(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記把持手段は、前記搬入手段が前記電極材を前記切断手段の切断位置まで搬入したときに前記切断手段と干渉しない位置で前記電極材を把持することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の電池用電極製造装置。
前記搬入する段階においては、前記搬入手段が前記電極材を前記切断手段の切断位置まで搬入したときに、前記把持手段と前記切断手段とが干渉しない位置で前記把持手段により前記電極材を把持することを特徴とする請求項9〜11のいずれか一つに記載の電池用電極製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面における各部材の大きさや比率は説明の都合上誇張されており、実際の大きさや比率とは異なる。
【0011】
図1は電極製造装置の構成を説明するための概略平面図であり、
図2は電極製造装置の構成を説明するための概略側面図である。
【0012】
まず、電極製造装置の概略を説明する。
【0013】
電極製造装置1は、ハンド2、前端切断用金型(前端金型3という)、後端切断用金型(後端金型4という)、第1吸着コンベア5、第2吸着コンベア6を有する。
【0014】
ハンド2は搬入手段となるもので、帯状電極材100を挟む把持手段(後述)を備え、把持手段により帯状電極材100を挟んで前端金型3内まで空中搬送する。前端金型3は切断手段であり、帯状電極材100の前端を切断する。後端金型4は後端切断手段であり、帯状電極材100の後端を切断する。第1吸着コンベア5は支持手段であり、帯状電極材100を搬送する方向の前端金型3より手前に設置されている。そしてこの第1吸着コンベア5はハンド2の動作軌跡外に配置されている。この第1吸着コンベア5の搬送面が切断時には支持面となって帯状電極材100の切断時に帯状電極材100を吸着して保持する。また、第1吸着コンベア5は後端切断後、切断された電極を前端金型3よりも前方に搬出するためにも用いられる。第2吸着コンベア6は後端切断後、第1吸着コンベア5から送り出された電極をさらに先へ搬出する。なお、
図1中の一点鎖線は切断形状を示す。また、後端とは切り出された電極の後端となる部分をいう。
【0015】
続いて電極製造装置1の各部を詳しく説明する。
【0016】
図3はハンド2の細部を説明する正面図であり、ハンド2および第1吸着コンベア5を前端金型3から後端金型4方向に見た図である。ただし、ハンド2および第1吸着コンベア5以外の部材については図示省略した。
【0017】
ハンド2は、箔状で帯状の電極材(以下帯状電極材100という)を切断位置まで搬入するときに、ハンド2を構成する各部と、第1吸着コンベア5とが干渉することのない位置で帯状電極材100を保持して空中搬送する(詳細後述)。また、ハンド2は前端金型3まで帯状電極材100を搬送してきたときに、ハンド2を構成する各部が前端金型3に到達しない(すなわち金型と干渉しない)位置で帯状電極材100と当接して把持している。
【0018】
このハンド2は、主アーム21および22と、主アーム21および22に接続されている把持部23乃至26と、主アーム21および22ごと全体を上下動させると共に把持部23乃至26による把持動作を行う把持機構部20とを有する。
【0019】
把持部23および25が主アーム21に、把持部24および26が主アーム22に、それぞれ取り付けられている。そして把持部23は24に対向し、把持部25は26に対向するように設けられている。これにより把持部23と24が帯状電極材100の一方側端をはさんで把持する(保持する)。同様に、把持部25と26が帯状電極材100の他方側端をはさんで把持する(保持する)。この把持位置は、搬送方向に対して後方側であり、帯状電極材100を切断位置までもってきたときに前端金型3と干渉しない位置としている。把持位置は、側端を把持して帯状電極材100を湾曲させることのできる位置であればよい(詳細後述)。
【0020】
そして把持部23および24が第1把持手段、把持部25および26が第2把持手段となり、これら第1把持手段(把持部23および24)と第2把持手段(把持部25および26)により一対の把持手段を構成する。
【0021】
把持部23乃至26は、帯状電極材100の搬送方向と平行になるように主アーム21および22に取り付けられている。把持部23乃至26の取り付け位置は、支持手段である第1吸着コンベア5が一対の把持手段(すなわち第1把持手段(把持部23および24)と第2把持手段(把持部25および26))の間に配置される位置となっている。これにより一対の把持手段(第1把持手段(把持部23および24)と第2把持手段(把持部25および26))は第1吸着コンベア5の両側を、第1吸着コンベア5と干渉することなく通過して搬送動作を行うことができるようになっている。
【0022】
なお、把持部23乃至26の一つひとつは、ロボットハンドにおける指部(フィンガー)と称されることもある。
【0023】
主アーム21は、把持機構部20ごと全体が搬送方向に対して前進後退する。このとき、第1吸着コンベア5が一対の把持手段(第1把持手段(把持部23および24)と第2把持手段(把持部25および26))の間に位置しているため、把持部23乃至26は第1吸着コンベア5の側方外側を通過する。このためハンド2はごくわずかな上昇動作で帯状電極材100を第1吸着コンベア5から浮かして搬送することができる。
【0024】
ここで、仮に第1吸着コンベアの直上をハンド各部が通過するように配置される場合を考える。このような仮の構成では、ハンドが帯状電極材を把持して金型まで搬入しようとすると、そのままハンドを水平移動させたのでは第1吸着コンベアに当たってしまう(干渉してしまう)。このためハンドにより帯状電極材を把持するときには第1吸着コンベアより後方で把持し、その後ハンドを第1吸着コンベアの上を通過させるために、第1吸着コンベアの上に行くまでハンドを大きく上昇させなければならない。また、当然元の把持位置に戻るときにはハンドを大きく下降しなければならない。したがって、この仮の構成ではハンドの上下動の距離が長くなり、それだけ多くの動作時間がかかることになる。この点、本実施形態の構成ではハンド2の上下動はごくわずかであり(または上下させなくてもよい)、その上下動にかかる時間を大幅に短縮することができるのである。
【0025】
把持機構部20は、主アーム21および22ごと全体を上下動させると共に、把持部23乃至26により帯状電極材100を把持(挟持)したり、離したりするための機構である。この把持機構部20は、通常のハンド動作を行うためのものであればよい。
【0026】
把持部23乃至26の帯状電極材100との当接面は、
図3に示したように、帯状電極材100を把持したときに、帯状電極材100を搬送方向と交差する方向に湾曲させるために斜めにカットされている。帯状電極材100を湾曲させることで帯状電極材100に対して搬送方向の剛性を高めて、把持していない前端部分が垂れたりしなくなる。
【0027】
図4は、帯状電極材を湾曲させた形状を説明するための斜視図である。図において矢印Aで示す方向が搬送方向である(
図5において同じ)。
【0028】
図4に示したように、ハンド2の把持部23乃至26が帯状電極材100をはさんだときに、帯状電極材中央部が下がった状態(下に凸)となるように湾曲させる。
【0029】
このように、帯状電極材中央部が下がった状態にすることで、帯状電極材100は、搬送方向の剛性が高くなり、把持されていない前端部分が垂れ下がることがなくなる。
【0030】
このような中央部が下がった状態は、帯状電極材100の両側部を把持して持ち上げるだけで、湾曲形状を作り出すことができる。この場合、ハンド2により帯状電極材100の両側部を把持した時に、帯状電極材100の中央部が、その下にある第1吸着コンベア5の搬送面に当たらないように、ハンド2をわずかに上昇させる。ハンド2の上昇量は、帯状電極材100の中央部が第1吸着コンベア5に当たらない程度であって、かつ、できるだけ第1吸着コンベア5に近い位置とすることが好ましい。すなわちハンド2の上昇量の上限は、帯状電極材100を前端金型3の上型と下型の間に搬入する再に上型に当たらない位置である。しかしハンド2の上昇量が多いと、その分ハンド2の上下動作にかかる時間が長くなってタクトタイムが長くなってしまうので、できるだけ上昇量は少ない方がよい。また、帯状電極材100の前端を前端金型3の上型と下型の間に挿入する必要から、ハンド2の上昇量が多いと前端金型3の上型と下型の開きを大きく取らなければならなくなる。このため金型の動作量が多くなりタクトタイムが長くなって好ましくない。したがってこのような金型の構成からも、ハンド2の上昇量はできるだけ少ない方が好ましいのである。
【0031】
これらの点から、ハンド2を構成する把持部23および24(第1把持手段)と把持部25および26(第2把持手段)の間に、第1吸着コンベア5の搬送面が常に存在する位置となるようにハンド2を上下動させることで、より少ない上昇量とすることができる。
【0032】
より具体的には、たとえば、帯状電極材100の中央部が下がった状態にする場合は、後述する湾曲量(下がっている中央部から搬送方向に対して直交する両端までの高さ(
図3におけるh1))と、下がっている中央部と搬送面(支持面)5aとの隙間(
図3におけるh2)がほぼ同程度とすれば、ハンド2の動作量も少なくてすむ。具体的には、たとえば帯状電極材100の湾曲量(
図3におけるh1)を、0.5〜2mm程度にした場合、ハンド2の上昇量(
図3におけるh2)もこれに見合う0.5〜2mm程度にすることで、ハンド2の上下の動作量がごくわずかですみ、かつ帯状電極材100が第1吸着コンベア5の搬送面5aに擦れることもない。
【0033】
もちろんこの例によらず、下がっている中央部と搬送面5aとの隙間h2は帯状電極材100が第1吸着コンベア5の搬送面5aに擦れない高さとすればよい。
【0034】
帯状電極材100の湾曲量は、前端が垂れない程度の剛性となればよいので、わずかに湾曲させるだけでよい。具体的には帯状電極材100の大きさや厚さにもよるが、下がっている中央部から搬送方向に対して直交する両端までの高さ(
図3におけるh1)が0.5〜2mm程度とするだけで十分な剛性が出る。もちろんこの例に限定されず、湾曲量(両端に対する中央部の下がり量)は特に限定されず、帯状電極材100の大きさや厚さに応じて、大きさや厚さが大きく厚い場合は湾曲量も大きくとり、厚さが薄い場合は湾曲量を少なくするなど、後端側を把持したときに前端が垂れ下がらないように剛性が出る量とすればよい。
【0035】
図5は、帯状電極材を湾曲させた他の形状を説明するための斜視図である。
【0036】
図5に示したように、ハンド2の把持部23乃至26が帯状電極材100をはさんだときに、帯状電極材中央部が上がった状態となるように湾曲させてもよい。この場合、把持部23乃至26の帯状電極材100との当接面の傾きを
図3に示したものと逆にすればよい。このように帯状電極材100の中央部を上がった状態にすれば、搬入の際にハンド2の上下位置を変更せずに搬送することができる。すなわちハンドの上下動が不要になる。このとき把持部23乃至26が帯状電極材100を把持する位置は、第1吸着コンベア5の搬送面と同一平面上であってもよい。つまり、両側端部近傍を把持して中央部を上に凸となるように湾曲させるため、この上に凸の湾曲だけで、帯状電極材100は湾曲しつつ全体が第1吸着コンベア5よりも浮いた状態となる。このため帯状電極材100は第1吸着コンベア5と接触することがなくなり、ハンド2の上昇移動が不要となるのである。
【0037】
このような場合、ハンド2は実質的に上下動させる必要はないため、把持部23および24(第1把持手段)と把持部25および26(第2把持手段)の間に第1吸着コンベア5の搬送面が常に存在する位置となっている。
【0038】
また、この場合の湾曲量(両端に対する中央部の上がり量)についても、特に限定されず、前述した下に凸とした場合と同程度でよく、帯状電極材100の大きさや厚さに応じて、後端側を把持したときに前端が垂れ下がらないように剛性が出る量で、かつ第1吸着コンベア5と接触(干渉)しない量とすればよい。
【0039】
ここでさらに、帯状電極材100を湾曲させる際に曲りを加える方向について説明する。
図4および
図5では、湾曲させて端部より凸になる方向が下(
図4)か上(
図5)の違いを示したが、いずれも曲りを加える方向は搬送方向に対して直交する方向としている。これは、ハンド2の把持部23乃至26によって帯状電極材100の側部を把持することから、このような形状になるものである。
【0040】
前端を垂れ下がらないようにするためには、搬送方向の剛性を高められればよい。このため、曲りを与える方向は、搬送方向に交差する方向であれば、どの方向でもよいのである。
【0041】
次に前端金型3は、後端金型4と共に帯状電極材100から電極の形状を切り出すための金型である。
【0042】
図6は前端金型3を説明するための図であり、
図6(a)は前端金型3のみを搬出方向から見た正面図であり、
図6(b)は、(a)図中bで示す線に沿う断面図である。
【0043】
この前端金型3は、金型支持台301、金型枠302、下型ベース303、上型ベース304、下型305、上型306、枠用シリンダ307、上型用シリンダ308、枠用ガイド309、上型用ガイド310を有する。
【0044】
金型支持台301は枠用シリンダ307が取り付けられている。金型支持台301の上部には枠用ガイド309が設けられている。枠用シリンダ307と枠用ガイド309により金型枠302を支えている。金型枠302は全体が枠用シリンダ307により枠用ガイド309に沿って上下動する。枠用ガイド309は4本設けられている。
【0045】
金型枠302の内側下部には下型ベース303が固定されていて、この下型ベース303に下型305が固定されている。一方金型枠302の内側上部には上型ベース304が固定されていて、この上型ベース304に上型306が固定されている。金型枠302の内側には金型枠302の下部から上部に至り固定されている上型用ガイド310が設けられている。上型ベース304は、この上型用ガイド310に対して上下動自在となっていて上型用シリンダ308により上型用ガイド310に沿って上下動する。このような金型枠302内の構造によって上型306と下型305が噛み合う規定の位置が保持されている。上型用ガイド310は4本設けられている。
【0046】
そして、上型ベース304が金型枠302内において下降することで、上型ベース304に固定されている上型306が下型305と噛み合って帯状電極材100を切断する。
【0047】
図7は前端金型の動作を説明するための説明図であり、
図6(b)と同様の断面を示している。
【0048】
前端金型3は、切断物を挿入するための開口状態おいて、下型305が第1吸着コンベア5の搬送面(支持面)よりも下に位置させている(
図2参照)。前端金型3の開口状態を示したものが
図7(a)である。この開口状態において帯状電極材100が切断位置(下型305と上型306が噛み合う位置)まで挿入される。
【0049】
続いて、
図7(b)に示すように、下型305が帯状電極材100と当接する位置(支持面の位置)まで金型枠302ごと上昇させる。金型枠302の上昇動作は枠用シリンダ307により行われる。
【0050】
続いて、
図7(c)に示すように、上型306を上型用シリンダ308によって下降させて帯状電極材100を切断する。
【0051】
続いて、
図7(d)に示すように、上型306を上型用シリンダ308によって上昇させて元の位置に戻す。
【0052】
続いて、
図7(e)に示すように、金型枠302を下降させて元の位置となるようにする。
【0053】
このように前端金型3は、開口状態において下型305が第1吸着コンベア5の搬送面(支持面)よりも下に位置させたことで、帯状電極材100が搬送されて来るときに、帯状電極材100が下型305と擦れることを防止している。また、これにより前端を切断位置に挿入しやすくしている。さらに下型305を搬送面より下に配置したことで、仮に帯状電極材100の前端が垂れ下がるようなことがあっても、第1吸着コンベア5と下型305との間に巻き込まれるようなことがなくなる。また、帯状電極材100の前端が切断位置まで着たら、下型305を上げることで垂れ下がった前端を持ち上げることができ、正規の位置で前端を切断することができる。また、下型305が開口状態において搬送面よりも下にあることで、
図7(e)に示したように、切断後もこの位置となるため、切断後の電極を搬出する際に、電極面を擦らずにすむ。
【0054】
さらに、下型305が第1吸着コンベア5の搬送面より下にあることで、切断後の電極を第1吸着コンベア5から第2吸着コンベア6へ移動させるときにも、電極の活物質面を下型によって擦らないようにできる。
【0055】
下型305を上昇させる際には、金型枠302ごと上昇させるようにしている。このようにすることで、金型枠構造によって下型305と上型306とが規定の噛み合わせ位置となるように保持された状態のまま、下型305を上昇させることができるのである。
【0056】
なお、上記説明では、下型305が上昇した後、上型306が下降して切断することとしたが、上型306の下降開始のタイミングは、特に限定されない。たとえば、下型305が搬送面(支持面)まで上昇するストローク(下型のストローク)と、上型306が搬送面(支持面)で支持されている帯状電極材100に到達するまでのストローク(上型の搬送面までのストローク)によって適宜変更するとよい。具体的にはたとえば、下型のストロークが上型の搬送面までのストロークより長ければ、上型306を後から下降開始させて下型305が搬送面(支持面)に到達する時点で上型306も搬送面(支持面)までくるようにする。逆に下型のストロークが上型の搬送面までのストロークより短ければ、上型306を先に下降開始させて、下型305が搬送面(支持面)に到達する時点で上型306も搬送面(支持面)までくるようにする。このように上型306と下型305の動作タイミングを調整することで、いっそう切断にかかるタクトタイムを短くすることができる。そのほかの上型306と下型305のストロークだけでなく動作速度の違いなどを考慮して上型306と下型305の動作タイミングを合わせるとよい。
【0057】
なお、前端金型3によって電極の形状に切断されたときのスクラップ部分は、第1吸着コンベア5にも、第2吸着コンベア6にも当接していないため、そのまま下方に落下することになる。このため、図示しないが前端金型3の金型支持台301の搬送方向前方下に、落下したスクラップを排出するためのスロープなどを設けておくとよい。
【0058】
後端金型4は、上述した前端金型3と同じ構造でよい。ただし、金型の切断形状が異なる。その動作は、まずハンド2の把持部23乃至26が後退して、後端金型4の下型41と上型42の間から退避した後、後端金型4の金型枠ごと下型41を上昇させて、帯状電極材100に当接させる。その後、上型42を下降させて後端を切断する。なお、後端金型4を前端金型3と同様の構成としたのは、ハンド2の把持部23乃至26が後端金型4の下型41と上型42の間を通過するためのクリアランスを確保するためである。これは既に説明したように、帯状電極材100を搬送する際に第1吸着コンベア5の搬送面のすぐ上を搬送することでハンド2の上昇下降動作を少しでも早くしている。このため下型41が第1吸着コンベア5の搬送面と同一面にあると把持部23乃至26が後端金型4の下型41と上型42の間を通過できないため、把持部23乃至26通過中は下型41が下がっているようにしたのである。
【0059】
なお、ハンド2の把持部23乃至26が下型41よりも上を通過させるほどに上昇させるのであれば、後端金型4の下型42は搬送面と同一面でよい。これは帯状電極材100を搬送する際には、ハンド2によって搬送面から上げて空中搬送しているので、このようにしても帯状電極材100が下型42に擦れることはないためである。
【0060】
第1吸着コンベア5は、前端金型3と後端金型4との間に配置されている(
図1および2参照)。第1吸着コンベア5は、ハンド2によって帯状電極材100が搬入される時点では、吸着動作も搬送動作(ベルトの移動)も停止させている。そして、ハンド2によって帯状電極材100が搬入され、切断位置に帯状電極材100の前端が到達した時点で(ほとんど同時かわずかに遅れて)、吸着動作を開始する。この時点では搬送動作はしない。つまりコンベアのベルトは動かさない。これによりハンド2によって搬入された帯状電極材100は、第1吸着コンベア5の吸着力により切断位置に位置決めされることになる。その後は、前端および後端が切断された後、搬送動作を開始して、第2吸着コンベア6の動作とあいまって切断後の電極を搬出する。
【0061】
また、第1吸着コンベア5の搬送面は帯状電極材100の切断時にこれを支持する支持面となる。このため搬送面は平面となっている。第1吸着コンベア5の搬送面を平面とすることで、吸着支持された帯状電極材100が平らになり、きれいに切断することができる。
【0062】
第2吸着コンベア6は、前端金型3からさらに搬送方向の先に配置されている(
図1および2参照)。第2吸着コンベア6の搬送面は、第1吸着コンベア5の搬送面よりも下に位置するように配置されている。切り出された電極が第1吸着コンベア5によって押し出される時点では、既に電極の搬送方向に対する剛性が失われている。このため第1吸着コンベア5によって押し出されるときに、電極の前端が垂れるおそれがある。第2吸着コンベア6の搬送面を第1吸着コンベア5の搬送面よりも下に位置することで、電極の前端が垂れ下がっても、確実に第2吸着コンベア6の搬送面に載せることができる。
【0063】
また下型305との関係では、下型305を、電極が第1吸着コンベア5から第2吸着コンベア6へ渡されるときの移動軌跡よりも下に配置する。好ましくは第2吸着コンベア6が下型305と同一水平面か少し上に配置する。
【0064】
第1吸着コンベア5は第2吸着コンベア6より少し上にあり、第1吸着コンベア5と第2吸着コンベア6の間に下型305が存在する。電極が搬出される際には第1吸着コンベア5から第2吸着コンベア6へ、わずかではあるが下方に押し出されることになる。このとき、電極が第2吸着コンベア6へ移動する軌跡よりも下型305が上にあると搬出される電極が下型305に当たってしまうおそれがある。このため第1吸着コンベア5から第2吸着コンベア6へ電極が搬出されるときの移動軌跡内に下型305が入らない位置とするのである。
【0065】
なお、第2吸着コンベア6の吸着動作および搬送動作(ベルトの移動)は常に行われるようにしておいてもよいし、前端が切断された時点で、吸着動作および搬送動作を開始するようにしてもよい。
【0066】
ここで、電極製造装置によって切り出される電極の形状について説明する。
図8は、電極の形状を説明するための図面であり、(a)は、切り出し前の帯状電極材を示す概略平面図であり、(b)は切り出された電極の形状を示す概略平面図である。
【0067】
図8(a)に示すように、帯状電極材100は、金属箔を基材150とし、その両面に活物質151が間欠的に塗布されている。塗布されている活物質151は、正極の場合は正極活物質であり、負極の場合は負極活物質である。これら活物質151は周知のものであるので説明は省略する。
【0068】
帯状電極材100の前端側100aの活物質151が塗布されていない金属が露出した領域152が、
図8(b)に示すように、規定の形状に切断されてそのまま電池の電極タブ153として用いられる。一方、後端100bは直線的に切断される。これにより電極101の形状となる。
【0069】
基材150となる金属箔は、たとえば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが用いられている。また、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが用いられることもある。さらに金属箔に代えて、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂が採用されうる。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅などの金属単体の箔が多く用いられている。用いられる金属材などは正極とするか負極とするかによって異なる。そして、この基材150の厚さは、たとえば1〜100μm程度である。このような基材150は電池として形成された後は、集電体となる。
【0070】
一方、切り出した電極は、電気自動車用の二次電池として用いられる場合には、電極として用紙サイズで示せばB5〜A4程度の大きさである。このため、帯状電極材100の大きさは、幅方向はB5〜A4サイズ程度となるが、長さは数十〜数百メートルに及び、ロール状に巻かれている。
【0071】
切り出した電極の形状は、本実施形態では、
図8(b)に示すように、切断部がそのまま電極タブとして使用できるようにするため、前端100aの切り出し形状が電極タブ153の形状となるようにしている。一方、後端100bは直線に切り出している。このような切り出し後の電極の形状は使用する電池に合わせて切り出されるものであり、図示したような形状に限定されるものではない。
【0072】
なお、電極としては、両面に同じ極を形成したものに限らず、一方の面に正極、他方の面に負極を形成した双極型電極(バイポーラ電極)を製造することもできる。
【0073】
このように切り出された電極は、たとえば積層型二次電池に使用される。積層型二次電池は、周知のとおり、正極、セパレータ、負極が順に積層された形態のものである。
【0074】
そして、帯状電極材100およびそこから切り出された電極101は、非常に薄いものである。その一方で、電気自動車用などの高密度高エネルギーが要求される二次電池では面積が大きい。このため水平に搬送しようとすると、帯状電極材単独ではその形状の維持が難しくなっていて、搬送機材(例えばコンベア)などから外れて支持を失った部分が垂れ下がるようなことが起きやすくなっているのである。
【0075】
次に、電極製造装置の全体の動作を説明する。
【0076】
まず、ハンド2によって把持された帯状電極材100の前端が前端金型3の切断位置まで搬送される。このとき、既に説明したように、ハンド2の各部は、第1吸着コンベア5の側方を通っているので、ハンド2の上下動にかかる時間はほとんどない。また、帯状電極材100は搬送方向に剛性を高めた状態で空中搬送される。したがって、帯状電極材100が他の部材に当たって擦れたりすることなく、前端を切断位置まで搬送することができる。この状態が既出の
図1および
図2の状態である。
【0077】
帯状電極材100の前端が前端金型3の切断位置に到達した時点で、第1吸着コンベア5の吸着動作が開始される(このとき第1吸着コンベア5は搬送動作しない)。これにより切断のための位置決めが完了する。この吸着動作開始と共にハンド2は開放されて後退動作に移る。さらに、これらの動作とほぼ同時に(帯状電極材100の前端が前端金型3の切断位置に到達した時点であれば吸着動作開始前でもよい)、下型305を帯状電極材100の前端に当接させるために金型枠302ごと上昇させる。このとき、ハンド2の把持部23乃至26は前端金型3の手前までしか来ていないので、ハンド2の把持部23乃至26が前端金型3と干渉することはない。したがって、金型枠302の上昇動作は、帯状電極材100の前端が前端金型3の切断位置に到達した時点で開始することができる。このためハンド2の後退動作前から金型動作を行うことができるようになり、その分タクトタイムを早くすることができる。
【0078】
その後、既に説明したように、前端金型3により前端が所定の形状となるように切断される。前端の切断動作中にハンド2は後退して、帯状電極材100を把持する前の位置に戻る。また、切断動作が終了した前端金型3も元の位置に戻る。
【0079】
図9はハンドが後退した位置を示す平面図であり、
図10は同じく側面図である。
【0080】
ハンド2の後退後、後端金型4によって帯状電極材100の後端が切断される。後端金型4による切断が終了した時点で、第1吸着コンベア5が搬送動作を開始して、規定の形状になった電極を第2吸着コンベア6方向に押し出す。第2吸着コンベア6はこれを受け取って、さらに後の工程へ流すことになる。したがって、切断後の電極も他の部材に擦れるようなことはない。
【0081】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0082】
電極製造装置1は、ハンド2を構成する一対の把持手段の間に第1吸着コンベア5が位置するように配置した。これにより、ハンド2の各部と第1吸着コンベア5が干渉することなく、ハンド2各部を第1吸着コンベア5の側方外側を通過することができる。このためハンド2はごくわずかな上下動作で(または上下動させずに)帯状電極材100を、第1吸着コンベア5上を移動搬送することができる。したがって、ハンド2の上下動に伴う工程時間をごくわずかにでき、またはほとんどなくすことができるので、ハンド2と第1吸着コンベア5とが同じ側にあってもタクトタイムを向上することができる。
【0083】
そして、ハンド2によって前端金型3による切断位置まで帯状電極材100を空中搬送することで搬入することとした。このため帯状電極材100が他の部材、特に金型に擦れることがない。したがって、帯状電極材100が他の部材に擦れて電極に塗工されている活物質が失われ、活物質の厚さが減少することによる電気容量の低下やそれに伴う寿命低下などを未然に防ぐことができる。
【0084】
また、ハンド2は、帯状電極材100を前端金型3の切断位置まで搬入したときに(すなわち帯状電極材100の切断する部分が前端金型3の切断位置まで到達したときに)、ハンド2の各部(特に把持部23〜26)と前端金型3とが干渉することのない位置で、帯状電極材100を把持することとした。このため帯状電極材100の前端が前端金型3の切断位置に来た時点から即座に前端金型3を動作させることができる。したがって、ハンド2の後退動作を待つことなく金型を動作させられるので、その分タクトタイムを早くすることができる。
【0085】
また、ハンド2により把持する際には、帯状電極材100を搬送方向に対して交差する方向に湾曲させて把持することとした。このためハンド2が前端金型3と干渉しないように、帯状電極材100の後方だけを把持しても、帯状電極材100の前端が垂れてしまうことがない。また、これにより、ハンド2と前端金型3が干渉することが無いので、ハンド2の後退動作前から金型を動作させることができる。
【0086】
また、帯状電極材100は、対向する把持部23および24と、把持部25および26を備えるハンド2により挟持して把持することとした。このため箔状の帯状電極材100における搬送方向に直交する端部近傍を容易に把持することができる。
【0087】
また、前端金型3は、その下型305を搬送位置より下に位置させておいて、帯状電極材100が金型内に挿入された時点で上に上げることとしたので、帯状電極材100の前端を前端金型3の切断位置に挿入しやすく、また前端金型3によって帯状電極材100を擦ることがない。さらに下型305を下に位置させておいて、帯状電極材挿入後、これを上げることで、万が一、帯状電極材100の前端が垂れても、垂れた部分を持ち上げて、帯状電極材100を規定の位置にして切断することができる。
【0088】
また、ハンド2により帯状電極材100が搬入された時点で第1吸着コンベア5の搬送動作を行わずに、吸着動作のみを行うようにした。これにより、帯状電極材100は、所定の切断位置において吸着されて固定されることになり、切断時(金型動作時)に動いてしまうようなことがなくなり、確実に規定の形状に切断することができる。
【0089】
また、後端金型4を有することとしたので、前端と後端で異なる形状に電極材を切断することができる。
【0090】
また、第2吸着コンベア6の搬送面を第1吸着コンベア5の搬送面より下に位置するようにした。これにより切断後の電極を搬出する際に、電極を第1吸着コンベア5から第2吸着コンベア6へ確実に渡すことができる。
【0091】
以上により製造された電池用の電極は、特にモータ駆動用電源として車両に搭載する二次電池に使用される正極または負極として好適なものとなる。ここで車両とはたとえば車輪をモータによって駆動する自動車、および他の車両(たとえば電車)が挙げられる。上記の自動車としては、たとえば、ガソリンを用いない完全電気自動車、シリーズハイブリッド自動車やパラレルハイブリッド自動車などのハイブリッド自動車などがある。特に、これら車両に用いられるモータ駆動用の二次電池は、高い出力特性、および高いエネルギーを有することが求められていることから、電極自体の面積も大きくなってきている。たとえば、既に説明したようにB5ないしA4サイズ程度の大きさとなっている。このため、面積に対して厚さが非常に薄いため、名刺判サイズかそれより小さな携帯電話やパソコンなどの電池用電極と比較して取り扱いが難しくなってきている。このため、本実施形態は既に説明したように大型の電池用電極の製造の特に適したものとなっている。
【0092】
以上本発明を適用した実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0093】
上述した本実施形態では、電極の前端と後端とが異なる形状としているが、これは同じ形状であってもよい。そして同じ形状に切断する場合は、前端金型3のみで、後端金型4はなくてもよい。前端金型3のみで電極形状に切断する場合は、前端金型3の切断位置よりさらに電極一つ分搬出方向に突出するまで帯状電極材100を搬入してから切断することになる。つまり電極形状の後端側を前端金型3の位置に配置した金型により切断するのである。このようにする場合も、既に説明した実施形態同様に、前端金型3の位置に配置した金型と干渉しない後ろの方を、搬送方向に剛性を持たせるようにしてハンド2(または吸着パッド200)により把持する。これにより帯状電極材100が他の部材と擦ることなく切断位置に搬入でき、なおかつ切断位置に来た時点から金型の動作を開始することができる。
【0094】
また、このように、前端金型3のみとした場合、電極は前端金型3よりも前方で切り出されるため、前端金型3の手前に配置された第1吸着コンベアで電極材100を搬送する必要がなくなる。したがって、この場合、第1吸着コンベアは不要である。しかしこの場合も、その手前に支持手段となる吸着手段を設けておいて、ハンド2(または吸着パッド200)により搬入されてきた電極材100を吸着支持するようにすることが好ましい。前端金型3手前で電極材100を吸着支持することで確実にきれいに切断することができる。吸着手段としては、たとえば、吸着パッドが用いられ、その吸着面が支持面となるように配置する。この場合も吸着パッドの吸着面は平面としておく。そして、ハンド2(または吸着パッド200)により搬入されてきた電極材100が切断位置に来た時点で、電極材100がハンド2(または吸着パッド200)から離されると同時に吸着動作を開始する。その後の動作は前端金型3の動作を同じである。
【0095】
また、切断手段および後端切断手段は、金型に限らず、たとえばレーザでもよい。レーザ切断とする場合は、特に前端金型3の位置には、下型に相当する位置に当て部材を配置して、当て部材が上下するようにし、上からレーザ光を照射して切断する。この当て部材を用いることで、帯状電極材100の前端部が万が一垂れても、それを上に押し上げて規定の位置に位置決めさせることができる。そしてその状態でレーザ切断するので、切断時の寸法誤差の発生を防止することができる。
【0096】
前端金型3は、金型枠に下型305と上型306とを設けることで、金型としての動作は上型306だけが動くようにしているが、切断時における上型と下型の噛み合わせ確実に規定の位置で噛み合わせることができれば、これらは独立に設けてもよい。すなわち、帯状電極材100の前端が切断位置に来たときに下型305のみ独立で上昇させ、その後切断のために上型306を下降させるようにしてもよい。これは、後端金型4も同様である。
【0097】
また、ハンド2は、前進後退動作は搬送方向にのみ動くこととしているが、これに代えて、後退動作においては、帯状電極材100を離した後、いったん側方に退避してから、元の位置に戻るようにするなど、その動作方向などは適宜設定可能である。
【0098】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者においてさまざまな変形が可能であることはいうまでもない。