特許第6075778号(P6075778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075778
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/237 20060101AFI20170130BHJP
   B60R 21/205 20110101ALN20170130BHJP
【FI】
   B60R21/237
   !B60R21/205
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-178096(P2013-178096)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-44537(P2015-44537A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 崇真
(72)【発明者】
【氏名】大野 彰
(72)【発明者】
【氏名】橋場 雅
(72)【発明者】
【氏名】古野 剛士
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−072498(JP,A)
【文献】 特開2013−035459(JP,A)
【文献】 特開2006−103655(JP,A)
【文献】 特開2008−001198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスを導入するための導入口を有する第1生地部と、該第1生地部に連なって該第1生地部と共に袋形状を構成するための第2生地部と平面状に重なり合った二重シート折り畳まれて構成されたエアバッグであって、
上記二重シートが折り畳まれた状態において、
該二重シートの、上記導入口を含む部位を中央部、上記二重シートの、上記中央部の一方側に位置する部位を大片部、及び上記二重シートの、上記中央部の他方側に位置する部位であって上記大片部よりも上記中央部における上記導入口の中心からの長さが短い部位を小片部とし、
上記中央部を基準として、該中央部における上記第1生地部と上記第2生地部とが重なり合う方向を法線方向、該法線方向に直交するとともに上記中央部に対して上記大片部と上記小片部とが繋がる方向を前後方向、及び上記法線方向及び上記前後方向に直交する方向を幅方向とし、
さらに、上記中央部の上記第1生地部に対して上記中央部の上記第2生地部が重なる側を上記法線方向の表側、上記中央部に対して上記大片部が繋がる側を上記前後方向の前側、上記中央部に対して上記小片部が繋がる側を上記前後方向の後側としたとき、
上記大片部は、上記幅方向に平行な複数の折り曲げ線に沿って複数回折り曲げ巻回された積層ロール部として形成され該積層ロール部は、上記中央部に対する上記法線方向の表側に配置されており、
上記小片部は、上記積層ロール部に沿って該積層ロール部の上記前後方向の後側から上記積層ロール部の上記法線方向の表側配置されており
上記積層ロール部の上記幅方向の両端に位置するロール端部は、上記小片部を上記積層ロール部との間に挟む状態で、上記積層ロール部の上記法線方向の表側に折り返されており
記小片部の上記前後方向の前側端は、上記幅方向の全長に亘って、上記ロール端部の上記前後方向の前側端よりも、上記前後方向の後側に位置ていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
上記二重シートが折り畳まれた状態において、
上記小片部の上記前後方向の前側端上記ロール端部上記前後方向の前側端との間の距離Aは、上記ロール端部の上記前後方向の全長Lに対して、0.1L<A<0.9Lの関係を有していることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
上記小片部の上記前後方向の前側の端部における、上記第1生地部及び上記第2生地部は、上記二重シートの内部に折り込まれており、
上記小片部の上記前後方向の前側の端部には、2重の上記第1生地部と2重の上記第2生地部とが合わさって全体で4重に重なった4重重ね合わせ部が形成されており、
上記小片部の上記前後方向の前側端は、上記4重重ね合わせ部の上記前後方向の前側端によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアバッグ。
【請求項4】
上記ロール端部は、上記小片部が上記幅方向に存在する範囲の外側において折り返されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において乗員を保護するためのエアバッグ装置に用いられるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、衝突時に乗員を保護するエアバッグ装置が搭載されている。エアバッグ装置は、高圧ガスを発生させるインフレータと、インフレータの高圧ガスにより膨張するエアバッグと、これらを収容するケースとを備えている。エアバッグ装置に用いられるエアバッグは、ケース内に折り畳んで収納されており、確実かつ速やかに膨張、展開が可能であることが望まれている。
【0003】
このようなエアバッグとしては、例えば特許文献1及び特許文献2に示されたものがある。
特許文献1に示された助手席用エアバッグは、膨張前の車体搭載状態における左右方向に配された部位を折り込んだ後、前後方向に延びる帯状のエアバッグにおける前方側及び後方側をそれぞれ折り畳んでいる。そして、エアバッグにおける前方側の部分を後方側の部分の下側に配置することにより、エアバッグの展開速度の向上を図っている。
【0004】
また、特許文献2に示されたエアバッグは、所定の方向に折り畳んだ後、直交する方向に、複数のベントホールと重なるように折り畳むことで展開速度の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−130356号公報
【特許文献2】特開平10−157540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に示されたエアバッグには以下の課題がある。
特許文献1及び特許文献2に示されたエアバッグにおいては、折り畳まれたエアバッグの重なり合った部分がエアバッグの展開初期において展開を妨げる抵抗を生む場合があり、より速やかかつ確実に膨張、展開を行うことのできるエアバッグが望まれている。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、速やかかつ確実に膨張、展開することのできるエアバッグを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、高圧ガスを導入するための導入口を有する第1生地部と、該第1生地部に連なって該第1生地部と共に袋形状を構成するための第2生地部と平面状に重なり合った二重シート折り畳まれて構成されたエアバッグであって、
上記二重シートが折り畳まれた状態において、
該二重シートの、上記導入口を含む部位を中央部、上記二重シートの、上記中央部の一方側に位置する部位を大片部、及び上記二重シートの、上記中央部の他方側に位置する部位であって上記大片部よりも上記中央部における上記導入口の中心からの長さが短い部位を小片部とし、
上記中央部を基準として、該中央部における上記第1生地部と上記第2生地部とが重なり合う方向を法線方向、該法線方向に直交するとともに上記中央部に対して上記大片部と上記小片部とが繋がる方向を前後方向、及び上記法線方向及び上記前後方向に直交する方向を幅方向とし、
さらに、上記中央部の上記第1生地部に対して上記中央部の上記第2生地部が重なる側を上記法線方向の表側、上記中央部に対して上記大片部が繋がる側を上記前後方向の前側、上記中央部に対して上記小片部が繋がる側を上記前後方向の後側としたとき、
上記大片部は、上記幅方向に平行な複数の折り曲げ線に沿って複数回折り曲げ巻回された積層ロール部として形成され該積層ロール部は、上記中央部に対する上記法線方向の表側に配置されており、
上記小片部は、上記積層ロール部に沿って該積層ロール部の上記前後方向の後側から上記積層ロール部の上記法線方向の表側配置されており
上記積層ロール部の上記幅方向の両端に位置するロール端部は、上記小片部を上記積層ロール部との間に挟む状態で、上記積層ロール部の上記法線方向の表側に折り返されており
記小片部の上記前後方向の前側端は、上記幅方向の全長に亘って、上記ロール端部の上記前後方向の前側端よりも、上記前後方向の後側に位置ていることを特徴とするエアバッグにある。
【発明の効果】
【0009】
上記エアバッグにおいては、上記積層ロール部を上記中央部の表側に積層配置し、上記小片部を上記積層ロール部の上記表側に達するように配置すると共に、上記ロール端部が上記小片部を挟むように上記積層ロール部の上記表側に折り返している。そして、上記小片部の先端が、上記積層ロール部の上記表側の表面上において、上記エアバッグの上記前側の端部よりも内側に位置するように配置されている。
そのため、上記エアバッグの膨張、展開を速やかかつ確実に行うことができる。
【0010】
すなわち、上記小片部は、上記積層ロール部と上記ロール端部との間に挟まれているため、上記エアバッグの展開初期には、上記積層ロール部と上記ロール端部から上記小片部に展開を阻害するように抵抗がかかる。上述のように、上記小片部の先端を、上記エアバッグの上記前側の端部よりも内側に配置することにより、上記積層ロール部と上記ロール端部との間に挟まれた部位を縮小することができる。
【0011】
したがって、上記積層ロール部と上記ロール端部から上記小片部にかかる抵抗を低減することができる。これにより、上記ロール端部を跳ね上げながら、上記小片部が上記積層ロール部と上記ロール端部との間から抜け出やすくなる。それゆえ、上記小片部、上記積層ロール部及び上記ロール端部を容易に展開することが可能となり、上記エアバッグの膨張、展開を速やかかつ確実に行うことができる。
【0012】
また、上記小片部の先端と上記エアバッグの上記前側の端部との間の距離を調整することにより、上記小片部が上記積層ロール部と上記ロール端部との間から抜け出るタイミングを調整することができる。これにより、上記エアバッグにおける展開初期の膨張方向と、膨張、展開のタイミングを任意に設定することができる。
【0013】
以上のように、上記エアバッグによれば、速やかかつ確実に膨張、展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1における、エアバッグを示す断面図(図2のB−B矢視断面相当)。
図2】実施例1における、表側から見たエアバッグを示す説明図。
図3】実施例1における、前側から見たエアバッグを示す説明図。
図4】実施例1における、車載状態のエアバッグ装置を示す説明図。
図5】実施例1における、折り畳み前の二重シートを示す平面図。
図6】実施例1における、折り畳み前の二重シートを示す断面図。
図7】実施例1における、積層ロール部を形成した二重シートを示す平面図。
図8】実施例1における、積層ロール部を形成した二重シートを示す断面図。
図9】実施例1における、小片部を折り畳んだ二重シートを示す平面図。
図10】実施例1における、小片部を折り畳んだ二重シートを示す断面図。
図11】小片部の他の形状例を示す図1に対応するエアバッグの断面図。
図12】ロール端部の他の形状例を示す図3に対応するエアバッグの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記エアバッグにおいて、上記二重シートが折り畳まれた状態において、上記小片部の上記前後方向の前側端上記ロール端部上記前後方向の前側端との間の距離Aは、上記ロール端部の上記前後方向の全長Lに対して、0.1L<A<0.9Lの関係を有していることが好ましい。この場合には、上記エアバッグの展開性及び折り畳み作業性を向上することができる。0.1L<Aとすることにより、上記エアバッグの展開性を確実に向上することができる。また、A<0.9Lとすることにより、上記小片部を上記積層ロール部上に、容易に配することができ、上記エアバッグの折り畳み作業を容易に行うことができる。
【0016】
また、上記距離Aと上記全長Lとは、0.2L<A<0.8Lの関係を有していることがより好ましい。この場合には、上記エアバッグの展開性及び折り畳み作業性をより確実に向上することができる。
【0017】
また、上記小片部の上記前後方向の前側の端部における、上記第1生地部及び上記第2生地部は、上記二重シートの内部に折り込まれており、上記小片部の上記前後方向の前側の端部には、2重の上記第1生地部と2重の上記第2生地部とが合わさって全体で4重に重なった4重重ね合わせ部が形成されており、上記小片部の上記前後方向の前側端は、上記4重重ね合わせ部の上記前後方向の前側端によって形成されていてもよい。この場合には、上記エアバッグの形状を変化させることなく、上記小片部の先端と上記積層ロール部の上記前側の端部との間の距離を調整することができる。また、上記二重シートの内部に折り込むことで、高圧ガスの導入がスムースに行われ、上記エアバッグの膨張、展開性を向上することができる。
【実施例】
【0018】
(実施例1)
上記エアバッグにかかる実施例について図1図10を参照して説明する。
図5及び図6に示すように、エアバッグ1は、高圧ガスを導入するための導入口111を有する第1生地部(基布)11と、第1生地部11に連なり、第1生地部11と共に袋形状を構成する第2生地部(基布)12とを備えており、第1生地部11と第2生地部12とを平面状に展開して重なり合わせた二重シート10を折り畳んで構成されている。
【0019】
二重シート10は、長手方向Xにおいて3つの領域に区画され、導入口111が存在する中央部21と、中央部21を挟んで長手方向X両側にそれぞれ位置する大片部22及び小片部23とを有している。
中央部21において、第1生地部11の側を裏側、第2生地部12の側を表側、大片部22の側を前側、及び小片部23の側を後側とする。
図1図3に示すように、大片部22は、長手方向Xに略直交する複数の折り曲げ線24(図5)に沿って複数回折り曲げ巻回された積層ロール部220を形成して、中央部21の表側に積層配置されている。
【0020】
図1図3に示すように、小片部23は、積層ロール部220に沿って積層ロール部220の後側から表側に達するように配置されている。
積層ロール部220における長手方向Xに直交する方向の両端のロール端部25は、積層ロール部220の表側に折り返されており、小片部23は、積層ロール部220とロール端部25とによって挟まれている。
小片部23は、その先端部231が、積層ロール部220の表側の表面上において、エアバッグ1の前側の端部よりも内側に位置するように配置されている。
【0021】
以下、さらに詳細に説明する。
図5及び図6に示すように、エアバッグ1において、中央部21における第1生地部11及び第2生地部12の並び方向を法線方向Zとし、中央部21から大片部22及び小片部23が延出した方向を長手方向Xとし、法線方向Z及び長手方向Xと直交する方向を幅方向Yとして説明する。
図4に示すように、本例に示すエアバッグ1は、自動車における助手席の乗員を保護するエアバッグ装置100に用いられるものである。エアバッグ装置100は、助手席に対して車両の前方側に設けられたインストルメントパネル104内に配されており、高圧ガスを発生させるインフレータ101と、高圧ガスを導入することで膨張するエアバッグ1と、これらを収納するケース102とを有している。
【0022】
エアバッグ装置100は、自動車が衝突し衝撃を感知するとインフレータ101が高圧ガスを発生する。この高圧ガスがエアバッグ1内に導入されることによりエアバッグ1が膨張し、インストルメントパネル104に形成されたドア部(図示略)を押し開くと共に、膨張したエアバッグ1が車室内において、助手席乗員に向かって展開される。
【0023】
図5及び図6に示すように、エアバッグ1は、合成繊維を製織した低通気性素材によって形成されており、高圧ガスを導入するための導入口111を有する第1生地部11と、第1生地部11に連なり、第1生地部11と共に袋形状を構成する第2生地部12とを備えている。非膨張時において、第1生地部11と第2生地部12とは、平面状に重なり合わせた二重シート10を構成している。
【0024】
二重シート10は、長手方向Xの両端から中央側に向かって徐々に拡幅するように形成されており、膨張時には、略四角錘状の立体形状を形成する(図4)。また、二重シート10は、長手方向Xにおいて、導入口111が存在する中央部21と、中央部21を挟んで長手方向X両側にそれぞれ位置する大片部22及び小片部23との3つの領域に区画されている。
【0025】
図4及び図5に示すように、本例において、導入口111の周囲には、仮想線211が形成されている。仮想線211は、四角形状をなしており、ケース102内にエアバッグ1を収納した際の、導入口111に対するケース内周縁103の位置よりも一回り小さい位置に形成されている。
中央部21は、長手方向Xにおける仮想線211の幅寸法211aと同一の範囲に設定してある。中央部21から前側に向かって大片部22が、中央部21から後ろ側に向かって小片部23が伸びており、長手方向Xにおける大片部22の長さ寸法は、小片部23の長さ寸法に比べて大きく設定してある。
【0026】
図7及び図8に示すように、大片部22は、長手方向Xに略直交する複数の折り曲げ線24に沿って複数回折り曲げ巻回された積層ロール部220を形成して中央部21の表側に積層配置されている。本例において、大片部22は、中央部21の表側に配されるよう、中央部21との境界線212(図5)に沿って折り曲げた後、4本の折り曲げ線24(図5)に沿って、先端側から順次表側に折り曲げ巻回することで積層ロール部220を形成している。尚、隣り合う折り曲げ線24の間隔は、エアバッグ1がケース102内に納まるよう適宜設定するものである。
【0027】
図9及び図10に示すように、小片部23は、その先端部が二重シート10の内部に折り込まれて4重に重なった4重重ね合わせ部232を構成している。つまり、二重シート10における小片部23の後側の先端部が、第1生地部11と第2生地部12との間に挟まれるように、二重シート10の内部に折り込まれており、4重重ね合わせ部232の先端は、第1生地部11と第2生地部12とがそれぞれ折り畳まれた第1先端部233及び第2先端部234を有している。
【0028】
4重重ね合わせ部232を形成した小片部23は、積層ロール部220に沿って積層ロール部220の後側から表側に達するように配置されている。このとき、小片部23は、第1先端部233及び第2先端部234が、積層ロール部220の表側の表面上において、エアバッグ1の前側の端部よりも内側(後側)に位置するように配置されている。本例においては、小片部23の先端部231と積層ロール部220の前側の端部との間の距離Aは、エアバッグ1の長手方向Xの全長Lに対して、0.5L=Aの関係となるように設定してある。
【0029】
図2図3及び図9に示すように、幅方向Yにおいて、積層ロール部220の両端における、仮想線211の幅寸法211bよりも外側に配されたロール端部25は、小片部23を挟んで積層ロール部220の表側に折り返されている。本例においては、両端のロール端部25を折り返した際に、その先端が、積層ロール部220の表側の略中央位置に配されている。
【0030】
次に、本例の作用効果について説明する。
エアバッグ1においては、積層ロール部220を中央部21の表側に積層配置し、小片部23を積層ロール部220の表側に達するように配置すると共に、ロール端部25が小片部23を挟むように積層ロール部220の表側に折り返している。そして、小片部23の第1先端部233及び第2先端部234が、積層ロール部220の表側の表面上において、エアバッグ1の前側の端部よりも内側(後側)に位置するように配置されている。
そのため、エアバッグ1の膨張、展開を速やかかつ確実に行うことができる。
【0031】
すなわち、小片部23は、積層ロール部220とロール端部25との間に挟まれているため、エアバッグ1の展開初期には、積層ロール部220とロール端部25から小片部23に展開を阻害するように抵抗がかかる。上述のように、小片部23の第1先端部233及び第2先端部234を、エアバッグ1の前側の端部よりも内側に配置することにより、積層ロール部220とロール端部25との間に挟まれた部位を縮小することができる。
【0032】
したがって、積層ロール部220とロール端部25から小片部23にかかる抵抗を低減することができる。これにより、小片部23が積層ロール部220とロール端部25との間から抜け出やすくなる。それゆえ、小片部23、積層ロール部220及びロール端部25を容易に展開することが可能となり、エアバッグ1の膨張、展開を速やかかつ確実に行うことができる。
【0033】
また、第1先端部233及び第2先端部234とエアバッグ1の前側の端部との間の距離を調整することにより、小片部23が積層ロール部220とロール端部25との間から抜け出るタイミングを調整することができる。これにより、エアバッグ1における展開初期の膨張方向と、膨張、展開のタイミングを任意に設定することができる。
【0034】
また、第1先端部233及び第2先端部234と積層ロール部220の前側の端部との間の距離Aは、エアバッグ1の長手方向Xの全長Lに対して、0.1L<A<0.9Lの関係を有している。そのため、エアバッグ1の展開性及び折り畳み作業性を向上することができる。
【0035】
また、小片部23の先端は、二重シート10の内部に折り込まれて4重に重なった4重重ね合わせ部232を構成している。そのため、エアバッグ1の形状を変化させることなく、小片部23の先端と積層ロール部220の前側の端部との間の距離Aを調整することができる。また、二重シート10の内部に折り込むことで、高圧ガスの導入がスムースに行われ、エアバッグ1の膨張、展開性を向上することができる。
【0036】
以上のように、本例のエアバッグ1によれば、速やかかつ確実に膨張、展開することができる。
【0037】
上記実施例1に示したエアバッグ1においては、小片部23の先端部231に4重重ね合わせ部232を形成したがこれに限るものではなく、図11に示すように、二重シート10のまま折り畳んでもよい。
また、ロール端部25における幅方向Yの寸法が大きい場合には、図12に示すように積層ロール部220の中央側から、さらに幅方向Y外側に向かって折り返してもよい。
また、上述した積層ロール部220を形成する際の、大片部22の折り曲げ線24の数、折り曲げ回数及び折り曲げ方向は、一例を示すものであり、適宜変更することができる。
上記のいずれの形態においても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 エアバッグ
10 二重シート
11 第1生地部
111 導入口
12 第2生地部
21 中央部
22 大片部
220 積層ロール部
23 小片部
231 先端部
24 折り曲げ線
25 ロール端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12