【実施例】
【0030】
以下、実施例の燃料電池単セルおよびその製造方法について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0031】
(実施例1)
実施例1の燃料電池単セルについて、
図1〜
図4を用いて説明する。
図1〜
図4に示すように、本例の燃料電池単セル1は、固体電解質層10と、固体電解質層10の一方面に積層された活性層111と活性層111における固体電解質層10側と反対側の面に積層された拡散層112とを備えるアノード層11と、固体電解質層10の他方面に中間層12を介して積層されたカソード層13とを有している。燃料電池単セル1は、アノード層11を支持体とする平板形の単セルである。燃料電池単セル1において、カソード層13の外形は、固体電解質層10の外形よりも小さく形成されている。また、拡散層112は、活性層111における固体電解質層10と接する面を除いた残りの面を覆っている。以下、これを詳説する。
【0032】
本例において、固体電解質層10は、酸化ジルコニウム系酸化物である、8mol%のY
2O
3を含むイットリア安定化ジルコニア(以下、8YSZ)より形成されており、その厚みは10μmである。
【0033】
アノード層11を構成する活性層111および拡散層112は、いずれも触媒粒子と固体電解質粒子との混合物である、NiO(還元雰囲気でNiとなる)−8YSZサーメットより形成されている。本例では、活性層111に含まれる気孔の気孔径は、拡散層112に含まれる気孔の気孔径よりも相対的に小さくされている。活性層111の厚みは20μmであり、拡散層112の厚みは500μmである。
【0034】
カソード層13は、ペロブスカイト型酸化物粒子と固体電解質粒子との混合物より形成されている。上記ペロブスカイト型酸化物は、La
1−xSr
xCo
1−yF
yO
3、具体的には、La
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3(以下、LSCF)であり、上記固体電解質は、酸化セリウム系酸化物である、10mol%のGdがドープされたセリア(以下、10GDC)である。カソード層13の厚みは30μmである。中間層12は、酸化セリウム系酸化物である、10GDCより形成されており、その厚みは5μmである。
【0035】
本例では、アノード層11(拡散層112、活性層111)、固体電解質層10、中間層12、および、カソード層13は、いずれも、平面視で、矩形状の形状を呈している。拡散層112、固体電解質層10および中間層12の外形は、同じ大きさに揃えられている。つまり、拡散層112、固体電解質層10および中間層12の側面は、同一面上に配置されている。一方、上述したように、カソード層13の外形は、固体電解質層10の外形よりもひと回り小さく形成されている。カソード層13の外形における直線部分と固体電解質層10の外形における直線部分との間隔は、具体的には、2mmである。また、本例では、活性層111の外形は、カソード層13の外形よりもひと回り大きく形成されている。活性層111の外形における直線部分と拡散層112の外形における直線部分との間隔は、具体的には、1.8mmである。したがって、本例の燃料電池単セル1は、カソード層13、活性層111および固体電解質層10の外形の大きさが、カソード層13の外形<活性層111の外形<固体電解質層10の外形の関係を満たすように構成されている。拡散層112は、具体的には、活性層111における固体電解質層10側と反対側の面を覆う本体部112aと、本体部112aにおける固体電解質層10側の面より突出し、活性層111の側面を覆う側面被覆部112bとを有している。
【0036】
次に、本例の燃料電池単セルの作用効果について説明する。
【0037】
燃料電池単セル1は、固体電解質層10と、固体電解質層10の一方面に積層された活性層111と活性層111における固体電解質層10側と反対側の面に積層された拡散層112とを備えるアノード層11と、固体電解質層10の他方面に中間層12を介して積層されたカソード層13とを有し、アノード層11を支持体とする平板形の燃料電池単セル1であって、カソード層13の外形は、固体電解質層10の外形よりも小さく形成されている。そして、拡散層112は、活性層111における固体電解質層10と接する面を除いた残りの面を覆っている。つまり、燃料電池単セル1は、従来構成では発電にほとんど関与することのなかった活性層部分が拡散層112と同じ構成となっている。そのため、燃料電池単セル1は、活性層111の側面側に存在する拡散層112の部分、つまり、拡散層112の側面被覆部112bを通じて、活性層111の主面のみならず活性層111の側面からも燃料ガスを供給することができる。その結果、燃料電池単セル1は、活性層111の側面側における燃料ガスのガス拡散性が向上し、発電特性を向上させることが可能となる。
【0038】
また、本例の燃料電池単セル1は、活性層111の気孔径が拡散層112の気孔径より小さい構成とされている。拡散層と固体電解質層との間における全領域に活性層が存在する場合であって、かつ、活性層の気孔径が拡散層の気孔径よりも小さいときには、上述した発電にほとんど関与しない部分が、拡散層から供給される燃料ガスのガス律速場となりやすく、活性層への燃料ガスの拡散が阻害されやすい。その結果、燃料ガスのガス拡散抵抗が大きくなりやすく、燃料電池単セルの発電特性が低下しやすい。これに対し、本例の燃料電池セル1は、上述した構成を採用しているので、活性層111の気孔径が拡散層112の気孔径より小さくても、活性層111の側面側における燃料ガスのガス拡散性が向上されるので、発電特性を向上させやすい。また、本例の燃料電池セル1は、アノード層11側における電気化学的反応の反応場も増加するので、発電特性の向上に有利となる。
【0039】
また、本例の燃料電池単セル1は、活性層111の外形がカソード層13の外形よりも大きく形成されている。そのため、固体電解質層10を介してカソード層13と対面する部分の全てに活性層111が配置される。その結果、燃料電池単セル1は、活性層111の外形がカソード層13の外形よりも小さく形成されている場合に比べ、アノード層11側における電気化学的な反応場をより多く確保することができ、発電特性の向上に有利である。
【0040】
(実施例2)
実施例2の燃料電池単セルの製造方法について説明する。本例の燃料電池単セルの製造方法は、実施例1の燃料電池単セル1を好適に製造することができる製造方法である。本例の燃料電池単セルの製造方法は、活性層111、および、拡散層112の部分であって活性層112の側面を覆う側面被覆部112bを、印刷法により形成する工程を含んでいる。以下、これを詳説する。
【0041】
本例の燃料電池単セルの製造方法は、具体的には、以下の第1〜第4の工程を含んでいる。
第1工程は、焼成により拡散層112の本体部112aになるシート状の本体部形成用材料の表面に、焼成により活性層111になるペースト状の活性層形成用材料と、焼成により拡散層112の側面被覆部112bになるペースト状の側面被覆部形成用材料とを印刷法により塗布する工程である。
【0042】
本例では、具体的には、NiO粉末(平均粒子径:0.7μm)と、8YSZ粉末(平均粒子径:0.5μm)と、カーボン(造孔剤)と、ポリビニルブチラール(有機材料)と、酢酸イソアミル、2−ブタノールおよびエタノール(混合溶媒)とをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。NiO粉末と8YSZ粉末の質量比は、60:40である。なお、上記平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定した体積基準の累積度数分布が50%を示すときの粒子径(直径)d50である(以下、同様)。上記スラリーを、ドクターブレード法を用いて、プラスチック基材上に層状に塗工し、乾燥させることにより、シート状の本体部形成用材料を準備した。
【0043】
また、NiO粉末(平均粒子径:0.7μm)と、8YSZ粉末(平均粒子径:0.5μm)と、カーボン(造孔剤)と、エチルセルロース(有機材料)と、テルピネオール(溶媒)とをボールミルにて混合することにより、ペースト状の活性層形成用材料を準備した。NiO粉末と8YSZ粉末の質量比は、60:40である。
【0044】
また、NiO粉末(平均粒子径:0.7μm)と、8YSZ粉末(平均粒子径:0.5μm)と、カーボン(造孔剤)と、エチルセルロース(有機材料)と、テルピネオール(溶媒)とをボールミルにて混合することにより、ペースト状の側面被覆部形成用材料を準備した。NiO粉末と8YSZ粉末の質量比は、60:40である。なお、上記本体部形成用材料および上記側面被覆部形成用材料におけるカーボン量は、上記活性層形成用材料と比較して多量とされている。
【0045】
なお、第1工程では、焼成後に所定の厚みとなるようにシート状の本体部形成用材料を6枚積層し、その最表面に、ペースト状の活性層形成用材料および側面被覆部形成用材料をスクリーン印刷法にて塗布した。この際、上記塗布は、上述した
図2〜
図4で示される構成が得られるように、本体部形成用材料の外形よりも外形が小さくされた活性層形成用材料の外周囲に側面被覆部形成用材料が配置されるように行った。
【0046】
第2工程は、上記塗布面に、焼成により固体電解質層10になるシート状の固体電解質層形成用材料と、焼成により中間層12になるシート状の中間層形成用材料とをこの順に積層する工程である。
【0047】
本例では、具体的には、8YSZ粉末(平均粒子径:0.5μm)と、ポリビニルブチラール(有機材料)と、酢酸イソアミル、2−ブタノールおよびエタノール(混合溶媒)とをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。このスラリーを、ドクターブレード法を用いて、プラスチック基材上に層状に塗工し、乾燥させることにより、シート状の固体電解質層形成用材料を準備した。
【0048】
また、10GDC粉末(平均粒子径:0.3μm)と、ポリビニルブチラール(有機材料)と、酢酸イソアミル、2−ブタノールおよびエタノール(混合溶媒)とをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。このスラリーを、ドクターブレード法を用いて、プラスチック基材上に層状に塗工し、乾燥させることにより、シート状の中間層形成用材料を準備した。
【0049】
第3工程は、第1工程、第2工程を経て得られた積層体を、同時焼成する工程である。
【0050】
本例では、具体的には、第1工程、第2工程を経て得られた積層体を、CIP成形法を用いて圧着、脱脂した後、1400℃で2時間焼成した。なお、CIP成形条件は、温度80℃、加圧力50MPa、加圧時間10分という条件とした。
【0051】
第4工程は、第3工程にて形成された積層体(拡散層、活性層、固体電解質層、中間層がこの順に積層された同時焼成体)における中間層12の表面に、焼成によりカソード層13になるペースト状のカソード層形成用材料を印刷法によって固体電解質層10の外形よりも小さい範囲で塗布し、焼成する工程である。
【0052】
本例では、LSCF粉末(平均粒子径:0.6μm)と、10GDC粉末(平均粒子径:0.3μm)と、エチルセルロース(有機材料)と、テルピネオール(溶媒)とをボールミルにて混合することにより、ペースト状のカソード層形成用材料を準備した。なお、LSCF粉末と10GDC粉末の質量比は、90:10とした。
【0053】
また、上記印刷法には、スクリーン印刷法を用いた。なお、上記カソード層形成用材料の塗布は、より具体的には、固体電解質層10の外形よりも小さく、かつ、活性層111の外形よりも小さい範囲とした。また、第4工程における焼成条件は、1100℃で2時間という条件とした。
【0054】
以上の工程を経ることにより、実施例1の燃料電池単セル1を得た。なお、燃料電池単セル1について、SEMによる断面観察を行ったところ、活性層111および拡散層112について平均気孔径を求めて比較するまでもなく、活性層の気孔径は拡散層の気孔径に比べて明らかに小さかった。
【0055】
次に、本例の燃料電池単セルの製造方法の作用効果について説明する。
【0056】
上記燃料電池単セルの製造方法は、上述した構成を有する燃料電池単セル1を比較的簡単に構成できる上、アノード層11から中間層12までを一度に同時焼成により焼成するため製造性に優れる。また、焼成回数を減らせるため、省エネルギーである。
【0057】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。