(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076134
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】凍結保存用容器
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
A61J3/00 301
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-36944(P2013-36944)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-161603(P2014-161603A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 守
(72)【発明者】
【氏名】太田 英俊
(72)【発明者】
【氏名】青田 周樹
(72)【発明者】
【氏名】西尾 明夏
【審査官】
胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−055392(JP,A)
【文献】
特開2013−009815(JP,A)
【文献】
特開2002−006743(JP,A)
【文献】
特開2008−058349(JP,A)
【文献】
特開2010−128260(JP,A)
【文献】
特開2006−106455(JP,A)
【文献】
特開2000−066602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を封入して凍結保存する際に使用する透明乃至半透明の材料で形成した筒状の容器の外面にバーコードラベルを貼付した凍結保存用容器において、前記バーコードラベルは、該バーコードラベルの一部に、容器の軸線方向の透明部を備え、
前記バーコードラベルは、表面にバーコードが印刷される印刷層と、該印刷層の裏面に積層された第1粘着層と、該第1粘着層の裏面に積層された透明層と、該透明層の裏面に積層された第2粘着層とを有する積層構造で形成されるとともに、前記印刷層には、該印刷層の一部を前記容器の軸線方向に切除して前記透明部を形成するための切除部が設けられ、前記第1粘着層は、前記切除部を除いて前記印刷層の裏面に積層されている凍結保存用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結保存用容器に関し、詳しくは、動物の精子、受精卵、生殖細胞のような生体試料などを凍結保存するために用いる凍結保存用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の精子、受精卵、生殖細胞などの生体試料を凍結保存するための機器として、生体試料を封入した凍結保存用容器を、液体窒素を貯留した液体窒素式凍結保存容器内に自動的に出し入れする凍結保存装置が知られている。この凍結保存装置では、容器の外面に貼付したバーコードを読み取ることにより、容器を識別するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−94359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記容器は、通常、内部に封入した試料の観察や、内部への試料の出し入れを容易に行えるように、透明な材料で形成されており、前記バーコードは、容器の任意の方向から読み取ることができるように、容器の全周にわたって貼付されている。しかし、バーコードは、一般に、裏面に接着層を有する不透明な紙やフィルムの表面にバーコードを印刷したバーコードラベルを用いているため、容器の全周にわたってバーコードが存在するようにバーコードラベルを貼付すると、容器がバーコードラベルで覆われてしまい、容器の内部が視認できなくなる。このため、解凍後の内容物(試料)を容器から取り出す際のピペッティング操作の作業性が低下するなどの問題があった。
【0005】
そこで本発明は、容器内の視認性を損なわないバーコードラベルを貼付した凍結保存用容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の凍結保存用容器は、試料を封入して凍結保存する際に使用する透明乃至半透明の材料で形成した筒状の容器の外面に、バーコードを印刷したバーコードラベルを貼付した凍結保存用容器において、前記バーコードラベルは、該バーコードラベルの一部に、容器の軸線方向の透明部を備えていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の凍結保存用容器における前記バーコードラベルは、表面にバーコードが印刷される印刷層と、該印刷層の裏面に積層された第1粘着層と、該第1粘着層の裏面に積層された透明層と、該透明層の裏面に積層された第2粘着層とを有する積層構造で形成されるとともに、前記印刷層には、該印刷層の一部を前記容器の軸線方向に切除して前記透明部を形成するための切除部が設けられ、前記第1粘着層は、前記切除部を除いて前記印刷層の裏面に積層されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の凍結保存用容器によれば、バーコードラベルの一部に透明部を備えているので、透明部を通して容器内を視認することができる。なお、透明部によってバーコードの読み取りができないような場合は、バーコードリーダを複数個設けたり、スキャン位置を変化させることができるバーコードリーダを用いることにより、バーコードの読み取りを確実に行うことができる。また、バーコードラベルとして、表面に積層した印字層の一部に切除部を設けておくことにより、バーコードラベルの透明部を簡単かつ確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の凍結保存用容器の一形態例を示す説明図である。
【
図2】バーコードラベルの一例を示す断面図である。
【
図3】2個のバーコードリーダを使用した例を示す説明図である。
【
図4】周方向に移動可能なバーコードリーダを使用した例を示す説明図である。
【
図5】スキャン方向を変化させることができるバーコードリーダを使用した例を示す説明図である。
【
図6】容器を回転させてバーコードを読み取る例を示す説明図である。
【
図7】容器を自動的に出し入れする凍結保存装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
凍結保存用容器11は、
図1(A)に示すように、透明(半透明を含む)な材料、例えば耐寒性に優れたポリプロピレンのような合成樹脂やガラスで有底円筒状に形成された容量が1〜5mlの本体12と、該本体12の上部開口を閉塞する着脱可能な蓋体13とで形成されている。本体12の内部に、動物の精子、受精卵、生殖細胞のような生体試料などの各種試料を充填した後、蓋体13を装着することにより、容器11に試料を封入した状態となる。
【0011】
容器11に封入した試料の情報は、管理用制御装置に入力されるとともに、各容器11を識別するためのコードが設定され、このコードに基づいたバーコード14が、長方形状のバーコードラベル15の表面に、バーコード14の各バーが、バーコードラベル15の長辺に平行な向きに印刷される。
【0012】
バーコードラベル15は、
図2に示すように、表面に前記バーコードが印刷される印刷層16と、該印刷層16の裏面に積層された第1粘着層17と、該第1粘着層17の裏面に積層された透明層18と、該透明層18の裏面に積層された第2粘着層19とを有する積層構造で形成されている。このバーコードラベル15の長手方向中央部には、透明部20を形成するための切除部21が、両側の切取線22,22によって区画された状態で設けられている。前記第1粘着層17は、前記切除部21の裏面に非積層部17aを設け、切除部21を除いた前記印刷層16の裏面に積層されている。透明部20の容器周方向の大きさは、外部から容器11内の状態を、透明部20を通して視認できる程度であればよく、通常は、容器11の軸線を中心とした開き角度を30〜120度の範囲に設定すればよい。
【0013】
なお、印刷層16には、バーコード14を印刷可能な不透明の紙や合成樹脂フィルム、シートなどが用いられ、透明層18には、バーコードラベル15の強度を得るための合成樹脂フィルムが用いられ、第2粘着層19は、使用時に透明になる粘着剤が用いられている。また、第2粘着層19の裏面には、バーコードラベル15を容器11に貼付する際に剥離される剥離紙が積層されている。さらに、切除部21の部分に切除部であることを示す目印を設けたり、切除する際の手掛かりとなる突出部を設けたりすることができる。さらに、透明部20を複数箇所に設けることもできる。
【0014】
図1(B)に示すように、バーコードラベル15は、対応する容器11における本体12の外周面に、長辺を周方向に配置し、容器11の軸線方向にバーコード14をスキャンすることにより、バーコード14の情報を読み取るように貼付される。そして、
図1(C)に示すように、前記前記切除部21を切除することにより、バーコードラベル15の一部に、容器11の軸線方向を向いた前記透明部20が形成される。このように、一部に透明部20を形成したバーコードラベル15を貼付した容器11は、
図3乃至
図6に示すように、バーコード14をバーコードリーダ23で読み取りながら、
図7に示すような凍結保存装置24に出し入れされる。
【0015】
バーコード14をバーコードリーダ23で読み取る際に、バーコードラベル15の透明部20ではバーコード14を読み取ることができないので、凍結保存装置24に2個のバーコードリーダ23a,23bを配置し、容器11の周方向の異なる位置からバーコード14を読み取れるように形成することができる。この場合、
図3(A)に示すように、一方のバーコードリーダ23aが透明部20に対向し、
図3(B)に示すように、バーコードリーダ23aは、そのスキャン位置S1がバーコードラベル15の透明部20になるためにバーコード14を読み取ることはできないが、他方のバーコードリーダ23bは、バーコードリーダ23aとは異なる方向からバーコード14を読み取るように配置されているので、
図3(C)に示すように、バーコードリーダ23bのスキャン位置S2は、バーコードラベル15のバーコード14の部分になるため、容器11に貼付したバーコードラベル15のバーコード14を確実に読み取ることができる。
【0016】
また、
図4は、バーコードリーダ23を、容器11の軸線を中心とした円周上を移動可能に設けた例を示している。この場合、容器11の軸線を中心とする透明部20の開き角度よりも、バーコードリーダ23の周方向への移動角度を大きくしておくことにより、透明部20の位置に関係なく、バーコードリーダ23によってバーコード14を確実に読み取ることができる。
【0017】
図5は、バーコードリーダ23を、容器11の軸線に平行な軸を中心としてによってバーコード読取方向を、バーコードリーダ23から見た容器11の胴部幅方向に変化させることができるようにした例を示している。この場合、容器11の胴部幅方向の寸法よりもバーコードリーダ23のバーコード読取方向の変化寸法を大きくしておくことにより、バーコードリーダ23によってバーコード14を確実に読み取ることができる。
【0018】
図6は、バーコードリーダ23を固定した状態で、凍結保存装置24に設けられている容器保持部を、保持した容器11を容器11の軸線を中心として回転させることができるように形成した例を示している。この場合、容器保持部による容器11の回転角度を容器11の軸線を中心とする透明部20の開き角度より大きくしておくことにより、バーコードリーダ23によってバーコード14を確実に読み取ることができる。
【0019】
なお、
図7に示すような凍結保存装置24は、前記特許文献1に記載された凍結保存装置と同じ構成のものとすることができる。すなわち、キャビネット31の下部に液体窒素式凍結保存容器32を配置するとともに、上部に容器11の入出庫部33を配置し、入出庫部33に、複数の容器11を収納可能な容器収納具(ケーン)34を搬送する自動ハンドリングロボット35と、バーコードリーダを内部に設置したパスボックス36とを備えたものを使用できる。その他、本発明の容器11は、バーコード14を付した容器11を凍結保存するための各種構成の凍結保存装置に対応することができ、本発明のバーコードラベル15は、中身を視認する必要がある各種物品に貼付することができる。
【0020】
このように、バーコードラベル15の一部に、容器11の軸線方向、即ち深さ方向に連続して開口する透明部20を設けることにより、透明部20を通して容器11内の状態を外部から視認することができるので、解凍後の内容物(試料)を取り出す際のピペッティング操作をはじめとする各種操作を容易かつ確実に行うことができる。また、本発明の容器は、自動的に容器11を出し入れする凍結保存装置24を使用せず、手作業で容器を出し入れする凍結保存装置で使用することもできる。
【0021】
なお、以上の説明では、円筒形状の凍結保存用容器を例示して説明したが、凍結保存用容器は、断面四角形、六角形などの角筒形状であってもよく、断面形状が変化するものであってもよい。
【符号の説明】
【0022】
11…容器(凍結保存用容器)、12…本体、13…蓋体、14…バーコード、15…バーコードラベル、16…印刷層、17…第1粘着層、17a…非積層部、18…透明層、19…第2粘着層、20…透明部、21…切除部、22…切取線、23,23a,23b…バーコードリーダ、24…凍結保存装置、31…キャビネット、32…液体窒素式凍結保存容器、33…入出庫部、34…容器収納具、35…自動ハンドリングロボット、36…パスボックス