(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075893
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】高層ビルでの迅速な救助が可能な消防車
(51)【国際特許分類】
A62B 1/20 20060101AFI20170130BHJP
A62C 27/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
A62B1/20 D
A62C27/00 506
【請求項の数】13
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-517425(P2014-517425)
(86)(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公表番号】特表2014-518108(P2014-518108A)
(43)【公表日】2014年7月28日
(86)【国際出願番号】CN2012077714
(87)【国際公開番号】WO2013000418
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年6月29日
(31)【優先権主張番号】201110178891.6
(32)【優先日】2011年6月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514003360
【氏名又は名称】ヨウ,リペン
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ヨウ,リペン
【審査官】
今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04577725(US,A)
【文献】
特開昭53−069499(JP,A)
【文献】
実開昭50−140296(JP,U)
【文献】
米国特許第04240520(US,A)
【文献】
登録実用新案第3040401(JP,U)
【文献】
特開2008−230584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 1/20
A62C 27/00
B63C 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高層ビルからの迅速な救助を行うことができる消防車であって、
前記消防車は、
車体(1)、
車体(1)に設置される片持ち梁(2)または消防用梯子、および、
片持ち梁(2)または消防用梯子の上方端部に設置される作業プラットフォーム(3)を含み、
車体(1)には弾性の緩衝装置が設けられ、作業プラットフォーム(3)が上下するなかで、弾性の緩衝装置と作業プラットフォーム(3)との間で延長したり、収縮したりすることができるシュート(5)は、弾性の緩衝装置と作業プラットフォーム(3)を接続し、シュート(5)の壁の下方部分には出口(6)が設けられ、入口(7)はシュート(5)の上部に設けられ、
弾性の緩衝装置は給水タンク(4)を備え、給水タンク(4)の上壁は弾性部材で作られ、シュート(5)の底部は、給水タンク(4)の上部の壁の中央部分に取付けられることを特徴とする消防車。
【請求項2】
シュート(5)に掛けられたケーブル(8)は入口(7)から出口(6)まで伸びており、ケーブル(8)には1つよりも多くの降下制御装置(9)が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の消防車。
【請求項3】
給水タンク(4)の側壁は弾性材料を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の消防車。
【請求項4】
シュート(5)の壁は、柔軟で、弾性と延性を備えた材料を含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の消防車。
【請求項5】
シュート(5)の壁の中央から上部はベロー形状をしており、出口(6)に設けられるシュート(5)の壁の下方部分はチューブ形状をしている、ことを特徴とする請求項4に記載の消防車。
【請求項6】
シュート(5)の壁は、柔軟で、弾性と延性を備えた材料を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の消防車。
【請求項7】
シュート(5)は、互いに対して延長および収縮することができる複数の伸縮自在管を
連続的に接続することにより作られる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の消防
車。
【請求項8】
入口(7)は作業プラットフォーム(3)に設けられる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の消防車。
【請求項9】
出口(6)は、シュート(5)の滑り方向に垂直で地面と平行な方向にある、ことを特徴とする請求項1または2に記載の消防車。
【請求項10】
シュート(5)の滑り方向は地面に対して斜角である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の消防車。
【請求項11】
作業プラットフォーム(3)には、片持ち梁(2)または消防用梯子の上方、下方、左方、および、右方の揺動移動、または、延長および収縮の調節を操作および制御するための制御装置と、救助を行うために必要な救助道具とが設けられ、救助道具は、スプレーガン、切断ツール、油圧プライヤー、油圧エキスパンダー、照明道具の少なくとも1つを含み、片持ち梁(2)または消防用梯子には、給水タンク(4)に格納された水を作業プラットフォーム(3)に運ぶための水路と、制御装置と救助道具の一部または全部を車体(1)に接続するための接続ラインとが設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の消
防車。
【請求項12】
給水タンク(4)の上壁は密封した二重層構造を含み、二重層構造によって定義される内部はガスで満たされる、ことを特徴とする請求項1に記載の消防車。
【請求項13】
片持ち梁(2)または消防用梯子は、上方、下方、左方、および、右方の揺動移動を調
節し、車体(1)に対する延長および収縮を調節することができる、延長−収縮および揺
動の機構を含み、作業プラットフォーム(3)は片持ち梁(2)または消防用梯子に対し
て水平方向の作業状態を維持することができる、ことを特徴とする請求項1または2に記
載の消防車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層ビルから迅速な救助を行うことができる消防車に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の既存の消防車は、高層ビルでの消火作業と救助活動を行う際に、上に上がるために主に消防用梯子を使用している。消防士たちは、高層ビルから要救助者を救助し、消防用梯子によって、ドア、窓、またはバルコニーから地面まで彼らを運ぶ。現在の消防用梯子には有効な安全保護が欠けており、救助の速度にも影響を与えているため、全工程の救助速度は遅く、高齢者、子ども、臆病な女性、および肥満の人を運ぶことは危険である。特に要救助者が大勢いる場合には、救助速度が遅いため、概して、多くの不必要な死傷者や損害を出してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
先行技術に存在する前述の問題を解決するために、本発明は、高層ビルからの迅速な救助を行うことができる消防車を提供する。それは、通常の消防車が備えている消火機能を有するだけでなく、高層ビルから要救助者を差し支えなく迅速に地面へと運ぶこともでき、それによって、人命や財産の損失を著しく減らすものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の技術的な解決策は以下の通りである:高層ビルからの迅速な救助を行うことができる消防車は、車体、車体に設置される片持ち梁または消防用梯子、および、片持ち梁または消防用梯子の上方端部に設置される作業プラットフォーム(operation platform)を含み、車体には弾性の緩衝装置が設けられ、作業プラットフォームが上下しながら、弾性の緩衝装置と作業プラットフォームとの間で延長したり、収縮したり、形を崩したりすることができるシュートは、弾性の緩衝装置と作業プラットフォームを接続し、シュートの壁の下方部分には出口が設けられ、入口はシュートの上部に設けられる。
【0005】
シュートに掛けられたケーブルは入口から出口まで伸びており、ケーブルには1よりも多くの降下制御装置が設けられている。降下制御装置は、上るための専用の装置または低速装置と呼ばれる装置を採用することができる。救助された人は、降下制御装置を引くことでシュートに沿って滑り降りることができ、それによって、滑り降りる速度を制御する。降下制御装置は、ケーブルに沿って滑り降りることができるとともに減速の機能を有する既存の様々なツールを採用することもできる。
【0006】
弾性の緩衝装置は給水タンクを含み、給水タンクの上壁は弾性材料で作られ、シュートの底部は、給水タンクの上壁の中央部分に取り付けられる(縁部でない限り、それは厳密な中央の位置には限定されない)。
【0007】
給水タンクの側壁は好ましくは弾性材料で作られる。したがって、給水タンク全体が同様に袋状の形状を形成する。給水タンクの上部は、給水タンクの水位とともに上昇および下降することがある。救助された人が滑り落ちる際に生じる衝撃力は、水によって生成された緩衝によって著しく減らすことができ、その結果、滑り落ちる速度は効果的に緩衝され減少する。
【0008】
好ましい実施形態について、弾性の緩衝装置は、ゴムパッド、フォームパッドまたはクッションなどの、落下する物体のための弾性緩衝の機能を有する様々な装置を採用することができる。
【0009】
本発明の前述の技術的な解決策では、弾性の緩衝装置と作業プラットフォームとの間で接続されるシュートを、作業プラットフォームが上昇および下降するなかで、弾性の緩衝装置と作業プラットフォームとの間で延長したり、収縮したり、形を崩したりすることができるようにするために、シュートは以下の異なる構造を使用することができる:(I)構造I:シュートの壁は、柔軟で、弾性と延性を備えた材料を採用し、例えば、シュートの壁の中央から上部はベロー形状をしており、出口に設けられるシュートの壁の下方部分はチューブ形状をしていることで、シュートの下方部分の出口が確実に開くようになり、それゆえ、シュートは、作業プラットフォームが様々な救助の高さに適応すべく上昇および下降するなかで、延長および収縮することができる。救助された人がシュートに入ると、シュートは救助された人の重量によって押され、シュートの中央部分は曲がって形を崩すこともある(曲げの程度は様々であり、シュートの材料によっては曲げがないこともある)。製造中、適切な変形能力を有するシュートを選択することによって、定格負荷以下で、形を崩した後のシュートの曲がり部分をシュートの底部よりも常に高くするだけで、救助された人はシュートを通って弾性の緩衝装置に到達し、かつ、途中で弾性の緩衝装置以外の場所に落ちないようにすることができる。(II)構造II:シュートは、互いに対して延長および収縮することができる複数の伸縮自在管を連続的に接続することにより作られ、様々な伸縮自在管は、作業プラットフォームが上下動するなか、伸びて移動し、それによって、救助された人が上から下に滑り降りるための通路が形成される。さらに、シュートは、救助された人をシュートへと誘導するとともに、伸長したり、形を崩したりすることができる様々な他の既存の構造を用いることもできる。
【0010】
人々がシュートへ入りやすくするために、入口が作業プラットフォームに設けられ、好ましくは、作業プラットフォームの正面角および底部に設けられる。
【0011】
さらに、出口は好ましくは、シュートの滑り方向に垂直で地面と平行な方向にある。したがって、シュートに沿って下へ滑る人々がシュートの底部に到達すると、人々は直接シュートからは外に出ず、給水タンクとシュートの上壁の協働と緩衝によって衝撃を減らされて止まり、出口からシュートを出る。もちろん、出口は、必ずしもシュートの滑り方向に垂直で地面と平行な方向に設けられる必要はない。具体的な行動中に、出口はシュートの底部のまわりの任意の位置に設けることができ、滑り方向に沿った位置に設けられていない場合には、救助された人々は直接シュートからは外に出ない。
【0012】
シュートの滑り方向は、好ましくは、地面に対して斜角であり、言い換えれば、鋭角である。どれほど高く作業プラットフォームが上がろうとも、作業プラットフォームと弾性の緩衝装置の間で接続されたシュートは、地面に対して常に斜角である。これは、救助された人が、直接垂直に降下するよりもむしろ減速してシュートに沿って滑り降りるのに有益である。
【0013】
緩衝と減速の効果をさらに改善するために、給水タンクの上壁は密封された二重層構造にすることができ、二重層構造の中間層はガスで満たされる。これは水よりも優れた緩衝効果を果たすことができるだけでなく、給水タンク中の水が尽きた後でも依然として緩衝保護の機能を有している。
【0014】
本発明の前述の技術的な解決策は以下に例証されたような作動原理を有している:高層ビルで事故が起こり、救助が必要な場合、本発明に記載の高層ビルでの救助を迅速に行うことができる消防車が高層ビルの現場に駆けつけ、片持ち梁を用いて、救助作業を必要とする階の側に作業プラットフォームを持ち上げて停止させる。必要に応じて、作業プラットフォームに備え付けの切断ツールを用いて、まず保護メッシュ(security mesh)などの障害物を切断することができる。必要でなければ、消防士は作業プラットフォームに備え付けのウォーターガン(water gun)を運び、消火するために直接当該階に行き、身動きの取れない人々を見つけ、救助する必要のある人を作業プラットフォームまで運び、そして、シュートの入口から要救助者をシュートに入れ、シュートに沿って底部まで滑り降ろさせる。シュートの底部には給水タンクが準備されており、給水タンクの側壁と上壁は弾性材料で作られているため、給水タンクが水で満たされ、かつ、満たされた水が満杯ではないとき、給水タンクの上壁は、弾性材料の優れた機能を果たし、人々がそこに滑り下りる速度を減少させることができ、それによって、シュートに沿って滑り降りる人々は速度を落として出口から外に出る。必要に応じて、シュートの出口は、シュートに沿って滑り降りる人々が外に出るのを助ける職員ととともに配されることもできる。他方で、給水タンクの水は消火にも使用することができる。
【0015】
先行技術と比較して、本発明は以下の長所を有する:(1)本発明は、高層ビル上の要救助者を地面まで便利よく迅速に運ぶことができ、それによって、救助速度を大幅に改善して人命の損失を減らす。
(2)シュートの壁は柔軟で弾性と延性を有する材料で作られているため、これはシュートに沿って滑り下りる人々が怪我をすることを防ぐだけでなく、異なる救助の高さに応じた伸長と変形にも適合する。
(3)給水タンクが、滑り降りる人々にとっての緩衝ツールとして使用され、給水タンクの側壁と上壁が弾性材料で作られているため、これは弾性の緩衝の優れた機能と、人々がシュートに沿って滑り下りる速度を落とす優れた機能を果たすことができ、同時に給水タンク中の水を消火に使用することができ、二重の有益な効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態における構造の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図中の番号の例証:1 車体、2 片持ち梁、3 作業プラットフォーム、4 給水タンク、5 シュート、6 出口、7 入口、8 ケーブル、9 降下制御装置。
【0018】
本発明の内容は、図面と以下の好ましい実施形態と組み合わせて詳細に説明される。
【0019】
図1および
図2に示されるように、本発明は、高層ビルからの迅速な救助を行うことができる消防車を提供する。消防車は、車体(1)、車体(1)に設置された片持ち梁(2)または消防用梯子、および、片持ち梁(2)または消防用梯子の上方端部に設置された作業プラットフォーム(3)を含む;車体には弾性の緩衝装置が設けられ、作業プラットフォーム(3)が上昇および下降しているなか、弾性の緩衝装置と作業プラットフォームとの間で延長したり、収縮したり、形を崩したりすることができるシュートは、弾性の緩衝装置と作業プラットフォーム(3)を接続し、シュート(5)の壁の下方部分には出口(6)が設けられ、入口(7)はシュート(5)の上部に設けられる。
【0020】
シュート(5)に掛けられたケーブル(8)は、入口(7)から出口(6)まで伸び、ケーブル(8)には1よりも多くの降下制御装置(9)が設けられる。
【0021】
図1に示されるように、弾性の緩衝装置は給水タンク(4)を含み、給水タンク(4)の上壁は弾性材料で作られており、シュート(5)の底部は、給水タンク(4)の上壁の中央部分に取り付けられる。
【0022】
給水タンク(4)の側壁は好ましくは弾性材料を含む。
【0023】
シュート(5)の壁は、柔軟で弾性と延性を有する材料を含む。例えば、シュート(5)の壁の中央から上方の部分はベローの形状をしており、出口(6)が設けられているシュート(5)の壁の下方部分はチューブの形状をしている。
【0024】
あるいは、シュート(5)は、互いに対して延長および収縮可能な複数の伸縮自在管を連続的に接続することによって作られる。
【0025】
入口(7)は作業プラットフォーム(3)上に設けられる。
【0026】
出口(6)は、シュート(5)の滑り方向に垂直で地面と平行な方向に位置する。
【0027】
速すぎる滑り速度を避けるために、シュート(5)の滑り方向は地面に対して斜角である。
【0028】
作業プラットフォーム(3)には、片持ち梁(2)または消防用梯子の上方、下方、左方、および、右方の揺動移動、または、延長および収縮の調節を操作および制御するための制御装置と、救助を行うために必要な救助道具が設けられ、救助道具は、スプレーガン、切断ツール、油圧プライヤー、油圧エキスパンダー、照明道具の少なくとも1つを含み、および、もちろん、他の既存の様々な救助道具も含むことができ、片持ち梁(2)または消防用梯子には、給水タンク(4)に格納された水を作業プラットフォーム(3)に運ぶための水路と、制御装置と救助道具の一部または全部を車体(1)に接続するための接続ラインが設けられる。
【0029】
車体(1)の制御室にも、必要に応じて片持ち梁(2)の上方、下方、左方、および、右方の揺動移動、または、延長および収縮の調節を操作および制御するための制御装置が設けられる。
【0030】
給水タンク(4)の上壁は密封した二重層構造を含み、二重層構造の中間層はガスで満たされる。
【0031】
片持ち梁(2)または消防用梯子は、上方、下方、左方、および、右方の揺動移動を調節し、車体(1)に対する延長および収縮を調節することができる、延長−収縮および揺動の機構を含み、作業プラットフォーム(3)は片持ち梁(2)または消防用梯子に対して水平方向の作業状態を維持することができる。