特許第6075747号(P6075747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075747
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 7/00 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   F25D7/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-119113(P2012-119113)
(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2013-245860(P2013-245860A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】明尾 伸基
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−189727(JP,A)
【文献】 特開2005−134085(JP,A)
【文献】 実開昭52−161554(JP,U)
【文献】 米国特許第4295341(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 7/00
F25B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する冷却槽と冷却槽内の空気を吸引する真空発生装置を持ち、冷却槽内を真空化することによって被冷却物の冷却を行う真空冷却装置において、冷却槽と真空発生装置の間に複数の熱交換器を設置しており、冷却槽から吸引した空気は上流側の熱交換器で冷却した後に下流側の熱交換器で冷却を行うように直列に接続したものであって、熱交換器では効率的な熱交換を行うために空気の流路面積を小さくするようにしており、上流側の熱交換器は吸引してきた空気が並列に流れるように熱交換器を連結し、下流側の熱交換器では吸引してきた空気が単列で流れるように熱交換器を連結することで、体積が大きな空気が流れる上流側の熱交換器と、体積の小さな空気が流れる下流側の熱交換器で、効率的に空気の冷却が行われるように、上流側の熱交換器と下流側の熱交換器で空気流路の面積を変更しており、空気流路の断面積は、上流側熱交換器より下流側熱交換器で小さくすることによって空気流の抵抗を増加することなく効率的に空気の冷却を行っていることを特徴とする真空冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空冷却装置において、各熱交換器は横長の外殻を持ち、各熱交換器の中心軸は水平方向に対して傾斜を設けることで一方の端部は他方の端部より低くなるように設置したものであって、熱交換器は複数個の熱交換器を上下方向に積み重ねてるようにして設置しており、各熱交換器の低くした側の下部壁面にドレン抜き用のドレン配管を接続していることを特徴とする真空冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載の真空冷却装置において、熱交換器同士をつなぐ配管は、熱交換器の中心軸に対して直角となるように接続していることを特徴とする真空冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空発生装置にて冷却槽内を減圧し、冷却槽内の被冷却物を気化熱によって冷却する真空冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2005−134085号公報に記載があるように、食品を冷却する装置として真空冷却装置がある。真空冷却装置は、冷却槽内に冷却する食品を収容しておき、水エジェクタや真空ポンプなどからなる真空発生装置によって冷却槽内を真空化し、飽和蒸気温度を低下させることによって食品中の水分を気化させ、食品を冷却するものである。真空冷却の場合、食品内部から急速に冷却することができるため、短時間で冷却を行うことができる。
【0003】
被冷却物内の水分を気化させることで被冷却物の温度を低下させている真空冷却装置では、気化して蒸気となった水分は空気とともに真空発生装置が吸引する。しかし、水は蒸気になると体積が大幅に大きくなるため、蒸気の状態で真空発生装置に吸引させると、真空発生装置での負荷が大きくなる。そこで、真空冷却装置では冷却槽と真空発生装置をつなぐ真空配管部の途中に熱交換器を設け、蒸気を冷却して凝縮させることで体積を縮小している。熱交換器は複数設け、多段的に冷却することで、空気からより多くの熱を奪うことができ、蒸気の凝縮によって空気の体積をより小さくすることができる。排出しなければならない空気の体積が小さくなれば、真空発生装置では冷却槽内の空気をより早く大量に排出することができるため、冷却能力を高めることができる。
【0004】
また、真空発生装置がドライルーツ式真空ポンプであった場合、真空ポンプでは、ケーシング内部で互いに反対方向に回転する2つの3葉ロータが、ケーシング内壁及びロータ間にわずかなすき間を保って回転し、排気動作を行う構造となっている。そのため、真空ポンプ内に多量の蒸気(水分)が流入すると、ギヤ室とロータのある排気室を区切るオイルシールの破損招くことがある。さらに、水分をポンプ内部に残したまま長時間運転を停止すると、ロータとケーシングが固着し、次回運転開始時に起動できない場合もある。
【0005】
そのため、ドライルーツ式真空ポンプの一次側において、吸引している空気に含まれている蒸気をドレン化して分離することが必要であり、真空配管部には容量の大きな熱交換器を設けて水分の除去を行ってた。しかし、大きな熱交換器を設けると、装置の設置面積が大きくなるということが問題になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−134085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、設置面積の増加は最小限に抑えつつ、吸引空気から蒸気を凝縮させることで水分を十分に分離し、真空発生装置に送られる水分量を減少することで真空発生装置での不具合を防止するとともに、冷却能力を向上させることのできる真空冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、被冷却物を収容する冷却槽と冷却槽内の空気を吸引する真空発生装置を持ち、冷却槽内を真空化することによって被冷却物の冷却を行う真空冷却装置において、冷却槽と真空発生装置の間に複数の熱交換器を設置しており、冷却槽から吸引した空気は上流側の熱交換器で冷却した後に下流側の熱交換器で冷却を行うように直列に接続したものであって、熱交換器では効率的な熱交換を行うために空気の流路面積を小さくするようにしており、上流側の熱交換器は吸引してきた空気が並列に流れるように熱交換器を連結し、下流側の熱交換器では吸引してきた空気が単列で流れるように熱交換器を連結することで、体積が大きな空気が流れる上流側の熱交換器と、体積の小さな空気が流れる下流側の熱交換器で、効率的に空気の冷却が行われるように、上流側の熱交換器と下流側の熱交換器で空気流路の面積を変更しており、空気流路の断面積は、上流側熱交換器より下流側熱交換器で小さくすることによって空気流の抵抗を増加することなく効率的に空気の冷却を行っていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記の真空冷却装置において、各熱交換器は横長の外殻を持ち、各熱交換器の中心軸は水平方向に対して傾斜を設けることで一方の端部は他方の端部より低くなるように設置したものであって、熱交換器は複数個の熱交換器を上下方向に積み重ねてるようにして設置しており、各熱交換器の低くした側の下部壁面にドレン抜き用のドレン配管を接続していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記の真空冷却装置において、熱交換器同士をつなぐ配管は、熱交換器の中心軸に対して直角となるように接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明を実施することで、装置の設置面積や製造コストの増加は最小限に抑えながら、真空発生装置に達する水分量を減少することができ、真空発生装置での不具合を防止するとともに、冷却能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を実施している真空冷却装置の構成概要図
図2】本発明を実施している真空発生装置の熱交換器部分の接続構造説明図
図3】本発明を実施している真空発生装置の熱交換器部分のフロー説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施している真空冷却装置の構成概要図、図2は本発明を実施している真空発生装置の熱交換器部分の接続構造説明図、図3は本発明を実施している真空発生装置の熱交換器部分のフロー説明図である。
【0014】
真空冷却装置は、被冷却物を収容する冷却槽2、冷却槽2の空気を吸引する真空発生装置1、冷却槽2と真空発生装置1の間をつなぐ真空配管部9などからなる。冷却槽2は、側面に扉を持った略直方体の容器であり、中に被冷却物を収容して密閉することができるようにしている。真空発生装置1としては、水や蒸気を使用して空気の吸引を行うエジェクタや、ロータの回転によって空気を吸引する真空ポンプが使用される。ここでは装置構成を単純にすることができるドライ式の真空ポンプを使用するものとしている。
【0015】
真空冷却装置は、冷却槽内を減圧することで被冷却物内の水分を蒸発させ、被冷却物の冷却を行うものであるため、吸引した空気には蒸気を含んでいる。そのままでは、大量の蒸気を真空発生装置1へ送ることになるため、途中の真空配管部9で蒸気の除去を行う。
吸引空気からの蒸気の分離は、吸引空気を冷却することによって蒸気を凝縮させて行うため、真空配管部9の途中には、複数の熱交換器5を設けておく。熱交換器5には、チラー4で製造し、冷却水タンク3にためておいた冷却用水を供給するようにしておき、冷却槽2から吸引してきた空気と冷却用水の間で熱交換を行うことで、吸引空気の冷却を行う。
【0016】
熱交換器5は、横長の円筒形容器と容器内に設けた熱交換部からなり、熱交換部の一方の面には吸引空気を流し、他方の面には冷却用水を流すことで熱交換を行う。熱交換器は複数個であって、上下方向に積み重ねるようにして設置しており、熱交換器5は上部から順に、熱交換器A・熱交換器B・熱交換器Cと名付けておく。積み重ねている熱交換器5の下方には、熱交換器5で発生したドレンをためるドレンタンク8を設置し、熱交換器5とドレンタンク8の間はドレン配管7をつないでおき、熱交換器5のドレンはドレン配管7を通してドレンタンク8へ流れ落ちるようにしている。
【0017】
複数設置している各熱交換器は、それぞれの熱交換器間では平行に設置しているが、各熱交換器では長手方向の中心軸が水平に対して少し傾斜するようにして設置する。そのため、各熱交換器の一方の端部は他方の端部よりも位置が高くなる。熱交換器Aの設置高さが高い側の上部壁面には、冷却槽2と熱交換器Aをつなぐ冷却槽配管6を接続し、冷却槽配管6と熱交換器A内はつなげておく。そして、熱交換器Aの設置高さが高い側の下部壁面には、熱交換器Bでの設置位置が高い側の上部壁面と接続した並列用配管10を設置し、熱交換器A内と熱交換器B内は並列用配管10によってつなぐ。
【0018】
また、各熱交換器の設置高さが低い側の端部付近には、熱交換器で発生したドレンをドレンタンク8へ送るドレン配管7を接続している。ドレン配管7は、各熱交換器内をつなぐように設置しており、各熱交換器で発生したドレンはドレン配管7を通して下段の熱交換器内へ流れ落ち、流れ落ちた下段側の熱交換器で発生したドレンと合流した後にさらに下段側の熱交換器へ流れ落ちていき、最終的にはドレンタンク8へ入る。そして熱交換器Cの設置高さが高い側の上部壁面には、真空発生装置1と熱交換器Cをつなぐ真空発生装置配管11を接続しており、真空発生装置1は真空発生装置配管11を通じて熱交換器C内とつながっている。
【0019】
真空発生装置1にて空気の吸引を行うと、真空発生装置1は真空配管部9を通して冷却槽2内の空気を吸引することになる。冷却槽2内の空気は、冷却槽配管6を通して熱交換器に入り、熱交換器5を通った後に真空発生装置配管11を通して真空発生装置1へと流れる。熱交換器5の部分では、熱交換器Aと熱交換器B間、及び熱交換器Bと熱交換器C間をドレン配管7でつないでいるため、冷却槽2から熱交換器5に入った空気は、熱交換器の下端部に接続しているドレン配管7を通して下流側の熱交換器へ流れる。そして最下段の熱交換器Cに達した空気は、熱交換器Cの上端部に接続している真空発生装置配管11を通して真空発生装置1へと流れる。
【0020】
また、熱交換器Aと熱交換器Bは、並列用配管10でつないでいるため、熱交換器A内に入った空気は、熱交換器A内を横断して熱交換器Bと接続しているドレン配管7へ向けて流れるとともに、熱交換器Aを縦断して熱交換器Bと接続している並列用配管10へ向けても流れる。そして、並列用配管10を通して熱交換器Bへ入った空気は、熱交換器Bと熱交換器Cをつなぐドレン配管7へ向けて流れるため、熱交換器B内を横断して流れる。そのため、冷却槽配管6を通ってきた冷却槽2からの空気は、熱交換器Aと熱交換器Bの両方を並列に流れることになる。
【0021】
熱交換器Aの終端に達した空気は、熱交換器Aと熱交換器Bをつなぐドレン管7を通して熱交換器B内へ入る。熱交換器Bの出口は、熱交換器Bと熱交換器Cをつなぐドレン配管7のみであるため、熱交換器Aと熱交換器Bを並列に流れた空気は、熱交換器Bで合流して熱交換器Cへ流れることになる。熱交換器Cでは、空気は真空発生装置配管11を通して真空発生装置1へと流れるため、熱交換器Bから熱交換器Cへ入った空気は、真空発生装置配管11を目指して熱交換器Cを横断する。
【0022】
熱交換器5の部分での空気流は、熱交換器Aと熱交換器Bでは並列に流し、熱交換器Cでは合流させて流すようにしているのは、以下の理由からである。熱交換器5では、効率的な熱交換を行うために空気の流路面積を小さくしている。そして、冷却槽2から吸引してきたばかりであって、冷却前の空気が流れる上流側の熱交換器では、大量の蒸気を含んでいるために体積が大きくなっている。そのため、上流側の熱交換器では空気流の抵抗が大きくなる。しかし、上流側の熱交換器で冷却を行うことである程度の蒸気を凝縮させた後の空気が流れる下流側の熱交換器では、蒸気量が少なくなっているために体積が小さくなっている。そのため、下流側の熱交換器では熱交換効率が低くなる。上流側は二つの熱交換器で並列に流し、下流側では一つ熱交換器へ合流させて流すことで、空気流の抵抗を増加することなく効率的に空気の冷却を行うことができる。
【0023】
吸引空気の冷却を行うと、空気中の蒸気が凝縮してドレンとなり、ドレンは熱交換器の底部に落下する。熱交換器5は傾斜させて設置しているため、熱交換器の底部に達したドレンは熱交換器の低い側へ向けて流れ、熱交換器の下端部に設けているドレン配管7へ向かう。熱交換器Aで発生したドレンは、熱交換器Aと熱交換器Bをつなぐドレン配管7を通って熱交換器B内に入り、熱交換器Bで発生したドレンと合流する。熱交換器Bで合流したドレンも、熱交換器Bと熱交換器Cをつなぐドレン配管7を通って熱交換器Cに入り、熱交換器Cで発生したドレンと合流する。熱交換器Cで合流したドレンは、熱交換器Cとドレンタンク8をつないでいるドレン配管7を通ってドレンタンク8にためられる。
【0024】
熱交換器5で蒸気を凝縮させて分離することで、真空発生装置1内に入る水分量を減少することができる。また、蒸気が凝縮すると体積は大幅に縮小するため、空気の量を少なくすることができる。真空発生装置1で吸引する空気の量が少なくなることで、冷却槽2内の減圧速度を高めることと、より高い真空度まで減圧することができ、真空冷却に要する時間の短縮と、最終の冷却温度をより低くすることができる。
【0025】
各熱交換器では、中心軸を水平方向に対して少し傾斜させて設置するのは、ドレンの排出を行いやすくするためであるが、ドレン配管7及び並列用配管10については中心軸が垂直であっても、垂直方向に対して少し傾斜するものであっても、ドレン排出等においては大きな違いはない。しかし、製造時において、熱交換器5とドレン配管7及び並列用配管10を溶接結合する場合、熱交換器5とドレン配管7等は、直角に交わるようにする方が製造は容易になるという利点がある。ドレン配管7等が床面に対して垂直になるように熱交換器5と結合しようとすると、個々の熱交換器5が傾斜しているために熱交換器5との接合面は傾斜を設けなければならず、手間が掛かることになる。ドレン配管7等は床面に対して垂直である必要はないため、ドレン配管7等は床面に対しは垂直から少し傾斜することになるが、熱交換器5とドレン配管7等は直角に交わるようすると、製造が容易になるために製造コストを削減することができる。
【0026】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 真空発生装置
2 冷却槽
3 冷却水タンク
4 チラー
5 熱交換器
6 冷却槽配管
7 ドレン配管
8 ドレンタンク
9 真空配管部
10 並列用配管
11 真空発生装置配管
図1
図2
図3