(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の凝縮器は、熱交換器が凝縮器の表裏面に対して垂直に配置されているため、このような従来の凝縮器を車両側面に設置すると、隣接する熱交換器の間に走行風が流れ込みにくくなり、熱交換効率が落ちる。その結果、必要放熱量を確保するために、本来の大きさよりも更に大型化する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、凝縮器を大型化することなく熱交換効率を向上させることができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る熱交換器は、車両の側面に配置される凝縮器に複数設けられる熱交換器であって、車両上下方向に延びる扁平板状の外形に形成されて、車両前後方向前側が車幅方向外側を向くように車両前後方向に対して傾斜している。
【0009】
本発明に係る熱交換器によれば、車両上下方向に延びる扁平板状の外形に形成されて、車両前後方向前側が車幅方向外側を向くように車両前後方向に対して傾斜しているため、車両の走行により発生する走行風が熱交換器の間に入り込み易くなる。このため、凝縮器を車両の側面に配置したとしても、熱交換器における熱交換を促進して、熱交換効率の低下を抑制することができる。これにより、凝縮器を大型化することなく熱交換効率を向上させることができる。
【0010】
この場合、車両前後方向に対する傾斜角度が5°以上15°以下であるものとすることができる。このように、車両前後方向に対する傾斜角度が5°以上15°以下とすれば、コアンダ効果により、走行風の空力特性の変化を抑制しつつ、熱交換器の間に走行風を入り込ませるとともに、熱交換器の間から走行風を抜け出させることができる。
【0011】
また、整流板は、熱交換器の傾斜方向に沿って熱交換器の端部から車幅方向外側に向けて延びる第一整流板部と、第一整流板部の先端から車両前後方向前方に延びる第二整流板部と、を備えるものとすることができる。このような第一整流板部及び第二整流板部を備えることで、走行風を整流しながら熱交換器の間に入り込ませることができるとともに、走行時の飛び石などから熱交換器を保護することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、凝縮器を大型化することなく熱交換効率を向上させることができる熱交換器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態は、本発明に係る熱交換器を、トラック等の車両に搭載されるランキンサイクルシステムの凝縮器に適用したものである。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
まず、本実施形態に係る熱交換器を説明する前に、ランキンサイクルシステムの基本原理について簡単に説明する。
【0016】
図1は、ランキンサイクルシステムの基本原理図である。
図1に示すように、ランキンサイクルシステムは、エンジン廃熱(エンジン冷却水や排気ガスなどの熱)を利用して作動媒体を蒸発させる蒸発器1と、蒸発器1で蒸発された気体の作動媒体を利用して発電を行う膨張機付発電機2と、膨張機付発電機2において発電に利用された気体の作動媒体を液体に凝縮する凝縮器3と、凝縮器3で凝縮された作動媒体の液体を蒸発器1に送り出す媒体用ポンプ4と、を備えている。そして、この凝縮器3において熱交換を行う熱交換器が、本実施形態に係る熱交換器である。
【0017】
次に、本実施形態に係る熱交換器が設けられる凝縮器3の配置について説明する。
【0018】
図2は、凝縮器の配置を示す図であって、凝縮器が搭載される車両の概略平面図である。なお、図において、「Fr」及び「Rr」は、車両前後方向における「前」及び「後」を示しており、「Rh」及び「Lh」は、車幅方向における「右」及び「左」を示している。
【0019】
図2に示すように、凝縮器3は、トラックやバス等の車両10に搭載されるとともに、当該車両10の側面に配置されるものである。凝縮器3は、車両10の側面に配置されれば、車両10の如何なる場所に配置してもよいが、車両10が
図2に示す構成の場合は、以下の場所に配置することができる。
【0020】
図2に示す車両10には、エンジン21が搭載されるキャブ22の下方に前輪23(右前輪23R及び左前輪23L)が配置されており、キャブ22の後方に後輪24(右後輪24R及び左後輪24L)が配置されている。
【0021】
車両10の左側面には、左前輪23Lと左後輪24Lとの間に、ランキンサイクルユニット25と燃料タンク26とが前から順に配置されている。そして、燃料タンク26と左後輪24Lとの間と、左後輪24Lと車両10の後端との間に、空間が形成されている。なお、ランキンサイクルユニット25には、
図1に示した蒸発器1、膨張機付発電機2及び媒体用ポンプ4が設けられている。なお、ランキンサイクルユニット25の各構成要素は、周知の物を用いることができる。
【0022】
車両10の右側面には、右前輪23Rと右後輪24Rとの間に、マフラー27とバッテリ・補機類28とが前から順に配置されている。そして、バッテリ・補機類28と右後輪24Rとの間と、右後輪24Rと車両10の後端との間に、空間が形成されている。
【0023】
そこで、凝縮器3は、車両10の側面において空間が形成される場所、すなわち、燃料タンク26と左後輪24Lとの間(a)、バッテリ・補機類28と右後輪24Rとの間(b)、左後輪24Lと車両10の後端との間(c)、右後輪24Rと車両10の後端との間(d)の何れかに配置することができる。この場合、凝縮器3を配置する優先順位は、凝縮器3とランキンサイクルユニット25との間の配管を短くして効率を上げる観点から、(a)(b)(c)(d)の順となる。なお、凝縮器3は、必ずしも一つである必要はなく、二以上であってもよい。
【0024】
次に、本実施形態に係る熱交換器が設けられる凝縮器の構成について説明する。
【0025】
図3は、本実施形態に係る熱交換器が設けられる凝縮器の正面図である。
図3に示すように、凝縮器3は、所謂チューブ型の熱交換器であり、車両前後方向に直線状に延びるアッパータンク11と、車両前後方向に直線状に延びてアッパータンク11と上下方向に対向配置されるロアタンク12と、アッパータンク11とロアタンク12とに連結されて上下方向に延びる複数の熱交換器13と、熱交換器13間に配置されるフィン14と、を備えている。
【0026】
アッパータンク11は、膨張機付発電機2(
図1参照)に連通されるとともに、熱交換器13を支持する上側支持容器部である。
【0027】
ロアタンク12は、媒体用ポンプ4(
図1参照)に連通されるとともに、熱交換器13を支持する下側容器部である。
【0028】
熱交換器13は、アッパータンク11及びロアタンク12に連通されて内部に流路が形成された、所謂チューブと呼ばれるものである。この熱交換器13は、アッパータンク11及びロアタンク12の延在方向に沿って直線状に配列されており、隣接する熱交換器13が所定間隔に離間されている。このため、隣接する熱交換器13の間において外気の通過が可能となっている。
【0029】
フィン14は、熱交換器13に当接されて熱交換器13の熱交換を促進する放熱板である。
【0030】
このため、車両10の走行により発生する走行風は、凝縮器3の一方側面側から熱交換器13の間に入り込み、凝縮器3の他方側面側に抜けていく。このとき、この走行風及び当該走行風に冷却されたフィン14と熱交換器13とが熱交換されて、熱交換器13内を流れる作動媒体が冷却される。これにより、膨張機付発電機2からアッパータンク11を介して送られてきた気体の作動媒体は、熱交換器13を通過する際に液体に凝縮されて、ロアタンク12を介して媒体用ポンプ4に送られる。
【0031】
次に、本実施形態に係る熱交換器13の構成及び配置について説明する。
【0032】
図4は、
図3に示すIV−IV線における概略断面図であって、車両10の左側(
図2の下側)に配置される凝縮器3を示している。
図5は、熱交換器の横断面図である。
【0033】
図3〜
図5に示すように、熱交換器13は、内部に作動媒体が流れる流路15が形成されており、車両上下方向に延びる扁平板状の外形に形成されている。そして、熱交換器13は、車両前後方向前側が車幅方向外側を向くように車両前後方向に対して傾斜しており、車幅方向外側に向けられる凝縮器3の一方側面3A(又は一方側面3A付近)から車幅方向内側に向けられる凝縮器3の他方側面3B(又は他方側面3B付近)まで延びている。なお、凝縮器3の一方側面3Aは、アッパータンク11及びロアタンク12の車幅方向外側の側面を結んだ面となり、凝縮器3の他方側面3Bは、アッパータンク11及びロアタンク12の車幅方向内側の側面を結んだ面となる。
【0034】
熱交換器13の車両前後方向に対する傾斜角度αは、特に限定されるものではないが、走行風Wの空力特性の変化を抑制する観点から、5°以上15°以下であることが好ましい。なお、全ての熱交換器13の傾斜角度αが同一である必要はないが、全ての熱交換器13の傾斜角度αが同一であることが好ましい。
【0035】
そして、車両10を走行させると、走行風Wが、凝縮器3の一方側面3Aから各熱交換器13の間に入り込み、各熱交換器13により車幅方向内側かつ車両前後方向後方に案内されて、凝縮器3の他方側面3Bから抜けていく。このとき、走行風W及び当該走行風Wに冷却されたフィン14と熱交換器13とが熱交換されるため、膨張機付発電機2から凝縮器3に送られてきた気体の作動媒体は、熱交換器13を通過する際に液体に凝縮されて、媒体用ポンプ4に送り出される。
【0036】
このように、本実施形態に係る熱交換器13によれば、車両上下方向に延びる扁平板状の外形に形成されて、車両前後方向前側が車幅方向外側を向くように車両前後方向に対して傾斜しているため、車両10の走行により発生する走行風Wが熱交換器13の間に入り込み易くなる。このため、凝縮器3を車両10の側面に配置したとしても、熱交換器13における熱交換を促進して、熱交換効率の低下を抑制することができる。これにより、凝縮器3を大型化することなく熱交換効率を向上させることができ、ランキンサイクルシステムの出力を上げることができる。
【0037】
しかも、熱交換器13の車両前後方向に対する傾斜角度αが5°以上15°以下であるため、コアンダ効果により、走行風Wの空力特性の変化を抑制しつつ、熱交換器13の間に走行風Wを入り込ませるとともに、熱交換器13の間から走行風Wを抜け出させることができる。
【0038】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る熱交換器の構成及び配置について説明する。第2の実施形態は、基本的に第1の実施形態と同様であるが、熱交換器の車幅方向外側に整流板が取り付けられている点のみ、第1の実施形態と相違する。このため、第1の実施形態と相違する点のみ説明し、第1の実施形態と同様の点については説明を省略する。
【0039】
図6は、第2の実施形態に係る熱交換器を示す概略断面図であり、
図4に対応する図である。
図7は、
図6に示す熱交換器の概略側面図である。
【0040】
図6及び
図7に示すように、本実施形態に係る熱交換器33は、内部に作動媒体が流れる流路34が形成されており、車両上下方向に延びる扁平板状の外形に形成されている。また、熱交換器33は、車両前後方向前側が車幅方向外側を向くように車両前後方向に対して傾斜している。なお、熱交換器33の車両前後方向に対する傾斜角度は、特に限定されるものではないが、第1の実施形態に係る熱交換器13と同様に、5°以上15°以下であることが好ましい。
【0041】
そして、熱交換器33は、凝縮器3の他方側面3B(又は他方側面3B付近)から凝縮器3の一方側面3Aの手前まで延びており、熱交換器33における凝縮器3の一方側面3A側の端部には、熱交換器33の延在方向に沿って延びる整流板35が設けられている。
【0042】
整流板35は、熱交換器33の端部から凝縮器3の一方側面3A(又は一方側面3A付近)まで延びる第一整流板部36と、第一整流板部36の先端から車両前後方向前方に延びる第二整流板部37と、を備えている。
【0043】
第一整流板部36は、熱交換器33の車両前後方向後側の面から、熱交換器33の傾斜方向と平行な線(熱交換器33の傾斜方向に延びる線)に沿って延びている。このため、第一整流板部36の車両前後方向に対する傾斜角度は、熱交換器33の車両前後方向に対する傾斜角度と同じである。
【0044】
第二整流板部37は、車両前後方向前側に配置される第二整流板部37との間に空間を形成するように、第一整流板部36の先端から車両前後方向前側に向けて延びている。このため、凝縮器3の一方側面3Aは、第二整流板部37により覆われており、第二整流板部37に形成された流入口38からのみ、凝縮器3の一方側面3Aの内側に走行風Wが入り込めるようになっている。
【0045】
そして、車両10を走行させると、走行風Wは、流入口38から凝縮器3の一方側面3Aの内側に入り込み、第一整流板部36により車幅方向内側かつ車両前後方向後方に案内されて熱交換器33に到達する。そして、この走行風Wは、更に、熱交換器33により車幅方向内側かつ車両前後方向後方に案内されて、凝縮器3の他方側面3Bから抜けていく。このとき、走行風W及び当該走行風Wに冷却されたフィン14と熱交換器33とが熱交換されるため、膨張機付発電機2から凝縮器3に送られてきた気体の作動媒体は、熱交換器33を通過する際に液体に凝縮されて、媒体用ポンプ4に送り出される。
【0046】
このように、本実施形態に係る熱交換器33によれば、整流板35を備えることで、走行風Wを整流しながら熱交換器13の間に入り込ませることができる。しかも、第二整流板部37により、車両側面視において熱交換器33の一部を隠すことができるため、走行時の飛び石などから熱交換器13を保護することができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0048】
上記実施形態において、熱交換器は、1本のチューブ状の部材で構成されるものとして説明したが、
図8〜
図11に示す熱交換器のように、車両上下方向に延びる扁平板状の外形に形成されていれば、如何なる構造であってもよい。なお、
図8〜
図11は、熱交換器を示す概略断面図であり、
図4に対応する図である。
【0049】
図8に示す熱交換器41は、上記実施形態の熱交換器と基本的には同様であり、内部に形成される流路42内に、車両上下方向に延びる複数の仕切板43を挿入し、当該流路42を細かく仕切ったものである。このように流路42を細かくすることで、作動媒体と熱交換器41の壁面との接触面積が増えるため、熱交換効率を向上させることができる。
【0050】
図9に示す熱交換器51は、矩形の平板状部材52の片面に溝加工を施すことで細い溝53を多数形成し(
図9(a)参照)、この平板状部材52を積層することで、外形を扁平板状に形成したものである(
図9(b)参照)。なお、溝53が露出される平板状部材52には、当該溝53を覆うように、別の平板状部材55が積層されている。このように熱交換器を構成すれば、熱交換器51の厚さ方向にも複数段の流路54が形成されることから、作動媒体と熱交換器41の壁面との接触面積が更に増えるため、熱交換効率を更に向上させることができる。
【0051】
図10に示す熱交換器61は、内部に流路63が形成された細い円管部材62を一列に並べたものである。これにより、作動媒体と熱交換器61の壁面との接触面積が増えるため、熱交換効率を向上させることができる。
【0052】
図11に示す熱交換器71は、
図10に示す円管部材62よりも細い径を有して内部に流路73が形成された円管部材72を2以上の列に並べたものである。このように熱交換器を構成すれば、
図10に示す熱交換器61よりも、作動媒体と熱交換器61の壁面との接触面積が増えるため、熱交換効率を更に向上させることができる。
【0053】
また、上記実施形態では、
図2を参照してランキンサイクルユニット25の配置を具体的に説明したが、ランキンサイクルユニット25の配置は特に限定されるものではなく、車両の任意の位置にランキンサイクルユニット25を配置することが可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、車両としてトラックを例示しているが、例えばバス、トラクタ又はその他の車両でもよい。