特許第6075872号(P6075872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075872
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】COセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20170130BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   G01N27/416 371G
   G01N27/416 331
   G01N27/409 100
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-108611(P2013-108611)
(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公開番号】特開2014-228420(P2014-228420A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000112439
【氏名又は名称】フィガロ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】清水 康博
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 健生
(72)【発明者】
【氏名】五島 駿幸
(72)【発明者】
【氏名】兼安 一成
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−170147(JP,A)
【文献】 特開2002−156355(JP,A)
【文献】 特開平10−239272(JP,A)
【文献】 特開2011−047758(JP,A)
【文献】 特開2012−042222(JP,A)
【文献】 特表2015−519539(JP,A)
【文献】 特表2013−501237(JP,A)
【文献】 特開2012−251940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質膜上に検知極と対極とを設けたCOセンサにおいて、
前記検知極がAuを担持した金属酸化物と固体高分子電解質とを含有し、
前記金属酸化物が、In2O3,SnO2,またはIn2O3-SnO2であることを特徴とする、COセンサ。
【請求項2】
前記固体高分子電解質膜がアニオン導電性高分子膜で、かつ検知極に含有されている固体高分子電解質がアニオン導電性高分子であることを特徴とする請求項1のCOセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はCOセンサに関し、特に固体高分子電解質を用いた室温駆動型のCOセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解質を用いたCOセンサとして、特許文献1(特開2002-310983)に記載のものが知られている。特許文献1では、ジルコニア基板上に一対の電極を設け、一方の電極をCOの酸化触媒で被覆し、他方の電極は触媒で被覆しない。そして雰囲気中にCOが発生すると、一方の電極でCOの酸化により酸素分圧が低下し、このことをジルコニアの起電力から検出する。しかしこのセンサはヒータが必要で、また微量のCOを酸化することによる酸素分圧の変化は僅かである。
【0003】
これとは別に、発明者らはアニオン導電性高分子を用いたガスセンサを開発してきた。特許文献2(特開2011-220906)では、Ti基体の表面にTiO2膜とPd系電極とを積層し、さらにPd電極を非イオン性、プロトン導電性、及びアニオン導電性の3種類の固体高分子で被覆し、水素感度への固体高分子の影響を検討した。そして、非イオン性とプロトン導電性の高分子により、水素感度が増すことが判明した。
【0004】
特許文献3(特開2012-251940)で発明者らは、アニオン導電性高分子の起電力を用いたCO2センサを検討した。電極はPtとアニオン導電性高分子との混合物であるが、Ptに代えてAu等の貴金属電極を用いても、あるいはLaCoO3,LaNiO3等の卑金属酸化物電極を用いても良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-310983
【特許文献2】特開2011-220906
【特許文献3】特開2012-251940
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者はさらに、アニオン導電性高分子を用いたCOセンサを検討し、特にセンサ特性への電極触媒の影響について検討した。その結果、特定の貴金属と特定の金属酸化物との組合せで、少量の貴金属によりCO選択性が得られ、またCOへの応答が速くなることを見出した。この発明は、貴金属使用量が少なく、CO選択性があり、かつCOへの応答が速いCOセンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、固体高分子電解質膜上に検知極と対極とを設けたCOセンサにおいて、
検知極がAuを担持した金属酸化物と固体高分子電解質とを含有し、
金属酸化物が、In2O3,SnO2,またはIn2O3-SnO2であることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記固体高分子電解質膜がアニオン導電性高分子膜で、かつ検知極に含有されている固体高分子電解質がアニオン導電性高分子である。
【0009】
Auを担持しないIn2O3,SnO2,及びIn2O3-SnO2にアニオン導電性高分子を混合し、アニオン導電性高分子膜の表裏に印刷してガスセンサとすると、CO感度もH2感度も小さく、応答は遅い。これに対して、Auを担持しているIn2O3,SnO2,及びIn2O3-SnO2にアニオン導電性高分子を混合して、電極材料とすると、CO感度が増すと共に、H2に対するCOへの選択性が生じ、応答も速くなる。またセンサの特性は経時的にも安定で、含有させるAuの濃度は2mass%等の低い濃度でよい。従って、長期信頼性があり、かつ貴金属使用量が少ないCOセンサが得られる。なおこの発明のCOセンサは、COへの応答がオーバーシュートすることがあるが、電極触媒の調製条件を選択し、特に金属酸化物へのAuの担持後の熱処理条件を穏和なものにすると、オーバーシュートを解消できる。
【0010】
In2O3,SnO2,及びIn2O3-SnO2の代わりに、ZnO,Co3O4,MnO2にAuを担持させても、CO感度が小さいままか、あるいは製造後の特性のドリフトが大きいかで、満足な特性は得られない。またAuの代わりにPdをSnO2に担持させると、初期的には良好なCO応答特性が得られるが、数週間程度で応答特性が劣化する。さらに湿度により複雑な影響を受け、湿度依存性の補正が困難である。
【0011】
以上のように、In2O3,SnO2,及びIn2O3-SnO2にAuを担持させ、固体高分子電解質と混合して、検知極材料とすることにより、
・ COに対して選択的で、
・ 応答が速く、
・ 経時的にも安定で、
・ 貴金属使用量が少ない、
COセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例のCOセンサの平面図
図2】実施例での測定方法を示す断面図
図3】実施例の電極の2次電子顕微鏡写真で、組成は2Au/In2O3-ACP5mass%である。なお2Au/In2O3等はAuとIn2O3の合計量に対しAuが2mass%含まれることを示し、ACP5mass%は、Auと、In2O3等の金属酸化物と、ACP(アニオン導電性高分子)との合計量に対し、ACPが5mass%含まれることを示す。
図4】実施例の電極の2次電子顕微鏡写真で、組成は2Au/SnO2-ACP5mass%である。
図5】比較例の電極の2次電子顕微鏡写真で、組成は2Au/ZnO-ACP5mass%である。
図6】比較例(In2O3-ACP5mass%)での、CO,H2への応答波形を示す特性図である。なお測定温湿度は特に断らない限り、温度が30℃、相対湿度(RH)が57%である。
図7】実施例(2Au/In2O3-ACP5mass%)での、CO,H2への応答波形を示す特性図である。
図8】実施例(2Au/In2O3-ACP5mass%)での、COに対する応答波形を示す特性図である。
図9】実施例(2Au/In2O3-ACP5mass%)での、H2に対する応答波形を示す特性図である。
図10】実施例(2Au/In2O3-ACP5mass%)での、CO濃度とH2濃度とに対する起電力を示す特性図である。
図11】実施例(2Au/In2O3-ACP5mass%)での、電極触媒への熱処理の効果を示す特性図である。
図12】比較例(SnO2-ACP5mass%)での、CO,H2への応答波形を示す特性図である。
図13】実施例(2Au/SnO2-ACP5mass%)での、CO,H2への応答波形を示す特性図である。
図14】比較例(ITO-ACP5mass%)での、CO,H2への応答波形を示す特性図で、ITOはIn2O3-SnO2で、In:Snは原子比で10:1である。
図15】実施例(2Au/ITO-ACP5mass%)での、CO,H2への応答波形を示す特性図である。
図16】実施例(2Au/In2O3-ACP5mass%)での、30℃で種々の相対湿度中での、CO500ppmへの応答波形を示す特性図である。
図17】実施例(2Au/SnO2-ACP5mass%)での、30℃で種々の相対湿度中での、CO500ppmへの応答波形を示す特性図である。
図18】比較例(1Pd/SnO2-ACP5mass%)での、COに対する応答波形を示す特性図である。
図19】比較例(1Pd/SnO2-ACP5mass%)での、COに対する起電力を示す特性図である。
図20】比較例(1Pd/SnO2-ACP5mass%)での、30℃で種々の相対湿度中での、CO500ppmへの応答波形を示す特性図である。
図21】比較例(2Au/ZnO-ACP5mass%)での、COとH2に対する応答波形を示す特性図である。
図22】比較例(2Au/Co3O4-ACP5mass%)での、COとH2に対する応答波形を示す特性図である。
図23】比較例(2Au/MnO2-ACP5mass%)での、COとH2に対する応答波形を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0014】
ガスセンサの構造
図1は実施例のCOセンサ2の構造を示し、4はアニオン導電性高分子膜で、例えば水酸化物イオン導電性であるが、空気中のCO2を吸収して一部がHCO3-イオン導電性等に変化していても良い。アニオン導電性高分子膜4の膜厚は例えば10μm〜100μm程度で、実施例では約28μmで、ポリオレフィン系あるいはポリスチレン系等の固体高分子骨格に、4級アンモニウム基が導入され、アンモニウム基に代えて、4級ホスホニウム基、ピリジニウム基、イミダゾール基等でも良い。
【0015】
6は検知極で、検知極6と向き合うように、アニオン導電性高分子膜4の反対面に対極8(図2参照)がある。検知極6は、Auと、In2O3,SnO2,またはIn2O3-SnO2(ITO)のいずれかの金属酸化物と、アニオン導電性高分子との混合物である。そして検知極6は、In2O3,SnO2,またはIn2O3-SnO2にAuを担持させた電極触媒に、アニオン導電性を付与するためにアニオン導電性高分子を混合したものである。Auの質量と、金属酸化物とAuとの合計質量との比をAu濃度としてmass%単位で示し、Au濃度は0.5mass%以上10mass%以下、特に1mass%以上で5mass%以下が好ましい。アニオン導電性高分子の質量と、金属酸化物とAuとアニオン導電性高分子との合計質量との比をアニオン導電性高分子濃度としてmass%単位で示し、アニオン導電性高分子濃度は1mass%以上で20mass%以下が好ましい。対極の組成は任意であるが、実施例では検知極6と同じ組成で同じ膜厚の電極とした。
【0016】
金属酸化物の調製
検知極材料の金属酸化物は以下のようにして調製した。金属酸化物がIn2O3,SnO2,ZnO,Co3O4の場合、これらの金属の硝酸塩(ただしSnO2のみ塩化物)の水溶液にアンモニア水を滴下し、水酸化物を沈殿させた。沈殿時のpHはIn2O3で3.5,SnO2で2.0,ZnOとCo3O4で8.5とした。沈殿を純水で洗浄し、遠心分離を施し、120℃の空気中で乾燥し、次いで空気中500℃で3時間焼成し、金属酸化物とした。なおMnO2では、MnSO4・5H2OにKMnO4水溶液を加え、80℃で1時間撹拌することにより沈殿を生成させ、純水洗浄と遠心分離とを施した。次いで120℃で乾燥し、さらに空気中500℃で3時間焼成して、MnO2とした。ITOでは、InCl3とSnCl2・2H2OとをInとSnとの原子比で10:1で混合し、pH12のアンモニア水中へ滴下して沈殿させ、沈殿を純水で洗浄し、遠心分離を施し、120℃の空気中で乾燥した。次いで空気中500℃で3時間焼成し、ITOとした。ITOでのInとSnの原子比は、例えば25:1〜4:1とする。
【0017】
Auの担持とアニオン導電性高分子の添加
HAuCl4・4H2Oの水溶液(濃度1mM)にアンモニア水を加えてpHを4〜5に調整し、焼成済みの金属酸化物とアンモニア水とを加えてpHを7.0とし、70℃で1時間撹拌した。この過程で、Auの微粒子が金属酸化物上に担持される。Auを担持させた金属酸化物に純水洗浄と遠心分離とを施し、空気中110℃で乾燥後に、空気中400℃で1時間の焼成を施した。Au濃度は、Auの質量と、金属酸化物とAuとの合計質量との比で0.5mass%以上で10mass%以下、特に1mass%以上で5mass%以下が好ましい。以上のようにして検知極の電極触媒を調製し、アニオン導電性高分子膜4と同じ組成のアニオン導電性高分子の1-プロパノール溶液を電極触媒と混合し、ペーストとした。このペーストをアニオン導電性高分子膜4の表裏にスクリーン印刷し、50℃で乾燥し、COセンサ2とした。アニオン導電性高分子濃度は金属酸化物がMnO2以外では5mass%、MnO2では20mass%としたが、一般には1mass%以上20mass%以下が好ましい。
【0018】
測定方法
図2に測定方法を示し、8は対極で、10はAuメッシュ、12は電圧計で検知極6と対極8間の起電力を測定し、配管14側に検知ガスを、配管16側に空気を、各々100ml/minずつ流した。周囲温度は30℃に固定し、相対湿度は検知ガス側も空気側もほぼ0%の乾燥雰囲気から100%の結露雰囲気までの範囲で変化させた。
【0019】
電極触媒の2次電子顕微鏡写真
電極触媒の2次電子顕微鏡写真を、図3(2Au/In2O3-ACP5mass%)、図4(2Au/SnO2-ACP5mass%)、図5(2Au/ZnO-ACP5mass%)に示す。In2O3とSnO2では2次粒子は塊状で粒度分布が広く、ZnOでは棒状で粒度が揃っている。
【0020】
2Au/In2O3-ACP5mass%電極触媒での特性
図6図11に、2Au/In2O3-ACP5mass%電極触媒での特性を示す。なお以下の特性は、湿度依存性の測定を除き、30℃で相対湿度57%の雰囲気で行った。図6はAuを含まないIn2O3-ACP5mass%電極触媒での特性を示し、還元性ガスに対する応答は小さくかつ緩慢で、製造後数週間程度で起電力はドリフトし、応答はやや速くなった。これに対して2mass%のAuを加えると、図7のように、COへの応答が速くかつ大きくなって、製造直後にはオーバーシュートを示し、かつ水素に対するCOへの選択性が生じ、さらに起電力は経時的に安定していた。2Au/In2O3-ACP5mass%電極触媒を用いたセンサでの、応答波形のCO濃度依存性を図8に示し、500ppm以上のCOでオーバーシュートが生じた。図9は、同じ電極触媒での、H2への応答波形を示す。図10は起電力のCO濃度とH2濃度への依存性を示し、COではH2よりも低い濃度から起電力の変化が始まった。図11はAuを担持したIn2O3への熱処理の効果を示し、400℃での熱処理を省略し、110℃での乾燥のみとするか、あるいは100℃での水素中還元を施すと、オーバーシュートは解消した。
【0021】
以上のように、2mass%のAuをIn2O3に担持させることにより、CO感度とCOへの応答速度とが増し、H2に対するCOへの選択性が得られ、製造後の特性のドリフトが小さくなった。またCOへの応答でオーバーシュートが生じたが、Auの担持後の熱処理条件を選択すると、オーバーシュートを小さくできた。さらに2mass%程度のAu濃度で良いので、使用するAuの量を少なくできる。
【0022】
2Au/SnO2-ACP5mass%電極触媒での特性
図12図13に、2Au/SnO2-ACP5mass%電極触媒での特性を示し、Auを担持しないと(図12)、COへの応答もH2への応答も僅かである。これに対し2mass%のAuを担持すると、CO感度が増すと共にCO選択性が得られ、COへのオーバーシュートが生じ、製造後の特性のドリフトは小さかった。
【0023】
2Au/ITO-ACP5mass%電極触媒での特性
図14図15に、2Au/ITO-ACP5mass%電極触媒での特性を示し、ITOはInとSnとを原子比で10:1で含有している。Auを担持しないと(図14)、COへの応答もH2への応答も僅かで、これに対し2mass%のAuを担持すると、CO感度が増し、かつCO選択性が得られた。
【0024】
図16に2Au/In2O3-ACP5mass%電極触媒での応答波形の相対湿度依存性を示し、図17に2Au/SnO2-ACP5mass%電極触媒での相対湿度依存性を示す。いずれもdry雰囲気では特異な応答波形を示すが、2Au/In2O3-ACP5mass%電極触媒では相対湿度が40-100%で湿度依存性は小さく、2Au/SnO2-ACP5mass%電極触媒では相対湿度が20-100%で湿度依存性は小さい。従って通常の居住雰囲気では、COを小さな湿度依存性で検出できる。
【0025】
1Pd/SnO2-ACP5mass%電極触媒での特性
Auの代わりに他の貴金属を金属酸化物に担持させて、特性を調査した。1mass%のPdをSnO2に担持させた際の結果を図18図20に示す。硝酸Pdの水溶液中にSnO2の粉体を加え、超音波を10分間加えた後に、空気中110℃で乾燥し、粉砕して、水素中350℃で60分間還元し、1mass%のPdを担持するSnO2を調製した。このSnO2に、ACP濃度が5mass%となるようにアニオン導電性高分子を混合し、実施例と同様にしてCOセンサとした。製造直後には高いCO感度を示すが、数週間で失活した(図18)。なお製造直後の起電力のCO濃度依存性は48.9mV/decadeで(図19)、2Au/In2O3-ACP5mass%電極触媒での27.6mV/decadeよりも大きい。図20に相対湿度依存性を示し、乾燥雰囲気からRH100%まで正常な応答を示すが、相対湿度20%から100%までの起電力の変化が大きく、かつ湿度依存性に規則性がない。従って湿度センサ等で相対湿度を測定しても、湿度依存性の補正が難しい。
【0026】
ZnO,Co3O4,MnO2での特性を図21図22図23に示す。2Au/ZnO-ACP5mass%電極触媒を用いると、製造直後はCOに高感度で応答も速いが、数週間で失活した(図21)。2Au/Co3O4-ACP5mass%電極触媒では、COへの応答もH2への応答も小さく、かつ遅かった(図22)。2Au/MnO2-ACP5mass%電極触媒では、COへの応答もH2への応答も極く小さかった(図23)。
【0027】
これらのことを整理すると、Pd等の他の貴金属ではなく、Auを金属酸化物に担持させることと、金属酸化物をIn2O3,SnO2,あるいはITOとすることとにより、
・ CO選択性を得、
・ COへの応答を速くし、
・ 製造後の特性のドリフトを小さくすることができた。
【0028】
補足
固体高分子電解質膜にアニオン導電性高分子の代わりにプロトン導電体を用い、あるいは電極触媒中のアニオン導電性高分子を、プロトン導電体に代えると、検知極でのCOの検出に関与する反応は、(1)式から(2)式で表されるものに変化すると考えられる。
CO+2OH→CO2+H2O+2e (1)
CO+H2O→CO2+2H++2e (2)
いずれの反応も、Au担持の金属酸化物上でのCOの酸化反応で、(1)式の反応を効率的に行える電極触媒は、(2)式の反応も効率的に行えると考えられる。従って、固体高分子電解質膜にプロトン導電体を用いても良く、また電極触媒中のアニオン導電性高分子をプロトン導電体に代えても良いと考えられる。また実施例の検知極材料にさらに、カーボンブラック等の電子導電体を加えても良い。さらに(1)式の反応を効率的に行える電極触媒では、検知極と対極間の反応電流も増加するので、ガスセンサの起電力を測定する代わりに、反応電流を測定しても良い。検知極と対極間の起電力を測定し、対極は一定の温湿度の空気雰囲気に接触していたので、対極の触媒活性はCOセンサの特性へ僅かしか寄与していないはずである。従って対極はPt-カーボンブラック−固体高分子電解質,RuO2−カーボンブラック−固体高分子電解質等の在来の電極触媒でも良い。
【0029】
実用的なCOセンサの構造としては、金属缶と封孔体とを有するボタン電池型のパッケージを用い、対極を缶と封孔体の一方に、検知極を他方に接触させ、検知極を設けた側で缶もしくは封孔体にガス導入孔を設ければよい。
【符号の説明】
【0030】
2 COセンサ
4 アニオン導電性高分子膜
6 検知極
8 対極
10 Auメッシュ
12 電圧計
14,16 配管
図1
図2
図6
図7
図8
図9
図10
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図3
図4
図5
図11