特許第6075826号(P6075826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075826
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】位相差層付偏光板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20170130BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20170130BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
   G02F1/13363
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-118307(P2012-118307)
(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公開番号】特開2013-11871(P2013-11871A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2015年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-119858(P2011-119858)
(32)【優先日】2011年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】朝永 政俊
(72)【発明者】
【氏名】永野 忍
(72)【発明者】
【氏名】尾込 大介
(72)【発明者】
【氏名】済木 雄二
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−084413(JP,A)
【文献】 特開2005−041044(JP,A)
【文献】 特開2009−193014(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/049326(WO,A2)
【文献】 国際公開第2010/100917(WO,A1)
【文献】 特開2009−093074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
G02F 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み10μm以下の偏光膜と、該偏光膜の片側に配置された位相差層とを有し、該位相差層が、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を所定のパターンで有する、位相差層付偏光板の製造方法であって、
ポリエチレンテレフタレート系樹脂を含んで構成された熱可塑性樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層体を作製し、該積層体を95℃以上で空中延伸した後、該積層体をホウ酸水溶液中で水中延伸することにより、前記偏光膜を得る工程を含む、
位相差層付偏光板の製造方法。
【請求項2】
前記位相差層の面内位相差Re(590)が、90nm〜190nmである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記位相差層の前記所定パターンが、異なる方向に遅相軸を有する2つの領域が交互に配置されたストライプ状である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記異なる方向に遅相軸を有する2つの領域が、それぞれ、液晶セルの1ラインに対応する、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記偏光膜の単体透過率が42.0%以上であり、偏光度が99.9%以上である、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差層付偏光板に関する。より詳細には、本発明は、パターン化された位相差層を有する位相差層付偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体(3次元)画像表示に関する技術について、数多くの研究がなされ実用化されている。立体表示の基本原理は、観測者の左右の眼に異なる画像を提供することによるものである。立体画像表示に関する技術としては、代表的には、観測者に特殊な眼鏡等を装着させる眼鏡方式と、眼鏡等を装着しない裸眼方式とが挙げられる。眼鏡方式においては、左目用の映像と右目用の映像を交互に切り換えて出力する時分割方式と、液晶セルの1ライン毎に偏光方向の異なる左右の映像を出力する空間分割方式とがある。空間分割方式においては、液晶セルの1ライン毎に偏光方向の異なる左右の映像を出力するために、液晶セルの1ライン毎に対応したパターン状の位相差を発現させる必要がある。パターン状の位相差を発現させる手段としては、遅相軸方向が異なる領域をパターン状に有する位相差板(パターンリターダー)が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記のようなパターンリターダーは、通常、立体(3次元)画像表示用液晶表示装置において、視認側偏光板のさらに視認側に配置される。しかし、加熱や加湿等の条件下において、クロストークが発生するという問題が生じ得る(特に、パターンリターダーの機能を、視認側偏光板の視認側保護層に付与させた場合)。なお、クロストークとは、左右の画像のそれぞれが他方の画像に混入することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3372016号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、立体画像表示のクロストークを低減し得る位相差層付偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の位相差層付偏光板は、厚み10μm以下の偏光膜と、該偏光膜の片側に配置された位相差層とを有し、該位相差層が、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を所定のパターンで有する。
好ましい実施形態においては、上記位相差層の面内位相差Re(590)が、90nm〜190nmである。
好ましい実施形態においては、上記位相差層の上記所定パターンが、異なる方向に遅相軸を有する2つの領域が交互に配置されたストライプ状である。
好ましい実施形態においては、上記異なる方向に遅相軸を有する2つの領域が、それぞれ、液晶セルの1ラインに対応する。
好ましい実施形態においては、上記偏光膜の単体透過率が42.0%以上であり、偏光度が99.9%以上である。
好ましい実施形態においては、上記偏光膜が、熱可塑性樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層体を作製し、該積層体をホウ酸水溶液中で水中延伸することにより得られる。
好ましい実施形態においては、上記偏光膜が、熱可塑性樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層体を作製し、該積層体を95℃以上で空中延伸した後、該積層体をホウ酸水溶液中で水中延伸することにより得られる。
本発明の別の局面によれば、液晶パネルが提供される。この液晶パネルは、上記位相差層付偏光板を有する。
本発明の別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、上記液晶パネルを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、厚み10μm以下の偏光膜とパターン化された位相差層とを組み合わせることにより、立体画像表示のクロストークを低減し得る位相差層付偏光板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の好ましい実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。
図2】本発明の別の好ましい実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。
図3】好ましい実施形態による積層体の概略断面図である。
図4】本発明の好ましい実施形態による位相差層付偏光板における偏光膜の製造方法の一例を示す概略図である。
図5】本発明の好ましい実施形態による位相差層付偏光板における位相差層のパターンの一例を示す概略平面図である。
図6】各実施例および比較例のクロストーク率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
面内位相差(Re)は、23℃、特に明記しなければ波長590nmにおける層(フィルム)の面内位相差値をいう。Reは、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、Re=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
厚み方向の位相差(Rth)は、23℃、特に明記しなければ波長590nmにおける層(フィルム)の厚み方向の位相差値をいう。Rthは、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、Rth=(nx−nz)×dによって求められる。
【0011】
A.位相差層付偏光板
図1は、本発明の好ましい実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。位相差層付偏光板200は、偏光膜20と、偏光膜20の片側(代表的には、視認側)に配置された位相差層30と、偏光膜20のもう片側に配置された保護層41と、偏光膜20と位相差層30との間に配置された保護層42とを有する。位相差層30は、接着層60を介して保護層42に積層されている。保護層41の偏光膜20が配置されていない側には、接着層50が設けられている。代表的には、位相差層付偏光板200は、その接着層50が貼り合わされて、液晶セル(代表的には、視認側)に積層される。
【0012】
図2は、本発明の別の好ましい実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。位相差層付偏光板300は、偏光膜20と、偏光膜20の片側(代表的には、視認側)に配置された位相差層30と、偏光膜20のもう片側に配置された保護層41とを有する。保護層41の偏光膜20が配置されていない側には、接着層50が設けられている。代表的には、位相差層付偏光板300は、その接着層50が貼り合わされて、液晶セル(代表的には、視認側)に積層される。位相差層30は、偏光膜20の保護層として機能し得る。
【0013】
B.偏光膜
上記偏光膜は、代表的には、二色性物質(好ましくは、ヨウ素)が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂膜である。
【0014】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、任意の適切な樹脂を採用し得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85モル%〜100モル%であり、好ましくは95.0モル%〜99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のポリビニルアルコール系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光膜が得られ得る。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0015】
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択し得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜4500、さらに好ましくは1500〜4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0016】
偏光膜の厚みは、好ましくは15μm未満、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。一方、偏光膜の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.5μm以上である。このような偏光膜を用いることにより、クロストークを良好に低減することができる。図2に示すように、位相差層が偏光膜の保護層として機能し得る場合(パターンリターダーの機能を保護層に付与させた場合)においても、クロストークを良好に低減することができる。具体的には、このような偏光膜は、加熱や加湿等の条件下における寸法変化(収縮)が小さく、偏光膜の寸法変化が位相差層へ与える影響(例えば、位相差層の寸法変化)を低減することができる。その結果、パターン化された位相差層(パターンリターダー)のパターンと液晶セルのラインが対応しなくなってクロストークが発生するという問題を改善することができる。
【0017】
偏光膜は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光膜の単体透過率は、好ましくは40.0%以上、より好ましくは41.0%以上、さらに好ましくは42.0%以上、特に好ましくは42.3%以上である。偏光膜の偏光度は、好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0018】
上記偏光膜の製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂膜に、染色、架橋、延伸、乾燥等の処理を、適宜施すことにより製造される。
【0019】
好ましい実施形態においては、偏光膜は、熱可塑性樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層(膜)を形成して積層体を作製し(工程A)、この積層体をホウ酸水溶液中で水中延伸する(工程B)ことにより製造される。このような実施形態によれば、厚みが薄く(例えば、10μm以下)、かつ、優れた光学特性(例えば、単体透過率が42.0%以上、偏光度が99.9%以上)を有する偏光膜を良好に製造し得る。以下、本実施形態について説明する。
【0020】
(工程A)
上記工程Aでは、積層体を作製する。図3は、好ましい実施形態による積層体の概略断面図である。積層体10は、熱可塑性樹脂基材11とポリビニルアルコール系樹脂層12とを有し、熱可塑性樹脂基材11上にポリビニルアルコール系樹脂層12を形成することにより作製される。ポリビニルアルコール系樹脂層12の形成方法は、任意の適切な方法を採用し得る。好ましくは、熱可塑性樹脂基材11上に、ポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥することにより、ポリビニルアルコール系樹脂層12を形成する。
【0021】
上記熱可塑性樹脂基材の構成材料は、任意の適切な材料を採用し得る。熱可塑性樹脂基材の構成材料としては、非晶質の(結晶化していない)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく用いられる。中でも、非晶性の(結晶化しにくい)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が特に好ましく用いられる。非晶性のポリエチレンテレフタレート系樹脂の具体例としては、ジカルボン酸としてイソフタル酸をさらに含む共重合体や、グリコールとしてシクロヘキサンジメタノールをさらに含む共重合体が挙げられる。
【0022】
上記熱可塑性樹脂基材は、後述する工程Bにおいて水を吸収し、水が可塑剤的な働きをして可塑化し得る。その結果、水中延伸時に延伸応力を大幅に低下させることができ、高倍率に延伸することが可能となり、空中延伸時よりも熱可塑性樹脂基材の延伸性が優れ得る。その結果、優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光膜を作製することができる。1つの実施形態においては、熱可塑性樹脂基材は、好ましくは、その吸水率が0.2%以上であり、さらに好ましくは0.3%以上である。一方、熱可塑性樹脂基材の吸水率は、好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。このような熱可塑性樹脂基材を用いることにより、製造時に熱可塑性樹脂基材の寸法安定性が著しく低下して、得られる偏光膜の外観が悪化するなどの不具合を防止することができる。また、水中延伸時に基材が破断したり、熱可塑性樹脂基材からポリビニルアルコール系樹脂層が剥離したりするのを防止することができる。なお、熱可塑性樹脂基材の吸水率は、例えば、構成材料に変性基を導入することにより調整することができる。吸水率は、JIS K 7209に準じて求められる値である。
【0023】
熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは170℃以下である。このような熱可塑性樹脂基材を用いることにより、ポリビニルアルコール系樹脂層の結晶化を抑制しながら、積層体の延伸性を十分に確保することができる。さらに、水による熱可塑性樹脂基材の可塑化と、水中延伸を良好に行うことを考慮すると、120℃以下であることがより好ましい。1つの実施形態においては、熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度は、好ましくは60℃以上である。このような熱可塑性樹脂基材を用いることにより、上記ポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を塗布・乾燥する際に、熱可塑性樹脂基材が変形(例えば、凹凸やタルミ、シワ等の発生)するなどの不具合を防止して、良好に積層体を作製することができる。また、ポリビニルアルコール系樹脂層の延伸を、好適な温度(例えば、60℃程度)にて良好に行うことができる。なお、熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度は、例えば、構成材料に変性基を導入する、結晶化材料を用いて加熱することにより調整することができる。ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じて求められる値である。
【0024】
別の実施形態においては、PVA系樹脂を含む塗布液を塗布・乾燥する際に、熱可塑性樹脂基材が変形しなければ、60℃より低いガラス転移温度であってもよい。この場合、熱可塑性樹脂基材の構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0025】
熱可塑性樹脂基材の延伸前の厚みは、好ましくは20μm〜300μm、より好ましくは50μm〜200μmである。20μm未満であると、ポリビニルアルコール系樹脂層の形成が困難になるおそれがある。300μmを超えると、工程Bにおいて、熱可塑性樹脂基材が水を吸収するのに長時間を要するとともに、延伸に過大な負荷を要するおそれがある。
【0026】
上記塗布液は、代表的には、上記ポリビニルアルコール系樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が挙げられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、好ましくは、水である。溶液のポリビニルアルコール系樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部〜20重量部である。このような樹脂濃度であれば、熱可塑性樹脂基材に密着した均一な塗布膜を形成することができる。
【0027】
塗布液に、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。これらは、得られるポリビニルアルコール系樹脂層の均一性や染色性、延伸性をより一層向上させる目的で使用され得る。
【0028】
塗布液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等が挙げられる。
【0029】
上記塗布液の塗布・乾燥温度は、好ましくは50℃以上である。
【0030】
ポリビニルアルコール系樹脂層の延伸前の厚みは、好ましくは3μm〜20μmである。
【0031】
ポリビニルアルコール系樹脂層を形成する前に、熱可塑性樹脂基材に表面処理(例えば、コロナ処理等)を施してもよいし、熱可塑性樹脂基材上に易接着層を形成してもよい。このような処理を行うことにより、熱可塑性樹脂基材とポリビニルアルコール系樹脂層との密着性を向上させることができる。
【0032】
(工程B)
上記工程Bでは、上記積層体を水中延伸(ホウ酸水中延伸)する。水中延伸によれば、上記熱可塑性樹脂基材やポリビニルアルコール系樹脂層のガラス転移温度(代表的には、80℃程度)よりも低い温度で延伸し得、ポリビニルアルコール系樹脂層を、その結晶化を抑えながら、高倍率に延伸することができる。その結果、優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光膜を作製することができる。
【0033】
積層体の延伸方法は、任意の適切な方法を採用することができる。具体的には、固定端延伸でもよいし、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に積層体を通して一軸延伸する方法)でもよい。積層体の延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、後述の積層体の延伸倍率(最大延伸倍率)は、各段階の延伸倍率の積である。
【0034】
水中延伸は、好ましくは、ホウ酸水溶液中に積層体を浸漬させて行う(ホウ酸水中延伸)。延伸浴としてホウ酸水溶液を用いることで、ポリビニルアルコール系樹脂層に、延伸時にかかる張力に耐える剛性と、水に溶解しない耐水性とを付与することができる。具体的には、ホウ酸は、水溶液中でテトラヒドロキシホウ酸アニオンを生成してポリビニルアルコール系樹脂と水素結合により架橋し得る。その結果、ポリビニルアルコール系樹脂層に剛性と耐水性とを付与して、良好に延伸することができ、優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光膜を作製することができる。
【0035】
上記ホウ酸水溶液は、好ましくは、溶媒である水にホウ酸および/またはホウ酸塩を溶解させることにより得られる。ホウ酸濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜10重量部である。ホウ酸濃度を1重量部以上とすることにより、ポリビニルアルコール系樹脂層の溶解を効果的に抑制することができ、より高特性の偏光膜を作製することができる。なお、ホウ酸またはホウ酸塩以外に、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を溶媒に溶解して得られた水溶液も用いることができる。
【0036】
後述の染色工程により、予め、ポリビニルアルコール系樹脂層に二色性物質(代表的には、ヨウ素)が吸着されている場合、好ましくは、上記延伸浴(ホウ酸水溶液)にヨウ化物を配合する。ヨウ化物を配合することにより、ポリビニルアルコール系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ヨウ化カリウムである。ヨウ化物の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは0.05重量部〜15重量部、より好ましくは0.5重量部〜8重量部である。
【0037】
工程Bにおける延伸温度(延伸浴の液温)は、好ましくは40℃〜85℃、より好ましくは50℃〜85℃である。このような温度であれば、ポリビニルアルコール系樹脂層の溶解を抑制しながら高倍率に延伸することができる。具体的には、上述のように、熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、ポリビニルアルコール系樹脂層の形成との関係で、好ましくは60℃以上である。この場合、延伸温度が40℃を下回ると、水による熱可塑性樹脂基材の可塑化を考慮しても、良好に延伸できないおそれがある。一方、延伸浴の温度が高温になるほど、ポリビニルアルコール系樹脂層の溶解性が高くなって、優れた光学特性が得られないおそれがある。積層体の延伸浴への浸漬時間は、好ましくは15秒〜5分である。
【0038】
水中延伸(ホウ酸水中延伸)を採用することにより、高倍率に延伸することができ、優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光膜を作製することができる。具体的には、最大延伸倍率は、積層体の元長に対して、好ましくは5.0倍以上である。本明細書において「最大延伸倍率」とは、積層体が破断する直前の延伸倍率をいい、別途、積層体が破断する延伸倍率を確認し、その値よりも0.2低い値をいう。また、上記熱可塑性樹脂基材を用いた積層体の最大延伸倍率は、水中延伸工程を経た方が空中延伸のみで延伸するよりも高くなり得る。
【0039】
(その他の工程)
本実施形態においても、上述のとおり、上記工程Aおよび工程B以外に、その他の工程を含み得る。その他の工程としては、例えば、不溶化工程、染色工程、架橋工程、延伸工程(上記工程Bとは別の)、洗浄工程、乾燥(水分率の調節)工程等が挙げられる。その他の工程は、任意の適切なタイミングで行い得る。
【0040】
上記染色工程は、代表的には、ポリビニルアルコール系樹脂層を二色性物質で染色する工程である。好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂層に二色性物質を吸着させることにより行う。当該吸着方法としては、例えば、二色性物質を含む染色液にポリビニルアルコール系樹脂層(積層体)を浸漬させる方法、ポリビニルアルコール系樹脂層に当該染色液を塗工する方法、当該染色液をポリビニルアルコール系樹脂層に噴霧する方法等が挙げられる。好ましくは、二色性物質を含む染色液に積層体を浸漬させる方法である。二色性物質が良好に吸着し得るからである。
【0041】
上記二色性物質としては、例えば、ヨウ素、二色性染料が挙げられる。好ましくは、ヨウ素である。二色性物質としてヨウ素を用いる場合、上記染色液は、ヨウ素水溶液である。ヨウ素の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜0.5重量部である。ヨウ素の水に対する溶解度を高めるため、ヨウ素水溶液にヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.02重量部〜20重量部、より好ましくは0.1重量部〜10重量部である。染色液の染色時の液温は、ポリビニルアルコール系樹脂の溶解を抑制するため、好ましくは20℃〜50℃である。染色液にポリビニルアルコール系樹脂層を浸漬させる場合、浸漬時間は、ポリビニルアルコール系樹脂層の透過率を確保するため、好ましくは5秒〜5分である。また、染色条件(濃度、液温、浸漬時間)は、最終的に得られる偏光膜の偏光度もしくは単体透過率が所定の範囲となるように、設定することができる。1つの実施形態においては、得られる偏光膜の偏光度が99.98%以上となるように、浸漬時間を設定する。別の実施形態においては、得られる偏光膜の単体透過率が40%〜44%となるように、浸漬時間を設定する。
【0042】
好ましくは、染色工程は上記工程Bの前に行う。
【0043】
上記不溶化工程は、代表的には、ホウ酸水溶液にポリビニルアルコール系樹脂層を浸漬させることにより行う。不溶化処理を施すことにより、ポリビニルアルコール系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。不溶化浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜40℃である。好ましくは、不溶化工程は、積層体作製後、染色工程や上記工程Bの前に行う。
【0044】
上記架橋工程は、代表的には、ホウ酸水溶液にポリビニルアルコール系樹脂層を浸漬させることにより行う。架橋処理を施すことにより、ポリビニルアルコール系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。また、上記染色工程後に架橋工程を行う場合、さらに、ヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物を配合することにより、ポリビニルアルコール系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜5重量部である。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。架橋浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。好ましくは、架橋工程は上記工程Bの前に行う。好ましい実施形態においては、染色工程、架橋工程および工程Bをこの順で行う。
【0045】
上記工程Bとは別の延伸工程としては、例えば、上記積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸する工程が挙げられる。このような空中延伸工程は、好ましくは、工程B(ホウ酸水中延伸)および染色工程の前に行う。このような空中延伸工程は、ホウ酸水中延伸に対する予備的または補助的な延伸として位置付けることができるため、以下「空中補助延伸」という。
【0046】
空中補助延伸を組み合わせることで、積層体をより高倍率に延伸することができる場合がある。その結果、より優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光膜を作製することができる。例えば、上記熱可塑性樹脂基材としてポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いた場合、ホウ酸水中延伸のみで延伸するよりも、空中補助延伸とホウ酸水中延伸とを組み合せる方が、熱可塑性樹脂基材の配向を抑制しながら延伸することができる。当該熱可塑性樹脂基材は、その配向性が向上するにつれて延伸張力が大きくなり、安定的な延伸が困難となったり、熱可塑性樹脂基材が破断したりする。そのため、熱可塑性樹脂基材の配向を抑制しながら延伸することで、積層体をより高倍率に延伸することができる。
【0047】
また、空中補助延伸を組み合わせることで、PVA系樹脂の配向性を向上させ、そのことにより、ホウ酸水中延伸後においてもPVA系樹脂の配向性を向上させ得る。具体的には、予め、空中補助延伸によりPVA系樹脂の配向性を向上させておくことで、ホウ酸水中延伸の際にPVA系樹脂がホウ酸と架橋し易くなり、ホウ酸が結節点となった状態で延伸されることで、ホウ酸水中延伸後もPVA系樹脂の配向性が高くなるものと推定される。その結果、優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光膜を作製することができる。
【0048】
空中補助延伸の延伸方法は、上記工程Bと同様、固定端延伸でもよいし、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に積層体を通して一軸延伸する方法)でもよい。また、延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、後述の延伸倍率は、各段階の延伸倍率の積である。本工程における延伸方向は、好ましくは、上記工程Bの延伸方向と略同一である。
【0049】
空中補助延伸における延伸倍率は、好ましくは3.5倍以下である。空中補助延伸の延伸温度は、PVA系樹脂のガラス転移温度以上であることが好ましい。延伸温度は、好ましくは95℃〜150℃である。なお、空中補助延伸と上記ホウ酸水中延伸とを組み合わせた場合の最大延伸倍率は、積層体の元長に対して、好ましくは5.0倍以上、より好ましくは5.5倍以上、さらに好ましくは6.0倍以上である。
【0050】
上記洗浄工程は、代表的には、ヨウ化カリウム水溶液にポリビニルアルコール系樹脂層を浸漬させることにより行う。上記乾燥工程における乾燥温度は、好ましくは30℃〜100℃である。
【0051】
図4は、本発明に用いられる偏光膜の製造方法の一例を示す概略図である。積層体10を、繰り出し部100から繰り出し、ロール111および112によってホウ酸水溶液の浴110中に浸漬させた後(不溶化工程)、ロール121および122によって二色性物質(ヨウ素)およびヨウ化カリウムの水溶液の浴120中に浸漬させる(染色工程)。次いで、ロール131および132によってホウ酸およびヨウ化カリウムの水溶液の浴130中に浸漬させる(架橋工程)。その後、積層体10を、ホウ酸水溶液の浴140中に浸漬させながら、速比の異なるロール141および142で縦方向(長手方向)に張力を付与して延伸する(工程B)。延伸処理した積層体10を、ロール151および152によってヨウ化カリウム水溶液の浴150中に浸漬させ(洗浄工程)、乾燥工程に供する(図示せず)。その後、積層体を巻き取り部160にて巻き取る。
【0052】
C.位相差層
上記位相差層は、代表的には、λ/4板として機能し得る。λ/4板は、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換し得る。このような位相差層の面内位相差Re(590)は、好ましくは90nm〜190nmであり、より好ましくは100nm〜170nmであり、さらに好ましくは110nm〜150nmである。位相差層は、好ましくは、nx>ny>nzまたはnx>ny=nzの屈折率楕円体を有する。本明細書において、「ny=nz」は、nyとnzが厳密に等しい場合のみならず、nyとnzが実質的に等しい場合も包含する。
【0053】
位相差層は、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を所定のパターンで有する。パターンの代表例としては、ストライプ状、チェッカー状、モザイク状が挙げられる。このような構成を有することにより、観測者の左右の眼に異なる画像を提供することができ、結果として、3次元(立体)画像を提供することができる。なお、本明細書において例えば「面内位相差Re(590)が140nmである」とは、好ましくは、当該複数の領域の面内位相差がそれぞれ140nmであることを意味する。代表的には、位相差層は、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する2つの領域を所定のパターンで有する。代表的には、当該2つの領域の遅相軸方向は、互いに実質的に直交している。このような構成であれば、当該2つの領域が偏光方向の異なる画像を提供することができ、結果として、良好な3次元画像を提供することができる。
【0054】
位相差層の上記所定パターンは、好ましくは、図5に示すように、異なる方向に遅相軸を有する2つの領域31および32が交互に配置されたストライプ状である。ストライプの方向は、表示画面の水平方向(左右方向)であってもよく、垂直方向(上下方向)であってもよい。上記と同様に、当該ストライプ状の2つの領域の遅相軸方向は、互いに実質的に直交している。好ましくは、当該異なる方向に遅相軸を有する2つの領域は、それぞれ、液晶セルの1ラインに対応する。言い換えれば、ストライプ状パターンにおけるストライプの幅は、液晶セルの1ラインに対応する。本明細書において「液晶セルの1ライン」とは、マトリクス状に配列された画素の垂直方向または水平方向の一列をいう。ストライプ状パターンは、好ましくは、隣接する領域同士の間にブラックストライプを有する。ブラックストライプは、好ましくは、液晶セルのブラックマトリクスに対応する位置に形成され得る。ブラックストライプを設けることにより、クロストークがさらに低減され得る。
【0055】
位相差層における上記遅相軸方向が異なるそれぞれの領域の遅相軸方向は、好ましくは、上記偏光膜の吸収軸方向と実質的に±45°の関係である。位相差層の面内位相差が上記の好適な範囲であって、さらに、それぞれの領域の遅相軸方向と偏光膜の吸収軸方向とがこのような関係であれば、左目用画像および右目用画像の両方が良好な円偏光となるので、良好な立体画像表示を実現することができる。
【0056】
1つの実施形態においては、位相差層は、基材フィルム上に、光硬化型液晶ポリマーを異なる配向状態で固定することにより形成された、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を有する。このような位相差層は、例えば、以下のようにして形成される:まず、基材フィルム上に光配向膜を形成し、偏光露光法を用いて所定の方向に配向規制力を付与する。例えば、液晶セルの1ライン毎にストライプの方向に対して交互に+45°、−45°の配向規制力が与えられた領域を有する光配向膜を形成する。次いで、当該光配向膜上に光硬化型液晶ポリマー層を形成し、当該光硬化型液晶ポリマー層に紫外線を照射して液晶ポリマーの配向状態を固定することにより、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域(例えば、液晶セルの1ライン毎にストライプの方向に対して交互に+45°、−45°の遅相軸方向を有する2つの領域)を形成する。当該領域の面内位相差は、位相差層全体の面内位相差が上記好適範囲となるように、基材フィルムの面内位相差を考慮して調整され得る。
【0057】
基材フィルムの線膨張係数は、好ましくは5.0×10−4(1/℃)以下であり、より好ましくは1.0×10−4(1/℃)以下である。基材フィルムを構成する材料としては、例えば、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂が挙げられる。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。上記ポリカーボネート系樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切なポリカーボネート系樹脂が用いられる。例えば、芳香族2価フェノール成分とカーボネート成分とからなる芳香族ポリカーボネートが好ましく用いられる。
【0058】
別の実施形態においては、位相差層は、光異性化物質を含有する高分子材料から形成され得る。光異性化物質は、光照射等により構造異性体または立体異性体を生じるので、所定のパターンで光照射を行うことにより、遅相軸方向が異なる領域を所定のパターンで形成することができる。光異性化物質は、代表的には、光異性化性官能基を有する任意の適切なフォトクロミック化合物である。具体例としては、アゾベンゼン系化合物、ベンズアルドキシム系化合物、アゾメチン系化合物、スチルベン系化合物、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、フルギド系化合物、ジアリールエテン系化合物、ケイ皮酸系化合物、レチナール系化合物、およびヘミチオインジコ系化合物が挙げられる。好ましくは、アゾベンゼン系化合物、スピロピラン系化合物、およびケイ皮酸系化合物であり、特に好ましくはケイ皮酸系化合物である。また、光異性化物質は、モノマーであってもよく、ポリマーであってもよい。
【0059】
上記高分子材料としては、任意の適切な高分子材料が採用され得る。さらに、高分子材料は、好ましくは、重合性樹脂を含有し得る。重合性樹脂を含有することにより、光異性化物質の配向を固定することができる。より詳細には、重合性樹脂は、一旦、光照射または加熱によって光異性化物質の配向を固定するように重合した後は、さらなる光照射または加熱が行われても、光異性化物質の所望でない構造異性化を引き起こさない役割を果たし得る。すなわち、重合性樹脂は、位相差層において固定された遅相軸方向を常に安定に保持し得る。このような重合性樹脂としては、例えば、不飽和二重結合を有する化合物、親電子基を有する化合物、求核基を有する化合物、および、重合性液晶構造を有する化合物が挙げられる。
【0060】
光異性化物質を含有する高分子材料を用いた位相差層の形成方法について簡単に説明する。まず、上記光異性化物質、高分子材料、および必要に応じて重合成樹脂を含む組成物から、前処理シートが形成される。前処理シートの成形方法としては、任意の適切な方法(例えば、溶液流延法、溶融製膜法(溶融押出し法)、塗布法)が採用され得る。例えば、溶融製膜法を行う場合、上記組成物を所定温度で溶融し、ダイから冷却ロールにキャストすることにより、前処理シートが作製され得る。前処理シートは、未延伸の状態で使用されることもあるが、好ましくは所定の方向に一軸延伸され得る。一軸延伸を行うことにより、後述の光照射によって、複数の領域のそれぞれの遅相軸方向をさらに均一に揃えることができる。一軸延伸の方法および条件(例えば、延伸倍率および延伸温度)は、当業者により適切に選択され得る。
【0061】
次いで、前処理シートに照射強度分布を有する光を照射して、遅相軸方向がそれぞれ異なる複数の領域が形成される。照射強度分布を有する光を照射する方法としては、代表的には、所定のパターンを有するマスクを介して光を照射する方法が挙げられる。照射光は、好ましくは直線偏光である。このようにして、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を所定のパターンで有する位相差層を形成することができる。
【0062】
なお、光異性化物質を含有する高分子材料を用いる位相差層(位相差フィルム)の詳細については、特許第3372016号に記載されており、当該記載は本明細書に参考として援用される。
【0063】
位相差層は上記の形態に限られず、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な形態が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコールフィルムを面内で選択的に非晶化させて所定のパターン(例えば、1ライン毎に遅相軸方向の異なる領域が交互に配されたストライプパターン)を形成した、所定の位相差(例えば、1/2波長の位相差)に対応したパターンリターダーフィルム;所定の波長(例えば、1/2波長)の領域が所定のパターン(例えば、ストライプパターン)で形成された層上に、パターン化されていない所定の波長(例えば、1/4波長)の位相差層を設けたパターンリターダーフィルム;が位相差層として用いられ得る。
【0064】
D.保護層
上記保護層は、偏光膜の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0065】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0066】
上記(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10000〜500000である。重量平均分子量が小さすぎると、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。重量平均分子量が大きすぎると、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
【0067】
上記(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは110℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。ガラス転移温度がこのような範囲であれば、耐久性および耐熱性に優れ得る。ガラス転移温度の上限は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0068】
上記所望の特性が得られるという点で、上記(メタ)アクリル系樹脂として、グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂(以下、グルタルイミド樹脂とも称する)は、例えば、特開2006−309033号公報、特開2006−317560号公報、特開2006−328329号公報、特開2006−328334号公報、特開2006−337491号公報、特開2006−337492号公報、特開2006−337493号公報、特開2006−337569号公報、特開2007−009182号公報、特開2009−161744号公報、特開2010−284840号公報に記載されている。これらの記載は、本明細書に参考として援用される。
【0069】
第1の局面において、好ましくは、グルタルイミド樹脂は、下記一般式(1)で表される単位(以下、グルタルイミド単位とも称する)と、下記一般式(2)で表される単位(以下、(メタ)アクリル酸エステル単位とも称する)とを含む。
【化1】
式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。式(2)において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。
【0070】
グルタルイミド樹脂は、必要に応じて、下記一般式(3)で表される単位(以下、芳香族ビニル単位とも称する)をさらに含んでいてもよい。
【化2】
式(3)において、Rは、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、炭素数6〜10のアリール基である。
【0071】
上記一般式(1)において、好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、Rは水素、メチル基、ブチル基、またはシクロヘキシル基であり、さらに好ましくは、Rはメチル基であり、Rは水素であり、Rはメチル基である。
【0072】
上記グルタルイミド樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR、R、およびRが異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0073】
グルタルイミド単位は、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位をイミド化することにより、形成することができる。また、グルタルイミド単位は、無水マレイン酸等の酸無水物、または、このような酸無水物と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸等をイミド化することによっても、形成することができる。
【0074】
上記一般式(2)において、好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、Rは水素またはメチル基であり、さらに好ましくは、Rは水素であり、Rはメチル基であり、Rはメチル基である。
【0075】
上記グルタルイミド樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR、R、およびRが異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0076】
上記グルタルイミド樹脂は、上記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位として、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン等を含み、さらに好ましくはスチレンを含む。このような芳香族ビニル構成単位を有することにより、位相差を小さくすることができる。
【0077】
上記グルタルイミド樹脂は、芳香族ビニル構成単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、RおよびRが異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0078】
上記グルタルイミド樹脂における上記グルタルイミド単位の含有量は、例えばRの構造等に依存して変化させることが好ましい。グルタルイミド単位の含有量は、グルタルイミド樹脂の総繰り返し単位を基準として、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは20重量%〜95重量%であり、さらに好ましくは40重量%〜90重量%であり、特に好ましくは50重量%〜80重量%である。グルタルイミド単位の含有量がこのような範囲であれば、位相差を小さくすることができる。
【0079】
上記グルタルイミド樹脂における上記芳香族ビニル単位の含有量は、目的や所望の特性に応じて適切に設定され得る。用途によっては、芳香族ビニル単位の含有量は0であってもよい。芳香族ビニル単位が含まれる場合、その含有量は、グルタルイミド樹脂の総繰り返し単位を基準として、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは10重量%〜40重量%であり、さらに好ましくは15重量%〜30重量%であり、特に好ましくは15重量%〜25重量%である。芳香族ビニル単位の含有量がこのような範囲であれば、耐熱性および機械的強度に優れ得る。
【0080】
上記グルタルイミド樹脂には、必要に応じて、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。その他の単位としては、例えば、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体から構成される単位が挙げられる。これらのその他の単位は、上記グルタルイミド樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
【0081】
第2の局面において、好ましくは、グルタルイミド樹脂は、下記一般式(4)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含み、2.5〜5.0%のイミド化率、0.10〜0.50mmol/gの酸価、および1重量%未満のアクリル酸エステル単位含有量を有する。
【0082】
【化3】
式(4)において、RおよびR10はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、R11は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。
【0083】
上記一般式(4)において、RおよびR10は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R11は水素、メチル基、ブチル基、またはシクロヘキシル基であることが好ましく、Rはメチル基であり、R10は水素であり、R11はメチル基であることがより好ましい。
【0084】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(4)におけるR、R10、およびR11が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0085】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂は、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂を加熱溶融し、ポリメタクリル酸メチル樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部のイミド化剤で処理する工程を含む製造方法によって得られ得る。使用されるポリメタクリル酸メチル樹脂中のアクリル酸エステル単位は、好ましくは1重量%未満である。
【0086】
上記ポリメタクリル酸メチル樹脂は、メタクリル酸メチルを重合させることによって製造される。当該重合工程においては、メタクリル酸メチル以外にも、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等を併用することができる。この場合、アクリル酸エステル単位は、好ましくは1重量%未満である。アクリル酸メチル単位が0.5重量%未満であることがより好ましい。
【0087】
上記ポリメタクリル酸メチル樹脂を加熱溶融して、イミド化剤と処理する方法としては、従来公知の任意の方法を用いることができ、例えば、特開2010−284840号に記載の方法が好ましく用いられ得る。当該方法によれば、グルタルイミド単位、メタクリル酸メチル単位、カルボン酸またはカルボン酸無水物単位の比率が所望に制御されたグルタルイミド樹脂が容易に得られ得る。
【0088】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂におけるイミド化率は、グルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位との比で表される。この比は、例えば、グルタルイミド樹脂のNMRスペクトル、IRスペクトル、あるいはその他の方法により測定することが可能である。本明細書におけるイミド化率は次のようにして求められる。すなわち、H−NMR
BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂のH−NMR測定を行った。3.5から3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO−CHプロトン由来のピーク面積Aと、3.0から3.3ppm付近のグルタルイミドのN−CHプロトン由来のピークの面積Bより、次式で求められる。
【0089】
Im%=B/(A+B)×100
なお、ここで、「イミド化率」とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
【0090】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂のイミド化率は、好ましくは2.5%〜5.0%、より好ましくは2.5%〜4.5%、さらに好ましくは3.0%〜4.5%である。イミド化率が当該範囲であれば、耐熱性、透明性、成形加工性、およびフィルムに加工したときの機械的強度に優れたグルタルイミド樹脂が得られ得る。
【0091】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂の酸価は、樹脂中でのカルボン酸単位、カルボン酸無水物単位の含有量を表す。酸価は、例えばWO2005/054311および特開2005−23272号公報に記載の滴定法などにより算出することが可能である。
【0092】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂の酸価は、好ましくは0.10〜0.50mmol/g、より好ましくは0.15〜0.45mmol/gである。酸価が当該範囲内であれば、耐熱性、機械物性、成形加工性のバランスに優れたグルタルイミド樹脂が得られ得る。
【0093】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂におけるアクリル酸エステル単位の含有量は、好ましくは1重量%未満であり、より好ましくは0.5重量%未満である。アクリル酸エステル単位の含有量が当該範囲内であれば、熱安定性に優れたグルタルイミド樹脂が得られ得る。
【0094】
第2の局面の上記グルタルイミド樹脂には、必要に応じ、グルタルイミド単位、メタクリル酸メチル単位、カルボン酸もしくはカルボン酸無水物単位、アクリル酸エステル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。その他の単位としては、例えば、スチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を挙げることができる。これらのその他の単位は、上記グルタルイミド樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
【0095】
偏光膜20と位相差層30との間に配置された保護層42は、好ましくはセルロース系樹脂で構成され、さらに好ましくはTACで構成される。保護層42としてセルロース系樹脂(特に、TAC)を用いることにより、偏光膜の寸法変化による位相差層の寸法変化が顕著に抑制され、結果として、立体画像表示のクロストークが良好に低減され得る。保護層42は、光学的に等方性を有することが好ましい。特に、面内位相差Reが小さいことが好ましい。偏光膜20を通過した直線偏光は代表的には位相差層30によって円偏光に変換されるところ、保護層42の面内位相差が小さいほど良好な円偏光への変換が実現でき、結果として、優れた立体画像表示が実現できる。具体的には、保護層42の面内位相差Re(590)は、好ましくは0nm以上20nm以下、さらに好ましくは0nm以上10nm以下、特に好ましくは0nm以上6nm以下である。保護層42の厚み方向の位相差Rth(590)は、好ましくは−100nm〜+100nm、さらに好ましくは−70nm〜+70nm、特に好ましくは−50nm〜+50nmである。さらに、保護層42の光弾性係数(590)は、好ましくは5.0×10−11m/N以下、さらに好ましくは3.0×10−11m/N以下である。光弾性係数がこのような範囲であれば、立体画像表示への悪影響を抑制することができる。
【0096】
保護層41は、好ましくは、上記(メタ)アクリル系樹脂で構成される。保護層41として上記(メタ)アクリル系樹脂を用いることにより、画像表示装置の表示特性への悪影響を抑制することができる。この場合、保護層41の面内位相差Re(590)は、好ましくは0nm以上10nm以下、さらに好ましくは0nm以上7nm以下、特に好ましくは0nm以上5nm以下である。保護層41の厚み方向の位相差Rth(590)は、好ましくは−15nm〜+15nm、さらに好ましくは−10nm〜+10nm、特に好ましくは−5nm〜+5nmである。また、保護層41は、延伸フィルムであっても未延伸フィルムであってもよいが、好ましくは延伸フィルムである。
【0097】
保護層の厚みは、好ましくは20μm〜100μmである。
【0098】
なお、上記偏光膜の製造方法を採用する場合、得られた偏光膜を上記熱可塑性樹脂基材と一体となった状態で使用してもよい。この場合、上記熱可塑性樹脂基材は保護層として機能し得る。
【0099】
E.接着層
本明細書において、「接着層」とは、隣り合う光学部材の面と面とを接合し、実用上十分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。接着層を形成する材料としては、例えば、粘着剤、接着剤、アンカーコート剤が挙げられる。上記接着層は、被着体の表面にアンカーコート層が形成され、その上に接着剤層が形成されたような、多層構造であってもよい。また、肉眼的に認知できないような薄い層(ヘアーラインともいう)であってもよい。
【0100】
接着層の厚みは、目的に応じて適切に設定され得る。厚みは、好ましくは2μm〜50μmであり、さらに好ましくは2μm〜40μmであり、特に好ましくは5μm〜35μmである。このような範囲内に厚みを設定することにより、適切な接着性を有する接着層を得ることができる。
【0101】
接着層の20℃におけるせん断弾性率は、好ましくは30000Pa〜1100000Paであり、より好ましくは40000Pa〜1000000Paであり、さらに好ましくは50000Pa〜900000Paであり、特に好ましくは50000Pa〜90000Paである。
【0102】
接着層の23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは90%以上である。透過率の理論上の上限は100%であり、実用的な上限は96%である。
【0103】
接着層のゲル分率は、好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは75%〜90%であり、特に好ましくは80%〜85%である。ゲル分率をこのような範囲とすることによって、良好な粘着特性を有する接着層が得られ得る。ゲル分率は、用いる架橋剤の種類、含有量等によって、調節することが可能である。
【0104】
接着層のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−70℃〜−10℃であり、さらに好ましくは−60℃〜−15℃であり、特に好ましくは−50℃〜−20℃である。ガラス転移温度をこのような範囲とすることによって、位相差層に対して強固な接着性を有する接着層を得ることができる。
【0105】
接着層の水分率は、好ましくは1.0%以下であり、さらに好ましくは0.8%以下であり、特に好ましくは0.6%以下であり、最も好ましくは0.4%以下である。水分率の理論上の下限値は0である。水分率をこのような範囲とすることによって、高温環境下でも発泡の生じにくい接着層を得ることができる。
【0106】
接着層は、好ましくは、アクリル系粘着剤で構成される。アクリル系粘着剤は、好ましくは、(メタ)アクリル系ポリマーと過酸化物とを含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、アクリレート系モノマーおよび/またはメタクリレート系モノマーから合成される重合体または共重合体をいう。(メタ)アクリル系ポリマーが共重合体である場合、その分子の配列状態は特に制限はなく、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。上記(メタ)アクリル系ポリマーの好ましい分子配列状態は、ランダム共重合体である。
【0107】
上記過酸化物としては、加熱によりラジカルを発生させて(メタ)アクリル系ポリマーの架橋を達成できるかぎり、任意の適切な過酸化物が用いられ得る。過酸化物としては、例えば、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類が挙げられる。過酸化物の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.01重量部〜1重量部であり、さらに好ましくは0.05重量部〜0.8重量部であり、特に好ましくは0.1重量部〜0.5重量部であり、最も好ましくは0.15重量部〜0.45重量部である。過酸化物の配合量をこのような範囲とすることで、適度な応力緩和性および優れた熱安定性を有する接着層が得られ得る。
【0108】
F.その他
本発明の位相差層付偏光板においては、上記位相差層の視認側に、目的に応じて任意の適切な表面処理層を形成してもよい。表面処理層の代表例としては、アンチグレア層、反射防止層およびハードコート層が挙げられる。
【0109】
アンチグレア層は、画像表示装置の表面で外光が反射することによる透過光の視認性低下の防止等を目的として設けられる。アンチグレア層は、形成されるフィルム表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。アンチグレア層を形成する材料としては、代表的には、透明樹脂が挙げられる。具体例としては、イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのようなアクリル系樹脂、イソホロンジイソシアネートポリウレタンのようなウレタン系樹脂を含有する紫外線硬化型樹脂が挙げられる。微細凹凸構造の付与は、任意の適切な方式で行われる。代表例としては、粗面化(例えば、サンドブラスト、エンボス加工)、微粒子の配合が挙げられる。微粒子を用いる場合、当該微粒子としては、目的に応じて任意の適切な微粒子が採用され得る。好ましくは、透明微粒子である。具体的には、微粒子は、無機系微粒子(例えば、導電性であり得るシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウムまたは酸化アンチモン微粒子)であってもよく、有機系微粒子(例えば、架橋または未架橋のポリマー微粒子)であってもよい。微粒子の平均粒径は、好ましくは0.5μm〜20μmである。微粒子の配合量は、透明樹脂100重量部に対して、好ましくは2重量部〜70重量部であり、より好ましくは5重量部〜50重量部である。
【0110】
ハードコート層は、画像表示装置の表面に配置される偏光板等の表面の傷付き防止等を目的として設けられる。ハードコート層は、適切な硬度および滑り性を有する硬化膜で構成される。ハードコート層を形成する材料としては、上記アンチグレア層を形成するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂に加えて、シリコーン系樹脂が挙げられる。
【0111】
反射防止層は、画像表示装置の表面での外光の反射防止を目的として設けられる。反射防止層としては、当業界で通常用いられている反射防止層が採用され得る。
【0112】
G.液晶パネル
本発明の液晶パネルは、上記位相差層付偏光板を有する。好ましくは、本発明の液晶パネルは、液晶セルと、液晶セルの視認側に配置された上記位相差層付偏光板とを有する。
【実施例】
【0113】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
1.厚み
デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC−351C」)を用いて測定した。
2.熱可塑性樹脂基材の吸水率
JIS K 7209に準じて測定した。
3.熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に準じて測定した。
4.偏光度
紫外可視分光光度計(日本分光社製、製品名「V7100」)を用いて、偏光膜の単体透過率(Ts)、平行透過率(Tp)および直交透過率(Tc)を測定し、偏光度(P)を次式により求めた。
偏光度(P)(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
なお、上記Ts、TpおよびTcは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定し、視感度補正を行ったY値である。
5.位相差
王子計測機器(株)製、商品名「KOBRA−CCD」を用いて測定した。
【0114】
[実施例1]
(偏光膜の作製)
熱可塑性樹脂基材として、吸水率0.60%、Tg80℃の非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)フィルム(三菱樹脂社製、商品名「ノバクリア」、厚み:100μm)を用いた。
熱可塑性樹脂基材基の片面に、重合度2600、ケン化度99.9モル%のポリビニルアルコール(PVA)樹脂(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセノール(登録商標)NH−26」)の水溶液を60℃で塗布および乾燥して、厚み7μmのポリビニルアルコール系樹脂層を形成した。このようにして積層体を作製した。
【0115】
得られた積層体を、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化工程)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを2重量部配合して得られたヨウ素水溶液)に60秒間浸漬させた(染色工程)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋工程)。
その後、積層体を、液温60℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に一軸延伸を行った(延伸工程)。ホウ酸水溶液への浸漬時間は120秒であり、延伸倍率を5.0倍とした。
その後、積層体を洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた後、60℃の温風で乾燥させた(洗浄・乾燥工程)。
このようにして、熱可塑性樹脂基材上に厚み3μmの偏光膜が形成された積層体を得た。得られた偏光膜の単体透過率(Ts)は42.2%であり、偏光度(P)は99.96%であった。
【0116】
(位相差層の作製)
遅相軸方向が異なる2つの領域をストライプパターンで有する位相差フィルムを以下のようにして作製した。ノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名「ZEONOR」)の上に光配向膜を形成し、偏光露光法を用いて液晶セルの1ライン毎にストライプの方向に対して+45°、−45°の配向規制力を与え、当該光配向膜上に所定の複屈折率と膜厚とを有する光硬化型液晶ポリマー層を形成した。次いで、紫外線を照射して光硬化型液晶ポリマーを硬化させ、その配向状態を固定することにより、遅相軸方向が異なる2つの領域をストライプパターンで有する、λ/4板に対応する位相差フィルム(パターンリターダーフィルム)を作製した。
【0117】
((メタ)アクリル系フィルムの作製)
特開2009−161744号公報の製造例1に記載のイミド化MS樹脂100重量部およびトリアジン系紫外線吸収剤(アデカ社製、商品名:T−712)0.62重量部を、2軸混練機にて220℃にて混合し、樹脂ペレットを作製した。得られた樹脂ペレットを、100.5kPa、100℃で12時間乾燥させ、単軸の押出機にてダイス温度270℃でTダイから押出してフィルム状に成形した(厚み160μm)。さらに当該フィルムを、その搬送方向に150℃の雰囲気下に延伸し(厚み80μm)、次いでフィルム搬送方向と直交する方向に150℃の雰囲気下に延伸して、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの面内位相差Re(590)は0.4nm、厚み方向位相差Rth(590)は0.78nmであった。
【0118】
上記で得られた積層体の偏光膜側に、内側(液晶セル側)保護層として上記で得られた(メタ)アクリル系フィルムを、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を介して貼り合わせた。
次いで、熱可塑性樹脂基材を剥離し、その面には、視認側保護層としてTACフィルム(富士フイルム社製、商品名「TD80UL」、厚み80μm、Re(590)=4nm、Rth(590)=45nm)を、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を介して貼り合わせた。次いで、視認側保護層表面に、アクリル系粘着剤(厚み23μm)を介して、上記で得られたパターンリターダーフィルムを貼り合わせた。このとき、パターンリターダーフィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸とのなす角度が実質的に±45°となるように貼り合わせた。
さらに、内側保護層表面に、アクリル系粘着剤層(厚み23μm)を形成した。
このようにして、粘着剤層/(メタ)アクリル系フィルム/偏光膜/TACフィルム/粘着剤層/位相差層の構成を有する位相差層付偏光板を得た。
【0119】
[実施例2]
下記の偏光膜(積層体)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
(偏光膜の作製)
熱可塑性樹脂基材として、吸水率0.75%、Tg75℃のイソフタル酸を6mol%共重合させたイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:200μm)を用いた。
熱可塑性樹脂基材の片面に、重合度1000以上、ケン化度99%以上のPVA樹脂粉末を水に溶解させて得られた濃度4〜5重量%の水溶液を塗布し、50〜60℃の温度で乾燥して、厚み9μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
【0120】
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸工程)。
その後、積層体を液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化工程)。
次いで、液温30℃で、ヨウ素濃度0.12〜0.25重量%でヨウ化カリウムを含む染色液に、最終的に得られる偏光膜の単体透過率が40〜44%になるように浸漬させた(染色工程)。ここでは、ヨウ素とヨウ化カリウムの配合比は1:7とした。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に60秒間浸漬させた(架橋工程)。
その後、積層体を、液温75℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に自由端一軸延伸を行った(延伸工程)。このときの延伸倍率を3.0倍とした。
その後、積層体を洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に5秒間浸漬させた後、60℃の温風で乾燥させた(洗浄・乾燥工程)。
このようにして、熱可塑性樹脂基材上に厚み3.5μmの偏光膜が形成された積層体を得た。得られた偏光膜の単体透過率(Ts)は42.6%であり、偏光度(P)は99.99%であった。
【0121】
実施例1および実施例2で得られた位相差層付偏光板を、液晶パネル(LG電子製、型番:42LW6500)に貼り合わせ、80℃の高温環境下で500時間放置した後の黒表示時および白表示時の輝度を測定し、下記式により、クロストーク率を求めた。
クロストーク率=(奇数ライン黒表示、偶数ライン白表示時の輝度)−(奇数ライン、偶数ライン共に黒表示時の輝度)/(奇数ライン白表示、偶数ライン黒表示時の輝度)−(奇数ライン、偶数ライン共に黒表示時の輝度)
実施例1および実施例2で得られた位相差層付偏光板によれば、いずれもクロストーク率が4%以下と極めて低かった。
【0122】
[実施例3]
偏光膜の作製に際し、厚み14μmのポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、厚み5μmの偏光膜(Ts:42.2%、P:99.96%)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
【0123】
[実施例4]
偏光膜の作製に際し、厚み18μmのポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、厚み7μmの偏光膜(Ts:42.2%、P:99.96%)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
【0124】
[実施例5]
偏光膜の作製に際し、厚み21μmのポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、厚み9μmの偏光膜(Ts:42.2%、P:99.96%)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
【0125】
[比較例1]
偏光膜として、以下の方法により得られた偏光膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
(偏光膜の作製)
厚み60μmのポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(クラレ(株)製、商品名「VF−PS#7500」)を、下記(1)〜(5)の条件の5浴に、フィルム長手方向に張力を付与しながら浸漬し、最終的な延伸倍率がフィルム元長に対して、6.2倍となるように延伸した。この延伸フィルムを40度の空気循環式乾燥オーブン内で1分間乾燥させて、厚み29μmの偏光膜を作製した。
<条件>
(1)膨潤浴:30度の純水。
(2)染色浴:水100重量部に対し、0.035重量部のヨウ素と、水100重量部に対し、0.2重量部のヨウ化カリウムとを含む、30度の水溶液。
(3)第1の架橋浴:3重量%のヨウ化カリウムと、3重量%のホウ酸とを含む、40度の水溶液。
(4)第2の架橋浴:5重量%のヨウ化カリウムと、4重量%のホウ酸とを含む、60度の水溶液。
(5)水洗浴:3重量%のヨウ化カリウムを含む、25度の水溶液。
【0126】
(クロストーク率)
実施例3〜5および比較例1で得られた位相差層付偏光板を、液晶パネル(LG電子製、型番:42LW6500)に貼り合わせ、80℃の高温環境下で500時間放置した後の黒表示時および白表示時の輝度を測定し、下記式により、クロストーク率を求めた。
クロストーク率=(奇数ライン黒表示、偶数ライン白表示時の輝度)−(奇数ライン、偶数ライン共に黒表示時の輝度)/(奇数ライン白表示、偶数ライン黒表示時の輝度)−(奇数ライン、偶数ライン共に黒表示時の輝度)
【0127】
クロストーク率の測定結果を図6に示す。実用的には、クロストーク率は20%以下であることが求められるが、各実施例はいずれも10%以下と優れた値であった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の位相差層付偏光板は、液晶表示装置に好適に用いられ得る。特に、3次元液晶表示装置の視認側偏光板として好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0129】
20 偏光膜
30 位相差層
41 保護層
42 保護層
50 接着層
60 接着層
200 位相差層付偏光板
300 位相差層付偏光板
図1
図2
図3
図4
図5
図6