特許第6075788号(P6075788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6075788蛍光および吸収分析のシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075788
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】蛍光および吸収分析のシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   G01N21/64 Z
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-557795(P2013-557795)
(86)(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公表番号】特表2014-510915(P2014-510915A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】US2012027833
(87)【国際公開番号】WO2012122151
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年3月4日
(31)【優先権主張番号】13/042,920
(32)【優先日】2011年3月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513225718
【氏名又は名称】ホリバ インスツルメンツ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HORIBA INSTRUMENTS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ギルモア,アダム エム.
(72)【発明者】
【氏名】トン,シャオメイ
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−505070(JP,A)
【文献】 特開2005−331419(JP,A)
【文献】 特開平01−253635(JP,A)
【文献】 特開2000−146839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料分析システムにおいて、
入力光源と、
前記入力光源から光を受光して、複数の波長の各々で前記試料を順次照射すべく配置された二重減算型モノクロメータと、
前記複数の励起波長の各々について前記試料により発光された光の複数の波長を受光および検出すべく配置されたマルチチャネル蛍光検出器と、
前記試料を透過する光を受光および検出すべく配置された吸収検出器と、
基準検出器と、
前記モノクロメータからの光の一部を前記基準検出器へ向けるべく配置されたビームスプリッタと、
前記モノクロメータ、前記蛍光検出器、前記基準検出器、および前記吸収検出器と通信状態にあるコンピュータとを含み、
前記コンピュータが、長い波長を有する光から短い波長を有する光へ進みながら前記試料を順次照射すべく前記モノクロメータを制御して前記複数の波長の各々で前記試料を順次照射しながら、前記基準検出器、前記蛍光検出器、および前記吸収検出器から受信した信号に基づいて前記試料の吸収および蛍光を測定し、前記コンピュータが、前記基準検出器からの信号に基づいて同時に前記吸収および蛍光測定値の少なくとも1つを調整するよう構成されていることを特徴とする試料分析システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記コンピュータが、同時に得られた吸収測定値を用いて蛍光測定値を補正することを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記吸収検出器が少なくとも1つのフォトダイオードを含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記モノクロメータからの光を前記試料へ向けるべく、および前記蛍光検出器へ高いスループットを提供しながら前記試料から前記吸収検出器へ実質的に視準されたビームを提供すべく配置された少なくとも1つの光学素子を更に含むことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの光学素子が、前記吸収検出器に関連付けられた光学機器よりも高速な関連F数を有する凹面鏡を含み、前記吸収検出器に関連付けられた前記光学機器が前記吸収検出器の前面に配置された開口を有するバッフルを含むことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記蛍光検出器が、前記コンピュータと通信状態にある冷却CCDアレイへの入力光を回折すべく配置された収差補正済み回折格子を含むことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記モノクロメータと前記試料との間に配置されていて前記モノクロメータからの光の第1の部分を前記試料へ向け、前記モノクロメータからの光の第2の部分を空試料へ向ける少なくとも1つの光学素子を更に含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項に記載のシステムにおいて、前記空試料を透過した光が前記吸収検出器へ選択的に向けられることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項に記載のシステムにおいて、前記空試料を透過した光を検出すべく配置された第2の吸収検出器を更に含むことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの光学素子が取り外し可能なビームスプリッタを含むことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記吸収検出器が、
回折格子と、
前記回折格子により回折された光を検出すべく配置されたマルチチャネル検出器とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項12】
試料を分析する方法において、
二重減算型モノクロメータからの複数の励起波長で前記試料を照射するステップであって、長い波長を有する光から短い波長を有する光へ進みながら前記試料を順次照射するステップと、
前記試料を透過する光を検出することにより前記試料による吸収を測定するステップと、
マルチチャネル検出器を用いて各励起波長について前記試料により発光された光の発光スペクトルを検出することにより前記試料の蛍光を測定するステップと、
前記吸収測定値を用いて前記蛍光測定値を同時に補正するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記吸収測定が、前記モノクロメータから光の一部を受光すべく配置された基準検出器により検出された光度に基づいて調整されることを特徴とする方法。
【請求項14】
試料を分析するシステムにおいて、
励起波長の選択された帯域を出力すべく配置された少なくとも2つの回折格子を有するモノクロメータと、
前記モノクロメータからの光を試料へ向けるべく配置された第1の凹面鏡と、
基準フォトダイオードと、
前記第1の凹面鏡からの光の一部を前記基準フォトダイオードへ、および前記第1の凹面鏡からの光の第2の部分を前記試料へ向けるべく配置されたビームスプリッタと、
前記試料を透過する光を受光すべく配置された吸収検出器と、
前記吸収検出器と前記試料との間に配置された開口を有するバッフルと、
前記試料により発光された光を第1の検出器へ向けるべく配置された第2の凹面鏡と、
励起波長の各帯域について検出器格子からの回折光の複数の次数を同時に検出すべく配置されたマルチチャネル撮像検出器と、
励起波長の複数の帯域の各々について前記試料の吸収および蛍光を同時に検出すべく前記モノクロメータ、前記基準フォトダイオード、前記吸収検出器、および前記マルチチャネル撮像検出器と通信状態にあるプロセッサとを含み、
前記プロセッサが、短波長帯域の前に長波長帯域で前記試料を順次照射すべく前記モノクロメータを制御し、共通の励起波長帯域に関連付けられた吸収測定値を用いて蛍光測定値を同時に調整すること特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記第1および第2の凹面鏡が、前記吸収検出器に関連付けられた光学機器より高速の光学機器を提供すべく関連付けられたF数を有することを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記吸収検出器が、入力光の複数の回折次数を同時に検出すべく配置された回折格子および光検出器アレイを有する分光計を含むことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、蛍光および吸収測定を用いた試料の定量および/または定性分析に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収分光および蛍光分光を含む分光分析を用いて試料内に存在する各種の懸濁および溶解された有機および/または無機物質あるいは化合物を識別して測定または定量化することができる。この種の分析は、例えば化学、食品科学、生物学、薬学、材料/ナノテクノロジー、および各種環境、地質学、水理学、海洋学/湖沼学、および土壌科学の応用における水質分析において広範な用途を有している。分光光度測定を用いて、各々が例えば約700〜200nmの範囲の波長を有する可視−紫外線(VIS−UV)範囲にある光を吸収する発色団を含む化合物を検出および定量化することができる。吸収される光エネルギーの量は一般に、化合物の濃度および化合物内の移動距離に応じて変化する。同様に、ある種の化合物は、着色または発色物質、すなわち短波長励起光エネルギーの吸収および長波長(且つ低エネルギー)発光エネルギーの再放出に伴う特徴的な蛍光に基づいて識別および定量化することができる。
【0003】
吸収および蛍光分光は、水質分析用途に用いられ、腐植およびフルボ酸、葉緑素、タンパク質およびアミノ酸、核酸、下水、バクテリア、肥料、農薬等、各種の化合物を含む着色または発色溶解有機物(CDOM)を識別および測定してきた。従来技術における一戦略は、相応の測定器を用いて別々の蛍光および吸収測定を実行することである。その結果得られたデータは、各種の市販ソフトウェアアプリケーションを用いて相関計算および/または補正を実施することができる。しかし、別々の測定は、所望の分析および蛍光スペクトル補正を行うために試料およびデータの転送を必要とする。また、単一チャネル検出器(典型的には光電子増倍管(PMT))を有する励起および発光走査モノクロメータを用いる蛍光光度計は多くの場合走査時間が30〜90分以上であり、時間経過に伴いおよび/または励起光への露光により劣化し得る不安定な化合物を正確に検出および定量化することができない。同様に、そのように長い走査時間を用いて得られた結果の精度は、溶解ガス、pH、凝集、沈殿およびその他の化学的プロセスにおいて時間依存する変化により悪影響を受ける恐れがある。長い走査時間と比較的限られたラマン信号対雑音比が組み合わさって、調整された吸収および蛍光の読み取りが不確実および統計的に不正確になる恐れがある。
【0004】
上記の問題のいくつかに対処すべく、並行的な蛍光および吸収読み取りを容易にする市販の蛍光光度計が開発されてきた。しかし、このアプローチでも蛍光再吸収補正のための吸収および発光データをほぼ同時に収集することはない。また、汎用測定器は、吸収および蛍光測定の両者に対応するために設計面で各種の妥協がなされる場合がある。
【発明の概要】
【0005】
試料を分析するシステムまたは方法は、入力光源、入力光源から光を受光して、複数の波長の各々で試料を順次照射すべく配置された二重減算型モノクロメータ、複数の励起波長の各々について試料により発光された光の複数の波長を受光および検出すべく配置されたマルチチャネル蛍光検出器、試料を透過する光を受光および検出すべく配置された吸収検出器、およびモノクロメータ、蛍光検出器、および吸収検出器と通信状態にあるコンピュータを含み、当該コンピュータはモノクロメータを制御して複数の波長の各々で試料を順次照射しながら、蛍光および吸収検出器から受光した信号に基づいて試料の吸収および蛍光を測定する。
【0006】
本開示による各種実施形態は、二重減算型モノクロメータからの複数の励起波長で試料を照射するステップと、試料を透過する光を検出することにより試料の吸収を測定するステップと、マルチチャネル検出器を用いて各励起波長について試料により発光された光の発光スペクトルを検出することにより試料の蛍光を測定するステップと、吸収測定値を用いて蛍光測定値を補正するステップとを含む試料分析方法を含んでいる。本方法はまた、モノクロメータからの励起光の一部を受光すべく配置された基準検出器により検出された光度に基づいて吸収および蛍光測定値の少なくとも一方を調整するステップを含んでいてよい。
【0007】
一実施形態において、水試料を分析するシステムは、UV強化されたキセノンランプにより実行される入力を有する単色化された励起光源を含んでいる。ランプからの光は、減算型構成に配置された2つの凹面ホログラフィック回折格子を有する二重回折格子モノクロメータを透過して、正確な波長追跡を維持しながらほぼゼロの分散を与えると共に非選択波長の迷光を減らす。ランプ出力は、励起走査の各波長増分で基準ダイオードによる測定/監視され、吸収および/または蛍光測定値を補正または正規化すべく用いることができる。蛍光測定に向けられた励起ビームは、スループット増大のために選択された開口数を有する高速光学機器を用いる。試料および励起光学機器を下回るF数を有する吸収検出光学機器を備えた開口部を透過する励起ビームからの実質的に視準された光に基づいて吸収測定値を提供すべくフォトダイオード、ダイオードアレイまたは分光計が含まれていてよく、すなわち、一実施形態において励起光学機器はF数が約F3であることを特徴とし、吸収検出光学機器はF数が約F11であることを特徴とする。より低速の光学機器に関連付けられた視準光は、吸収読み取り値の正確度および線形性を向上させる。試料の蛍光または発光に付随する光は、励起ビームに略垂直に配置された関連高速光学機器により、CCD検出器等の冷却されたマルチチャネル検出器を有する分光器へ向けられ、低レベルの暗雑音を有する高速スペクトル収集を容易にする。蛍光検出器の光学機器に関連付けられたF数は吸収検出器光学機器より小さくてもよい。一実施形態において、蛍光検出器光学機器においてF数は約F3である。コンピュータおよび/またはコントローラにより完全な発光スペクトルを集め、これを基準フォトダイオードにより測定された励起ビームの光度により、試料を透過して透過する単一/共通の照射光源からの光に基づく対応吸収データと共に正規化してもよい。
【0008】
本開示の各種実施形態によるシステムおよび方法は、上記のものに加え多くの利点をもたらす。例えば、本開示による各種実施形態により、水試料内に溶解および/または懸濁された有機および無機物質の定性および定量分析を所望の速度、正確度および精度で行うことが容易になる。本開示による機器および方法は、測定器補正された蛍光励起−発光スペクトルマップ(EEM)および吸収スペクトルの高速および同時取得を同時に実行する。各種実施形態には、吸収および蛍光測定値の分析を容易にする専用且つ協調的取得/分析ソフトウェアパッケージが含まれている。単一の測定器による吸収および蛍光データの取得は、異なる測定器により実行された測定における試料間の時間依存する光学的および化学的変化に付随する不正確な相関を軽減または除去する。更に、ほぼ同時に取得した吸収データを用いて、溶解および懸濁された有機および無機化合物に関する豊富な独立データの提供だけでなく、蛍光スペクトル情報の相関計算および補正を行うことができる。本開示による実施形態が提供する励起および発光ビームの自動フィルタリングにより回折格子次数のアーチファクトが除去される。
【0009】
各種実施形態を用いて、透過された光スペクトルのプロットに加え、蛍光励起波長、発光波長、および光度スペクトルの完全に補正された三次元スペクトルを生成することができる。実施形態は、対応する空試料および未知試料を比較し、蛍光EEMと透過された光スペクトルとの間に次の処理を施して補正EEMおよび吸収/透過スペクトル情報を提供することにより動作させることができる。EEMデータは更に、例えば各種の多変量解析、主成分分析、平行因子分析、および/または二重重畳積分法を含む各種の公知技術を用いて分析して、吸収/蛍光測定値に関連付けられた試料成分を識別および/または定量化することができる。
【0010】
各種の設計方針、例えば、マルチチャネル検出器を用いる蛍光測定に高速光学機器を使用し、より低速の光学機器を使用して単一のチャネル吸収検出器へ視準された光を提供して長波長から短波長まで励起走査することにより、必要とされる測定時間を短縮して試料材の光誘起による変質または損傷をなくして定量分析が向上する。同様に、個々のスペクトル成分の識別により、多変量分析技術におけるスペクトルライブラリの利用が容易になる。共通の励起光源を用いる同一測定器での吸収および蛍光測定により、内部フィルタ効果の蛍光スペクトルの補正が容易になる。
【0011】
本開示の上述の利点および他の利点並びに特徴は、添付の図面さ参照しながら好適な実施形態に関する以下の詳細な説明から容易に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施形態による試料分析システムまたは方法の中核要素の機能的関係を示す簡略ブロック図である。
図2図2は、本開示の実施形態による試料分析システムまたは方法における制御およびデータ信号の機能的通信を示す簡略ブロック図である
図3図3は、本開示の一実施形態による試料分析システムまたは方法の動作を示す模式図である。
図4図4は、図1に示す実施形態の透視図である。
図5図5は、本開示の各種実施形態による試料分析システムまたは方法に用いる減算型二重モノクロメータの透視図である。
図6図6は、本開示の別の実施形態による試料分析システムまたは方法の動作を示す模式図である。
図7図7は、本開示の各種実施形態による、試料および空試料を対応する吸収検出器で照射すべく二重ビーム装置を用いる試料分析システムまたは方法の動作を示す模式図である。
図8図8は、本開示の各種実施形態による、試料および空試料を単一の吸収検出器および関連付けられたチョッパーで照射すべく二重ビーム装置を用いる試料分析システムまたは方法の動作を示す模式図である。
図9図9は、本開示の各種実施形態による、吸収経路における直接照射および吸収検出用の分光器を用いる試料分析システムまたは方法の動作を示す模式図である。
図10図10は、本開示の各種実施形態による試料分析システムまたは方法の代表的な吸収測定を示す説明図である。
図11A図11Aは、本開示の実施形態による試料分析システムまたは方法における代表的な吸収および蛍光測定値を取得すべく選択可能な動作モードを示す説明図である。
図11B図11Bは、本開示の実施形態による試料分析システムまたは方法における代表的な吸収および蛍光測定値を取得すべく選択可能な動作モードを示す説明図である。
図12図12は、本開示の実施形態による試料分析システムまたは方法の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示によるシステムおよび方法の各種の代表的な実施形態について詳述する。しかし、代表的な実施形態は例示的に過ぎず、本開示によるシステムおよび方法を各種の代替的な形式で実現できることを理解されたい。各図面は必ずしも一定比率で描かれている訳ではなく、特定の成分の詳細を示すためにいくつかの特徴は誇張または縮小している場合がある。従って、本明細書に開示する特定の構造および機能的な詳細が限定的なものではなく、単に当業者に本発明の各種利用形態を教示する基礎的表現として解釈すべきである。
【0014】
当業者には、いずれかの図面に例示および記述された本開示の各種特徴を、他の1つ以上の図面に示す特徴と組み合せることにより、明示的に例示または記述されていない本開示の実施形態を生じ得ることが理解されよう。例示する特徴の組合せは、典型的な用途の代表的な実施形態を提供する。しかし、特定の用途または実装のために本開示の教示と矛盾しない各種の特徴の組み合せおよび変更形態が求められる場合もある。
【0015】
図1に、試料分析システムまたは方法の各種の要素間の機能的関係を示す簡略ブロック図を示す。システム20は、例えば約240〜2500nmの間に波長を有する広スペクトル入力光を出力する入力光源22を含んでいる。一実施形態において、入力光源22は、150WのUV強化された無オゾンキセノンアークランプにより実装されている。無論、入力光源の選択は一般に、用途および実装に応じて異なる。光源22は、システムエネルギー効率を向上させるべく光を励起モノクロメータ24の入力へ略向ける関連光学機器を含んでいてよい。励起モノクロメータ24は、本開示による各種実施形態における二重減算型モノクロメータにより実装されている。本開示による励起光源として二重減算型モノクロメータを用いることにより、分散がほぼゼロになり、波長追跡の正確度が向上し、非選択波長の迷光が減少して、各種の従来技術方式に比べて測定器の感度が向上する。二重減算型モノクロメータ24は、入力光源22から光を受光して、試料および/または空試料28を複数の波長の各々で順次照射すべく配置されている。当業者には知られているように、モノクロメータ24等のモノクロメータは、広スペクトル入力光源22から狭波長帯域を選択して狭帯域またはほぼモノクロの出力を提供すべく制御することができる。例えば、一実施形態において、二重減算型モノクロメータ24は、約5nmの選択波長の励起帯域通過または帯域幅を提供し、約1100nmの開始波長から約220nmの終了波長まで1nm等の指定された増分で走査すべく制御される。UV照射の吸収は、試料内のCDOMを「漂白」してその光学濃度および吸収容量を減らすことができるため、迷光または長期にわたる測定サイクルから短波長光への露光を制限することが望ましい。試料内での漂白または光誘起反応を減らすべく、本開示の各種実施形態によれば励起走査は長波長から短波長へ進むことができる。
【0016】
光源22からのランプ出力は、一実施形態においてシリコンフォトダイオードにより実装されている基準検出器26により測定/監視される。モノクロメータ24の励起走査の各波長増分における測定値を用いて、吸光または吸収検出器30およびマルチチャネル蛍光検出器32の吸収および/または蛍光測定値を補正または正規化することができる。図に示すように、モノクロメータ24から出る励起光は、一般にF/N1で表す関連開口数またはF数を特徴としてもよい関連光学機器34を用いて、試料および/または空試料28を透過する方向に向けられている。試料および/または空試料28を略直接に透過する光は、一般にF/N2で表す開口数またはF数を特徴としてもよい少なくとも1つの光学素子38により吸光または吸収検出器30へ向けられている。モノクロメータ24からの励起光に略垂直または法線方向に発光された光は、光学機器34に等しいかまたは同様の、一般にF/N3で表す関連開口数またはF数を特徴としてもよい光学機器36により、マルチチャネル蛍光検出器32へ向けられている。各種実施形態において、高速光学機器を用いて光を試料/空試料28へ向け、より低速な光学機器を有する蛍光検出器32を用いて、N2がN1より大きくなるように、実質的に視準された光を吸収検出器30に提供する。例えば、一実施形態において、光学機器34、36は、F数がF/3であることにより特徴付けられていてモノクロメータ24および試料28からの光を高スループットで蛍光検出器32へ向けるべく配置された高速光学機器であるのに対し、光学機器38は、試料/空試料28からの直接の光が、F数がF/11であることを特徴とする吸収検出器30へ実質的に視準されたビームを提供する少なくとも1つの光学素子を含んでいる。このように、本実施形態ではN1=N3<N2である。しかし、本明細書で更に詳細に記述するように、各種実施形態は、N2>N1且つN1≧N3であるF数を有していてよい。一般に、励起光学機器のF数より大きい(またはより遅い)F数を特徴とする吸収光学機器を提供すべく光学要素を選択および配置することにより、吸収検出の線形性および正確度が向上する。同様に、蛍光光学機器のF数より大きいF数を特徴とする吸収光学機器を提供すべく光学機器を選択および配置することにより、蛍光信号のより高いスループットと共により感度の高い蛍光検出が得られる。
【0017】
マルチチャネル蛍光検出器32は、複数のモノクロメータ24により選択された励起波長(または波長帯域)の各々について試料および/または空試料28により発光された光の複数の波長を受信および検出すべく配置されている。複数の光の波長を同時に検出するマルチチャネル検出器32を用いることにより、そうでない場合に単一チャネル走査検出器の使用に伴うデータ収集時間が短縮される。走査回数が減少することもまた、そうでない場合に光に起因する試料の変化が生じ得る励起波長への露光時間を短縮させる。無論、特定の用途および実装に応じて、単一チャネル走査検出器を用いてもよい。
【0018】
また、図1に示すように、基準検出器26、吸収検出器30、および蛍光検出器32は、図2に示すように、関連付けられたデータチャネル上の信号を1つ以上のコンピュータまたはプロセッサに出力することができる。一実施形態において、中央処理装置またはコンピュータへ、基準検出器26がデータ信号「R」を提供し、吸収検出器30がデータ信号「I」を提供し、蛍光検出器32が対応データチャネル上のデータ信号「S」を提供する。
【0019】
図2は、本開示の実施形態による試料分析システムにおける各種要素の機能的接続を示すブロック図である。要素20は、1つ以上のポート42を介して少なくとも1つのプロセッサまたはコンピュータ40に結合されている。一実施形態において、コンピュータ40は、USBポート42および電子回路/ハードウェア50、52を介して各種要素20と通信するデータ処理、分析、および制御ソフトウェアを含んでいる。電子機器50、52は、ポート42を介したコンピュータ40との通信のために関連付けられたアクチュエータ/センサへの/からの信号を変換すべくフィルタリング、処理、調節、フォーマッティング等を行う各種の信号を提供する。一実施形態において、外部トリガ信号44もまた、各種測定器の機能を起動すべく電子機器50に提供することができる。同様に、トリガ入力/出力信号は、各種測定器要素20の制御を調整すべく電子機器50、52の間でやり取りすることができる。
【0020】
図2に示すように、ソフトウェアおよび/またはハードウェアによりコンピュータ50上に実装されている制御ロジックは、I/Oポート42および電子機器50を介して、例えばシャッター60、励起モノクロメータ62、検出器データチャネル64、66、68、試料チェンジャ70、およびフィルタホイール72用に対応データ/制御信号を送信/受信することができる。同様に、第2のI/Oポート42を用いて、電子機器52を介して対応データ/制御信号を蛍光分光器に関連付けられたCCDカメラ74に送信することができる。シャッター制御部60を用いて、試料/空試料28の上流に配置されたシャッターを制御して、実験または測定を実行する前に光源22を安定化させながら、試料/空試料28を選択的に照射してその露光を制限することができる。コンピュータ40からの信号を用いて、開始および終了走査波長、波長増分等を制御すべく関連付けられた励起制御部62を介してモノクロメータ24を制御することができる。図2に示す実施形態において、補助「A」チャネル64を用いて任意選択の要素を制御することができる。データチャネル66は吸収検出器30に関連付けられたデータ信号「I」を送信し、データチャネル68は基準検出器26に関連付けられたデータ信号「R」を送信する。本明細書に図示およびより詳細に記述する関連試料チャンバ内で1つ以上の試料の位置決めを自動化すべく試料チェンジャ制御部70が任意選択で設けられていてよい。励起走査が所望の励起波長の範囲を進行するにつれて不要なオーダーの光を減少または除去すべく適切なフィルタの位置決めを自動的に行うべくフィルタホイール制御部72が任意選択で設けられていてよい。図2に示す実施形態において、蛍光検出器データは、関連付けられたデータチャネル74を介して蛍光分光器に関連付けられたマルチチャネル撮像CCDカメラからコンピュータ/プロセッサ40へ電子機器52および第2のポート42を通して提供される。
【0021】
図1および2に一般的に示すように、本開示による試料分析システムの各種実施形態は入力光源22、入力光源22から光を受光してモノクロメータ24により選択された複数の波長の各々で試料(および/または空試料)28を順次照射すべく配置された多またはマルチフェーズ減算型モノクロメータ24を含んでいる。本システムは、複数の励起波長の各々について試料により発光された光の複数の波長を受信してほぼ同時に検出すべく配置されたマルチチャネル蛍光検出器32を含んでいる。吸収検出器30は、試料/空試料28を透過する光を受光および検出すべく配置されている。コンピュータ40は、電子機器50、52およびポート42を介してモノクロメータ24、蛍光検出器32、および吸収検出器30と通信状態にある。コンピュータ40は、蛍光および吸収検出器32、30から各々受信した信号に基づいて試料/空試料28の吸収および蛍光を測定しながら、試料/空試料28を選択された複数の波長の各々で順次照射すべくモノクロメータ24を制御する制御ロジックを含んでいる。基準検出器26は、電子機器50およびポート42を介してコンピュータ40と通信状態にあって、モノクロメータ24から基準検出器26へ光の一部を向けるべく配置された関連ビームスプリッタ(図3)と協働する。コンピュータ40は、基準検出器26からの信号に基づいて吸収および蛍光測定値の少なくとも1つを調整することができる。
【0022】
図3は本開示による試料分析システムまたは方法の一実施形態の要素位置決めを示す模式的平面図であり、図4は透視図である。システム20は、システム効率を向上させるべく電球、蛍光管(tube)またはLEDにより発光された光を集光すなわち集めるために用いる1つ以上の関連光学素子または要素80、82を備えた入力光源22を含んでいる。図示する実施形態において、光源22は、電球からの光を所望の出力方向へ向ける凹面鏡または反射器80および後部反射器82を含んでいる。光源22からの光は反射器82によりモノクロメータ入力鏡84へ向けられ、モノクロメータ入力鏡84は光を二重減算型モノクロメータ24の入力90へ向ける。モノクロメータ24は、略垂直に整列配置された第1および第2の凹面回折格子92、94を含んでいる(図5に最も分かり易く示す)。回折格子92、94は、制御信号に応答して選択的に配置され、モノクロメータ入力90に略垂直に整列配置された出力スリット96を、励起波長の対応する選択された帯域を有する回折光で照射する。シャッター104をモノクロメータ24内に組み込むかまたは測定器内の任意の適当な位置に配置して、入力光源28が適切な動作温度に到達して安定化させながら、走査測定の間だけ試料28の照射を制御または制限するようにしてもよい。
【0023】
少なくとも1つの光学素子が、モノクロメータ24の出力96からの光を試料28へ向けるべく配置されている。図示する実施形態において、平面モノクロメータ出力鏡98は、モノクロメータ24からの発散光を、一実施形態においてF数が約F/3であることを特徴とする凹面または環状鏡100へ向ける。環状鏡100からの収束光は、モノクロメータ24からの入射光の第1の部分を基準検出器26の方へ、および入射光の第2の部分を試料28へ向けるべく配置されたビームスプリッタ102へ向けられる。基準検出器26は、例えば、シリコンフォトダイオードにより実装されていてよい。基準検出器26は、測定値を用いて吸収および蛍光検出器の両方を正規化すべく配置されていてよい。
【0024】
ビームスプリッタ102を透過する光は、試料チャンバ110内に入り、測定走査を行う間、試料および/または空試料28を照射する。試料28をほぼ直接的に透過する光は、試料チャンバ110から出て、吸収検出器30を照射する前に開口112を透過する。一実施形態において、開口112の大きさは、F数が約F/11であることを特徴とするほぼ視準された光を、シリコンフォトダイオード等の単一チャネル検出器により実装可能な吸収検出器30に提供すべく決定されている。吸収検出器30用に低速の光学機器を用いることで吸収検出の正確度および線形性が向上する。このように、本開示による各種実施形態は、吸収測定光学機器よりも高速な励起および蛍光測定光学機器を用いて、ほぼ同時に行われる吸収測定の線形性および正確度を向上させるべく試料を通って吸収検出器へ透過される光の光度を制限しながら、試料の照射および蛍光により発光された比較的低い光度の光を測定すべくより高い光スループットを提供する。他の実施形態では、フォトダイオードアレイ(PDA)等のマルチチャネル検出器を用いて吸収測定値を得ることができる。これにより走査時間を短縮できるが、3Dスペクトルを得るためにほぼ同時の測定を行い易くはならない。本明細書に更に詳細に記述するように、いくつかの実施形態では吸収測定を提供すべく分光器を備えた吸収検出器30を実装することができる。
【0025】
ビームスプリッタ102を透過する励起光に略垂直な試料28により発光された光は、関連開口を通って試料チャンバ110から出て、凹面または環状鏡114および平面鏡116によりマルチチャネル蛍光検出器32へ反射される。図示する実施形態において、マルチチャネル蛍光検出器32は、入力光を回折させてその成分周波数/波長を冷却CCD検出器122全体に広げる凹面回折格子120を有する撮像分光器により実装されている。マルチチャネル蛍光検出器32を用いることにより、二重減算型モノクロメータ24の各励起波長に付随する蛍光スペクトルのほぼ同時測定が容易になり、単一チャネル走査蛍光検出器を用いる測定器に比べて測定値の取得時間が大幅に短縮する。
【0026】
図5は、本開示の各種実施形態による試料分析システムまたは方法で用いられる二重減算型モノクロメータ24の構成要素を示す透視図である。モノクロメータ24は、励起波長の対応する選択された帯域を有する回折光で出力スリット96を照射すべく選択的に配置された第1および第2の凹面回折格子92、94を含んでいる。動作中、入力光源からの光は、入力開口90を通って入り、第1の凹面回折格子92に入射する。回折格子92からの回折光は、第1の鏡136により、第2の鏡138へ、および第2の回折格子94へ、および出口96へ反射される。第1および第2の凹面回折格子92、94は、第1の凹面回折格子92の出力が、迷光(すなわち非選択波長の光)の振幅を減らしながら、第2の凹面回折格子94への入力として作用して出口96での出射励起ビームの分散がほぼゼロになるように減算型構成に配置されている。迷光が減ることにより、試料を照射する不要な紫外線(散乱により影響されやすい)を減少または除去して漂白を少なくすると共に、より高いスペクトル解像度が得られる。同様に、スペクトルがランダムに混合されためより正確な吸収測定が可能になる。
【0027】
無論、他の各種のモノクロメータ構成を用いて、特定の用途または実装用に所望の性能仕様を満たすことができる。例えば、一体化された凹面回折格子ではなく、1つ以上の別々の回折格子/鏡を有するモノクロメータ構成を用いてもよい。同様に、分散性能が余り重要でない場合、減算型構成は必要でないこともある。同様に、複数のモノクロメータ内で3つ以上の位相を組み合せて、更に迷光を減らすおよび/または他の各種の性能要件を実現することができる。一般に、減算型構成に配置された少なくとも2つの凹面回折格子を有する複数のモノクロメータを用いて、各種の用途に適した所望の迷光遮断を実現して分散をほぼゼロにすることができる。
【0028】
図6は、本開示による試料分析システムまたは方法の別の実施形態を示す簡略模式図である。システム200は、楕円反射器204により入力光が二重減算型モノクロメータ208へ向けられた入力光源202を含んでいる。反射器204からの光は、平面鏡206の下または背後を通ってモノクロメータ208の入力開口220まで進む。入力光は、上述のように第1の凹面回折格子210により、ステアリングミラー212、214および第2の凹面回折格子216へ回折される。回折格子210、216は、付随する光が出口開口222を通って平面鏡206のレベルでモノクロメータから出る所望の励起波長を選択すべく選択的に配置されていてよい。平面鏡206は、選択波長の発散励起光をF/3に対応する開口数を有する環状鏡230へ向ける。環状鏡230は、収束光をビームスプリッタ232へ向け、ビームスプリッタ232は入射光の一部を基準フォトダイオード234へ向きを変える一方、残りの部分を試料236へ透過させる。試料236を透過する光は、吸収フォトダイオード240に関するF/11に対応する開口数を与える開口を有するバッフル238へ入射する。バッフル/開口238は、吸収フォトダイオード240に与えられた光を視準すべく動作可能である。
【0029】
励起光に略垂直な試料236により発光された光は全て、F/3に対応する開口数を有する第2の環状鏡250により集光される。環状鏡250は、収束ビームのほぼ発散する光を、ビームステアリングミラー252を介して撮像分光器260の入力へ向きを変える。撮像分光器は、冷却CCD264上での撮像のために入力光をその成分波長に分割して、二重モノクロメータ208から送られた複数の励起波長の各々について複数の波長スペクトルを収集可能にする収差補正済み回折格子262を含んでいる。冷却CCD検出器264を用いることにより、測定器感度が向上して当該測定器が広範な用途、特に例えば水質分析および付随するCDOM測定に関連する用途に適するように、暗雑音が減って信号/雑音比率(SNR)が向上する。
【0030】
図7は、本開示の各種実施形態による、試料および空試料を共通の励起ビームで照射すべく二重ビーム装置を用いる試料分析システムまたは方法の動作を示す模式図である。システム280は、入力光源202、楕円鏡204、平坦または平面鏡206、および図6に示す構成と同様の二重モノクロメータ208を含んでいる。同様に、モノクロメータ208からの励起光が環状鏡230へ向けられている。追加的なビームステアリングミラー282が、光の一部を空試料288を通ってステアリングミラー286へ反射させることにより二重励起ビームを生成する取り外し可能なビームスプリッタ284の方へ励起ビームの向きを変えるべく配置されている。空試料288を透過する光は、バッフル/開口290に入射し、関連付けられた空試料吸収検出器292をほぼ視準された光が透過する。
【0031】
取り外し可能なビームスプリッタ284を透過する光の一部は、上述のようにビームスプリッタ232により基準フォトダイオード234へ向きが変えられる。ビームスプリッタ232により透過された光は、試料236を通ってステアリングミラー294により向きを変えられる。試料236を透過する光は、バッフル/開口238に入射し、光の一部は吸収フォトダイオード240に当たる。
【0032】
図7に示す二重ビーム装置により、空試料288および試料238の吸収測定値をほぼ同時に収集することができる。取り外し可能なビームスプリッタ284は、励起ビームの光度を増大させて試料236の蛍光測定の感度を向上させるべく試料236の蛍光測定値の間、手動または自動的に取り外しまたは位置変更を行うことができる。上述の実施形態と同様に、励起ビームに略垂直な試料236により発光された光は、環状鏡250により、上述のように所望の測定器特徴を提供すべく冷却CCDを有する撮像分光器により実装可能なマルチチャネル蛍光検出器260へ向けられている。
【0033】
図8は、本開示の各種実施形態による、単一の吸収検出器および関連付けられたチョッパーで試料および空試料を照射すべく二重ビーム装置を用いる試料分析システムまたは方法の動作を示す模式図である。図8の構成は、同一番号を付された素子の構造および機能に関して図7の構成に類似している。しかし、図8の実施形態では、バッフル/開口290を透過する空試料288からの光は、鏡306によりチョッパー308へ向きが変えられている。同様に、バッフル/開口238を透過する試料236からの光は、鏡312によりチョッパー308へ向きが変えられている。チョッパー308は、単一の吸収検出器を用いて空試料288および試料236の両方の吸収測定が行えるように空試料288または試料236のいずれかからの光を吸収検出器310の方へ選択的に向ける。チョッパー308は、空試料288および試料232からの対応する測定値が順次、但しほぼ同時に取得されるように制御することができる。
【0034】
図9は、本開示の各種実施形態による、吸収経路における直接照射および吸収検出用の分光器を用いる試料分析システムまたは方法の動作を示す模式図である。システム360は、同一番号を付された素子に関して上述のような構造および機能を有する各種の構成要素を含んでいる。図9の実施形態において、入力光源202からの光の一部を用いて、吸収測定のために空試料288を直接照射する。ビームスプリッタ320は、素子322を通る光源202から光の一部の向きを変える。環状鏡324は、空試料288を照射する前に、ステアリングミラー326により向きが変えられてバッフル/開口290を透過する収束ビームを形成する。空試料288を透過する光は、本実施形態では分光器により実装された環状鏡330により吸収検出器340へ向けて反射される。
【0035】
蛍光測定値は、試料236から励起ビームに対して直角に発光された光から分光器350を用いて得られる。選択波長の光は、二重モノクロメータ208から出て、平面鏡206、環状鏡230および平面鏡342により、ビームスプリッタまたはウインドウ232を透過して試料236へ向きが変えられる。上述のように、ウインドウまたはビームスプリッタ232が、入射光の一部を基準フォトダイオード234へ向ける。試料236から発光された光は、環状鏡250により集光され、分光器360へ向きが変えられる。本実施形態では、試料コンパートメントが、試料セル236および空セル288を入れ替えるべく回転可能に構成されている。
【0036】
図10に、本開示の各種実施形態による試料分析システムまたは方法の代表的な吸収測定を示す。上述のように、各種実施形態は、励起走査および生じたデータの後続分析用の取得を制御すべく、二重減算型モノクロメータ、マルチチャネル蛍光検出器、吸収検出器、および基準検出器と通信状態にあるコンピュータ(図2)を含んでいる。図10に一般的に示すように、コンピュータは、空試料および試料の吸収測定を実行すべくソフトウェアおよび/またはハードウェアで実装された制御ロジックを含んでいてよい。ブロック400は、測定チャンバ内に空試料を配置して、シャッターが閉じていて空試料を照射する励起光が無い状態でのベースラインダークリーディングを含む一連の測定を実行することにより、空試料の吸収スペクトルを取得するステップを表す。測定は、吸収検出器からの関連付けられた「I」データおよび基準検出器からの「R」データをコンピュータが保存した状態で、モノクロメータを制御して第1の選択波長を提供することにより進行する。コンピュータは、基準データを用いて吸収データを補正または正規化することができる。この処理は、所望の終了波長に到達するまで波長を増分させながら繰り返される。ブロック402で表すような空試料が測定位置に置かれた状態での励起走査の出力は、404で表すような次の測定値のために保存することができる。
【0037】
以前にデータが保存されている空試料の場合、ユーザーは新たに励起走査を実行するのではなくブロック400で表すように対応データファイルを取り出すことができる。試料の測定は次いで、ブロック406で表すように完了することができる。試料は、対応する空白ファイルが指定された状態で測定チャンバ内の位置に置かれる。測定は、モノクロメータにより選択された各波長について同様に進行し、吸収検出器および基準検出器から得られたデータが408で示すように補正または正規化される、すなわちI=I/R
透過率(T)が%T=(Isample/Iblank)*100で計算され、吸収率がAbs =−log(Isample/Iblank)で計算される。この結果は、例えば410に示すように、励起波長の関数としてプロットすることができる。無論、特定の用途および実装に応じて他の各種のデータ取得および分析技術を用いてもよい。
【0038】
図11Aおよび11Bに、本開示の実施形態による試料分析システムまたは方法における代表的な吸収および蛍光測定値を取得すべく選択可能な動作モードを示す。上述のように、本開示による各種実施形態は、特に水質分析およびCDOMの定量化に適した特徴を含んでいる。例えば、本実施形態では、試料コンパートメントは、図9を参照しながら上で図示および記述したように試料セルと空セルを入れ替えるべく回転可能に構成されている。このように、以下の代表的な動作モードは、水質分析用途に関して記述している。同様の意モードまたは測定を他の用途で実行することもできる。
【0039】
CDOM試料セルおよび空試料のセルが、ブロック500で表すように試料コンパートメントに置かれる。ユーザーは次いで、ブロック502で表すように走査タイプを選択する。図示する実施形態において、動作モードまたは走査種別はブロック510で表すようにEEM(吸収)測定504、発光(蛍光)測定506、吸収測定508、および動力学(フローセル/クロマトグラム)分析を含んでいる。EEM(吸収)測定504は空試料520および試料522に対しても同様に進行する。上述のように、特定の空試料に関連付けられたデータは、以前に格納されたファイルが利用可能ならばそこから取得できる。さもなければ、空試料の測定データは、本例で240nm〜600nmの範囲にある複数の励起波長で空試料を照射することにより得られる。各励起波長について送信された光度データは、上述のように吸収検出器および参照検出器信号を用いて決定される。マルチチャネルCCD蛍光検出器で測定された発光スペクトルデータは各励起波長について収集される。データは次いで、励起、発光および光度に関して補正される。一実施形態において、データは、以下に詳述するように内部フィルタ効果を除去すべく補正される。空試料および試料からのデータを用いて、ブロック524で表すように、透過(T)、吸収(A)、およびEEMを計算する。当該ソフトウェアにより、ユーザーは、自動的にデータを分析して測定および分析されたデータを表示することにより取得時間を短縮すると共にユーザーによる手動データ分析を軽減または無くする所望の方法を選択することができる。
【0040】
発光測定506の選択は、ブロック530で表すように空試料についてデータを収集したEEM測定504と同様に進行する。しかし、開始から終了波長まで自動的に且つ順次走査するのではなく、ブロック530で示すように単一の励起波長が選択される。同様に、ブロック532に示すように試料に対して単一の励起波長が選択される。次いで補正された空試料および試料データを用いて、ブロック534で表すように内部フィルタ効果を減少または除去すべく透過(T)、吸収(A)およびEEMを決定する。
【0041】
また図11に示すように、吸収測定508の選択は、ブロック540で表すように空試料について、およびブロック542で表すように試料についてデータを収集したEEM測定504と同様に進行する。ブロック540に示すように、励起波長は、選択された開始波長から選択された終了波長まで、本例では1100nm〜240nmの範囲で走査される。各励起波長について、透過光度が吸収検出器信号に基づいて集められ、少なくとも1つの対応基準検出器信号に基づいて光度が補正される。次いで空試料および試料データを用いて、ブロック544で表すように透過(T)および吸収(A)を計算する。
【0042】
フローセルを備えた測定器は、ブロック510で表すような動力学的分析を実行することができ、ブロック550で表すように空試料について、およびブロック552で表すように試料について同様の測定値が集められる。励起波長だけでなく測定積分時間および増分も選択される。送信された光度データは次いで、選択された励起波長について収集される。発光スペクトルデータ(複数波長)もまたマルチチャネル蛍光検出器から収集され、当該データは内部フィルタ効果を除去すべく励起、発光および光度が補正される。次いで空試料データおよび試料データを用いて、ブロック554で表すように透過(T)、吸収(A)および発光データを時間の関数としてプロットする。
【0043】
本開示による実施形態は、蛍光励起−発光マッピング(EEM)と吸収分析を調整するベンチトップ分析研究用測定器を提供するものであり、懸濁および溶解された有機および無機物質の水質分析に特に適しているが、EEMを必要とする食品科学およびその他の用途、並びに定性的および定量的分析が可能になった吸収分析にも適している。上述の測定/計算以外にも、各種実施形態は、標準分解、主成分分析(PCA)等と称されることもある、平行因子分析(PARAFAC)を容易にするMatLabおよびEigenvector等、多くの市販されている多変量解析パッケージへ/からのデータ転送機能を提供する。
【0044】
図12は、本開示の実施形態による試料分析システムまたは方法の動作を示すフローチャートである。本システムまたは方法は、ブロック600で表すように二重減算型モノクロメータにより発光された複数の励起波長で試料および/または空試料を順次照射するステップを含んでいる。本システムまたは方法はまた、ブロック602で表すようにマルチチャネル検出器を用いて、試料を透過する光を検出することにより試料/空試料による吸収を、および各励起波長について試料により発光された光の発光スペクトルを検出することにより試料の蛍光を測定するステップを含んでいる。吸収および蛍光は、両方の測定値がほぼ同時に得られるように同一または共通の励起ビームを用いて測定することができる。本システムおよび方法はまた、ブロック604で表すように吸収測定値を用いて蛍光測定値を補正するステップを含んでいてよい。例えば、一実施形態において、次式を用いることができる。
ideal=Fobserved*exp((ODex+ODem)/2)
ここに、Fidealは内部フィルタ効果が存在しない場合に期待される理想的な蛍光信号スペクトルを表し、Fobservedは観察された蛍光を表し、ODexおよびODemはEEMの各励起および発光波長座標で測定された吸収値を表す。また、本システムまたは方法は、ブロック606で表すように、モノクロメータから光の一部を受光すべく配置された基準検出器により検出される光度に基づいて吸収測定値を調整するステップを含んでいてよい。
【0045】
上述の代表的な実施形態に示すように、本開示による試料分析システムおよび方法は、水試料内の溶解および/または懸濁された有機および無機物質の所望の速度、正確度および精度での定性的および定量的分析を容易にすべく吸収および蛍光の同時測定を提供する。単一の測定器での吸収および蛍光データの同時取得により、測定値間の試料の時間に依存する光学的および化学的変化に付随する不正確な相関を軽減または除去する。更に、同時に取得した吸収データを用いて、溶解および懸濁された有機および無機化合物に関する豊富な独立データの提供だけでなく、蛍光スペクトル情報の相関計算および補正を行うことができる。励起および発光ビームの自動フィルタリングにより回折格子次数のアーチファクトが除去される。
【0046】
複数の回折格子励起モノクロメータが組み込まれたシステムおよび方法は、レイリー散乱に対する優れた迷光遮断および高いUV感度を有する回折格子次数を提供する。励起監視および補正に基準ダイオードを用いることにより、蛍光励起スペクトルの追跡可能な光学的補正が行うことができるようになり、任意の入力ランプドリフトが補償される。試料、空試料およびフローセルに対応可能なモジュラー試料コンパートメントを用いることで、汚染を減少または除去しながら、自動サンプリングおよびオンライン監視用の空試料の補正(減算)およびフローが容易になる。蛍光測定用の高速光学機器により、蛍光感度のスループットおよび水ラマン散乱用のSNRが向上する。蛍光発光分光計用の撮像検出器として冷却CCDを用いることにより、高速データ収集を高いUV−VIS検出感度および低い暗雑音で行うことができるようになる。同時吸収測定により、試料内で内部フィルタ効果から生じる再吸収された蛍光信号の補正が、各種の従来技術測定器により実装された吸収測定よりも良好に行い易くなる。同様に、適切に開口された吸収光学機器により、線形性および正確度を向上させる視準されたビームが得られ、低コストのシリコンフォトダイオード検出器の使用が容易になる。
【0047】
例示的な実施形態について上で述べているが、これらの実施形態が本開示による試料分析システムまたは方法の全ての可能な形式を記述することは意図していない。本明細書で用いる語句は、限定的でなく説明用の語句であって、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく各種の変更を行うことができる点を理解されたい。上述のように、各種の代表的な実施形態の特徴を、明示的に図示または記述しない方法で組み合せて更なる実施形態を形成することができる。各種実施形態を、1つ以上の所望の特徴に関して他の実施形態よりも利点があるかまたは好適であるように記述した場合もあるが、当業者には、特定の用途および実装に応じて所望のシステム属性を実現するために1つ以上の特徴を犠牲にする場合もあることが認識されよう。これらの属性には、コスト、強度、耐久性、ライフサイクルコスト、市場性、外観、包装、大きさ、サービス性、重量、製造可能性、組み立ての容易さ、動作等が含まれるが、これに限定されない。1つ以上の特徴に関して他の実施形態または従来技術での実装よりも望ましくない旨で記述された本明細書のいずれの実施形態も本開示の範囲に含まれており、特定の用途には望ましい場合がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12