特許第6076072号(P6076072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076072
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】スパウト装置および容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   B65D33/38
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-278979(P2012-278979)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-122056(P2014-122056A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204608
【氏名又は名称】大下産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(72)【発明者】
【氏名】藤田 利彦
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−225891(JP,A)
【文献】 特開2004−322522(JP,A)
【文献】 特開2009−046166(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/029094(WO,A1)
【文献】 特開2007−238106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D30/00−33/38
B65D47/12
B65D75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウト本体部とキャップ部とを具備するスパウト装置であって、
前記スパウト本体部は、基部と、前記基部から続く筒状部とを具備し、
前記スパウト本体部は、ガスバリア性の材料で構成されてなり、
前記キャップ部は、前記スパウト本体部の基部と係り合う基部を具備し、
前記キャップ部は、前記スパウト本体部を覆うように構成され、
前記スパウト本体部を覆う前記キャップ部の所定の位置には薄肉部が構成され、
前記キャップ部は、取り付けられる容器本体部の該キャップ取付個所における内層表面の構成材料と同種の材料で構成されてなり、
前記ガスバリア性の材料で構成された閉鎖部が、前記スパウト本体部の先端部に、一体的に、設けられてなり、
前記キャップ部の前記スパウト本体部への配設時において、前記閉鎖部と嵌合する閉鎖部収容部が、前記キャップ部に、設けられてなり、
前記スパウト本体部に対する前記閉鎖部の連結部には薄肉部が構成され、
前記キャップ部に回動力を作用させた場合、前記キャップ部は、前記キャップ部の薄肉部において切断されると共に、この切断片が前記スパウト本体部から離接するよう構成されてなり、この離接時に、前記閉鎖部の前記薄肉部において切断された前記閉鎖部は前記キャップ部と共に離接するよう構成されてなる
ことを特徴とするスパウト装置。
【請求項2】
前記スパウト本体部と前記キャップ部とは、前記基部側の位置において、離間不能に構成されてなる
ことを特徴とする請求項1のスパウト装置。
【請求項3】
前記スパウト本体部および前記キャップ部は、
前記薄肉部から、前記基部より遠い側の位置において、前記基部に近い側の径が大きく、前記基部より遠い側の径が小さな略円錐台筒形状である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のスパウト装置。
【請求項4】
前記スパウト本体部と前記キャップ部とには螺合部が構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかのスパウト装置。
【請求項5】
前記キャップ部の薄肉部は前記螺合部よりも前記基部側に位置している
ことを特徴とする請求項4のスパウト装置。
【請求項6】
前記スパウト本体部の基部の肉厚が、前記スパウト本体部の基部と係り合う前記キャップ部の基部の肉厚より、厚い
ことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかのスパウト装置。
【請求項7】
前記スパウト本体部の基部の肉厚が、前記スパウト本体部の基部と係り合う前記キャップ部の基部の肉厚より、薄い
ことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかのスパウト装置。
【請求項8】
前記キャップ部のシュリンク作用によって、前記スパウト本体部と前記キャップ部との離間不能が構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項7いずれかのスパウト装置。
【請求項9】
前記スパウト本体部と前記キャップ部とには、前記基部側の位置において、一部が互いに係り合う係合部が構成されてなり、前記係合部によって、自然の状態では、離間不能に構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項8いずれかのスパウト装置。
【請求項10】
容器本体部と、請求項1〜請求項9いずれかのスパウト装置とを具備してなる容器であって、
前記スパウト装置の前記キャップ部の基部側が前記容器本体部に接着一体化されてなる
ことを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパウト装置および容器に関する。
【背景技術】
【0002】
気体(例えば、酸素)によって変質しやすい物質(例えば、輸液、経腸栄養剤、流動食などの経口用薬液、血液、食品)を収容する容器(例えば、パウチ等の容器)本体は、ガスバリア性の高い素材を層構成に含むラミネートフィルム等で構成されている。従って、収容されている内容物は、気体(例えば、酸素)による影響を受け難い。
【0003】
しかしながら、内容物の注出口部(容器本体に取り付けられたスパウト)は、通常、ポリオレフィン系樹脂で構成されている。ポリオレフィン系樹脂は、一般的には、ガスバリア性が低い。この為、スパウトから気体(例えば、酸素)が内部に透過・侵入し、これによって内容物が変質する恐れが有る。
【0004】
この問題点を解決するものとして次の技術が提案されている。
「容器本体の開口部分に取り付けられた中空の筒状栓体において、前記筒状部の一部がガスバリア性を有する材料から成る層および酸素吸収性を有する材料から成る層のうち少なくともいずれか一方の層から形成されることを特徴とする栓体」が、提案(特開平11−29159号公報)されている。
【0005】
「ガスバリア性プラスチックフィルムからなる可撓性バッグ本体の周縁シール部を構成している表裏フィルム間に挿入溶着される基部と、上記周縁シール部より外方へ延出する本体部とを備えたプラスチック製管状ポートを具備し、管状ポートの本体部の層内には、軸方向並びに軸周り方向の略々全範囲に亘ってガスバリア性の第1中間層が設けられ、また、本体部の上端は、ガスバリア性の封止部により密封されていることを特徴とするプラスチック製バッグの口部材」が、提案(特開平11−128317号公報)されている。
【0006】
「注出筒部と容器本体の開口シール部に取り付けられる取付部とを有するスパウトであって、前記注出筒部内に注出口を塞ぐ隔膜を有し、前記注出筒部の内周面に機能性樹脂層を有する多層筒状スリーブを設け、前記隔膜と前記多層筒状スリーブの下端部を前記容器本体とのシール部となる位置に位置させたことを特徴とするスパウト」「注出筒部と容器本体の開口シール部に取り付けられる取付部とを有するスパウトであって、前記注出筒部内に注出口を塞ぐ隔膜を有し、該隔膜の上下に位置するように、前記注出筒部の内周面に機能性樹脂層を有する上多層筒状スリーブと下多層筒状スリーブを設け、且つ前記下多層筒状スリーブの下端部を、前記容器本体とのシール部となる位置に位置させたことを特徴とするスパウト」が、提案(特開2008−87786号公報)されている。
【0007】
「第1の樹脂からなる内層及び外層と、該内層及び外層の間に位置し、ガスバリア性を有する第2の樹脂からなる中間層とから構成される筒状の周壁を備え、共射出成形により一体に成形されてなることを特徴とするスパウト」が、提案(特開2012−162272号公報)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−29159号公報
【特許文献2】特開平11−128317号公報
【特許文献3】特開2008−87786号公報
【特許文献4】特開2012−162272号公報
【特許文献5】特開2008−114905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜特許文献4の技術思想は、基本的には、「スパウトの筒状部の内部(内層)にガスバリア性のフィルムを介在」である。すなわち、内在させたガスバリア性フィルムによって、空気を遮断しようとしたものである。
【0010】
しかしながら、スパウト内部(内層)にガスバリア性フィルムを介在させる技術は、簡単なものでは無い。なぜならば、容器本体(例えば、パウチ)とスパウトとは接着一体化の必要が有る。接着一体化には、例えばヒートシール手段が採用される。その為には、前記容器本体表面(内面)の構成材料とスパウト表面(外面)の構成材料とは同種であることが要請される。一般的に、前記容器本体表面の構成材料はオレフィン系樹脂が用いられている。従って、スパウトの表面層もオレフィン系樹脂で構成させることが好ましい。ところが、オレフィン系樹脂はガスバリア性が悪い。その為、上記特許文献1〜特許文献4にあっては、例えばオレフィン系樹脂層中にガスバリア性フィルムを埋め込んでいる。スパウト表面にガスバリア性フィルムを貼付と言った程度ではスパウトを構成できない。なぜならば、ガスバリア性フィルムの材料とオレフィン系樹脂とは相溶性が悪く、両者の接着性が悪いからである。従って、コストが高く付いている。
【0011】
更に、使用に際して、スパウトは、一般的に、チューブ等が接続される。この時、スパウト外壁が汚れていたりすると、その汚染物が内容物の注出に伴って混じってしまう恐れが有る。かつ、スパウト外壁に損傷が加わっていると、チューブ接続に支障が起きることも考えられる。
【0012】
このような問題点に対しては、上記特許文献1〜特許文献4の技術は対応できていない。
【0013】
特許文献5(特開2008−114905号公報)には、キャップを設けたスパウトの開示が有る。
【0014】
しかしながら、特許文献5には、スパウトやキャップが如何なる材料で構成させるかの記載は皆無である。示唆すら無い。特に、スパウトがガスバリア性材料で構成されている旨の技術思想すら無い。例えば、スパウトをガスバリア性材料で構成させた場合、このガスバリア性材料とパウチ等の容器の構成材料とは相溶性が乏しい為、一般的には、シール(接着)することが非常に困難である。従って、特許文献5の技術思想、即ち、キャップを用いるにしても、如何なる構造のものとしておけば良いかは、皆目、判らない。
【0015】
従って、本発明が解決しようとする課題は上記問題点を解決することである。例えば、キャップを具備させたスパウトにおいて、如何なる構造にすれば、実用化が可能になるかを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の課題は、
スパウト本体部とキャップ部とを具備するスパウト装置であって、
前記スパウト本体部は、基部と、前記基部から続く筒状部とを具備し、
前記スパウト本体部は、ガスバリア性の材料で構成されてなり、
前記キャップ部は、前記スパウト本体部の基部と係り合う基部を具備し、
前記キャップ部は、前記スパウト本体部を覆うように構成され、
前記スパウト本体部を覆う前記キャップ部の所定の位置には薄肉部が構成され、
前記キャップ部は、取り付けられる容器本体部との接着一体化が可能な材料で構成されてなり、
前記キャップ部に回動力を作用させた場合、前記キャップ部は、前記薄肉部において切断されると共に、この切断片が前記スパウト本体部から離接するよう構成されてなる
ことを特徴とするスパウト装置によって解決される。
【0017】
前記スパウト装置であって、好ましくは、前記スパウト本体部および前記キャップ部は、前記薄肉部から、前記基部より遠い側の位置において、前記基部に近い側の径が大きく、前記基部より遠い側の径が小さな略円錐台筒形状であることを特徴とするスパウト装置によって解決される。
【0018】
前記スパウト装置であって、好ましくは、前記スパウト本体部と前記キャップ部とは、前記基部側の位置において、自然の状態では、物理的に、離間不能に構成されてなることを特徴とするスパウト装置によって解決される。
【0019】
前記スパウト装置であって、好ましくは、ガスバリア性の材料で構成された閉鎖部が、前記スパウト本体部の先端部に、一体的に、設けられてなり、前記キャップ部の前記スパウト本体部への配設時において、前記閉鎖部と嵌合する閉鎖部収容部が、前記キャップ部に、設けられてなり、前記スパウト本体部に対する前記閉鎖部の連結部には薄肉部が構成され、前記キャップ部に回動力を作用させた場合、前記キャップ部は、前記キャップ部の薄肉部において切断されると共に、この切断片が前記スパウト本体部から離接するよう構成されてなり、この離接時に、前記閉鎖部の前記薄肉部において切断された前記閉鎖部は前記キャップ部と共に離接するよう構成されてなることを特徴とするスパウト装置によって解決される。
【0020】
前記スパウト装置であって、好ましくは、前記スパウト本体部と前記キャップ部とには螺合部が構成されてなることを特徴とするスパウト装置によって解決される。
【0021】
前記スパウト装置であって、好ましくは、前記キャップ部の薄肉部は前記螺合部よりも前記基部側に位置していることを特徴とするスパウト装置によって解決される。
【0022】
前記スパウト装置であって、好ましくは、前記スパウト本体部の先端部には、ガスバリア性の材料で構成された閉鎖部が設けられておらず、前記スパウト本体部の開口部は前記キャップ部によって閉鎖される構造であることを特徴とするスパウト装置によって解決される。
【0023】
前記スパウト装置であって、好ましくは、前記スパウト本体部の基部の肉厚が厚く、前記スパウト本体部の基部と係り合う前記キャップ部の基部の肉厚が薄いことを特徴とするスパウト装置によって解決される。
【0024】
前記スパウト装置であって、好ましくは、前記スパウト本体部の基部の肉厚が薄く、前記スパウト本体部の基部と係り合う前記キャップ部の基部の肉厚が厚いことを特徴とするスパウト装置によって解決される。
【0025】
前記スパウト装置であって、好ましくは、前記キャップ部のシュリンク作用によって、前記スパウト本体部と前記キャップ部との離間不能が構成されてなることを特徴とするスパウト装置によって解決される。
【0026】
前記スパウト装置であって、好ましくは、前記スパウト本体部と前記キャップ部とには、前記基部側の位置において、一部が互いに係り合う係合部が構成されてなり、前記係合部によって、自然の状態では、物理的に、離間不能に構成されてなることを特徴とするスパウト装置によって解決される。
【0027】
前記の課題は、容器本体部と、前記スパウト装置とを具備してなる容器であって、前記スパウト装置の前記キャップ部の基部側が前記容器本体部に接着一体化されてなることを特徴とする容器によって解決される。
【発明の効果】
【0028】
ガスバリア性に優れたスパウト装置が、簡単、かつ、低廉なコストで得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明になる第1実施形態の容器の要部の概略断面図
図2図1の容器の開口(キャップ開)時の要部の概略断面図
図3図1のA−A線における断面図
図4】スパウト本体部の一部概略斜視図
図5図2における矢視図
図6図1の容器の使用状態を示す一部概略断面図
図7】本発明になる第2実施形態の容器の要部の概略断面図
図8】本発明になる第3実施形態のスパウト装置の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
第1の本発明はスパウト装置である。前記スパウト装置はスパウト本体部を具備する。前記スパウト装置はキャップ部を具備する。前記スパウト本体部は基部を具備する。前記スパウト本体部は筒状部を具備する。前記基部と前記筒状部とは繋がっている。すなわち、前記筒状部は前記基部の先端側に設けられている。前記スパウト本体部は、ガスバリア性の材料で構成される。ガスバリア性の材料とは、例えばナイロン、エチレンビニールアルコール、ポリビニリデンクロライド、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリルニトリル、金属蒸着フィルム、アルミニウム等の金属箔等のガスバリア性の高い素材を層構成に含むラミネートフィルム等が挙げられる。勿論、これ等に限られるものではない。ガスバリア性材料は酸素などの気体の透過係数が小さい方が好ましい。しかし、気体透過係数がゼロでなければならないと言うものでは無い。要するに、酸素などの気体が透過するのを効果的に防止でき、内容物に悪影響が引き起こされない程度のものであれば良い。具体的には、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の酸素透過係数より小さな酸素透過係数のものが好ましい。前記キャップ部は、容器本体部との接着一体化が可能な材料で構成される。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂で構成される。勿論、これ等に限られるものではない。前記キャップ部構成材料は、一般的には、前記スパウト本体部構成材料と異質な材料であることが多い。この為、例えばヒートシールと言った如きの手段では、前記スパウト本体部と前記キャップ部とは、接着一体化しない。仮に、接着一体化が起きても、その一体化力は非常に弱い。両者は、簡単に、取り外れる。しかし、例えばオレフィン系樹脂で構成されるが故に、前記キャップ部は容器本体部に対して強い力で接着一体化が可能になる。これに対して、ガスバリア性材料で構成された前記スパウト本体部は、容器本体部に対して、強い力での接着一体化が困難である。前記キャップ部は基部を具備する。前記キャップ部の基部は前記スパウト本体部の基部に係り合う。前記キャップ部は前記スパウト本体部を覆うように構成されている。前記キャップ部の内面と前記スパウト本体部の外面とは密接している。スパウト装置は、例えばインサート成形などで製造される。従って、前記キャップ部の内面と前記スパウト本体部の外面との密接度(密着度:空間閉鎖度)は高い。キャップの言葉から理解される通り、前記キャップ部は前記スパウト本体部に被さっている。前記スパウト本体部を覆う前記キャップ部の所定の位置には薄肉部が構成されている。前記キャップ部に回動力を作用させた場合、前記キャップ部は回動する。この回動によって、前記キャップ部は、前記薄肉部において、切断される。この切断片は前記スパウト本体部から離接する。
【0031】
前記キャップ部は、好ましくは、前記薄肉部から、前記基部より遠い側(先端側)の位置において、前記基部に近い側の径が大きく、前記基部より遠い側の径が小さい。前記キャップ部は、例えば略円錐台筒形状である。前記キャップ部は前記スパウト本体部を覆う。従って、前記キャップ部の内形が前記スパウト本体部の外形である。前記キャップ部の内形が略円錐台筒形状であれば、前記スパウト本体部の外形は略円錐台筒形状である。勿論、多少の相違が有っても差し支えない。
【0032】
前記スパウト本体部と前記キャップ部とには、好ましくは、螺合部が構成されている。「螺合」は「凹凸による嵌合」程度の意味合いである。前記キャップ部の薄肉部は、好ましくは、前記螺合部よりも前記基部側に位置している。すなわち、前記螺合部は前記薄肉部よりも先端側に位置している。
【0033】
前記スパウト本体部と前記キャップ部とは、前記基部側の位置において、自然の状態では、物理的に、離間不能に構成されている。例えば、前記キャップ部のシュリンクによって、前記スパウト本体部は前記キャップ部から取り外れることがない。或いは、前記スパウト本体部の基部が断面逆台形状になっている。この断面逆台形状部に前記キャップ部が掛止する。これによって、前記スパウト本体部は前記キャップ部から取り外れることがない。又は、前記スパウト本体部の基部の外周側面部に凹部(又は凸部)が設けられる。前記スパウト本体部の基部の前記凹部(又は凸部)に嵌合する凸部(又は凹部)が前記キャップ部の基部の内周側面部に設けられる。この種の凹凸の嵌合手段によっても、前記スパウト本体部は前記キャップ部から取り外れることがない。
【0034】
ガスバリア性の材料で構成された閉鎖部が、好ましくは、前記スパウト本体部の先端部(先端開口部)に、一体的に、設けられている。前記キャップ部の前記スパウト本体部への配設時において、前記閉鎖部と嵌合する閉鎖部収容部が、前記キャップ部に、設けられている。前記スパウト本体部に対する前記閉鎖部の連結部には薄肉部が構成されている。前記キャップ部に回動力を作用させた場合、前記キャップ部は回動する。この回動によって、前記キャップ部の薄肉部において、前記キャップ部は切断される。この切断片が前記スパウト本体部から離接する。前記回動によって、前記閉鎖部は、前記薄肉部において切断される。切断された前記閉鎖部は、閉鎖部収容部に収容されているから、前記キャップ部と共に離接する。
【0035】
前記スパウト本体部の基部の肉厚は厚い。この場合、前記キャップ部の基部の肉厚は薄い。逆に、前記スパウト本体部の基部の肉厚は薄い。この場合、前記キャップ部の基部の肉厚は厚い。
【0036】
第2の本発明は容器である。本容器は容器本体部を具備する。本容器は前記スパウト装置を具備する。前記スパウト装置の前記キャップ部の基部側が前記容器本体部に接着一体化されている。例えば、ヒートシール等の手段で、前記容器本体部の内面と前記キャップ部の外面とは一体化している。容器本体部はガスバリア性の材料で構成されている。但し、前記容器本体部の内層は前記キャップ部構成材料と同種(同系列)の材料で構成されている。例えば、オレフィン系樹脂で構成されている。従って、容器本体部と前記キャップ部とは、例えばヒートシールの手段で、簡単に、接着一体化される。しかも、この接着力は大きい。
【0037】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明が説明される。しかし、本発明は下記の実施例に限定されるものでは無い。
【0038】
図1図6は、本発明になる容器(特に、スパウト装置)の第1実施形態を示すものである。図1は要部の概略断面図である。図2はスパウト開口時(キャップ開時)の要部の概略断面図である。図3は、図1のA−A線における断面図である。図4はスパウト本体部の一部概略斜視図である。図5は、図2における矢印C方向での矢視図である。図6は使用時での一部概略断面図である。
【0039】
各図中、1は、ガスバリア性材料で構成された容器本体部(例えば、パウチ)である。ガスバリア性材料は上記例示された材料が適宜用いられる。勿論、上記列挙材料に限られない。容器本体部1の内層、特に、スパウト装置との接着個所は、スパウト装置との接着性に富む樹脂材料(スパウト装置のキャップ部構成材料と同種の材料)で構成されている。例えば、オレフィン系樹脂で構成されている。尚、容器本体部1は前記特許文献などでも知られている。更には、容器本体部1は周知な内容であるから、詳細な説明は省略される。
【0040】
2はスパウト装置である。スパウト装置2は、スパウト本体部2aとキャップ部2bとで構成されている。スパウト本体部2aは、図1からも判る通り、キャップ部2bで覆われている。恰も、スパウト本体部2aの外側にキャップ部2bが嵌め込まれた如きである。スパウト本体部2aの外形がキャップ部2bの内形である。スパウト本体部2aの成形後にキャップ部2bがインサート成形されることによって、スパウト装置2は得られる。従って、スパウト装置2は、簡単、かつ、低廉なコストで得られる。
【0041】
スパウト本体部2aはガスバリア性材料(例えば、ナイロン樹脂など)で構成される。スパウト本体部2aは、特に、一種類のガスバリア性樹脂材料で構成される。ポリマーアロイの如きの樹脂も一種類の樹脂であると見做される。互いに相溶性が良い樹脂が二種類以上用いられた場合も、相溶性が良いことから、この場合も、本発明では、一種類の樹脂であると見做される。本実施形態では、スパウト本体部2aは、特に、一つ(同種)のガスバリア性樹脂材料で構成されている。スパウト本体部2aは、従来の如く、ガスバリア性フィルムを内在させたものではないから、スパウト本体部2aは、簡単に、かつ、低廉なコストで成形できる。
【0042】
キャップ部2bはガスバリア性樹脂材料で構成される必要は無い。寧ろ、ガスバリア性樹脂材料とは異質な樹脂材料で構成される。キャップ部2bは、容器本体部1との接着性に富む材料で構成される。例えば、オレフィン系樹脂で構成される。オレフィン系樹脂は、一般的には、ガスバリア性樹脂とは呼ばれない。スパウト本体部2aを構成するガスバリア性樹脂と、キャップ部2bを構成するオレフィン系樹脂とは、互に、異質な樹脂である。従って、接着性が悪い。この為、インサート成形によって得られたスパウト装置2のスパウト本体部2aとキャップ部2bとは、接着していない。両者は簡単に剥がれる。そこで、後述される通り、物理的(形状)作用(効果)によって、両者の一体化が図られている。
【0043】
3はスパウト本体部2aの基部である。基部3は、図1,2から判る通り、円環状である。尚、円環状の基部3は、下方側の外径寸法が、上方側の外径寸法より、多少、小さい。すなわち、逆テーパー形状となっている。逆テーパー形状の代わりに、基部3の外側面部に凹部が形成されていても良い。基部3の厚さ(図1における左右方向の距離)は厚い。円環状の基部3の上部には、一体的に、円筒状部4が設けられている。円筒状部4は、基部3に近い側の外径(内径)が大きく、基部3から遠い側の外径(内径)が小さい。従って、厳密には、円筒は円錐台筒である。5は、円筒状部4の上端開口部を塞ぐ閉鎖部である。閉鎖部5は、水平(図1中、左右方向)断面が非円形である。閉鎖部5と円筒状部4とは、円筒状部4の上端縁において、連結されている(図1参照)。連結部6は、図1から判る通り、薄肉構造である。7は凹部(小径部)である。凹部(小径部)7は閉鎖部5の外側壁部に形成されている。8は、スパウト本体部2a(円筒状部4)の外周側面に形成された螺合部(凹部)である。螺合部(凹部)8は円筒状部4の下方位置に形成されている。螺合部(凹部)8の周方向における長さは、図3,4からも判る通り、半周未満の僅かなものである。螺子溝の如きの長いものでは無い。例えば、一つの螺合部8の周方向における長さは、図3,4からも判る通り、角度(α)が5〜30°程度の長さである。このような長さの螺合部8が、一周において、2〜4個程度、形成されておれば良い。一個でも良いが、複数個の方がキャップ2bの開蓋性に優れている。すなわち、キャップ部2bの回動・動作時において、キャップ部2bのバランスが取れる。スパウト本体部2a(円筒状部4)の外周側面に形成された螺合部(凹部)8の深さは、図3,4からも判る通り、キャップ2bの開蓋方向に沿って、順に、浅くなっている。螺合部8は、図4からも判る通り、キャップ2bを開蓋方向に回動させた場合、キャップ2bが上側に移動するよう、傾斜して(螺旋状に)形成されている。
【0044】
9はキャップ部2bの基部である。基部9は、断面が略¬形状である。断面略¬形状の基部9の厚さは薄い。すなわち、基部9の厚さは基部3の厚さより薄い(図1,2参照)。断面略¬形状の基部9と基部3とは、互に、密接している。両者は形状作用(物理的作用)によって結合している。基部3と基部9との形状作用による結合によって、スパウト本体部2aとキャップ部2bとは、自然状態では、離間しない。すなわち、スパウト本体部2aに対してキャップ部2bがインサート成形で構成され、スパウト本体部2aの樹脂とキャップ部2bの樹脂とが異質な(相溶性が無い)為、スパウト本体部2aとキャップ部2bとが互いの接触部で接着(溶着)されてなくても、スパウト本体部2aとキャップ部2bとは、自然状態では、離間しない。10は、円筒状部4及び閉鎖部5を覆う円筒状部である。キャップ部2bの内形がスパウト本体部2aの外形である。キャップ部2bの内面がスパウト本体部2aの外面に密着している。従って、凹部(小径部)7の個所において、キャップ部2bの樹脂材料が入り込んでいる。11は、キャップ部2bに形成された収容部である。収容部11は閉鎖部5を収容する。凹部(小径部)7に対応して、キャップ部2bは凸部12を有する。閉鎖部5と収容部11との凹凸嵌合によって、スパウト本体部2aとキャップ部2bとは、自然状態では、離間しない。13は螺合部(凸部)である。螺合部(凸部)13は円筒状部10の内周面に形成されている。螺合部(凹部)8と螺合部(凸部)13とは互いに雌雄の関係である。従って、キャップ部2bを所定(開蓋)方向に回動させると、多少螺旋状に(斜め方向に傾斜して)設けられた螺合部(凹部)8と螺合部(凸部)13との関係により、キャップ部2bは上側(図1中、上側)に向って移動する。14は、螺合部13の位置より基部9側(下側)において形成された薄肉部である。キャップ部2bを所定(開蓋)方向に回動させると、キャップ部2bは上側に移動するから、キャップ部2bは薄肉部14の個所において切断される。閉鎖部5は水平断面が非円形である。従って、閉鎖部5はキャップ部2bの回動と共に回動する。これに伴って、薄肉構造の連結部6は切断される。閉鎖部5は収容部11に収容されたままであるから、連結部6の切断後においては、閉鎖部5はキャップ部2bと動作を共にする。
【0045】
上記の如くに構成された容器の動作は次の通りである。キャップ部2bが開蓋方向に回動される。そうすると、キャップ部2bには上方向の力が作用する。円筒状部4の外形および円筒状部10の内形は円錐台形であるから、キャップ部2bの上側への移動はスムーズである。キャップ部2bの上側への移動により、薄肉部14は切断される。連結部6も切断される。キャップ部2bが更に開蓋方向に回動されると、キャップ部2bはスパウト本体部2aから取り除かれる(図2参照)。この後、図4に示される如く、チューブ15がスパウト本体部2a(円筒状部4)に接続される。この時、チューブ15が螺合部(凹部)8の位置まで差し込まれていると、螺合部(凹部)8における摩擦作用により、弾性を多少は有するチューブ15は抜け落ち難い。容器本体1内の内容物(例えば、液体)は、連結されたチューブ15を介して、導出される。この時まで、スパウト本体部2aの外表面は、キャップ部2bによって、保護されていた。従って、スパウト本体部2aの外表面は清浄である。スパウト本体部2aの外表面が汚染されていた場合の不安、即ち、前記内容物が導出される時に内容物が汚染されると言った恐れが無くなる。スパウト本体部2aの外表面に傷付きが起きる恐れも無い。従って、チューブ15接続作業に問題が起き無い。
【0046】
図7は、本発明になる第2実施形態の容器の要部の概略断面図である。
第2実施形態にあっては、スパウト本体部2aの基部3の厚さが薄く、キャップ部2bの基部9の厚さが厚い(図7参照)。基部の厚さが第1実施形態の場合とは逆に過ぎない。その他の構成は前記実施形態の構成と同じである。同一構成部分には同一な符号が付された。従って、詳細な説明は省略される。
【0047】
図8は、本発明になる第3実施形態のスパウト装置の概略断面図である。
第3実施形態にあっては、閉鎖部5が無い場合である。その他の構成は第1実施形態の構成と同じである。同一構成部分には同一な符号が付された。従って、詳細な説明は省略される。ガスバリア性樹脂からなる閉鎖部5が無い為、この個所からの酸素透過が心配される。従って、第3実施形態のスパウト装置よりも、第1実施形態のスパウト装置の方が好ましい。
【符号の説明】
【0048】
1 ガスバリア性材料で構成された容器本体部
2 スパウト装置
2a ガスバリア性材料で構成されスパウト本体部
2b キャップ部
3 スパウト本体部の基部
4 スパウト本体部の円筒状部
5 閉鎖部
6 連結部
7 凹部
8 螺合部(凹部)
9 キャップ部の基部
10 キャップ部の円筒状部
11 収容部
12 凸部
13 螺合部(凸部)
14 薄肉部
15 チューブ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8