となる。
線分3について、距離=3.5kmとすると、移動対象物「自動車」で移動したであろう移動確率は、上述の式によって、0.00186となる。
線分4について、距離=3.2kmとすると、移動対象物「自動車」で移動したであろう移動確率は、上述の式によって、0.00142となる。
【0065】
図12(b)によれば、対象物「電車」の移動速度について、平均値ν=40km/h、及び、標準偏差σ=2であるとする。そして、その移動確率は、確率分布N(40km,400)に従うとする。線分1について、距離=3kmとすると、移動対象物「電車」で移動したであろう移動確率は、以下のようになる。
【数4】
≒0.00243 (但しΔt=1/3600)
線分2について、距離=3.2kmとすると、移動対象物「電車」で移動したであろう移動確率は、上述の式によって、0.00247となる。
線分3について、距離=3.5kmとすると、移動対象物「電車」で移動したであろう移動確率は、上述の式によって、0.00147となる。
線分4について、距離=3.2kmとすると、移動対象物「電車」で移動したであろう移動確率は、上述の式によって、0.00142となる。
【0066】
次に、移動対象物毎に、全ての線分(任意の点の間)の移動確率の平均値を、先の分割領域から後の分割領域へ当該移動対象物が利用されたであろう移動確率とする
図12(a)によれば、移動対象物「自動車」が、領域3A1から領域3B2へ移動する移動確率は、以下の式によって算出される。
(0.00112+0.00142+0.00188+0.00142)/4=0.00146
図12(b)によれば、移動対象物「電車」が、領域3A1から領域3B2へ移動する移動確率は、以下の式によって算出される。
(0.00243+0.00247+0.00147+0.00245)/4=0.00220
【0067】
尚、前述した
図2によれば、移動確率算出部123は、移動判定部115によって移動と判定された所定数以上連続する時間窓について、移動確率を算出することとなる。即ち、移動対象物が「滞在」(停止)である場合には、移動確率は算出されない。
【0068】
[存在確率算出部124]
存在確率算出部124は、時間経過に応じた携帯端末と接続する基地局の変化に基づいて移動確率算出手段を繰り返すように制御する。そして、移動対象物毎に、時間経過に応じた各基地局の各分割領域の移動確率をノードとする存在確率の木構造を生成する。
【0069】
図13は、移動対象物「自動車」について時間経過に応じた存在確率の木構造を表す説明図である。
図14は、移動対象物「電車」について時間経過に応じた存在確率の木構造を表す説明図である。
【0070】
図13及び
図14によれば、携帯端末2が、時刻tn、tn+1、tn+2の時間経過に応じて、基地局3A->3B->3Cと移動した場合を表す。このとき、先の分割領域と後の分割領域との間の全ての組み合わせについて、移動確率が、木構造の枝に履歴として記録されていく。最終的に、時刻tn+2に至るまでの移動確率の乗算値が、木構造のリーフの累積移動確率となる。
【0071】
尚、時間経過に応じて木構造が深くなっていくが、データ保存領域の確保の観点から、累積確率が所定閾値以下となったノードについては、破棄することが好ましい。
【0072】
[移動対象物推定部125]
存在確率算出部124の木構造について、存在確率(累積確率)が最も高いリーフにおける移動対象物を、当該携帯端末を所持したユーザが利用していると推定する。
【0073】
図13及び
図14によれば、存在確率が最も高いリーフは、
図14における領域3A1->3B2->3C2を辿った存在確率0.24のリーフである。これは、移動対象物「電車」である。従って、当該携帯端末を所持するユーザは、時刻tn〜tn+2について、「電車」に搭乗していたであろうと推定することができる。
【0074】
以上、詳細に説明したように、本発明の通信設備装置、プログラム及び方法によれば、携帯端末の測位機能を起動させることなく、通信事業者設備によって取得可能な、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定でない基地局位置情報を用いて、ユーザが搭乗する移動対象物を推定することができる。
【0075】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。