特許第6075768号(P6075768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075768
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】プレス加工方法及びこれに用いる治具
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/00 20060101AFI20170130BHJP
   B21D 43/04 20060101ALI20170130BHJP
   B21D 39/02 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
   B21D43/00 U
   B21D43/04 C
   !B21D39/02 E
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-68209(P2013-68209)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-188562(P2014-188562A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 信浩
(72)【発明者】
【氏名】花房 謙太郎
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/135620(WO,A1)
【文献】 特開2001−286953(JP,A)
【文献】 特開平06−285560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/00
B21D 43/04
B21D 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに治具を装着すると共に、前記治具に設けた位置決めピンを前記ワークの穴に嵌合する治具装着工程と、前記治具に搬送手段を装着して、前記搬送手段により前記治具及び前記ワークをプレス加工装置に搬入した後、前記治具から前記搬送手段を取り外す搬入工程と、前記プレス加工装置の上型を降下させ、前記上型に設けられたガイドピンを前記治具に設けたガイド受けに嵌合することにより、前記治具及び前記ワークを前記上型に対して水平方向で位置決めしながら、前記ワークにプレス加工を施すプレス工程と、前記ワークに前記治具を装着したままこれらを前記プレス加工装置から搬出する搬出工程とを有するプレス加工方法。
【請求項2】
前記治具装着工程において、前記搬送手段に設けたエア供給路と前記治具に設けたエア流路とを連通し、前記エア供給路から前記エア流路にエアを供給することにより、前記治具を前記ワークに対して一体搬送可能に装着する請求項1記載のプレス加工方法。
【請求項3】
プレス加工装置に搬入される前のワークに装着され、前記ワークと共にプレス加工装置に搬入される治具であって、
搬送手段に装着される第1装着部と、前記ワークに装着される第2装着部と、前記プレス加工装置の上型に設けられたガイドピンが嵌合するガイド受け部と、前記ワークの穴に挿入される位置決めピンとを有する治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工方法及びこれに用いる治具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プレス加工は、ワークをプレス加工装置に搬入する搬入工程、プレス加工装置でワークをプレス加工するプレス工程、プレス加工されたワークをプレス加工装置から搬出する搬出工程を経て行われる。
【0003】
上記の搬入工程では、プレス加工装置内の所定位置にワークを正確に配置することは難しく、ワークのセット位置に若干のばらつきが生じてしまう。例えば、特許文献1に示されているプレス加工装置(ヘミング加工装置)では、上型に、位置決めピン(ロケートピン)を有するプレッシャーパッド(保持プレート)を設けている。下型(ワーク受け)の上に下側パネル及び上側パネルを設置した後、上方から上型を下降させることにより、上側パネルに設けられた穴(ロケート穴)に位置決めピンが挿入され、上側パネルを水平方向で位置決めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−285560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のヘミング加工装置のように、上型にプレッシャーパッドが設けられていると、その分上型が大型化してしまう。また、プレッシャーパッドを設けることで上型が重くなるため、上型の昇降速度が遅くなり、タクトタイムが長くなってしまう。さらに、上型にプレッシャーパッドを設けると、ワークを搬入する際にプレッシャーパッドが邪魔になるため、上型を大きく上昇させる必要が生じる。このため、上型の昇降ストロークが長くなって、タクトタイムがさらに長くなってしまう。
【0006】
以上のような問題は、ヘミング加工だけでなく、プレッシャーパッドを有する他のプレス加工(例えば、絞り加工や曲げ加工等)でも同様に生じる。
【0007】
本発明が解決すべき技術的課題は、上型の簡素化及び軽量化を図り、プレス加工のタクトタイムを短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ところで、ワークを保持してプレス加工装置への搬入出を行う場合、ロボットアーム等の搬送手段にワークを保持するための保持部を設ける必要がある。通常、この保持部は、ワークの形状に応じてワークの種類ごとに用意される。本発明は、この点に着目してなされたものであり、搬送手段に設けられる保持部を着脱可能とするとともに、この保持部にプレッシャーパッドの機能(位置決めピン)を付与することで、この保持部をプレッシャーパッド代替治具として使用したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、ワークに治具を装着し、前記治具に設けた位置決めピンを前記ワークの穴に挿入する治具装着工程と、前記治具に搬送手段を装着して、前記搬送手段により前記治具及び前記ワークをプレス加工装置に搬入した後、前記治具から前記搬送手段を取り外す搬入工程と、前記プレス加工装置の上型を降下させ、前記上型に設けられたガイドピンを前記治具に設けたガイド受けに嵌合することにより、前記治具及び前記ワークを所定位置に保持しながら、前記ワークにプレス加工を施すプレス工程と、前記ワークに前記治具を装着したままこれらを前記プレス加工装置から搬出する搬出工程とを有するプレス加工方法を提供する。
【0010】
このように、本発明のプレス加工方法では、位置決めピンを有する治具(プレッシャーパッド代替治具)をワークに装着した状態のまま、搬入工程、プレス工程、及び搬出工程を行う。そして、プレス工程において上型を降下させたときに、上型に設けたガイドピンをワークに装着した治具のガイド受け部に嵌合させることで、ワークを水平方向で位置決めする。これにより、従来のプレス加工装置の上型に設けられていたプレッシャーパッドを省略することができ、上型の簡素化及び軽量化が図られる。
【0011】
搬送手段には、駆動源となるエアを供給するエア供給路が設けられることが多い。この場合、搬送手段のエア供給路を利用して、治具をワークに対して一体搬送可能に装着すれば、別途の駆動源を設ける必要がなくなる。具体的には、上記の治具装着工程において、前記搬送手段に設けたエア供給路と前記治具に設けたエア流路とを連通し、前記エア供給路から前記エア流路にエアを供給することにより、前記治具を前記ワークに対して一体搬送可能に装着することができる。
【0012】
上記のプレス加工方法は、プレス加工装置に搬入される前のワークに装着され、前記ワークと共にプレス加工装置に搬入される治具であって、搬送手段に装着される第1装着部と、前記ワークに装着される第2装着部と、前記プレス加工装置の上型に設けられたガイドピンが嵌合するガイド受け部と、前記ワークの穴に挿入される位置決めピンとを有する治具を用いて行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明のプレス加工方法によれば、従来のプレス加工装置の上型に設けられていたプレッシャーパッドを省略することができるため、上型の簡素化及び軽量化が図られ、タクトタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ワークの断面図である。
図2】治具の平面図である。
図3】上記治具をワークに装着した状態を示す断面図である。
図4】上記治具の位置決めピンの拡大断面図である。
図5】上記治具をワークに装着した状態を示す平面図である。
図6】ヘミング加工装置の側面図であり、図8のA方向から見た図である。
図7】ヘミング加工装置の側面図であり、図8のB方向から見た図である。
図8】ヘミング加工装置の下型の上面図である。
図9】ヘミング加工装置の上型の下面図である。
図10】ヘミング加工装置のガイドピンを(a)伸ばした状態及び(b)縮めた状態を示す断面図である。
図11】下型にセットしたワークを、ガイドピンで位置決めする様子を示す断面図である。
図12】ヘミング加工装置の断面図である(プリヘム加工直前)。
図13】ヘミング加工装置の断面図である(プリヘム加工時)。
図14】ヘミング加工装置の断面図である(プリヘム加工後)。
図15】ヘミング加工装置の断面図である(本ヘム加工直前)。
図16】ヘミング加工装置のロック機構の断面図である。
図17】ヘミング加工装置の断面図である(本ヘム加工直前)。
図18】ヘミング加工装置の断面図である(本ヘム加工時)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
本実施形態では、ワークが自動車車体のドアのインナパネル1及びアウタパネル2であり(図1参照)、アウタパネル2のフランジ部2aにヘミング加工を施すことによりインナパネル1と一体化するヘミング加工方法を示す。このヘミング加工方法は、治具100と、ヘミング加工装置200とを用いて行われる。
【0017】
治具100は、図2及び図3に示すように、フレーム101と、アーム装着部102と、ガイド受け部103と、インナ押さえ部104と、アウタ押さえ部105とを備える。
【0018】
アーム装着部102は、搬送手段としてのロボットアーム(図示省略)が装着される第1装着部として機能する。アーム装着部102にはエア流路102aが開口している。ロボットアームをアーム装着部102に装着することで、ロボットアームに設けられたエア供給路とアーム装着部102のエア流路102aとが連通する。
【0019】
ガイド受け部103は、同一直線上に無い少なくとも3箇所に設けられる。各ガイド受け部103は、上面に開口したガイド穴103aを有する。図示例のガイド穴103aは、下方に向けて縮径したテーパ面状を成している。このガイド穴103aに、後述するヘミング加工装置200のガイドピン210を挿入することで、治具100が上型200bに対して水平方向で位置決めされる。
【0020】
インナ押さえ部104は、インナパネル1に装着される第2装着部として機能する。インナ押さえ部104は、図3に示すように、インナパネル1の上面に当接する第1押圧面104aと、インナパネル1に設けられた穴1cに挿入される位置決めピン104bとを備える。第1押圧面104aは、水平方向の平坦面である。位置決めピン104bは、穴1cよりも僅かに小さい外径を有し、下端が先細り形状とされる。図示例では、位置決めピン104bが第1押圧面104aから下方に突出している。
【0021】
インナ押さえ部104は、治具100を持ち上げたときにインナパネル1と上下方向で係合する係止部を有する。本実施形態では、図4に示すように、係止部として、位置決めピン104bの外周面から外径向きに突出可能な複数の係止ピン104cが設けられる。各係止ピン104cの後方端部(位置決めピン104bの内径側の端部)には、フランジ部104dが設けられる。係止ピン104cのフランジ部104dの後方の空間にエアを供給することで、係止ピン104cを位置決めピン104bの外周面から突出させることができる(図4の点線参照)。一方、係止ピン104cのフランジ部104dの前方の空間にエアを供給することで、係止ピン104cを位置決めピン104bの内部に退入させることができる(図4の実線参照)。係止ピン104cは、図示しないロック手段により、位置決めピン104bの外周面から突出させた状態でロック可能とされる。
【0022】
アウタ押さえ部105は、アウタパネル2の上面に当接する第2押圧面105aを有する。アウタ押さえ部105の第2押圧面105aは、インナ押さえ部104の第1押圧面104aよりも下方に設けられる(図3参照)。第1押圧面104aと第2押圧面105aとの上下方向距離Hは、予め所定値に設定される。
【0023】
ヘミング加工装置200は、互いに接近離反可能な一対の金型(下型200a及び上型200b)と、一対の金型を駆動するプレス機とを備える。本実施形態のヘミング加工装置200は、図6及び図7に示すように、ベース201、ラム202、及びラム202を昇降駆動する第1駆動手段205を有するプレス機と、ベース201に設けられた下型200a及びラム202に設けられた上型200bとを備える。下型200a及び上型200bは、ワークの形状によって異なる汎用部であり、それぞれベース201及びラム202に対して着脱可能とされる。
【0024】
ベース201は、床面に載置される第1ベース201aと、第1ベース201aの上方に配された第2ベース201bと、第2ベース201bの上方に配された第3ベース208aとを有する。第1ベース201aは、平面視で略矩形状を成し、第1ベース201aの上面の四隅にガイド部材207が立設される。第2ベース201bは、平面視で略矩形状を成した枠体である。第2ベース201bの上面には、平行に延びる複数のレール201dが配される。第3ベース208aは、略矩形状を成した板材であり、中央に穴を有する。第3ベース208aは、レール201dの上に載置され、図示しない固定手段により第2ベース201bに固定される。
【0025】
下型200aは、可動ベース208bと、下部成形型として機能するワーク受け部203とを備える。可動ベース208bは、第3ベース208aの中央に設けられた穴に配され、ベース201に対して昇降可能とされる。可動ベース208bが第3ベース208aの穴に嵌合することで、一枚のプレート208として一体化される。可動ベース208bは、後述する第2駆動手段により昇降駆動される。可動ベース208bの四隅にはガイド208aが設けられ、第3ベース208aにはガイド受け201eが設けられる。ガイド208aとガイド受け201eとが摺動することにより、可動ベース208bの第3ベース208aに対する昇降がガイドされる。
【0026】
下型200aは、レール201dに沿ってベース201に対してスライド可能とされる。成形型(本実施形態ではワーク受け部203)等を交換する際には、第2ベース201bと第3ベース208aとを固定する固定手段(図示省略)を解除し、下型200a及び第3ベース208aを、レール201d上を図8の上下方向にスライドさせてベース201から取り外す。そして、可動ベース208b上のワーク受け部203等を交換した後、下型200aを、レール201d上を図8の上下方向にスライドさせてベース201上の所定位置に配し、第2ベース201bと第3ベース208aとを図示しない固定手段で固定する。
【0027】
ワーク受け部203は、可動ベース208bの上面に固定される。ワーク受け部203は、ワークを下方から支持するものであり、図示例では、環状部203aと、環状部203aの内側に設けられた複数の補助部203bとからなる。環状部203aは、インナパネル1及びアウタパネル2の周縁部(フランジ部1a,2a)を下方から支持する位置に設けられる。環状部203aは、上型200bに設けられた本ヘム刃204と協働してワークにプレス加工を施す成形型として機能する。環状部203a及び補助部203bの上面は、アウタパネル2の形状に倣って形成される。尚、図示例では、簡略化のため、アウタパネル2やこれを押圧するワーク受け部203の上面及び本ヘム刃204の下面を平坦面で示しているが、実際にはこれらの面は曲面である。
【0028】
第2駆動手段206は、下型200aをベース201に対して昇降駆動するものである。第2駆動手段206は、第1駆動手段205よりも出力が大きいものが使用され、本実施形態では油圧シリンダ206a及びこれを駆動するサーボモータ206bで構成される(図6参照)。第2駆動手段206は、第1ベース201aと可動ベース208bとの間の空間に収容される。油圧シリンダ206aの本体は第1ベース201aに固定される。油圧シリンダ206aのピン206a1の上端は、可動ベース208bの下方に隙間を介して配される。油圧シリンダ206aを駆動してピン206a1を上昇させることで、ピン206a1の上端で可動ベース208bが押し上げられる。第2駆動手段206は例えば複数箇所に設けられ、本実施形態では4箇所に設けられる(図8参照)。
【0029】
ラム202は、ベース201に対して型締め型開き方向でスライド可能とされ、本実施形態では昇降可能とされる。ラム202は、図9に示すように平面視で略矩形状をなし、四隅にガイド部材207が挿通されるガイド穴202aが設けられる。ガイド部材207は、鉛直方向に延びる棒状部材であり、ガイド穴202aと摺動することでラム202の昇降をガイドしている。各ガイド部材207の上端は水平方向に延びる連結部材207aで連結される(図6参照)。尚、ガイド部材207は、必ずしも四隅に設ける必要はなく、例えば対角2箇所のみに設けてもよい。
【0030】
上型200bは、ラム202に固定されるプレート209と、上部成形型として機能する本ヘム刃204とを備える。プレート209は、ラム202の下面中央部に着脱可能に固定される。本ヘム刃204は、本ヘム加工を行うものであり、プレート209の下面に固定される。本ヘム刃204は、アウタパネル2の周縁に沿って環状に設けられ、ワーク受け部203の環状部203aと上下方向で対向している。
【0031】
第1駆動手段205は、ラム202及び上型200bを昇降するものであり、第2駆動手段206よりも駆動速度が速いものが使用される。本実施形態の第1駆動手段205は、チェーン及びこれを駆動するモータとで構成され、具体的には、図7に示すように一対のチェーン205aと、一対のチェーン205aを駆動するモータ205bと、各チェーン205aを収容する一対の収容箱205cとからなる。各収容箱205cから供給された一対のチェーン205aが、各収容箱205cの間で互いに噛み合って一本の鉛直方向の棒状部分205dが形成され、この棒状部分205dの上端にラム202が取り付けられる。モータ205bを図7の矢印方向に回転させることにより、各チェーン205aが収容箱205cから棒状部分205dに供給されて棒状部分205dが上方に延び、これにより上型200bが上昇する。一方、モータ205bを上記と反対方向に回転させることにより、各チェーン205aが棒状部分205dから収容箱205cに戻されて棒状部分が縮みながら降下し、これにより上型200bが降下する。
【0032】
上型200bには、ワークに装着した治具100を位置決めすると共に、治具100を上方から押圧する複数のガイドピン210が設けられる。ガイドピン210は、図10に示すように、プレート209から下方に突出して設けられる。各ガイドピン210は、ワーク受け部203にワークをセットした状態で、ワークに装着された治具100のガイド受け部103のほぼ真上にそれぞれ設けられる。本実施形態のガイドピン210は、ガイド部211と、ガイド部211をラム202に対して上下方向に進退可能に保持する進退機構212と、ガイド部211及び進退機構212の周囲に設けられた伸縮部材213とからなる。
【0033】
ガイド部211は、先端に先細りのテーパ面211aを有する。このテーパ面211aが、治具100のガイド受け部103のガイド穴103aに嵌合することで、治具100が水平方向で位置決めされる(図11参照)。
【0034】
進退機構212は、ワークに対するラム202の昇降を許容しながら、ワークに装着した治具100に下向きの一定の付勢力を付与するものである。進退機構212に所定圧力が加わると、ガイド部211が後退する(すなわちラム202に対して上昇する)と共に、ガイド部211が下向きに一定圧力で付勢される。進退機構212としては、ガイド部211を常に下向きに付勢するものであればよく、例えば各種バネ機構(ガススプリングや金属バネ等)を使用することができ、特にガススプリングは、常に一定圧力で付勢することができるため好ましい。図示例では、進退機構212の本体部212aがプレート209に固定され、本体部212aから下方に突出した進退可能なピン212bの下端に、ガイド部211が固定される。
【0035】
伸縮部材213は、ガイドピン210の外周に設けられ、ガイド部211とプレート209とを連結しながら、ガイドピン210の伸縮を許容するものである。本実施形態の伸縮部材213は、径の異なる複数の円筒部材からなり、ガイド部211の進退に追従して伸縮可能とされる。これにより、ガイドピン210の伸縮を許容しながら、ガイドピン210の剛性、特に水平方向の負荷に対する剛性を高めることができる。
【0036】
ヘミング加工装置200には、プリヘム機構220が設けられる。本実施形態のプリヘム機構220は、図12に示すように、下型200a側(プレート208上)に設けられたプリヘム刃221及びカム機構222と、上型200bに設けられたカムドライバ223とからなる。プリヘム刃221は、図8に示すようにワーク受け部203の周囲に設けられ、水平方向でワークに接近離反する方向にスライド自在とされる。図示例では、略矩形のベース201(第3ベース208a)の各辺に沿ってプリヘム刃221が設けられ、各プリヘム刃221が、ベース201の各辺と直交する方向にスライド自在とされる。
【0037】
カム機構222は、上型200bの降下による押し下げ力を、プリヘム刃221をワーク側へスライドさせる力に変換するものである。本実施形態のカム機構222は、プレート208(図示例では第3ベース208a)に固定された下側カム224と、下側カム224に沿ってスライドする上側カム225とからなる。上側カム225の上面225aには、水平方向の平坦面が設けられる。上側カム225の下面及び下側カム224の上面には、下方に向けて内側(ワーク側)へ傾斜した平行且つ平坦な傾斜面225b,224aが設けられる。上側カム225は、下側カム224の傾斜面224aに沿ってスライド可能とされる。上側カム225のワーク側の側面に、プリヘム刃221が固定される。
【0038】
カム機構222には、プリヘム刃221のワークに近接する側の移動を所定位置で規制するストッパ226が設けられる。図示例では、下側カム224の傾斜面224aの下端に、上側カム225の斜め下方向へのスライドを規制するストッパ226が設けられる。カム機構222には、上側カム225及びプリヘム刃221をワークから離反する側(図12の右側)に付勢する付勢手段227が設けられる。図示例では、付勢手段227がエアシリンダで構成され、上側カム225及びプリヘム刃221がワークから離反する側に常に付勢される。
【0039】
カムドライバ223は、上型200bのプレート209に固定された本体部223aと、本体部223aの下端に設けられた可動部223bとを有する。可動部223bは、カム機構222に当接する位置としない位置との間で移動可能とされる。図示例では、可動部223bが、図示しない駆動部によりピン223cを中心に回転可能とされる。本体部223a及び可動部223bの下面には、水平方向の平坦面が設けられる。
【0040】
ヘミング加工装置200は、ベース201とラム202とを連結してラム202の上昇を規制するロック機構230を有する。ロック機構230は、矩形状のベース201及びラム202の各コーナー付近に設けられる。ロック機構230は、図6及び図7に示すように、ラム202に設けられた上側ロック部材231と、ベース201に設けられた下側ロック部材232と、両ロック部材231,232を上下方向でロックする係止手段233とを有する。本実施形態では、図16に示すように、両ロック部材231,232に水平方向の貫通穴231a,232aが形成される。各貫通穴231a,232aは、それぞれ同径の円筒面状の内周面を有する。図示例では、各ロック機構230において、上側ロック部材231の両側に下側ロック部材232が設けられる。上側ロック部材231の上端には水平方向に突出した突出部231bが設けられ、この突出部231bをラム202に上方から当接させることにより、上側ロック部材231がラム202に吊り下げ状態で取り付けられる。下側ロック部材232は、第3ベース208aの上面に固定される。
【0041】
係止手段233は、ロック部材231,232の双方と上下方向で係合することで、これらの相対的な上下方向移動(特に型開き方向の移動)を規制するものである。本実施形態では、係止手段233が、係止ピン233aと、係止ピン233aを水平方向に進退させる駆動部233b(例えば電動シリンダやエアシリンダ)とで構成される。係止ピン233aは、円筒面状の外周面を有し、本実施形態では中実の円柱状を成している。係止ピン233aの外径は、第1及び第2ロック部材231,232の貫通穴231a,232aの内径よりも若干小さい。図8及び図9に示すように、各係止ピン233a及び貫通穴231a,232aの軸心方向Pは、当該係止ピン233aとラム202の中心O(ベース201の中心とほぼ一致)とを結ぶ直線L(本実施形態では、ベース201及びラム202の各コーナーにおける対角線)と略直交している。
【0042】
以下、本実施形態のヘミング加工方法の手順を説明する。このヘミング加工方法は、仮組工程、搬入工程、ヘミング加工工程(プレス工程)、搬出工程を順に経て行われる。
【0043】
仮組工程では、図1に示すように、アウタパネル2のフランジ部2aの内側にシーラSを供給した後、そのシーラSの上にインナパネル1を重ねて配置する。これにより、インナパネル1とアウタパネル2との重合部において、両パネル1,2の間にシーラSが配された状態となる。その後、略鉛直上方に立ち上がったアウタパネル2のフランジ部2aの一部(例えば、アウタパネル2の周縁方向に離隔した複数箇所)を内側に若干折り曲げて、そのフランジ部2aの上端をインナパネル1のフランジ部1a上に配置する。これにより、インナパネル1を持ち上げたときに、インナパネル1のフランジ部1aがアウタパネル2のフランジ部2aと係合し、インナパネル1及びアウタパネル2を一体に持ち上げることができる。換言すると、インナパネル1を持ち上げたときに、アウタパネル2も一体に持ち上がる程度に、アウタパネル2のフランジ部2aの折り曲げ箇所や折り曲げ角度を設定する。
【0044】
次に、搬入工程では、仮組したワークのインナパネル1に治具100を装着する。具体的には、まず、治具100のアウタ押さえ部105をインナパネル1に設けられた大穴1bに挿入すると共に、インナ押さえ部104の位置決めピン104bをインナパネル1に設けられた小穴1cに挿入する(図3及び図5参照)。これにより、インナ押さえ部104の第1押圧面104aがインナパネル1の上面に当接した状態で、治具100がワーク上に載置される。このとき、アウタ押さえ部105の第2押圧面105aはアウタパネル2から若干離反している。
【0045】
こうしてワークにセットした治具100のアーム装着部102に、図示しないロボットアームを装着する。そして、ロボットアームから供給したエアを、アーム装着部102のエア流路102aを介してインナ押さえ部104の係止ピン104cのフランジ部104dの後方の空間に供給して位置決めピン104bから係止ピン104cを突出させ、この状態で図示しないロック手段により係止ピン104cをロックする(図4の点線参照)。これにより、ロボットアームからのエア供給を停止しても、係止ピン104cが位置決めピン104bから突出した状態で維持される。この状態で、ロボットアームにより治具100を持ち上げると、係止ピン104cがインナパネル1に下方から係合してインナパネル1が持ち上げられると共に、アウタパネル2のフランジ部2aがインナパネル1と係合してアウタパネル2が持ち上げられる。こうして、インナパネル1及びアウタパネル2を一体に持ち上げて搬送し、ヘミング加工装置200内に搬入して、ワーク受け部203の上にセットする。このとき、アウタパネル2は、同形状のワーク受け部203に倣って所定位置に配置される。
【0046】
ワークがヘミング加工装置200内に搬入されたら、ロボットアームをアーム装着部102から取り外してヘミング加工装置200から退避させる。その後、インナパネル1に治具100を装着した状態のまま、ヘミング加工工程が行われる。
【0047】
ヘミング加工工程では、ワークに対してプリヘム加工及び本ヘム加工が施される。まず、上述の搬入工程によりワーク受け部203の上にワークがセットされた状態で、第1駆動手段205を駆動してラム202及び上型200bを上端位置から降下させる。このとき、ガイドピン210は、図10(a)に示すように最も伸長させた状態としておく。そして、上型200bの降下に伴って、図11に示すようにガイドピン210のガイド部211のテーパ面211aが治具100のガイド受け部103のガイド穴103aにテーパ嵌合する。これにより、インナパネル1が、治具100のガイド受け部103及び位置決めピン104bを介して、上型200bに対して水平方向で位置決めされる。
【0048】
さらに上型200bを降下させると、進退機構212のピン212bが退入し始め、ガイド部211に下向きの所定圧力を付加しながらラム202が降下し続ける(図11の点線参照)。このとき、治具100のインナ押さえ部104の第1押圧面104aでインナパネル1を下向きに押圧することで、インナパネル1が所定位置で保持される。このガイドピン210による治具100及びワークの押圧は、後述するプリヘム加工及び本ヘム加工の間ずっと行われている。
【0049】
このように、本実施形態では、インナパネル1をワーク受け部203に対して位置決めする位置決めピン104bや、インナパネル1を上方から押圧して所定位置に保持する第1押圧面104aが、ヘミング加工装置200とは別体の治具100に設けられている。従って、従来のヘミング加工装置の上型に設けられていた位置決めピンやプレッシャーパッドを省略することができるため、上型200bの構造を簡素化することができる。これにより、上型200bが軽量化されるため、上型200bの昇降速度を速くしてタクトタイムを短縮することが可能となる。また、上型200bに位置決めピンやプレッシャーパッドが設けられていないため、ワークの搬入時にこれらが邪魔になることがなく、搬入しやすくなる。従って、上型200bをそれ程大きく上昇させなくてもワークを搬入することが可能となり、上型200bの昇降ストロークが小さくなってタクトタイムをさらに短縮することができる。
【0050】
こうして治具100のインナ押さえ部104でインナパネル1を上方から押圧する際、押圧力が大きすぎるとインナパネル1が塑性変形してしまう恐れがある。そこで、本実施形態では、治具100のインナ押さえ部104でインナパネル1を上方から押圧すると同時に、治具100のアウタ押さえ部105の第2押圧面105aでアウタパネル2を上方から押圧する。これにより、アウタ押さえ部105がストッパの機能を果たし、治具100のそれ以上の降下が規制され、インナ押さえ部104の押圧力によるインナパネル1の塑性変形を確実に回避できる。このとき、アウタパネル2は、ワーク受け部203で下方から支持されているため、アウタ押さえ部105の押圧力による変形は生じにくい。特に、本実施形態では、アウタパネル2のうち、アウタ押さえ部105で押圧される領域がワーク受け部203の補助部203bで下方から支持されているため、アウタ押さえ部105の押圧力によるアウタパネル2の塑性変形を確実に防止できる。
【0051】
また、従来のヘミング加工装置では、アウタパネル2を同形状のワーク受け部203上に載置することで保持していたため、プリヘム加工時に加わる推力でアウタパネル2が水平方向に動いてしまい、インナパネル1に対するアウタパネル2の水平方向位置がずれてしまう恐れがあった。これに対し、上記のようにアウタパネル2をアウタ押さえ部105で上方から押圧することで(特に、アウタ押さえ部105とワーク受け部203とでアウタパネル2を上下から挟持することで)、プリヘム加工時に加わる推力でアウタパネル2が水平方向に動いてしまう事態を回避でき、インナパネル1とアウタパネル2とを水平方向で正確に位置決めできる。
【0052】
また、ストッパとして機能するアウタ押さえ部105がアウタパネル2の上方に設けられるため、プリヘム機構220やロック機構230等が設けられるアウタパネル2の周囲にストッパを設ける場合と比べて、装置内の省スペース化を図ることができる。
【0053】
また、治具100のインナ押さえ部104の第1押圧面104aとアウタ押さえ部105の第2押圧面105aとの上下方向距離H(図3参照)を予め所定の値に設定しておくことで、インナパネル1のアウタパネル2に対する高さが保証される。これにより、インナパネル1のフランジ部1aがアウタパネル2のフランジ部2aに過度に押し付けられることがなくなり、これらの間に予め塗布されたシーラSが押し出されてシーラ切れが生じる事態を防止できる。
【0054】
その後、さらに上型200bを第1駆動手段205により降下させ続けて、ワークに対してプリヘム加工を施す。このとき、図12に示すように、カムドライバ223は、その下面223dとカム機構222の上面(上側カム225の上面225a)との上下方向距離を小さくした状態となっている。具体的には、カムドライバ223の可動部223bを、カム機構222に当接可能な位置(本体部223aの下方)に配した状態となっている。この状態で上型200bを降下させることで、上型200bに設けたカムドライバ223がカム機構222の上側カム225の上方から当接する(図12の点線参照)。そのまま上型200bを降下させ続けることでカムドライバ223が上側カム225を下向きに押圧し、上側カム225及びプリヘム刃221が下側カム224の傾斜面224aに沿って内側(ワーク側)にスライドする(図13参照)。これにより、プリヘム刃221でアウタパネル2のフランジ部2aが内側に折り曲げられ、プリヘム加工が施される。尚、プリヘム加工を施す間、本ヘム刃204はワーク、特にアウタパネル2のフランジ部2aに当接しない。
【0055】
プリヘム加工が完了したら、上型200bを第1駆動手段205により一旦上昇させる(図14参照)。このとき、プリヘム機構222の付勢手段227の付勢力で、上側カム225及びプリヘム刃221がワークから離反する側に移動し、初期位置に戻される。そして、上型200bを停止させた状態で、カムドライバ223の下面223dとカム機構222の上面(上側カム225の上面225a)との上下方向距離を大きくする。具体的には、カムドライバ223の可動部223bをピン223cを中心に回転させて、可動部223bをカム機構222と当接しない位置(本体部223aの側方)に退避させる。これにより、上下方向で対向するカムドライバ223の下面223d(本体部223aの下面)とカム機構222の上側カム225の上面225aとの上下方向距離H2が、可動部223bを回転させる前の上下方向距離H1よりも大きくなる(H2>H1)。この状態で再び上型200bを第1駆動手段205により降下させ、アウタパネル2のフランジ部2aの直上に本ヘム刃204が配されたら、上型200bを停止する(図15参照)。このとき、カムドライバ223と上側カム225は当接せず、プリヘム刃221はワークから退避した位置(詳しくは、本ヘム刃204及びワーク受け部203の上下方向間から退避した位置)に保持される。
【0056】
このとき、図16に示すように、ロック機構230を構成する上側ロック部材231が下側ロック部材232の間に挿入され、上側ロック部材231の下端が下側ロック部材232に当接することで、両ロック部材231,232の貫通穴231a,232aが同心上に配された状態となる。この状態で、ベース201とラム202とをロック機構230で連結する。本実施形態では、係止手段233の駆動部233bを駆動して係止ピン233aを前進させ、係止ピン233aが両ロック部材231,232の貫通穴231a,232aに挿通される(図16の点線参照)。こうして係止ピン233aが両ロック部材231,232と上下方向で係合することにより、ベース201とラム202との相対的な上下方向移動(本実施形態ではラム202の上昇)が規制される。
【0057】
こうしてベース201とラム202とがロック機構230で連結された状態で、アウタパネル2のフランジ部2aに本ヘム加工を施す。具体的には、図17及び図18に示すように、ロック機構230によりベース201とラム202とを連結した状態で、第2駆動手段206により下型200aを押し上げる。これにより、ベース201、ロック機構230、ラム202、及び本ヘム刃204を固定した状態で、可動ベース208b、ワーク受け部203、及びワーク(インナパネル1及びアウタパネル2)が上昇し、プリヘム加工が施されたアウタパネル2のフランジ部2aが本ヘム刃204に下方から押し付けられて、フランジ部2aがさらに折り曲げられる。このとき、複数(図示例では4個)の油圧シリンダ206aのピン206a1の突出量が等しくなるように、すなわち可動ベース208bが水平状態のまま上昇するように、各油圧シリンダ206aに接続されたサーボモータ206bが制御される。そして、第2駆動手段206の油圧シリンダ206a内の圧力が所定値となったら、サーボモータ206bを停止する。このとき、各油圧シリンダ206aを停止する圧力の所定値は、各部位に応じた値に設定される。以上により、アウタパネル2のフランジ部2aが完全に折り曲げられ、本ヘム加工が完了する。尚、図17及び図18では、便宜上、第2ベース201bやレール201dを省略している。
【0058】
その後、ワーク(インナパネル1及びアウタパネル2の一体品)を、治具100を装着した状態のまま、ヘミング加工装置200から搬出する(搬出工程)。具体的には、第2駆動手段206の油圧シリンダ206aを降下させ、可動ベース208bを第3ベース208aの上に載置した後、ロック機構230の係止ピン233aを後退させてロックを解除する。そして、第1駆動手段205でラム202及び上型200bを上昇させて、ワーク及び治具100を搬出する。ワークの搬出は、搬入時と同様に、ワークに装着された治具100のアーム装着部102にロボットアームを装着し、位置決めピン104bから係止ピン104cを突出させた状態(図4の点線参照)で、ロボットアームによりワークをヘミング加工装置200から搬出する。搬出後、図示しないロック手段による係止ピン104cのロックを解除すると共に、ロボットアームから係止ピン104cのフランジ部104dの前方の空間にエアを供給して係止ピン104cを後退させる(図4の実線参照)。これにより、治具100とワークとの係合を解除し、ロボットアームで治具100をワークから取り外す。ワークから取り外した治具100は、そのままロボットアームで搬送され、これからヘミング加工装置200に搬入される新たなワークに装着された治具に取り付けられる。尚、ワークから取り外した治具100を、一旦ストックエリアにストックしてもよい。また、ヘミング加工装置200に対するワークの搬入出は、同一の搬送手段を用いて行っても良いし、別個の搬送手段で行っても良い。
【0059】
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、ワークは車体のドアのインナパネル1及びアウタパネル2に限られないことはもちろんであり、例えば車体のフードやバックドアのインナパネル及びアウタパネルであってもよい。また、ヘミング加工に限らず、絞り加工や曲げ加工等、他のプレス加工方法に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 インナパネル
2 アウタパネル
100 治具
101 フレーム
102 アーム装着部
103 ガイド受け部
104 インナ押さえ部
104a 第1押圧面
104b 位置決めピン
105 アウタ押さえ部
105a 第2押圧面
200 ヘミング加工装置
200a 下型
200b 上型
201 ベース
202 ラム
203 ワーク受け部
204 本ヘム刃
205 第1駆動手段
206 第2駆動手段
207 ガイド部材
208b 可動ベース
210 ガイドピン
220 プリヘム機構
230 ロック機構
図1
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