特許第6076075号(P6076075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076075
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】検体分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   G01N35/10 F
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-279411(P2012-279411)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-122839(P2014-122839A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年3月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】正村 美樹夫
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−305148(JP,A)
【文献】 特開2007−101311(JP,A)
【文献】 特開平07−229905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超弾性金属により構成され、検体を検体容器から吸引する吸引管と、
吸引された検体に対する分析を行う分析部と、
所定の範囲内で水平方向に自由に移動できるように筐体内の所定位置に固定され、前記吸引管をすり鉢状の開口部から内部へ導いて洗浄する洗浄部と、
前記吸引管表面に付着させるリンス液を貯液させるリンス槽と、
前記吸引管について移動停止させ、前記検体容器から検体を吸引する第1の位置と、前記洗浄部における前記開口部に対応する第2の位置とを移動させると共に、前記吸引管の洗浄の前に前記吸引管を前記リンス槽の位置へ移動させて位置付け、前記吸引管表面にリンス液を付着させる移動停止手段と
を具備することを特徴とする検体分析装置。
【請求項2】
前記洗浄部における開口部から内部へ到る内壁面には、挿入される前記吸引管を囲繞するようにシールするパッキンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記吸引管の先端が鋭角の傾斜を持つように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記移動停止手段は、装置立ち上げ時または検体吸引前に前記吸引管を前記洗浄部位置へ移動させて位置付け、前記吸引管を洗浄部に貫通させる前に前記洗浄部の前記開口部にリンス液を付着させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記移動停止手段は、装置立ち上げ時または検体吸引前に前記吸引管を前記洗浄部位置へ移動させて位置付け、前記吸引管を前記洗浄部に貫通させながらリンス液を前記吸引管表面に付着させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項6】
前記洗浄部は、開口部から下方へ貫通した貫通口を有し、
上記貫通口の下側に位置付けられた状態の前記検体容器から前記吸引管によって検体を吸引することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの検体を吸引して分析する検体分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、検体分析装置においては、検査者は検体が入った検体容器を持った状態において、筐体外に露出した吸引管の先端から検体容器内へ吸引管を導くようにするものである。ここにおいて、検体容器から検体を吸引する吸引管はステンレス製のものが多く、このような構成によると、検体容器内へ吸引管を導いて検体を吸引させる過程において吸引管に塑性変形を生じさせる問題があった。
【0003】
これに対し、吸引管を超弾性金属により構成したものが知られている(特許文献1参照)。この構成によれば、吸引管が塑性変形するという問題は解消される。しかしながら、この特許文献1に記載の装置にあっては、吸引管を洗浄する洗浄部が洗浄管と共に移動する構成となっており、所定位置に設けられた洗浄部に吸引管が挿抜される構成とはなっていない。
【0004】
上記構成の洗浄部には、洗浄用の溶液を供給するためのチューブと、廃液を排出するためのチューブとが、それぞれ接続され、しかも洗浄部が吸引管と共に移動するため、洗浄部とチューブが移動する際の十分な空間が必要である。つまり、他の構成によって、装置の筐体内において洗浄部とチューブとの移動が妨げなく行われる必要があり、このために大きな空間が必要となり、装置が大型化することがあった。また、洗浄部の上部開口部と吸引管に隙間を設ける必要があり、効果的な洗浄を行うことが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4781075号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の検体分析装置の問題点を解決せんとしてなされたもので、その目的は、検査者が検体吸引過程において吸引管を塑性変形させることがなく、また、吸引管の洗浄を効果的に行うことが可能な小型で安価な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る検体分析装置は、超弾性金属により構成され、検体を検体容器から吸引する吸引管と、吸引された検体に対する分析を行う分析部と、
所定の範囲内で水平方向に自由に移動できるように筐体内の所定位置に固定され、前記吸引管をすり鉢状の開口部から内部へ導いて洗浄する洗浄部と、前記吸引管表面に付着させるリンス液を貯液させるリンス槽と、前記吸引管について移動停止させ、前記検体容器から検体を吸引する第1の位置と、前記洗浄部における前記開口部に対応する第2の位置とを移動させると共に、前記吸引管の洗浄の前に前記吸引管を前記リンス槽の位置へ移動させて位置付け、前記吸引管表面にリンス液を付着させる移動停止手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る検体分析装置では、前記洗浄部における開口部から内部へ到る内壁面には、挿入される吸引管を囲繞するようにシールするパッキンが設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る検体分析装置は、吸引管の先端が鋭角の傾斜を持つように形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る検体分析装置では、移動停止手段は、装置立ち上げ時または検体吸引前に吸引管を前記洗浄部位置へ移動させて位置付け、吸引管を洗浄部に貫通させる前に洗浄部の開口部にリンス液を付着させることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る検体分析装置では、移動停止手段は、装置立ち上げ時または検体吸引前に吸引管を前記洗浄部位置へ移動させて位置付け、吸引管を洗浄部に貫通させながらリンス液を吸引管表面に付着させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る検体分析装置は、洗浄部は、開口部から下方へ貫通した貫通口を有し、上記貫通口の下側に位置付けられた状態の検体容器から吸引管によって検体を吸引することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る検体分析装置によれば、吸引管が超弾性金属により構成されているので、塑性変形する心配がなく吸引の作業効率を高めることができる。洗浄部が筐体内の所定位置に配置されているので、大きな空間を必要とせず装置を小型化することができる。また、洗浄部の頭部が鉢状の開口部となっていることと洗浄部が半固定式であることから、吸引管を洗浄部内部へ挿入する際に、開口部の中心に正確に吸引管の下降ラインを合わせなくとも吸引管を適切に洗浄部内部へ挿入することができ、設計を容易にすることができ、安価な製品の供給が可能となる。
【0015】
本発明に係る検体分析装置によれば、洗浄部における開口部から内部へ到る内壁面には、挿入される吸引管を囲繞するようにシールするパッキンが設けられているので、パッキンと当接する吸引管の壁面から空気を吸引することがなく、吸引管の洗浄効率を高めることができる。また、吸引管の先端が鋭角の傾斜を持つように形成されているので、試薬セルのシール面に突き刺さるようにして貫通するので、貫通力が弱くても良く、大きなパワーを持つ駆動手段を用いる必要がないため、小型で安価な駆動部品を使用できるというという利点がある。
【0016】
本発明に係る検体分析装置によれば、洗浄部は、開口部から下方へ貫通した貫通口を有し、上記貫通口の下側に位置付けられた状態の検体容器から吸引管によって検体を吸引する構成となっているので、洗浄部の下方において検体を吸引して、その後に上部の洗浄部において洗浄を行うことができ、検体により汚れた吸引管を適切に洗浄することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る検体分析装置の実施形態を示す斜視図。
図2】本発明に係る検体分析装置の実施形態を示す正面図。
図3】本発明に係る検体分析装置の実施形態に用いられる吸引管の要部を示す拡大断面図。
図4】本発明に係る検体分析装置の実施形態に用いられる洗浄部を示す拡大断面図。
図5】本発明に係る検体分析装置の実施形態に用いられる洗浄部を示す拡大断面図
図6】本発明に係る検体分析装置の実施形態に用いられる吸引管の屈曲を示す一部省略図
図7】本発明に係る検体分析装置の実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明に係る検体分析装置の実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1に本発明に係る検体分析装置の実施形態の要部斜視図を示し、図2に正面図を示す。この検体分析装置は、図示しない筐体に固定される平板状の上シャーシ11と下シャーシ12との間に、これらを連結して支持する支持ポール13を有する。上シャーシ11の一端部には、2つのステッピングモータ14、15が備えられている。ステッピングモータ14の回転軸にはプーリー16が嵌着され、ステッピングモータ15の回転軸にはプーリー17が嵌着されている。
【0019】
プーリー16にはタイミングベルト18が嵌着され、このタイミングベルト18は上シャーシ11の対向辺側端部のプーリー19に嵌着されている。また、プーリー17にはタイミングベルト21が嵌着され、このタイミングベルト21は上シャーシ11のプーリー19に隣接する位置に設けられたプーリー22に嵌着されている。
【0020】
プーリー19は軸23に軸止されている。この軸23は下シャーシ12まで延びて、回転可能に上シャーシ11と下シャーシ12に嵌合されている。プーリー22は軸24に軸止されている。この軸24は下シャーシ12まで延びて、上シャーシ11と下シャーシ12に回転可能に嵌合されている。軸24の側壁にはネジ24Aが形成されている。軸24には、ネジ24Aに螺合するねじ部を内壁に備えた移動管25が外側に螺着されている。
【0021】
軸23の外周には、軸方向に対してはフリーであるが、軸23の回転に追従する移動ブロック26が嵌着されている。この移動ブロック26には移動管25から延びる結合ブリッジ27が結合されている。このため、ステッピングモータ15の回転により軸24が回転し、移動管25が上下に移動するときには、この移動に追従して移動ブロック26も上下移動する。
【0022】
移動ブロック26の上部には、外周付近の所定位置に幾つかの穴が穿設された円盤体28が設けられている。この円盤体28の外周付近の穴を、円盤体28の上下方向から挟むようにフォトインタラプタ29が設けられており、ステッピングモータ14の回転に応じて軸23が回転したときの回転位置検出が可能となっている。フォトインタラプタ29の信号は制御部80へ送られて回転制御に用いられる。
【0023】
移動ブロック26には、軸23からラジアル方向に離れる側に延びる支持アーム31が取り付けされている。支持アーム31は、軸23から平坦に延在し、上方へ屈曲する部分を経て再び平坦に形成されている。軸23における下シャーシ12側には、支持アーム31と大略同形状のガイドアーム32が設けられている。ガイドアーム32には補助ポール33が設けられ、この補助ポール33はガイドアーム32から支持アーム31を貫通して移動ブロック26の上部まで延びて固定されている。
【0024】
支持アーム31の先端には、検体を吸引するための吸引管34が吊下された状態で設けられている。吸引管34は、超弾性金属により構成され、吸引管34の先端がガイドアーム32の先端に設けられた貫通穴32Aを介して下降上昇可能となっている。図3に示すように、吸引管34の先端が鋭角の傾斜角θを持つように形成されている。より詳細には、吸引管34の先端に進むほど径が小径となるようにされ、例えば、テーパ面によって形成される角度αは、12度程度とすることができる。傾斜角θは、吸引管34の長手方向に直交する線分と、吸引管34の傾斜した先端面とによって構成される角度である。この傾斜角θは、10度から40度が好適である。
【0025】
ステッピングモータ14の回転により軸23が回転すると、支持アーム31とガイドアーム32と補助ポール33は、一体的に回転する。このとき、支持アーム31の先端に設けられた吸引管34もガイドアーム32の貫通穴32Aに入った状態で回転する。
【0026】
下シャーシ12における矩形面より外側へ突出した位置には、洗浄部40が設けられている。図4図5に示すように、洗浄部40は、筒状の基部41の下端部が下シャーシ12に埋め込まれた状態で下シャーシ12に半固定状態で取り付けられている。すなわち、洗浄部40は下シャーシ12に対して隙間の範囲内で水平方向に自由に移動することができる。基部41の上部には、蓋体42が螺合されている。蓋体42の上部中央には、すり鉢状の開口部43が形成されている。開口部43から基部41の中心に形成された貫通口44が形成されている。上記開口部43から基部41内部へ到る内壁面には、挿入される吸引管34を囲繞するようにシールするパッキン45が設けられている。つまり、貫通口44の上端部には、パッキン45が介装されている。
【0027】
更に、基部41の下側の外側壁から、基部41の中心に形成された貫通口44に向けてリンス液供給口46が形成されている。また、基部41の上側の外側壁から、基部41の中心に形成された貫通口44に向けてリンス液吸引口47が形成されている。リンス液供給口46には、図1のコネクタ48が結合されリンス液供給チューブ52が接続されている。リンス液吸引口47には、コネクタ49が結合されリンス液吸引チューブ53が接続されている。
【0028】
下シャーシ12における洗浄部40とは反対方向の端辺付近には、平板61が立設されており、上端が上シャーシ11に固定されている。この平板61の軸24側には、高さの異なる3か所にフォトインタラプタ62、63、64が設けられている。このフォトインタラプタ62、63、64の発光部・受光部間に対して、移動管25から突出して設けられた上下位置の支持板25Aが移動する。フォトインタラプタ62、63、64からの信号は、CPUなどにより構成される制御部80に送られる。フォトインタラプタ62、63、64に対する支持板25Aの通過・遮断状態によって、吸引管34を最上部まで引き上げたホームポジション、検体容器71や試薬セル72更にはリンス槽73より吸引を行う位置、洗浄部40において洗浄を行う位置などが検出可能である。
【0029】
洗浄部40が設けられた位置における下シャーシ12の外側は、図示しない筐体の外側であり、検体の吸引のときに検体容器71が検査者により位置付けられる。筐体内であって、ステッピングモータ14の回転により軸23が回転したとき吸引管34の先端が描く円弧上の第1所定点に対応する位置には、筒状のリンス槽73が設けられている。リンス槽73の底部には、吸引用のチューブ54が設けられている。筐体内であって、ステッピングモータ14の回転により軸23が回転したとき吸引管34の先端が描く円弧上の第2所定点に対応する位置には、試薬セル72がセットされる。筐体内であって、ステッピングモータ14の回転により軸23が回転したとき吸引管34の先端が描く円弧上の第1及び第2所定点以外の所定点に対応する位置には、分析処理部や必要に応じて混合処理部などがセットされる。
【0030】
リンス液タンク81には、リンス液が蓄積されており、ピストン82及びバルブ83を介してチューブ51、52が接続されている。チューブ51は、吸引管34の上端部に接続され、吸引管34の内部へリンス液を供給可能である。
【0031】
廃液槽84には、洗浄後の廃液やリンス処理後のリンス液が貯液される。廃液槽84には、ポンプ85及びバルブ86を介してチューブ53、54に接続されている。CPUなどにより構成される制御部80は、ピストン82、バルブ83、86を制御して洗浄液(リンス液)の供給・吸引の制御を行う。
【0032】
なお、図1における制御部80、リンス液タンク81、ピストン82、バルブ83、86、ポンプ85、チューブ51〜54は、筐体内の所定位置に設けられるもので、図は構成の存在を示したものである。これらの構成は、図2においては省略してある。
【0033】
以上の通りに構成された検体分析装置においては、図7に示すフローチャートに対応するプログラムにより制御部80が動作し、各部を制御して検体分析処理を行う。以下、このフローチャートに基づき動作を説明する。図示しない電源スイッチにより電源が投入され、分析処理がスタートする。制御部80は、ステッピングモータ14、15の回転を制御してリンス槽73の上部へ吸引管34の先端を位置付け、更にリンス槽73に向かって下降させてリンス槽73内の所定位置に先端を位置付ける。制御部80は、バルブ83を吸引管34側へ切り換え、ピストン82を駆動してリンス液タンク81からリンス液を吸引管34を介してリンス槽73内に供給し、吸引管34の表面をリンス液により濡らす(S11)。このときバルブ86が閉じられており、リンス槽73内からの吸引は行われず、後にバルブ86及びポンプ85が制御されてリンス槽73内のリンス液が吸引されて廃液槽84に導かれる。
【0034】
ステップS11に続いてリンス槽73内から吸引管34を引き上げ、回転させて洗浄部40の開口部43の上方に吸引管34を位置付ける。このときの状態を図4に示す。更に、図5に示すように吸引管34を下降させる(S12)。このとき、吸引管34の表面がリンス液により濡れているため、パッキン45の部分を通過する際に摩擦による不快音の発生を防止することができる。吸引管34を更に下降させ筐体の外部へ露出させて検体の吸引位置へ位置付ける(S13)。
【0035】
検査者は検体が入った検体容器71を持って、吸引管34の先端から検体容器71内に導き吸引可能な状態とする。このとき、超弾性金属により構成された吸引管34の筐体から露出した部分を図6(a)に示すように屈曲させることができる。この状態となっても吸引管34は屈曲による塑性変形が生じることなく、検体容器71を取り外した後には、図6(b)に示すように元に復旧する。吸引管34を検体容器71内の検体に入れた状態で検査者が吸引のスタートスイッチを操作すると、制御部80によるバルブ83とピストン82の制御により、吸引管34へ検体が所定量吸引され、吸引管34が引き上げられて洗浄位置へ位置付けられる(S14)。図5は、このときの状態を示すものであっても良い。
【0036】
洗浄位置に吸引管34が位置付けられると、制御部80によってバルブ83が切り換えられ、ピストン82によってリンス液タンク81からリンス液が供給される状態とされると共に、バルブ86とポンプ85が制御されて洗浄部40に供給されたリンス液が吸引されるようにする。このとき、吸引管34が洗浄部40内で上下させられて洗浄が行われる(S15)。
【0037】
洗浄が終了すると、リンス液の供給及び吸引も終了され、吸引管34が上昇されて洗浄部40から引き抜かれ、回転される。この回転により吸引管34が試薬セル72の上方位置へ位置付けられ、下降されて試薬セル72のシール面を貫通して所定の深さまで下降させられる。このとき、吸引管34の先端が鋭角の傾斜を持つように形成されているので、試薬セル72のシール面を大きな貫通力を要せずに貫通する。吸引管34が所定位置にあるとき、試薬セル72への検体吐出、検体と試薬の混合攪拌、更には試薬セル72から試薬が混合された検体の吸引が行われる(S16)。なお、試薬セル72は、所要の試薬が入ったものが予め検査者によってセットされる。
【0038】
検体と試薬の混合攪拌が終了すると、吸引管34が上昇されて回転され、図示しない分析処理部の上部へ位置付けられ、所定の高さまで下降されて、検体と試薬の混合攪拌された分析対象液が吐出される。分析処理部は制御部80の制御下で分析を行い(S17)、結果を自装置の表示部へ表示し、プリンタから印刷出力し、或いはパーソナルコンピュータへ送って表示などの処理を可能とすることができる。
【0039】
以上の通り、超弾性金属製の吸引管と、半固定的に設けられた洗浄部40を備えた検体分析装置において、検査者が検体吸引過程において吸引管を塑性変形させることがなく、また、吸引管の洗浄を効果的に行うことが可能な小型で安価な装置を提供することができる。
【0040】
本実施形態では、リンス液タンク81にはリンス液が蓄積されているが、リンス液の代りに洗浄液を蓄積し、これを使用しても良い。また、本実施形態では、吸引管34を洗浄部40に通す前にリンス槽73内のリンス液によって吸引管34の表面を濡らすようにしたが、これに限定されない。例えば、当該装置の立ち上げ時または検体吸引前に、吸引管34を洗浄部40の位置へ移動させて位置付け、リンス液を吸引管34から開口部43に吐出させる。或いは吸引管34を洗浄部40に貫通させながらリンス液を洗浄部40のリンス液供給口46から吐出させリンス液吸引口47から吸引する。これにより、洗浄部40の開口部43や貫通口44の内壁、更には吸引管34の表面にリンス液を付着させ、摩擦によって生じる不快音の発生を防止する構成としても良い。
【符号の説明】
【0041】
11 上シャーシ
12 下シャーシ
14、15 ステッピングモータ
23、24 軸
25 移動管
31 支持アーム
32 ガイドアーム
34 吸引管
40 洗浄部
43 開口部
45 パッキン
52 リンス液供給チューブ
53 リンス液吸引チューブ
72 試薬セル
73 リンス槽
80 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7