特許第6075887号(P6075887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6075887食肉スライサーにおける材料肉の移送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075887
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】食肉スライサーにおける材料肉の移送装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20170130BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20170130BHJP
   A47J 43/20 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B26D3/28 610P
   B26D7/06 D
   A47J43/20
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-78179(P2014-78179)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-178163(P2015-178163A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年7月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152815
【氏名又は名称】株式会社日本キャリア工業
(72)【発明者】
【氏名】越智 一志
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−040095(JP,U)
【文献】 特開2011−110696(JP,A)
【文献】 特開昭58−155200(JP,A)
【文献】 実開昭59−074098(JP,U)
【文献】 実開昭55−041031(JP,U)
【文献】 実開昭53−107692(JP,U)
【文献】 実開平03−029295(JP,U)
【文献】 実開昭62−085399(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
A47J 43/20
B26D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉箱における下部コンベヤとの間に挟持した材料肉を回転刃へ向けて移送する複数個のローラーが所定の幅寸法を有する溝部を隔てて回転軸に固着された上部送りローラーを昇降自在に設けるとともに、下部コンベヤの一側方に立設され、後端部を支持する支持部材を肉箱に横設されたガイド棒に嵌合させて下部コンベヤ上面に沿って幅方向に移動可能とされた幅寄せ板を備えていて、幅寄せ板の先端部には上部送りローラーの溝部が嵌入して昇降可能な切欠き部が形成された食肉スライサーにおける材料肉の移送装置であって、切欠き部は上部送りローラーの昇降範囲内においては常に一部が溝部内に位置して幅方向の荷重に対して幅寄せ板の先端部を支持するとともに、所定の範囲内におけるいずれかの溝部が切欠き部に嵌入された定位置においてのみ幅寄せ板が幅方向に移動しないように幅寄せ板の後端部を支持する支持部材を溝部毎に段階的に保持する保持手段が設けられたことを特徴とする食肉スライサーにおける材料肉の移送装置。
【請求項2】
肉箱における下部コンベヤとの間に挟持した材料肉を回転刃へ向けて移送する上部送りローラーを昇降自在に設けるとともに、下部コンベヤの一側方に立設され、肉箱の幅方向へ移動可能に設けられた幅寄せ板を備えた食肉スライサーにおける材料肉の移送装置において、上部送りローラーは、複数個のローラーが所定の幅寸法を有する溝部を隔てて回転軸に固着されたものであって、幅寄せ板は後端部を支持する支持部材を肉箱に横設されたガイド棒に嵌合させて下部コンベヤ上面に沿って幅方向に移動可能とされるとともに、先端部には溝部が嵌入する切欠き部が形成されていて、切欠き部に所定の範囲内におけるいずれの溝部が嵌入しても幅寄せ板を保持できる保持手段が設けられており、切欠き部は上部送りローラーの昇降を妨げないよう、しかも、上部送りローラーの昇降範囲内においては常に幅寄せ板の一部が溝部内に位置する形状とされた食肉スライサーにおける材料肉の移送装置における幅寄せ板の保持手段が、切欠き部に所定の範囲内におけるいずれの溝部が嵌入されてもガイド棒に開けられた複数個の係止穴のいずれかに嵌合するノックピンを備えており、ノックピンを、弾機を介して出退自在に支持部材に保持させるとともに、弾機に抗してノックピンを出退させる操作部を肉箱の上方位置まで延設させたことを特徴とする食肉スライサーにおける材料肉の移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉スライサーにおける材料肉の移送装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る先行文献には、例えば特許文献1(特公昭51−33620号公報)がある。
本文献には、肉箱の下部に設けられた下部コンベヤとの間に材料肉を挟持して回転刃へ向けて送り出す上部送りローラーを昇降自在に設けるとともに、下部コンベヤの側方に立設され、肉箱の幅方向へ移動自在に設けられた幅寄せ板を備えた食肉スライサーにおいて、移動壁16(幅寄せ板に相当)を2本の螺子軸7、7´で螺着固定し、下部移送体2(下部コンベヤに相当)の下方から手前側まで延設されたハンドル14を回転させるとチェーン伝動機構を介して螺子軸7,7´が回転して移動壁16が移動させられる構成が開示されている。
【0003】
上述の特許文献1に記載された従来の構成は、複雑なため原価高であり、重量も嵩んで肉箱の往復移動させるものにおいては不利になるなどの問題があった。
【特許文献1】特公昭51−33620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述のような問題点を解消して構成が簡単で、移動可能な幅寄せ板が強固に保持できて、操作も容易な食肉スライサーにおける材料肉の移送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明においては、肉箱における下部コンベヤとの間に挟持した材料肉を回転刃へ向けて移送する複数個のローラーが所定の幅寸法を有する溝部を隔てて回転軸に固着された上部送りローラーを昇降自在に設けるとともに、下部コンベヤの一側方に立設され、後端部を支持する支持部材を肉箱に横設されたガイド棒に嵌合させて下部コンベヤ上面に沿って幅方向に移動可能とされた幅寄せ板を備えていて、幅寄せ板の先端部には上部送りローラーの溝部が嵌入して昇降可能な切欠き部が形成された食肉スライサーにおける材料肉の移送装置であって、切欠き部は上部送りローラーの昇降範囲内においては常に一部が溝部内に位置して幅方向の荷重に対して幅寄せ板の先端部を支持するとともに、所定の範囲内におけるいずれかの溝部が切欠き部に嵌入された定位置においてのみ幅寄せ板が幅方向に移動しないように幅寄せ板の後端部を支持する支持部材を溝部毎に段階的に保持する保持手段が設けられたことを特徴とする食肉スライサーにおける材料肉の移送装置としている。
又、肉箱における下部コンベヤとの間に挟持した材料肉を回転刃へ向けて移送する上部送りローラーを昇降自在に設けるとともに、下部コンベヤの一側方に立設され、肉箱の幅方向へ移動可能に設けられた幅寄せ板を備えた食肉スライサーにおける材料肉の移送装置において、上部送りローラーは、複数個のローラーが所定の幅寸法を有する溝部を隔てて回転軸に固着されたものであって、幅寄せ板は後端部を支持する支持部材を肉箱に横設されたガイド棒に嵌合させて下部コンベヤ上面に沿って幅方向に移動可能とされるとともに、先端部には溝部が嵌入する切欠き部が形成されていて、切欠き部に所定の範囲内におけるいずれの溝部が嵌入しても幅寄せ板を保持できる保持手段が設けられており、切欠き部は上部送りローラーの昇降を妨げないよう、しかも、上部送りローラーの昇降範囲内においては常に幅寄せ板の一部が溝部内に位置する形状とされた食肉スライサーにおける材料肉の移送装置における幅寄せ板の保持手段が、切欠き部に所定の範囲内におけるいずれの溝部が嵌入されてもガイド棒に開けられた複数個の係止穴のいずれかに嵌合するノックピンを備えており、ノックピンを、弾機を介して出退自在に支持部材に保持させるとともに、弾機に抗してノックピンを出退させる操作部を肉箱の上方位置まで延設させたものであることが好ましい。







【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、幅寄せ板の後端部を支持する支持部材を移動可能とし、先端部に形成された切欠き部を上部送りローラーに形成された溝部に嵌入させるだけの簡単な構成であって、幅寄せ板に対する幅方向の荷重に対して幅寄せ板の先端部の切欠き部が溝部で、後端部は支持部材でそれぞれ支持されるので幅寄せ板が強固に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】食肉スライサーにおける肉箱へ本発明を実施した状態を示す平面図
図2】同側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1図2を参照して本発明に係る肉箱1の構成について簡単に説明する。2は、肉箱1の上部に位置して昇降自在とされた上部送りローラーで、基部を肉箱1の側部に取り付けられた支持アーム3の前端に軸支された回転軸4に挿通されて肉箱の上部で回転する。
【0009】
上部送りローラー2は、通常は2組設けられるがここでは1組の構成について述べる。上部送りローラー2を構成する複数個のローラー2a、2a・・・は樹脂材料を用いることが好ましく、周面に歯型が形成されて複数個が幅方向に所定の幅寸法を有する溝部cを隔てて略下部コンベヤの幅一杯に亘り連設される。この複数個のローラー2a、2a・・は一体構成若しくは分割して連接してもよいが、少なくとも回転軸4の軸方向には移動しないように回転軸4に適宜な手段で固着される。
複数個のローラー2a,2a・・間には所定の幅寸法を有する溝部cを隔てることが必須である。この溝部cの幅方向の寸法は幅寄せ板7の厚み寸法より若干大きくする。この溝部cは隣接するローラー2a,2aの側面と中心部のボス外径とで形成される空間であるがボス外径は極力小さくして空間を広く確保することが好ましい。
【0010】
このように構成された上部送りローラー2は、回転軸4の駆動機構として図示しない伝動チェンなどが内装された支持アーム3の基部を中心として揺動し昇降自在とされていて、上部送りローラー2の周面が、肉箱1に載置される材料肉の上面に接し上部送りローラー2の重量によって材料肉を押圧しながら送り出す。
上部送りローラー2は、材料肉の高さ(切断方向に対する長さ)の変動に追随して幅寄せ板7の先端部切欠き部aの一部が常に溝部c内に位置した状態で昇降する。
5は支持アーム3に設けられたハンドルであって、肉箱内に材料肉を載置する場合などに図2の仮想線で示すように上部送りローラー2を支持アーム3ごと人手で持ち上げるときに使用する。
【0011】
6は、上部送りローラー2との間に材料肉を挟持して回転刃へ向けて移送する下部コンベヤで、下部コンベヤ6の両側方には下部コンベヤ6上に載置される材料肉の両側に当接して送り出し方向に案内する側壁が立設される。
本例においては、一側方(図1における下方)の側壁を側部コンベヤ8で構成し、反対側の側壁を、材料肉の幅寸法に合わせて下部コンベヤ5の上面に沿って幅方向に移動可能な幅寄せ板7とされる。
【0012】
幅寄せ板7を移動可能とする移動手段について説明する。幅寄せ板7は、略方形状の板材が用いられ、支持部材10に締結具でもって着脱自在とされる。
支持部材10は、幅寄せ板7の取り付け板11と取り付け板11が固着された支柱12と支柱12の下端部に固着された円筒形ボス13とによって構成される。
肉箱1における下部コンベヤ6の始端部(反上部送りローラー側)下方位置にはガイド棒14が横設される。即ち、ガイド棒14が下部コンベヤ6の回転軸と平行して幅方向に延設される。
このガイド棒14に支持部材10の円筒形ボス13が緩く嵌合されて幅寄せ板7が下部コンベヤ6の上面に沿って移動可能とされる。
【0013】
支持部材10には、下方に突設されたアームの先端に小ローラー15が軸支されていて、肉箱1に設けられたガイド溝16に案内されながら幅寄せ板7の水平姿勢を維持する。
この幅寄せ板7の水平姿勢維持手段は本例の小ローラー15とガイド溝16によるものに限らず例えばガイド棒14を2本併設して支柱12を2軸で支えるようにしてもよい。
【0014】
次にガイド棒14に緩く嵌合された円筒形ボス13がスライドして下部コンベヤ6の上面に沿って幅方向に移動される幅寄せ板7を移動しないように定位置に保持する保持手段について述べる。
ガイド棒14には複数の係止穴17,17・・・が開けられる。この係止穴17が開けられる範囲は、図1に示されるように最大寸法の材料肉を幅寄せ板7と側部コンベヤ8とで挟持可能な側部コンベヤ8から最も離れた位置付近から最小材料肉が挟持可能な側部コンベヤ8寄り所定位置までの範囲内であって、この範囲内において前述した上部送りローラー2を形成する複数のローラー2a、2a間に形成された溝部cに後述する幅寄せ板7の先端部の切欠き部aを嵌入させたときに係止穴17がノックピン18と合致するように構成される。
ノックピン18は、円筒形ボス13に開けられたガイド穴を貫通して、支持片19に取り付けられる。支持片19は、支柱12に弾機の一例である圧縮スプリング21を介してノックピン18を係止穴17に嵌合させるように弾圧した状態になるようスライド自在に支持された操作杆20の下端部に固着される。
操作杆20は、肉箱1の上方位置まで延設され先端に操作ボタン22が装着される。この操作ボタン22をスプリング21の張力に抗して押し下げるとノックピン18が係止穴17から抜け出して幅寄せ板7が支持部材10とともに移動可能となる。
【0015】
一方、幅寄せ板7の先端部には、材料肉の高さの変動に伴ない昇降する上部送りローラー2を構成する複数個のローラー2a,2a・・間に形成された所定寸法の溝部cに嵌入した状態で、上部送りローラー2の昇降を妨げないように、しかも、すくなくとも上部送りローラー2の昇降範囲内においては常に幅寄せ板7の一部が溝部cの空間内に位置する形状とされた切欠き部aが形成される。
本例においては、切欠き部aの形状を図2に示されるように上方が開放された弧状の長穴としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、上部送りローラー2が昇降する経路が解放され、且つ、上部送りローラー2の昇降範囲内においては常に幅寄せ板7の一部が溝部cの空間内に位置する形状であればよい。
【0016】
このように構成された肉箱1に材料肉を載置する際には、まずハンドル5を持って上部送りローラー2を支持アーム3ごと持ち上げて切欠き部aから抜け出させて退避位置に置き、幅寄せ板7と反対側の側壁である側部コンベヤ8との間に材料肉の幅寸法以上の空間が確保されていることを確かめてから材料肉を側部コンベヤ8側に片寄せて載置する。
次いで幅寄せ板7の幅方向に対する位置調節を行うが、まず支持部材10の操作ボタン22を押し下げノックピン18を係合穴17から抜き出し、ガイド軸上でフリーとなった幅寄せ板7を材料肉の側部に当接する位置付近であってノックピン18が近くの係合穴17に嵌合できる位置まで移動させてから操作ボタン22から手を離すとスプリング21の張力によってノックピン18が係合穴17に嵌入され幅寄せ板7が幅方向に移動しないように保持される。
【0017】
続いて上方位置まで持ち上げておいた上部送りローラー2を、ハンドル5を握って下げれば複数個のローラー2a、2aとの間に形成された溝部cの内いずれかの溝部c内へ幅寄せ板7の先端部の切欠き部aが嵌入される。
前述した所定の範囲内において、幅寄せ板7の先端部に形成された切欠き部aが溝部cに嵌入する位置にあればノックピン18がいずれかの係合穴17と合致するように予め関係位置が設定されている。
このように幅寄せ板7は、溝部cに先端部の切欠き部aを嵌入させた位置で段階的に保持されるので、幅寄せ板7と材料肉の側面との当接具合は必ずしも一様とならないが、材料肉が軟弱なチルド状態より品温が高ければ実用上の支障はない。
【0018】
上述したように幅寄せ板7は、後端部が支持部材10により支持され、前端部の切欠き部aが、上部送りローラー2に形成された溝部cに嵌入して支持されるので、肉箱1の下部コンベア6上に材料肉を載置した状態で幅方向に肉箱1を往復移動させてスライス作業を行う場合、幅寄せ板7が肉箱1の移動に伴って発生する材料肉の慣性による幅方向の荷重を受けても耐えられる。
又、幅寄せ板7を保持するノックピン18を係脱させる操作ボタン22を肉箱1の上方位置まで延設させたので操作が容易に行える。
【符号の説明】
【0019】
1 肉箱
2 上部送りローラー
4 回転軸
6 下部コンベヤ
7 幅寄せ板
10 支持部材
14 ガイド棒
18 ノックピン
a 切欠き部
c 溝部
図1
図2