(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075886
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ロータ変位角測定方法
(51)【国際特許分類】
H02P 9/00 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
H02P9/00 Z
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-41361(P2014-41361)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-176293(P2014-176293A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】A 183/2013
(32)【優先日】2013年3月8日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】504344576
【氏名又は名称】ゲーエー ジェンバッハー ゲーエムベーハー アンド コー オーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ニードリスト
【審査官】
マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102010001248(DE,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01416623(EP,A1)
【文献】
特表2011−519262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(3)を有しており、電源ネットワーク(1)に電気的に接続された同期発電機(2)のロータ変位角(δ)を測定する方法であって、
前記ロータ(3)の回転時に、少なくとも1つの回転速度信号(5)を評価装置(6)に伝達する少なくとも1つの回転速度測定装置(4)が利用され、
前記電源ネットワーク(1)の電圧信号(9)の各周期(τ)毎に、周波数信号(10)を前記評価装置(6)に伝達する周波数測定装置(7)が利用され、
前記周期(τ)において、前記回転速度信号(5)が伝達された時刻と前記周波数信号(10)が伝達された時刻との間の時間差である時間(T)は前記評価装置(6)によって測定され、
前記ロータ変位角(δ)は前記測定された時間(T)に応じて推定され、本方法による校正のため、前記測定された時間(T)は、前記電源ネットワーク(1)との前記同期発電機(2)の同期化が実行された後に、実質的に前記同期発電機(2)への負荷の適用がない場合、無負荷時間(TL)として前記評価装置(6)に保存され、
前記ロータ変位角(δ)を測定するために、前記測定された時間(T)から前記無負荷時間(TL)を差し引いて差分時間(TD)が導出され、
前記ロータ変位角(δ)は該差分時間(TD)に応じて推定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ロータ(3)の各回転周期において、少なくとも1つの回転速度信号(5)を評価装置(6)に伝達する少なくとも1つの回転速度測定装置(4)が利用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ロータ(3)は内燃機関(12)、特にガスエンジンのエンジンシャフト(11)に機械的に強固に接続されており、
前記少なくとも1つの回転速度測定装置(4)は、前記内燃機関(12)の前記エンジンシャフト(11)またはカムシャフトの各回転に対して、前記少なくとも1つの回転速度信号(5)を前記評価装置(6)に伝達することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの回転速度測定装置(4)はセンサー(4a)を含んでおり、
該センサー(4a)は、前記ロータ(3)の周囲または前記エンジンシャフト(11)の周囲に沿って任意に配置できることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの回転速度測定装置(4)は、前記センサー(4a)と協調する信号装置(4b)を含んでおり、
該信号装置(4b)は、前記同期発電機(2)の固定子(15)の周囲に沿って、または前記内燃機関(12)のハウジングに配置できることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記差分時間(TD)は、ロータ変位角の角度に比例的に変換され、実質的に0秒である前記差分時間(TD)の値は、0°のロータ変位角(δ)に相当し、
前記電源ネットワーク(1)の前記電圧信号(9)の前記周期(2)の実質的に1/4の前記差分時間(TD)の値は、90°のロータ変位角(δ)に相当することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
5°を超える、好適には7°を超える測定されたロータ変位角(δ)では、磁極のずれの可能性を警告するために、前記評価装置(6)によって警告信号(14)が出力されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記回転速度信号(5)の伝達と前記周波数信号(10)の伝達との間の前記時間(T)の測定の動作時に、前記電源ネットワーク(1)の前記電圧信号(9)に対するネットワーク周波数の変動を考慮するため、前記電圧信号(9)の実際の周期が測定され、
該実際の周期によって細分化された予め決定可能な理論的な周期から導出される少なくとも1つの校正係数が決定され、
前記測定された時間(T)は該少なくとも1つの校正係数を乗算されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記電圧信号(9)の前記実際の周期は、2つの連続的周波数信号(10)の時間差の測定によって決定できることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
校正係数は、前記無負荷時間(TL)を測定する動作時に導出され、該無負荷時間(TL)は、前記校正係数が乗算され、標準化された無負荷時間として前記評価装置(6)に保存されることを特徴とする請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
校正係数は差分時間(TD)を測定する運用時に導出され、標準化された時間は、前記測定された時間(T)に該校正係数を乗算することで導出され、
前記ロータ変位角(δ)を測定するため、標準化された差分時間が、標準化された時間から標準化された無負荷時間を差し引いて導出され、
前記ロータ変位角(δ)は該標準化された差分時間に応じて推定されることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータを有し、電源ネットワークに電気的に接続された同期発電機のロータ変位角の測定(決定)方法に関する。ロータの回転中に、特にロータの各回転中に、評価装置に少なくとも1つの回転速度信号を伝達する少なくとも1つの回転速度測定装置が利用される。また、電源ネットワークの電圧信号の各周期に対して評価装置に周波数信号を伝達する周波数測定装置が提供される。さらに、回転速度信号の伝達と周波数信号の伝達との間の時間は評価装置によって測定され、ロータ変位角は測定された時間に基づいて推定される。
【背景技術】
【0002】
電源ネットワークに電気的に接続された同期発電機を使用するとき、同期発電機の容量性運用がしばしば必要になる。この場合、同期発電機の送られた容量性無効電力は、例えば、力率cosψ<0.95capを達成することが可能となる程度にまで増加される。容量性無効電力の増加は、同期発電機の不足励磁によって達成できるが、この場合、このことで同期発電機の安定限界への接近が不可避となる。
【0003】
この点で、同期発電機の運用モードの安定性に関する測定対象はロータ変位角であることが知られている。電源ネットワークに接続された同期発電機の場合には、ロータ変位角または負荷角は、同期発電機の固定子上の磁極からの同期発電機のロータの磁極の離脱を表す。この場合、ロータの磁極は、普通は、ロータのDC供給励磁機巻き付け部によって発生し、同期発電機の固定子の磁極は、典型的には三相特性である電力ネットワークの電圧によって発生する。この電圧は固定子の対応する巻き付け部に印加される。従って、フェーザモデルでは、ロータ変位角は固定子電圧とロータ電圧との間の角度を説明し、同期発電機運用モードでのロータ電圧は固定子電圧を導く。電源ネットワークによる上昇負荷、すなわち、同期発電機による増加電力供給によってロータ変位角は増加する。もしロータ変位角が大きくなり過ぎれば、同期発電機の不安定化を導く。
【0004】
ロータ変位角を測定(決定)するには、例えば、DE102010001248A1から、同期発電機のロータからの回転速度信号の発生と、電源ネットワークの電圧信号の電圧ゼロ交点の発生との間で検出された時間によってロータ変位角を推定することが知られている。いかに複雑および大変であっても、そこで説明される方法には校正(補正)が必要である。よって電圧変動内の該当点はロータの標的回転位置に関係しなければならず、その結果、回転速度測定装置のセンサーはロータに適切にフィットし、センサーがロータの標的回転位置に到達したときに出力信号を発生しなければならない。言い換えると、その方法が運用されるには、それぞれの校正運用で回転速度測定装置のセンサーは、同期発電機において測定される位置に正確に配置されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来のものに勝る、ロータ変位角を測定(本明細書においては“測定”と“決定”は互換的に使用されている)する方法の提供である。特に本発明は本発明方法の校正を単純化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は請求項1の特徴によって達成される。本発明の有利な形態は従属請求項において記載されている。
【0007】
本発明によれば、本発明方法の校正のために、評価装置内の無負荷時間として、同期発電機に実質的に負荷を適用せず、電源ネットワークとの同期発電機の同期後に測定された時間が保存される。ロータ変位角を測定するために、無負荷時間を差し引いた測定された時間から差分時間が導出され、ロータ変位角はその差分時間に応じて推定される。
【0008】
同期発電機に作用する負荷が存在しない状態では、すなわち、同期発電機の無負荷状態では回転変位角は0°である。よって、電源ネットワークとの同期発電機の同期化後に測定される回転速度信号の伝達と周波数信号の伝達との間の時間が、同期発電機の負荷下で回転変位角を測定する後続の運用のための基準値として無負荷状態で利用できる。無負荷状態で測定された時間は無負荷時間として評価装置に保存される。支配的ロータ変位角を確認するため、その基準時間または無負荷時間が測定された時間からそれぞれ差し引かれる。よって本発明の方法は回転速度測定装置のセンサーの地理学的配置とは無関係である。すなわち、回転速度測定装置は説明した通りに配置できる。言い換えると、本発明の方法の校正では、方法が運用されるように回転速度測定装置のセンサーを配置しなければならない正確な位置を測定する運用は不要になる。回転速度測定装置のセンサーは、センサーの配置に関する方法の訂正が、ロータ変位角を測定するための無負荷時間を測定して利用することによって実行されるので任意の位置に配置できる。
【0009】
周波数信号は、電圧信号の各周期に対する固定子電圧のそれぞれの最大値であり得る。あるいは好適には、それぞれの(例:正)電圧ゼロ交点であり得る。電圧信号の単位周期あたりに正確に1つの周波数信号が評価装置に伝達されることが望ましい。この場合、50Hzの運用周波数の電源ネットワークでは、周波数信号は20ミリ秒(ms)ごとに評価装置に送られる。
【0010】
また本発明の方法は、本発明の校正が支配的要因に関して常に訂正を施すので、同期発電機の磁極数や、回転速度測定装置のセンサー数とは無関係に機能する。よって、例えば、同期発電機のロータでの任意位置に配置された回転速度センサーを備えた2極同期発電機では、ロータ変位角を測定する運用は電圧信号の各周期に対して実行される。ロータに1つだけの回転速度センサーを備えた4極同期発電機では、ロータ変位角の測定運用は、例えば、電圧信号の2周期ごとに実行される。もし4極同期発電機が、例えば、180°変位して配置された2つのロータの回転速度センサーを備えているなら、ロータ変位角の測定運用は電圧信号の各周期に対して実行されるであろう。これら全ての形態では、本発明の校正運用は支配的な係数に関わる自動訂正に導く。
【0011】
特に好適な実施形態では、ロータは、内燃機関、特にガスエンジンのエンジンシャフトに物理的頑丈に接続される。少なくとも1つの回転速度測定装置は、内燃機関のエンジンシャフトまたはカムシャフトの各回転に対して少なくとも1つの回転速度信号を評価装置に伝達する。これで、通常は内燃機関に既に存在する回転速度測定装置が、回転速度信号のための信号装置として利用できるという利点が提供される。よって、例えば、内燃機関のクランクシャフトまたはカムシャフトに配置されたセンサーは、評価装置に回転速度信号を送ることができる。この場合、本発明の校正運用のおかげで、対応するセンサーを定められた位置に正確に配置する必要性を排除することも可能である。
【0012】
言い換えると、少なくとも1つの回転速度測定装置はセンサーを含み、センサーはロータの周囲またはエンジンシャフトの周囲に望むように配置でき、少なくとも1つの回転速度測定装置はセンサーと協調する信号装置を含み、信号装置は同期発電機の固定子の周囲または内燃機関のハウジングに望むように配置できる。
【0013】
加えて、本発明の校正運用によって、センサーまたはピックアップを回転速度信号のための信号装置として内燃機関のカムシャフトで使用することも可能である。50Hzの運用周波数である電源ネットワークでは、電圧信号の周期は20msである。内燃機関のカムシャフトは、例えば、分速750回転の速度で回転できる。カムシャフトに配置されたセンサーは80msごとのみに回転速度信号を伝送するであろう。しかし、それは回転速度信号の伝達と周波数信号の伝達との間の時間を測定するための引き金である伝達された回転速度信号ごとであるため、その場合には、ロータ変位角の測定運用は、電圧信号の4周期ごとに発生する。校正によって、ロータ変位角測定運用は、さらなる物理的妨害または調節を施すことなく可能になる。
【0014】
一般的に、複数の磁極pを備えた同期発電機の場合には、実際のロータ変位角の測定運用はロータの回転ごとに行われる。すなわち各pの周期ごとに行われる。例えば、750回転/分で回転するロータでの回転速度測定装置は80msごとにのみ信号を送り、50Hzのネットワーク周波数では4電圧ゼロ交点おきにのみ評価されるであろう。ロータの回転速度測定装置またはセンサーの数を増加させることで、特にスローな運用の同期発電機のために所望されるように、測定の正確性を増加させることが可能である。ロータでの複数のセンサー(ピックアップ)は好適には周辺に均等に配置されるべきであるが、本発明のような個別校正タイプの回転速度測定装置の任意の配置を採用することも可能である。
【0015】
本発明の好適実施形態では、差分時間をロータ変位角の角度に比率変換し、実質的にゼロ秒である差分時間の値を0°のロータ変位角に対応させ、電源ネットワークの電圧信号の周期の実質的に1/4の差分時間の値を、90°のロータ変位角に対応させることができる。90°のロータ変位角は理論的磁極滑動量限界を表す。それを超えると同期発電機が不安定になり、ロータに接続されたエンジンシャフトを介して内燃機関によって提供される物理的動力は望む通りに電力に変換できなくなり、内燃機関は滑動し始める。
【0016】
50Hzの運用周波数の電源ネットワークでは、電圧信号の周期は20msである。フェーザ図では、それは360°の電圧ベクトルの1完全回転に対応する。その周期の1/4(90°に相当)は、そのような電源ネットワークでは5msである。よって、5msの測定された差分時間は90°のロータ変位角に相当するであろう。
【0017】
60Hzの運用周波数の電源ネットワークでは、電圧信号の周期は16.667msである。その1/4は4.167msである。よって、4.167msの測定された差分時間は、その電源ネットワークでは90°のロータ変位角に相当するであろう。
【0018】
従って、電源ネットワークの支配的運用周波数を採用することで、本発明の方法は、異なる運用周波数が関与する電源ネットワークと共同で利用が可能である。
【0019】
特定の別形態においては、5°を超える、好適には7°を超える測定されたロータ変位角では、滑動の兆候を信号するために評価装置によって警告信号が発せられる。このように、早期の段階で間に合うように反応することが可能であり、同期発電機および内燃機関に相当なダメージを引き起こす前に、例えば、同期発電機が電源ネットワークから分離したり、励磁電圧が増加するような実際の磁極滑動(磁極の滑り)が発生する前にでさえも反応することができる。
【0020】
通常は磁極滑動限定(磁極のずれ、磁極の滑りの限定)を備えた同期発電機の製造業者によって特定される軌跡曲線が所与の額面電圧のために適用され、加えて、しばしば未知の大きさの保留分を含むため、同期発電機を、本発明の方法に従って実際の支配的ロータ変位角を測定することで、その磁極滑動限界(磁極の滑りの限界)近くで運用することが可能である。このように、同期発電機は、費用が高い同期発電機をオーバーサイズする必要なく容量性運用範囲でさらに良好に利用することができる。
【0021】
電源ネットワークの電圧信号の周期は一定の変動の可能性があるため、ロータ変位角の測定の正確性のためには、これら変動をロータ変位角の測定運用に組み入れることが有利である。従って、回転速度信号の伝達と周波数信号の伝達との間の時間を測定する運用で電源ネットワークの電圧信号に関するネットワーク周波数変動を考慮するため、電圧信号の実際の周期が測定され、実際の周期によって細分化される予め決定可能な理論的周期から導出される少なくとも1つの校正係数が決定され、測定された時間はその少なくとも1つの校正係数が乗算されるようになっている本発明の実施形態は特に有利である。
【0022】
この点で、予め決定可能な理論的周期は、例えば、50Hzの運用周波数が関与する電源ネットワークでは20msであり、60Hzの運用周波数が関与する電源ネットワークでは16.667msであり得る。電圧信号の実際の周期は、好適には、2つの連続周波数信号の時間差を測定することで確認できる。
【0023】
この点で、本発明の特定変形形態では、校正(補正)係数が無負荷時間を測定する運用時に導出され、無負荷時間には校正係数が乗算され、標準無負荷時間として評価装置に保存される。さらに、校正係数は差分時間を測定する運用で導出され、標準時間は校正係数を予め決定された時間に乗算することで導出され、ロータ変位角の測定には、標準差分時間が標準時間から標準無負荷時間を差し引いて導出され、ロータ変位角は標準差分時間によって推定される。
【0024】
言い換えると、当初に本発明の方法の校正で電源ネットワークの電圧信号の周期の変動を考慮するため、電圧信号の実際の支配的周期が検出でき、回転速度信号の伝達と周波数信号の伝達との間の測定された時間は、予め決定できる理論的周期に関して校正係数によって標準化でき、標準無負荷時間として評価装置に保存できる。続いて、それぞれのロータ変位角を測定するため、時間を測定する続く運用において、電圧信号のそれぞれの実際の支配的周期も検出でき、それぞれの測定された時間は校正係数によって予め決定できる理論的周期に標準化できる。標準化された時間と、標準化された無負荷時間との差は、予め決定できる理論的周期に関して標準化された差分時間を提供し、そこからロータ変位角が推定できる。
【0025】
本発明のさらなる詳細と利点とを図面を利用して以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】内燃機関に接続された同期発電機と、ロータ変位角を測定するための評価装置とを示す。
【
図2】同期発電機と、ロータ変位角を測定するための評価装置とを示す。
【
図3】(a)から(e)同期発電機の異なる運用モードにおける電圧信号、周波数信号、および回転速度信号の時間に対する変動を示す。
【
図4a】回転速度測定装置が無負荷状態にて所望通りに配置された同期発電機のフェーザ図を示す。
【
図4b】同期発電機に負荷を備えた
図4aで示されたフェーザ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、固定子15と、固定子15に対して回転できるロータ3とを含んだ同期発電機2を概略的に示す。3つの固定子巻き部16が固定子15に従来式に提供され、三相電源ネットワーク1の3つのフェーズ部17に接続されている。この実施例では、ロータ3は2磁極型であり、内燃機関12のエンジンシャフト11に非回転的に接続されており、例えば、固定ガスエンジンの形態でよい。エンジンシャフト12は回転速度nで回転する。回転速度測定装置4は内燃機関12に配置されている。回転速度測定装置4は回転速度センサーの形態であり、従来から知られており、エンジンシャフト11に配置されたセンサーまたはピックアップ4aと、内燃機関12のハウジングに姿勢的に安定した関係で配置され、エンジンシャフト11の1回転ごとに第1信号線18によって回転速度信号5を評価装置6に送る信号装置4bを含む。同様に、第2信号線19によって対応するフェーズ部17の電圧信号9の周期τのそれぞれで、周波数信号10は、電源ネットワーク1のフェーズ部17に接続されている周波数測定装置7によって評価装置6に送られる。
【0028】
ロータ変位角δを測定するため、まず、電源ネットワーク1での無負荷状態にある同期発電機2の同期化後の校正のため、回転速度信号5の伝達と周波数信号10の伝達との間の時間Tが評価装置6によって測定され、無負荷時間T
Lとして評価装置6に保存される。この校正運用のためには同期発電機2が無負荷状態であることが重要である。すなわち、実質的に負荷が存在しないことが重要である。校正が実行された後に、ロータ変位角δを測定するため、差分時間T
Dが回転速度信号5の伝達と周波数信号10の伝達との間で測定された時間Tから、保存された無負荷時間T
Lを差し引いて導出できる。この場合、ロータ変位角δを差分時間T
Dに応じて推定することが可能である。
【0029】
同期発電機2に負荷が存在する場合には、内燃機関12が磁極ホイール部材またはロータ3をエンジンシャフト11の回転方向で前方に付勢するとき、同期発電機2の運用モードでロータ変位角δは理論的には90°増加する(理論的滑動限界)。この場合、回転速度信号5は周波数信号10と比してますます早く発生し、回転速度信号5の伝達と周波数信号10の伝達との間の時間Tは増加し、特にロータ変位角δの調節に実質的に比例的に増加する。
【0030】
従って、50Hzの運用周波数が関与する電源ネットワーク1と、90°であるロータ変位角δの理論的最大角では、時間Tは無負荷時間T
Lプラス5msとなろう。一般的に、差分時間T
Dは検出された時間Tから無負荷時間部T
Lを差し引いて導出でき、ロータ変位角δは、差分時間T
Dとロータ変位角δとの間の割合で決定できる。時間T(期間、time duration)を測定する運用が適したレベルの解像度および正確性で実行されるなら、例えば、約0.1msの解像度で実行されるなら、ロータ変位角δは、実質的に1°の精度で測定できる。50Hzの運用周波数が関与する電源ネットワーク1の場合には、5msの差分時間T
D(電圧信号9の周期τの1/4)は90°のロータ変位角δに相当する。従って、1°のロータ変位角δは0.055msの差分時間T
Dに相当する。
【0031】
測定されたロータ変位角δは評価装置6によって、例えば、より高性能である制御システムに出力できる。磁極がずれた可能性を警告するため、約8°の測定されたロータ変位角にて警告信号14が評価装置6によって出力される。
【0032】
一般的に、回転速度測定装置4は内燃機関12の他の部位に配置することもでき、これは物理的な回転周回を表し、あるいは同期発電機2に設置できる。
【0033】
図2は
図1で示す同期発電機2を示す。相違点は、この実施例では、
図1で示すような内燃機関12の代わりに、回転速度測定装置4が同期発電機2自体に配置されていることである。この実施例では、回転速度測定装置4はロータ3に配置されたセンサーまたはピックアップ4aと、固定子15に配置された信号装置4bとを含む。ロータ3は回転速度nで回転する。ピックアップ4aが信号装置4bを通過する度に、回転速度信号5が評価装置6に送られる。
【0034】
図3(a)は、電源ネットワーク1のフェーズ部の電圧信号9の電圧変動を例示する。フェーズ部17に接続された周波数測定装置7(
図1)は、電圧信号9の各正ゼロ交点で周波数信号10を供給し、それを評価装置6に伝達する。
図3bで示すように、周波数信号10は電圧信号9の各周期τ(繰り返し時間、時間間隔、period duration)で評価装置6に伝達される。
【0035】
図3(c)は、同期発電機2の無負荷状態における
図1または
図2で示す回転速度測定装置4によって評価装置6に伝達される信号5の時間に対する変動を示す。無負荷状態での回転速度測定装置4のそれぞれの地理的配置によって、回転速度信号5の伝達と周波数信号10の伝達との間に所与の無負荷時間T
L(無負荷の期間、no-load time duration)が存在する。その無負荷時間T
Lは評価装置6に保存でき、同期発電機2の負荷時にロータ変位角δを測定するのに使用できる。
【0036】
図3(d)は、同期発電機2の負荷時における
図3(c)で示す回転速度信号5の時間に対する変動を示す。負荷時では無負荷状態に較べてさらに早く伝達された回転速度信号5により表されるロータ変位角δが存在する。それは時間Tを提供し、回転速度信号5の伝達と周波数信号10の伝達との間で、無負荷状態に関して変化する。ロータ変位角δを測定するため、無負荷時間T
Lが測定された時間T(期間、time duration)から差し引かれ、ロータ変位角δに相当する差分時間T
Dが提供される。
【0037】
図3(e)は、90°のロータ変位角に対応する滑動限界における
図3(c)で示す回転速度信号5の時間に対する変動を示す。一方、90°のロータ変位角は電圧信号9の周期τの1/4の差分時間T
Dに対応する。
【0038】
図3(a)から
図3(e)の時間に対する変化は、本発明の方法の形態に関するものであり、そこで回転速度信号5の伝達から周波数信号10の伝達までの時間Tが測定される。本発明の方法は、周波数信号10の伝達から回転速度信号5の伝達までの時間Tが測定される形態でも設計できる。
【0039】
図4aは、同期発電機2の磁極ホイール部材またはロータ3を概略的に示しており、ピックアップ4aは回転速度測定装置4のものに配置され、電源ネットワーク1のフェーズ部17の電圧信号9のベクトル図が重ねられている。矢印fはフェーザ図の回転方向を示す。無負荷状態では、知られているようにロータ変位角δは実質的に0°である。回転速度信号5の伝達と周波数信号10の伝達との間で、回転速度測定装置4またはそのピックアップ4aとパルス伝達装置4bのそれぞれの地理的配置に応じて無負荷時間T
Lが存在し、評価装置6に保存できる。
【0040】
図4bは
図4aの概略図を示し、同期発電機2は負荷時である。この場合、知られた形態で、同期発電機2の磁極ホイール部材またはロータ3は、フェーザ図において電圧信号9のベクトルに関してベクトル回転fの方向で前方に付勢される。これで、回転速度信号5の伝達と周波数信号10の伝達の間に無負荷状態に関して増加した時間Tが与えられる。測定された時間Tから無負荷時間T
Lを差し引くことで、ロータ変位角δに対応する差分時間T
Dが与えられる。