(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6075907
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】撮影用クレーン装置
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20060101AFI20170130BHJP
H04N 5/222 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
G03B17/56 A
H04N5/222 B
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-142573(P2016-142573)
(22)【出願日】2016年7月20日
【審査請求日】2016年7月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170734
【氏名又は名称】株式会社日本ビデオシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】橋口 憲太郎
【審査官】
高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−068493(JP,A)
【文献】
特開2009−280341(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/098418(WO,A1)
【文献】
特開2007−300326(JP,A)
【文献】
特開2014−228824(JP,A)
【文献】
特開平09−046558(JP,A)
【文献】
特開2007−239842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
H04N 5/222
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラの水平を保つためジブと、前記ジブを支持するジブ支点取付部を備える撮影用クレーン装置であって、
前記ジブは、メインジブとサブジブを含み、
前記メインジブの中に前記サブジブが内蔵されているか、又は前記メインジブと前記サブジブの間の隙間が外部に露出しないように構成されており、
第1及び第2シャフト部と、第1及び第2サブジブ取付アームと、第1及び第2サブジブ取付可動部を備え、
第1サブジブ取付アームは、第1シャフト部と第1サブジブ取付可動部の間に設けられ、
第2サブジブ取付アームは、第2シャフト部と第2サブジブ取付可動部の間に設けられ、
第1シャフト部と第1サブジブ取付可動部の間の距離は、第2シャフト部と第2サブジブ取付可動部の間の距離と同じであり、
前記メインジブは、第1シャフト部において、第1サブジブ取付アームに相対回転可能に連結され、
前記メインジブは、第2シャフト部において、第2サブジブ取付アームに相対回転可能に連結され、
前記サブジブは、第1サブジブ取付可動部において、第1サブジブ取付アームに相対回転可能に連結され、
前記サブジブは、第2サブジブ取付可動部において、第2サブジブ取付アームに相対回転可能に連結され、
前記ジブ支点取付部は、第1及び第2サブジブ取付アームに対する前記サブジブの角度を変化させたときに第1サブジブ取付アームが不動になるように、第1シャフト部を介して前記メインジブに取り付けられ、
前記カメラは、第2サブジブ取付アームに対して不動になるように、第2シャフト部を介して前記メインジブに取り付けられ、
第1及び第2サブジブ取付アームは、第1及び第2サブジブ取付アームに対する前記サブジブの角度を変化させたときに平行を維持するように構成され、
第1及び第2サブジブ取付アームに対する前記サブジブの角度が変化することによって前記カメラが水平を維持したまま上下に移動可能に構成されている、撮影用クレーン装置。
【請求項2】
第1及び第2シャフト部を結ぶ直線が前記サブジブに平行になるように構成されている、請求項1記載の撮影用クレーン装置。
【請求項3】
前記ジブにカメラ用バッテリーが装着できるように構成される、請求項1もしくは請求項2記載の撮影用クレーン装置。
【請求項4】
前記ジブに設けられ且つカメラマンからの電源ON/OFF信号に従って制御される電源ON/OFFスイッチ及び電源装置を備える、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の撮影用クレーン装置。
【請求項5】
前記カメラのリモコン端子を前記ジブにケーブルにより接続し、前記ジブに録画ボタンを備える、請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の撮影用クレーン装置。
【請求項6】
前記カメラのリモコン端子を前記ジブにケーブルにより接続し、前記ジブにレンズのフォーカス位置、ズーム位置及び絞り位置を少なくとも1つを制御するための制御部を備える、請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の撮影用クレーン装置。
【請求項7】
前記カメラと同じように水平を保つシャフトがモニター及びリモコンを装着可能に構成される、請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の撮影用クレーン装置。
【請求項8】
前記ジブにタリー表示機能を有する、請求項1〜請求項7の何れか1つに記載の撮影用クレーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、撮影者を中心とした狭い室内や小規模の撮影で、一定範囲内における上下左右の移動撮影を行う場合等に用いて好適な、撮影用クレーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の撮影用クレーン装置は、旋回と上下運動をなすジブの先端にカメラを備え付ける形式なので、ジブと補助ジブが存在し、上下に撮影用クレーンを動かした際にカメラが地面に対して平行に動いて水平を保つことができる。また、ジブの後方に大掛かりなバランスウエイトを装着する。カメラマンは撮影用クレーンに装着されたカメラのすぐ脇に立って操作する場合と、ジブの後方ウエイト側から操作する場合がある。
【0003】
現在、市販されている撮影用レーンにおいてはジブと補助ジブによりカメラ雲台を水平に保つことが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、撮影者を中心として機材の移動、セッティングに小規模の撮影用クレーン装置でも数名の人員が必要である。特にウエイトが重く、小型カメラを搭載する場合もカメラの反対側にウエイトを装着し、ウエイトだけでも20kg〜30kg搭載する。また、撮影用クレーン装置の小型のものは、カメラを水平に保つため、ジブと補助ジブで2本ある。そのジブは、上下に動かすことにより2本のジブの間隔が地面に対して平行の時が一番広く、上下にジブを動かした際に狭くなるため、手を挟む危険性がある。搭載されたカメラの操作を行う場合、カメラ本体直接又はカメラに接続されたリモコンを装着して行うのが現状であり、近年の撮影スタイルでは放送用のスタジオカメラとしてシステムが考えられたカメラと違うカメラ、例えば一眼レフで動画を撮影するカメラや、映画用デジタルカメラなど、またそのカメラはタリー表示ができないカメラが大半である。
【0005】
ところが、たとえば、機材撮影スタッフが機材を移動しようとすると、三脚部、ジブ部、ウエイト部、雲台部、カメラを個々に外して移動する。
【0006】
撮影用クレーン装置のカメラの横に立ち、ビューファインダーを覗きながら撮影して、現状ジブに手を掛けてクレーンを動かす。上下に動かした際にジブが2本あるため上下に移動した際に手を挟む危険性がある。
【0007】
さらに、撮影用クレーン装置のウエイト側で撮影用クレーン装置を操作した場合、別体のカメラリモコンが必要となり。装備が大掛かりになってしまう。
【0008】
撮影用クレーン装置を使用してスイッチャーを利用した複数台のカメラ撮影の場合、どのカメラが選択されたかをカメラマンや、出演者に知らせるタリーランプが存在しないカメラがある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、たとえば、撮影者を中心に少人数でセッティングができ、撮影者自身がカメラビューファインダーを覗いたまま旋回・揺動させても撮影用クレーン装置のジブのどの部分を触って操作しても手を挟む心配がなく、しかもジブ本体にカメラ操作機能が設けてあるため別体のリモコンをもっていかなくてもよい、撮影用クレーン装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、撮影用クレーン装置であって、カメラの水平を保つためのジブ(ブーム)がメインジブの中にサブジブの機構が内蔵されているか、又は前記メインジブと前記サブジブの間の隙間が外部に露出しないように構成されているので、カメラの水平を維持できる機構により、外観が1本になるジブが提供される。
【0011】
本発明によれば、前記ジブは、前記ジブをジブ支点取付部に取り付けるためのシャフト部を2つ以上備える。この場合、ジブを支える支点部分の位置が2カ所以上存在し、カメラの重量に応じて組立時にジブの支点を移動することにより、ジブのバランス位置を変更できることが提供される。
【0012】
本発明によれば、撮影用クレーン装置のジブの後方ウエイト側にビデオカメラ用バッテリーが装着でき、本来、カメラに装着したままのバッテリーをジブのウエイト側にバッテリーを装着することにより本来のバランスウエイトが少なくて済む。
【0013】
本発明によれば、カメラとジブとを電源供給用のケーブルを設け、ジブの本体にカメラマンからの電源ON/OFF信号に従ってカメラの電源を制御されるスイッチを備えた撮影用クレーンが提供される。
【0014】
本発明によれば、撮影用クレーン装置に装着されたカメラのリモコン端子をジブ本体にコネクタを設けて接続し、ジブにズームリモコン、アイリスリモコン、フォーカスリモコン及び、録画ボタンの何れか1つ以上を を備える撮影用クレーン装置が提供される。
【0015】
このように本発明者はジブの使用にあたり、狭い部屋での撮影が多く、大きな上下運動を必要としない撮影用クレーン撮影が多いことに気づいた。例えば2m〜3mといった狭い範囲で使用される場合が非常に多いことに気づいた。
【0016】
そしてこのクレーンを使用すれば撮影のセッティングを1人でも実現でき、支点の位置をずらすことができるため、支点をカメラと遠くに支点を設置した場合は、ジブのスイングが大きくなり上下の撮影範囲が大きくなり、カメラに近づけた支点でセッティングした場合はスイング幅が小さくなるが、少ないウエイトで済むという利点を見いだし本発明の完成に至った。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、メインジブの本体内部にサブジブが内蔵されているか、又は前記メインジブと前記サブジブの間の隙間が外部に露出しないように構成されているため、ビューファインダーに集中しているカメラマンがメインジブとサブジブの間に手を挟む心配がない。サブジブを操作する際はカメラのビューファインダーを覗いているので、サブジブが露出していると危険がともなっていたがその心配がなくなる。また、カメラに直接取付けるバッテリーをジブの支点の反対側に装着することにより、ジブに装着するウエイトを小さくすることができる。録画ボタン、フォーカス、ズーム、アイリスをジブの本体に内蔵することにより、カメラマンがウエイトの近くで操作する場合に別にリモコンを用意する必要がなく、大変便利である。タリー入力をジブですることにより、カメラ雲台の近くと、ウエイトの近くでタリーが点灯するので視認性がよく大変便利である。カメラにタリー点灯機能がないカメラに非常に有効である。モニターをカメラ同様、ジブの高さが変わっても平行移動するため、ウエイト側でカメラマンがジブを操作した場合にモニターが見やすいのが特徴である。このモニター台にカメラのリモコンを装着することによりジブの上げ下げをウエイト棒でするより、はるかに操作しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施例の図である。より詳しくは、
図1は本発明に係る本実施例のクレーン装置の全体を示している。ジブの支点が真ん中の図である。点線の部分は機構の透写図である。
【
図2】本発明の一実施例の図で、
図1の支点を変更した図である。より詳しくは、
図2は本発明に係る本実施例のクレーン装置の全体を示し、ジブの支点が後方の図である。点線の部分は機構の透写図である。
【
図3】本発明のジブを下げた状態の図である。より詳しくは、
図3は本発明に係る本実施例のクレーン装置の全体を示し、ジブの支点が後方の図でカメラ位置を下げた時の図である。点線の部分は機構の透写図である。
【
図4】本発明の一実施例でモニター取付け台を装着した状態の図である。より詳しくは、
図4は本発明に係る本実施例のクレーン装置の全体を示し、ジブの支点が真ん中で、後方の支点となる部分にモニターを装着した時状態の図である。
【
図5】本発明の一実施例で内部の機構が
図1のジブとサブジブの上下が逆の機構。より詳しくは、
図5は本発明に係る本実施例のクレーン装置の全体を示し、ジブと補助ジブが上にある場合の図である。
【
図6】一般市販のジブアームの参考写真である。つまり、現在市販されている一般的な形状の撮影用クレーンの参考写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1示すAAジブ(メインジブ)に107三脚部から106ジブ支点取付部が構成され、Cシャフト部支点と121ジブ補助ジブ取付けアームが常備固定され、(つまり三脚の106ジブ支点取付部を装着したCシャフト部又はEシャフト部等はたえず固定されている)B補助ジブ取付け稼働部1とD補助ジブ取付け稼働部2とF補助ジブ取付け稼働部3がジブを上下(カメラを上下)した際に101補助ジブアーム(サブジブ)と111補助ジブアーム2(サブジブ)がAAジブと平行に動くためAシャフト部1とCシャフト部2とEシャフト部3はAAジブが上下に動かしても水平がいつも維持されている。102雲台取付台に103ビデオ雲台を取付け、BBビデオカメラを取付ける。BBカメラと接続された108ジブカメラ接続ケーブルは109ジブカメラ接続コネクタと接続し、104バッテリーからBBカメラへの電源供給及びカメラレンズリモートを110電源/信号線を通してBBカメラの113ズームボリウム114フォーカスボリウム115アイリスボリウムでBBカメラの制御をする。同じく112録画ボタンはBBカメラの録画を実現する。116タリー信号/カメラCCU入力コネクタから入力されたタリー信号をAAジブの後方117タリー点灯部とジブAA前方に118タリー点灯部が設けられている。
図1の点線で示した部分はジブの内部の様子である。
【0020】
図2は撮影用クレーン装置の全体を示し、ジブの支点が後方、Eシャフトの図である。この場合、後方に付けるウエイトが重くなるが、スイング範囲が広くなるため、上下の高低差が大きくとれる利点がある。
【0021】
図3にAAジブが下に下がったときの状態を示す。
図1をAAジブをそのまま下げた場合は120ジブ補助ジブ取付アーム、121ジブ補助ジブ取付アーム、122ジブ補助ジブ取付アーム3に固定された101補助ジブアームと109補助ジブアーム2がAA時部と平行に移動する。その際102雲台取付け台は地面と平行のままジブの高さが変化する。点線で示した部分はジブの内部の様子である。
【0022】
ジブに内蔵された補助ジブの位置は
図1の101補助ジブアーム1と109補助ジブアーム2の形態でもよいし、
図4の101補助ジブアーム1と109補助ジブアーム2形態でもよいまた
図4の場合は固いシャフトでも良いしワイヤーを利用してもよい。
【0023】
図4は実際にAA ジブの外観からでは101補助ジブアーム1と111補助ジブアーム2が見えない。また、支点とカメラ雲台を載せる102雲台取付け台を除くもうひとつのジブ支点取付部にZZモニター取付け台を装着し119液晶モニターを装着することができる。ZZ液晶取付け台もカメラ同様平行に動くことができる。
【0024】
図5はジブと補助ジブが上にある場合の図である。
図1と機構が上下逆であるが
図1と同じ効果がえられる。
【0025】
なお、
図6に示すような従来の構成において、メインジブとサブジブの間の隙間が外部に露出しないように、例えば、メインジブとサブジブの間の隙間を覆うカバーを装着してもよい。
【符号の説明】
【0026】
AAジブ(メインジブ)
BBビデオカメラ
Aシャフト部1
B補助ジブ取付可動部1
Cシャフト部2
D補助ジブ取付可動部2
Eシャフト部3
F補助ジブ取付可動部3
101補助ジブアーム(サブジブ)
102雲台取付台
103ビデオ雲台
104バッテリー
105ウエイト
106ジブ支点取付部
107三脚部
108ジブカメラ接続ケーブル
109ジブカメラ接続コネクタ
110電源/信号線
111補助ジブアーム2(サブジブ)
112レックボタン
113ズームボリウム
114フォーカスボリウム
115アイリスボリウム
116タリー信号/カメラCCU入力コネク
117タリー点灯部
118タリー点灯部
119モニター
120ジブ補助ジブ取付アーム1
121ジブ補助ジブ取付アーム2
123ジブ補助ジブ取付アーム3
【要約】
【課題】ウエイトが少なくて良く、手の挟まない良好な操作性を実現し、狭い部屋で撮影でき、移動が簡単で組立が容易で、簡単に設置でき、カメラ操作もできる撮影用クレーン装置を提供すること。
【解決手段】本発明によればカメラの水平を保つためのジブ(ブーム)がメインジブの中にサブジブの機構が内蔵されてカメラの水平を維持できる機構を搭載し、手を挟まない構造が提供される。ジブを支える支点部分の位置が移動でき、支点との距離が変化する構造が提供される。また、バッテリーをジブのウエイト側に付けることによりカメラ側の重量を軽くすると同時に、バッテリーを装着する機構を提供される。カメラのジブにフォーカス位置調整部とズーム位置調整部とアイリス位置調整部と録画ボタンの何れか1つ以上を備えるリモコン部が提供される。
【選択図】
図1