【実施例】
【0024】
〔実施例1〕
本発明の、粒径のばらつきが格段に小さい砥粒は、精密篩分けにより得られるものであり、精密篩分けは、例えばレーザーによって篩に用いる薄板に孔を開け、そのようにして作成した孔あき薄板を、砥粒の篩分け用の篩として用い、さらに、篩分けに用いる複数段の篩の、篩の公称目開きが、各段間で従来のJISにおけるものよりも小さいものとすることにより、篩分け精度の高い精密篩分けを行うものである。
円形孔の場合は、ドリル等の機械加工により形成することも可能である。
【0025】
図1は、レーザー加工により開けた、本発明の方法において用いる篩の網目形状の例であり、425〜450μm程度より大きな砥粒の篩分けにおいては、JIS規格において用いていた網篩に替えて、また、50μm程度から450μm程度までの寸法の砥粒の篩分けにおいては、JIS規格において用いていた四角形の孔(目開き)を有する電成篩に替えて用いるものである。
ピッチ、即ち整列形成されている目開き群の隣接目開き間隔は篩い分け操作の効率には関係するが、本発明の主目的である篩い分け精度には本質的に影響しないので、任意に設定することができる。この点において、JIS規格における四角形目開きの辺寸法の1.05〜1.4倍とするのが簡便であるが、多角形孔最大さしわたし(外接円直径)の1.05〜1.4倍、或いはそれ以上でも精度に関しては特に支障なく利用できる。
【0026】
本願の発明の精密篩分け用の篩は、上記篩に関するJIS規格に示される網篩や電成篩における四角形の開口よりも、砥粒が通過する部分のさしわたし長さの範囲を小さくすべく、板に開口した正多角形の開口を有する板篩を使用する。この篩を用いることにより、篩分けられた砥粒の粒径は、同等の四角形の開口を有する従来の篩で篩分けされたものよりも、格段に粒径が揃ったものとなる。
さらに、上記砥粒粒度に関するJIS規格が規定するナローレンジの篩を用いる4枚篩による選別よりも、格段に段間の篩目開き寸法の差が小さな篩の組を用いて選別を行う場合には、得られる砥粒間の粒径は、さらにばらつきが小さくなる。
【0027】
図3に篩い分け手順を示す。本願発明の精密篩い分けに用いる篩の組(A、B)は、従来ナローレンジとして規定されている目開きスケール上の隣接する二つの段階をさらに細かく分けた、再分割目開き寸法をもつ大小の一対の篩を使用して行う。目開きの寸法は、既存の目開き寸法を基準とするときは、目開き寸法差が20μm(#150)より小さい場合には二つの寸法の比の2乗根の比、それよりも大きい場合には2〜4、特に2〜3乗根の比の大(A)小(B)一対の目開きを持つ篩を組み合わせて使用する。
本発明の篩は粗大粒子の阻止機能が確実なので、必要な範囲を規定する一組の篩の使用を基本とするが、さらに必要に応じてそれ以上の篩を組み合わせて使用することも可能である。
【0028】
篩の目開き寸法の表示は外(内)接円半径、辺長、対向辺間距離(偶数辺多角形=四、六、八角形等の場合)で表示することができる。このうち内接円半径乃至対向辺間距離が四角形目開きを持つ従来の金網篩や電成篩と対応するが、多角形目開きの篩は、断面形状から明らかなように、対応する辺間距離の四角形篩に比べて囲う面積が小さいので、不規則な形状の粒子に対しては、従来の四角い目開きの篩に比べて、より大きい粒子を通しにくい。断面形状が目開きの形状に近い粒子は、目開き寸法に近い粒子まで目開きを通過することが考えられる。即ち大きい目開きの篩で粗大粒子が除かれる一方、小さい目開きの篩に確実に保持される効果が得られる。
【0029】
使用する目開きの形状は篩い分けされる粒子の形状に応じて、また入手可能性を基に考慮して選択する。
例えば、従来の篩分け操作においては約170μmの粒径の砥粒としては、この粒径の両側の目開き寸法を有するNo. 80/100の2段階の篩で篩い分けされた粒子が使用されるが、本発明においては小さい側の目開き寸法として170〜175μm、大きい側として185〜190μmのものを一組利用することで実施できる。
目開きの形状は篩分けされる粒子の外形に応じて選ぶことにより、精度をさらに上げることができる。例えば結晶面の発達したダイヤモンド粒子については六面体と八面体との複合が多く表れるので、八角形又は六角形の目開きが好適である。なお五角形や七角形の奇数辺多角形も可能ではあるが、実用的な効果の点では偶数角形の方が好ましい。
前者を通過し、後者を通過しなかった砥粒のみを選別することによって、四角形の目開きを持つ網篩や電成篩では達成できなかった、ばらつきの少ない精密な粒径を持つ比較的大きい砥粒を得る。
【0030】
本発明の砥粒を得るための方法においては、精密篩分けのための、正多角形の孔を有する板篩を用いるが、この板篩の孔は、レーザー加工により作成することが好ましい。レーザー加工により作成する孔であるため、孔形状のばらつきはレーザー加工精度により決定されることとなり、非常に精度が高くなる。したがって、単独の篩による篩分け精度も、従来の網篩よりも格段に高くなる。更に、複数の精密篩を組み合わせる際に、従来の篩分けよりも孔寸法の差が小さい篩の組を使用するため、篩分けの精度が従来よりも格段に向上する。
【0031】
本発明は、従来板篩を使用しないほどの大粒の砥粒の選別に、レーザー加工した板篩を使用することによって、従来無かった、粒径の揃った大粒の砥粒を得るようにしたものである。
本願発明の研磨剤粒子のばらつきの少なさは、従来のJIS B4130に規定する、網篩または電製篩では、孔の形状が四角形であるため決して達成できず、5個以上の頂点を持つ多角形貫通孔を複数有する篩板によって篩分けをすることによって、達成できたのである。
図5に示される結果となった実施例では、厚さ0.1mmのモリブデン薄板に、八角形の孔をレーザー加工により開口した薄板篩を用いた。
【0032】
図4の理論値の基礎となった、本願発明の研磨剤粒子と、JIS B4130による研磨剤粒子の、
図5に示す実測値の比較から、本願発明のばらつきの少なさが明瞭に理解される。
JIS B4130によれば、粒度80/100という粒度分布の砥粒は、197μmの目開きの篩に10%以上が留まらず、151μmの目開きの篩を10%以上通過してはならない、と規定されている。これを図で表現すれば、
図4における外側の縦線のさらに外側にある粒子の割合が、20%まで許容される、なだらかなピークとなる。
これに対して、本願発明は、49μm以上の平均粒径D
50を有する砥粒において、平均粒径D
50の上下45%の成分粒子は、平均粒径D50の0.2倍の粒径範囲に入ってしまう、すなわち
図4における鋭いピークとなる。
【0033】
従来の砥粒篩分けによる粒度選別による調粒では、選別能力が低い、孔形状が四角形となる網篩や電成篩を使用し、さらに複数段の篩を組み合わせる際の篩間の孔寸法の開きが大きいため、本願発明の有する、粒径のばらつきがきわめて小さい砥粒を得るのは不可能であった。また、従来、そのような粒径のばらつきがきわめて小さい砥粒を得ることについて、必要性を唱えられたことが無く、従って、そのような砥粒を得るための方法についても、従来、知られていなかったものである。
【0034】
篩の孔加工は、レーザー加工を例示したが、孔の精度が得られる限り、いかなる工法によってもよい。また、孔の形状は、円形が最も高精度となるが、偶数辺多角形、特に正八角形や六角形でも円形に次ぐ精度が得られる。七角形や、五角形の目開きは断面形状の対称性が低いので過大粒子の阻止効果は大きくなるが、粒子の処理効率は低くなる。目開き形状は、加工の便宜との兼ね合いで定めればよい。単位面積あたりの通過量の多寡を考慮すれば、ハチの巣状の六角形の孔が全面に設けられた板篩が最も効率的である。