(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076031
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】仮設構造物の荷上げ装置
(51)【国際特許分類】
B66B 9/187 20060101AFI20170130BHJP
B66B 5/26 20060101ALI20170130BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20170130BHJP
E04G 3/28 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
B66B9/187 B
B66B5/26
E04G21/14
E04G3/28 301A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-234252(P2012-234252)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-84202(P2014-84202A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】393000445
【氏名又は名称】株式会社三共
(74)【代理人】
【識別番号】100115934
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 雅也
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅行
(72)【発明者】
【氏名】星山 茂
(72)【発明者】
【氏名】阿部 哲也
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭49−085765(JP,U)
【文献】
米国特許第05152374(US,A)
【文献】
特開2007−217118(JP,A)
【文献】
実公昭48−012941(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 9/187
B66B 5/26
E04G 3/28
E04G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の取り付け金具を介して仮設構造物の縦柱に一定間隔ごとに設けられる固定部に固定され高さ方向に連結可能に構成された互いに平行に設けられた1対のガイドレールと、
当該ガイドレールのそれぞれに、前記ガイドレールを挟んで反対側に片持ちに取り付けられた、上下移動可能な2つの昇降部材と、
両端が前記それぞれの昇降部材に接続されたワイヤーと、
前記ガイドレールの上方位置の前記仮設構造物の縦柱に取り付けられ、前記ワイヤーの中間部分を送り出すことで、一方の昇降部材を上昇させるときに他方の昇降部材を下降させるように、各昇降部材を上下動させるワイヤー送り装置と、を備えることを特徴とする、仮設構造物の荷上げ装置。
【請求項2】
前記ガイドレールは断面が矩形に構成されており、
前記昇降部材は、前記ガイドレールの隣り合う外面に接触する形状を有するガイドローラを前記ガイドレールの対角位置に備えることで前記ガイドレールに上下移動可能に固定されることを特徴とする、請求項1に記載の仮設構造物の荷上げ装置。
【請求項3】
前記昇降部材の上端に前記ワイヤーと連結する落下防止機構が設けられ、
前記落下防止機構は、
昇降部材の上端に設けられ、先端が前記ワイヤーと連結し、上下方向に進退可能な吊りハンガーと、
前記吊りハンガーの後端と連結し、前記ガイドレールの外周面に対して先端部が離接可能に枢支され、前記吊りハンガーが上側にあるときは前記ガイドレールに前記先端部が遊嵌し、前記吊りハンガーが下側にあるときは前記先端部が前記ガイドレールに食い込むように作用するストッパと、
を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の仮設構造物の荷上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種建築工事において、建築物に沿って組み立てられた足場などに取り付け、建築用の器材や資材を上げ下ろしするために用いる仮設構造物の荷上げ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築工事において、建築用の器材や資材の上げ下ろしは必ず必要であり、上げ下ろし作業の省力化と効率の向上を図るため、建築物に沿って組立てられた足場に荷上げ装置を取り付けることが行われている。
【0003】
この荷上げ装置としては、例えば、特許文献1(特許第4473433号公報)及び特許文献2(特許第4397431号公報)などが公知となっている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示されている荷上げ装置は、いずれも、仮設構造物に固定するガイドレールと、ガイドレールに沿って上下移動可能となる昇降部材と、ガイドレールの上端に取り付けて昇降部材を上下動させる吊り下げ手段とを備える構成である。そして、この荷上げ装置は、建築用の器材や資材を積載する昇降部材にワイヤーなどを固定し、吊り下げ手段に設けられている巻取りドラムにワイヤーを巻取り又は巻き解くことにより、昇降部材をガイドレールに沿って上下移動させるものである。なお、ガイドレールの構成としては、特許文献1に開示されている一条のみのもの、特許文献2に開示されている一対で構成されているものなどが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4473433号公報
【特許文献2】特許第4397431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの荷上げ装置は、いずれも、一台の昇降装置を上下移動させるため、荷上げ装置の上方及び地上での作業者のいずれにも待ち時間が発生するため、顕著な効率アップを図ることができないという問題があった。
【0007】
また、巻取りドラムに巻取り可能なワイヤーの長さは制限があるため、昇降可能な高さである揚程にも制限があり、高層建築物の荷上げには適さないという問題があった。また、昇降部材及びこれに積載されている器材などの全重量を吊り下げ手段の巻取りトルクにより、昇降させることになるため、吊り下げ手段が大型化して組立が煩雑になると共に、多くの消費電力を必要とするという問題があった。
【0008】
さらに、ワイヤーが長くなると巻取りドラムにワイヤーを巻き取る際、巻取りの山からワイヤーが崩れるいわゆる段落ち、巻取りドラム内でワイヤーが絡まって折れ曲がったり破損したりするいわゆるキンクなどを発生させるおそれもあった。
【0009】
ワイヤー以外の方法でチェーン式のものもあるが、チェーンのリング一つ一つをチェックする必要があるため、チェーンが長くなるとメンテナンスに大きな手間がかかり実用的でない。結果的に、メンテナンスが疎かになり、現場でチェーンが切れることが多く、非常に危険である。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、上記の吊り下げ式の荷上げ装置の種々の問題を解消し、より効率的な器材などの搬送を行うことができる仮設構造物の荷上げ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の仮設構造物の荷上げ装置を提供する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、共通の取り付け金具を介して仮設構造物の縦柱
に一定間隔ごとに設けられる固定部に固定され
高さ方向に連結可能に構成された互いに平行に設けられた1対のガイドレールと、
当該ガイドレールのそれぞれに、前記ガイドレールを挟んで反対側に片持ちに取り付けられた、上下移動可能な2つの昇降部材と、
両端が前記それぞれの昇降部材に接続されたワイヤーと、
前記ガイドレールの上方
位置の前記仮設構造物の縦柱に取り付けられ、前記ワイヤーの中間部分を送り出すことで、一方の昇降部材を上昇させるときに他方の昇降部材を下降させるように、各昇降部材を上下動させるワイヤー送り装置と、を備えることを特徴とする仮設構造物の荷上げ装置を提供する。
【0014】
本発明の第
2態様によれば、前記ガイドレールは断面が矩形に構成されており、
前記昇降部材は、前記ガイドレールの隣り合う外面に接触する形状を有するガイドローラを前記ガイドレールの対角位置に備えることで前記ガイドレールに上下移動可能に固定されることを特徴とする、第1態様の仮設構造物の荷上げ装置を提供する。
【0015】
本発明の第
3態様によれば、前記昇降部材の上端に前記ワイヤーと連結する落下防止機構が設けられ、
前記落下防止機構は、
昇降部材の上端に設けられ、先端が前記ワイヤーと連結し、上下方向に進退可能な吊りハンガーと、
前記吊りハンガーの後端と連結し、前記ガイドレールの外周面に対して先端部が離接可能に枢支され、前記吊りハンガーが上側にあるときは前記ガイドレールに前記先端部が遊嵌し、前記吊りハンガーが下側にあるときは前記先端部が前記ガイドレールに食い込むように作用するストッパと、
を備えることを特徴とする、
第1又は第2態様の足場用幅木の取付具を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワイヤーの両端に昇降部材が設けられ、昇降部材による荷上げと下降とを同時に行うことができるため、作業者の待ち時間を少なくすることができ、作業効率を向上させることができる。また、ワイヤーを巻き取るものではないため、巻取り長さの上限がなく、揚程を大きくすることができ、また、荷上げに必要なトルクが小さくてすむため、装置の小型化、省電力化を図ることができる。
【0017】
また、ガイドレールを矩形とし、隣り合う外面に接触するガイドローラを用いることで、昇降部材の水平方向の動きを規制することができ、安定した荷上げを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態にかかる仮設構造物の荷上げ装置の構成を模式的に示す側面図である。
【
図2】
図1の仮設構造物の荷上げ装置の外観構成を示す斜視図である。
【
図4】
図1の荷上げ装置の誘導金具の構成を示す斜視図である。
【
図5】
図1の荷上げ装置のストッパの構成を示す斜視図である。
【
図6】
図1の荷上げ装置の落下防止機構が作動していない状態を示す斜視図である。
【
図7】
図1の荷上げ装置の落下防止機構が作動している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る仮設構造物の荷上げ装置について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に示すように本実施形態にかかる荷上げ装置を取り付ける仮設構造物は、縦柱2と足場板3を用いて組み立てた足場1で形成されている。
【0021】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態の荷上げ装置11は、縦柱4に取り付ける一対のガイドレール12(12a,12b)と、それぞれのガイドレール12に沿って上下動可能に設けられた2つの昇降部材13と、縦柱4の上端部に設けられそれぞれの昇降部材13(13a,13b)を上下動させるワイヤー送り装置14とを有している。
【0022】
縦柱4には、足場の横枠を取り付けるための固定部4aが一定間隔ごとに設けられている。ガイドレール12を固定するためのガイドレール取り付け金具15は、たとえば、当該固定部4aに固定することで、縦柱4にガイドレールが取り付けられる。ガイドレール取り付け金具15はコの字型形状の金具であり、両端にそれぞれガイドレール12a,12b背面側となるコーナー部分が固定される。
【0023】
上記ガイドレール12は、
図3に示すように、断面が矩形の鋼管を用い、縦柱4の高さに見合う上下長さを有する複数のレールを上方に順次継ぎ足すことができるようになっている。
【0024】
縦柱4の最上部には、
図2に示すように、ワイヤー送り装置14が設けられている。ワイヤー送り装置14は、ワイヤーを送るための装置であり、ワイヤーを巻取りドラムに巻き取って繰り出し長さを異ならせるものではなく、ローラーユニット17に巻きかけられたワイヤー16をその長さ方向に送り出す。
【0025】
ワイヤー16の両端は、それぞれ昇降部材13(13a,13b)に接続されている。昇降部材13(13a,13b)は、それぞれのガイドレール12に沿って上下動可能に設けられているため、ワイヤー送り装置14によりワイヤーが送られることで、一方の昇降部材13が上昇するときは他方の昇降部材が下降するいわゆる交走式の動作を行う。
【0026】
ワイヤー送り装置14は、無線又は有線のリモコンなどにより操作され、資材などの荷上げ時に昇降部材13の移動を行う。
【0027】
それぞれ昇降部材13(13a,13b)は、上下方向に細長いかご形状の部材であり、四隅の支柱131と底板132と側板133を有しており、側板133の一部が、開閉自在に取り付けられている。
【0028】
また、1つの支柱131に沿った上下2箇所にガイドレール12(12a,12b)を抱持する誘導金具18が設けられて、ガイドレール12(12a,12b)に片持ち式に取り付けられている。
【0029】
図3及び
図4に示すように、誘導金具18は、昇降部材13に固定された水平の2枚のC字形のブラケット19を備え、ブラケット19でガイドレール12を抱持すると供に、当該ブラケットの間に対向して設けられた2対のローラ20で、ガイドレール12に沿って移動可能に構成されている。
【0030】
ローラ20は、中央部分が小径に構成された鼓形状を有しており、ガイドレール12の隣り合う2つの外面に接触する。この構成により、ガイドレールを軸とする回転方向が規制され、片持ちの昇降部材13をガイドレールに沿った上下方向のみの移動をスムーズにすることができる。
【0031】
また、昇降部材13(13a,13b)には、
図3に示すように、落下防止機構21が設けられており、ワイヤー16が切断したような場合には、昇降部材13をガイドレール12に固定する。
【0032】
落下防止機構21は、
図3及び
図6,
図7に示すように、ワイヤー16と連結する吊りハンガー22と、ワイヤー16の脱落時にガイドレール12に食い込んで昇降部材13の落下を防止するストッパ23とを備える。
【0033】
吊りハンガー22は、上端にワイヤーと連結するための環状部221が設けられており、環状部221から下方へ延びる本体部222が設けられている。吊りハンガー22は、上下方向に移動可能に昇降部材13に支持されており、ワイヤー16と接続されている状態では、ワイヤーの張力により上側に位置している。
【0034】
ストッパ23は、
図5に示すように、略扇形の本体231に回転軸232が設けられており、回転軸232周りに本体231が回動可能に構成されている。ストッパ23の回転軸は、
図6及び
図7に示すように、昇降部材13の支柱131に設けられたストッパ取り付け部134に設けられており、本体231の後端233が吊りハンガー22の本体部222下端と連結されている。したがって、吊りハンガー22の位置に応じて、ストッパ23の傾斜角度が異なり、
図6に示すように、吊りハンガー22が上に位置するときは、本体231の後端233が上側を向く一方、
図7に示すように、吊りハンガー22が下に位置するときは、本体231の後端233が下側を向くようになっている。
【0035】
ストッパ23の本体231の前方側には、噛合突起234が設けられている。噛合突起234の両側方には、案内壁235が設けられている。噛合突起234は、ガイドレール12のコーナー部に対向して配置されており、本体部231後端233が上に位置するときはガイドレール12と非接触であり、本体部231後端233が下に位置するときはガイドレール12と接触するように構成されている。
【0036】
したがって、ワイヤー16と吊りハンガー22が接続されており、ワイヤー16の張力により吊りハンガー22が上に位置するときは、ストッパ23はガイドレール12と非接触であり、昇降部材13のスムーズな移動を可能とする一方、ワイヤー16の切断など、ワイヤー16の張力が開放されたときは、吊りハンガー22は下側へ移動し、ストッパ23の噛合突起234がガイドレール12と接触して、昇降部材13をガイドレール12に固定して昇降部材13の移動を規制する。
【0037】
以上の構成の仮設構造物の荷上げ装置の使用方法について説明する。まず、足場1の地上部に一方の昇降部材13(以下、13aとする)を下ろした状態で資材を昇降部材13a中に搬入する。昇降部材13aは、上側が開放しているため、長尺部材は、上部枠にもたれ掛けさせるようにして収納する。部材の搬入が終わると、リモコン(図示せず)を操作してワイヤー送り装置14を作動させ、ワイヤー16を昇降部材13aが上昇する方向に送る。このとき、他方の昇降部材13bは、上側位置からワイヤー16の送りに応じて下降する。
【0038】
足場1の所定位置に昇降部材13aが到達したときにリモコンの停止ボタンを押して昇降部材13aを停止させる。所定位置に位置する昇降部材13aから資材を取り出す。
【0039】
なお、作業が終了したときの部材の搬出は、上記と逆の手順で行うことができる。所定位置が、揚程の半分以上の位置であればそのまま、昇降部材13aを上昇させ、他方の昇降部材13bを地面に送れば、動作の無駄を少なくすることができる。引き続いて資材の荷上げなどを行うときには、他方の昇降部材13bを用いて同様の作業を行えばよい。
【0040】
ワイヤー送り装置14は、ローラーユニット17に巻きかけられたワイヤー16をその長さ方向に送り出すものであり、ドラムにワイヤーを巻き付ける方式のウインチのように乱巻きやキンクが生じない。そのため、ワイヤー同士の摩擦によるワイヤー撚り線の損耗、さらに、段落ちによる昇降部材13の瞬間的な急降下の発生をなくすことができ、安全性が高まる。
【0041】
なお、万一の時に一方の昇降部材13からみてローラーユニットより手前側の位置でワイヤー16が破損したときは、落下防止機構21が働いて昇降部材13を停止させるので、事故を未然に防止できて安全である。一方、ローラーユニットより奥側のワイヤーが切れたときは、ローラーユニット17によってワイヤー16が支持されているため、昇降部材の落下は生じない。また、ワイヤーの張力は依然として働いているので、落下防止機構21は作動しない。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、ガイドレール12は断面形状が矩形でなく、4角形以上の多角形でもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 足場
2 縦柱
3 足場板
4 縦柱
4a 固定部
11 荷上げ装置
12,12a,12b ガイドレール
13,13a,13b 昇降部材
14 ワイヤー送り装置
15 ガイドレール取り付け金具
16 ワイヤー
17 ローラーユニット
18 誘導金具
19 ブラケット
20 ローラ