(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075985
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】車両のドアフレーム構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20170130BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20170130BHJP
B62D 65/00 20060101ALI20170130BHJP
B62D 65/06 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
B60J5/04 P
B60J5/00 Q
B62D65/00 C
B62D65/06 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-158981(P2012-158981)
(22)【出願日】2012年7月17日
(65)【公開番号】特開2014-19273(P2014-19273A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】清水 謙二
(72)【発明者】
【氏名】大澤 成信
(72)【発明者】
【氏名】吉原 二郎
【審査官】
佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−143314(JP,U)
【文献】
特開2002−219938(JP,A)
【文献】
特開2012−106691(JP,A)
【文献】
国際公開第00/066382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
B60J 5/00
B62D 65/00
B62D 65/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパサッシュと、上下方向に延びる立柱サッシュと、上記アッパサッシュに固定されるブラケットと、前後方向に長手方向を向けるベルトラインリンフォースとを備えた車両のドアフレームの製造方法において、
上記アッパサッシュの一端部と上記立柱サッシュの端部を固定し、上記アッパサッシュの他端部に上記ブラケットを固定するステップと、
上記ベルトラインリンフォースの長手方向の一端部と上記立柱サッシュを上記前後方向に対向させて溶接し、上記ベルトラインリンフォースの長手方向の他端部と上記ブラケットを車幅方向に重ねて溶接するステップと
を有することを特徴とする車両のドアフレームの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の車両のドアフレームの製造方法において、上記ベルトラインリンフォースの上記一端部と上記立柱サッシュを少なくとも上下方向の異なる2箇所で溶接し、上記ベルトラインリンフォースの上記他端部と上記ブラケットを少なくとも上下方向の異なる2箇所で溶接する車両のドアフレームの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両のドアフレームの製造方法において、
上記ブラケットは、上記ベルトラインリンフォースの上記他端部に対して上記車幅方向に隣接する車幅方向位置規制部を有し、
上記ベルトラインリンフォースは、箱状断面部と、上記箱状断面部から上下方向へ突出する板状部とを有し、
上記ベルトラインリンフォースの上記他端部と上記ブラケットを溶接するステップでは、上記箱状断面部の角部と上記車幅方向位置規制部との間が溶接される車両のドアフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアフレーム
の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窓枠を構成するドアサッシュの下部にベルトラインリンフォースを設けた車両のドアフレームでは、ベルトラインリンフォースの長手方向の一端部と他端部がそれぞれブラケットに対して溶接で固定され、各ブラケットがドアサッシュ及びドアパネル(インナパネル)に固定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-255850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用ドアフレームでは、ベルトラインリンフォースのいずれの端部も各ブラケットに対してドアの厚み方向(車幅方向)に重ねられ、この重畳部分の縁部に沿って溶接されていた。そのため、ドアの厚み方向ではベルトラインリンフォースの位置を定めやすいが、ベルトラインリンフォースの長手方向(側面ドアの場合、前後方向)には位置のバラつきが生じやすく、組付精度を確保するのに手間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、ベルトラインリンフォースの組付精度の確保が容易で生産性に優れる車両のドアフレーム
の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
アッパサッシュと、上下方向に延びる立柱サッシュと、アッパサッシュに固定されるブラケットと、前後方向に長手方向を向けるベルトラインリンフォースとを備えた車両のドアフレームの製造方法において、アッパサッシュの一端部と立柱サッシュの端部を固定し、アッパサッシュの他端部にブラケットを固定するステップと、ベルトラインリンフォースの長手方向の一端部と立柱サッシュを前後方向に対向させて溶接し、ベルトラインリンフォースの長手方向の他端部とブラケットを車幅方向に重ねて溶接するステップとを有することを特徴としている。
【0008】
ベルトラインリンフォースの一端部と立柱サッシュを少なくとも上下方向の異なる2箇所で溶接し、ベルトラインリンフォースの他端部とブラケットを少なくとも上下方向の異なる2箇所で溶接することが望ましい。
【0009】
ブラケットは、ベルトラインリンフォースの他端部に対して車幅方向に隣接する車幅方向位置規制部を有し、ベルトラインリンフォースは、箱状断面部と、該箱状断面部から上下方向へ突出する板状部とを有し
、ベルトラインリンフォースの他端部とブラケットを溶接するステップでは、箱状断面部の角部と
車幅方向位置規制部との間を溶接することが強度的に好ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上の本発明によれば、ドアフレーム
を構成するベルトラインリンフォースを
前後方向(長手方向
)及び
車幅方向(ドア厚み方向
)に容易かつ高精度に位置決めすることができ、車両のドアフレームの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のドアフレーム
の製造方法で製造される自動車の前部座席用の側面ドアを車内側から見た側面図である。
【
図5】本発明のドアフレーム
の製造方法で製造される自動車の後部座席用の側面ドアを車内側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1と
図2は自動車の前部座席用の側面ドア10を示している。
図1は右側の側面ドア10を車内側から見たもの、
図2は左側の側面ドア10を車外側から見たものである。以下の説明では、前後、上下、車内側、車外側といった方向の表現は、このドア10が取り付けられる自動車のボディを基準とした方向を意味する。ドア10は、二点鎖線で概略形状を示すドアパネル12と、ドアパネル12の上部に枠状に形成されたドアフレーム14とを有し、ドアパネル12の上縁部とドアフレーム14の内縁部とで囲まれる窓開口16内にドアガラス(図示略)が昇降する。窓開口16に臨むドアフレーム14の内周側には弾性材からなるガラスラン(図示略)が配設されており、ドアガラスの縁部がガラスランにより保持される。
【0013】
ドアフレーム14は、ドア上縁部を形成するアッパサッシュ18と、ドアパネル12の後部から上方へ延設された立柱サッシ
ュ20と、アッパサッシュ18の前方途中位置から下方に向けて延設されるフロントサイドサッシュ22を備えており、アッパサッシュ18の後端部
(一端部)と立柱サッシュ20の上端部がドアコーナー部で接合される。ドアパネル12は車外側のアウタパネルと車内側のインナパネルを組み合わせて構成され、アッパサッシュ18の前方下部
(他端部)とフロントサイドサッシュ22はミラーブラケッ
ト24を介してインナパネルに固定され、立柱サッシュ20の下部はロックブラケット26を介してインナパネルに固定される。ミラーブラケット24とロックブラケット26もドアフレーム14の構成要素である。ドア10を閉じたとき、アッパサッシュ18は、図示しない車両ボディのルーフパネルのドア開口部に沿って位置し、立柱サッシュ20は、車両ボディのセンターピラーに沿って位置される。アッパサッシュ18と立柱サッシュ20の外周側には弾性材からなるウェザストリップ(図示略)が配設されており、ドア10を閉じるとウェザストリップが弾性変形して、ドア10と車両ボディの間を液密に塞ぐ。
アッパサッシュ18や立柱サッシュ20により構成されるサッシュ部の下部には
、車両前後方向に延び
てドアフレーム14の一部を構成するベルトラインリンフォース28が固定される。
【0014】
ドアフレーム14
では、アッパサッシュ18や立柱サッシュ20により構成されるサッシュ部、ミラーブラケット24とロックブラケット26、ベルトラインリンフォース28は
それぞれ、アルミの成形品として形成されている。ベルトラインリンフォース28は、中空をなす箱状断面部28aと、箱状断面部28aから上方と下方にそれぞれ延出される板状の上縁フランジ部(板状部)28bと下縁フランジ部(板状部)28cを有している。ベルトラインリンフォース28のうちミラーブラケット24と重なる前方の一部領域では、上縁フランジ部28bと下縁フランジ部28cが切除されている(
図1、
図3参照)。
【0015】
ミラーブラケット24は、ベルトラインリンフォース28の前端位置を横切って上下方向に延設された板状部材であり、アッパサッシュ18とフロントサイドサッシュ22に囲まれる領域に、ドアミラーが固定されるミラー取付部24aを有する。ミラーブラケット24におけるミラー取付部24aの下方には、ベルトラインリンフォース28の箱状断面部28aの側部と重なる支持板部(
車幅方向位置規制部)24bが設けられる。支持板部24bはドアパネル12を構成するインナパネルに固定される。
図3に示すように、支持板部24bにはドア10の厚み方向(車幅方向)に貫通する溶接穴24cが形成されている。
【0016】
立柱サッシュ20は下方の一部領域がドアパネル12内へ挿入されており、この立柱サッシュ20のドアパネル内挿入領域が、ベルトラインリンフォース28の後端に対向する位置を通って下方に延びている。ロックブラケット26は、立柱サッシュ20の下端部付近と、ドアパネル12を構成するインナパネルに対して固定されている。
図4に断面形状を示すように、立柱サッシュ20は、ガラスランチャンネル30とアウタ部材32を組み合わせて構成されている。ガラスランチャンネル30は、ドアフレーム14の内周側に開口されて内部にガラスランを嵌合保持させるガラスラン保持部30aを有している。アウタ部材32は、ガラスラン保持部30aに対して車内側に突出する袋状断面部32aを有している。
【0017】
ベルトラインリンフォース28は、立柱サッシュ20に対して前後方向(ベルトラインリンフォース28の長手方向)の位置が規定される態様で固定され、ミラーブラケット24に対してドア10の厚み方向(ベルトラインリンフォース28の板厚方向)の位置が規定される態様で固定される。
【0018】
ベルトラインリンフォース28の後端部と立柱サッシュ20の関係を
図4に示す。立柱サッシュ20を構成するアウタ部材32の袋状断面部32aは、前方に向く受け
面32bを有し、ベルトラインリンフォース28の上縁フランジ部28bの後端部が受け面32bに対向している。受け面32bはベルトラインリンフォース28の長手方向に交差する面であり、ベルトラインリンフォース28は受け面32bによって後端位置が定められる。そして
図4に示すように、ベルトラインリンフォース28の上縁フランジ部28bの後端部とアウタ部材32の受け面32bとの間が溶接部WR1で溶接して固定される。ベルトラインリンフォース28の長手方向における誤差吸収のため、上縁フランジ部28bの後端部と受け面32bとの間には、設計上所定の隙間が確保されている。
図4は、
図1及び
図2のB断面位置でのベルトラインリンフォース28の上縁フランジ部28bと立柱サッシュ20の固定関係を示しているが、
図1及び
図2のC断面位置でも同様の構成で、ベルトラインリンフォース28の下縁フランジ部28cが立柱サッシュ20(受け面32b)に対して溶接で固定されている。この下縁フランジ部28cと立柱サッシュ20の溶接箇所を
図1及び
図2にWR2で示した。
【0019】
ベルトラインリンフォース28は、立柱サッシュ20によって後端位置を規定されることで長手方向(前後方向)の位置が定まる。その上で、ベルトラインリンフォース28の前端側がミラーブラケット24に固定される。立柱サッシュ20の受け面32bと異なり、ミラーブラケット24の支持板部24bはベルトラインリンフォース28の長手方向に沿う面であり、
図3に示すように支持板部24bとベルトラインリンフォース28がドア10の厚み方向
(車幅方向)に重なる。よってベルトラインリンフォース28は、ミラーブラケット24の支持板部24bによってドア10の厚み方向の位置が規定され、その反面、前後方向には位置設定の自由度がある。そして
図3に示すように、ベルトラインリンフォース28の箱状断面部28aとミラーブラケット24の支持板部24bが溶接部WF1、WF2で溶接されて固定される。溶接部W
F1は、支持板部24bの車内側を向く面と箱状断面部28aの上側角部の間を溶接しており、溶接部W
F2は、支持板部24bに形成した溶接穴24cと箱状断面部28aの間を溶接している。
【0020】
ドアフレーム14に
おけるベルトラインリンフォース28の
溶接箇所である溶接部WF1、WF2、WR1及びWR2を
図1と
図2に概念的に示す。これらの各部はアーク溶接によって溶接される。このようにベルトラインリンフォース28の前端側の上下及び後端側の上下という四隅で溶接することにより、確実な位置精度と高い固定強度を得ることができる。なお、この4箇所以外の部分で付加的に溶接を行うことも可能である。
【0021】
以上のように、ドアフレーム14
でベルトラインリンフォース28を組み付けるに当たり、
ベルトラインリンフォース28が固定される第1の固定部である立柱サッシュ20の下部に対して、ベルトラインリンフォース28が後端部を対向させる態様で支持されるため、ベルトラインリンフォース28の長手方向
(前後方向)位置が容易かつ確実に規定される。また、
ベルトラインリンフォース28が固定される第2の固定部であるミラーブラケット24に対して、ベルトラインリンフォース28がドア厚み方向
(車幅方向)に重なる態様で支持されるため、長手方向と直交するドア厚み方向についてもベルトラインリンフォース28の位置を容易にかつ確実に設定できる。これにより、ベルトラインリンフォース28の組付作業性が向上す
る。
【0022】
以上の実施形態は自動車の前部座席用の側面ドア10へ適用しているが、
図5に示す後部座席用の側面ドア110にも適用が可能である。ドア110はドアパネル112とドアフレーム114を有し、ドアフレーム114は、ドア上縁部を形成するアッパサッシュ118と、ドアパネル112の前部から上方へ延設された立柱サッシ
ュ120と、立柱サッシュ120の下部に固定される前方ブラケット124と、アッパサッシュ118の下方後端部に接続する後方ブラケッ
ト126
と、ベルトラインリンフォース128により構成される。ベルトラインリンフォース128は、その前端部が立柱サッシュ120に形成した受け面に対向して長手方向
(前後方向)の位置が規定され、後端部が後方ブラケット126に重なってドア厚み方向
(車幅方向)への位置が定まる。ベルトラインリンフォース128と立柱サッシュ120の間、ベルトラインリンフォース128と後方ブラケット126の間がそれぞれ溶接されてベルトラインリンフォース128の組み付けが完了す
る。
【0023】
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は図示した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて改良や改変が可能である。例えば図示実施形態のドアフレーム14、114
では、ベルトラインリンフォース28、128を
含む各部を構成する各部材はアルミ材としたが、鉄などの異なる材質で形成されるドアフレームにも本発明は適用が可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 110 ドア
12 112 ドアパネル
14 114 ドアフレーム
16 窓開口
18 118 アッパサッシュ
20 120 立柱サッシ
ュ
22 フロントサイドサッシュ
24 ミラーブラケッ
ト
24a ミラー取付部
24b 支持板部(
車幅方向位置規制部)
24c 溶接穴
26 ロックブラケット
28 128 ベルトラインリンフォース
28a 箱状断面部
28b 上縁フランジ部(板状部)
28c 下縁フランジ部(板状部)
30 ガラスランチャンネル
30a ガラスラン保持部
32 アウタ部材
32a 袋状断面部
32b 受け
面
124 前方ブラケット
126 後方ブラケッ
ト
WF1 WF2 WR1 WR2 溶接部