(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6075906
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】建物の下地構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
E04F13/08 Z
E04F13/08 101S
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-116791(P2016-116791)
(22)【出願日】2016年6月13日
【審査請求日】2016年9月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591260029
【氏名又は名称】株式会社内藤ハウス
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100128071
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】桑原 幸雄
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−138649(JP,A)
【文献】
特開2010−255352(JP,A)
【文献】
特開2014−084674(JP,A)
【文献】
特開平05−125768(JP,A)
【文献】
実開昭57−202513(JP,U)
【文献】
特開2000−054594(JP,A)
【文献】
特開2003−336225(JP,A)
【文献】
特開平08−120949(JP,A)
【文献】
実開平06−043102(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に設けられる下地構造であって、
下地材が、建物の外壁を支持する形鋼柱に保持される複数の連結具と、各形鋼柱に保持された複数の連結具の間に掛け渡され且つ連結具に固定される胴縁材と、を有し、
前記連結具が、前記形鋼柱の両端に設けられるリップにほぼ対応した形状の抱込部と、前記抱込部をリップに係合保持させる締結部と、前記胴縁材を固定する胴縁受部と、を有する建物の下地構造。
【請求項2】
さらに前記胴縁材に取付けられる複数の支持レールを有し、これら複数の支持レールは前記建物の形鋼柱間の間隔より狭い所定間隔で配設される請求項1に記載の建物の下地構造。
【請求項3】
前記複数の支持レールは、前記外壁の表面側に取付けられる外装材を支持するための係合部を有する請求項2に記載の建物の下地構造。
【請求項4】
前記支持レールの係合部は、外装材に設けられた係合溝に嵌り込む係合突起である請求項3に記載の建物の下地構造。
【請求項5】
前記外装材は、建物の外壁の表面を覆う外装パネルである請求項3又は4に記載の建物の下地構造。
【請求項6】
前記胴縁受部は胴縁材が載置される水平面を有する請求項1に記載の建物の下地構造。
【請求項7】
前記胴縁受部は胴縁材が載置される水平面を有する請求項6に記載の建物の下地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の下地構造に係り、特にプレハブ工法によって建てられた建物の外壁に外装パネルなどの外装材を取付ける際の下地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では古くなった建物のイメージを大きく変えてイメージアップを図る手段として、建物の外壁にアルミ製などの外装パネルを取付ける方法が採用されている(特許文献1)。この取付方法は、既設の外壁の表面にL型ファスナーをボルト止めし、このL型ファスナーにボルト止めされた樋状縦材及びこの樋状縦材にボルト止めされたブラケットを介してパネル取付用下地材を取付けるものである。
【0003】
ところで、プレハブ工法によって建てられた建物は、レンタルなどで繰り返し利用されることが多い。そのため、建物の外壁に外装パネルを取付ける場合には、下地材の取付けや取外しの作業が簡易であることが望ましい。また、解体した建物の支柱や外壁などに溶接痕やボルト孔などの加工痕や傷痕が残らないことが望ましい。
【0004】
従来、プレハブ工法によって建てられた建物の支柱に庇などの付属部材を取付ける場合に、建物の支柱や外壁に加工痕や傷痕を残さないような連結具を利用する方法が知られている(特許文献2参照)。この連結具は、支柱と付属部材との間に配設され、支柱には溶接することなく固定されるので、建物の支柱や外壁に加工痕や傷痕を残さないといったメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8‐120949号公報
【特許文献2】実開平6‐43102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、特許文献2に開示された連結具又はこの連結具と同等品を利用し、従来見られなかった建物の下地構造を提供することで、建物の外壁に外装パネルなどの外装材を簡易に取付けられるようにすると共に、下地材の取付けや取外しの作業を簡易なものとすることである。また、解体した建物の支柱や外壁などに下地材取付時の溶接痕やボルト孔などの加工痕や傷痕を残さないような下地構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る建物の下地構造は、建物の外壁に設けられる下地構造であって、下地材が、建物の外壁を支持する形鋼柱に保持される複数の連結具と、各形鋼柱に保持された複数の連結具の間に掛け渡され且つ連結具に固定される胴縁材と、を有
し、前記連結具が、前記形鋼柱の両端に設けられるリップにほぼ対応した形状の抱込部と、前記抱込部をリップに係合保持させる締結部と、前記胴縁材を固定する胴縁受部と、を有する。
【0008】
本発明に係る下地構造の一実施形態では、さらに胴縁材に取付けられる複数の支持レールを有し、これら複数の支持レールは前記建物の形鋼柱間の間隔より狭い所定間隔で配設される。
【0009】
また、本発明に係る下地構造の一実施形態では、前記
胴縁受部は胴縁材が載置される水平面を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る建物の下地構造によれば、建物の外壁に外装パネルなどの外装材を簡易に取付けることができる。また、下地材の取付けや取外しの作業が簡易なものとなる。さらに、解体した建物の支柱や外壁などに下地材取付時の溶接痕やボルト孔などの加工痕や傷痕が残らない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る下地構造の分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る下地構造とその下地材に取付けた外装パネルの斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る下地構造の平面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る下地構造の斜視図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る下地構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る建物の下地構造の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1乃至
図4には、プレハブ工法によって建てられた建物の外壁に外装パネルを取付けるための下地構造が示されている。プレハブ工法では、予め工場で生産された建物の支柱や外壁パネルが建設現場に運び込まれ、建設現場で建てられた支柱と支柱との間に外壁パネルを落とし込むことによって、建物全体が組み立てられる。支柱は断面略H形状の形鋼柱1が用いられ、形鋼柱1の両側の溝部1a,1bに各外壁パネル2の端部を嵌め入れる。
【0013】
この実施形態に係る下地構造は、前記外壁パネル2の外表面に外装パネル3を取付ける際に利用するもので、前記形鋼柱1に係合保持される連結具4と、この連結具4に固定される胴縁材5と、この胴縁材5に取付けられる支持レール6とを有する。
【0014】
前記連結具4は、左右がほぼ対称形の2枚の連結プレート7,8からなり、この連結プレート7,8を密着させて締結することにより一体に構成される。各連結プレート7,8は、前記形鋼柱1の各溝部1a,1bの端部に内向きに形成される左右のリップ1c,1dを外側から抱き込む抱込部7a,8aと、各抱込部7a,8aから前方に延びる締結部7b、8bと、締結部7b、8bの上端に折曲形成される水平面状の胴縁受部7c、8cとを有する。前記抱込部7a,8aは、前記形鋼柱1の溝部1a,1bの両端に設けられるリップ1c,1dに対応する凹溝部7d,8dを有している。
【0015】
両方の連結プレート7,8を密着させた時に前記締結部7b,8b間に隙間9が設けられる。この隙間9は、一方の連結プレート7の締結部7bに段差10を設けることによって形成される。この締結部7b,8bにおいて、両方の連結プレート7,8に設けられたボルト挿通孔7e,8eにボルト11aを挿入し、このボルト11aにナット12aを締め付けた時に締結部7b,8bがお互いに内側に向けて弾性的に撓むことで、抱込部7a,8aが形鋼柱1のリップ1c,1dに食い込むように係合して保持されることになる。このようにして、形鋼柱1の所定の位置に必要な数だけ連結具4を簡易に取付けることができる。
【0016】
前記一対の胴縁受部7c,8cは同一平面でつながっている。また、各胴縁受部7c,8cの中心部にはボルト挿通孔7f,8fが設けられている。この実施形態において、胴縁材5はC形鋼からなり、前記各形鋼柱1に保持された複数の連結具4間に掛け渡される。胴縁材5は底壁5aを下にした状態で胴縁受部7c,8cの上に載置される。また、前記胴縁材5の低壁5aにはボルト挿通孔5cが設けられ、前記胴縁受部7c,8cのボルト挿通孔7f,8fと位置合わせした後、ボルト11bとナット12bとによって締結される。
【0017】
この実施形態に係る下地構造では胴縁材5の外側壁5bに上下方向に長く延びる支持レール6が所定間隔毎に取り付けられる。この所定間隔は、建物の形鋼柱1間の間隔より狭く設定される。一般に、建物の場合は支柱と支柱との間は1間に設定されることが多いが、外装パネルはそのような制約を受けることがないので、取り扱いを容易にするために1間より狭く間隔で設定されることが好ましい。そこで、本実施形態では、外壁パネル2より横幅の狭い外装パネル3を取付けるために、支持レール6間の間隔寸法w1を形鋼柱1間の間隔寸法w2より狭くした状態で各支持レール6が配設される。
【0018】
前記支持レール6は断面略コ字状の長尺部材からなり、背面6aが胴縁材5の外側壁5bにビス13によって固定されている。支持レール6の左右の側面6b間には係合突部としての丸棒14が水平に掛け渡されている。この丸棒14は支持レール6の長手方向に沿って所定間隔毎に複数設けられている。
【0019】
外装パネル3は、例えば薄板状のアルミ複合材からなる。外装パネル3の両側縁には直角に折れ曲がる内向フランジ3aが設けられ、この内向フランジ3aに前記支持レール6の丸棒14と係合する係合溝15が設けられている。この係合溝15は、横方向に開口した横溝15aとその先端から上方に直角に折れ曲がる縦溝15bとでL字形状に形成されている。この係合溝15は、内向フランジ3aの長手方向に沿って所定間隔毎に複数設けられ、前記支持レール6に設けられた丸棒14の位置に対応している。
【0020】
したがって、建物の外壁パネル2の表面側を外装パネル3で被覆する場合には、上述したように、建物の形鋼柱1に連結具4を取付け、この連結具4に胴縁材5及び支持レール6を順に固定することによって、簡単に下地構造を設けることができる。そして、このようにして設けた下地構造の支持レール6に外装パネル3を取付ける。この取付けは外装パネル3の重量や横幅を作業員が1人で抱えられる程度にしておくことで、スムーズに行うことができる。先ず両側の支持レール6に外装パネル3の各内向フランジ3aを位置合わせし、次いで外装パネル3を支持レール6に接近させて係合溝15に丸棒14を挿入する。そして、丸棒14が横溝15aの先端まで挿入されたら、外装パネル3を下方にスライドさせる。外装パネル3が自重で下がると同時に丸棒14が縦溝15b内を移動し、
図4に示したように、丸棒14が縦溝15bの上端周縁に係合することで、外装パネル3が支持レール6にしっかりと取付けられる。
【0021】
図5及び
図6には、本発明に係る下地構造の第2実施形態が示されている。この実施形態に係る下地構造は、建物の形鋼柱1に抱込み保持される連結具4と、この連結具4に固定される胴縁材5と、この胴縁材に取付けられる複数の支持レール6とを有する。胴縁材5は前記実施形態と同様C形鋼が利用されるが、この実施形態においてはC形鋼の開口側を下向きにして連結具4の胴縁受部7c,8cに載置される。胴縁材5の内部には矩形状の連結板16がスライド可能に配置され、この連結板16に設けられたボルト挿通孔と連結具4の胴縁受部7c,8cに設けられたボルト挿通孔とを位置合わせし、連結板16を胴縁受部7c,8cにボルト11cとナット12cとで固定することによって、胴縁材5を連結具4に固定することができる。連結板16の横幅寸法w3は胴縁材5の開口幅寸法w4より大きく、ボルト11cで固定した時には連結板16の両端部と胴縁受部7c,8cとの間で胴縁材5の開口端部5dを挟持することで、胴縁材5が固定される。
【0022】
したがって、この実施形態に係る下地構造では、胴縁材5の底壁5aにボルト挿通孔を設ける手間を省ける。また、胴縁材5の底壁5aには傷が残らないので、取り外した後の利用の幅が広がることになる。なお、胴縁材5に対する支持レール6の固定手段と支持レール6に対する外装パネル3の取付け手段は、前記の実施形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0023】
図7及び
図8には、本発明に係る下地構造の第3実施形態が示される。この実施形態に係る下地構造は、建物の形鋼柱1に抱込み保持される連結具20と、この連結具20に固定される胴縁材5と、胴縁材5に取付けられる支持レール6とを有する。
【0024】
前記連結具20は、前記実施形態と同様、2枚の連結プレート21,22を密着させて締結することにより構成される。各連結プレート21,22は、前記形鋼柱1の各溝部1a,1bの端部に内向きに形成される左右のリップ1c,1dを外側から抱き込む抱込部21a,22aと、各抱込部21a,22aから前方に延びる締結部21b,22bと、一方の締結部22bより前方に延びる胴縁受部22cとを有する。前記抱込部21a,22aは、前記形鋼柱1の溝部1a,1bの両端に設けられるリップ1c,1dに対応する凹溝部21d,22dを有している。
【0025】
両方の連結プレート21,22を密着させた時に前記締結部21b,22b間に隙間23が設けられる。この隙間23は、一方側の連結プレート21の締結部21bに段差24を設けることによって形成される。この締結部21b,22bにおいて、両方の連結プレート21,22に設けられたボルト挿通孔にボルト11dを挿入し、このボルト11dにナットを締め付けた時に締結部21b,22bが内方に向け弾性的に撓むことで、抱込部21a,22bが形鋼柱1のリップ1c,1dに食い込むように係合して保持されることになる。このようにして、形鋼柱1の所定の位置に必要な数だけ連結具20を簡易に取付けることができる。
【0026】
他方側の連結プレート22には、前記締結部22bの前方に延びる胴縁受部22cが一体に設けられている。この胴縁受部22cは、前記締結部22bと同一平面上に形成される。この胴縁受部22cには等間隔に4つのボルト挿通孔22fが設けられている。
【0027】
胴縁材5は前記実施形態と同様のC形鋼が用いられるが、底壁5aの下面から下方に突出する連結板26が設けられ、この連結板26が前記連結具20の胴縁受部22cにボルトで固定される。連結板26には前記胴縁受部22cのボルト挿通孔22fに対応したボルト挿通孔26aが設けられており、前記連結具20の胴縁受部22cに胴縁材5を載置したのち、胴縁受部22cに連結板26を密着させて、両者をボルト11eとナット12eとで締結することで、連結具20に胴縁材5が固定される。
【0028】
なお上記のいずれの実施形態においても、建物の外壁の表面に外装パネルを取付ける場合について説明したが、外装パネルに限定されないことは勿論である。また、連結具についても上記の実施形態のものに限定されないのは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 形鋼柱(支柱)
1a,1b 溝部
1c,1d リップ
2 外壁パネル(外壁)
3 外装パネル
3a 内向フランジ
4,20 連結具
5 胴縁材
5a 底壁
5b 外側壁
5c ボルト挿通孔
5d 開口縁部
6 支持レール
6a 背面
6b 側面
7,8,21,22 連結プレート
7a,8a,21a,22a 抱込部
7b,8b,21b,22b 締結部
7c,8c,22c 胴縁受部
7d,8d,21d,22d 凹溝部
7e,8e ボルト挿通孔
7f,8f、22f ボルト挿通孔
9,23 隙間
10,24 段差
11a,11b,11c,11d,11e ボルト
12a,12b,12c,12e ナット
13 ビス
14 丸棒(係合突起)
15 係合溝
15a 横溝
15b 縦溝
16,26 連結板
26a ボルト挿通孔
【要約】
【課題】 建物の外壁に外装パネルなどの外装材を簡易に取付けられるようにすると共に、下地材の取付けや取外しの作業を簡易なものとする。また、解体した建物の支柱や外壁などに下地材取付時の溶接痕やボルト孔などの加工痕や傷痕を残さないようにする。
【解決手段】 建物の外壁に設けられる下地構造であって、下地材が、建物の外壁パネル2を支持する形鋼柱1に保持される複数の連結具4と、各形鋼柱1に保持された複数の連結具4の間に掛け渡され且つ連結具4に固定される胴縁材5と、前記胴縁材5に取付けられる複数の支持レール6とを有し、これら複数の支持レール6が前記形鋼柱1間の間隔より狭い所定間隔で配設される。
【選択図】
図2