特許第6075999号(P6075999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075999
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】管端溶接機及び管端溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/028 20060101AFI20170130BHJP
   B23K 37/053 20060101ALI20170130BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20170130BHJP
   B23K 101/14 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
   B23K9/028 Q
   B23K37/053 D
   B23K37/053 F
   B23K9/00 501H
   B23K9/028 P
   B23K101:14
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-191310(P2012-191310)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-46340(P2014-46340A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100126963
【弁理士】
【氏名又は名称】来代 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100131864
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 正憲
(72)【発明者】
【氏名】片岡 淳一
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03777110(US,A)
【文献】 実開昭54−056621(JP,U)
【文献】 特開昭58−213186(JP,A)
【文献】 特開平05−261552(JP,A)
【文献】 実開昭52−111723(JP,U)
【文献】 特開昭49−122839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/028
B23K 9/00
B23K 37/053
B23K 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の側板のうちの一方の側板には管孔が形成され、他方の側板には前記管孔に対応したプラグ孔が形成された箱型のヘッダーにおいて、前記管孔に伝熱管の端部を挿入して前記一方の側板から突出させ、この伝熱管の突出部分の外周囲と、伝熱管が挿通された前記一方の側板の管孔の周縁とを周溶接するために使用される管端溶接機であって、
管端溶接機本体と、
前記管端溶接機本体の先端側に回転可能に設けられ、駆動手段により回転する回転部と、
前記回転部の先端に設けられると共に、前記周溶接可能なように前記伝熱管の突出部分に対して外側で且つ所定角度傾斜して配置される溶接トーチとを備え、
前記回転部は、駆動手段に連結され前方に向けて真っ直ぐに延びる回転部本体と、該回転部本体に連なり前記溶接トーチが前記プラグ孔から挿入可能なように1箇所若しくは複数個所で折れ曲げられた折曲部分とで構成され、
前記管端溶接機本体には、前記回転部本体に平行に延びるガイド部材が着脱自在に装着され、
管端溶接に際しては、前記ガイド部材の先端部を、溶接する部分の管孔以外の管孔内又は既に管端溶接が行われた伝熱管内に挿入することにより、前記回転部を支持するように構成されていることを特徴とする管端溶接機。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記管端溶接機本体の左右両側に一対、又は斜め上側及び下側に一対設けられている請求項1記載の管端溶接機。
【請求項3】
対向する一対の側板のうちの一方の側板には管孔が形成され、他方の側板には前記管孔に対応したプラグ孔が形成された箱型のヘッダーにおいて、前記管孔に伝熱管の端部を挿入して前記一方の側板から突出させ、この伝熱管の突出部分の外周囲と、伝熱管が挿通された前記一方の側板の管孔の周縁とを、請求項1記載の管端溶接機を用いて周溶接する管端溶接方法であって、
伝熱管を管孔に挿入し、伝熱管の端部が前記一方の側板の内側表面から突出するまで押し込む第1ステップと、
前記管端溶接機の前記回転部及び前記溶接トーチを、溶接する部分の管孔に対応したプラグ孔から挿入し、前記溶接トーチが当該管孔の手前側近傍位置に達するまで押し込む第2ステップと、
前記ガイド部材を、溶接する部分の管孔に対応したプラグ孔以外のプラグ孔から挿入し、ガイド部材の先端が溶接する部分の管孔以外の管孔内又は既に管端溶接が行われた伝熱管内に到達するまで押し込む第3ステップと、
前記ガイド部材が前記管孔内又は既に管端溶接が行われた伝熱管内に挿入された状態で、前記ガイド部材を管端溶接機本体に装着する第4ステップと、
前記溶接トーチからのアークにより前記伝熱管の突出部分の外周囲と、前記伝熱管が挿通された前記一方の側板の管孔の周縁とを周溶接する第5ステップと、
を含むことを特徴とする管端溶接方法。
【請求項4】
前記第2ステップに先立ち、前記第3ステップを行う請求項3記載の管端溶接方法。
【請求項5】
対向する一対の側板のうちの一方の側板には管孔が形成され、他方の側板には前記管孔に対応したプラグ孔が形成された箱型のヘッダーにおいて、前記管孔に伝熱管の端部を挿入して前記一方の側板から突出させ、この伝熱管の突出部分の外周囲と、伝熱管が挿通された前記一方の側板の管孔の周縁とを、請求項2記載の管端溶接機を用いて周溶接する管端溶接方法であって、
伝熱管を管孔に挿入し、伝熱管の端部が前記一方の側板の内側表面から突出するまで押し込む第1ステップと、
前記管端溶接機の前記回転部及び前記溶接トーチを、溶接する部分の管孔に対応したプラグ孔から挿入し、前記溶接トーチが当該管孔の手前側近傍位置に達するまで押し込む第2ステップと、
前記一対のガイド部材を、溶接する部分の管孔に対応したプラグ孔以外のプラグ孔からそれぞれ挿入し、各ガイド部材の先端が、溶接する部分の管孔以外の管孔内又は既に管端溶接が行われた伝熱管内に到達するまで押し込む第3Aステップと、
前記各ガイド部材が前記管孔内又は既に管端溶接が行われた伝熱管内にそれぞれ挿入された状態で、前記各ガイド部材を管端溶接機本体に装着する第4Aステップと、
前記溶接トーチからのアークにより前記伝熱管の突出部分の外周囲と、前記伝熱管が挿通された前記一方の側板の管孔の周縁とを周溶接する第5ステップと、
を含むことを特徴とする管端溶接方法。
【請求項6】
前記第2ステップに先立ち、前記第3Aステップを行う請求項5記載の管端溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空冷式熱交換器の製造過程において、多数の伝熱管を箱型のヘッダーに接合するために行われる管端溶接技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、熱交換器の製造工程では、多数の伝熱管と、管支持用の板(管板と称する)とを接合するため、各伝熱管の端部外周囲と、伝熱管が挿通された管板の各孔の周縁とを周溶接する管端溶接と呼ばれている溶接作業が行われている(以下の特許文献1参照)。
【0003】
一方、空冷式熱交換器では、予め箱型にヘッダーを組み立てておき、この箱型のヘッダーに多数の伝熱管を管端溶接して伝熱管と箱型のヘッダーとを接合している。以下、図10及び図11を参照して、空冷式熱交換器における管端溶接作業を説明する。箱型のヘッダー100の一方の側板101には、多数の管孔102が形成されており、箱型のヘッダー100の他方の側板103には、多数のプラグ孔104が形成されている。管端溶接に際しては、管端溶接機105の支持筒106を、溶接する部分のプラグ孔104及び管孔102に挿入する。このとき、支持筒106の先端は、側板101の内側表面101aから例えば10mm程度奥まった位置まで挿入されている。このような状態では、支持筒106は、プラグ孔104及び管孔102の2点で支持される。そして、このような支持状態で、支持筒106の先端内部に設けられているタングステン電極を含む溶接トーチ(図示せず)を、支持筒106の軸回りに回転させ、伝熱管108の周縁の溶接を行っている。なお、図11において参照符号Aは溶接部分を示す。
【0004】
なお、参考までに述べると、空冷式熱交換器の製造に際しては、先ず、側板101に多数の伝熱管108を管端溶接し、その後、その側板101を含む複数の金属板を溶接して箱型のヘッダー100に組み立てることも可能である。このような方法であれば、箱型のヘッダー組み立て後に管端溶接する方法に比べて、溶接作業が容易である。しかしながら、空冷式熱交換器の場合、箱型のヘッダー組み立て前に管端溶接する方法は、以下の理由により採用できない。即ち、空冷式熱交換器のヘッダーは法令(高圧ガス保安法)等で溶接部は溶接後応力除去熱処理が義務付けられている。従って、仮に、先に管端溶接を行ってしまうと、ヘッダー自身の溶接部の熱処理ができなくなり、空冷式熱交換器の使用中に応力腐食割れ等の発生により漏れが生じる危険がある。そこで、現在はヘッダーを溶接で作製し、ヘッダー単体で応力除去熱処理を行った後、伝熱管を取付け、管端溶接を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−75870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例では、側板101の内側表面101aから10mm程度奥まった位置で管端溶接を行っている。
一方、このよう側板の内側表面から奥まった位置で管端溶接を行う構成以外に、法令上の要請から、図12に示すように伝熱管108を側板101から突き出し、この突出部分の角部(より詳しくは伝熱管の突出部分の外周囲及び伝熱管が挿通された側板の管孔周縁)を溶接する構成も存在している。このように突出部分の角部を溶接するのは以下の理由による。即ち、一般的な側板の内側表面位置で管端溶接を行う場合、法令上における強度計算は、管の端から側板の端までの長さに基づいて行う。そのため、側板の内側表面位置で管端溶接する場合、側板の端から管の端までの長さがどうしても側板の厚みよりも小さくなるため、側板の厚みそのものを厚くすることによって側板の端から管の端までの長さを大きくし、強度を保つようにしている。しかし、予め側板を厚くすることは、無駄な材料を必要として、コストの上昇を招来する。これに対して、伝熱管の突出部分の角部を溶接する場合は、側板の厚みそのものを厚くする必要がなく、無駄な材料の抑制が図れるという利点を有することから、突出部分の角部を溶接することが要請されている。
【0007】
本願発明は、上記課題に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、先に箱型ヘッダーを作製し、その後、箱形ヘッダーの側板から突出した伝熱管の角部(より詳しくは伝熱管の突出部分の外周囲及び伝熱管が挿通された側板の管孔周縁)を効率よく周溶接するために使用される管端溶接機、及び該管端溶接機を使用した管端溶接方法提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、対向する一対の側板のうちの一方の側板には管孔が形成され、他方の側板には前記管孔に対応したプラグ孔が形成された箱型のヘッダーにおいて、前記管孔に伝熱管の端部を挿入して前記一方の側板から突出させ、この伝熱管の突出部分の外周囲と、伝熱管が挿通された前記一方の側板の管孔の周縁とを周溶接するために使用される管端溶接機であって、管端溶接機本体と、前記管端溶接機本体の先端側に回転可能に設けられ、駆動手段により回転する回転部と、前記回転部の先端に設けられると共に、前記周溶接可能なように前記伝熱管の突出部分に対して外側で且つ所定角度傾斜して配置される溶接トーチとを備え、前記回転部は、駆動手段に連結され前方に向けて真っ直ぐに延びる回転部本体と、該回転部本体に連なり前記溶接トーチが前記プラグ孔から挿入可能なように1箇所若しくは複数個所で折れ曲げられた折曲部分とで構成され、前記管端溶接機本体には、前記回転部本体に平行に延びるガイド部材が着脱自在に装着され、管端溶接に際しては、前記ガイド部材の先端部を、溶接する部分の管孔以外の管孔内又は既に管端溶接が行われた伝熱管内に挿入することにより、前記回転部を支持するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
上記の如く、先端に溶接トーチを備える回転部を、1箇所若しくは複数個所で折れ曲げられた折曲部分を有する形状とすることにより、溶接トーチをプラグ孔から挿入可能となる。これにより、箱形ヘッダーの側板から突出した伝熱管の角部(より詳しくは伝熱管の突出部分の外周囲及び伝熱管が挿通された側板の管孔周縁)を周溶接する管端溶接機が実現される。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の管端溶接機であって、前記ガイド部材は、前記管端溶接機本体の左右両側に一対、又は斜め上側及び下側に一対設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3記載の発明は、向する一対の側板のうちの一方の側板には管孔が形成され、他方の側板には前記管孔に対応したプラグ孔が形成された箱型のヘッダーにおいて、前記管孔に伝熱管の端部を挿入して前記一方の側板から突出させ、この伝熱管の突出部分の外周囲と、伝熱管が挿通された前記一方の側板の管孔の周縁とを、請求項1記載の管端溶接機を用いて周溶接する管端溶接方法であって、伝熱管を管孔に挿入し、伝熱管の端部が前記一方の側板の内側表面から突出するまで押し込む第1ステップと、前記管端溶接機の前記回転部及び前記溶接トーチを、溶接する部分の管孔に対応したプラグ孔から挿入し、前記溶接トーチが当該管孔の手前側近傍位置に達するまで押し込む第2ステップと、前記ガイド部材を、溶接する部分の管孔に対応したプラグ孔以外のプラグ孔から挿入し、ガイド部材の先端が溶接する部分の管孔以外の管孔内又は既に管端溶接が行われた伝熱管内に到達するまで押し込む第3ステップと、前記ガイド部材が前記管孔内又は既に管端溶接が行われた伝熱管内に挿入された状態で、前記ガイド部材を管端溶接機本体に装着する第4ステップと、前記溶接トーチからのアークにより前記伝熱管の突出部分の外周囲と、前記伝熱管が挿通された前記一方の側板の管孔の周縁とを周溶接する第5ステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
上記構成により、プラグ孔から溶接機を挿入し、他のプラグ孔を介して溶接部分を目視して手作業で行う従来例の場合に比べて、作業性が向上する。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の管端溶接方法であって、前記第2ステップに先立ち、前記第3ステップを行うことを特徴とする。
また、請求項5記載の発明は、対向する一対の側板のうちの一方の側板には管孔が形成され、他方の側板には前記管孔に対応したプラグ孔が形成された箱型のヘッダーにおいて、前記管孔に伝熱管の端部を挿入して前記一方の側板から突出させ、この伝熱管の突出部分の外周囲と、伝熱管が挿通された前記一方の側板の管孔の周縁とを、請求項2記載の管端溶接機を用いて周溶接する管端溶接方法であって、伝熱管を管孔に挿入し、伝熱管の端部が前記一方の側板の内側表面から突出するまで押し込む第1ステップと、前記管端溶接機の前記回転部及び前記溶接トーチを、溶接する部分の管孔に対応したプラグ孔から挿入し、前記溶接トーチが当該管孔の手前側近傍位置に達するまで押し込む第2ステップと、前記一対のガイド部材を、溶接する部分の管孔に対応したプラグ孔以外のプラグ孔からそれぞれ挿入し、各ガイド部材の先端が、溶接する部分の管孔以外の管孔内又は既に管端溶接が行われた伝熱管内に到達するまで押し込む第3Aステップと、前記各ガイド部材が前記管孔内又は既に管端溶接が行われた伝熱管内にそれぞれ挿入された状態で、前記各ガイド部材を管端溶接機本体に装着する第4Aステップと、前記溶接トーチからのアークにより前記伝熱管の突出部分の外周囲と、前記伝熱管が挿通された前記一方の側板の管孔の周縁とを周溶接する第5ステップと、を含むことを特徴とする。
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の管端溶接方法であって、前記第2ステップに先立ち、前記第3Aステップを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の管端溶接機によれば、先端に溶接トーチを備える回転部を、1箇所若しくは複数個所で折れ曲げられた折曲部分を有する形状とすることにより、溶接トーチをプラグ孔から挿入可能となる。この結果、先に箱形ヘッダーを作製し、その後、箱形ヘッダーの側板から突出した伝熱管の角部(より詳しくは伝熱管の突出部分の外周囲及び伝熱管が挿通された側板の管孔周縁)を効率よく周溶接する管端溶接機が実現される。
【0021】
また、本発明の管端溶接方法によれば、プラグ孔から溶接機を挿入し、他のプラグ孔を介して溶接部分を目視して手作業で行う従来例の場合に比べて、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る管端溶接方法を用いて製造された空冷式熱交換器の正面図。
図2】空冷式熱交換器に備えられるヘッダー付近の分解斜視図。
図3図2とは反対方向から見たヘッダー付近の分解斜視図。
図4】空冷式熱交換器に備えられるヘッダーの縦断面図。
図5】穴効率の定義を説明するための図。
図6】実施の形態1に係る管端自動溶接機がヘッダーに挿入された状態を示す縦断面図。
図7】管芯出し金具を支持する支持軸の他の変形例を示す図。
図8】実施の形態2に係る管端自動溶接機がヘッダーに挿入された状態を示す縦断面図。
図9】実施の形態3に係る管端自動溶接機がヘッダーに挿入された状態を示す横断面図。
図10】従来例の管端溶接方法を説明するための図。
図11図10の一部拡大図。
図12】管端溶接方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
図1は本発明に係る管端溶接方法を用いて製造された空冷式熱交換器の正面図、図2は空冷式熱交換器に備えられるヘッダー付近の分解斜視図、図3図2とは反対方向から見たヘッダー付近の分解斜視図、図4は空冷式熱交換器に備えられるヘッダーの縦断面図である。本実施の形態に係る空冷式熱交換器1は、後述するように、管端自動溶接機を用いた管端溶接方法により製造されたものである。この空冷式熱交換器1は、一対の箱型のヘッダー2,2と、一対のヘッダー2,2間を連結する多数のフィン付伝熱管(いわゆるフィンチューブ)3とを有する。ヘッダー2における一対の側板2a,2bのうちの一方の側板2a(一対の箱型のヘッダー2の対向する側の側板)には、図2に示すように、多数の管孔4が千鳥格子状に配列されて形成されている。本実施の形態では、管孔4は千鳥格子状に配列されているが、本発明はこれに限定されず、例えば碁盤目状或いはその他の配列であってもよい。この各管孔4には、伝熱管3の端部3aが挿入され側板2aから突出しており、図4に示すように伝熱管の該突出部分(端部3aに相当)の外周囲と、伝熱管3が挿通された側板2aの管孔4の周縁とが周溶接されている。これにより、多数の伝熱管3は側板2aに支持固定されている。
【0026】
なお、図4において参照符号Aは溶接部分を示している。これにより、側板2aの厚みを薄くすることができるので、材料費の低減を図ることができる。特に、高級材料(例えば、チタン、インコロイ)を使用する場合にそのメリットが大きい。
【0027】
また、ヘッダー2における他方の側板2bには、図3に示すように、予め各管孔4に対応して管孔4と同様の配列で多数のプラグ孔5が形成されている。このプラグ孔5の内周面にはネジが切られており、プラグ6のネジ部が螺合している。
【0028】
ここで、管孔4の径は、20mm〜40mmの範囲である。プラグ孔5の径は、25mm〜50mmの範囲である。また、管孔4の径とプラグ孔5の径の比は、1.00:1.01〜1.00:1.50の範囲、好ましくは1.00:1.08〜1.00:1.25範囲である。上記のようにプラグ孔5の径及び、管孔4の径に対するプラグ孔5の径の比を規制するのは以下の理由による。即ち、プラグ孔5の径が大き過ぎる場合には、ヘッダー2の強度が小さくなり、それを解消しようとすると側板2bの板厚を大きくする必要があり、材料費が高くなるからである。
【0029】
一方、プラグ孔5の径が小さ過ぎる場合には、伝熱管3の交換作業を行うことが困難となるからである。より詳しく説明すると、伝熱管3の交換作業を行う際には、プラグ6をプラグ孔5から取り外し、カッター等の切削工具等により溶接金属を除去する必要がある。このとき、プラグ孔5の径が小さ過ぎる場合には、管端溶接部を充分に目視できず、溶接金属を完全に除去できない場合が生じ、そのため、伝熱管3の端部を側板2aから剥がすことが困難になるという事態が生じるからである。
【0030】
そこで、プラグ孔5の径及び管孔4の径に対するプラグ孔5の径の比は、ヘッダー2の強度と材料費、さらには伝熱管3の交換時の作業性等を総合的に勘案して、最適な範囲に設定されている。
なお、管孔4の穴効率は、45%〜70%の範囲であり、好ましくは52%〜64%の範囲である。プラグ孔5の開口率は、40%〜65%の範囲であり、好ましくは45%〜60%の範囲である。ここで、穴効率とは、図5に示すように、穴のピッチがpで、穴の直径がdとすると、穴効率(%)={(p−d)/p}×100で示される。
【0031】
図6は管端自動溶接機がヘッダーに挿入された状態を示す縦断面図である。この図6を参照して、本実施の形態において使用される管端自動溶接機の構成を説明する。管端自動溶接機10は、管端自動溶接機本体11と、本体11に連結された細長い回転部12とを有する。回転部12は、本体11内に設けられたモータにより回転する。この回転部12の先端にはタングステン電極13を含む溶接トーチ14が備えられている。タングステン電極13は、伝熱管3の突出部分3aに対して外側で且つ所定角度傾斜して配置されている。回転部12は、本体11内に設けられたモータに連結され前方に向けて真っ直ぐに延びる回転部本体12aと、回転部本体12aに連なり溶接トーチ14がプラグ孔5から挿入可能なように折れ曲げられた折曲部分12bとで構成されている。なお、溶接トーチ14をプラグ孔5から挿入可能とするためには、1箇所に限らず、複数個所で折れ曲げるように構成してもよい。
【0032】
また、溶接トーチ14の前方には、砲弾状の管芯出し金具15が設けられている。管芯出し金具15は、回転部本体12aの軸芯と溶接すべき伝熱管3の軸芯を正確に一致させるために設けられている。この管芯出し金具15は支持軸16によって回転部12に支持されている。即ち、支持軸16の一端側は回転部12に固着されると共に、先端側に向けて折り曲げられ先端部が管芯出し金具15の中心部に挿入された構成となっている。このような構成であれば、支持軸16の先端部の軸芯と回転部本体12aの軸芯とが一致した構成となるので、管芯出しの精度が上がり、溶接の精度が向上することになる。
なお、図7に示すように、支持軸16は管芯出し金具15の中心から偏心した位置で支持する構成であってもよい。このように支持軸16が偏心した位置で支持する構成とすることにより、回転部12の先端(即ち溶接トーチ14)のぶれを少なくでき、溶接の精度が向上する。この点について以下に詳述する。支持軸16は回転部12に固定されているので、支持軸16の軸芯と溶接トーチ14との間隔は一定である。一方、管芯出し金具15の外壁と伝熱管3の内壁との間には隙間が存在している。そして、支持軸16の軸芯と溶接トーチ14との間隔は、支持軸16を管芯出し金具15の中心位置に配置した場合よりも管芯出し金具15の中心から偏心した位置に配置した場合の方が小さい。従って、溶接トーチ14が伝熱管3の外周囲を1回転する際の径方向に関する変位は、支持軸16を偏心した位置に配置する構成の方が少ない。この結果、回転部12の先端(即ち溶接トーチ14)のぶれを少なくでき、溶接の精度が向上することになる。さらに、偏心位置を適宜変化させれば、伝熱管3の外周に最も近接した位置から最も離れた位置までの希望する領域に溶接範囲を設定することが可能となる。
【0033】
また、回転部12の先端側は管芯出し金具15によって支持され、回転部12の後側は吸盤20、ピン21等により支持されている。従って、回転部12の支持状態の安定化が図られており、溶接トーチ14にぶれが生じることなく管端溶接を行うことができるようになっている。
【0034】
次いで、上記構成の管端自動溶接機10を用いて空冷式熱交換器の製造工程において行われる管端溶接方法について説明する。
先ず、ヘッダー2の側板2aにおける管孔4に伝熱管3を挿入し、側板2aから2〜4mm程度突出させておく。一方、管端自動溶接機10の溶接トーチ14及び管芯出し金具15をプラグ孔5から挿通させる。このとき、回転部12は折曲部分12bを有することから、プラグ孔5に回転部12を進入させる角度を適宜変えつつ、回転部12を徐々に進入させることにより、溶接トーチ14及び管芯出し金具15をプラグ孔5から挿通させることが可能となる。そして、図6に示すように管芯出し金具15を伝熱管3内に挿入させた状態とする。なお、吸盤20及びピン21が側板2bの外側面に接触することにより、溶接トーチ14の進入方向に関する位置決めがなされる。このような状態で、回転部12の回転により、溶接トーチ14が回転部本体12aの軸線L1回りに回転し、これにより、タングステン電極13からのアークが伝熱管3の突出部分3aの外周上に沿って移動し、伝熱管3の突出部分3aの外周囲と、伝熱管3が挿通された側板2aの管孔4の周縁とが周溶接されることになる。なお、管端自動溶接機10は溶加材としての溶接ワイヤを自動供給する構成を含んでいてもよい。
【0035】
なお、一方のヘッダー2の側板2aにおける管孔4の横方向一列の管端溶接作業終了後は、上段又は下段に移行して同様の作業を行う。また、他方のヘッダー2の側板2aに関しも伝熱管3の端部の管端溶接作業を行う。こうして、多数の伝熱管3の一端が、一方のヘッダー2の側板2aに支持固定され、多数の伝熱管3の他端が、他方のヘッダー2の側板2aに支持固定される。なお、プラグ孔5にはプラグ6が装着され、漏れのない程度の締め付けトルクで締め付けられ、プラグ孔5が密閉され、空冷式熱交換器1が得られることになる。
【0036】
(実施の形態2)
図8は実施の形態2に係る管端自動溶接機の縦断面図である。この図8は管端自動溶接機がヘッダーに挿入された状態を示している。本実施の形態に係る管端自動溶接機10Aは、実施の形態1に係る管端自動溶接機10に備えられていた管芯出し金具15、吸盤20及びピン21等は省略されている。また、回転部12は、回転部本体12aと複数(本実施の形態では2個)の折曲部分12bとで構成されている。このような極めてシンプルな構造の管端自動溶接機10Aであっても、実施の形態1に係る管端自動溶接機10と同様な方法で箱型ヘッダーを備えた空冷式熱交換器における伝熱管3の管端溶接を行うことができる。
【0037】
(実施の形態3)
図9は実施の形態3に係る管端自動溶接機がヘッダーに挿入された状態を示す横断面図である。実施の形態3は、管端自動溶接機の固定を別の方法で行ったものである。つまり、溶接する部分の管孔に対応したプラグ孔以外のプラグ孔に、ガイド部材35を挿入することにより、管端自動溶接機を固定するものである。
実施の形態3に係る管端自動溶接機10Bは、実施の形態2の管端自動溶接機10Aに類似すると共に、本体11の左右両側部に取付部34がそれぞれ設けられ、この取付部34に長手状のガイド部材35が着脱自在に装着できるようになっている。なお、図9では管端自動溶接機10Bを上方から見ている図のため、回転部12が折曲していることが明確でないが、実際は回転部12は折曲した形状である。即ち、本実施の形態3の管端自動溶接機10Bにおける回転部12は、実施の形態1,2と同様に回転部本体12aと、少なくとも1以上の折曲部分12bとで構成されている。
ガイド部材35は、プラグ孔5を挿通可能な本体部35aと、先端部35bとを有する。
管端溶接を行うに際しては、先に回転部12をプラグ孔5から挿入し、次いで、ガイド部材35を、回転部12が挿入されたプラグ孔5の横隣のプラグ孔5から挿入し、その状態でガイド部材35を取付部34に装着する。なお、先にガイド部材35をプラグ孔5から挿入し、次いで、回転部12を挿入するようにしてもよい。
なお、当該溶接する部分の管孔4の隣の管孔4に伝熱管3が溶接されている場合に、当該伝熱管3内にガイド部材35の先端を挿入して回転部12の支持状態を安定化するようにしてもよく、また、当該溶接する部分の管孔4の隣の管孔4に伝熱管3が溶接されていない場合に、当該隣の管孔4内にガイド部材35の先端を挿入して回転部12の支持状態を安定化するようにしてもよい。
【0038】
次いで、上記構成の空冷式熱交換器の製造工程において行われる管端溶接方法について説明する。なお、以下の管端溶接方法では、先に回転部12をプラグ孔5から挿入し、次いで、ガイド部材35を、回転部12が挿入されたプラグ孔5の横隣のプラグ孔5から挿入する方法で、且つ、当該溶接する部分の管孔4の隣の管孔4内にガイド部材35の先端部35bを挿入して、管端溶接を行う回転部12の支持状態の安定化を図る場合の例を示す。
【0039】
ヘッダー2の側板2aにおける管孔4に伝熱管3を挿入し、側板2aから2〜4mm程度突出させておく。一方、管端自動溶接機10Bの溶接トーチをプラグ孔5から挿通させる。このとき、回転部12は折曲部分12bを有することから、プラグ孔5に回転部12を進入させる角度を適宜変えつつ、回転部12を徐々に進入させることにより、溶接トーチをプラグ孔5から挿通させることが可能となる。
次いで、ガイド部材35を回転部12の挿通したプラグ孔5の右横隣りのプラグ孔5から挿入し、その先端35bが当該溶接する部分の管孔4の右横隣りの管孔4内に到達するまで押し込まれる。これにより、ガイド部材35が管孔4及びプラグ孔5で支持固定されることにより、回転部12の支持状態は安定しており、回転部12の先端(即ち溶接トーチ)が、ぶれることはなく、安定した支持状態が維持される。
【0040】
次いで、回転部12の先端に備えられた溶接トーチからのアークにより管端溶接を行う。こうして、1つの管に関する管端溶接が終了すると、回転部12及びガイド部材35を個別に引き抜き、管端自動溶接機を横隣りに移動し、次いで、上記同様な処理を行う。
【0041】
なお、横方向の一列の管端溶接作業終了後は、上段又は下段に移行して同様の作業を行う。こうして、多数の伝熱管3の一端が側板2aに支持固定され、多数の伝熱管3の他端が側板2bに支持固定される。
なお、プラグ孔5にはプラグ6が装着され、漏れのない程度の締め付けトルクで締め付けられ、プラグ孔5が密閉され、空冷式熱交換器1が得られることになる。
【0042】
また、右端又は左端を除く中央位置にある伝熱管3を管端溶接する場合には、ガイド部材35を2個準備し、回転部12の挿通したプラグ孔5の左右両横隣りのプラグ孔5に挿入するようにしてもよい。このようにすれば、さらに支持点が多くなり、回転部12の支持状態をさらに安定化させることができる。
【0043】
なお、上記実施の形態では、ガイド部材35は回転部12の左右両側に装着する構成とされていたが、回転部12の斜め上側及び斜め下側に装着する構成であってもよい。この場合には、ガイド部材35は回転部12が挿入されるプラグ孔の斜め隣のプラグ孔5に挿入されることになる。
さらに、上記実施の形態では、ガイド部材35は回転部12が挿入されるプラグ孔の1つ横隣のプラグ孔5に挿入されるように構成されていたが、2つ若しくはそれ以上離れたプラグ孔5に挿入されるように構成されていてもよい。
【0044】
(その他の事項)
上記実施の形態ではフィン付伝熱管3を使用したが、フィンのない伝熱管3を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、空冷式熱交換器の管端溶接方法に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1:空冷式熱交換器 2a,2b:側板
3:伝熱管 3a:伝熱管3の突出部分
4:管孔 5:プラグ孔
6:プラグ 10,10A,10B:管端自動溶接機
12:回転部 12a:回転部本体
12b:折曲部分 14:溶接トーチ
15:管芯出し金具 16:支持軸
34:取付部 35:ガイド部材
図1
図2
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図4
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図7
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図12