特許第6076125号(P6076125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6076125リン系(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076125
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】リン系(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6574 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   C07F9/6574 ACSP
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-28169(P2013-28169)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-156426(P2014-156426A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】391052574
【氏名又は名称】三光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】小宮 直城
(72)【発明者】
【氏名】井上 彰
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 台湾特許出願公開第201206951(TW,A)
【文献】 特開2008−303260(JP,A)
【文献】 特開昭61−282388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/00−9/94
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるリン系(メタ)アクリレート化合物。
【化1】
(式中、Yはアラルキル基であり;、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアリル基であり;A及びZは、それぞれ独立にエチレン基又はイソプロピレン基であり;n及びmは、それぞれ独立に0、1又は2であり、n又はmが2である場合、2個のA又はZは互いに同一でも異なっていてもよく;R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり、ただし、R及びRの少なくとも一方は(メタ)アクリロイル基である。)
【請求項2】
下記式(a)で表される請求項1に記載のリン系(メタ)アクリレート化合物。
【化2】
【請求項3】
下記一般式(III)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド及びジ(メタ)アクリル酸無水物からなる群から選択される1種以上と、を反応させて、下記一般式(I)−1で表されるリン系(メタ)アクリレート化合物を得る工程を有する、下記一般式(I)−1で表されるリン系(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化3】
(式中、Yはアラルキル基であり;、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアリル基であり;R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり、ただし、R及びRの少なくとも一方は(メタ)アクリロイル基である。)
【請求項4】
下記一般式(III)で表される化合物と、エチレンオキシド、炭酸エチレン、プロピレンオキシド及び炭酸プロピレンからなる群から選択される1種以上と、を反応させて、下記一般式(IV)で表される化合物を得る工程と、
下記一般式(IV)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド及びジ(メタ)アクリル酸無水物からなる群から選択される1種以上と、を反応させて、下記一般式(I)−2で表されるリン系(メタ)アクリレート化合物を得る工程と、
を有する、下記一般式(I)−2で表されるリン系(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化4】
(式中、Yはアラルキル基であり;、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアリル基であり;A及びZは、それぞれ独立にエチレン基又はイソプロピレン基であり;n及びmは、それぞれ独立に0、1又は2であり、ただし、n及びmが共に0になることはなく、n又はmが2である場合、2個のA又はZは互いに同一でも異なっていてもよく;R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり、ただし、R及びRの少なくとも一方は(メタ)アクリロイル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のリン系(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメタクリル酸メチルをはじめとする(メタ)アクリル系樹脂は、その透明性を活かして光学材料等として多岐の用途に利用されている。ところが、通常の(メタ)アクリル系樹脂は、屈折率の高さが不十分であり、高い屈折率を要求される用途での使用が困難であるため、さらに高い屈折率を有する新規の材料が求められている。
【0003】
これに対して、高い屈折率を有する(メタ)アクリレートとして、ベンゼン環骨格を導入したアクリレートが開示されている(特許文献1参照)。その屈折率は1.58程度であり、上記のポリメタクリル酸メチルをはじめとするそれまでの(メタ)アクリル系樹脂よりも屈折率が高い。
また、樹脂材料の屈折率を高くする方法として、分極率が高い硫黄原子を分子中に導入する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−58950号公報
【特許文献2】特開2002−20433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で開示されているアクリレートでも、近年ではもはや屈折率が充分に高いとはいえないという問題点があった。
また、特許文献2で開示されている樹脂材料は、その構造中に硫黄原子を含むため、製造中等に特有の臭気が発生するという問題点があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、光学樹脂材料等への利用に好適な高い屈折率を有し、且つ硫黄原子を含まない新規の化合物、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
本発明は、下記一般式(I)で表されるリン系(メタ)アクリレート化合物を提供する。
【0008】
【化1】
(式中、Yはアラルキル基であり;、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアリル基であり;A及びZは、それぞれ独立にエチレン基又はイソプロピレン基であり;n及びmは、それぞれ独立に0、1又は2であり、n又はmが2である場合、2個のA又はZは互いに同一でも異なっていてもよく;R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり、ただし、R及びRの少なくとも一方は(メタ)アクリロイル基である。)
【0009】
本発明のリン系(メタ)アクリレート化合物は、下記式(a)で表されるものが好ましい。
【0010】
【化2】
【0015】
また、本発明は、下記一般式(III)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド及びジ(メタ)アクリル酸無水物からなる群から選択される1種以上と、を反応させて、下記一般式(I)−1で表されるリン系(メタ)アクリレート化合物を得る工程を有する、下記一般式(I)−1で表されるリン系(メタ)アクリレート化合物の製造方法を提供する。
【0016】
【化5】
(式中、Yはアラルキル基であり;、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアリル基であり;R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり、ただし、R及びRの少なくとも一方は(メタ)アクリロイル基である。)
【0017】
また、本発明は、下記一般式(III)で表される化合物と、エチレンオキシド、炭酸エチレン、プロピレンオキシド及び炭酸プロピレンからなる群から選択される1種以上と、を反応させて、下記一般式(IV)で表される化合物を得る工程と、下記一般式(IV)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド及びジ(メタ)アクリル酸無水物からなる群から選択される1種以上と、を反応させて、下記一般式(I)−2で表されるリン系(メタ)アクリレート化合物を得る工程と、を有する、下記一般式(I)−2で表されるリン系(メタ)アクリレート化合物の製造方法を提供する。
【0018】
【化6】
(式中、Yはアラルキル基であり;、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアリル基であり;A及びZは、それぞれ独立にエチレン基又はイソプロピレン基であり;n及びmは、それぞれ独立に0、1又は2であり、ただし、n及びmが共に0になることはなく、n又はmが2である場合、2個のA又はZは互いに同一でも異なっていてもよく;R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり、ただし、R及びRの少なくとも一方は(メタ)アクリロイル基である。)
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光学樹脂材料等への利用に好適な高い屈折率を有し、且つ硫黄原子を含まない新規の化合物、及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1で得られた化合物(a)の赤外吸収スペクトルのデータである。
図2】実施例2で得られた化合物(b)の赤外吸収スペクトルのデータである。
図3】実施例3で得られた化合物(c)の赤外吸収スペクトルのデータである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るリン系(メタ)アクリレート化合物は、下記一般式(I)で表される(以下、「化合物(I)」と略記することがある)、ジヒドロ−オキサ−ホスホ−フェナントレン誘導体である。
化合物(I)は、高い屈折率を有すると共に、硫黄原子を含む化合物のような特有の臭気を発生しないものとして新たに見出された、リン原子及び(メタ)アクリロイル基を有するジヒドロ−オキサ−ホスホ−フェナントレン骨格を有する新規の化合物である。
【0022】
【化7】
(式中、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアリル基であり;A及びZは、それぞれ独立にエチレン基又はイソプロピレン基であり;n及びmは、それぞれ独立に0、1又は2であり、n又はmが2である場合、2個のA又はZは互いに同一でも異なっていてもよく;R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり、ただし、R及びRの少なくとも一方は(メタ)アクリロイル基である。)
【0023】
式中、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアリル基(2−プロペニル基)である。すなわち、Y〜Yは、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみが同じであってもよい。
【0024】
〜Yにおける前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
【0025】
〜Yにおける前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、炭素数が1〜10であることが好ましい。
【0026】
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基が例示できる。
【0027】
環状の前記アルキル基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、多環状である場合、その環員数は2以上であれば特に限定されない。
環状の前記アルキル基は、炭素数が3〜10であることが好ましく、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示でき、さらに、これら環状のアルキル基の1個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換されたものが例示できる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基としては、上記で例示したものが挙げられる。
【0028】
〜Yにおける前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、多環状である場合、その環員数は2以上であれば特に限定されない。
前記アリール基は、炭素数が6〜12であることが好ましく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が例示でき、さらに、これらアリール基の1個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、あるいはアリール基で置換されたものが例示できる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基、並びにアリール基としては、上記で例示したものが挙げられる。
【0029】
〜Yにおける前記アラルキル基としては、ベンジル基(フェニルメチル基)、1−メチルベンジル基、フェネチル基(フェニルエチル基)等、Y〜Yにおける前記アルキル基の1個の水素原子が、Y〜Yにおける前記アリール基で置換されてなる基が例示できる。
〜Yにおける前記アラルキル基は、炭素数が7〜22であることが好ましく、7〜12であることがより好ましい。
【0030】
〜Yにおける前記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等、水素原子、又はY〜Yにおける前記アルキル基、アリール基若しくはアラルキル基が、カルボニル基(−C(=O)−)の炭素原子に結合してなる1価の基が例示できる。
〜Yにおける前記アシル基は、炭素数が1〜23であることが好ましく、1〜13であることがより好ましい。
【0031】
式中、A及びZは、それぞれ独立にエチレン基(−CHCH−)又はイソプロピレン基(−CH(CH)CH−)である。
【0032】
式中、n及びmは、それぞれ独立に0、1又は2である。
nが2である場合、2個のAは互いに同一でも異なっていてもよく、mが2である場合、2個のZは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0033】
式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は(メタ)アクリロイル基である。ただし、R及びRの少なくとも一方は(メタ)アクリロイル基である。
なお、本明細書において「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包括する概念とする。
【0034】
化合物(I)で好ましいものとしては、下記式(a)、(b)及び(c)で表されるもの(以下、それぞれ「化合物(a)」、「化合物(b)」及び「化合物(c)と略記することがある)が例示できる。
【0035】
【化8】
【0036】
化合物(I)は、その構造中にリン原子を有することから、分極率が高く、高い屈折率を有し、屈折率を好ましくは1.60以上とすることが可能である。また、化合物(I)は、高い屈折率を有するため、光学樹脂材料等への利用に好適であり、例えば、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT用プリズムレンズシート、光ファイバー、光ディスク等の材料として好適である。また、化合物(I)は、その構造中にリン原子を有することから、このような化合物に特有の難燃性や基材との高い密着性(「特表2002−506480号公報」、「特開2007−231107号公報」参照)が求められる樹脂材料としても好適である。
さらに、化合物(I)は、その構造中に硫黄原子を含まないため、その製造中等に特有の臭気が発生しない。
【0037】
化合物(I)は、例えば、n及びmがそれぞれ0であるか否かに応じて、以下に示す方法で製造できる。
化合物(I)のうち、n=m=0であるものに該当する下記一般式(I)−1で表される化合物(以下、「化合物(I)−1」と略記することがある)は、下記一般式(III)で表される化合物(以下、「化合物(III)」と略記することがある)と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド及びジ(メタ)アクリル酸無水物からなる群から選択される1種以上と、を反応させて、下記一般式(I)−1で表されるリン系(メタ)アクリレート化合物(化合物(I)−1)を得る工程を有する方法で製造できる。
【0038】
【化9】
(式中、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアリル基であり;R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり、ただし、R及びRの少なくとも一方は(メタ)アクリロイル基である。)
【0039】
一般式(III)及び(I)−1において、Y、Y、Y、Y、R及びRは、一般式(I)におけるY、Y、Y、Y、R及びRと同じである。
【0040】
化合物(I)−1を得る工程においては、化合物(III)と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド及びジ(メタ)アクリル酸無水物からなる群から選択される1種以上との反応を、好ましくはこれらの少なくとも一方を有機溶媒中に溶解させて行う。また、かかる反応は触媒を用いて行ってもよいし、無触媒で行ってもよい。
【0041】
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド及びジ(メタ)アクリル酸無水物からなる群から選択される1種以上の総使用量は、化合物(III)に対して2〜6倍モル量であることが好ましく、2〜4倍モル量であることがより好ましい。
【0042】
化合物(I)−1を得る工程における前記有機溶媒は、特に限定されないが、好ましいものとして、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル等のエステル;ジクロロメタン、トリクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;メチルイソブチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;フェノール等の芳香族アルコール;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミドが例示できる。
前記有機溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
化合物(I)−1を得る工程における前記触媒は、用いるその他の原料に応じて適宜選択することが好ましい。また、前記触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
例えば、(メタ)アクリル酸を用いる場合には、酸触媒を用いることが好ましい。酸触媒は特に限定されないが、好ましいものとして、塩酸、硫酸等の無機酸;酢酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸等が例示できる。
(メタ)アクリル酸クロリドを用いる場合には、塩基触媒を用いることが好ましい。塩基触媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、有機塩基であれば、トリエチルアミン、ジエチルアミン等の含窒素脂肪族化合物;ピリジン、ピリミジン等の含窒素芳香族複素環化合物等が例示でき、無機塩基であれば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩又は炭酸水素塩等が例示できる。
ジ(メタ)アクリル酸無水物を用いる場合には、エステル触媒、酸触媒、塩基触媒、ルイス酸触媒を用いることができる。ここで、エステル触媒としては、酢酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム等の、低級カルボン酸のナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が例示できる。また、酸触媒としては、硫酸、ホウ酸等の無機酸;メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等が例示できる。また、塩基触媒としては、有機塩基であれば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素脂肪族化合物;ピリジン等の含窒素芳香族複素環化合物等が例示できる。また、ルイス酸触媒としては、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等が例示できる。
【0045】
化合物(I)−1を得る工程における前記反応は、必要に応じて、パラメトキシフェノール、ハイドロキノン等の重合禁止剤の存在下で行ってもよい。
【0046】
化合物(I)−1を得る工程における前記反応で、反応温度は−25〜150℃であることが好ましく、高温で反応させると重合反応が生じる可能性が高くなるので、−25〜100℃であることがより好ましい。また、反応時間は、反応温度に応じて調節することが好ましいが、1〜15時間であることが好ましい。
【0047】
化合物(I)−1を得る工程において、前記反応の終了後は、化合物(I)−1の物性、使用した原料や触媒の種類及び量、有機溶媒の使用の有無等を考慮し、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、化合物(I)−1を取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、化合物(I)−1を取り出せばよい。また、取り出した化合物(I)−1は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
【0048】
なお、化合物(III)は、例えば、「特開昭61−236787号公報」に記載の方法等、公知の方法で、下記一般式(II)で表される化合物(以下、「化合物(II)」と略記することがある)と、1,4−ナフトキノンと、を反応させる工程を有する方法により製造できる。
例えば、化合物(II)と1,4−ナフトキノンとの反応においては、化合物(II)のエチレングリコール低級アルキルエーテル、プロピレングリコール低級アルキルエーテル、ベンゼン又はトルエン等の不活性有機溶媒溶液を調製し、化合物(II)が1,4−ナフトキノンに対して過剰量となるように調節して、1,4−ナフトキノンを好ましくは微粉末状又は上記と同様の不活性有機溶媒溶液として添加した後、好ましくは60〜150℃で0.5〜5時間、より好ましくは70〜120℃で1.5〜3時間反応させ、室温程度に冷却して析出した結晶をろ過、洗浄及び乾燥させることで、化合物(III)が得られる。ただし、化合物(III)の製造方法は、これに限定されない。
【0049】
【化10】
(式中、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアリル基である。)
【0050】
一般式(II)において、Y、Y、Y及びYは、一般式(I)におけるY、Y、Y及びYと同じである。
【0051】
なお、化合物(II)又は(III)としては、市販品を用いてもよい。例えば、化合物(II)には、Y、Y、Y及びYがすべて水素原子であるもの(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスホフェナントレン−10−オキサイド、三光社製「HCA」)や、Yがベンジル基で、且つY、Y及びYがすべて水素原子であるもの(8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスホフェナントレン−10−オキサイド、三光社製「Bz−HCA」)等の市販品がある。また、化合物(III)には、Y、Y、Y及びYがすべて水素原子であるもの(9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’,4’−ジヒドロキシ)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、三光社製「HCA−NQ」)や、Yがベンジル基で、且つY、Y及びYがすべて水素原子であるもの(8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−10−[2’−(1’,4’−ジヒドロキシ)ナフチル]−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、三光社製「Bz−HCA−NQ」)等の市販品がある。
【0052】
化合物(I)のうち、n及びmが共に0である場合を除いたものに該当する下記一般式(I)−2で表される化合物(以下、「化合物(I)−2」と略記することがある)は、化合物(III)と、エチレンオキシド、炭酸エチレン、プロピレンオキシド及び炭酸プロピレンからなる群から選択される1種以上と、を反応させて、下記一般式(IV)で表される化合物(以下、「化合物(IV)」と略記することがある)を得る工程と、化合物(IV)と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド及びジ(メタ)アクリル酸無水物からなる群から選択される1種以上と、を反応させて、下記一般式(I)−2で表されるリン系(メタ)アクリレート化合物(化合物(I)−2)を得る工程と、を有する方法で製造できる。
【0053】
【化11】
(式中、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアリル基であり;A及びZは、それぞれ独立にエチレン基又はイソプロピレン基であり;n及びmは、それぞれ独立に0、1又は2であり、ただし、n及びmが共に0になることはなく、n又はmが2である場合、2個のA又はZは互いに同一でも異なっていてもよく;R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり、ただし、R及びRの少なくとも一方は(メタ)アクリロイル基である。)
【0054】
一般式(IV)及び(I)−2において、Y、Y、Y、Y、A、Z、R及びRは、一般式(I)におけるY、Y、Y、Y、A、Z、R及びRと同じである。
また、一般式(IV)及び(I)−2において、n及びmは、それぞれ独立に0、1又は2であり、ただし、n及びmが共に(同時に)0になることはなく、nが2である場合、2個のAは互いに同一でも異なっていてもよく、mが2である場合、2個Zは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0055】
以下、まず、n及びmが共に0ではない場合について説明する。
この場合、化合物(IV)を得る工程においては、化合物(III)と、エチレンオキシド、炭酸エチレン、プロピレンオキシド及び炭酸プロピレンからなる群から選択される1種以上との反応を、好ましくはこれらの少なくとも一方を有機溶媒中に溶解させて行う。また、かかる反応は触媒を用いて行ってもよいし、無触媒で行ってもよい。
エチレンオキシド、炭酸エチレン、プロピレンオキシド及び炭酸プロピレンは、化合物(IV)中のA及びZを与えるものである。
【0056】
エチレンオキシド、炭酸エチレン、プロピレンオキシド及び炭酸プロピレンからなる群から選択される1種以上の総使用量は、化合物(III)に対して2〜6倍モル量であることが好ましく、2〜4倍モル量であることがより好ましい。
【0057】
化合物(IV)を得る工程における前記有機溶媒は、化合物(I)−1を得る工程における有機溶媒と同様でよい。
【0058】
化合物(IV)を得る工程における前記触媒は、用いるその他の原料と反応して、目的の反応を阻害しない限り、特に限定されない。また、前記触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
前記触媒で好ましいものとしては、酸触媒、塩基触媒が例示できる。
酸触媒は特に限定されないが、好ましいものとして、塩酸、硫酸等の無機酸;酢酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等が例示できる。
塩基触媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、無機塩基であれば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩又は炭酸水素塩等が例示できる。
【0060】
化合物(IV)を得る工程における前記反応で、反応温度は100〜180℃であることが好ましく、140〜160℃であることがより好ましい。また、反応時間は、反応温度に応じて調節することが好ましいが、1〜15時間であることが好ましい。
【0061】
化合物(IV)を得る工程において、前記反応の終了後は、化合物(I)−1を得る工程と同様に、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、化合物(IV)を取り出せばよい。また、必要に応じて適宜後処理を行った後、化合物(IV)を取り出すことなく、次工程(化合物(I)−2を得る工程)を行ってもよい。
【0062】
次に、n及びmの一方のみが0である場合について説明する。
この場合、化合物(IV)を得る工程における前記反応では、エチレンオキシド、炭酸エチレン、プロピレンオキシド及び炭酸プロピレンからなる群から選択される1種以上(以下、「エチレンオキシド等」と略記することがある)の総使用量を、化合物(III)に対して好ましくは2倍モル量未満、より好ましくは0.8〜1.8倍モル量、さらに好ましくは1〜1.5倍モル量とするなど、上記のn及びmが共に0ではない場合よりも、エチレンオキシド等の総使用量を低減することで、目的とする化合物(IV)の生成量が向上する。化合物(IV)の生成量を向上させる方法としては、このようなエチレンオキシド等の総使用量を低減する方法以外にも、例えば、上記のn及びmが共に0ではない場合よりも、反応温度を低下させる方法(例えば、反応温度を好ましくは80℃以上100℃未満とする)、反応時間を短縮する方法(例えば、反応時間を好ましくは30分以上1時間未満とする)等が例示できる。また、これらの方法を2種以上併用してもよい。これらの方法を適用する場合の化合物(IV)を得る工程は、上記のように条件を変更したこと以外は、上記のn及びmが共に0ではない場合と同じ方法で行えばよい。副生成物が生じた場合には、上記の取り出し方法や精製方法として適したものを適用することで、目的とする化合物(IV)が容易に得られる。
【0063】
化合物(IV)を得る工程を行った後は、化合物(I)−2を得る工程を行う。
化合物(I)−2を得る工程は、化合物(III)に代えて化合物(IV)を用いること以外は、上記の化合物(I)−1を得る工程と同じ方法で行うことができる。例えば、反応の終了後は、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、化合物(I)−2を取り出せばよく、取り出した化合物(I)−2は、さらに必要に応じて精製してもよい。
【0064】
上記の化合物(I)の製造方法は、いずれも目的物(化合物(I)−1及び(I)−2)を効率よく製造できる点で、優れた方法である。
【実施例】
【0065】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下に示す実施例2及び実施例3は参考例である。
【0066】
<化合物(I)の製造>
[実施例1]
(化合物(a)の製造)
【0067】
【化12】
【0068】
1000mLの4口フラスコに化合物(III)−101(Bz−HCA−NQ)(139.3g、0.30mol)及びDMAc(448.8g、5.2mol)を加えて溶解させ、ここへ、パラメトキシフェノール(0.08g、0.006mol)を溶解させたアクリル酸クロリド(81.9g、0.90mol)を滴下し、さらにトリエチルアミン(100.0g、0.99mol)を滴下した。次いで、10℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を水中に投入し、結晶を析出させ、溶媒を除去し、粗結晶を得た。得られた粗結晶をメチルイソブチルケトンに溶解させ、水洗、脱水及び脱色操作を順次行った後、濃縮し、得られた濃縮液に種結晶を投入して晶析を行い、濾過により結晶を分離して、目的物である白色結晶を得た(収量103.2g、収率60.0%)。ここで収率は、化合物(III)−101(Bz−HCA−NQ)を基準とした値である。
【0069】
得られた白色結晶の融点は100℃であった。
また、白色結晶を溶媒に溶解させて、下記式(1)により25℃での屈折率(x)を算出したところ、1.645であった。
x={z×(w+w)−y×w}/w ・・・・(1)
(式中、xは結晶の屈折率であり;yは溶媒の屈折率であり;zは結晶を溶媒に溶解させた溶液の屈折率であり;wは溶解させた結晶の質量であり;wは結晶の溶解に要した溶媒の質量である。)
【0070】
得られた白色結晶の元素分析値を、理論値と共に以下に示す。なお、理論値は「C35H25O6P1」として算出している。
実測値(%) C:73.48、H:4.45、O:16.79、P:5.28
理論値(%) C:73.42、H:4.40、O:16.77、P:5.41
【0071】
得られた白色結晶の全反射測定法による赤外吸収スペクトルのデータ(IRデータ)を図1に示す。
【0072】
図1から明らかなように、白色結晶は、波長1240cm−1にホスホロソ二重結合(−P=O)を示す吸収ピーク、波長1744cm−1にカルボニル基(C=O)を示す吸収ピーク、波長1632cm−1に「C=C」を示す吸収ピーク、波長3026cm−1及び3065cm−1に「=C−H」を示す吸収ピーク、波長2922cm−1に「−CH−」を示す吸収ピークをそれぞれ有し、さらに波長1462cm−1及び1595cm−1にナフタレン環を示す吸収ピークを有していた。
また、元素分析値(実測値)は理論値とよく一致していた。
以上より、得られた白色結晶が化合物(a)であることを確認できた。
【0073】
[実施例2]
(化合物(b)の製造)
【0074】
【化13】
【0075】
1000mLの4口フラスコに化合物(III)−102(HCA−NQ)(112.2g、0.30mol)及びDMAc(448.8g、5.2mol)を加えて溶解させ、ここへパラメトキシフェノール(0.08g、0.006mol)を溶解させたアクリル酸クロリド(81.9g、0.90mol)を滴下し、さらに、トリエチルアミン(100.0g、0.99mol)を滴下した。次いで、10℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を水中に投入し、結晶を析出させ、溶媒を除去し、粗結晶を得た。得られた粗結晶をメチルイソブチルケトンに溶解させ、水洗、脱水及び脱色操作を順次行った後、濃縮し、得られた濃縮液に種結晶を投入して晶析を行い、濾過により結晶を分離して、目的物である白色結晶を得た(収量95.6g、収率66.1%)。ここで収率は、化合物(III)−102(HCA−NQ)を基準とした値である。
【0076】
得られた白色結晶の融点は188℃であった。
また、実施例1と同じ方法で白色結晶の25℃での屈折率(x)を算出したところ、1.642であった。
【0077】
得られた白色結晶の元素分析値を、理論値と共に以下に示す。なお、理論値は「C28H19O6P1」として算出している。
実測値(%) C:69.84、H:3.95、O:19.94、P:6.27
理論値(%) C:69.71、H:3.97、O:19.90、P:6.42
【0078】
得られた白色結晶のKBr錠剤法による赤外吸収スペクトルのデータ(IRデータ)を図2に示す。
【0079】
図2から明らかなように、白色結晶は、波長1242cm−1にホスホロソ二重結合(−P=O)を示す吸収ピーク、波長1744cm−1にカルボニル基(C=O)を示す吸収ピーク、波長1624cm−1に「C=C」を示す吸収ピーク、波長3038cm−1及び3067cm−1に「=C−H」を示す吸収ピークをそれぞれ有し、さらに波長1479cm−1及び1595cm−1にナフタレン環を示す吸収ピークを有していた。
また、元素分析値(実測値)は理論値とよく一致していた。
以上より、得られた白色結晶が化合物(b)であることを確認できた。
【0080】
[実施例3]
(化合物(c)の製造)
【0081】
【化14】
【0082】
1000mLの4口フラスコに化合物(III)−102(HCA−NQ)(299.2g、0.80mol)、DMAc(299.2g、3.4mol)、炭酸エチレン(154.9g、1.8mol)及び炭酸ナトリウム(0.90g、0.008mol)を加えて溶解させ、160℃で8時間反応させた。反応終了後、冷却して結晶を析出させ(晶析し)、濾過により結晶を分離して、白色結晶を得た。さらに得られた白色結晶について、酢酸ベンジルを用いて再結晶化を行い、白色結晶を得た(収量304.2g、収率82.2%)。ここで収率は、化合物(III)−102(HCA−NQ)を基準とした値である。
【0083】
得られた白色結晶の融点は205℃であった。
また、実施例1と同じ方法で白色結晶の25℃での屈折率(x)を算出したところ、1.661であった。
得られた白色結晶は、化合物(IV)−101(HCA−NQ−EO)であった。
【0084】
1000mLの4口フラスコに化合物(IV)−101(HCA−NQ−EO)(231.0g、0.50mol)、フェノール(231.0g、2.5mol)、トルエン(231.0g、2.5mol)、パラトルエンスルホン酸(18.7g、0.1mol)及びパラメトキシフェノール(0.1g、0.0008mol)を加えて溶解させ、100℃でフラスコ内の圧力を約40kPaとしてトルエンを還流させ、そこへアクリル酸(93.6g、1.3mol)を滴下し、反応で生成する水を系外に除去しながら11時間反応させた。反応終了後、水洗、脱水及び脱色操作を順次行った後、濃縮し、得られた濃縮液に種結晶を投入して晶析を行い、濾過により結晶を分離して、目的物である白色結晶を得た(収量207.3g、収率72.7%)。ここで収率は、化合物(IV)−101(HCA−NQ−EO)を基準とした値である。
【0085】
得られた白色結晶の融点は115℃であった。
また、実施例1と同じ方法で白色結晶の25℃での屈折率(x)を算出したところ、1.616であった。
【0086】
得られた白色結晶の元素分析値を、理論値と共に以下に示す。なお、理論値は「C32H27O8P1」として算出している。
実測値(%) C:67.63、H:4.71、O:22.32、P:5.34
理論値(%) C:67.37、H:4.77、O:22.43、P:5.43
【0087】
得られた白色結晶のKBr錠剤法による赤外吸収スペクトルのデータ(IRデータ)を図3に示す。
【0088】
図3から明らかなように、白色結晶は、波長1240cm−1にホスホロソ二重結合(−P=O)を示す吸収ピーク、波長1721cm−1にカルボニル基(C=O)を示す吸収ピーク、波長1620cm−1に「C=C」を示す吸収ピーク、波長3067cm−1に「=C−H」を示す吸収ピーク、波長2886cm−1及び2949cm−1に「−CH−」を示す吸収ピークをそれぞれ有し、さらに波長1478cm−1及び1587cm−1にナフタレン環を示す吸収ピークを有していた。
また、元素分析値(実測値)は理論値とよく一致していた。
以上より、得られた白色結晶が化合物(c)であることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、光学樹脂材料等の高い屈折率を必要とされる材料分野で利用可能である。
図1
図2
図3