(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0016】
ここに開示される粘着フィルムは、基材としての樹脂フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を有する。上記基材の一方の面のみに粘着剤層を有する片面粘着フィルム(片面接着性の粘着フィルム)の形態であってもよく、上記基材の一方の面および他方の面にそれぞれ粘着剤層を有する両面粘着フィルム(両面接着性の粘着フィルム)の形態であってもよい。以下、片面粘着フィルムに適用する場合を主な例として本発明をより具体的に説明するが、ここに開示される技術の適用対象を限定する意図ではない。
【0017】
本発明により提供される粘着フィルムの典型的な構成例を
図1に模式的に示す。この粘着フィルム1は、基材としての樹脂フィルム10と、その一方の面(片面)10Aに設けられた粘着剤層20とを備え、該粘着剤層20を被着体に貼り付けて使用される。好ましい一態様では、樹脂フィルム10の背面(粘着剤層20が設けられる面とは反対側の面)10Bが剥離性を有する表面(剥離面)となっている。使用前(すなわち、被着体に貼り付ける前)の粘着フィルム1は、粘着剤層20の表面(粘着面)20Aが樹脂フィルム10の背面10Bに当接するようにロール状に巻回され、これにより表面20Aが保護された形態であり得る。あるいは、
図2に示す粘着フィルム1のように、粘着剤層20の表面20Aが、少なくとも粘着剤層20側が剥離面となっている剥離ライナー30により保護された形態であってもよい。
【0018】
樹脂フィルムは、少なくとも2層構造を有するものであり得る。したがって、樹脂フィルムは、少なくとも第一層と第二層とを含み得る。
図1、2に示す例では、樹脂フィルム10は、第一層11、第二層12および中間層13からなる3層構造を有する。この樹脂フィルム10の第一層11は、第二層12との関係で粘着剤層20側に配置されており、樹脂フィルム10において粘着剤層20側の表面(以下、「前面」ともいう。)10Aを構成している。また、第二層12は、第一層11との関係で背面10B側に配置されており、樹脂フィルム10において背面10Bを構成している。この背面10Bは、粘着フィルム1を被着体に貼り合わせたときに粘着フィルム1の外表面となり得る。また、中間層13は、第一層11と第二層12との間に設けられている。なお、樹脂フィルム10は3層構造に限定されない。各層に異なる特性を付与することや製造面から、層数は2〜5が好ましい。したがって、第一層と中間層との間や第二層と中間層との間に追加の層が形成されていてもよく、第一層より前面側や第二層より背面側に追加の層が形成されていてもよい。そのような追加の層は、剥離処理や密着性向上を目的とした層であってもよく、印刷物からなる層であってもよい。なかでも、樹脂フィルムは3層構造または4層構造が好ましく、3層構造が特に好ましい。
【0019】
樹脂フィルムの前面と背面とは、特に限定されないが、明度が異なるように構成することが好ましい。これによって、特定レーザ光による切断性を確保しながら、背面に意匠性、表面印刷性、耐候性、識別性等の特性を付与することができる。ここで、本明細書における「明度」または「明度L
*」とは、L
*a
*b
*表色系で規定される明度L
*のことを指し、国際照明委員会が1976年に推奨した規定またはJIS Z 8729の規定に準拠するものとする。具体的には、明度L
*は、色差計(商品名「CR−400」ミノルタ社製;色彩色差計)を用い、後述する実施例に記載の方法にて測定することにより求められる。樹脂フィルムの前面と背面の明度L
*の差異は、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上(例えば30以上、典型的には40以上)であることが特に好ましい。上記差異は、65以下(例えば55以下、典型的には45以下)であり得る。
【0020】
樹脂フィルムの背面は、特に限定されないが、L
*a
*b
*表色系で規定される明度L
*が40以上(例えば45以上、典型的には55以上)であることが適当であり、60以上(例えば65以上、典型的には70以上)であることが好ましい。これによって、粘着フィルムの外表面の白色度が高まり、意匠性、表面印刷性、耐候性、識別性等の特性が付与される。上記明度L
*は、90以下(例えば85以下)であり得る。また、上記明度L
*と同様の観点から、L
*a
*b
*表色系で規定される色度a
*は、特に限定されないが、±15(例えば±10、典型的には−8〜2)の範囲とすることが好ましい。色度b
*は、特に限定されないが、±15(例えば±10、典型的には±5)の範囲とすることが好ましい。
【0021】
樹脂フィルムの前面は、特に限定されないが、L
*a
*b
*表色系で規定される明度L
*が50以下(例えば40以下、典型的には30以下)であり得る。上記明度L
*は、好ましくは25以下である。このように前面の明度L
*を低く設定することによって、隣接し得る粘着剤層や、樹脂フィルムを含む粘着フィルム全体を特定レーザ光によって好適に切断することができる構成としやすい。また、後述するレーザ光吸収剤として有色系の吸収剤を選択した場合に、吸収剤の色(色彩等)の影響が目立たないという利点を有する。なお、L
*a
*b
*表色系で規定される色度a
*は、特に限定されないが、±15(例えば±10、典型的には±5)の範囲であり得る。色度b
*も、特に限定されず、±15(例えば±10、典型的には±5)の範囲であり得る。
【0022】
また、樹脂フィルムを2層以上からなる多層構造とする場合、各層の明度が異なるように構成することが好ましい。例えば、
図1に示すような3層構造からなる樹脂フィルム10の場合、少なくとも第一層11と第二層12の明度を異ならせることが好ましい。これによって、一方の層で特定レーザ光による切断性を確保しながら、他方の層に、明度が異なることによって実現可能な異なる特性を付与することができる。そのような特性としては、意匠性、表面印刷性、耐候性、識別性等が挙げられ得る。ここでいう表面印刷性とは、粘着フィルムの外表面側に位置する樹脂フィルムの背面の明度を高く設定することにより、白色度が高まり、該外表面上に印刷される印刷物に対する該外表面の色彩等の影響が少なくなり、上記外表面への印刷の自由度が高まることを包含する。また耐候性とは、紫外線等を含む太陽光による劣化を防止または低減する性質を包含する。樹脂フィルムが明度の高い層と低い層とを含むことで、太陽光の進入を好適に阻止し得る構成となり、良好な耐候性が実現され得る。また識別性とは、被着体に貼り付けた後の粘着フィルムの外表面を被着体の表面色と異ならせることで、被着体に粘着フィルムが貼り付けられているか否かの識別がしやすくなる性質を包含する。識別性に優れる粘着フィルムは作業性に優れる。第一層と第二層の明度L
*の差異は、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上(例えば30以上、典型的には40以上)であることが特に好ましい。上記差異は、65以下(例えば55以下、典型的には45以下)であり得る。樹脂フィルムの前面および背面の明度L
*、ならびに樹脂フィルムの外表面を構成する各層の明度L
*については、各層に分離することなく(多層構造を有する樹脂フィルムの状態で)測定することができる。また、樹脂フィルムが3層以上の多層構造を有する場合、中間に位置する層(例えば中間層)の明度L
*は、例えば、外表面を構成する層(例えば第一層や第二層)を切削や研磨するなどして除去し、中間に位置する層を露出させた状態で測定することができる。測定は、色差計(商品名「CR−400」ミノルタ社製;色彩色差計)を用いて行うことができる。
【0023】
樹脂フィルムが少なくとも2層構造を有するものであり、樹脂フィルムの前面側(粘着剤層側)に位置する層を第一層とした場合、第一層の明度L
*は、特に限定されないが、50以下(例えば40以下、典型的には30以下)であり得る。上記明度L
*は、好ましくは25以下である。レーザ光吸収剤として黒色系のレーザ光吸収剤(例えばカーボンブラック)を用いる場合、第一層は上記のような明度L
*となり得る。かかる第一層は、樹脂フィルムの前面を構成するように配置することが好ましい。これによって、第一層に隣接し得る粘着剤層や、第一層上に設けられ得る層(典型的には第二層)を含み得る粘着フィルム全体を特定レーザ光によって好適に切断することができる。第一層は、後述する黒色層または灰色層(好ましくは黒色層)とするのが好ましい。なお、第一層のL
*a
*b
*表色系で規定される色度a
*は、特に限定されないが、±15(例えば±10、典型的には±5)の範囲であり得る。色度b
*も、特に限定されず、±15(例えば±10、典型的には±5)の範囲であり得る。
【0024】
樹脂フィルムが少なくとも2層構造を有するものであり、樹脂フィルムの背面側に位置する層を第二層とした場合、第二層の明度L
*は、特に限定されないが、40以上(例えば45以上、典型的には55以上)であることが適当であり、60以上(例えば65以上、典型的には70以上)であることが好ましい。かかる第二層は、背面を構成するように配置することが好ましい。その場合、上記背面は、粘着フィルムを被着体に貼り付けたときに粘着フィルムの外表面となる。そのため、第二層の明度を高めることで、粘着フィルムの外表面の白色度が高まり、意匠性、表面印刷性、耐候性、識別性等の特性が付与される。第二層の明度L
*は、90以下(例えば85以下)であり得る。第二層は、後述する白色層または灰色層(好ましくは白色層)とするのが好ましい。また、上記明度L
*と同様の観点から、第二層のL
*a
*b
*表色系で規定される色度a
*は、特に限定されないが、±15(例えば−10〜5、典型的には−8〜2)の範囲とすることが好ましい。色度b
*は、特に限定されないが、±15(例えば±10、典型的には±5)の範囲とすることが好ましい。
【0025】
さらに樹脂フィルムが3層以上の多層構造を有する場合、典型的には
図1に示すような3層構造を有する場合、
図1に示す第一層11、中間層13および第二層12は、特に限定されないが、それぞれ白色層や灰色層、黒色層とすることができる。ここで、白色層とは、明度L
*が65以上(例えば65以上90以下、典型的には70以上85以下)である層をいうものとする。灰色層とは、明度L
*が25より大きく65未満である層をいうものとする。黒色層とは、明度L
*が25以下(例えば0以上25以下、10以上25未満)である層をいうものとする。白色層、灰色層および黒色層の色度は特に限定されないが、色度a
*は±15(例えば−10〜5、典型的には−8〜2)の範囲であり、色度b
*は±15(例えば±10、典型的には±5)の範囲であり得る。
【0026】
第二層/中間層/第一層の典型例としては、白色層/黒色層/黒色層、白色層/灰色層/黒色層、白色層/白色層/黒色層、灰色層/灰色層/灰色層、白色層/灰色層/灰色層、灰色層/灰色層/黒色層が挙げられ得る。なかでも、白色層/黒色層/黒色層、白色層/灰色層/黒色層が好ましい。特に白色層/灰色層/黒色層が好ましい。白色層と黒色層とを設けることで、粘着フィルムの耐候性を向上させることができる。したがって、粘着剤層を構成する粘着剤が天然ゴム等の耐候性の低いものである場合にも、粘着剤の劣化を好適に防止し得る。また、中間層を白色層または灰色層とすることで、第一層を黒色層とする場合であっても、背面の明度を向上させることができる。中間層を灰色層または黒色層とした場合、より良好なレーザ光切断性を得ることができる傾向がある。粘着フィルムの外表面を構成し得る第二層は、白色層とすることが好ましい。これによって、粘着フィルムの外表面の明度が高まり、意匠性、表面印刷性、耐候性、識別性等の特性が付与される。また、樹脂フィルムの前面を構成し得る第一層は、黒色層とすることが好ましい。これによって、隣接し得る粘着剤層や、樹脂フィルムを含む粘着フィルム全体を特定レーザ光によって好適に切断することができる構成としやすい。また、後述するレーザ光吸収剤として有色系の吸収剤を選択した場合に、その色(色彩等)の影響が目立たないという利点を有する。
【0027】
また、樹脂フィルムを構成する層(例えば第一層、第二層および中間層の少なくとも一層)は不透明であることが好ましく、樹脂フィルムを構成する全ての層は不透明であることがより好ましい。ここで「不透明」とは、無色透明を含まないものとして把握され得る。また有色透明も含まない概念として捉えることもできる。これにより、レーザ光吸収率が好適な範囲に設定される傾向がある。なお、樹脂フィルムを構成する層が透明である場合、粘着フィルムの切断性能が低下し、高い切断品質を得ることができない虞がある。そのような理由から、樹脂フィルムの全光線透過率は、50%以下(例えば20%以下、典型的には10%以下)であることが好ましい。また、樹脂フィルムのヘイズは80%以上(例えば90%以上、典型的には95%以上)であることが好ましい。なお、樹脂フィルムの全光線透過率およびヘイズの測定方法は、JIS K 7361に準拠するものとする。全光線透過率およびヘイズの測定装置としては、村上色彩技術研究所製の「HM−150」を用いることができる。
【0028】
ここに開示される技術における基材としての樹脂フィルムは、波長1000nm〜1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上である。このレーザ光吸収率は、樹脂フィルムに照射された特定レーザ光のうち、実際に樹脂フィルムに吸収されるレーザ光の割合を意味する。樹脂フィルムのレーザ光吸収率が20%に満たないと、特定レーザ光の照射による加熱効率が低く、樹脂フィルムおよび該樹脂フィルムを備えた粘着フィルムを適切に分解消失および溶融させることができない。このため粘着フィルムを切断することができず、あるいは一応の切断はできたとしても高い切断品質を安定して実現することは困難である。
【0029】
なお、本明細書において「レーザ光吸収率」とは、分光光度計(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U−4100」またはその相当品)を用いて測定されるサンプルの透過率T(%)および反射率R(%)から、以下の式(I)により算出される値をいうものとする。
吸収率A(%)=100(%)−T(%)−R(%) (I)
また、「波長1000nm〜1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率」とは、当該波長範囲における最小のレーザ光吸収率(以下、「Amin(1000,1100)」と表すこともある。)を指すものとする。
【0030】
上記レーザ光による粘着フィルムの切断について、
図3、4に示す模式図を用いて説明する。
図4に示すように、Amin(1000,1100)が20%よりも小さい樹脂フィルム110を用いてなる粘着フィルム100は、該粘着フィルム100の粘着面20Aを被着体に貼り付けてその背面から特定レーザ光LBを照射しても、レーザ光LBの照射範囲に対応する箇所の粘着フィルム100を十分に加熱して分解消失させることができない。このため、粘着フィルム100を特定レーザ光LBにより切断することができないか、一応の切断はできても主に被着体からの伝熱により粘着フィルム100が溶融変形することによる切断なので、例えば
図4に示すように、切断端面100Eおよび照射境界部(レーザ光が照射された部分と照射されない部分との境界付近)100Fの形状や切断幅等の精度を高めることができない。
【0031】
これに対して、
図3に示すように、Amin(1000,1100)が20%以上である樹脂フィルム10を備えた粘着フィルム1を被着体に貼り付けてその背面から特定レーザ光LBを照射する場合には、該樹脂フィルム10が特定レーザ光LBを効率よく吸収して発熱するので、粘着フィルム1を効果的に分解消失させて切断することができる。したがって、特定レーザ光LBの照射幅に応じて粘着フィルム1の切断幅(レーザ光の照射により形成された隙間の幅)Wを精度よくコントロールすることができる。典型的には、
図3に示すように、特定レーザ光LBの照射幅と同等またはそれ以上の切断幅Wにて粘着フィルム1を切断することができる。また、切断端面1Eおよび照射境界部1Fの形状精度に優れた高い切断品質を実現することができる。
【0032】
ここに開示される技術における樹脂フィルムのレーザ光吸収率Amin(1000,1100)は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは55%以上(例えば60%以上、典型的には70%以上)である。また、粘着フィルム全体としてのレーザ光吸収率Amin(1000,1100)も20%以上であることが好ましく、30%以上がより好ましく、55%以上(例えば60%以上、典型的には70%以上)がさらに好ましい。Amin(1000,1100)が低すぎると、特定レーザ光の照射によって樹脂フィルム(ひいては該樹脂フィルムを備える粘着フィルム)を切断することが困難となり、あるいは高い切断品質が実現されにくくなる。樹脂フィルムのAmin(1000,1100)は、100%であってもよいが、通常は95%以下が好ましい。粘着フィルムの切断残渣(典型的には、主としてレーザ光吸収剤に由来する残渣)を少なくするという観点からは、樹脂フィルムのAmin(1000,1100)は90%以下が好ましく、より好ましくは85%以下(例えば80%以下)であってもよい。
【0033】
ここに開示される技術における樹脂フィルムは、特に限定されないが、波長1000nm〜1100nmの範囲におけるレーザ光反射率が5%以上40%以下であることが好ましい。レーザ光反射率が上記の範囲にあることにより、レーザ光吸収率が好適な範囲に設定される傾向がある。レーザ光反射率は、5%より大きく以上35%以下(例えば10〜30%)であってもよい。粘着フィルム全体としてのレーザ光反射率も上記の範囲とすることが好ましい。
【0034】
ここに開示される技術における樹脂フィルムは、特に限定されないが、波長1000nm〜1100nmの範囲におけるレーザ光透過率が5%以下であることが好ましい。レーザ光透過率が上記の範囲にあることにより、レーザ光吸収率が好適な範囲に設定される傾向がある。また、レーザ光透過率が高すぎると、粘着フィルムの切断性能が低下し、高い切断品質を得ることができない虞がある。レーザ光透過率は3%以下(典型的には0%)であることがより好ましい。
【0035】
ここに開示される技術における樹脂フィルムは、レーザ光吸収剤として、Amin(1000,1100)を上昇させる作用を発揮し得る各種の材料を、単独で、あるいは適宜組み合わせて含むことができる。したがって、本明細書において「レーザ光吸収剤」とは、当該レーザ光吸収剤を用いない場合に比べてレーザ光吸収率Amin(1000,1100)を上昇させる作用を発揮し得る材料をいう。
【0036】
ここに開示される技術では、レーザ光吸収剤として、黒色系のレーザ光吸収剤(以下、黒色系吸収剤ともいう。)および白色系のレーザ光吸収剤(以下、白色系吸収剤ともいう。)から選ばれる1種または2種以上を使用することが好ましい。また、黒色系吸収剤および白色系吸収剤以外のレーザ光吸収剤(以下、その他のレーザ光吸収剤ともいう。)の1種を単独で2種以上を組み合わせて、あるいは黒色系吸収剤や白色系吸収剤と組み合わせて用いてもよい。レーザ光吸収性の観点からは黒色系吸収剤の使用が望ましい。また、意匠性や表面印刷性、識別性を考慮した場合、白色系吸収剤の使用が望ましい。
【0037】
黒色系吸収剤としては、カーボンブラックが好適例として挙げられる。例えば、平均粒径10nm〜500nm(より好ましくは10nm〜120nm)のカーボンブラックを用いることが好ましい。なお、本明細書中における「平均粒径」とは、特記しない限り、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径;以下、D
50と略記する場合もある。)を指す。カーボンブラックに代表される黒色系吸収剤が樹脂フィルム(または樹脂フィルムを構成する層)に5質量%以上(あるいは10質量%以上)配合される場合、黒色顔料として把握してもよい。
【0038】
白色系吸収剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化チタン、タルク、クレー、ケイ酸アルミニウム、塩基性炭酸鉛、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、炭酸カルシウム、シリカが好ましい。なお、ここで挙げた白色系吸収剤は、樹脂フィルムを白色化する目的で使用する白色顔料としても把握され得る成分である。そのような使用目的の違いを考慮して、本明細書における白色系吸収剤は、典型的な白色顔料である酸化チタンを含まないこととすることができる。さらに、アルミナ、タルク、クレー、ケイ酸アルミニウム、塩基性炭酸鉛、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウムの少なくとも1種または2種(例えば3種、典型的には全種)を含まないこととすることもできる。白色系吸収剤が樹脂フィルム(または樹脂フィルムを構成する層)に5質量%以上(あるいは10質量%以上)配合される場合、白色顔料として把握してもよい。白色系吸収剤の平均粒径(D
50)は特に限定されないが、0.01〜5μm(例えば0.02〜3μm、典型的には0.05〜2μm)とすることができる。
【0039】
その他のレーザ光吸収剤の好適例としては、金属および金属化合物が挙げられる。上記金属の例としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、ジルコニウム、タングステン、鉄、銅、銀、金、亜鉛、モリブデン、クロムおよびこれらを主成分とする合金等が挙げられる。金属化合物の例としては、上記金属の酸化物、窒化物、炭化物等(ただし、酸化アルミニウム、酸化チタン等の白色系吸収剤は除く)が挙げられる。このような金属および金属化合物は、典型的には粉末の形態でレーザ光吸収剤として好ましく用いられる。その他のレーザ光吸収剤としては他に、特定レーザ光を吸収する性質を有する有機化合物が挙げられる。かかる有機化合物は、例えば、クアテリレン系化合物、ペリレン系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、アミニウム系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、ジイモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、芳香族ジチオール系金属錯体(例えばニッケル錯体)等であり得る。なかでも、有機クアテリレン−ビスイミドが好ましい。具体的には、「LumogenIR 765」、「LumogenIR 788」、「LumogenIR 1050」(いずれもBASF社製の商品名)が挙げられる。これらは透明性に優れるので、樹脂フィルムの色彩、色調等への影響が少なく好ましい。その他のレーザ光吸収剤の平均粒径(D
50)は0.01μm以上20μm以下(例えば0.1μm以上10μm以下、典型的には1μm以上5μm以下)とすることが好ましい。
【0040】
樹脂フィルムにおけるレーザ光吸収剤の配合割合は、例えば0.01質量%以上とすることができ、好ましくは0.05質量%以上(例えば0.07質量%以上)である。レーザ光吸収剤の配合割合が多すぎると、レーザ切断残渣が目立ちやすくなることがあり得る。したがって、通常は、上記樹脂フィルムにおけるレーザ光吸収剤の配合割合を10質量%未満とすることが適当であり、5質量%未満(例えば3質量%以下、典型的には2質量%以下)とすることが好ましい。レーザ光吸収剤が黒色系吸収剤である場合、その配合割合の上限は、3質量%以下(典型的には3質量%未満)とすることが好ましく、2質量%以下(典型的には2質量%未満)とすることがより好ましい。レーザ光吸収剤が白色系吸収剤である場合、その配合割合の上限は、20質量%以下(例えば15質量%以下、典型的には12質量%以下)としてもよく、10質量%未満(典型的には5質量%未満)としてもよい。
【0041】
樹脂フィルムが少なくとも2層構造を有するものである場合、各層に上述のレーザ光吸収剤を含ませることが好ましい。好ましい一態様では、第一層と第二層の両方の層にレーザ光吸収剤が配合されている。また、第一層と第二層に配合するレーザ光吸収剤を異ならせてもよい。なかでも、第一層を樹脂フィルムの前面側に配置する場合、第一層にレーザ光吸収剤として黒色系吸収剤(典型的にはカーボンブラック)を含ませることが好ましい。また、第二層を樹脂フィルムの背面側に配置する場合、第二層にはレーザ光吸収剤として白色系吸収剤(好適には炭酸カルシウム、シリカ)を含ませることが好ましい。レーザ光吸収剤として白色系吸収剤に加えて、あるいは白色系吸収剤ではなく、上述の「LumogenIR 765」、「LumogenIR 788」、「LumogenIR 1050」を配合することが好ましい。また、第一層と第二層との間に中間層が設けられている場合、中間層には、レーザ光吸収剤として上記黒色系吸収剤および/または白色系吸収剤を含ませることが好ましい。この場合、中間層は黒色層、白色層、灰色層のいずれかとなり得る。各層には、さらにその他のレーザ光吸収剤が含まれていてもよい。好ましい一態様では、第一層と第二層は異なるレーザ光吸収剤を含む。さらに中間層が設けられている場合、第一層と第二層と中間層に配合するレーザ光吸収剤をそれぞれ異ならせてもよい。各層におけるレーザ光吸収剤の好ましい配合割合としては、上述の樹脂フィルムにおけるレーザ光吸収剤の配合割合と同じ配合割合を適用することができる。なお、多層構造の樹脂フィルムを構成する全ての層が、レーザ光吸収剤を含んでいる必要はない。上記樹脂フィルムの各層のうち、少なくとも粘着剤層側に位置する一層(典型的には第一層)は、レーザ光吸収剤を含んでいることが好ましい。
【0042】
樹脂フィルムを構成する樹脂成分として使用し得る材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン−ポリエチレンブレンド樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;その他、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が例示される。かかる樹脂材料にレーザ光吸収剤を配合してなる樹脂組成物を、典型的にはフィルム状に成形することにより、樹脂フィルムを形成することができる。成形方法は特に限定されず、従来公知の押出成形法(例えば、インフレーション押出成形法やTダイ成形法)、キャスト成形法等を適宜採用することができる。樹脂フィルムが少なくとも2層(典型的には2層以上の樹脂層)を有する場合、複数の樹脂層を備える樹脂フィルムは、各樹脂層に対応する樹脂組成物を同時に(例えば、多層インフレーション成形法や多層Tダイ成形法により)成形する方法、各々の層を成形した後に貼り合わせる方法、先に成形した層の上に他の層をキャストする方法等を、単独で、あるいは適宜組み合わせて採用することにより得ることができる。なお、各樹脂層を構成する樹脂成分は、上述した種類のなかから適宜選択することができ、各樹脂層の樹脂成分は同じであってもよく異なっていてもよい。
【0043】
上記樹脂フィルム(あるいは樹脂フィルムを構成する層)には、顔料、染料等の着色剤を含ませることが好ましい。上記着色剤の好適例としては、白色系着色剤や黒色系着色剤が挙げられる。第二層を樹脂フィルムの背面側に配置する場合、第二層には、公知の白色系着色剤(好適には白色顔料)を配合することが好ましい。また、第一層を樹脂フィルムの前面側に配置する場合、第一層には、公知の黒色系着色剤(好適には黒色顔料)を配合することが好ましい。白色系着色剤としては、酸化チタン等の無機の着色剤や、アクリル系樹脂粒子等の有機の着色剤等が挙げられる。黒色系着色剤としては、カーボンブラック等の無機の着色剤や、アントラキノン系黒色色素等の有機の着色剤等が挙げられる。これらの着色剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
着色剤の含有量は特に限定されず、公知の範囲とすることができる。例えば、樹脂フィルム中に0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜25重量%(典型的には0.1〜20重量%)とすることができる。樹脂フィルムを構成する層(例えば第二層および/または中間層、好適には第二層)に白色系着色剤(典型的には白色顔料)を配合する場合、その配合割合は5質量%以上とすることが適当であり、6質量%以上(例えば7質量%以上)としてもよい。白色系着色剤(典型的には白色顔料)の配合割合の上限は20質量%以下とすることが適当であり、15質量%以下(例えば10質量%以下)としてもよい。樹脂フィルムを構成する層(例えば第一層および/または中間層、好適には第一層)に黒色系着色剤(典型的には黒色顔料)を配合する場合、その配合割合は5質量%以上とすることが適当であり、6質量%以上(例えば7質量%以上)としてもよい。黒色系着色剤(典型的には黒色顔料)の配合割合の上限は20質量%以下とすることが適当であり、15質量%以下(例えば10質量%以下)としてもよい。
【0045】
上記樹脂フィルムには、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。かかる添加剤の例としては、難燃剤、帯電防止剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤等)、酸化防止剤等が挙げられる。
【0046】
上記樹脂フィルムの背面には、印刷が施されていてもよい。かかる場合、樹脂フィルムの背面の白色度を高めることによって、印刷の自由度が高まり、見映えの良い印刷が実現される。印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等の、公知または慣用の各種の方法を適宜採用することができる。
【0047】
上記樹脂フィルムの表面には、必要に応じて、隣接する材料に対する密着性を高める処理が施されていてもよい。密着性を高めるための表面処理としては、コロナ放電処理、酸処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、下塗剤(プライマー)塗付等が例示される。かかる表面処理は、樹脂フィルムの前面および背面のいずれにも好ましく適用され得る。樹脂フィルムの表面に印刷を行う場合、樹脂フィルムの表面に上記表面処理(例えばコロナ放電処理)を行った後、樹脂フィルムの表面に印刷を行い、後述する剥離処理を行ってもよい。
【0048】
また、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面(前面および/または背面、好ましくは背面)には、離型性を向上させるための適宜の表面処理が施されていてもよい。そのような表面処理が施された樹脂フィルムは、少なくとも一方の表面が剥離面となっているものであり得る。当該表面に剥離処理が施された(典型的には、剥離処理剤による剥離処理層が設けられた)樹脂フィルムを好適に用いることができる。上記剥離処理層の形成には、公知または慣用の剥離処理剤を用いることができる。そのような剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤、非シリコーン系剥離処理剤が挙げられる。非シリコーン系剥離処理剤としては、フッ素系、長鎖アルキル系の剥離処理剤を用いることができる。ポリアミド等の縮合物または付加重合物系の剥離処理剤であってもよい。なお、ポリオレフィン樹脂等の低極性ポリマー等の低接着性材料からなる樹脂フィルムでは、該フィルムの表面を、特に剥離処理を施すことなく剥離面として利用することができる。あるいは、低接着性材料からなる樹脂フィルムの表面にさらに剥離処理を施してもよい。剥離処理方法(典型的には剥離処理剤の付与方法)は特に限定されず、従来公知の塗付手段が適宜採用され得る。上述のような剥離処理(典型的には剥離処理層の形成)は、予め樹脂フィルムに対して行ってもよいが、樹脂フィルム上に粘着剤層を設けて巻回する一連の工程において、粘着剤層を設ける前後であって巻回する前に行うことも可能である。また、剥離ライナーを備える剥離ライナー付き粘着フィルムにおいては、上述の剥離処理を剥離ライナーに適用してもよい。
【0049】
上記樹脂フィルムの厚さは、通常、10μm〜150μm程度とすることが適当である。10μmよりも薄すぎる場合、または150μmより厚すぎる場合には、樹脂フィルムまたは該樹脂フィルムを備えた粘着フィルムのハンドリング性が低下しやすくなることがある。好ましい一態様では、樹脂フィルムの厚さは20μm〜110μm(より好ましくは40μm〜100μm)である。樹脂フィルムが少なくとも2層を有する場合、各層の厚さは、それぞれ独立して、3μm以上(例えば5μm以上、典型的には10μm以上)であり得る。また、該厚さは、それぞれ独立して、70μm以下(例えば50μm以下、典型的には40μm以下)としてもよい。
【0050】
樹脂フィルムが、上述のように、前面側に黒色層(第一層)が配置され、背面側に白色層(第二層)が配置されている場合、黒色層の厚さを大きくすることで、レーザ光吸収率を高めることができ、樹脂フィルムの切断性を向上させることができる。また、白色層の厚さを大きくすることで意匠性、表面印刷性、耐候性、識別性等の特性を高めることができる。さらに黒色層と白色層との間に中間層が配置されており、その中間層が白色層または灰色層である場合、この中間層の厚さを大きくすることで、背面の明度を向上させることができる。また、樹脂フィルムの第二層を薄くした場合、すなわち第二層の厚さを25μm以下(例えば20μm以下、典型的には15μm以下)とした場合、第二層へのレーザ光吸収剤の配合を省略しても、隣接する層からの伝熱によって第二層は容易に溶融するため、高い切断品質が実現でき、かつコスト面でも有利である。
【0051】
樹脂フィルムが2層以上からなる多層構造を有する場合、樹脂フィルム全体の厚さのうち、第一層の厚さおよび第二層の厚さは、それぞれ独立して、10%以上(例えば30%以上、典型的には50%以上)であることが適当であり、また90%以下(例えば70%以下、典型的には50%以下)としてもよい。さらに中間層が配置されている場合、樹脂フィルム全体の厚さのうち、第一層、第二層および中間層の厚さは、それぞれ独立して、10%以上(例えば15%以上、典型的には30%以上)であることが適当であり、また50%以下(例えば40%以下、典型的には35%以下)としてもよい。なお、上述の第一層、第二層、必要であれば中間層の厚さは、それらの合計が100%を超えない範囲で適切に選択される。樹脂フィルムが2層または3層構造の場合は、樹脂フィルムを構成する各層の合計が100%となるように選択される。
【0052】
ここに開示される技術における粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されず、例えば、公知のゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いることができる。粘着性能やコストの観点から、ゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。上記粘着剤層は、単層構造であってもよく、組成の異なる二以上の層を有する積層構造であってもよい。
【0053】
ゴム系粘着剤の例としては、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤等が挙げられる。合成ゴム系粘着剤のベースポリマーたるゴム系ポリマーの具体例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルゴム、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー;スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレンブチレンランダム共重合体、等のスチレン系エラストマー;その他、エチレンプロピレンゴム、プロピレンブテンゴム、エチレンプロピレンブテンゴム等が挙げられる。
【0054】
アクリル系粘着剤としては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、これに必要に応じて該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な改質用モノマーを加えたモノマー組成を有するアクリル系ポリマーをベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分)とするものを好ましく用いることができる。上記改質用モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;スチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル類;等が挙げられる。かかるアクリル系粘着剤は、溶液重合法、エマルション重合法、紫外線(UV)重合法等の慣用の重合法により得ることができる。
【0055】
上記粘着剤層には、レーザ光吸収剤を含有させることができる。また、複数の層からなる粘着剤層では、それらのうち少なくとも一つの層にレーザ光吸収剤を含有させることができる。粘着剤層に含有させるレーザ光吸収剤は、上述のレーザ光吸収剤のなかから1種または2種以上を適宜選択することができる。粘着剤層におけるレーザ光吸収剤の含有割合は、5質量%以下とすることが適当であり、好ましくは3質量%以下(例えば1質量%以下)である。レーザ光吸収剤の含有割合が多すぎると、粘着性能が損なわれることがあり得る。ここに開示される技術は、粘着剤層がレーザ光吸収剤を実質的に含有しない態様でも好ましく実施され得る。
【0056】
上記粘着剤層には、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。かかる添加剤の例としては、架橋剤、粘着付与剤、軟化剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料等)、光安定剤(ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤等)、酸化防止剤等が挙げられる。
【0057】
粘着剤層の厚さは、粘着フィルムの用途に応じて適切な粘着性能が得られるように適宜設定することができる。通常は、粘着剤層の厚さを0.5μm〜50μmとすることが適当であり、1μm〜30μm(例えば2μm〜20μm)とすることが好ましい。
【0058】
樹脂フィルム上に粘着剤層を設ける方法は特に限定されない。例えば、粘着剤層形成成分が有機溶媒に溶解した溶液または水性溶媒に分散した分散液を樹脂フィルムに塗付して乾燥させることにより樹脂フィルム表面に直接粘着剤層を形成する方法、剥離性を有する表面上に形成した粘着剤層を樹脂フィルムに移着する方法、粘着剤層形成成分と樹脂フィルム形成用の樹脂組成物とを共押出(多層押出)する方法、等の公知の方法を適宜採用することができる。
【0059】
ここに開示される粘着フィルムは、主波長1000nm〜1100nmのレーザ光(特定レーザ光)で切断して用いられる粘着フィルム(レーザ切断用粘着フィルム)として好適である。該粘着フィルムが特定レーザ光で切断される時期は、被着体への貼付け前であってもよく、貼付け後であってもよい。粘着フィルムが被着体への貼付け前に特定レーザ光で切断される態様としては、例えば
図2に示すように粘着剤層20の表面が剥離ライナー30で保護された状態で、粘着フィルム1の背面(樹脂フィルム10の背面10B)から特定レーザ光を照射することにより剥離ライナー30を残して粘着フィルム1のみを切断する態様、あるいは剥離ライナー30とともに粘着フィルム1を切断する態様が例示される。これにより所望の形状に切断された粘着フィルムは、その後、任意の被着体に貼り付けられて、該被着体の表面保護、装飾、表示、他の被着体との接着等の機能を果たし得る。被着体への貼付け後に粘着フィルムが特定レーザ光で切断される態様としては、ワークの表面に粘着フィルムを貼り付け、その粘着フィルムの背面から特定レーザ光を照射して上記ワークのレーザ加工(切断、孔あけ、切削等)を行う態様が例示される。かかる態様において、粘着フィルムは、レーザ加工の前後あるいはレーザ加工中にワークの表面を保護する保護フィルムとしての機能を果たし得る。
【0060】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0061】
以下の各例において樹脂フィルムの作製に使用した原料は次のとおりである。
LDPE:低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製の商品名「ペトロセン186R」)
PP:ランダムポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロF−744NP」)
PBT:ポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、商品名「ノバデュラン5505S」)
CB:平均粒径20nmのカーボンブラック粉末
Al:平均粒径2μmの薄片状アルミニウム粉末
CaCO
3:平均粒径2μmの炭酸カルシウム粉末
SiO
2:平均粒径4μmのシリカ粉末
L1050:レーザ光吸収剤(BASF社製の商品名「LumogenIR 1050」)
TiO
2:平均粒径0.2μmの二酸化チタン粉末
【0062】
<例1>
以下のようにして
図1と同様の構成を有する粘着フィルム1を作製した。すなわち、表1に示す原料を配合して三層共押出インフレーションフィルム成形機によりダイス温度165℃で成膜し(インフレーション成形法)、総厚が90μmの3層構造樹脂フィルム10を作製した。この樹脂フィルム10を構成する第一層11、中間層13および第二層12のそれぞれの組成および厚さを表1に示す。
【0063】
作製した樹脂フィルムの片面(第一層11側表面)にコロナ放電処理を施した。そのコロナ放電処理面に下記粘着剤組成物P1を、乾燥後の厚さが15μmとなるように塗付して乾燥させた。このようにして、基材の片面に天然ゴム系粘着剤層20を有する粘着フィルム1を得た。この粘着フィルム1は、樹脂フィルム10の第二層12/中間層13/第一層11が、白色層/黒色層/黒色層であり、第一層11側に粘着剤層20が設けられていた。
(粘着剤組成物P1)
天然ゴム100部に対し、粘着付与剤(日本ゼオン株式会社製、商品名「Quintone A100」)70部、老化防止剤(大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラックNS−5」)2部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートL」)3部およびトルエンを加えて混合したものを、天然ゴム系粘着剤組成物P1とした。
【0064】
<例2,例3>
第一層、中間層および第二層の組成および厚さを表1に示す内容に変更した他は例1と同様にして例2,3に係る樹脂フィルムを作製した。また、作製した各樹脂フィルムを用いた他は例1と同様にして例2,3に係る粘着フィルムを得た。これら粘着フィルムは、樹脂フィルムの第二層/中間層/第一層が、白色層/黒色層/黒色層であった。
【0065】
<例4>
第一層、中間層および第二層の組成および厚さを表1に示す内容に変更した他は例1と同様にして例4に係る樹脂フィルムを作製した。また、作製した樹脂フィルムを用いた他は例1と同様にして例4に係る粘着フィルムを得た。この粘着フィルムは、樹脂フィルムの第二層/中間層/第一層が、白色層/灰色層/黒色層であった。
【0066】
<例5>
第一層、中間層および第二層の組成および厚さを表1に示す内容に変更した他は例1と同様にして例5に係る樹脂フィルムを作製した。また、作製した樹脂フィルムを用いた他は例1と同様にして例5に係る粘着フィルムを得た。この粘着フィルムは、樹脂フィルムの第二層/中間層/第一層が、灰色層/灰色層/灰色層であった。
【0067】
<例6〜10>
第一層、中間層および第二層の組成および厚さを表2に示す内容に変更した他は例1と同様にして例6〜10に係る樹脂フィルムを作製した。また、作製した各樹脂フィルムを用いた他は例1と同様にして例6〜10に係る粘着フィルムを得た。この粘着フィルムは、樹脂フィルムの第二層/中間層/第一層が、白色層/灰色層/黒色層であった。
【0068】
<例11>
第一層、中間層および第二層の組成および厚さを表2に示す内容に変更した他は例1と同様にして例11に係る樹脂フィルムを作製した。また、作製した樹脂フィルムを用いた他は例1と同様にして例11に係る粘着フィルムを得た。この粘着フィルムは、樹脂フィルムの第二層/中間層/第一層が、白色層/白色層/白色層であった。
【0069】
<例12>
LDPEをインフレーション成形法によりダイス温度165℃で成膜して、60μmの厚さを有する単層構造の樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの片面にコロナ放電処理を施した。そのコロナ放電処理面に下記粘着剤組成物P2を、乾燥後の厚さが4μmとなるように塗付して乾燥させた。このようにして、基材の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着フィルムを得た。
(粘着剤組成物P2)
2−エチルヘキシルアクリレート/酢酸ビニル/アクリル酸を100/80/5の質量比で含むモノマー混合物を、ベンゾイルパーオキサイド(重合開始剤)を用いてトルエン中で重合させ、重量平均分子量60×10
4のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマー100部に対し、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名「テトラッドC」)2部を加えて混合したものを、アクリル系粘着剤組成物P2とした。
【0070】
<例13>
TiO
23%とLDPE97%とを、2軸押出し機(東芝機械株式会社製)にて樹脂温度180℃で造粒し、基材用ペレットを得た。得られたペレットをインフレーション成形法によりダイス温度180℃で成膜して、100μmの厚さを有する単層構造の樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの片面にコロナ放電処理を施し、上記粘着剤組成物P1を乾燥後の厚さが10μmとなるように塗付して乾燥させた。このようにして、基材の片面に天然ゴム系粘着剤層を有する粘着フィルムを得た。
【0071】
<例14>
CB0.05%とLDPE99.95%とを、上記押出し機にて樹脂温度180℃で造粒し、基材用ペレットを得た。得られたペレットをインフレーション成形法によりダイス温度165℃で成膜して、90μmの厚さを有する単層構造の樹脂フィルムを得た。
【0072】
<例15>
PPをTダイ法によりダイス温度230℃で成膜して、40μmの厚さを有する単層構造の樹脂フィルムを得た。
【0073】
<例16>
PBTをTダイ法によりダイス温度245℃で成膜して、40μmの厚さを有する単層構造の樹脂フィルムを得た。
【0074】
<例17>
Al0.1%とLDPE99.9%とを、上記押出し機にて樹脂温度180℃で造粒し、基材用ペレットを得た。得られたペレットをインフレーション成形法によりダイス温度165℃で成膜して、厚さ90μmの樹脂フィルムを得た。
【0075】
[評価]
上記で作製した各例に係る粘着フィルムまたは樹脂フィルムから適切なサイズのサンプルを切り出し、以下の項目を評価した。
【0076】
(1)透過率
測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U−4100」
測定条件:測定モード応用計測、データモード%T、スキャンスピード750nm/min、サンプリング間隔1nm、スリット自動制御、ホトマル電圧自動1、光量制御モード固定、高分解能測定OFF、減光板未使用、PbS感度1、セル長10mm
測定方法:
(i).測定装置の電源を入れ、装置を安定させるために2時間以上待機した。その後、サンプルをセットせずにベースラインを測定した。
(ii).次いで、測定装置の透過率測定部分にサンプルをセット(粘着フィルムの場合は、粘着フィルム背面より入光するようにセット)し、上記測定条件にて1000nm〜1100nmの波長範囲の透過率を測定した。
【0077】
(2)反射率
測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U−4100」
測定条件:測定モード応用計測、データモード%R、スキャンスピード750nm/min、サンプリング間隔1nm、スリット自動制御、ホトマル電圧自動1、光量制御モード固定、高分解能測定OFF、減光板未使用、PbS感度1、セル長10mm
測定方法:
(i).測定装置の電源を入れ、装置を安定させるために2時間以上待機した。その後、反射率測定部分に白色標準板をセットし(サンプルはセットしない。)、ベースラインを測定した。
(ii).次いで、反射率測定部分にサンプルをセットした。このとき、サンプルを透過した光の反射を防止するため、サンプルの入光面と反対側に日東樹脂工業株式会社製の樹脂板、商品名「クラレックス(登録商標)」(黒色、1mm厚)を置いた。サンプルが粘着フィルムの場合には、上記樹脂板に該粘着フィルムを貼り合わせた(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復)。そして、上記測定条件にて1000nm〜1100nmの波長範囲の反射率を測定した。
【0078】
(3)吸収率
上記透過率T(%)および反射率R(%)から、次式:100(%)−T(%)−R(%);により、1000nm〜1100nmの波長範囲における最小の吸収率Amin(1000,1100)を算出した。その結果を、上記最小吸収率の波長における透過率T(Amin)および反射率R(Amin)の値とともに、表1〜3に示す。
【0079】
(4)レーザ切断
(4-1)レーザ切断(i)
各サンプル(1mm厚のSUS304 2B板に粘着フィルムを貼った状態のもの、樹脂フィルムの場合は、その端部を粘着テープで固定した状態のもの)をレーザ溶接機(アマダ社製の型式「YLM−500P」を使用した。)の加工台上にセットし、以下の条件で所定の切断ラインに沿ってレーザ光を照射した。
使用レーザ:YAGレーザ(波長1064nm、出力500W)
照射条件:移動速度10m/min
(4-2)レーザ切断(ii)
各サンプル(1mm厚のSUS304 2B板に粘着フィルムを貼った状態のもの、樹脂フィルムの場合は、その端部を粘着テープで固定した状態のもの)をレーザ溶接機(オムロンレーザーフロント社製の型式「M802E」を使用した。)の加工台上にセットし、以下の条件で所定の切断ラインに沿ってレーザ光を照射した。
使用レーザ:YAGレーザ(波長1.06μm、出力200W)
照射条件:移動速度5m/min
上記レーザ切断(i)およびレーザ切断(ii)の各々について、照射後のサンプルを光学顕微鏡(倍率100倍)により観察し、以下の2水準でレーザ光による切断性(レーザ光切断性)を評価した。
○:レーザ照射径以上の幅でサンプル(粘着フィルムのみ、または樹脂フィルムのみ)を切断できた(レーザ光切断性良)。
×:サンプル(粘着フィルムのみ、または樹脂フィルムのみ)を切断できなかったか、切断幅がレーザ照射径未満であった(レーザ光切断性不良)。
レーザ切断(i)および(ii)の評価結果を表1〜3に示す。
【0080】
(5)明度および色度
例1〜10に係る樹脂フィルムの前面(第一層側表面)および背面(第二層側表面)の明度および色度を測定した。具体的には、10cm×10cmの樹脂フィルムをSUS430板の上に置き、樹脂フィルムの四隅の近傍4点と中央部1点の計5点におけるL
*a
*b
*表色系で規定される明度L
*、色度a
*、b
*を、色彩色差計(ミノルタ社製「CR−400」)を用いて測定した。測定は各測定点当たり2回行い、合計10回の平均値を採用した。結果を表1〜2に示す。
【0084】
表1〜3に示されるように、レーザ光吸収率Amin(1000,1100)が20%以上である例1〜10の粘着フィルムは、いずれも良好なレーザ光切断性を示した。これら粘着フィルムは、1000nm〜1100nmの波長範囲におけるレーザ光反射率が5%以上40%以下であり、かつ該波長範囲におけるレーザ光透過率が5%以下であった。なかでも、Amin(1000,1100)が80%以下である例1〜4,6〜10の粘着フィルムは、Amin(1000,1100)が80%を超える例5と比べてレーザ切断残渣がより少なく、より外観品質に優れた切断が実現された。一方、レーザ光吸収率Amin(1000,1100)が20%以上を満たさず、また、上記レーザ光透過率が5%を超えた例11〜17の粘着フィルムまたは樹脂フィルムは、いずれもレーザ光切断性が不良であった。
【0085】
また、例1〜4,6〜10に係る樹脂フィルムは、粘着フィルムの外表面となる第二層側表面(樹脂フィルムの背面)の明度L*が、いずれも65以上であった。そのため、粘着フィルムの外表面の白色度が高くなり、意匠性、表面印刷性、耐候性、識別性等の特性を向上させることが期待される。また、上記各例に係る樹脂フィルムの前面となる第一層側表面は、明度L*が25以下であり、隣接する粘着剤層や、樹脂フィルムを含む粘着フィルムを特定レーザ光によって切断しやすい構成であった。
【0086】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。