特許第6075984号(P6075984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6075984アクチュエータ及びアクチュエータの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075984
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】アクチュエータ及びアクチュエータの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/00 20060101AFI20170130BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20170130BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20170130BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   H02N1/00
   G02B26/10 104Z
   G02B26/08 E
   B81B3/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-157480(P2012-157480)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-23206(P2014-23206A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 誠
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 文紀
(72)【発明者】
【氏名】澤田 廉士
(72)【発明者】
【氏名】石河 範明
(72)【発明者】
【氏名】河村 幸則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−320963(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0231065(US,A1)
【文献】 特開2004−354531(JP,A)
【文献】 特開2008−242245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00
B81B 3/00
G02B 26/00−26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動電極と、
平面視で前記可動電極に対向している固定電極と、
前記可動電極及び前記固定電極から絶縁されており、平面視において該可動電極の一辺に対向している検出用電極と、
枠体と、
前記可動電極を前記枠体に取り付け、前記可動電極の回転軸となる保持部材と、
前記可動電極又は前記固定電極に交流電圧を該固定電極に直流電圧を少なくとも印加する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記可動電極と前記検出用電極との間の静電容量を検出し、該静電容量の大きさに基づいて前記交流電圧の周波数を変更せずに前記固定電極への直流電圧を制御することにより、該可動電極の角度を制御するアクチュエータ。
【請求項2】
請求項に記載のアクチュエータにおいて、
前記制御部は、前記可動電極に前記交流電圧を印加するアクチュエータ。
【請求項3】
請求項に記載のアクチュエータにおいて、
前記制御部は、前記固定電極に前記交流電圧を印加するアクチュエータ。
【請求項4】
可動電極と、
平面視で前記可動電極に対向している固定電極と、
前記可動電極及び前記固定電極から絶縁されており、平面視において該可動電極の一辺に対向している検出用電極と、
枠体と、
前記可動電極を前記枠体に取り付け、前記可動電極の回転軸となる保持部材と、
有するアクチュエータを準備し、
前記可動電極又は前記固定電極に交流電圧を該固定電極に直流電圧を少なくとも印加し、
前記可動電極と前記検出用電極との間の静電容量を検出し、該静電容量の大きさに基づいて前記交流電圧の周波数を変更せずに前記固定電極への直流電圧を制御することにより、該可動電極の角度を制御するアクチュエータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クチュエータ及びアクチュエータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転型アクチュエータは、例えば光スキャナーなどにおいて光の方向を変えるために用いられている。このような用途の回転型アクチュエータは、可動部である可動電極及び固定電極を有している。可動電極は、可動電極と固定電極の間の電圧によってその回転角度が制御される(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−47897号公報
【特許文献2】特開2007−178711号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C. Ataman, H. Urey, "Modeling and characterization of comb-actuated resonant microscanners", J. Micromech. Microeng. 16(2006)9-16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可動電極及び固定電極を有している回転型アクチュエータにおいて、これらの間に交流電圧と直流電圧とを重畳させた電圧を印加する場合が多い。ここで交流電圧の周波数は、可動電極の共振周波数、または、その高調波の周波数近傍である。このようにすると、可動電極が共振するため大きく振動する。しかし、交流電圧と直流電圧とを重畳させた電圧を印加する場合、交流電圧の周波数を制御することにより、可動電極の回転角度を制御していた。このため、可動電極の制御部は、交流電圧の周波数を掃引するための回路が必要となっていた。この場合、制御部の回路構成が複雑になってしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、制御部の回路構成を単純化することができるアクチュエータ及びアクチュエータの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、クチュエータは、可動電極、枠体、保持部材、固定電極、及び制御部を備えている。保持部材は、可動電極を枠体に取り付けている。また保持部材は、可動電極の回転軸となる。固定電極は、平面視で可動電極に対向している。制御部は、固定電極と可動電極の間に、交流電圧と直流電圧とを重畳させた電圧を印加し、かつ直流電圧を制御することにより、可動電極の角度を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クチュエータの制御部の回路構成を単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る回転型アクチュエータの構成を示す図である。
図2】可動電極と固定電極の間に印加する電圧において、交流電圧の周波数を上げていったときの可動電極の回転角度を示す図である。
図3】可動電極と固定電極の間に印加する電圧において、直流電圧VDCを上げていったときの可動電極の回転角度を示す図である。
図4】制御部の回路構成の第1例を示す図である。
図5】制御部の回路構成の第2例を示す図である。
図6】制御部の回路構成の第3例を示す図である。
図7】制御部の回路構成の第4例を示す図である。
図8】制御部の回路構成の第5例を示す図である。
図9】制御部の回路構成の第6例を示す図である。
図10】第2の実施形態に係る回転型アクチュエータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る回転型アクチュエータ100の構成を示す図である。本実施形態に係る回転型アクチュエータ100は、可動電極120、枠体110、保持部材130、固定電極140、及び制御部200を有している。保持部材130は、可動電極120を枠体110に取り付けており、かつ可動電極120の回転軸となる。固定電極140は、平面視で可動電極120に対向している。制御部200は、固定電極140と可動電極120の間に、交流電圧と直流電圧とを重畳させた電圧を印加する。そして制御部200は、この直流電圧を制御することにより、可動電極120の角度を制御する。以下、詳細に説明する。
【0012】
可動電極120の平面形状は矩形である。そして固定電極140は、平面視で可動電極120を挟むように2つ設けられている。可動電極120のうち固定電極140と対向する辺(図1においてX方向に伸びている辺)は、櫛歯形状となっている。枠体110は、可動電極120の4辺のうち固定電極140と対向していない2つの辺(図1においてY方向に伸びている辺)それぞれに対向している。保持部材130は、可動電極120のうち枠体110と対向している2辺それぞれに対して設けられている。詳細には、保持部材130は、可動電極120のうち枠体110と対向している辺の中心に接続している。そして2つの保持部材130を結ぶ線が、可動電極120の回転軸となっている。本実施形態では、枠体110、可動電極120、及び保持部材130は一体的に形成されている。
【0013】
固定電極140のうち可動電極120と対向する辺は、櫛歯形状となっており、可動電極120の櫛歯部分とかみ合っている。このため、固定電極140と可動電極120は、互いに対向する部分の面積が大きくなり、その結果、可動電極120の駆動力は大きくなる。
【0014】
回転型アクチュエータ100の可動電極120は、例えば上面が鏡面になっている。この鏡面は、例えば可動電極120の上面に金属膜(例えばAl膜)を形成することにより、形成されている。そして可動電極120の角度を変えることにより、可動電極120に入射してきた光の反射角を変える。回転型アクチュエータ100は、例えば光スキャナーやモーションセンサに用いられる。
【0015】
制御部200は、可動電極120の動きを制御する。具体的には、可動電極120を回転させるとき、制御部200は、可動電極120と固定電極140の間に、交流電圧と直流電圧とを重畳させた電圧を印加する。交流電圧の周波数は、例えば可動電極120の基本共振周波数、又はその高調波近傍である。本実施形態において制御部200は、可動電極120の動きを制御している間、交流電圧の周波数を変化させない。その代わりに、制御部200は、直流電圧を制御することにより、可動電極120の回転角度を制御する。
【0016】
図2は、可動電極120と固定電極140の間に印加する電圧において、交流電圧の周波数を上げていったときの可動電極120の回転角度を示す図である。直流電圧Vが閾値Vm未満の場合、交流電圧の周波数を上げていっても可動電極120は回転しない。これに対して直流電圧Vが閾値Vm以上では、交流電圧の周波数を上げていくと、閾値周波数fで可動電極120は回転し始める。その後、交流電圧の周波数を上げていくと、可動電極120の回転角度は小さくなる。一方、閾値周波数fよりも十分高い周波数から、もしくは、可動電極120が回転している状態で交流電圧の周波数を下げていくと、可動電極120の回転角度は大きくなる。そして、交流電圧の周波数が基準周波数fになると、可動電極120の回転角度は0に戻る。基準周波数fは、一般的に閾値周波数fよりも小さい。そして閾値周波数fは、直流電圧Vを大きくしていくと、高くなっていく。一方、基準周波数f0は、直流電圧Vによらず一定である。
【0017】
図3は、可動電極120と固定電極140の間に印加する電圧において、直流電圧VDCを上げていったときの可動電極120の回転角度を示す図である。直流電圧VDCが閾値電圧Vm未満の場合、可動電極120は回転しない。一方、直流電圧VDCが閾値Vmになると、可動電極120は回転する。そして直流電圧VDCを上げていくと、可動電極120の回転角度は、閾値Vmのときの回転角度θから徐々に大きくなる。このように、制御部200は、直流電圧VDCの値を制御することにより、可動電極120の回転角度θを制御することができる。
【0018】
図4は、制御部200の回路構成の第1例を示す図である。本図に示す例において、制御部200は、交流電圧発生部210及び直流電圧発生部220を有している。交流電圧発生部210は、2つの固定電極140に交流電圧を印加する。直流電圧発生部220は、枠体110及び保持部材130を介して、可動電極120に直流電圧を印加する。これにより、可動電極120と固定電極140の間には、交流電圧と直流電圧とを重畳させた電圧が印加される。
【0019】
図5は、制御部200の回路構成の第2例を示す図である。本図に示す例において、交流電圧発生部210は、枠体110及び保持部材130を介して、可動電極120に交流電圧を印加する。直流電圧発生部220は、2つの固定電極140に直流電圧を印加する。これにより、可動電極120と固定電極140の間には、交流電圧と直流電圧とを重畳させた電圧が印加される。
【0020】
図6は、制御部200の回路構成の第3例を示す図である。本図に示す例において、交流電圧発生部210及び直流電圧発生部220は、いずれも枠体110及び保持部材130を介して、可動電極120に電圧を印加する。一方、2つの固定電極140は接地されている。これにより、可動電極120と固定電極140の間には、交流電圧と直流電圧とを重畳させた電圧が印加される。
【0021】
図7は、制御部200の回路構成の第4例を示す図である。本図に示す例において、交流電圧発生部210及び直流電圧発生部220は、いずれも2つの固定電極140に電圧を印加する。一方、可動電極120は、枠体110及び保持部材130を介して接地されている。これにより、可動電極120と固定電極140の間には、交流電圧と直流電圧とを重畳させた電圧が印加される。
【0022】
図8は、制御部200の回路構成の第5例を示す図である。本図に示す例において、交流電圧発生部210及び直流電圧発生部220は、いずれも枠体110及び保持部材130を介して、可動電極120に電圧を印加する。一方、2つの固定電極140は、直流電圧発生部230によって直流の固定電圧が印加されている。これにより、可動電極120と固定電極140の間には、交流電圧と直流電圧とを重畳させた電圧が印加される。
【0023】
図9は、制御部200の回路構成の第6例を示す図である。本図に示す例において、交流電圧発生部210及び直流電圧発生部220は、いずれも2つの固定電極140に電圧を印加する。一方、可動電極120は、枠体110及び保持部材130を介して、直流電圧発生部230によって直流の固定電圧が印加されている。これにより、可動電極120と固定電極140の間には、交流電圧と直流電圧とを重畳させた電圧が印加される。
【0024】
なお、制御部200の回路構成は、上記した例に限定されない。
【0025】
以上、本実施形態によれば、制御部200は、直流電圧を制御することにより、可動電極120の角度を制御する。直流電圧の制御回路は、交流電圧の周波数制御回路よりも構成が簡単である。このため、回転型アクチュエータの制御部の回路構成を単純化することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る回転型アクチュエータ100の構成を示す図である。本実施形態に係る回転型アクチュエータ100は、検出用電極150を有している点を除いて、第1の実施形態に係る回転型アクチュエータ100と同様の構成である。
【0027】
検出用電極150は、固定電極140と並んでおり、可動電極120のうち固定電極140と対向している辺に対向している。本図に示す例では、固定電極140は、可動電極120の辺の中心部分に対向している。そして検出用電極150は、固定電極140を挟むように設けられており、可動電極120の辺の両端それぞれに対向している。固定電極140は、検出用電極150よりも大きい。本図に示す例では、検出用電極150は、可動電極120のうち対向する2辺に設けられている。すなわち検出用電極150は、保持部材130を基準として線対称となるように設けられている。ただし、検出用電極150は、可動電極120の一辺にのみ設けられていても良い。
【0028】
可動電極120が回転すると、可動電極120と検出用電極150の間に生じる静電容量が変化する。このため、制御部200は、この静電容量の大きさに基づいて可動電極120の回転角度を算出することができる。すなわち制御部200は、可動電極120と検出用電極150の間の静電容量を検出し、検出した静電容量の大きさに基づいて直流電圧を制御する。これにより、制御部200は、可動電極120の回転角度を所望の値に制御することができる。
【0029】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0030】
100 回転型アクチュエータ
110 枠体
120 可動電極
130 保持部材
140 固定電極
150 検出用電極
200 制御部
210 交流電圧発生部
220 直流電圧発生部
230 直流電圧発生部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10