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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075812
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】Polar符号の復号方法および復号器
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/05 20060101AFI20170130BHJP
   H03M 13/13 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   H03M13/05
   H03M13/13
【請求項の数】20
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-560531(P2015-560531)
(86)(22)【出願日】2014年1月7日
(65)【公表番号】特表2016-515329(P2016-515329A)
(43)【公表日】2016年5月26日
(86)【国際出願番号】CN2014070206
(87)【国際公開番号】WO2014134974
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年10月15日
(31)【優先権主張番号】201310073607.8
(32)【優先日】2013年3月7日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】504277388
【氏名又は名称】▲ホア▼▲ウェイ▼技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100140534
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 敬二
(72)【発明者】
【氏名】李 斌
(72)【発明者】
【氏名】沈 ▲暉▼
【審査官】 岡 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0117344(US,A1)
【文献】 森 立平,Polar符号について,電子情報通信学会技術研究報告,2010年 9月14日,Vol.110, No.205,pp.43-49,IT2010-41
【文献】 Alptekin Pamuk,An FPGA Implementation Architecture for Decoding of Polar Codes,2011 8th International Symposium on Wireless Communication Systems, Aachen,2011年,pp.437-441
【文献】 Camille Leroux et al.,A Semi-Parallel Successive-Cancellation Decoder for Polar Codes,IEEE Transacations on Signal Processing,2013年 1月15日,Vol.61, No.2,pp.289-299
【文献】 Chuan Zhang et al.,Reduced-Latency SC Polar Decoder Architectures,IEEE ICC 2012 Signal Processing for Communications Symposium,2012年 6月15日,pp.3471-3475
【文献】 Camille Leroux et al.,Hardware Architectures for Successive Cancellation Decoding of Polar Codes,2011 IEEE International Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing(ICASSP),2011年 5月27日,pp.1665-1668
【文献】 Bin Li et al.,Parallel Decoders of Polar Codes,2013年 9月 4日
【文献】 Amin Alamdar-Yazdi et al.,A Simplified Successive-Cancellation Decoder for Polar Codes,IEEE Communications Letters,2011年12月,Vol.15, No.12,pp.1378-1380
【文献】 Kai Niu et al.,New Repetition Polar Code over Double Blocks for the BEC Channel,Wireless Information Technology and Systems(ICWITS), 2012 IEEE International Conference on,2012年11月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/05
H03M 13/13
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Polar符号の復号方法であって、
復号器により、長さNを有する第1のPolar符号を、相互に結合されたm個の第2のPolar符号に分割するステップであって、各第2のPolar符号の長さがN/mであり、Nおよびmが2の整数乗であり、N>mである、ステップと、
前記復号器により、前記m個の第2のPolar符号を別個に復号して、前記m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するステップと、
前記復号器により、前記m個の第2のPolar符号の前記復号結果に従って、前記第1のPolar符号の復号結果を取得するステップと
を有する復号方法。
【請求項2】
前記m個の第2のPolar符号を別個に復号して、前記m個の第2のPolar符号の復号結果を取得する前記ステップが、
前記m個の第2のPolar符号を並列に復号して、前記m個の第2のPolar符号の前記復号結果を取得するステップを含む、請求項1に記載の復号方法。
【請求項3】
前記m個の第2のPolar符号を別個に復号して、前記m個の第2のPolar符号の復号結果を取得する前記ステップが、
各第2のPolar符号中のi番目のビットの判定基準値を取得するステップであって、iが正の整数であり、1≦i≦N/mである、ステップと、
前記判定基準値に従って、前記i番目のビットを決定して、前記i番目のビットの判定値を取得するステップと
を含み、
前記m個の第2のPolar符号の前記復号結果に従って、前記第1のPolar符号の復号結果を取得する前記ステップが、
前記第1のPolar符号中に存在し、かつ前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットに対応するビットの性質に従って、前記第1のPolar符号中の前記対応するビットの復号結果を取得するステップを含む、請求項1または2に記載の復号方法。
【請求項4】
前記第1のPolar符号中に存在し、かつ前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットに対応するビットの性質に従って、前記第1のPolar符号中の前記対応するビットの復号結果を取得する前記ステップが、
前記対応するビットがすべて情報ビットである場合、前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定値に従って、前記対応するビットの前記復号結果を決定するステップと、
前記対応するビット中に凍結ビットと情報ビットとが存在する場合、前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定値と前記i番目のビットの前記判定基準値とに従って、前記対応するビットの前記復号結果を決定するか、または、前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定基準値に従って、前記対応するビットの前記復号結果を決定するステップと
を含む、請求項3に記載の復号方法。
【請求項5】
前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定基準値に従って、前記対応するビットの前記復号結果を決定する前記ステップが、
前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定基準値に対して、ゲインの等しい組合せを実行して、前記対応するビットの前記復号結果を取得するステップを含む、請求項4に記載の復号方法。
【請求項6】
前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定基準値に従って、前記対応するビットの前記復号結果を決定する前記ステップが、
前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定基準値に従って、前記対応するビットの各組合せの尤度比関数値を取得するステップと、
最大の尤度比関数値を有する組合せを、前記対応するビットの前記復号結果として選択するステップと
を含む、請求項4に記載の復号方法。
【請求項7】
前記判定基準値が、尤度比、対数尤度比、または確率値である、請求項3から6のいずれか一項に記載の復号方法。
【請求項8】
長さNを有する第1のPolar符号を、相互に結合されたm個の第2のPolar符号に分割する前記ステップが、
前記第1のPolar符号の受信された信号ベクトルをm個のセグメントに順次にかつ均等に分割するステップを含み、
前記受信された信号ベクトルの各セグメントは、前記m個の第2のPolar符号を決定するために、前記m個の第2のPolar符号のうちの1つの第2のPolar符号の受信された信号ベクトルとして用いられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の復号方法。
【請求項9】
前記m個の第2のPolar符号を別個に復号して、前記m個の第2のPolar符号の復号結果を取得する前記ステップが、
前記m個の第2のPolar符号に対して、逐次除去(SC)復号を別個に実行して、前記m個の第2のPolar符号の前記復号結果を取得するステップを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の復号方法。
【請求項10】
Polar符号の復号器であって、
長さNを有する第1のPolar符号を、相互に結合されたm個の第2のPolar符号に分割するように構成された分割ユニットであって、各第2のPolar符号の長さがN/mであり、Nおよびmが2の整数乗であり、N>mである、分割ユニットと、
前記m個の第2のPolar符号を別個に復号して、前記m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するように構成された復号ユニットと、
前記m個の第2のPolar符号の前記復号結果に従って、前記第1のPolar符号の復号結果を取得するように構成された決定ユニットと
を具備する復号器。
【請求項11】
前記復号ユニットが、
前記分割ユニットから前記m個の第2のPolar符号のうちの1つの第2のPolar符号をそれぞれ受け取り、前記m個の第2のPolar符号を並列に復号して、前記m個の第2のPolar符号の前記復号結果を取得するように構成されたm個の成分復号器を含む、請求項10に記載の復号器。
【請求項12】
前記復号ユニットが、各第2のPolar符号中のi番目のビットの判定基準値を取得し、前記判定基準値に従って、前記i番目のビットを決定して、前記i番目のビットの判定値を取得するようにさらに構成され、iは正の整数であり、1≦i≦N/mであり、
前記決定ユニットが、前記第1のPolar符号中に存在し、かつ前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットに対応するビットの性質に従って、前記第1のPolar符号中の前記対応するビットの復号結果を取得するようにさらに構成される、請求項10または11に記載の復号器。
【請求項13】
前記決定ユニットは、
前記対応するビットがすべて情報ビットである場合、前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定値に従って、前記対応するビットの前記復号結果を決定し、
前記対応するビット中に凍結ビットと情報ビットとが存在する場合、前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定値と前記i番目のビットの前記判定基準値とに従って、前記対応するビットの前記復号結果を決定するようにさらに構成される、請求項12に記載の復号器。
【請求項14】
前記決定ユニットは、
前記対応するビットがすべて情報ビットである場合、前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定値に従って、前記対応するビットの前記復号結果を決定し、
前記対応するビット中に凍結ビットと情報ビットとが存在する場合、前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定基準値に従って、前記対応するビットの前記復号結果を決定するようにさらに構成される、請求項12に記載の復号器。
【請求項15】
前記決定ユニットは、
前記対応するビットがすべて情報ビットである場合、前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定値に従って、前記対応するビットの前記復号結果を決定し、
前記対応するビット中に凍結ビットと情報ビットとが存在する場合、前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定基準値に対して、ゲインの等しい組合せを実行して、前記対応するビットの前記復号結果を取得するようにさらに構成される、請求項12に記載の復号器。
【請求項16】
前記決定ユニットは、
前記対応するビットがすべて情報ビットである場合、前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定値に従って、前記対応するビットの前記復号結果を決定し、
前記対応するビット中に凍結ビットと情報ビットとが存在する場合、前記m個の第2のPolar符号の前記i番目のビットの前記判定基準値に従って、前記対応するビットの各組合せの尤度比関数値を取得し、最大の尤度比関数値を有する組合せを、前記対応するビットの前記復号結果として選択するようにさらに構成される、請求項12に記載の復号器。
【請求項17】
前記判定基準値が、尤度比、対数尤度比、または確率値である、請求項12から16のいずれか一項に記載の復号器。
【請求項18】
前記分割ユニットが、前記第1のPolar符号の受信された信号ベクトルをm個のセグメントに順次にかつ均等に分割するようにさらに構成され、
前記受信された信号ベクトルの各セグメントは、前記m個の第2のPolar符号を取得するために、前記m個の第2のPolar符号のうちの1つの第2のPolar符号の受信された信号ベクトルとして用いられる、請求項10から17のいずれか一項に記載の復号器。
【請求項19】
前記復号ユニットが、前記m個の第2のPolar符号に対して、逐次除去(SC)復号を別個に実行して、前記m個の第2のPolar符号の前記復号結果を取得するようにさらに構成される、請求項10から18のいずれか一項に記載の復号器。
【請求項20】
請求項1から9のいずれか一項に記載の復号方法をコンピュータデバイスに実行させる命令を格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年3月7日に中国特許庁に出願された「POLAR CODE DECODING METHOD AND DECODER」と題した中国特許出願第201310073607.8号に基づく優先権を主張するものであり、上記中国特許出願の全体が、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の実施態様は、符号化および復号の分野に関し、さらに詳しくは、Polar符号(polar code)の復号方法および復号器に関する。
【背景技術】
【0003】
データ伝送の信頼性を向上させ、通信品質を保証するために、通信システムにおいては、チャネル符号化が用いられるのが一般的である。Polar符号は、シャノン容量(Shannon capacity)と符号化および復号の複雑度の低下とへのアプローチを可能にする符号化方法である。Polar符号は、線形ブロック符号である。Polar符号の生成行列はGN.であり、Polar符号の符号化プロセスは、
【数1】
であり、ここで、
【数2】
であり、符号の長さN=2nであり、n≧0である。
【0004】
本明細書では、
【数3】
であり、BNは転置行列であって、たとえば、ビット反転(bit reversal)行列である。
【数4】
は、Fのクロネッカー累乗(Kronecker power)であり、
【数5】
のように定義される。Polar符号は、コセット符号を用いることによって、
【数6】
のように表され得る。Polar符号の符号化プロセスは、
【数7】
のようになり、ここで、Aは情報(information)ビットインデックスの集合であり、GN.(A)GN.における部分行列(submatrix)であり、集合Aにおけるインデックスに対応する直線から得られ、GN.(AC)GN.における部分行列であり、集合ACにおけるインデックスに対応する直線から得られる。
【数8】
は、凍結(frozen)ビットであり、これは、既知のビットであり、
【数9】
の量は(N-K)である。単純化のために、これらの凍結ビットは、0に設定され得る。
【0005】
逐次除去(successive-cancellation,SC)復号は、Polar符号の復号において用いられ得るが、復号プロセスは、以下の通りであり得る。
【0006】
Polar符号について考察すると、Polar符号のパラメータは、
【数10】
である。
【0007】
SC復号では、以下の条件付き尤度関数(conditional likelihood function)が、順次に計算される。
【0008】
【数11】
【0009】
ここで、
【数12】
は受信信号ベクトル(y1, y2, …, yN)であり、
【数13】
はビットベクトル(u1, u2, …, ui-1)である。Wは遷移確率(transition probability)であり、Lは対数尤度比(log-likelihood ratio)である。
【0010】
i⊂Aである場合には、以下の判断がなされる。
【0011】
【数14】
【0012】
i⊂ACである場合には、単純に、
【数15】
のように仮定される。
【0013】
上述の数式(2)および(3)では、
【数16】
は、ビットuiの判定値(decision value)を表す。
【0014】
SC復号の複雑度は、O(Nlog2N)である。符号の長さNが非常に長い場合には、SC復号は、よいパフォーマンスを達成し、シャノン限界(Shannon limit)にほぼ到達する。
【0015】
しかしながら、SC復号において、復号は、順次にビットごとにのみ、実行可能であり、各ビットが復号された後で硬判定(hard decision)がなされ、硬判定の結果が次のビットの復号に用いられるため、比較的低い柔軟性を有することになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の実施態様は、Polar符号の復号方法および復号器を提供し、これらは、Polar符号の復号スループットを向上させることが可能である。
【0017】
第1の態様によれば、Polar符号の復号方法が提供され、この方法は、復号器により、長さNを有する第1のPolar符号を、相互に結合されたm個の第2のPolar符号に分割するステップであって、各第2のPolar符号の長さがN/mであり、Nおよびmが2の整数乗であり、N>mである、ステップと、復号器により、m個の第2のPolar符号を別個に復号して、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するステップと、復号器により、m個の第2のPolar符号の復号結果に従って、第1のPolar符号の復号結果を取得するステップとを有する。
【0018】
第1の態様を参照する一実装方法では、m個の第2のPolar符号を別個に復号して、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するステップは、m個の第2のPolar符号を並列に復号して、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するステップを含む。
【0019】
第1の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、m個の第2のPolar符号を別個に復号して、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するステップは、各第2のPolar符号中のi番目のビットの判定基準値を取得するステップであって、iが正の整数であり、1≦i≦N/mである、ステップと、判定基準値に従って、i番目のビットを決定して、i番目のビットの判定値を取得するステップとを含み、m個の第2のPolar符号の復号結果に従って、第1のPolar符号の復号結果を取得するステップは、第1のPolar符号中に存在し、かつm個の第2のPolar符号のi番目のビットに対応するビットの性質に従って、第1のPolar符号中の対応するビットの復号結果を取得するステップを含む。
【0020】
第1の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、第1のPolar符号中に存在し、かつm個の第2のPolar符号のi番目のビットに対応するビットの性質に従って、第1のPolar符号中の対応するビットの復号結果を取得するステップは、対応するビットがすべて情報ビットである場合、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定値に従って、対応するビットの復号結果を決定するステップと、対応するビット中に凍結ビットと情報ビットとが存在する場合、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定値とi番目のビットの判定基準値とに従って、対応するビットの復号結果を決定するか、または、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に従って、対応するビットの復号結果を決定するステップとを含む。
【0021】
第1の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に従って、対応するビットの復号結果を決定するステップは、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に対して、ゲインの等しい組合せ(equal-gain combining)を実行して、対応するビットの復号結果を取得するステップを含む。
【0022】
第1の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に従って、対応するビットの復号結果を決定するステップは、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に従って、対応するビットの各組合せの尤度比関数値(likelihood ratio function value)を取得するステップと、最大の尤度比関数値を有する組合せを、対応するビットの復号結果として選択するステップとを含む。
【0023】
第1の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、判定基準値は、尤度比、対数尤度比、または確率値である。
【0024】
第1の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、長さNを有する第1のPolar符号を、相互に結合されたm個の第2のPolar符号に分割するステップは、第1のPolar符号の受信された信号ベクトルをm個のセグメントに順次にかつ均等に分割するステップを含み、受信された信号ベクトルの各セグメントは、m個の第2のPolar符号を決定するために、m個の第2のPolar符号のうちの1つの第2のPolar符号の受信された信号ベクトルとして用いられる。
【0025】
第1の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、m個の第2のPolar符号を別個に復号して、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するステップは、m個の第2のPolar符号に対して、逐次除去(SC)復号を別個に実行して、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するステップを含む。
【0026】
第2の態様によれば、Polar符号の復号器が提供され、この復号器は、長さNを有する第1のPolar符号を、相互に結合されたm個の第2のPolar符号に分割するように構成された分割ユニットであって、各第2のPolar符号の長さがN/mであり、Nおよびmが2の整数乗であり、N>mである、分割ユニットと、m個の第2のPolar符号を別個に復号して、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するように構成された復号ユニットと、m個の第2のPolar符号の復号結果に従って、第1のPolar符号の復号結果を取得するように構成された決定ユニットとを具備する。
【0027】
第2の態様を参照する一実装方法では、復号ユニットは、分割ユニットからm個の第2のPolar符号のうちの1つの第2のPolar符号をそれぞれ受け取り、m個の第2のPolar符号を並列に復号して、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するように構成されたm個の成分復号器を含む。
【0028】
第2の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、復号ユニットは、特に、各第2のPolar符号中のi番目のビットの判定基準値を取得し、判定基準値に従って、i番目のビットを決定して、i番目のビットの判定値を取得するように構成され、ここで、iは正の整数であり、1≦i≦N/mであり、決定ユニットは、特に、第1のPolar符号中に存在し、かつm個の第2のPolar符号のi番目のビットに対応するビットの性質に従って、第1のPolar符号中の対応するビットの復号結果を取得するように構成される。
【0029】
第2の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、決定ユニットは、特に、対応するビットがすべて情報ビットである場合、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定値に従って、対応するビットの復号結果を決定し、対応するビット中に凍結ビットと情報ビットとが存在する場合、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定値とi番目のビットの判定基準値とに従って、対応するビットの復号結果を決定するように構成される。
【0030】
第2の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、決定ユニットは、特に、対応するビットがすべて情報ビットである場合、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定値に従って、対応するビットの復号結果を決定し、対応するビットに凍結ビットと情報ビットとが存在する場合、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に従って、対応するビットの復号結果を決定するように構成される。
【0031】
第2の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、決定ユニットは、特に、対応するビットがすべて情報ビットである場合、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定値に従って、対応するビットの復号結果を決定し、対応するビットに凍結ビットと情報ビットとが存在する場合、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に対して、ゲインの等しい組合せを実行して、対応するビットの復号結果を取得するように構成される。
【0032】
第2の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、決定ユニットは、特に、対応するビットがすべて情報ビットである場合、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定値に従って、対応するビットの復号結果を決定し、対応するビットに凍結ビットと情報ビットとが存在する場合、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に従って、対応するビットの各組合せの尤度比関数値を取得し、最大の尤度比関数値を有する組合せを、対応するビットの復号結果として選択するように構成される。
【0033】
第2の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、判定基準値は、尤度比、対数尤度比、または確率値である。
【0034】
第2の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、分割ユニットは、特に、第1のPolar符号の受信された信号ベクトルをm個のセグメントに順次にかつ均等に分割するように構成され、受信された信号ベクトルの各セグメントは、m個の第2のPolar符号を取得するために、m個の第2のPolar符号のうちの1つの第2のPolar符号の受信された信号ベクトルとして用いられる。
【0035】
第2の態様と上述の実装方法とを参照する別の実装方法では、復号ユニットは、特に、m個の第2のPolar符号に対して、逐次除去(SC)復号を別個に実行して、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するように構成される。
【0036】
本発明の実施態様では、長さNを有する第1のPolar符号が、相互に結合されたPolar符号の複数のセグメントに分割され、分割されたPolar符号が、別個に復号され、別個の復号の結果が、一緒に処理されて、元のPolar符号の復号結果が取得され、このようにして、Nビットを順次に復号する必要性がなく、Polar符号の復号の柔軟性(flexibility)を向上させることが可能になる。
【0037】
本発明の実施態様における技術的解決についてより明瞭に説明するために、以下に、実施形態または従来技術を説明するために必要となる添付の図面を簡単に紹介する。当然ながら、以下の説明において、添付の図面は、単に、本発明のいくつかの実施形態を示しているに過ぎず、当業者であれば、創造的な労力なしに、依然として、これらの添付の図面から他の図面を導くことができ得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態によるPolar符号の復号方法の流れ図である。
図2】m=2の場合の復号プロセスの概略図である。
図3】m=4の場合の復号プロセスの概略図である。
図4】m=8の場合の復号プロセスの概略図である。
図5】本発明の一実施形態によるPolar符号の復号器のブロック図である。
図6】本発明の別の実施形態による装置の概略的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、本発明の実施形態における添付の図面を参照して、本発明の実施形態における技術的解決について明瞭かつ十分に説明される。当然ながら、説明がなされている実施形態は、本発明の実施形態のすべてではなく、その一部である。当業者によって本発明の実施形態に基づいて創造的な労力なしに得られるすべての他の実施形態は、本発明の保護範囲に属する。
【0040】
本発明の実施形態は、様々な通信システムに適用可能であり得る。したがって、以下の説明は、特定の通信システムに限定されることはない。モバイル通信のためのグローバルシステム(Global System of Mobile communication、「GSM(登録商標)」と略称される)、符号分割多重アクセス(Code Division Multiple Access、「CDMA」と略称される)システム、広帯域符号分割多重アクセス(Wideband Code Division Multiple Access、「WCDMA(登録商標)」と略称される)システム、一般パケット無線サービス(General Packet Radio Service、「GPRS」と略称される)システム、ロングタームエボリューション(Long Term Evolution、「LTE」と略称される)システム、LTE周波数分割複信(Frequency Division Duplex、「FDD」と略称される)システム、LTE時分割複信(Time Division Duplex、「TDD」と略称される)、ユニバーサルモバイル通信システム(Universal Mobile Telecommunication System、「UMTS」と略称される)などがある。上述したシステムにおける基地局または端末のために、従来のターボ符号またはLDPC符号を用いて符号化される情報またはデータは、すべて、実施形態におけるPolar符号を用いて符号化され得る。
【0041】
図1は、本発明の実施形態によるPolar符号の復号方法の流れ図である。図1における方法は、Polar符号の復号器によって実行され得る。この復号器は、Polar符号受信デバイスに配置され得、たとえば、受信デバイスにおけるプロセッサによって実装されるか、または、受信デバイスにおける専用のPolar復号器によって実装される。
【0042】
ステップ101において、復号器は、長さNを有する第1のPolar符号を、相互に結合されたm個の第2のPolar符号に分割する。ここで、各第2のPolar符号の長さはN/mであり、Nおよびmは2の整数乗であり、N>mである。
【0043】
Polar符号の長さとは、そのPolar符号に含まれるビット数を指す。第1のPolar符号とは、復号される必要がある元のPolar符号であり、第1のPolar符号の入力は受信信号ベクトル、すなわち、
【数17】
である。
【0044】
Polar符号は、内部再帰構造(inner recursive structure)を有し、より短い長さを有する複数の相互に結合されたPolar符号に分割され得る。選択的に、別の実施形態では、第1のPolar符号の受信信号ベクトルは、m個のセグメントに順次にかつおよび均等に分割され得るのであって、受信信号ベクトルの各セグメントは、第2のPolar符号の受信信号ベクトルとして用いられる。
【0045】
上述したように、m=2である場合が例として用いられ、以下のようになる。
【0046】
【数18】
【0047】
したがって、Polar符号を符号化するプロセスは、以下のように表され得る。
【0048】
【数19】
【0049】
したがって、長さNを有するPolar符号は、以下の形式で表され得る。
【0050】
【数20】
【0051】
したがって、長さNを有するPolar符号は、長さN/2を有する相互に結合された2つのPolar符号に、すなわち、上述した第2のPolar符号に分割され得る。換言すれば、長さN/2をそれぞれが有する2つの第2のPolar符号が、以下のように取得され得る。
【0052】
【数21】
【0053】
この場合には、ステップ101において、第1のPolar符号の受信信号ベクトルである
【数22】
が、第2のPolar符号の2つの受信信号ベクトルである
【数23】

【数24】
とに分割される。
【0054】
同様にして、m=4である場合が例として用いられ、長さNを有するPolar符号は、以下のように表され得る。
【0055】
【数25】
【0056】
【数26】
と、仮定される。
【0057】
したがって、4つの第2のPolar符号が、以下のように取得され得る。
【0058】
【数27】
【0059】
この場合には、ステップ101において、第1のPolar符号の受信信号ベクトルである
【数28】
が、第2のPolar符号の4つの受信信号ベクトルである
【数29】
に分割される。
【0060】
同様にして、m=8である場合が例として用いられ、長さNを有するPolar符号が以下のように表され得る。
【0061】
【数30】
【0062】
そして、
【数31】
であると仮定される。
【0063】
したがって、8つの第2のPolar符号が、以下のように取得され得る。
【0064】
【数32】
【0065】
この場合には、ステップ101において、第1のPolar符号の受信信号ベクトルである
【数33】
が、第2のPolar符号の8つの受信信号ベクトルである
【数34】
に分割される。
【0066】
mの別の値に対しても、m個の第2のPolar符号が、同様にして取得され得、詳細について本明細書で説明することは割愛する。さらに、本発明のこの実施形態は、Polar符号の分割方法についていかなる限定も設定することがない。順次かつ均等な分割に加えて、分割されたPolar符号の間の相互結合が保証される限り、分割のために別の方法も用いられ得る。
【0067】
ステップ102において、復号器は、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するために、m個の第2のPolar符号を別個に復号する。
【0068】
各第2のPolar符号は、第1のPolar符号の長さよりも短い長さを有するPolar符号であり、m個の復号結果を取得するために別個に復号され得、たとえば、m=2の場合には(ai, bi)が取得され、m=4の場合には(ai, bi, ci, di)が取得され、m=8の場合には(ai, bi, ci, di, ei, fi, gi, hi)が取得される。ここで、iは正の整数であり、1≦i≦N/mである。各第2のPolar符号の復号結果はN/m個の復号ビットを含むということを知ることが可能である。
【0069】
選択的に、ステップ102における復号は、SC復号であり得る。すなわち、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するために、m個の第2のPolar符号に対して、SC復号を別個に実行することができる。たとえば、各第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値(たとえば、尤度比、対数尤度比、または確率値)が取得され得、ここで、iは正の整数であり、1≦i≦N/mであり、i番目のビットは、そのi番目のビットの判定値を取得するために、その判定基準値に従って、決定される。判定基準値を取得し、i番目のビットを決定する以上のプロセスは、1からN/mまでの範囲のiについて順次に実行され、第2のPolar符号の復号結果が取得され得る。
【0070】
ステップ103において、復号器は、m個の第2のPolar符号の復号結果に従って、第1のPolar符号の復号結果を取得する。
【0071】
第1のPolar符号の復号結果は、第2のPolar符号と第1のPolar符号とにおけるビットの間の対応に従って、第2のPolar符号の復号結果から取得され得る。特定の実施形態を参照して、以下では、第1のPolar符号の復号結果を取得する例示的なプロセスがより詳細に説明される。
【0072】
本発明のこの実施形態では、長さNを有するPolar符号が、相互に結合されたPolar符号の複数のセグメントに分割され、分割されたPolar符号が別個に復号され、別個の復号の結果は、一緒に処理されて、元のPolar符号の復号結果が取得され、このようにして、Nビットを順次に復号する必要性は存在しないことになり、Polar符号の復号の柔軟性を向上させることが可能になる。
【0073】
さらに、本発明のこの実施形態では、長さN/mしか有さない復号器が要求され、単一の復号器によって占有されるリソースと計算複雑度とを低減させることができ、したがって、この実施形態は、リソースが限定されているシナリオにも、柔軟に適用することができる。
【0074】
選択的に、一実施形態では、ステップ102において、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するために、m個の第2のPolar符号が並列に復号され得る。たとえば、長さN/mを有するm個の復号器が、m個の第2のPolar符号を同時に復号するために用いられ得る。このようにして、復号スループットを向上させ、遅延を短縮させることが、可能である。
【0075】
しかしながら、本発明のこの実施形態は、ステップ102の実行方法に何らの限定も課すことがない。たとえば、m個の第2のPolar符号は、直列に復号される場合もあり得る。たとえば、長さN/mを有するある復号器を、m個の第2のPolar符号を順次に復号するために用い得る。あるいは、たとえば、復号が、一部を並列に、一部を直列に、実行されることもあり得る。たとえば、m=4の場合には、長さN/mを有する2つの復号器が、2つの第2のPolar符号を直列に別々に復号するために用いられ得る。このようにして、第2のPolar符号を復号する方法は、システムのリソース条件と復号効率のための要件とに従って、柔軟に選択することが可能である。
【0076】
本発明のこの実施形態における復号器は、たとえば、専用のチップ、集積回路、もしくは別のファームウェアなど専用のハードウェアによって全体が実装されることがあり得るし、または、汎用プロセッサとその汎用プロセッサの命令とによって実装される場合もあり得ることに注意すべきであり、なお、ここでの命令は、プロセッサまたはスタンドアロンのメモリに記憶され得る。これらの形式は、すべてが、本発明のこの実施形態の範囲に属する。
【0077】
選択的に、別の実施形態では、ステップ103において、第1のPolar符号中に存在し、かつm個の第2のPolar符号のi番目のビットに対応するビットの性質に従って、第1のPolar符号における対応するビットの復号結果が取得され得る。
【0078】
対応するビットとは、第1のPolar符号における、第2のPolar符号のi番目のビットの元の位置を指す。入力ビットは、説明のための例として用いられており、第1のPolar符号の入力ビットは、
【数35】
のように表されると仮定される。たとえば、m=2である上述の場合には、第1のPolar符号の入力ビットは、
【数36】
のように表され、2つの第2のPolar符号の入力ビットは、それぞれ
【数37】
であり、よって、第1のPolar符号中に存在し、かつaiに対応するビットは、viであり、第1のPolar符号中に存在し、かつbiに対応するビットは、vi+N/2である。対応するビットは、情報ビットまたは凍結ビットであり得る。
【0079】
選択的に、別の実施形態では、第1のPolar符号における対応するビットの復号結果が、第1のPolar符号中に存在し、かつm個の第2のPolar符号のi番目のビットに対応するビットの性質(すなわち、対応するビットが凍結ビットであるのか、または、情報ビットであるのか)に従って取得されるときには、対応するビットの復号結果は、以下のようにして決定され得る。対応するビットがすべて情報ビットであるときには、対応するビットの復号結果は、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定値に従って、決定される。対応するビットに凍結ビットと情報ビットとが存在するときには、対応するビットの復号結果は、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に従って、または、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に従って、決定される。
【0080】
選択的に、別の実施形態では、対応するビットの復号結果がm個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に従って決定されるときには、対応するビットの復号結果を取得するために、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に対して、ゲインの等しい組合せが実行され得る。
【0081】
選択的に、別の実施形態では、対応するビットの復号結果がm個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に従って決定されるときには、対応するビットの各組合せの尤度比関数値が、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に従って取得され得、最大の尤度比関数値を有する組合せが、対応するビットの復号結果として選択される。
【0082】
特定の例を参照して、以下では、本発明のこの実施形態における復号プロセスについてより詳細に説明する。図2は、m=2である場合における復号プロセスの概略図である。
【0083】
第1に、長さNを有するPolar符号が、長さN/2を有する2つのPolar符号に、すなわち、前者の半分の受信信号ベクトルである
【数38】
と後者の半分の受信信号ベクトルである
【数39】
とに分割される。対応する入力ビットは、以下を満たす。
【0084】
【数40】
【0085】
SC復号が、長さN/2を有する2つのPolar符号に対して、別々に実行され得る。SC復号は、長さN/2を有する第1のPolar符号に対して実行され、再帰的な計算が以下のように、順次に実行される。
【0086】
【数41】
【0087】
SC復号は、長さN/2を有する第2のPolar符号に対して実行され、再帰的な計算が以下のように、順次に実行される。
【0088】
【数42】
【0089】
さらに、判定値である
【数43】
が以下のように、別々に取得される。
【0090】
【数44】
【0091】
次に、以上の復号結果に従って、以下の処理が一緒に実行される。
【0092】
viとvN/2+iとが共に情報ビットである場合には、aiとbiとは相互に独立であり、したがって以下のように、決定が別個になされる。
【0093】
【数45】
【0094】
凍結ビットがviおよびvN/2+iに存在する場合には、特に、Polar符号の定義により、viは凍結ビットであり、vN/2+iは情報ビットであり、ai=bi=vN/2+iであり、情報ビットの判定値は、以下のLLRのゲインの等しい組合せ(LLR equal-gain combining)によって取得され得る。
【0095】
【数46】
【0096】
凍結ビットは固定値であり、たとえば0である。
【0097】
【数47】
が取得された後で、元のPolar符号の復号結果である
【数48】
を取得するために、位置置換が実行され得る。
【0098】
図2の実施形態では、2つの第2のPolar符号が並列に復号され、このようにして、復号スループットの向上と遅延の短縮とが可能である。
【0099】
図3は、m=4である場合における復号プロセスの概略図である。
【0100】
第1に、長さNを有するPolar符号が、長さN/4を有する4つのPolar符号に、すなわち、4つの受信信号ベクトル
【数49】
に分割される。対応する入力ビットは、以下を満たす。
【0101】
【数50】
【0102】
以下が取得され得る。
【0103】
【数51】
【0104】
4つの成分復号器(長さN/4を有するSC復号器)が、それぞれ、
【数52】
を入力として用いる。これらの4つの成分復号器は、それぞれ、独立に、対数尤度比
【数53】
を計算し、判定値、すなわち
【数54】
が取得され得る。
【0105】
尤度比関数が、
Q(vi, vi+N/4, vi+N/2, vi+3N/4)=(1-2ai)L(ai)+(1-2bi)L(bi)+(1-2ci)L(ci)+(1-2di)L(di)
と定義されると、最大のQの値を有する組合せ(vi, vi+N/4, vi+N/2, vi+3N/4)が、以下の復号結果として選択され得る。
【0106】
【数55】
【0107】
(vi, vi+N/4, vi+N/2, vi+3N/4)がすべて情報ビットである場合には、上述した決定は、(ai, bi, ci, di)を別個に決定し、
【数56】
を用いて、
【数57】
を取得することとして単純化され得る。
【0108】
【数58】
が取得された後では、元のPolar符号の復号結果である
【数59】
を取得するために、位置置換が実行され得る。
【0109】
図3の実施形態では、4つの第2のPolar符号が並列に復号され、このようにして、復号スループットを向上させることが可能になり、遅延が短縮される。
【0110】
図4は、m=8である場合における復号プロセスの概略図である。
【0111】
第1に、長さNを有するPolar符号が、長さN/8を有する8つのPolar符号に、すなわち、4つの受信信号ベクトル
【数60】
に分割される。対応する入力ビットは、以下を満たす。
【0112】
【数61】
【0113】
8つの成分復号器(長さN/8を有するSC復号器)が、それぞれ、
【数62】
を入力として用いる。これらの8つの成分復号器は、それぞれ、独立に、対数尤度比
【数63】
を計算し、判定値、すなわち
【数64】
が取得され得る。
【0114】
尤度比関数が、
Q(vi, vi+N/8, vi+2N/8, …, vi+7N/8)=(1-2ai)L(ai)+(1-2bi)L(bi)+(1-2ci)L(ci)+…+(1-2hi)L(hi)
と定義される。
【0115】
以下が取得され得る。
【0116】
【数65】
【0117】
(vi, vi+N/8, vi+2N/8, vi+3N/8, vi+4N/8, vi+5N/8, vi+6N/8, vi+7N/8)がすべて情報ビットである場合には、上述した決定は、(ai, bi, ci, di, ei, fi, gi, hi)を別個に決定して、
【数66】
を取得することとして単純化され得る。
【0118】
【数67】
が取得された後で、元のPolar符号の復号結果である
【数68】
を取得するために、位置変換が実行され得る。
【0119】
図4の実施形態においては、8つの第2のPolar符号が並列に復号され、このようにして、復号スループットを向上させ、遅延を短縮させることが可能になる。
【0120】
mの別の値に対しても、分割と別個の復号とが同様に実行され得、本明細書において詳細を再び説明することは割愛する。
【0121】
Nおよびmの異なる値の場合をエミュレーション結果に従って比較すると、本発明のこの実施形態における並列SC復号のパフォーマンスは、従来のSC復号のパフォーマンスと同様であるが、遅延が短縮され、復号スループットが向上していることを見いだし得る。
【0122】
図5は、本発明の一実施形態によるPolar符号の復号器のブロック図である。図5における復号器50は、分割ユニット51と、復号ユニット52と、決定ユニット53とを含む。
【0123】
分割ユニット51は、長さNを有する第1のPolar符号を、相互に結合されたm個の第2のPolar符号に分割し、ここで、各第2のPolar符号の長さはN/mであり、Nおよびmは2の整数乗であり、N>mである。
【0124】
復号ユニット52は、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するために、m個の第2のPolar符号を別個に復号する。
【0125】
決定ユニット53は、m個の第2のPolar符号の復号結果に従って、第1のPolar符号の復号結果を取得する。
【0126】
本発明の実施形態では、長さNを有するPolar符号が、相互に結合されたPolar符号の複数のセグメントに分割され、分割されたPolar符号が、別個に復号され、別個の復号の結果が、一緒に処理されて、元のPolar符号の復号結果が取得され、このようにして、Nビットを順次に復号する必要性がなく、Polar符号の復号の柔軟性を向上させることが可能になる。
【0127】
さらに、本発明のこの実施形態では、長さN/mしか有さない復号器が要求され、単一の復号器によって占有されるリソースと計算複雑度とを低減させることができ、したがって、この実施形態は、リソースが限定されているシナリオにも柔軟に適用され得る。
【0128】
選択的に、一実施形態では、復号ユニット52は、たとえば図2から図4に示されているSC復号器など、m個の成分復号器を含み得る。これらの成分復号器は、分割ユニット51からm個の第2のPolar符号のうちの1つの第2のPolar符号を別々に受け取り、m個の第2のPolar符号の復号結果を取得するために、m個の第2のPolar符号を並列に復号するように構成されている。このようにして、復号スループットを向上させ、遅延を短縮させることが、可能である。
【0129】
しかしながら、本発明のこの実施形態は、復号ユニット52に含まれる成分復号器の個数に何らの限定を課すことがない。たとえば、復号ユニット52は、復号の長さN/mを有しm個の第2のPolar符号を直列に復号するただ1つの成分復号器を含むことがあり得る。あるいは、たとえば、復号ユニット52は、復号の長さN/mを有し、その個数がm個未満であり、一部を並列に一部を直列に復号を実行する成分復号器を含み得る。たとえば、m=4の場合には、長さN/mを有する2つの復号器が、2つの第2のPolar符号を直列に別々に復号するために用いられ得る。このようにして、第2のPolar符号を復号する方法は、システムのリソース条件と復号効率のための要件とに従って、柔軟に選択することが可能である。
【0130】
本発明のこの実施形態における復号器は、たとえば、専用のチップ、集積回路、もしくは別のファームウェアなど専用のハードウェアによって全体が実装されることがあり得るし、または、汎用プロセッサとその汎用プロセッサの命令とによって実装される場合もあり得ることに注意すべきであり、なお、ここでの命令は、プロセッサまたはスタンドアロンのメモリに記憶され得る。これらの形式は、すべてが、本発明のこの実施形態の範囲に属する。
【0131】
選択的に、別の実施形態では、決定ユニット53は、各第2のPolar符号におけるi番目のビットの判定基準値を取得し、ここで、iは正の整数であり、1≦i≦N/mであり、i番目のビットの判定値を取得するために、その判定基準値に従って、i番目のビットを決定し得る。
【0132】
選択的に、別の実施形態では、決定ユニット53は、第1のPolar符号中に存在し、かつm個の第2のPolar符号のi番目のビットに対応するビットの性質に従って、第1のPolar符号における対応するビットの復号結果を取得する。
【0133】
選択的に、別の実施形態では、対応するビットがすべて情報ビットであるときには、決定ユニット53は、たとえば、図2から図4における上述の実施形態のような、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定値に従って、対応するビットの復号結果を決定し得る。
【0134】
あるいは、対応するビットに凍結ビットと情報ビットとが存在するときには、決定ユニット53は、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定値とそのi番目のビットの判定基準値(たとえば、図3および図4の上述した実施形態)とに従って、または、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値(たとえば、図2の上述した実施形態)に従って、対応するビットの復号結果を決定し得る。
【0135】
選択的に、別の実施形態では、決定ユニット53は、対応するビットの復号結果を取得するために、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定基準値に対して、ゲインの等しい組合せを実行し得る。
【0136】
選択的に、別の実施形態では、決定ユニット53は、m個の第2のPolar符号のi番目のビットの判定値とそのi番目の値の判定基準値とに従って、対応するビットの各組合せの尤度比関数(たとえば、図3および図4で上述した実施形態におけるQ)値を取得し、対応するビットの復号結果として、最大の尤度比関数値を有する組合せを選択し得る。
【0137】
選択的に、別の実施形態では、判定基準値は、尤度比、対数尤度比、または確率値であり得る。
【0138】
選択的に、別の実施形態では、分割ユニット51は、第1のPolar符号の受信信号ベクトルを、順次かつ均等に、m個のセグメントに分割し得、受信信号ベクトルの各セグメントは、第2のPolar符号として用いられる。
【0139】
選択的に、別の実施形態では、復号ユニット52は、m個のPolar符号の復号結果を取得するために、m個の第2のPolar符号に対して、SC復号を別個に実行し得る。
【0140】
図6は、本発明の別の実施形態による装置の概略的なブロック図である。図6の装置60は、上述の方法の実施形態におけるステップおよび方法を実装するために用いられ得る。装置60は、様々な通信システムにおける基地局または端末に適用され得る。図6の実施形態では、装置60は、送信回路602と、受信回路603と、復号プロセッサ604と、処理ユニット605と、メモリ606と、アンテナ601とを含む。処理ユニット605は、装置60の動作を制御し、信号を処理するように構成され得る。また、処理ユニット605は、中央処理装置(Central Processing Unit,CPU)とも称され得る。メモリ606は、リードオンリメモリとランダムアクセスメモリとを含み得、命令とデータとを処理ユニット605に提供する。メモリ606の一部は、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)をさらに含み得る。特定の応用例では、装置60が携帯電話などのワイヤレス通信デバイスの中に組み込まれている場合があり得、または、装置60それ自体が携帯電話などのワイヤレス通信デバイスであり得、装置60は、装置60と遠隔地との間でのデータの送受信が可能になるように、送信回路602と受信回路603とを収容するキャリアをさらに含み得る。送信回路602と受信回路603とは、アンテナ601に結合され得る。装置60のコンポーネントは、バスシステム609を経由して相互に結合され、バスシステム609は、データバスに加えて、電力バス、制御バス、および状態信号バスをさらに含む。しかしながら、記載を明瞭にするため、様々なバスが、図面においては、バスシステム609として記されている。
【0141】
本発明の以上の実施形態に開示されている方法は、復号プロセッサ604において適用され得るか、または、復号プロセッサ604によって実装され得る。復号プロセッサ604は、集積回路チップであり得、信号処理能力を有する。実装プロセスでは、以上の方法におけるステップが、復号プロセッサ604におけるハードウェアの集積論理回路またはソフトウェアの形式の命令を用いることによって、実装され得る。これらの命令は、処理ユニット605と共に機能することによって、実装および制御され得る。本発明の実施形態において開示されている方法を実行するように構成されている上述した復号プロセッサは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくは別のプログラマブルな論理デバイス、離散ゲートもしくはトランジスタ論理デバイス、または離散ハードウェアコンポーネントであり得る。本発明の実施形態において開示されている方法、ステップ、および論理ブロック図は、実装され得るまたは実行され得る。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであり得、または、このプロセッサは、任意の従来型のプロセッサ、復号器などでもあり得る。本発明の実施形態に開示されている方法のステップは、ハードウェア復号プロセッサによって、または、復号プロセッサにおけるハードウェアおよびソフトウェアモジュールの組合せによって、直接に実行され得る。ソフトウェアモジュールは、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ、リードオンリメモリ、プログラマブルリードオンリメモリ、電気的に消去可能なプログラマブルメモリまたはレジスタなど、この分野において完成状態にある記憶媒体に配置され得る。記憶媒体はメモリ606に配置され、復号プロセッサ604は、メモリ606から情報を読み出し、ハードウェアとの組合せにおいて、上述した方法のステップを完成させる。
【0142】
特に、メモリ606は、復号プロセッサ604または処理ユニット605が以下のプロセスを実行することを可能にする命令を記憶し得る。すなわち、長さNを有する第1のPolar符号が、相互に結合されたm個の第2のPolar符号に分割され、ここで、各第2のPolar符号の長さはN/mであり、Nおよびmは2の整数乗であり、N>mであり、m個の第2のPolar符号が別個に復号されて、m個の第2のPolar符号の復号結果が取得され、m個の第2のPolar符号の復号結果に従って、第1のPolar符号の復号結果が取得される。
【0143】
本発明の実施形態では、長さNを有するPolar符号が、相互に結合されたPolar符号の複数のセグメントに分割され、分割されたPolar符号が、別個に復号され、別個の復号の結果が、一緒に処理されて、元のPolar符号の復号結果が取得され、このようにして、Nビットを順次に復号する必要性がなく、Polar符号の復号の柔軟性を向上させることが可能になる。
【0144】
本明細書に開示されている実施形態において説明された例との組合せにおいて、ユニットとアルゴリズムステップとは、電子ハードウェアによって、または、コンピュータソフトウェアと電子ハードウェアとの組合せによって、実装され得ることを、当業者は認識し得る。機能がハードウェアによって実行されるかまたはソフトウェアによって実行されるかは、技術的解決の特定の応用例と設計上の制約条件とに左右される。当業者であれば、説明された機能を各特定の応用例のために実装するために、異なる方法を用い得、その実装が本発明の範囲を逸脱するとは考えるべきでない。
【0145】
便宜上および説明を簡潔にする目的のために、上述したシステム、装置、およびユニットの詳細な作業プロセスについては、以上の方法の実施形態における対応するプロセスを参照することが可能であり、詳細については本明細書において再び説明されないということを、当業者は明確に理解し得る。
【0146】
本出願において提供されている複数の実施形態においては、開示されているシステム、装置、および方法は、別の方法で実装され得るということが理解されるべきである。たとえば、説明されている装置の実施形態は、単に例示的なものである。たとえば、ユニットの分割は単なる論理的機能の分割であり、実際の実装例では別の分割でもかまわない。たとえば、複数のユニットまたはコンポーネントを組み合わせたり、もしくは別のシステムと一体化したり、またはいくつかの特徴を無視したり、もしくは実行しなかったりということもあり得る。さらに、表示されているまたは論じられている相互結合、直接結合、または通信接続は、いくつかのインターフェースを介して実装され得る。装置またはユニットの間の間接結合または通信接続は、電子的、機械的、またはそれ以外の形式で実装され得る。
【0147】
別々の部分として説明されたユニットは、物理的に別である場合もまたは物理的に別でない場合もあり得、ユニットとして表示されている部分は、物理的ユニットである場合もまたは物理的ユニットではない場合もあり得、1つの位置に配置されている場合も、または、複数のネットワークユニット上に分散されている場合もあり得る。ユニットの一部または全部が、実施形態の解決の目的を達成するための実際的な必要に従って、選択され得る。
【0148】
さらに、本発明の実施形態における機能ユニットは、1つの処理ユニットの中に一体化される場合があり、ユニットのそれぞれが物理的に単独で存在している場合があり、または、2つ以上のユニットが1つのユニットの中に一体化されている場合がある。
【0149】
機能がソフトウェア機能ユニットの形式で実装されており、独立した製品として販売または使用されるときには、これらの機能は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納され得る。そのような理解に基づくならば、本発明の技術的解決は、本質的に、または、従来技術に貢献する部分もしくは技術的解決という部分は、ソフトウェア製品という形式で、実装され得る。ソフトウェア製品は記憶媒体に記憶されており、コンピュータデバイス(パーソナルコンピュータ、サーバ、またはネットワークデバイスであり得る)に、本発明の実施形態において説明された方法のステップの全部または一部を実行させるように命じる複数の命令を含む。以上の記憶媒体は、USBフラッシュデバイス、取り外し可能なハードディスク、リードオンリメモリ(Read-Only Memory,ROM)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory,RAM)、磁気ディスク、または光ディスクなど、プログラムコードを記憶することができる任意の媒体を含む。
【0150】
以上の説明は、本発明の特定の実装方法に過ぎず、本発明の保護範囲を限定することは意図されていない。本発明として開示されている技術範囲の当業者によって容易に想到されるどのような変更または置き換えも、本発明の保護範囲に属するものとする。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。
【符号の説明】
【0151】
50 復号器
51 分割ユニット
52 復号ユニット
53 決定ユニット
60 装置
601 アンテナ
602 送信回路
603 受信回路
604 復号プロセッサ
605 処理ユニット
606 メモリ
609 バスシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6