【実施例】
【0049】
参考例1
本例は、
図3に示すように、グリセリドアルコール又は主として大豆油モノグリセリド(さらに、
図9のA、B、Cに記載のような生成物も含む)を製造するための手順を説明する。
【0050】
グリセリドアルコールを製造するための工程は全て、アルゴンの雰囲気下で行った。先ず、20.29gの大豆油(0.02306モル;0.02036×12=0.2767モルの二重結合部位とトリグリセリド反応性部位)と101.34gのグリセロール(1.10モル;4倍モル過剰)を500mlの三つ口丸底フラスコ中に秤量することによって、大豆油のオゾン分解を行った。丸底フラスコに、電磁スターラー、酢酸エチル(300ml)、及び三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(8.65ml)を加えた。丸底フラスコに、熱電対、スパージ管、及び凝縮器(1%澱粉溶液中に1重量%のヨウ化カリウムを混合して得られる溶液を収容するバブラーに接続されたガス入口を有する)を取り付けた。丸底フラスコを電磁撹拌プレート上の氷水浴中に配置して、内部温度を10〜20℃に保持し、ヨウ素−澱粉溶液中に青色が出現することで反応が完了したことが示されるまで、スパージ管を介してオゾンを混合物中に2時間吹き込んだ。スパージ管と氷水浴を取り除き、加熱マントルを使用して本混合物を1時間還流した。
【0051】
室温に冷却した後、炭酸ナトリウム(33g)を加えて三フッ化ホウ素を中和した。本混合物を一晩撹拌した後、蒸留水(150ml)を加え、混合物を再び十分に撹拌した。分液漏斗にて酢酸エチル相を取り出し、蒸留水(100ml)と3分再混合した。酢酸エチル相を500mlの三角フラスコ中に入れ、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、粗フリットブフナー漏斗を使用して溶液を濾過し、ロータリーエバポレーター(約2トルにて60℃)にて溶媒を除去した。この生成物の最終重量は41.20gであり、この量は、理論収率がモノグリセリドの独占的な形成を基準とした場合の84.2%の収率に相当した。酸価とヒドロキシル価は、それぞれ3.8及び293.1であった。プロトンNMR分光分析により複雑なスペクトルが得られたが、主要部分は、基準とする1−モノグリセリドエステルとの比較に基づいてビス(2,3−ジヒドロキシ−1−プロピル)アゼレートのスペクトルと合致していた。
【0052】
参考例2
本例は、
図8に示すように、プロピレングリコール又はグリセリンでエステル交換された大豆油の製造を説明する。
【0053】
プロピレングリコール(プロピレングリコール6モル当たり大豆油1モル)と炭酸リチウム(大豆油の1.5重量%)を含むフラスコに大豆油を加え、フラスコを185℃で14時間加熱した。生成物を高温の蒸留水ですすぎ洗いし、乾燥した。プロトンNMR分光分析により、1−プロピレングリコールモノエステルが存在すること、及びモノグリセリドとジグリセリドとトリグリセリドが存在しないことが分かった。
【0054】
グリセリンと反応させるとき、反応を220℃で100時間行う場合は、グリセリン20モル当たり大豆油1モルの運転比(a working ratio)を使用してモノグリセリドの量をできるだけ多くし、これにより70%のモノグリセリド、29%のジグリセリド、及び微量のトリグリセリド(大豆油脂肪酸グリセリル)を含有する組成物を得た。
【0055】
参考例3
本例は、
図9Dに示すように、混合エステルアルコールの製造を説明する。
先ず、大豆油を、
参考例2に記載のようにグリセリンでエステル交換して、大豆油脂肪酸グリセリルを生成させた。50.0gの大豆油脂肪酸グリセリルとオゾンとを、クロロホルム(500ml)中にて、130gのプロピレングリコールと三フッ化ホウ素エーテラート(13.4ml)の存在下で反応させた。反応系からの流出ガスを1%ヨウ化カリウム/澱粉のオゾン指示液中に通すことによって、反応が完了したことが示されるまでオゾン分解を周囲温度で行い、オゾン分解溶液を1時間還流した。本混合物を60gの炭酸ナトリウムと共に20時間撹拌し、濾過した。先ず、得られた溶液から溶媒をロータリーエバポレーターにより蒸発除去し、短経路蒸留装置(クーゲルロール装置)を使用して、過剰のプロピレングリコールを80℃及び0.25トルにて真空蒸留した。最終生成物は、生成物混合物中のアゼレート部分に対してペンダントグリセリンとペンダントプロピレングリコールヒドロキシル基を有する複合エステルアルコールである。
【0056】
参考例4
本例は、大豆油のオゾン分解を触媒するよう樹脂結合酸を使用することを説明する。
【0057】
あらかじめグリセリンでエステル交換させた20gの大豆油とオゾンとを、64gのグリセリン、34gのシラボンド(SilaBond)プロピルスルホン酸〔シリサイクル社(Silicycle,Inc.)製造のシリカ結合酸〕、及び300mlのアセトンの存在下で反応させた。オゾン処理を15〜20℃で行い、次いで1時間還流した。樹脂結合酸を濾過し、真空蒸留によって生成物を精製した。得られた生成物組成物は、約83%のモノグリセリドを含み、残りはジグリセリドであった。収率は、理論収率をモノグリセリドの独占的な形成を基準とした場合に、約88%であった。
【0058】
参考例5
本例は、メタノールでエステル交換された(変性された)大豆油〔ソイクリア(Soyclear)(登録商標)、あるいはより一般的には大豆油脂肪酸メチルと呼ばれる市販製品〕から出発してアミドアルコール(
図10のA、B、C、Dに示されているようなアミドポリオール)を製造する手順を説明する。
【0059】
触媒(例えば三フッ化ホウ素)の存在下にて、モノアルコール(例えばメタノール)を使用する大豆油のオゾン分解時にモノアルコール誘導エステル中間体を製造する上での問題点は、これらの中間体非環式アセタールのヒドロトリオキシドへの、さらには所望のエステルへの酸化が極めて遅いことである。このことは、ガスクロマトグラフィーを含む種々の機器による方法を使用して大豆油反応生成物の組成を測定することによって示された。この遅い工程はさらに、モデルのアルデヒドを、モノアルコールと三フッ化ホウ素の存在下にてオゾン分解条件にかける際にも観察される。
【0060】
オゾン分解を高温で行うことで、この反応を完全に進行させることができるが、長い反応時間が必要とされるために、アルコールの酸化及びオゾンの損失という大きな問題が生じる。反応を低温で行うと、酸化反応はゆっくりと進み、完了までは進行しなかった。
【0061】
過酸化水素を効果的に使用して、アルテヒド/アセタール混合物を所望のカルボン酸エステルに転化させるという、別の酸化方法が開発された。特定の理論で拘束されるつもりはないが、(1)過酸化水素によってアセタールが中間体に酸化され、これがエステルに再配列されるということ、あるいは(2)アルデヒドが過酸化水素によってカルボン酸に酸化され、次いでこのカルボン酸が所望のエステルにエステル化されるということが起こりうる。
【0062】
アミドアルコールを製造するための工程は全て、アルゴンの雰囲気下で行った。
アミドアルコールを製造する際の第1の工程は、メタノールでエステル交換された大豆油のメチルエステルを製造することである。ソイクリア(151.50g;0.1714モル;0.1714×9=1.54モルの二重結合反応部位)を1000mlの三つ口丸底フラスコ中に秤量した。丸底フラスコに、電磁スターラー、メタノール(500ml;12.34モル)、及び6.52mlの99%硫酸(0.122モル)を加えた。丸底フラスコに、熱電対、スパージ管、及び凝縮器(1%澱粉溶液中に1重量%のヨウ化カリウムを混合して得られる溶液を収容するバブラーに接続されたガス入口を有する)を取り付けた。フラスコを電磁撹拌プレート上の水浴中に配置して温度を20℃に保持し、スパージ管を通してオゾンを混合物中に20時間吹き込み(この時点で、全ての二重結合を開裂するのに必要な理論量に近い量のオゾンが加えられている)、その後、ヨウ素−澱粉溶液が青色に変わった。スパージ管と水浴を取り外し、フラスコを加熱マントルに配置し、混合物を1時間還流した。還流後、混合物に50%過酸化水素(95ml)を加えてから、3時間還流した(混合物を1時間以上還流しても、変化は認められなかった)。次いで混合物を、塩化メチレンと水で分配した。塩化メチレン相をさらに、該混合物が中性になって且つ過酸化物指示ストリップによる応答がなくなるまで、(未反応の過酸化水素を減らすために)10%重炭酸ナトリウムと10%亜硫酸ナトリウムで洗浄した。次いで溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。生成物を短経路蒸留によって精製して、140.3gの無色透明液体を得た。この収量は、過剰のメタノールを最初に蒸留するか、あるいは全水性相を塩化メチレンで連続的に抽出することによって向上させることができるであろう。
【0063】
アミドアルコールを製造する際に含まれる第2の工程は、上記にて製造されたメタノールエステル交換大豆油のメチルエステルと2−(エチルアミノ)エタノール(N−エチルエタノールアミン)との反応を含む。メタノールエステル交換大豆油のメチルエステル(135.20g;0.116モル又は1.395モルの全反応部位)、ナトリウムメトキシド(15.38g;0.285モル)、及びメチルアルコール(50ml)を含む丸底フラスコに2−(エチルアミノ)エタノール(137.01g;1.54モル)を加えた。短経路蒸留装置を取り付け、メタノールを除去するために混合物を100℃に加熱した。反応は、約1735cm
−1でのIRエステルピークの減少によってモニターし、3時間後に完了した。
【0064】
室温に冷却した後、油をメタノール中に溶解し、500mlのアンバーライトIR−120と共に1時間撹拌してナトリウムメトキシドを中和した。溶液を濾過してから、100mlのアンバーリストA−26樹脂(水酸化物形態)と共に撹拌した。混合物を濾過してから、樹脂をメタノールで十分に洗浄した。大部分の溶媒を、ロータリーエバポレーターにより減圧にて除去し、得られた油をクーゲルロールシステム上に配置して、残留している過剰の2−(エチルアミノ)エタノールと溶媒を30℃の温度及び0.04〜0.2トルの圧力で除去した。
【0065】
生成物の最終重量は181.15gであり、収率は約85%であった。ヒドロキシル価は351.5であった。1620cm−1でのIRピークは、アミド構造の存在を示している。プロトンNMR分光分析によれば、トリグリセリドの形跡は認められなかった。3.3〜3.6ppmの領域におけるNMRピークは、β−ヒドロキシメチルアミド官能基の存在を示しており、これらのアミド構造と矛盾しないアミド束縛回転に特徴的である。
【0066】
この一般的なプロセスから得られたアミドアルコール生成物又はアミドポリオール生成物は、透明のオレンジ色であり、中程度の粘度を有していた。ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、及びエタノールアミン等のアミンアルコールを使用して類似の反応を行った。
【0067】
参考例6
本例は、メタノールエステル交換大豆油のメチルエステルを製造するための低温法を説明する。
【0068】
ソイクリア(10.0g;0.01モル;0.10モルの二重結合反応性部位)を500mlの三つ口丸底フラスコ中に秤量した。丸底フラスコに、電磁スターラー、メタノール(150ml)、塩化メチレン(150ml)、及び三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(3.25ml;0.03モル)を加えた。丸底フラスコに、熱電対、スパージ管、及び凝縮器(1重量%澱粉溶液中に1重量%のヨウ化カリウムを混合して得られる溶液を含むバブラーに接続されたガス入口を有する)を取り付けた。フラスコを、電磁撹拌プレート上のドライアイス−アセトン浴中に配置して、温度を−68℃に保持した。スパージ管を介してオゾンを混合物中に1時間加えたところ、溶液が青色に変わった。次いでスパージ管とドライアイス−アセトン浴を取り外し、溶液を室温に自然加温した。室温になってからサンプルを採取して調べたところ、全ての二重結合が消費されたことが分かった。この時点で、溶液に50%の過酸化水素(10ml)を加え、フラスコを加熱マントルに配置し、混合物を2時間還流した。サンプリングにより、所望の生成物であることが分かった。次いで混合物を、塩化メチレン−水による分配によって処理した。このとき混合物が中性になって且つ過酸化物指示ストリップによる応答がなくなるまで、塩化メチレン相を、10%重炭酸ナトリウムと10%亜硫酸ナトリウムで洗浄した(未反応の過酸化水素を減少させるために)。次いで溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。生成物を短経路蒸留によって精製し、適度な収量が得られた。
【0069】
参考例7
本例は、メタノールエステル交換大豆油のメチルエステルを製造するための手順を説明する(
図4に示す)。
【0070】
500mlの三つ口丸底フラスコ中に、大豆油(128.0g;0.15モル;1.74モルの二重結合反応性部位とトリグリセリド反応性部位)を秤量した。フラスコに、電磁スターラー、メタノール(266ml)、及び99%硫酸(3.0ml;0.06モル)を加えた。丸底フラスコに、熱電対と凝縮器を取り付けた。フラスコの下に加熱マントルと撹拌プレート配置し、混合物を3時間還流した(この間に、不均一混合物が均一になった)。次いで加熱マントルを水浴に置き換えて、温度を約20℃に保持した。スパージ管をフラスコに取り付け、1重量%澱粉溶液中に1重量%のヨウ化カリウムを混合して得られる溶液を含むバブラーを有するガス入口を凝縮器に取り付けた。スパージ管を介して、オゾンを混合物中に14時間加えた。次いで水浴を加熱マントルに置き換えて、温度を45℃に上昇させた。7時間後にオゾンの供給を停止し、溶液を5時間還流した。次いでオゾンの供給を再開し、45℃にて13時間以上、混合物中に吹き込んだ。次いで混合物を2時間還流した。サンプリングにより、反応が99.3%完了したことが分かった。次いで混合物を、塩化メチレン−水による分配によって処理した。このとき混合物が中性になって且つ過酸化物指示ストリップによる応答がなくなるまで、塩化メチレン相を、10%重炭酸ナトリウムと5%亜硫酸ナトリウムで洗浄した(未反応の過酸化水素を減少させるために)。次いで溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。生成物を短経路蒸留によって精製して、146.3gの透明淡黄色液体を得た。メタノールを最初に蒸留するか、あるいは全水性相を塩化メチレンで連続的に抽出すれば、この収量を向上させることができるであろう。
【0071】
参考例8
本例は、触媒を使用しない脂肪酸開裂メチルエステルのアミド化を説明する。
25.64g(2当量)のエタノールアミンと5mlのメタノールに、メタノールエステル交換大豆油のメチルエステル(20.0g;
参考例5の第1工程に記載の、メタノール中での大豆油脂肪酸メチルのオゾン分解の生成物)を加えた。混合物を、短経路蒸留装置を取り付けたフラスコ中にて、周囲圧力で一晩120℃に加熱した。したがって反応時間は16時間弱であった。赤外スペクトルにおける1730cm−1でのエステルピークの消失によって、反応が完了したことが示された。過剰のエタノールアミンを真空蒸留によって除去した。
【0072】
参考例9
本例は、
図7に示すように、トリグリセリド骨格部位における脂肪酸のアミド化を説明する。
【0073】
エステルの骨格アミド化は、ルイス酸やブレンステッド酸を使用するだけでなく、ナトリウムメトキシド等の塩基を使用して行うことができる。
10.50gのナトリウムメトキシドを触媒として使用して、100.0gの大豆油と200mlのメタノール中に溶解した286.0gのジエタノールアミン(2当量)とを反応させた。反応混合物を100℃で3時間加熱した後に反応が完了し、この間にメタノールを短経路蒸留によって採取した。反応混合物を酢酸エチル/水による分配によって精製して、所望の生成物を約98%の収率で得た。プロトンNMR分光分析により、純度が約98%であって、残りがメチルエステルであることが示された。
【0074】
さらに、この反応はメタノールを使用せずに行うことができるが、メタノールを使用することで、溶解性が増大し、反応時間が短くなる。
この反応は、触媒を使用せずに行うことができるが、反応がより遅くなり、広範囲のアミンが生成する。
【0075】
参考例10
本例は、トリグリセリド骨格にてアミド化された脂肪酸(大豆アミド)を使用して複合大豆アミド/エステル物質(例えば、
図11に示すような物質)を製造することを説明する。
【0076】
大豆アミド(
参考例9に記載のようにトリグリセリド骨格にてアミド化された脂肪酸)は、アゼレート成分に関して一連のアミド/エステル複合体に転化させることができる。500gのプロピレングリコールの存在下にて、溶媒としての1リットルのクロロホルムと51.65mlの三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートを使用して、大豆油ジエタノールアミド(200.0g;
参考例9から)を15〜25℃で26時間オゾン化した。オゾン処理の後、溶液を1.5時間還流した。反応混合物を、炭酸ナトリウム(166.5g)の水(300ml)溶液と共に3時間撹拌することによって中和した。これらの溶液を、1350mlの水を含む6リットルの分液漏斗中に入れた。クロロホルム相を取り出し、水相を1325mlの酢酸エチルで再抽出した。酢酸エチル相とクロロホルム相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥してから濾過した。ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、クーゲルロール短経路蒸留装置上に、30℃、0.17トルにて2.5時間配置した。このプロセスにより、289.25gの物質が81%の収率で得られた。得られた物質のヒドロキシル価は343.6であった。本混合物の化学構造を示すとすると、得られたアゼレート成分(主成分)だけが、一端上にジエタノールアミド官能基を、そして他端上にプロピレングリコールのエステルを有するであろう〔この生成物は、異なるアミドでさらにアミド化して複合アミド系(例えば、
図10Eの物質)を生成させることができるであろう〕。
【0077】
参考例11
本例は、大豆油誘導体をアミド化してヒドロキシル価を増大させることを説明する。
【0078】
ヒドロホルミル化大豆油や水素化エポキシ化大豆油等の油誘導体にアミド化を施して、ヒドロキシル価と反応性を高めることができる。
参考例9におけるエステルのアミド化に関して記載のアミド化法と精製法に基づき、6.55gのナトリウムメトキシドと280mlのメタノールを使用して、水素化エポキシ化大豆油(257.0g)を131gのジエタノールアミンでアミド化した。生成物を、酢酸エチル/水の分配によって精製した。ジエタノールアミンを使用した場合、収率は91%であり、生成物の理論ヒドロキシル価は498であった。
【0079】
この生成物は、脂肪酸鎖に沿って、第一級ヒドロキシル基(ジエタノールアミド構造からの)と第二級ヒドロキシル基の両方を有する。
参考例12
本例は、大豆油モノアルコールエステル(エチルエステルとメチルエステル)をグリセリンによってエステル交換して、主として大豆油モノグリセリドを形成させることを説明する(
図6に示す)。
【0080】
30.0gのグリセリン、エタノール(30ml)、及び99%硫酸(0.34ml)に8gの大豆エチルエステル(エタノール中での大豆油のオゾン分解と還流の生成物であり、
図4に示す物質に類似した個々の構造を有する)を加えた。混合物を、短経路蒸留装置中にて120℃で6.5時間加熱した。NMR分光分析を使用して反応混合物を分析し、約54%がグリセリド生成物であって、残りがエチルエステル出発物質であることが分かった。三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(0.1ml)を加え、溶液を120℃で5時間加熱した。反応混合物のNMR分光分析により、約72%の全グリセリド生成物が存在し、残部がエチルエステル出発物質であることが分かった。
【0081】
別の実験では、96.8gのグリセリン、メタノール(50ml)、及び7.15gのナトリウムメトキシドに30.0gの大豆メチルエステル(
図4に示すように、硫酸を触媒として使用する、メタノール中での大豆油のオゾン分解と還流の生成物)を加えた。反応混合物を、短経路蒸留装置中にて100℃で15.5時間加熱し、2時間で130℃に昇温した(加熱の最終2分間は減圧を施しながら)。反応混合物のNMR分光分析により、55%の全グリセリド生成物が存在し、残部がメチルエステル出発物質であることが分かった。
【0082】
コーティング
ポリウレタンコーティングとポリエステルコーティングは、本発明のエステルアルコール、エステルポリオール、アミドアルコール、及びアミドポリオールを使用し、これらをポリイソシアネート、ポリ酸、又はポリエステルと反応させることによって作製することができる。
【0083】
特定のジイソシアネートとトリイソシアネート並びにこれらの混合物と、さまざまなポリオールとを反応させて種々のコーティングを作製した。これらのコーティングを、可撓性(円錐マンドレル屈曲)、耐薬品性(二重MEK摩耗)、接着性(クロスハッチ接着性)、耐衝撃性(80ポンドの重量による直接衝撃と間接衝撃)、硬度(鉛筆硬度スケールによって測定)、及び光沢(60°に設定した鏡面光沢度計で測定)に関して試験した。下記の構造は、製造及び試験した選択されたエステル、アミド、およびエステル/アミド複合アルコールのアゼレート成分であり、これらに対応したヒドロキシル価を併記する。
【0084】
【化2】
【0085】
下記の市販イソシアネート(市販名、略号、及びイソシアネート官能価を併記)をコーティング作業において使用した:ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI、二官能性);Isonate143L(カルボジイミド変性MDI、<90℃では三官能性、>90℃では二官能性);Isobond1088(ポリメリックMDI誘導体);Bayhydur 302(Bayh.302、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネートの三量体、三官能性);及び2,4−トルエンジイソシアネート(TDI、二官能性)。
【0086】
先ず、0.5%のジブチル錫ジラウレートを使用してコーティングを120℃で20分硬化させたが、163℃で20分硬化させることで、より高性能のコーティングが得られることがわかったので、より高い温度での硬化を採用した。一般的な用途のコーティングに対して必要とされる最小鉛筆硬度はHBであり、高い硬度が必要な多くの用途において使用するのに、2Hの硬度の硬さで十分である。コーティングにおいては高い光沢が重視され、90〜100°の60°光沢測定値が“極めて良好である”と見なされ、100°に近い60°光沢測定値が“Aクラス”仕上げのために必要な測定値に対応する。
【0087】
参考例13
部分アセテートキャップ(及び非キャップ)大豆油モノグリセリドからのコーティング
表1に記載の種々のヒドロキシル価を有する3種の部分アセテートキャップサンプルからポリウレタンコーティングを作製し、イソシアネートの多くの組み合わせを試験した。
【0088】
ポリオールバッチ51056−66−28を使用した場合は、ほとんどのコーティングをBayhydur302とMDIとの混合物から作製し、これらのイソシアネート混合物組成物を使用して低めにインデックス設定すると(0.68〜0.75のインデックス設定)、極めて良好なコーティングが得られるということが確認された。Bayhydur302:MDIが90:10比であるときに最良のコーティングの2つが得られ、このときFとHの鉛筆硬度値が得られた(配合物12−2105−4と12−2105−3)。51056−66−28と50:50比のBayhydur302:MDIとを反応させたときにも、極めて良好なコーティングが得られた。これらの良好なコーティングが、イソシアネートを約25%低めにインデックス設定したときに得られたという事実は、ほぼ三官能性のポリオールと2より大きい官能価を有するイソシアネートとを反応させると、ポリオール官能基の一部が未反応のまま残存しつつ、良好なコーティング特性をもたらすに足る十分に架橋した構造が確立される、という事実に由来する。
【0089】
ポリオールバッチ51056−6−26(51056−66−28より幾らか低いヒドロキシル価を有する)を主として、Bayhydur302とIsobond1088とIsonate143Lの混合物と0.9〜1.0のイソシアネートインデックスで反応させた。表からわかるように、幾つかの極めて良好なコーティングが得られ、配合物2−0206−3と2−2606−1(10:90比のBayhydur302:Isobond1088)が得られた最良のコーティングの2つであった。
【0090】
ポリオール51056−6−26のサンプルを、溶媒を使用せずに、TDIとBayhydur302の2:1混合物と配合した。得られた混合物の粘度は、有機溶媒を全く必要とせずに普通のサイフォンエアガン(siphon air gun)で表面に適切に施せるような粘度であった。このコーティングは、全ての性能試験に合格しつつ適切に硬化し、97°の60°光沢を有していた。VOCを全く含有しないこのようなポリオール/イソシアネート配合物は重要である。なぜなら、有機溶媒を使用せずに噴霧コーティングするためのこのような混合物の配合物は高い有用性を有するが、達成するのが困難であるからである。
【0091】
ポリオールバッチ51056−51−19は、異なる最終処理手順のために、ポリオールバッチ51056−66−28や51056−6−26よりもかなり低いヒドロキシル価を有していた。このポリオールを、主として、Bayhydur302とMDIの混合物と反応させた。配合物2−2606−7(Bayhydur302:MDI=90:10、インデックス設定1.0)は、同じではあるが1.0より低くインデックス設定したイソシアネート組成物(配合物12−2105−4)と反応させたときのポリオール51056−66−28と比較して、硬度に関して劣ったコーティングをもたらした。
【0092】
あるコーティングは、約585のヒドロキシル価を有する非キャップ大豆油モノグリセリド(51290−11−32)を使用して得られた。このコーティングは、約1.0のインデックス設定を使用して、50:50比のBayhydur302:MDI(配合物3−0106−1)と反応させることによって作製し、2Hの鉛筆硬度及び99°の60°光沢を有していた。このコーティングを、作製された最良の全般的コーティングの1つとして評価した。
【0093】
参考例14
大豆油プロピレングリコールエステルからのコーティング
大豆油プロピレングリコールエステルの製造と性能データを表2に示す。表1に記載の大豆油モノグリセリドと比較して、大幅に数少ないイソシアネート組成物を評価した。これらのプロピレングリコールエステルを使用して評価したイソシアネート組成物は、グリセリドを使用して評価した最良のイソシアネート組成物には対応しなかった。これは、表1における好ましいデータが、大豆油プロピレングリコールエステルによる試験を開始した後に得られたからである。
【0094】
コーティング配合物1−2306−5は、90:10比のIsobond1088:Bayhydur302を1.39のインデックス設定で使用して得られる、最良の性能のプロピレングリコールエステル/イソシアネート組成物の1つであった。改良を必要とする1つの検討領域(test area)は、その鉛筆硬度がHBしかないことであった。このイソシネート組成物は、2つの高性能グリセリドコーティング(配合物2−2606−1及び2−2606−3)の場合と同じであるが、これらのコーティングでは、イソシアネートインデックス値が、それぞれ1.0と0.90であった。これらのグリセリド含有コーティングがより良好な性能特性を有するという事実は、おそらくこのインデックス設定の相違によるものと思われる。コーティング配合物1−2306−4は、Isobond1088とBayhydur302から(1.39のイソシアネートインデックス設定にて)誘導された、プロピレングリコールから誘導の他の比較的高性能のコーティングであったが、その鉛筆硬度は、この場合もHBであった。
【0095】
参考例15
ヒドロキシエチルアミド成分を含有する大豆油誘導コーティング
この種類のポリウレタン誘導体の製造と性能データを表3に示す。
【0096】
大豆油ジエタノールアミド(骨格)−プロピレングリコールエステル
100%Bayhydur302とポリオール51056−95−28とを、イソシアネートインデックス設定を1.00として反応させると、0.44で反応させる場合と比較して(配合物2−2603−3を1−2606−1と比較して)、硬度に関してより良好なコーティングが得られた。100%Isonate143LとIsobond1088を1.00のインデックス設定で使用すると、Bayhydur302を使用した場合と比較して劣ったコーティングが得られた。
【0097】
ポリオール51056−95−28と2,4−TDI:Bayhydur302の2:1組成物とを使用してポリウレタン組成物を作製し、10%の高度分岐ポリエステルを“硬化”剤として加えた。このコーティングは、全ての性能試験に合格し、5Hの鉛筆硬度および115°の60°光沢を有した。ごく少量のこうした硬化剤を使用すると、これらのヒドロキシエチルアミド含有コーティングから作製されたポリウレタンコーティングの性能だけでなく、グリセリドベース及びプロピレングリコールベースのコーティングから作製されたポリウレタンコーティングの性能も大幅に向上する、ということをこれらの試験結果は強く示している。
【0098】
大豆油N−メチルエタノールアミド(骨格)−プロピレングリコールエステル
50:50のBayhydur302:MDIをわずか0.57のイソシアネートインデックス設定にて使用すると、101°という並外れた60°光沢を有する良好なコーティング結果が得られたが、コーティングの鉛筆硬度はHBしかなかった。
【0099】
N−メチルエタノールアミンで完全にアミド化された大豆油
100%Isonate143Lを0.73のイソシアネートインデックス設定にて使用すると、耐薬品性(MEK摩耗に基づく)が不満足であること、及びHBの鉛筆硬度しかもたないこと以外は、良好な試験結果を示すコーティングが得られた。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
本発明のエステルアルコール、エステルポリオール、アミドアルコール、及びアミドポリオールを使用し、これらをポリイソシアネートと反応させることによってポリウレタンフォームを製造することができる。本発明の製造法により、生成物を種々の用途に適合させることのできるある範囲のヒドロキシル官能価が可能となる。例えば、官能価がより高いとより硬質のフォーム(架橋度がより高い)が得られ、官能価がより低いとより軟質のフォーム(架橋度がより低い)が得られる。
【0104】
前述したように、バイオベースポリオールは、グリセリン、プロピレングリコール、単糖類、又は単糖類誘導体(例えばソルビトール)等の“第一ポリオール”の存在下での植物油もしくは動物性脂肪(例えば大豆油)のオゾン分解により製造することができる。このプロセスの周囲温度段階の後に、一般には還流段階が続き、これにより全体的な反応が完了する。特定の理論で拘束されるつもりはないが、このプロセスのメカニズムは、中間体モルオゾニドのアルデヒドと酸化カルボニルへの解離を含み、これらアルデヒドと酸化カルボニルが第一ポリオールによって捕捉されて、それぞれアセタール中間体とアルコキシヒドロペルオキシド中間体を生成する、と考えられる。このプロセスは、植物油(又は動物性脂肪)中の二重結合の開裂により誘導されるヒドロキシル化生成物の混合物を生成し、この混合物が中間体(酸化カルボニルとアルデヒド)を生成し、この中間体がグリセリンや他の第一ポリオールと反応して、主として、元の二重結合の炭素原子においてモノグリセリドとジグリセリドを生成する。
【0105】
第一ポリオールがグリセリンである場合、アセタールとアルコキシヒドロペルオキシドが、オゾンによってエステルグリセリドポリオールに転化される。グリセリン等の第一ポリオールが比較的高い濃度で使用されると、グリセリンのヒドロキシル基の1つだけが捕捉され、したがって主として1−モノグリセリドが形成される。しかしながら、グリセリンが比較的低い濃度で使用されると、これらの1−モノグリセリドが特定の反応性中間体とさらに反応し、ジグリセリド構造に転化される。
【0106】
還流段階時に生ずる他のプロセスは、トリグリセリド骨格の脂肪酸部位における、第一アルコールによるエステル交換である。アセテートエステル溶媒が使用されると、エステル交換により、アルコール部位において“アセテートキャッピング”もランダムに起こる。グリセリンが第一ポリオールであるときの、酢酸エチル中での大豆油のオゾン分解時にこれら全てのプロセスから生ずる生成物を
図2に示す。
【0107】
このプロセスの特徴は、これらの反応性中間体を第一ポリオールによって効果的に捕捉できるように、植物油、植物油誘導体、第一ポリオール、又は誘導体化ポリオール(derivatized polyols)を共可溶化する(co−solubilize)ための適切な有機溶媒が必要とされる、という点である。しかしながら、相当の火災と爆発の危険性、ならびにオゾン/酸素をこれらの有機溶媒に通すときにかかるコストを軽減するのに必要とされる広範なエンジニアリング上の制御を避けるために、溶媒を使用しない系を考案するのが有利であろう。
【0108】
酸化酸からのポリオール
バイオベース油(例えば、動物性脂肪や植物油)から誘導される脂肪酸を、脂肪酸中の炭素−炭素二重結合をもともと構成する炭素原子の実質的に全てがカルボン酸基に転化されるように先ず酸化開裂に付す、というポリウレタン用途やポリエステル用途に対して有用なポリオールを製造するための他の方法が開発された
。動物性脂肪や植物油(例えば大豆油)から誘導される脂肪酸の酸化開裂においては、二酸と一酸(“酸化酸”と呼ぶ)との混合物が最初に生成される。これらの酸は、二官能性酸であるアゼライン酸とマロン酸、ならびに、単官能性酸であるプロピオン酸、ヘキサン酸、ペラルゴン酸(ノナン酸)、パルミチン酸、及びテアリン酸を含む。
図12は、代表的な動物性脂肪や植物油において見られる特定の不飽和脂肪酸の酸化開裂により形成される、個々の二官能性及び単官能性の“酸化酸”を示している。留意しておかねばならないことは、動物性脂肪や植物油は種々の量の飽和脂肪酸を含有しており、したがって混合物中に1種以上の飽和脂肪酸が存在しうるという点である。
図12に示すように、飽和脂肪酸は酸化開裂を受けないであろう。
【0109】
これらの酸混合物を、種々の方法を使用してポリオールに転化させることができる。1つの方法は、これらの酸化酸混合物を、グリセリン等の“第一ポリオール”、他の第一ポリオール、又は第一ポリオールの混合物でエステル化する、というものである。エステル化法によって“第二ポリオール”を製造する際の重要な変数は、全ヒドロキシル基の濃度と全カルボキシル基の濃度との比である。“第二ポリオール”という用語はさらに、それらの形成において第一アルコールを組み込んだ“生成物ポリオール”を意味すると見なすこともできる。ポリ酸と一酸との混合物によるポリオールのエステル化を制御する重合原理に基づくと、全ヒドロキシル基と全カルボキシル基との濃度比が比較的高い場合は、
図13に示すように、主として第一ポリオールがモノエステル化され、分子量が比較的小さく、そして第二ポリオールが比較的高いヒドロキシル基を有する、という第二ポリオール混合物が得られる。これとは逆に、全ヒドロキシル基と全カルボキシル基との濃度比がより低い場合(第二ポリオールを生成させるために、カルボン酸基に比較して過剰のヒドロキシル基を保持しつつ)は、
図14に示すように、主として第一ポリオールがジエステル化され、分子量がかなり高く、そして第二ポリオールがより低いヒドロキシル価を有する、という第二ポリオール混合物が得られる。
図14はさらに、単官能性カルボン酸でキャッピングすることによってエステルポリオールの分子量が制限されること、及び三官能性の第一ポリオールであるグリセリンが存在することで鎖の架橋が起こること、を示している。これらのエステル化反応時に、溶媒を使用してもよいし、あるいは使用しなくてもよい。代表的な脂肪酸から誘導される酸化酸中に存在する単官能性酸は、より高いポリオール分子量になりやすい濃度比にて製造される第二ポリオールの分子量を制限する連鎖停止剤として機能する、ということがわかる。したがって、種々の脂肪酸源から得られる酸化酸の第一ポリオールによるエステル化は、極めて融通性があり、ある範囲の分子量とヒドロキシル価を有するある範囲の第二ポリオールを生成することができる。
【0110】
不飽和脂肪酸の酸化開裂を果たすための1つの経済的・工業的方法は、最初に溶媒なしで酸化的オゾン分解を行うことを含み、このとき中間体であるオゾン化生成物(オゾニド)が、高温エア、酸素、又はこれらの混合物でさらに酸化されてカルボン酸になる(米国特許第2,813,113号及び米国特許出願第2007/0276165号に記載)。これとは別に、脂肪酸の酸化的オゾン分解は溶媒中でも行うことができる(“不飽和脂肪酸のオゾン分解”,R.G.Ackman,M.E.Retson,L.R.Gallay,and F.A.Vandenheuvel,Canadian Journal of Chemistry,1961,39,1956−1936)。不飽和酸から酸化酸を製造するための他の方法は、以下の酸化剤で酸化することを含む:過マンガン酸塩、クラウンエーテルの存在下での過マンガン酸カリウム、重クロム酸塩、過ヨウ素酸ナトリウムと四酸化ルテニウムとの混合物、及び過ヨウ素酸と過マンガン酸塩との混合物(Advanced Organic Chemistry,M.B.Smith and J.March,第5版,ジョン・ウイリー&サンズ,2001,pp.1525−1526)。
【0111】
好適で有望な“第一ポリオール”としては、アルジトール〔例えば、ソルビトール(グルシトール)やグリセリン(プロパン−1,2,3−トリオール)〕;ペンタエリスリトール〔2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール)〕;トリメチロールプロパン〔2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール〕;ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール);2−メチルプロパン−1,3−ジオール;1,4−ブタンジオール;モノアセチン;ジアセチン;プロパン−1,2−ジオール; プロパン−1,3−ジオール;エタン−1,2−ジオール;単糖類と二糖類;及びこれらの混合物;などがあるが、これらに限定されない。
【0112】
これらのエステル化に対しては、硫酸、塩酸、臭化水素酸、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、第一錫塩と第二錫塩〔塩化物(そして一般にはハロゲン化物)を含む〕、酸化物、カルボン酸塩と有機変性錫化学種(例えば酸化ジブチル錫)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、及び一般にはジアルキル錫ジカルボキシレートを含めた(これらに限定されない)ある範囲のブレンステッド酸触媒とルイス酸触媒を使用することができる。
【0113】
上記アプローチの変法は、動物性脂肪や植物油から誘導される酸化酸をメタノール等のモノオールでエステル化し、次いで酸化酸アルキルエステルを、比較的高い又は比較的低い第一ポリオール濃度の条件下にて第一ポリオールでエステル交換して、同じ濃度変化を使用して酸化酸を第一ポリオールで直接エステル化したときに得られるのと類似の第二ポリオールを得る、という方法である。このアプローチを
図15A−Bに示す。
【0114】
図12に示すアプローチに対する変法は、先ず、脂肪酸のアルキルエステル(特にメチルエステル)(バイオディーゼル)の直接オゾン分解を行うという方法である。この方法は、脂肪酸のメチルエステルが、一般には、対応する脂肪酸より低い融点を有し、したがってより簡単に液体状態に保持して、酸化開裂を受ける前の物質移動を容易にすることができる、という事実を利用している。主要なアゼレート(C9)エステル/アルコールならびに二官能性及び単官能性の酸化酸をモノオールでエステル化すると、二官能性エステルと単官能性エステルとの記載の混合物が生成する。
図16に示すように、この段階において、高い又は低い比の第一ポリオール(例えばグリセリン)を使用することによって、より低い又はより高い分子量の第二ポリオールに転化するということも起こりうる。
【0115】
よく知られているように、エステルポリオールは、個々の二酸を第一ポリオール(例えばグリセリン)でエステル化することにより製造することができる。しかしながら、我々の知る限りでは、比較的高い第一ポリオール濃度または比較的低い第一ポリオール濃度の条件下にて任意の個別の二酸をエステル化することにより誘導される短鎖の第二ポリオールは、ポリウレタンの用途に対しては使用されていない。さらに、高性能のポリウレタンフォームやポリウレタンコーティングをもたらす第二ポリオールを製造する際に、動物性脂肪や植物油から誘導される脂肪酸から得られる個々の酸化酸の混合物を分別する必要はない、ということを我々は実証した。誘導された酸化酸を、これらの用途のために分別する必要がないということは、本発明に関して相当の経済的・技術的な利点を示している。さらに、酸化酸混合物中における一酸の存在は、第二ポリオールの粘度に対して所望の制限をもたらすように第二ポリオールの分子量を制御する方法を提供する。
【0116】
本発明は、「油からポリオールを製造する方法、及びポリエステルとポリウレタンの製造におけるそれらの使用」と題して2006年4月26日付出願のWO2007/027223(米国特許出願第2006/016022号)に記載の、第一ポリオールの存在下での脂肪酸の溶媒ベースオゾン分解を凌ぐ1つ以上の特定の利点もしくは差異を提供することができる。1つの利点は、本発明によって得られる第二ポリオールが、低い第一ポリオール濃度の条件下での溶媒ベースのオゾン分解によって得られる第二ポリオールより一般には高い分子量を有する、という点である。さらに、必要であれば、生成物である二酸と一酸を蒸留によって分別することができる。これにより、一酸の存在によって引き起こされる連鎖停止効果を避けつつ、二酸を二官能性の第一ポリオールでエステル化することによって、高分子量のポリエステルジオールを形成させることが可能となる。したがって、末端ヒドロキシル基間の隔離が増大した第二ポリオールが形成され、このためポリオールの有利な軟質フォーム用途をもたらすことができる。他の利点は、溶媒ベースのオゾン分解においては二重結合1モル当たり2モルのオゾンを必要とするのに対し、酸化的オゾン分解では、二重結合1モル当たり1モルだけのオゾンを必要とする、という点である。他の利点は、工業界では現在、溶媒なしの酸化的オゾン分解が行われていて、このプロセスでは、オゾンと酸素との混合物を可燃性溶媒に通すのに比較して危険性が大幅に緩和されている、という点である。
【0117】
この方法の他のバリエーションは、酸化的開裂から得られる酸化酸混合物を、先ずメタノール等のモノオールでエステル化して酸化酸アルキルエステルを形成させ、次いで二官能性アルキルエステルと単官能性アルキルエステルとの混合物を、
図17に示すようなアミンアルコールでアミド化することを含む。このように、得られるポリオール混合物は、高反応性の第一アルコール官能価のみで構成される。二官能性アルキルエステルと単官能性アルキルエステルとの同じ混合物を得るための他の方法は、
図16に示すように、脂肪酸のアルキルエステルからスタートするという方法である。
【0118】
他のバリエーションは、脂肪酸アミドアルコールの酸化的開裂を行って、ある範囲のヒドロキシアミド酸(特にβ−ヒドロキシエチルアミド酸)を、二酸と一酸との組み合わせにおける主要成分として製造することを含む。β−ヒドロキシエチルアミド官能価の重要性は、エステル化反応において、通常の第一ヒドロキシル基より約30倍高い反応性の第一ヒドロキシル基をもたらす、という点である。したがって、β−ヒドロキシエチルアミド酸中のヒドロキシル基は、ヒドロキシアミド酸、二酸、及び一酸の、第一ポリオール(例えばグリセリン)による全体的なエステル化時において、カルボン酸を含む典型的な反応混合物の全体的なエステル化速度を促進する(
図18に示す)。このアプローチは、大豆油等の植物油(又は動物性脂肪)をアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミンやN−アルキルエタノールアミン)で先ずアミド化し、次いでこの脂肪酸アミド混合物をオゾン分解して、アミドアルコール及び推定される二酸と一酸を生成させることを含む。
【0119】
酸化酸からエステルポリオールを製造するための一般的なアプローチ
以下の実施例では、シミュレート化した二官能性酸化酸と単官能性酸化酸との混合物を使用して、フォーム用途及びコーティング用途において試験するためのエステルポリオールを製造した。エステルポリオールを製造するのに使用した1つの特定のシミュレート化酸化酸混合物は、大豆油の酸化的オゾン分解により生成すると予測される混合物であった。表に示すように、この特定の組成は、先ず通常の大豆油を構成する個々の脂肪酸のモル数を決定し、個々の脂肪酸から得られる特定のオゾン酸(ozone acids)のモル数を算出し、そしてこの組成の大豆油に対して酸化的オゾン分解を行った場合に得られるであろう個々のオゾン酸の全重量%を決定することによって算出した。ポリオールを得るための実際の酸化酸混合物を使用して類似の結果が得られ、これらのポリオールを使用して種々のフォームやコーティングを作製した。
【0120】
【表4】
【0121】
参考例16
高ヒドロキシル価のエステルポリオール(代表的な硬質フォーム用ポリオール)
丸底フラスコ中にて、通常の脂肪酸配分の大豆油からのシミュレート化オゾン酸(上記)(223.73g;2.4046モルのカルボン酸)を、グリセリン(88.58g;グリセリン0.9619モルのグリセリン;2.8857モルのOH)、ソルビトール(87.61g;0.4809モルのソルビトール;2.8854モルのOH)、トリアセチン(52.50g;0.2406モルのトリアセチン)、及び次亜リン酸カルシウム(11.31g)と混合した。この組成物のヒドロキシル対カルボン酸比は2.40である。先ず、電磁撹拌を1.5時間使用して、バレット管中でのエステル化時に生成する水を捕集しつつ、本混合物を140℃の内部温度に加熱した。エステル化をほぼ完全に進行させるために、混合物を、大気圧下にて190℃で5時間加熱し、次いで圧力を、190℃にて3時間にわたって45トルに低下させ、11時間保持した。得られた油状物を1リットルのアセトニトリル中に溶解し、硫酸マグネシウムで乾燥し、セライトを含有する粗めのガラス濾過器を通して濾過し、90トルの圧力を60℃で2.5時間加えることによって溶媒を除去した。最終的に365.20gのポリオールが得られ、収率は89.3%であった。ポリオールの分析により、ヒドロキシル価(HV)が376、酸価(AV)が2.1、主要なゲル透過クロマトグラフィー(GPC)のピーク(MP)が917、及び25℃での粘度が1160cPであることがわかった。
【0122】
実施例17
中ヒドロキシル価のエステルポリオール(代表的なコーティング用ポリオール)
丸底フラスコ中にて、無水イソ酪酸(26.07g;0.1648モル;0.3296モルの当量カルボン酸)を、グリセリン(71.18g;0.7729モルのグリセリン;2.3187モルのOH)及び次亜リン酸カルシウム(7.70g)と混合した。電磁撹拌を1時間使用して、本混合物を140℃の内部温度にした。通常の脂肪酸配分の大豆油からのシミュレート化オゾン酸(上記)(184.15g;1.6861モルのカルボン酸)を使用し(このとき脱炭酸が起こりうることからマロン酸を除外した)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(29.75g;0.3301モルのプロパンジオール;0.6602モルのOH)をフラスコに加えた。この組成物のヒドロキシル対カルボン酸比は1.48であった。短経路蒸留装置を使用して、エステル化の水を捕集しつつ、混合物を140℃の内部温度にて1時間加熱した。エステル化をほぼ完全に進行させるために、混合物を、大気圧下にて180℃で5時間加熱した。180℃にてアスピレーター減圧を使用して圧力を低下させ、4時間保持してから、190℃にてアスピレーター減圧を1時間行った。得られた油状物を、加温状態にて0.45μmのナイロン膜フィルターを通して触媒を除去した。最終的に204.01gのポリオールが得られ、このとき移し変えと濾過の間に幾らかの損失が起きた。ポリオールの分析により、ヒドロキシル価(HV)が186、酸価(AV)が2.9、主要なゲル透過クロマトグラフィー(GPC)のピーク(MP)が1447、及び25℃での粘度が529cPであることがわかった。
【0123】
実施例18
低ヒドロキシル価のエステルポリオール(代表的な軟質フォーム用ポリオール)
丸底フラスコ中にて、無水イソ酪酸(12.55g;0.0793モル;0.1586モルのカルボン酸)を、グリセリン(55.90g;0.6070モルのグリセリン;1.8210モルのOH)及び次亜リン酸カルシウム(6.56g)と混合した。機械的撹拌を使用して、混合物を1時間で140℃の内部温度にした。通常の脂肪酸配分の大豆油からのシミュレート化オゾン酸(上記)(185.34g;1.7004モルのカルボン酸)を使用し(このとき脱炭酸が起こりうることからマロン酸を除外した)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(9.81g;0.1088モルのプロパンジオール;0.2176モルのOH)をフラスコに加えた。この組成物のヒドロキシル対カルボン酸比は1.10であった。短経路蒸留装置を使用して、エステル化の水を捕集しつつ、混合物を140℃の内部温度にて1時間加熱した。エステル化をほぼ完全に進行させるために、混合物を、大気圧下にて180℃で5時間加熱した。180℃にてアスピレーター減圧を使用して圧力を低下させ、4時間保持してから、アスピレーター減圧を190℃にて1時間、及び195℃にて4時間行った。得られた油状物を250mlの酢酸エチル中に溶解し、0.45ミクロンのナイロン膜フィルターを通して濾過して触媒を除去した。次いで60℃にて90トルの減圧にすることによって溶媒を除去して、最終的に194.98gのポリオールが得られ、このとき移し変えと濾過の間に幾らかの損失が起きた。ポリオールの分析により、ヒドロキシル価(HV)が73.2、酸価(AV)が0.63、主要なゲル透過クロマトグラフィー(GPC)のピーク(MP)が>1447、及び25℃での粘度が2252cPであることがわかった。
【0124】
表5は、代表的なエステルポリオールのヒドロキシル価、及び3つの範囲のヒドロキシル/酸比に対して得られたGPC分子量を示す。
【0125】
【表5】
【0126】
実施例19
ポリウレタン用途におけるエステルポリオールの性能
表6に記載のデータから、実施例16の高ヒドロキシル価ポリオールは、市販のポリオール〔ジェフォール(Jeffol)SG360〕を使用して作製された硬質ポリウレタンフォームと類似の特性を有する高品質の硬質ポリウレタンフォームをもたらす、ということがわかる。硬質フォームは、主として断熱用途に使用される。
【0127】
【表6】
【0128】
表7に記載のデータから、軟質ポリウレタンフォームを作製するのに使用される実施例18の低ヒドロキシル価ポリオールは、市販の軟質フォーム用ポリオール(ポリG85−29)を使用して作製される軟質ポリウレタンフォームと同等の性能の軟質ポリウレタンフォームをもたらす、ということがわかる。本発明のポリオールが、市販の軟質フォーム用ポリオールから得られる軟質フォームより低いレジリエンスをもたらす一方で、これら2つのポリオールはほぼ同等の特性を有しており、したがって本発明のポリオールは、粘弾性(記憶)フォーム用として潜在的用途を有することを示している、ということがわかる。
【0129】
【表7】
【0130】
表8に記載のデータは、実施例17の中ヒドロキシル価ポリオールが、望ましいコーティング特性の組み合わせを提供する高品質のポリウレタンコーティングをもたらす、ということを示している。
【0131】
【表8】
【0132】
本明細書に開示の本発明の形態は、現時点で好適な実施態様を構成しているが、他の多くの実施態様が可能である。本発明の可能で等価な形態もしくは効果の全てを本明細書に挙げることは意図していない。理解しておかねばならないことは、本明細書で使用されている用語は、単に説明のためのものであって限定しているのではないということ、そして本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を行ってよいということである。