(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芳香環を有する単官能性(メタ)アクリル系モノマー(A)、(A)以外の1分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を平均して少なくとも一個有する化合物(B)、及び光重合開始剤(C)、を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線が直接届かない部分を有する基材に塗布し、活性エネルギー線を照射させることを特徴とする、活性エネルギー線が直接届かない部分の硬化性組成物を硬化させる方法。
(A)成分が、フェノール誘導体、ジヒドロキシベンゼン誘導体、安息香酸誘導体、フタル酸誘導体、および芳香環とエチレン性不飽和基が直接結合した化合物、から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線が直接届かない部分の硬化性組成物を硬化させる方法。
(A)成分が、エトキシ化o−フェニルフェニルアクリレート、フェノールEO変性アクリレート、パラクミルフェノールEO変性アクリレートから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の活性エネルギー線が直接届かない部分の硬化性組成物を硬化させる方法。
(B)成分が、有機重合体又はオリゴマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線が直接届かない部分の硬化性組成物を硬化させる方法。
(B)成分の有機重合体又はオリゴマーが、ポリシロキサン、ポリエーテル、及び、ビニル系重合体から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項4に記載の活性エネルギー線が直接届かない部分の硬化性組成物を硬化させる方法。
(B)成分の有機重合体又はオリゴマーが、(メタ)アクリル系重合体であることを特徴とする請求項4または5に記載の活性エネルギー線が直接届かない部分の硬化性組成物を硬化させる方法。
(B)成分の数平均分子量が3000超過であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の活性エネルギー線が直接届かない部分の硬化性組成物を硬化させる方法。
(メタ)アクリロイル基重合性の基を有し、(A)成分以外の数平均分子量が3000以下であるオリゴマー、及び/又はモノマー(D)を更に含有する請求項8に記載の活性エネルギー線が直接届かない部分の硬化性組成物を硬化させる方法。
(B)成分の有機重合体又はオリゴマーの分子量分布が1.8未満であることを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の活性エネルギー線が直接届かない部分の硬化性組成物を硬化させる方法。
(B)成分のビニル系重合体の主鎖がリビングラジカル重合法により製造されたものであることを特徴とする請求項5〜10のいずれかに記載の活性エネルギー線が直接届かない部分の硬化性組成物を硬化させる方法。
(B)成分の重合性の炭素−炭素二重結合が分子鎖末端にあることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の活性エネルギー線が直接届かない部分の硬化性組成物を硬化させる方法。
光重合開始剤(C)の添加量が(B)成分100重量部に対して、0.001〜10重量部、芳香環を有する単官能性(メタ)アクリル系モノマー(A)の添加量が(B)成分の合計100重量部あたり、5〜200重量部であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の活性エネルギー線が直接届かない部分の硬化性組成物を硬化させる方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
活性エネルギー線硬化性組成物
以下に本発明の活性エネルギー線硬化性組成物について詳述する。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、芳香環を有する単官能性(メタ)アクリル系モノマー(A)、(A)成分以外の1分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を平均して少なくとも一個有する化合物(B)、及び光重合開始剤(C)、を含有する事を特徴とする。芳香環を有する単官能性(メタ)アクリル系モノマー(A)を含有することにより、活性エネルギー線が散乱し、直接活性エネルギー線が当たらない部分まで硬化させることが可能となる。
【0026】
活性エネルギー線が直接当たらない部分とは、活性エネルギー線を妨げる物質、部分によって、陰になり、直進する活性エネルギー線が直接当たらない部分のことである。
【0027】
<<芳香環を有する単官能性(メタ)アクリル系モノマー(A)>>
本発明で用いられる芳香環を有する単官能性(メタ)アクリル系モノマー(A)(以下、「単官能性芳香族化合物(A)」と略すことがある。)としては、その構造中に(メタ)アクリロイル基を含有するモノ(メタ)アクリレート系化合物である。
【0028】
単官能性芳香族化合物(A)の含有する芳香環の個数としては、1つ含有するものでもよいし、複数個含有するものでもよい。粘着物性のバランスが取れる点では芳香環を1つ含有する化合物であることが好ましく、効率良く、粘着層の屈折率や複屈折を制御できる点では芳香環を2つ含有する化合物であることが好ましいが、特には、芳香環を2つ含有するものであることが好ましい。
【0029】
上記単官能性芳香族化合物(A)として、具体的には、エーテル系の単官能性芳香族化合物(A1)、エステル系の単官能性芳香族化合物(A2)、その他単官能性芳香族化合物(A3)等が挙げられ、エーテル系の単官能性芳香族化合物(A1)としては、例えばフェノール誘導体、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等のジヒドロキシベンゼン誘導体等が挙げられ、エステル系の単官能性芳香族化合物(A2)としては、例えば安息香酸誘導体、フタル酸誘導体等が挙げられ、その他単官能性芳香族化合物(A3)としては、エーテル結合、エステル結合を介さずに、芳香環とアクリロイル基等のエチレン性不飽和基が結合した化合物が挙げられる。
【0030】
フェノール誘導体としては、フェノールの水酸基の水素原子が(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位で置き換えられた構造の誘導体(A1−1)であることが好ましく、ジヒドロキシベンゼン誘導体としては、レゾルシノールの有する2つの水酸基の一方もしくは両方の水素原子が(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位で置き換えられた誘導体(A1−2)であることが好ましい。
【0031】
かかる(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位としては、オキシアルキレン構造も含有する下記一般式(2)で示されるものが好ましい。
【0033】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Xはアルキレン基、nは1以上の整数である。)
上記、一般式(2)中のXはアルキレン基であり、中でも、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、特には、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、殊にはエチレン基が好ましい。
【0034】
nが2以上のポリオキシアルキレン鎖部位の場合は、同一オキシアルキレン鎖のホモ重合体でもよいし、相異なるオキシアルキレン鎖がランダム或いはブロック状に共重合したものでもよい。また、上記アルキレン基は置換基を有していてもよく、置換基としては、通常ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、スルファニル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられるが、これらの中でも水酸基が好ましい。
【0035】
上記一般式(2)中のnは1以上の整数であり、好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜2あり、更に好ましくは2である。かかるnの値が大きすぎるとアクリル系樹脂の耐湿熱性が低下する傾向があり、また、屈折率や複屈折を制御するためにもアルキレン基やオキシアルキレン構造が短い方が良いので、nが小さいことが好ましい。
【0036】
上記(A1−1)の具体例としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェニルジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェニルエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のアルキルフェノールのアルキレングリコール変性(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられ、市販品としては、フェニルポリエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート#193」)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート#220」)、フェニルジエチレングリコールアクリレート(共栄社製、商品名「ライトアクリレートP2HA」)、エトキシ化o−フェニルフェニルアクリレート(新中村化学社製、商品名「NKエステルA−LEN−10」)、フェノールEO変性アクリレート(商品名:M101−A、東亜合成株式会社製)、パラクミルフェノールEO変性アクリレート(商品名:M110−S、東亜合成株式会社製)等が挙げられる。
【0037】
上記(A1−2)の具体例としては、例えば、3−ヒドロキシベンゼンエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシベンゼンプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシベンゼンブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシベンゼンフェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシベンゼンフェニルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシベンゼンフェニルジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシベンゼンフェニルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。 安息香酸誘導体としては、安息香酸のカルボキシル基の水素原子が(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位で置き換えられた構造の誘導体(A2−1)であることが好ましく、フタル酸誘導体としては、フタル酸の有する2つのカルボキシル基の一方もしくは両方の水素原子が(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位で置き換えられた構造の誘導体(A2−2)であることが好ましい。
【0038】
かかる(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位としては、前述した一般式(2)で示されるものが好ましい。
【0039】
上記誘導体(A2−1)の具体例としては、ネオペンチルグリコールの一方の水酸基がアクリル酸とエステル化され、他方の水酸基が安息香酸とエステル化されたエステル化物(共栄社化学社製、商品名「BA−104」)等が挙げられる。
【0040】
上記誘導体(A2−2)の具体例としては、市販品として、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート#2311HP」)、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート#2000」)、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート#2100」)、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸(新中村化学工業社製。商品名「CB−1」)等が挙げられる。
【0041】
(A3)の具体例としては、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、5−フェニルペンチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート、4−フェニルブチルアクリレート、5−フェニルペンチルアクリレート、および3−ベンジルオキシプロピルアクリレート等が挙げられ、市販品としては、ベンジルメタクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名ビスコート#160)等が挙げられる。上記単官能性芳香族化合物(A)としては、エーテル系の単官能性芳香族化合物(A1)が好ましく、フェノールの水酸基の水素原子が(メタ)アクリロイル基を含有する構造部位で置き換えられた構造の誘導体(A1−1)であることかより好ましく、エトキシ化o−フェニルフェニルアクリレート、フェノールEO変性アクリレート、パラクミルフェノールEO変性アクリレートが特に好ましい。
【0042】
単官能性芳香族化合物(A)の分子量としては、通常200〜10,000、好ましくは210〜1,000、特に好ましくは220〜500である。かかる分子量が大きすぎると芳香環濃度の減少により、屈折率の低下や複屈折調整がしにくくなる傾向があり、小さすぎると粘着剤の乾燥時に揮発しやすくなってしまい、発明の効果が得難くなる傾向がある。
【0043】
単官能性芳香族化合物(A)としては、その引火点が120℃以上であることが好ましく、特に好ましくは145〜500℃、更に好ましくは150〜400℃、殊に好ましくは160〜300℃である。かかる引火点が高すぎると分子量の増加による複屈折調整能力の低下する傾向があり、小さすぎると揮発性の上昇により、粘着剤の乾燥時に揮発しやすくなってしまい、発明の効果が得難くなる傾向がある。
【0044】
かかる引火点を満たす単官能性芳香族化合物(A)としては、例えば、フェニルジエチレングリコールアクリレート(引火点:165℃)、エトキシ化オルトフェニルフェノールアクリレート(引火点:170〜199℃)等が挙げられる。[<参考値>、フェノキシエチルアクリレート(引火点:139〜141℃)、ベンジルアクリレート(引火点:107℃)]
単官能性芳香族化合物(A)の含有量は、(B)成分合計100重量部に対して、5〜200重量部であることが好ましく、更に好ましくは8〜100重量部、特に好ましくは12〜60重量部、殊に好ましくは、15〜45重量部である。単官能性芳香族化合物(A)の含有量が多すぎると、柔軟性が損なわれ、液晶モジュール等への応力伝搬が顕著になり、UV照射が届かないブラック塗装部位と照射が届く部位の境界面に於いて、液晶の表示ムラが生じる傾向があり、少なすぎると屈折率が低くなりすぎることで、活性エネルギー線の当たらないブラック塗装部位にも、散乱光が透過し難くなり硬化性が確保しにくくなる傾向がある。
【0045】
本発明においては、上記芳香環を有する単官能性(メタ)アクリル系モノマー(A)、1分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を平均して少なくとも一個有する化合物(B)、及び光重合開始剤(C)、を必須成分として含有する活性エネルギー線硬化性組成物が、活性エネルギー線により硬化されてなる硬化物の屈折率が、1.475〜1.575である事が好ましく、1.480〜1.550であることがより好ましく、1.500〜1.550であることが特に好ましく、1.520〜1.550であることが殊にこのましい。かかる屈折率が低すぎると光学積層体全体の複屈折補償が不十分になる傾向があり、高すぎると光学フィルムとの屈折率差が大きくなることにより、界面反射が起こりやすくなる傾向がある。
【0046】
かかる屈折率は、アタゴ社製の「アッベ屈折計1T」を用いて、NaD線で25℃において測定した値である。
【0047】
<<(B)成分>>
(B)成分は、(A)成分以外の1分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を平均して少なくとも一個有する化合物(B)であり、重合性の炭素−炭素二重結合を平均して少なくとも一個有していれば、低分子量化合物、オリゴマー、重合体の何れであっても構わないが、柔軟性、耐久性、硬化性のバランスの点で、オリゴマー、又は、有機重合体であることが好ましく、有機重合体であることが特に好ましい。
【0048】
有機重合体とは、有機化合物の繰り返し単位を伴う構造で、100以上の繰り返し単位からなる化合物を指す。オリゴマーとは、有機化合物の繰り返し単位を伴う構造で、2〜100の繰り返し単位からなる化合物を指す。低分子量化合物とは、オリゴマー、有機重合体以外の構造で基本的に繰り返し単位を伴わない構造の化合物である。
【0049】
上記有機重合体又はオリゴマーとしては、ポリシロキサン、ポリエーテル、ビニル系重合体が好ましく、ビニル系重合体がより好ましい。
【0050】
上記ポリシロキサンとしては、アルキルポリシロキサンが好ましい。
【0051】
上記ポリエーテルとしては、オキシアルキレン系重合体が好ましく、その中でもポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンがより好ましい。
【0052】
上記ビニル系重合体としては、炭化水素系重合体である、ポリイソブチレン、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、並びに、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれるモノマーを主として重合して製造される重合体が好ましい。ここで「主として」とは、ビニル系重合体を構成するモノマー単位のうち、50モル%以上が上記モノマーであることを意味し、好ましくは70モル%以上である。さらに、ビニル系重合体としては、ポリイソブチレン、(メタ)アクリル系モノマーを主として重合して製造された(メタ)アクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がより好まく、アクリル酸エステルモノマーを主として重合して製造されたアクリル酸エステル系重合体がさらに好ましい。
【0053】
(B)成分の有機重合体又はオリゴマーの分子量分布、即ち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1.8未満であり、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.6以下であり、よりさらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。分子量分布が1.8以上であると粘度が増大し、取り扱いが困難になる傾向にある。なお、本発明でのGPC測定は、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0054】
オリゴマー、有機重合体の主鎖、製造法等については、以下に説明する。
【0055】
<ポリシロキサン>
公知であるオルガノクロロシランを加水分解してオルガノポリシロキサンを製造する方法、特許第2599517号公報、特開昭56−151731号公報、特開昭59−66422号公報、特開昭59−68377号公報に記載のアルコキシシランを塩基性触媒あるいは酸触媒の存在下で加水分解する方法等公知の方法で得られる。ポリマーの末端官能基としては、アルコキシシリル基、シラノール基、水酸基等が挙げられる。
【0056】
本発明におけるポリシロキサンの数平均分子量は特に制限はないが、GPCで測定した場合に、500〜1,000,000であり、3,000〜100,000がより好ましい。分子量が低くなりすぎると、伸び、柔軟性が不十分な傾向があり、高くなりすぎると、粘度が高くなり、塗布等の作業性が低下する傾向がある。
【0057】
<ポリエーテル>
ポリエーテル(オキシアルキレン系重合体)の合成方法は、特に限定されないが、例えば開始剤と触媒の存在下、モノエポキシドを開環重合することによって得られる。
【0058】
開始剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、メタリルアルコール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ポリブタジエンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレンテトラオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の2価アルコールや多価アルコール、水酸基を有する各種のオリゴマー等が挙げられる。
【0059】
モノエポキシドの具体例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、α−ブチレンオキサイド、β−ブチレンオキサイド、ヘキセンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、α−メチルスチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類や、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、アリルグリシジルエーテル類、アリールグリシジルエーテル類等が挙げられる。
【0060】
触媒及び重合法としては、たとえばKOHのようなアルカリ触媒による重合法、たとえば特開昭61−215623号公報に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、たとえば特公昭46−27250号公報および特公昭59−15336号公報などに示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、セシウム触媒による重合法、ホスファゼン触媒による重合法等があげられるが、特に限定されるものではない。中でも、高分子量でかつ着色の少ない重合体が容易に得られる点からは、複合金属シアン化物錯体触媒による重合法が好ましい。
【0061】
この他、オキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、水酸基末端オキシアルキレン重合体を塩基性化合物、例えばKOH、NaOH、KOCH
3、NaOCH
3等の存在下、2官能以上のハロゲン化アルキル、例えばCH
2Cl
2、CH
2Br
2等による鎖延長等によっても得ることができる。
【0062】
さらに、上記オキシアルキレン系重合体の主鎖骨格中にはオキシアルキレン系重合体の特性を大きく損なわない範囲でウレタン結合成分等の他の成分を含んでいてもよい。
【0063】
本発明におけるポリエーテルの数平均分子量は特に制限はないが、GPCで測定した場合に、500〜1,000,000であり、1,000〜100,000がより好ましい。分子量が低くなりすぎると、伸び、柔軟性が不十分な傾向があり、高くなりすぎると、粘度が高くなり、塗布等の作業性が低下する傾向がある。
【0064】
<ビニル系重合体>
(炭化水素系重合体)
前記炭化水素系重合体は、芳香族環以外の炭素−炭素不飽和結合を実質的に含有しない重合体であり、たとえば、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエン、水素添加ポリイソプレンなどがあげられる。
【0065】
本発明に用いる炭化水素系重合体の主鎖骨格をなす重合体は、(1)エチレン、プロピレン、1,2−ブタジエン、1,4−ブタジエン、1−ブテン、イソブチレンなどような炭素数1〜6のオレフィン系化合物を主成分として単独重合もしくは共重合させるか、(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合もしくは共重合させ、あるいは、上記オレフィン系化合物を共重合させた後、水素添加するなどの方法により得ることができる。
【0066】
中でも、ポリイソブチレン、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンは、末端に官能基を導入しやすく、分子量を制御しやすく、また、末端官能基の数を多くすることができるので好ましい。さらに、ポリイソブチレンは液状または流動性を有するので取り扱いやすく、主鎖に芳香族環以外の炭素−炭素不飽和結合を全く含まないため水添の必要が無く、耐候性に極めて優れているので特に好ましい。ポリイソブチレンは、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよいし、イソブチレンと共重合可能な単量体単位をポリイソブチレン中に、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、とくに好ましくは10重量%以下の範囲で含有してもよい。
【0067】
このような炭化水素系重合の単量体成分としては、たとえば、炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類などがあげられる。たとえば1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキセン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどがあげられる。
【0068】
水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンや他の炭化水素系重合体においても、上記ポリイソブチレンの場合と同様に、主成分となる単量体単位の他に他の単量体単位を含有させてもよい。
【0069】
炭化水素系重合体、好ましくはポリイソブチレン、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンの数平均分子量は500〜50,000程度であるのが好ましく、とくに1,000〜20,000程度の液状ないし流動性を有するものが取扱いやすいなどの点から、好ましい。
【0070】
(炭化水素系重合体以外のビニル系重合体)
本発明における炭化水素系重合体以外のビニル系重合体は、その主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。具体的には、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族ビニル系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
【0071】
本発明の硬化性組成物に使用される炭化水素系重合体以外のビニル系重合体の主鎖は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルモノマー等の(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1つのモノマーを主として重合して製造されるものであることが好ましい。ここで「主として」とは、ビニル系重合体を構成するモノマー単位のうち、50モル%以上が上記モノマーであることを意味し、好ましくは70モル%以上である。なかでも、生成物の物性等から、(メタ)アクリル系モノマーを重合して得られる(メタ)アクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がより好ましい。アクリル酸エステルモノマーを重合して得られるアクリル酸エステル系重合体がさらに好ましい。特に好ましいアクリル酸エステルモノマーとしては、アクリル酸アルキルエステルモノマーが挙げられ、具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシブチルである。
【0072】
本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0073】
本発明における炭化水素系重合体以外のビニル系重合体の数平均分子量は特に制限はないが、GPCで測定した場合に、500〜1,000,000の範囲である、3,000〜100,000がより好ましく、5,000〜80,000がさらに好ましく、8,000〜50,000がなおさら好ましい。分子量が低くなりすぎると、炭化水素系重合体以外のビニル系重合体の本来の特性が発現されにくい傾向があり、一方、高くなりすぎると、取り扱いが困難になる傾向がある。
【0074】
本発明で使用するビニル系重合体は、種々の重合法により得ることができ、特に限定されないが、モノマーの汎用性、制御の容易性等の点からラジカル重合法が好ましく、ラジカル重合の中でも制御ラジカル重合がより好ましい。この制御ラジカル重合法は「連鎖移動剤法」とリビング重合の一種である「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。得られるビニル系重合体の分子量、分子量分布の制御が容易であるリビングラジカル重合がさらに好ましく、原料の入手性、重合体末端への官能基導入の容易さから原子移動ラジカル重合が特に好ましい。上記ラジカル重合、制御ラジカル重合、連鎖移動剤法、リビングラジカル重合法、原子移動ラジカル重合は公知の重合法ではあるが、これら各重合法については、たとえば、特開2005−232419号公報や、特開2006−291073号公報などの記載を参照できる。
【0075】
本発明における炭化水素系重合体以外のビニル系重合体の好ましい合成法の一つである、原子移動ラジカル重合について以下に簡単に説明する。
【0076】
原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられることが好ましい。具体的には特開2005−232419号公報段落[0040]〜[0064]記載の化合物が挙げられる。
【0077】
ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を1分子内に2つ以上有するビニル系重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
【0081】
原子移動ラジカル重合において用いられるビニル系モノマーとしては特に制約はなく、上述したビニル系モノマーをすべて好適に用いることができる。
【0082】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、又は11族元素を中心金属とする金属錯体でありより好ましくは0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルを中心金属とする遷移金属錯体、特に好ましくは銅の錯体が挙げられる。銅の錯体を形成するために使用される1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2'−ビピリジル若しくはその誘導体、1,10−フェナントロリン若しくはその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン若しくはヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。
【0083】
重合反応は、無溶媒でも可能であるが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては特に限定されず、特開2005−232419号公報段落[0067]記載の溶剤が挙げられる。これらは、単独でもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体CO
2を媒体とする系においても重合を行うことができる。重合温度は、限定はされないが、0〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、室温〜150℃の範囲である。
【0084】
<重合性の炭素−炭素二重結合導入法((B)成分の合成方法)>
(B)成分の重合性の炭素−炭素二重結合は、特に限定されないが、一般式(1)
−OC(O)C(R
1)=CH
2 (1)
(式中、R
1は水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表わす)
で表される(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0085】
また、(B)成分の重合性の炭素−炭素二重結合は、分子鎖末端にあることが好ましい。
【0086】
(ポリシロキサンへの導入方法)
特に限定はないが、例えば、特許第3193866号公報に記載の末端シラノール停止ポリシロキサンに有機金属等を触媒として、加水分解性シリル基含有ビニル化合物、加水分解性シリル基含有(メタ)アクリロイル化合物を加水分解縮合反応させる方法等が挙げられる。
【0087】
(ポリエーテルへの導入方法)
オキシアルキレン重合体への重合性の炭素−炭素二重結合を導入する方法としては、特に限定がないが、<1>水酸基末端を有するポリオキシアルキレンに一般式(1)の酸クロライド化合物を反応させる方法、<2>水酸基末端を有するポリオキシアルキレンにイソシアナート基を含む一般式(1)の化合物を反応性させる方法、<3>水酸基末端を有するポリオキシアルキレンに多官能性のイソシアナートおよび水酸基を含有するビニルモノマーを反応させる方法、<4>ヒドロシリル化可能な二重結合末端(例えばアリル基末端)ポリオキシアルキレンに多官能タイプのヒドロシリル化合物を反応させ、更にアリル(メタ)アクリレート等のヒドロシリル化可能な化合物を反応させる方法がある。反応の簡便性の点で<2>、<3>および<4>の方法が好ましく、反応の安定性の点で、<2>および<3>の方法がより好ましい。
【0088】
(ビニル系重合体への導入方法)
ビニル系重合体への重合性の炭素−炭素二重結合を導入する方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、特開2004−203932号公報段落[0080]〜[0091]記載の方法が挙げられるが、以下の方法が好ましい。
【0089】
[導入方法1]
一般式(3)のビニル系重合体の末端ハロゲン基を、一般式(4)の重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物で置換する方法。
−CR
2R
3X (3)
(式中、R
2、R
3は、ビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基。Xは、塩素、臭素、又は、ヨウ素を表す。)
M
+-OC(O)C(R
1)=CH
2 (4)
(式中、R
1は水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。M
+はアルカリ金属、または4級アンモニウムイオンを表す。)
一般式(3)で表される末端構造を有するビニル系重合体は、上述した有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する方法、あるいは、ハロゲン化合物を連鎖移動剤としてビニル系モノマーを重合する方法により製造されるが、好ましくは前者である。
【0090】
一般式(4)で表される化合物としては特に限定されないが、R
1の具体例としては、例えば、−H、−CH
3、−CH
2CH
3、−(CH
2)
nCH
3(nは2〜19の整数を表す)、−C
6H
5、−CH
2OH、−CN、等が挙げられ、好ましくは−H、−CH
3である。
【0091】
M
+はオキシアニオンの対カチオンであり、M
+の種類としてはアルカリ金属イオン、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、および4級アンモニウムイオンが挙げられる。4級アンモニウムイオンとしてはテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンおよびジメチルピペリジニウムイオン等が挙げられ、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオンである。一般式(4)のオキシアニオンの使用量は、一般式(3)のハロゲン基に対して、好ましくは1〜5当量、更に好ましくは1.0〜1.2当量である。この反応を実施する溶媒としては特に限定はされないが、求核置換反応であるため極性溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル、等が用いられる。反応を行う温度は限定されないが、一般に0〜150℃で、重合性の末端基を保持するために好ましくは室温〜100℃で行う。
【0092】
[導入方法2]
末端に水酸基を有するビニル重合体に一般式(5)で示される化合物を反応させる方法。XC(O)C(R
1)=CH
2 (5)
(式中、R
1は水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。Xは塩素、臭素、または水酸基を表す。)
【0093】
[導入方法3]
末端に水酸基を有するビニル重合体に、ジイソシアネート化合物を反応させ、残存イソシアネート基と下記一般式(6)で示される化合物とを反応させる方法。
HO−R
4−OC(O)C(R
1)=CH
2 (6)
(式中、R
1は水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。R
4は炭素数2〜20の2価の有機基を表す。)
これらの方法の中でも、制御が容易である点から、[導入方法1]が最も好ましい。
【0094】
<<光重合開始剤(C)>>
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法には、(A)成分、(B)成分を速く硬化させたり、充分な性状の硬化物を得たりするために光重合開始剤(C)を使用する。
【0095】
光重合開始剤としては、光ラジカル開始剤、光アニオン開始剤、近赤外光重合開始剤等が挙げられ、光ラジカル開始剤、光アニオン開始剤が好ましく、光ラジカル開始剤が特に好ましい。
【0096】
光ラジカル開始剤としては、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4'−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ジベンゾイル等が挙げられる。
【0097】
これらのうち、α−ヒドロキシケトン化合物(例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等)、フェニルケトン誘導体(例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4'−ベンジルベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン等)が好ましい。
【0098】
光アニオン開始剤としては、例えば、1,10−ジアミノデカン、4,4'−トリメチレンジピペラジン、カルバメート類及びその誘導体、コバルト−アミン錯体類、アミノオキシイミノ類、アンモニウムボレート類等が挙げられる。
【0099】
近赤外光重合開始剤としては、近赤外光吸収性陽イオン染料等を使用しても構わない。近赤外光吸収性陽イオン染料としては、650〜1500nmの領域の光エネルギーで励起する、例えば特開平3−111402号公報、特開平5−194619号公報等に開示されている近赤外光吸収性陽イオン染料−ボレート陰イオン錯体等を用いるのが好ましく、ホウ素系増感剤を併用することがさらに好ましい。
【0100】
これらの光重合開始剤は、単独、又は2種以上混合して用いても、他の化合物と組み合わせて用いてもよい。他の化合物との組み合わせとしては、具体的には、ジエタノールメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンとの組み合わせ、さらにこれにジフェニルヨードニウムクロリド等のヨードニウム塩を組み合わせたもの、メチレンブルー等の色素及びアミンと組み合わせたもの等が挙げられる。
【0101】
なお、前記光重合開始剤を使用する場合、必要により、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、パラターシャリーブチルカテコール等の重合禁止剤類を添加することもできる。
【0102】
光重合開始剤(C)の添加量は特に制限はないが、硬化性と貯蔵安定性の点から、(B)成分100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
【0103】
<<配合剤>>
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法においては、目的とする物性に応じて、各種の配合剤を添加しても構わない。
【0104】
<重合性の基を有し、数平均分子量が3000以下であるオリゴマー、及び/又はモノマー(D)>
本発明の硬化性組成物は、(B)成分の数平均分子量が3000超過である場合、本発明の効果を損なわない範囲で(A)成分以外の、重合性の基を有し、数平均分子量が3000以下であるオリゴマー、及び/又はモノマー(D)を添加することができる。ラジカル重合性の基を有する、モノマー及び/又はオリゴマー、あるいは、アニオン重合性の基を有する、モノマー及び/又はオリゴマーが、硬化性の点から好ましい。
【0105】
前記ラジカル重合性の基としては、(メタ)アクリル基等の(メタ)アクリロイル基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、塩化ビニル基等が挙げられる。なかでも、本発明に使用するビニル系重合体と類似する(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
【0106】
前記アニオン重合性の基としては、(メタ)アクリル基等の(メタ)アクリロイル基、スチレン基、アクリロニトリル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基等が挙げられる。なかでも、本発明に使用するビニル系重合体と類似する(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
【0107】
前記モノマーの具体例としては、特開2006−265488号公報段落[0123]〜[0131]記載のものが挙げられる。
【0108】
前記オリゴマーとしては、特開2006−265488号公報段落[0132]記載のものが挙げられる。
【0109】
上記のうち、(メタ)アクリロイル基を有する、モノマー及び/又はオリゴマーが好ましい。また、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー及び/又はオリゴマーの数平均分子量は、3000以下であるが、さらに、表面硬化性の向上や、作業性向上のための粘度低減のために、モノマーを用いる場合には、分子量が1000以下であることが、相溶性が良好であるという理由からさらに好ましい。
【0110】
重合性のモノマー及び/又はオリゴマーの使用量としては、表面硬化性の向上、タフネスの付与、粘度低減による作業性の観点から、(B)成分合計100重量部に対して、1〜200重量部が好ましく、5〜100重量部がより好ましい。
【0111】
<充填材>
充填材としては、特に限定されないが特開2005−232419号公報段落[0158]記載の充填材が挙げられる。これら充填材のうちでは、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等が好ましい。
【0112】
特に、これら充填材で強度の高い硬化物を得たい場合には、主に結晶性シリカ、溶融シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー及び活性亜鉛華等から選ばれる充填材を添加できる。なかでも、比表面積(BET吸着法による)が50m
2/g以上、通常50〜400m
2/g、好ましくは100〜300m
2/g程度の超微粉末状のシリカが好ましい。またその表面が、オルガノシランやオルガノシラザン、ジオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で予め疎水処理されたシリカが更に好ましい。
【0113】
また、低強度で伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛及びシラスバルーン等から選ばれる充填材を添加できる。なお、一般的に、炭酸カルシウムは、比表面積が小さいと、硬化物の破断強度、破断伸びの改善効果が充分でないことがある。比表面積の値が大きいほど、硬化物の破断強度、破断伸びの改善効果はより大きくなる。
【0114】
更に、炭酸カルシウムは、表面処理剤を用いて表面処理を施してある方がより好ましい。表面処理炭酸カルシウムを用いた場合、表面処理していない炭酸カルシウムを用いた場合に比較して、本発明の硬化性組成物の作業性を改善し、該硬化性組成物の貯蔵安定性効果がより向上すると考えられる。
【0115】
前記の表面処理剤としては、公知のものを使用でき、例えば、特開2005−232419号公報段落[0161]記載の表面処理剤が挙げられる。この表面処理剤の処理量は、炭酸カルシウムに対して、0.1〜20重量%の範囲で処理するのが好ましく、1〜5重量%の範囲で処理するのがより好ましい。処理量が0.1重量%未満の場合には、作業性の改善効果が充分でないことがあり、20重量%を越えると、硬化性組成物の貯蔵安定性が低下することがある。特に限定はされないが、炭酸カルシウムを用いる場合、配合物のチクソ性や硬化物の破断強度、破断伸び等の改善効果を特に期待する場合には、膠質炭酸カルシウムを用いるのが好ましい。一方、重質炭酸カルシウムを配合物の増量、コストダウン等を目的として添加することがある特開2005−232419号公報段落[0163]記載のものを使用することができる。
【0116】
上記充填材は、目的や必要に応じて単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。充填材を用いる場合の添加量は、(B)成分合計100重量部に対して、充填材を5〜1000重量部の範囲で使用するのが好ましく、20〜500重量部の範囲で使用するのがより好ましく、40〜300重量部の範囲で使用するのが特に好ましい。配合量が5重量部未満の場合には、硬化物の破断強度、破断伸び、接着性と耐候接着性の改善効果が充分でないことがあり、1000重量部を越えると該硬化性組成物の作業性が低下することがある。
【0117】
<微小中空粒子>
物性の大きな低下を起こすことなく軽量化、低コスト化を図ることを目的として、微小中空粒子をこれら補強性充填材に併用して添加することができる。このような微小中空粒子(以下において、「バルーン」と称することがある。)には、特に限定はされないが、「機能性フィラーの最新技術」(CMC)に記載されているように、直径が1mm以下、好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下の無機質あるいは有機質の材料で構成された中空体(無機系バルーンや有機系バルーン)が挙げられる。特に、真比重が1.0g/cm
3以下である微小中空体を用いることが好ましく、更には0.5g/cm
3以下である微小中空体を用いることが好ましい。
【0118】
前記無機系バルーン及び有機系バルーンとしては、特開2005−232419号公報段落[0168]〜[0170]に記載されているバルーンを使用することができる。上記バルーンは単独で使用しても良く、2種類以上混合して用いても良い。さらに、これらバルーンの表面を脂肪酸、脂肪酸エステル、ロジン、ロジン酸リグニン、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミカップリング剤、ポリプロピレングリコール等で、分散性及び配合物の作業性を改良するために処理したものも使用することができる。これらのバルーンは、配合物を硬化させた場合の物性のうち、柔軟性及び伸び・強度を損なうことなく、軽量化させコストダウンするために使用される。
【0119】
バルーンの添加量は、特に限定されないが、(B)成分合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、更に好ましくは0.1〜30重量部の範囲で使用できる。この量が0.1重量部未満では軽量化の効果が小さく、50重量部より多いとこの配合物を硬化させた場合の機械特性のうち、引張強度の低下が認められることがある。また、バルーンの比重が0.1以上の場合は、その添加量は好ましくは3〜50重量部、更に好ましくは5〜30重量部である。
【0120】
<酸化防止剤>
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法には、各種酸化防止剤を必要に応じて用いてもよい。これらの酸化防止剤としては、p−フェニレンジアミン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤や、二次酸化防止剤としてリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0121】
酸化防止剤の添加量は、特に限定されないが、(B)成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部の範囲で使用できる。
【0122】
<可塑剤>
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法には、樹脂の吸湿による液晶表示ムラが生じない範囲で、必要に応じて可塑剤を配合することができる。
可塑剤としては特に限定されないが、物性の調整、性状の調節等の目的により、例えば、特開2005−232419号公報段落[0173]記載の可塑剤が挙げられる。これらの中では、粘度の低減効果が顕著であり、耐熱性試験時における揮散率が低いという点から、ポリエステル系可塑剤、ビニル系重合体が好ましい。また、数平均分子量500〜15000の重合体である高分子可塑剤が、添加することにより、該硬化性組成物の粘度及び該硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の引張り強度、伸び等の機械特性が調整できるとともに、重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持できるため好適である。なお、限定はされないがこの高分子可塑剤は、官能基を有しても有しなくても構わない。
【0123】
上記高分子可塑剤の数平均分子量は、500〜15000と記載したが、好ましくは800〜10000であり、より好ましくは1000〜8000である。分子量が低すぎると熱にさらされたり液体に接した場合に可塑剤が経時的に流出し、初期の物性を長期にわたり維持できないことがある。また、分子量が高すぎると粘度が高くなり、作業性が低下する傾向がある。
【0124】
これらの高分子可塑剤のうちで、ビニル系重合体と相溶するものが好ましい。中でも相溶性及び耐候性、耐熱老化性の点からビニル系重合体が好ましい。ビニル系重合体の中でも(メタ)アクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がさらに好ましい。このアクリル系重合体の合成法は、従来からの溶液重合で得られるものや、無溶剤型アクリルポリマー等を挙げることができる。後者のアクリル系可塑剤は溶剤や連鎖移動剤を使用せず高温連続重合法(USP4414370、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、USP5010166)にて作製されるため、本発明の目的にはより好ましい。その例としては特に限定されないが、東亞合成品UPシリーズ等が挙げられる(工業材料1999年10月号参照)。勿論、他の合成法としてリビングラジカル重合法をも挙げることができる。この方法によれば、その重合体の分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことから好ましく、更には原子移動ラジカル重合法がより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0125】
高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、狭いことが好ましく、1.8未満が好ましい。1.7以下がより好ましく、1.6以下がなお好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましく、1.3以下が最も好ましい。
【0126】
上記高分子可塑剤を含む可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、必ずしも必要とするものではない。また必要によっては高分子可塑剤を用い、物性に悪影響を与えない範囲で低分子可塑剤を更に併用しても良い。なおこれら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
【0127】
可塑剤を用いる場合の使用量は、限定されないが、(B)成分100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜50重量部である。1重量部未満では可塑剤としての効果が発現しにくい傾向があり、100重量部を越えると硬化物の機械強度が不足する傾向がある。
【0128】
<反応性希釈剤>
上記可塑剤以外に、本発明を硬化させる方法においては、次に述べる反応性希釈剤を用いても構わない。反応性希釈剤として、硬化養生中に揮発し得るような低沸点の化合物を用いた場合は、硬化前後で形状変化を起こしたり、揮発物により環境にも悪影響を及ぼしたりすることから、常温での沸点が100℃以上である有機化合物が特に好ましい。
【0129】
反応性希釈剤の具体例としては、1−オクテン、4−ビニルシクロヘキセン、酢酸アリル、1,1−ジアセトキシ−2−プロペン、1−ウンデセン酸メチル、8−アセトキシ−1,6−オクタジエン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0130】
反応性希釈剤の添加量は、(B)成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜100重量部、より好ましくは0.5〜70重量部、さらに好ましくは1〜50重量部である。
【0131】
<光安定剤>
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法には、必要に応じて光安定剤を添加しても良い。光安定剤は各種のものが知られており、例えば大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」、シーエムシー化学発行の「高分子材料の劣化と安定化」(235〜242)等に記載された種々のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0132】
特に限定はされないが、光安定剤の中でも、紫外線吸収剤が好ましく、具体的には、チヌビンP、チヌビン234、チヌビン320、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン329、チヌビン213(以上いずれも日本チバガイギー社製)等のようなベンゾトリアゾール系化合物やチヌビン1577等のようなトリアジン系、CHIMASSORB81等のようなベンゾフェノン系、チヌビン120(日本チバガイギー社製)等のようなベンゾエート系化合物等が例示できる。
【0133】
また、ヒンダードアミン系化合物も好ましく、そのような化合物は具体的には特開2006−274084号公報記載のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。更には紫外線吸収剤とヒンダードアミン系化合物の組み合わせはより効果を発揮することがあるため、特に限定はされないが併用しても良く、併用することが好ましいことがある。
【0134】
光安定剤は前述した酸化防止剤と併用してもよく、併用することによりその効果を更に発揮し、特に耐候性が向上することがあるため特に好ましい。予め光安定剤と酸化防止剤を混合してあるチヌビンC353、チヌビンB75(以上いずれも日本チバガイギー社製)などを使用しても良い。
【0135】
光安定剤の使用量は、(B)成分100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。0.1重量部未満では耐候性を改善の効果が少なく、10重量部超では効果に大差がなく経済的に不利である。
【0136】
<接着性付与剤>
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法には、さらに基材接着性を向上させる目的で接着性付与剤を添加することができる、接着性付与剤としては、架橋性シリル基含有化合物、極性基を有するビニル系単量体が好ましく、更にはシランカップリング剤、酸性基含有ビニル系単量体が好ましい。これらを具体的に例示すると、特開2005−232419号公報段落[0184]記載の接着性付与剤が挙げられる。
【0137】
シランカップリング剤としては、分子中にエポキシ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、カルバメート基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、ハロゲン基、(メタ)アクリル基等の、炭素原子及び水素原子以外の原子を有する有機基と、架橋性シリル基を併せ持つシランカップリング剤を用いることができる。
【0138】
これらを具体的に例示すると、特開2005−232419号公報段落[0185]記載の炭素原子及び水素原子以外の原子を有する有機基と、架橋性シリル基を併せ持つシランカップリング剤が挙げられる。これらの中でも、硬化性及び接着性の点から、分子中にエポキシ基あるいは(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン類がより好ましい。
【0139】
極性基を有するビニル系単量体としては、カルボキシル基含有単量体としては(メタ)アクリル酸、アクリロキシプロピオン酸、シトラコン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのエステル類、無水マレイン酸およびその誘導体等が挙げられる。上記、ガルボキシル基含有単量体のエステル類としては2−(メタ)アクリロイルキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。また、スルホン酸基含有単量体としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン類又はその塩類を挙げることができる。更に、リン酸基含有単量体としては、2−((メタ)アクリロイルシエチルホスフェート)、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルフォスフェート等が挙げられる。中でもリン酸基含有単量体が好ましい。また、該単量体は2個以上の重合性基を有してしても構わない。
【0140】
シランカップリング剤、極性基含有ビニル系単量体以外の接着性付与剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0141】
上記接着性付与剤は、(B)成分100重量部に対して、0.01〜20重量部配合するのが好ましい。0.01重量部未満では接着性の改善効果が小さく、20重量部を越えると硬化物物性が低下し易い傾向がある。好ましくは0.1〜10重量部であり、更に好ましくは0.5〜5重量部である。
【0142】
上記接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
【0143】
<溶剤>
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法には、必要に応じて溶剤を配合することができる。配合できる溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は重合体の製造時に用いてもよい。
【0144】
<その他の添加剤>
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法には、硬化性組成物又はその硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、難燃剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、などがあげられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。このような添加物の具体例は、たとえば、特公平4−69659号公報、特公平7−108928号公報、特開昭63−254149号公報、特開昭64−22904号公報の各明細書などに記載されている。
【0145】
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法は、全ての配合成分を予め配合密封した1液型として調製でき、また、開始剤だけを抜いたA液と、開始剤を充填材、可塑剤、溶剤等と混合したB液を成形直前に混合する2液型としても調製できる。
【0146】
活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる方法
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線により速硬化可能で、かつ、活性エネルギー線が当たらない部分を有する基材に塗布した後、活性エネルギー線を照射させると、活性エネルギー線の当たらない部分にも散乱活性エネルギー線が透過し硬化性が確保出来る。
【0147】
活性エネルギー線が直接当たらない部分を有する基材としては、特に限定されないが、FPDであることが好ましく、特にカバーガラスと表示部との間、カバーガラスとタッチパネルとの間等に充填される充填材としての使用が好ましい。カバーガラスの多くにはブラックプリント部分を有しており、ブラックプリント部分と表示部に挟まれた陰になる部分を硬化させるのに適している。FPDとしては、タッチパネルや携帯電話の液晶、有機ELもしくは有機TFT画面、コンピューターの液晶、有機ELもしくは有機TFT画面、カーナビの液晶、有機ELもしくは有機TFT画面、液晶、有機ELもしくは有機TFTテレビディスプレイ等が挙げられる。
【0148】
<<硬化方法>>
当該硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に限定されない。
【0149】
当該硬化性組成物は光重合開始剤(C)を用いることによって、活性エネルギー線源により光又は電子線を照射して、硬化させることができる。活性エネルギー線源としては特に限定はないが、用いる光重合開始剤の性質に応じて、例えば高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー、メタルハライドランプ等が挙げられる。その硬化温度は、0℃〜150℃が好ましく、5℃〜120℃がより好ましい。
【0150】
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法は、さらに湿分硬化により硬化させることができる。湿分硬化の際の相対湿度は、5〜95%が好ましく、10〜80%がより好ましい。
【0151】
<<成形方法>>
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法をFPD貼り合わせ用充填剤として用いる場合の塗布方法としては、特に限定されず、一般に使用されている各種の塗布方法を用いることができる。例えば、ディスペンサーを用いる方法、コーターを用いる方法、スプレーを用いる方法等があるが、塗布後時のタレ防止性、透明カバーボード(フィルム)との貼り合せ時の混入防止の点でディスペンサーによるものが好ましい。
【0152】
<<用途>>
本活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる方法をFPD貼り合わせ用充填剤として用いる場合の部位としては、特に限定はないが、タッチパネルや携帯電話の液晶、有機ELもしくは有機TFT画面、コンピューターの液晶、有機ELもしくは有機TFT画面、カーナビの液晶、有機ELもしくは有機TFT画面、液晶、有機ELもしくは有機TFTテレビディスプレイ等が挙げられる。
【0153】
本発明は、上記FPD貼り合わせ用硬化性組成物を塗布、硬化させて得られるフラットパネルディスプレイを搭載した電気・電子機器を包含する。
【実施例】
【0154】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0155】
下記実施例中、「数平均分子量」及び「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804およびK−802.5;昭和電工(株)製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
【0156】
下記実施例中、「平均末端(メタ)アクリロイル基数」は、「重合体1分子当たりに導入された(メタ)アクリロイル基数」であり、
1H−NMR分析及びGPCにより求められた数平均分子量より算出した。
【0157】
なお、下記実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
【0158】
<末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造>
(製造例1、2)
各原料の使用量を表1に示す。
(1)重合工程
アクリル酸n−ブチルを脱酸素した。攪拌機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素し、臭化第一銅、全アクリル酸n−ブチルの一部(表1では初期仕込みモノマーとして記載)を仕込み、加熱攪拌した。アセトニトリル(表1では重合用アセトニトリルと記載)、開始剤としてジエチル−2,5−ジブロモアジペート(DBAE)または2−ブロモブチル酸エチル(BBE)を添加、混合し、混合液の温度を約80℃に調節した段階でペンタメチルジエチレントリアミン(以下、トリアミンと略す)を添加し、重合反応を開始した。残りのアクリル酸n−ブチル(表1では追加モノマーとして記載)を逐次添加し、重合反応を進めた。重合途中、適宜トリアミンを追加し、重合速度を調整した。重合時に使用したトリアミンの総量を重合用トリアミンとして表1に示す。重合が進行すると重合熱により内温が上昇するので内温を約80℃〜約90℃に調整しながら重合を進行させた。
(2)酸素処理工程
モノマー転化率(重合反応率)が約95%以上の時点で反応容器気相部に酸素−窒素混合ガスを導入した。内温を約80℃〜約90℃に保ちながらしながら反応液を数時間加熱攪拌して反応液中の重合触媒と酸素を接触させた。アセトニトリル及び未反応のモノマーを減圧脱揮して除去し、重合体を含有する濃縮物を得た。濃縮物は著しく着色していた。
(3)第一粗精製
酢酸ブチルを重合体の希釈溶媒として使用した。重合体100kgに対して100〜150kg程度の酢酸ブチルで(2)の濃縮物を希釈し、ろ過助剤(ラジオライトR900、昭和化学工業(株)製)および吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加した。反応容器気相部に酸素−窒素混合ガスを導入した後、約80℃で数時間加熱攪拌した。不溶な触媒成分をろ過除去した。ろ液は重合触媒残渣によって着色および若干の濁りを有していた。
(4)第二粗精製
ろ液を攪拌機付ステンレス製反応容器に仕込み、吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加した。気相部に酸素−窒素混合ガスを導入して約100℃で数時間加熱攪拌した後、吸着剤等の不溶成分をろ過除去した。ろ液はほとんど無色透明な清澄液であった。ろ液を濃縮し、ほぼ無色透明の重合体を得た。
(5)(メタ)アクリロイル基導入工程
重合体100kgをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)約100kgに溶解し、アクリル酸カリウム(末端Br基に対して約2モル当量)、熱安定剤(H−TEMPO:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−n−オキシル)、吸着剤(キョーワード700SEN)、を添加し、約70℃で数時間加熱攪拌した。DMACを減圧留去し、重合体濃縮物を重合体100kgに対して約100kgのトルエンで希釈し、ろ過助剤を添加して固形分をろ別し、ろ液を濃縮し、末端にアクリロイル基を有する重合体[P1]、[P2]を得た。得られた重合体の1分子あたりに導入されたアクリロイル基数、数平均分子量、分子量分布を併せて表1に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
(実施例1)
(B)成分として製造例1で得られた重合体[P1]30部、重合体[P1]70部、(C)成分として、DAROCUR1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製))0.8部と、Lucirin TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製))0.1部、(A)成分として、エトキシ化o−フェニルフェニルアクリレート(新中村化学社製、商品名「A−LEN−10」)50部を充分攪拌混合して硬化性組成物を調整した。
【0161】
得られた硬化性組成物を液晶モジュールと周辺にUVの透過しない部位が存在するガラス板の間に膜厚200μmとなる様に貼り合せ、UV照射装置(ライトハンマー6;Fusion UV system Japan社製)を用いて積算光量3000mJ/cm
2の照射を行い硬化させた。UVの透過しない部位の硬化性についてはUV硬化1日後に、照射面からの硬化深さ(硬化進入深さ)をノギスにて測定した。液晶表示面の表示ムラは、65℃で相対湿度90%の7日後に、液晶モジュールを点灯させ、目視により僅かでもムラを確認出来るものは、ムラ有りと判定した。
評価結果を表2に示す。
【0162】
(実施例2)
実施例1の(A)成分であるエトキシ化o−フェニルフェニルアクリレートの代わりにフェノールEO変性アクリレート(商品名:M101−A、東亜合成株式会社製)50部を加えた以外は、実施例1と同様に硬化性組成物を調整した。
UVの透過しない部位の硬化性(硬化進入深さ)および表示ムラの評価結果を表2に示す。
【0163】
(実施例3)
実施例1の(A)成分であるエトキシ化o−フェニルフェニルアクリレートの代わりにパラクミルフェノールEO変性アクリレート(商品名:M110−S、東亜合成株式会社製)50部を加えた以外は、実施例1と同様に硬化性組成物を調整した。
UVの透過しない部位の硬化性(硬化進入深さ)および表示ムラの評価結果を表2に示す。
【0164】
(比較例1)
実施例1の(A)成分であるエトキシ化o−フェニルフェニルアクリレートの代わりにジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト(商品名:FA−512S、日立化成工業株式会社製)50部を加えた以外は、実施例1と同様に硬化性組成物を調整した。
UVの透過しない部位の硬化性(硬化進入深さ)および表示ムラの評価結果を表2に示す。
【0165】
(比較例2)
実施例1の(A)成分であるエトキシ化o−フェニルフェニルアクリレートの代わりにラウリルアクリレート(商品名:ライトアクリレートL−A、共栄社化学株式会社製)50部を加えた以外は、実施例1と同様に硬化性組成物を調整した。
UVの透過しない部位の硬化性(硬化進入深さ)および表示ムラの評価結果を表2に示す。
【0166】
【表2】
【0167】
実施例1〜3は比較例1、2と比較して、芳香環を有する単官能性(メタ)アクリル系モノマーを用いる事で、UV照射1日後のUVの透過しない部位の硬化性(硬化進入深さ)が相当量確認され、かつ液晶表示面の液晶表示ムラは、65℃で相対湿度90%の7日後に、目視により確認できず、それぞれ改善されている。